説明

飲料組成物及びその製造方法

【課題】コンニャクマンナンが有する効果をより向上させ、さらにコンニャクに特有の風味を改善したコンニャクマンナン含有飲料組成物及び該飲料組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】部分加水分解コンニャクマンナンに乳酸菌を加えて乳酸発酵させて得られることを特徴とする飲料組成物、並びに部分加水分解作用を有する酵素水溶液中でコンニャクマンナンを膨潤・液化させ、次いで得られる部分加水分解コンニャクマンナンを該コンニャクマンナン以外の糖源を添加することなく乳酸菌により乳酸発酵させることを特徴とする飲料用組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料組成物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、部分加水分解させたコンニャクマンナンの乳酸発酵飲料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンニャクイモに主要に含まれているグルコマンナン(以下、コンニャクマンナンという)は一般的にグルコースとマンノースが1:1.6で構成されている。グルコマンナンはコンニャクイモの貯蔵多糖であるが、デンプンなどの(1→4)-α-グルカンではなく(1→4)-β-グルカンであるため、セルロースと同様にヒトが持つ消化酵素ではほとんど消化できない。従って、食物繊維としてのコンニャクマンナンはダイエット食品にしばしば使用されている。加えて、グルコマンナンを酵素分解あるいは酸加水分解することによって生じたオリゴ糖は、腸内環境を整えるために最も重要とされるビフィズス菌によって特異的に資化されることが分かっている(特許文献1)。さらに良いことに悪玉菌と呼ばれている大腸菌、スタフィロコッカス、クロストリジウム・パーフリンゲンス等は、コンニャクマンナン(単糖類・二糖類は除く)をほとんど利用しないため、コンニャクマンナン(食物繊維及びオリゴ糖)は腸内の調子を整えるために非常に優れた性質を持っているといえる。さらに、マンナンはビフィズス菌の増殖促進に関与しているだけでなく、様々な機能性が見出されている。中でも血中コレステロール低下作用や発癌物質である胆汁酸二次代謝物質の抑制作用を伴った大腸ガン予防作用が挙げられる(特許文献2、3)。これは、平均分子量が2,000〜5,000あるいは約50,000のグルコマンナン部分分解物、即ちマンナン食物繊維が有効成分であると考えられている。
【0003】
以上のようにコンニャクマンナンの部分分解物はヒトにとって有用な物質であるが、酵素あるいは酸等で部分加水分解した際に、単糖(グルコース及びマンノース)やセロビオースも少なからず生じる。即ち、酵素処理時間が長ければ長いほど多くなる。これらの単糖や二糖が大腸菌、クロストリジウム・パーフリンゲンスやバクテロイデス属等の悪玉菌によって資化されること、及び/又は人体に吸収されてしまうために、これまではあまり有用な物質とは考えられてこなかった。また、これらの糖を除去するためには、特許文献1でも示されているようにクロマトカラム精製や限外ろ過等による精製を行う必要があり、高額で且つ長時間費やす必要があるという問題があった。
【0004】
また、グルコマンナンの機能性として便通改善や整腸作用等のために食物繊維として食品中に添加する報告がいくつかある。水溶性食物繊維と非水溶性食物繊維の組み合わせの例として、特許文献4、5があるが、非水溶性の食物繊維あるいは寒天を必須としており、飲料によって摂取することは困難である。また、難発酵性食物繊維と発酵性食物繊維の組み合わせに関する例として、特許文献6がある。しかし、コンニャク粉に限っては、異臭を伴う好ましくない風味・食感があり、加水分解処理を行わずにコンニャクマンナンを用いて飲料を作製しても、溶解度が非常に悪いために食物繊維として少量の摂取しか出来ず、且つ美味ではない。逆に、低分子化したコンニャクマンナンを用いたとしても課題であるコンニャクマンナン自体の効果をより向上させるという重要な要素を解決しているわけではない。同様に、コンニャクマンナンを用いた例として、特許文献7の提案があるが、イモおよびデンプン類(日本食品標準成分表参照)を使用した飲料の提案ではなく、且つコンニャクマンナンの効果をより向上させて飲料で摂取する方法を開発するという課題には触れていない。
【0005】
一方で、コンニャクマンナンを飲料として摂取する際に、異臭を伴う好ましくない風味・食感のために使用量あるいは使用用途が限定されるという問題を改善するために、これまでにいくつかの取り組みが行われてきている。一つはグルコマンナンあるいはコンニャク粉をセルラーゼのような加水分解酵素によって飲料用に加工した方法(特許文献8、9、10)があるが、主に酵素分解による方法であるため風味の改善としては十分ではない。二つ目にコンニャク精粉をアルコール存在下で水に膨潤させ、アルカリ液に浸漬後に加熱ゲル化させる方法(特許文献11)、三つ目にコンニャク粉にセルロースやペクチンを混合加水する方法(特許文献12、13)があるが、いずれもコンニャク自身の風味・食感を十分に改善するに至っていない。しかも、コンニャクの粒ゲルや香料等の使用は用途が限定されてしまうために十分に改善されたとはいえない。さらに、風味の改善策としてコンニャクマンナンを水に分散させた後に酵素で加水分解し、糖源及び酵母を加えてアルコール発酵を行う方法(特許文献14)があるが、アルコール発酵は使用用途が厳しく制限されてしまうことやアルコール濃度が低いときには逆に酵母臭が嫌味になってしまうために一般的な飲料に対しては不適である。従って、さらなる化学的あるいは物理的な方法によって風味・食感の改良が求められる。また、特許文献7のように、食物繊維を加水分解せずに発酵を行っていても、特許文献8で示されているように美味な食品にすることは難しく、コンニャクマンナンに限っていうと、飲料目的のための風味改善策としては不十分である。
【特許文献1】特開58−212780号公報
【特許文献2】特開平5−246860号公報
【特許文献3】特開平9−252792号公報
【特許文献4】特公平7−12294号公報
【特許文献5】特開2004−215561号公報
【特許文献6】特開2000−232855号公報
【特許文献7】特開平9−163977号公報
【特許文献8】特開昭63−269993号公報
【特許文献9】特開平5−199856号公報
【特許文献10】特開平8−336375号公報
【特許文献11】特開平8−131097号公報
【特許文献12】特開2001−17129号公報
【特許文献13】特開2005−295977号公報
【特許文献14】特許第2827158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、コンニャクマンナンが有する効能、特に整腸効果を向上させ、さらにコンニャクに特有の風味を改善した飲料組成物及び該飲料組成物の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、摂取した人が自身の整腸状態が改善していることを実感し易く、かつ摂取し易い飲料組成物及び該飲料組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段として、コンニャクマンナン由来オリゴ糖あるいは多糖類を資化しないように、マンナン分解物由来の単糖類及びセロビオースを化学的に変換させることによって過剰な労力や費用も掛からずに健康性をさらに高めた飲食品を開発することが可能になれば、例えば大腸に多く棲むようなビフィズス菌のみを活性化させるだけでなく、小腸から大腸までの健康をカバーできる飲食品の開発が可能になると予測した。そして、この予測に基づき、鋭意研究を重ねた結果、単に加水分解を行ったコンニャクマンナンを飲料として使用するのではなく、従来無視あるいは取り除いていた酵素分解によって生じた単糖や二糖類を高度に活用することで、驚くべきことに、コンニャクマンナンの効能をより向上させることが可能となり、しかも従来の方法よりもコンニャクマンナンを含有する飲料組成物の風味の改善にも有効であるということを見出して本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、
(1) 部分加水分解コンニャクマンナンに乳酸菌を加えて乳酸発酵させて得られることを特徴とする飲料組成物、
(2) 部分加水分解作用を有する酵素水溶液中でコンニャクマンナンを膨潤・液化させ、次いで得られる部分加水分解コンニャクマンナンを該コンニャクマンナン以外の糖源を添加することなく乳酸菌により乳酸発酵させることを特徴とする飲料用組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の飲料組成物を継続的に摂取することで、摂取した人の健康状態、特に便秘・下痢など整腸状態を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の飲料組成物は、部分加水分解コンニャクマンナンに乳酸菌を加えて乳酸発酵させて得られることを特徴とするものである。
【0011】
前記部分加水分解コンニャクマンナンは、コンニャクマンナンを部分加水分解作用を有する酵素水溶液中で膨潤・液化させることで得られる。
前記コンニャクマンナンとしては、あらかじめ80%(v/v)以上のエタノールで脱色・脱臭し乾燥するか、あるいはエタノール洗浄・乾燥しない市販のコンニャク粉を使用する。
また、酵素水溶液に用いる酵素としては、コンニャクマンナンを部分加水分解できるものであればよく、例えば、セルラーゼ、へミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびこれらの酵素を混合する粗酵素などが挙げられるが、特に限定はない。また、水溶液の媒体としては、水または酢酸バッファーなどの緩衝液が用いられる。
【0012】
本発明において、前記コンニャク粉は、前記酵素水溶液と混合する前に、水又は温水に漬けて混合攪拌して、糊状とする必要はない。即ち、アスペルギルス属あるいはトリコデルマ属等の粗酵素か、あるいはその他のセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等の多糖分解酵素を10mM〜1Mクエン酸あるいは酢酸バッファー水溶液(pH4.0〜6.0;35〜60℃)中に溶解しておき、この酵素水溶液に徐々にコンニャク粉を加えていく。このとき、コンニャク粉は最大50〜70%(w/v)まで可溶であるが、溶液中での酵素反応が好適となるような粘度に調整する観点から、40%(w/v)以下となるようにするのが好ましい。ここで、コンニャク粉を徐々に加えることにより、マンナン糊を形成するよりも遥かに速やかにコンニャクマンナンが直接膨潤・液化される。この時、分割投入量、投入間隔時間、攪拌速度・攪拌方法、攪拌温度を厳密に規定することによって、コンニャクマンナンの分子量分布等の諸条件を固定し、再現性可能になる。
なお、酵素反応前に、予め、コンニャク粉を0.5%以上の濃度で温水中に溶解すると、酵素の最適温度である50℃前後の温度帯にした場合にゲル化してしまい、引き続き酵素処理をするときには酵素液の拡散や酵素反応を阻害する(固体なので酵素反応が低下する)要因となるため、好ましくない。
【0013】
また、全てのコンニャク粉を投入してから5分〜1時間経過した後に100℃まで加熱してからその後冷却するか、加熱せずにそのまま乳酸発酵を行ってもよい。また、後述の乳酸発酵で用いる乳酸菌の生育条件を最適にするため、コンニャク混合液のpHを4.5〜5.5以上に調整しておくのが好ましい。
以上のようにして得られる部分加水分解コンニャクマンナンは、前記のような部分加水分解処理した際に、pH4〜10、50℃の状態では完全にゲル化しておらず液状であること、及び1%の部分加水分解コンニャク溶液の粘度がB型粘度計で測定した場合(20rpm、50℃)に3.5Pa・s以下であるものが好ましい。
【0014】
本発明では、前記部分加水分解コンニャクマンナンに乳酸菌を加えて乳酸発酵させる。
前記乳酸菌としては、グルコース、マンノース及びセロビオースを資化することができ、かつマンノオリゴ糖、コンニャクマンナンを資化することが実質的にできないという資化性を兼ね備えた種あるいは株であればよい。なお、糖の資化とは、菌体が必要な炭素源として前記糖を用いて生育できることをいう。
【0015】
本発明に使用される乳酸菌としては、以下のような菌が例示される。
エンテロコッカス(Enterococcus)属に属する菌: エンテロコッカス・マロドラタス (E. malodoratus)、フェシウム (E. faecium)、フェカーリス(E. faecalis)、デューランス(E. durans)、ラクトバチルス(Lactobacillus) 属に属する菌: ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、サリバリウス (L. salivarius)、ビフィダス (L. bifidus)、L.ブルガリカス (L. bulgaricus)、カゼイ(L. casei)、アシドフィルス (L. acidphilus)、ガセリ (L. gasseri)、ファーメンタム (L. fermentum)、ヘルベティカス (L. helveticus)、ユーグルティ (L. jugurti)、デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス (L. delbrueckii sub. bulgaricus)、デルブルッキー (L. delbrueckii)、ラムノーサス (L. rhamnosus)、ストレプトコッカス (Streptococcus)属に属する菌: ストレプトコッカス・サーモフィルス (S. thermophilus)、ボビス (S. bovis)、ミュータンス (S. mutans)、サンギス (S. sanguis)、クレモリス (S. cremoris)、ラクチス (S. lactis)、ラクトコッカス (Lactococcus)属に属する菌: ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス (Lactococcus lactis sub. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス (Lactococcus lactis sub. cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス (Lactococcus lactis)、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する菌: ロイコノストック・メセンテロイデス (Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・デキストラニカム (Leuconostoc dextranicum)、ペジオコッカス(Pediococcus)属に属する菌: ペジオコッカス・ペントサセウス (Pediococcus pentosaceus)。本発明においては、これらの乳酸菌群から選択される1種又は2種以上の菌体を用いて発酵を行うことが可能である。
【0016】
本発明において、前記乳酸菌としては、前記のような糖資化性を備えていていれば、ビフィドバクテリウム属の乳酸菌も使用できる。また、コンニャクマンナンが本来持つ異臭の改善効果が大きい観点から、アシドフィルス菌のように酸味を生産する乳酸菌を使用することが好ましい。
【0017】
本発明では、前記乳酸菌の乳酸発酵は、部分加水分解コンニャクマンナン中で乳酸菌を培養することで行うことができる。
前記乳酸発酵の条件(培養時の部分加水分解コンニャクマンナンのpH、培養温度など)は、乳酸菌の種類によって適宜調整すればよい。
中でも、コンニャクマンナンの効能をより向上させるという観点から、乳酸発酵時には、前記コンニャクマンナンを用いる以外は、乳酸菌の糖源となるような糖質を添加せずに発酵させることが本発明の大きな特徴のひとつである。即ち、加水分解処理によって生じたコンニャクマンナン由来の一部の糖質(単糖及び二糖)によって乳酸菌が十分に増殖可能となり、これにより本発明の効果が奏される好適な乳酸発酵の状態となることが確認されている。また、乳酸菌によってはホモ発酵あるいはヘテロ発酵に分けられるが、細胞外多糖などの乳酸菌生成物や場合によっては二酸化炭素や乳酸や酢酸も含み、さらに乳酸菌体も腸内改善に役立つことから、特に発酵代謝方法についての違いによって乳酸菌の種類は限定されない。
なお、一般的な乳酸菌は、特殊な糖源を加えた場合を除き、部分加水分解コンニャクマンナン以外の他の糖源を添加して乳酸発酵させた場合、乳酸菌がヒトにとって有益な物質を精製してくれることや増殖が著しく促進することは考え難い。しかも、他の糖源を添加することで、この添加した糖源の量だけコンニャクマンナン由来の単糖類や二糖類が残存してしまう。したがって、本発明では、コンニャクマンナンを高度利用する観点から、部分加水分解コンニャクマンナン以外の糖源を添加せずに乳酸発酵を行う。
【0018】
また、前記乳酸発酵の終了は、菌体濃度、pH、グルコース量等により、確認することができる。乳酸発酵の終了を確認後、得られた発酵組成物を加熱処理することによって酵素反応を停止させることが好ましい。
【0019】
前記発酵組成物を用いて本発明の飲料組成物を調製することができる。本発明の飲料組成物中において、乳酸菌は生菌であればよいが、死菌でもよい。これは、先にも述べているように死んだ乳酸菌の細胞は腸内に存在する有害物質を吸着し、体外に排泄する働きを持っており、即ち食物繊維が腸管内を掃除するのと同じ効果を期待できるからである。
【0020】
また、本発明の飲料組成物は、前記発酵組成物をそのまま用いてもよく、必要であれば、糖類、香料、甘味料、果汁、炭酸、及び、機能性物質等を含んでいてもよいが、特に限定はない。
【0021】
本発明の飲料組成物は、コンニャクマンナンを加水分解した際、および乳酸発酵させた際に、単糖や二糖(グルコース、マンノース、セロビオース)が十分量生じているため、適度な甘味性を備えたものであるが、コンニャク飲料の機能性を損なわなければ、他の糖類を飲料組成物中に添加してもよい。糖類としては、例えば、還元したものも含めて澱粉、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール、デキストリンが挙げられる。なお、これらの糖類は、飲料組成物中の乳酸菌が生菌である場合、該乳酸菌が資化できないものを選べばよく、また、前記乳酸菌が死菌である場合、糖類に特に限定はない。
【0022】
また、本発明の飲料組成物は、コンニャク特有の異臭が顕著に改善されたものであるため、香料を添加することによって所望の風味を付与することができる。また、香料によっては、風味の改善のためだけでなく、副交感神経優位の状態を作り出してリラックス状態を誘引することで、胃液や唾液の分泌が促進されたり、血管が拡張して手や足が温かくなるため、コンニャクマンナンの効能がより促進されると考える。従って、そのような特殊な香料を飲料組成物中に添加することも本発明には含まれる。
【0023】
前記糖類、香料、甘味料、果汁、機能性物質、炭酸、機能性物質の有無や量に関しては、本発明の飲料組成物の風味や機能性を損なわない量であれば、特に限定はない。
【0024】
以上のようにして得られる本発明の飲料組成物の摂取は、例えば、症状、身長、体重、年齢などにより異なるが、成人1人あたりの摂取量が、5〜500mg/kg・日、好ましくは100〜400mg/kg・日となるように、1回ないし数回に分けて摂取するのがよい。また、本発明の飲料組成物は、整腸効果が大きくなる観点から、継続的に摂取することが好ましい。
【0025】
なお、本発明で用いるコンニャクマンナン、乳酸菌、コンニャクマンナンの部分加水分解処理に用いる酵素などは、いずれも日本において食品の製造に使用されているものであり、安全性に関して問題はない。
【0026】
また、本発明は、コンニャク以外の供給源由来のグルコマンナンを使用した場合でも、同様の作用効果が得られる。したがって、コンニャクマンナン以外のグルコマンナンも使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0028】
実施例1
あらかじめアスペルギルス・ニガー由来の粗酵素であるヘミセルラーゼ「アマノ90」(天野エンザイム社製)0.6gを10mMクエン酸バッファー溶液(pH4.5)1L中に溶解した。酵素溶解後に40℃から50℃までの温度帯で恒温にした。その後、コンニャク粉100gを三等分(40g・30g・30g)にして8分おきに攪拌しながら前記酵素水溶液に加えた。全て加えた後に1時間恒温で攪拌しながら放置した。1時間後、コンニャク粉(コンニャクマンナン)が膨潤・液化していることを確認した後に温度を38℃に下げた。さらにクエン酸ナトリウムを加えてpH5.5に引き上げた。その後、乳酸菌Lactobacillus acidophilusを1x108個/mlの濃度になるように添加し、恒温で8時間静置培養した。培養完了後に85℃で15分間の加熱によって酵素反応を停止させた。最終的に乳酸菌の密度は5x108〜5x1010個/mlになった。以後このようにして得られた組成物を発酵組成物と呼ぶ。
【0029】
次いで、表1に示す組成に従って、各成分を混合し、85℃・15分間の殺菌処理を行って本発明の飲料組成物を得た。
【0030】
【表1】

【0031】
試験例1
実施例1で得られた発酵組成物及び飲料組成物におけるコンニャクマンナン由来の風味(異臭)について、60人の被験者による評価を行った。その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2では、発酵前と発酵後について、香りが良いと答えた方の人数を示している。実施例1で得られた発酵組成物及びそれを用いた飲料組成物についての評価をそれぞれ調査した結果、発酵を行った場合のほうが顕著にコンニャク由来の異臭が除かれており、摂取し易いものであることがわかった。なお、発酵前の発酵組成物とは、乳酸発酵を行っていない組成物を示し、その組成物に表1に示す各成分を添加したものを発酵前の飲料組成物とした。
また、発酵組成物及び飲料組成物中のコンニャク粉の濃度を実施例1のものよりもさらに高めて同様の実験を行ったところ、コンニャク粉の濃度が高くなるほど風味についてさらに良い結果が得られた。
従って、本実験例の結果は、乳酸発酵によってコンニャク自身が持つ風味が改善されたことを示している。さらに、Lactobacillus acidophilusのような培養によって乳酸を多量に産出するような乳酸菌を使用することによって、酸味のある乳酸菌独特の香りがコンニャク由来の異臭に関してかなり影響を及ぼしていることも明らかとなった。
【0034】
そこで、以下に示す様々な乳酸菌を用いた以外は、実施例1と同様にして発酵組成物を得、次いで、上記と同じ配合とした飲料組成物の評価を行った結果、特に乳酸菌特有の香りを感じなくても、すべての場合で発酵後組成物を使用した飲料組成物の方が好評価を得た。したがって、乳酸発酵によってコンニャク特有の異臭が改善されたことがわかった。
【0035】
使用した乳酸菌:
エンテロコッカス・マロドラタス(E. malodoratus)、フェシウム (E. faecium)、フェカーリス(E. faecalis)、デューランス(E. durans)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、サリバリウス (L. salivarius)、ビフィダス (L. bifidus)、L.ブルガリカス (L. bulgaricus)、カゼイ(L. casei)、ガセリ (L. gasseri)、ファーメンタム (L. fermentum)、ヘルベティカス (L. helveticus)、ユーグルティ (L. jugurti)、デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス (L. delbrueckii sub. bulgaricus)、デルブルッキー (L. delbrueckii)、ラムノーサス (L. rhamnosus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス (S. thermophilus)、ボビス (S. bovis)、ミュータンス (S. mutans)、サンギス (S. sanguis)、クレモリス (S. cremoris)、ラクチス (S. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス (Lactococcus lactis sub. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス (Lactococcus lactis sub. cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス (Lactococcus lactis)、ロイコノストック・メセンテロイデス (Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・デキストラニカム (Leuconostoc dextranicum)、ペジオコッカス・ペントサセウス (Pediococcus pentosaceus)。
【0036】
試験例2
さらに、本発明の飲料組成物によって期待される便通改善作用を明らかにした。すなわち、一週間の排便回数が4回以下の6名の便秘被験者に一日100mlずつ実施例1で得られた飲料組成物を服用させて、服用前後で「排便回数」、「便の固さ」、「便の形状」、「排便後の爽快感」を評価した。その結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表中の値は、6名の便秘被験者による下記評価基準に基づく点数を絶対値にして平均したものである。飲料組成物の摂取前5日間・摂取中5日間でそれぞれ得点化している。
〔評価基準〕
排便回数:回/日
便の固さ:とても硬い「−2」、 硬い「−1」、 普通「0」、 柔らかい「1」、 とても柔らかい「2」
便の形状:カチカチ「−2」、 コロコロ状「−1」、 バナナ状「0」、 半練り状「1」、泥状「2」、 水状「3」
排便後の爽快感:さっぱりしない「−1」、 普通「0」、 さっぱりした「1」
なお、上記評価のうち、「便の固さ」、「便の形状」、「排便後の爽快感」の点数は、「0」に近づくほど改善されていることを示す。
【0039】
表3の結果より、被験者における「排便回数」、「便の固さ」、「便の形状」、「排便後の爽快感」は、本発明の飲料組成物を摂取することで大きく改善された。また、表3にはないが、便の匂いに関しても改善された結果を得た。また、いずれの被験者も前記飲料組成物を飲み易いと判断した。したがって、本発明の飲料組成物は、摂取した人が自身の整腸状態が改善していることを顕著に実感し易いものであることがわかる。
また、本実験例の結果より、本発明の飲料組成物を少なくとも5日間程度、100mlずつ飲むことに、便秘被験者に対して顕著な改善作用が見られることが示唆された。
【0040】
比較例1
1Lの水を80℃の恒温にする。その後、コンニャク粉100gを三等分(40g・30g・30g)にして8分おきに攪拌しながら加える。全て加えた後にコンニャク粉が膨潤するまで80℃で1時間静置する。その間にアスペルギルス・ニガー由来の粗酵素であるヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)0.6gを1Mクエン酸バッファー溶液(pH4.5) 10mlに溶解しておく。膨潤したコンニャクマンナン糊を55℃まで下げてから前もって調製しておいた酵素液を加え、撹拌しながら酵素分解を行う。酵素液を加え、酵素液が分散してから液化するまでの時間を測定した。実施例1と同様の液化状態であるかどうかを明確にするために、B型粘度計(TVB-10; TOKI SANGYO CO.,LTD)で測定した粘度で判断した。
【0041】
実施例1と比較例1で酵素分解に要する時間を比較した。実施例1で作製した部分分解コンニャクマンナン液に関しては、コンニャク粉を入れはじめてから1時間後に粘度を測定したところ<25mPa・sになった。一方、比較例1で酵素処理を行った結果、4時間20分後に<25mPa・sになった。これは、コンニャクマンナン糊の粘度が高すぎるため、酵素反応速度が通常の液体中よりも遅いためであると考えられる。即ち、コンニャクマンナンの酵素分解を行うためには、酵素液に直接コンニャクを混ぜることが酵素処理での部分分解コンニャクを作製するために有効な方法であることが明らかとなった。
【0042】
実施例2
実施例1と同様に酵素溶液に所定のコンニャク粉を全て加えた後に1時間恒温で攪拌しながら放置する。1時間後、コンニャクマンナンが液化していることを確認した後に温度を38℃に下げる。さらにクエン酸ナトリウムを加えてpH5.5に引き上げる。その後、乳酸菌Lactobacillus gasseriを1x108個/mlと乳酸菌 Pediococcus pentosaceusを1x108個/mlの濃度になるように添加し、38℃恒温で6時間静置培養する。培養完了後に85℃, 15分間の加熱によって酵素反応を停止させる。最終的に乳酸菌の密度は5x108〜5x1010個/mlになった。以後この組成物を発酵組成物と呼ぶ。
【0043】
【表4】

【0044】
上記表4に示す組成に従って、各成分を混合し、85℃・15分間の殺菌処理を行って本発明の飲料組成物を得た。
【0045】
試験例3
実施例2の処方においてカモミールフレーバーを加えなかったものと実施例2の処方のようにカモミールフレーバーを加えたものとでリラックス効果感を調査した。20代から30代の女性30人を対象にリラックス効果の比較を行ったところ、26人がリラックス感に対して効果があると答えた。しかも、コンニャク飲料の有効性に関しても試験例2と同様の結果を得ていることから、フレーバーの有無によるコンニャクの有効性の差異は認められなかった。従って、カモミールのようなリラックス効果のあるフレーバーを飲料組成物中に加えることで、コンニャクの有効性に加えて、さらに独立的にリラックス効果を機能させることが可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の飲料組成物は、コンニャクマンナン独特の風味が改善されて、便秘・下痢に関して顕著な改善作用があることから、本発明の飲料組成物を用いることで、コンニャクンナンを用いた様々な風味の飲料を提供することが可能であること、及び少なくとも部分分解コンニャクマンナンの機能性だけでなく乳酸菌自体及び/又は乳酸菌から分泌された物質の有効性を合わせて取り入れることが可能であることが示唆された。
【0047】
また、本発明の飲料組成物は、少なくともこれまで得られているコンニャク飲料の知見と同等かそれ以上の機能性、特に「排便後の爽快感」に関して優れたものと考えられることから、利用者にとっては、従来のコンニャク飲料と比較すると、自身の健康状態についての改善を顕著に実感することができる。また、本発明の飲料組成物に他の有効成分を配合することで、新しい機能性を複合化することにより、新規な飲料組成物の開発も可能である。
【0048】
また、乳酸菌あるいは発酵食品を摂取する重要性に関してはすでに数多くの知見が存在することから考えて、本発明のように便通の改善や異臭の改善とはほとんど無関係であるコンニャクマンナン由来の単糖類や二糖が乳酸菌によって様々な物質に変換されているため、他の健康要素での有効性も十分に期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分加水分解コンニャクマンナンに乳酸菌を加えて乳酸発酵させて得られることを特徴とする飲料組成物。
【請求項2】
前記乳酸菌が、グルコース、マンノース及びセロビオースを資化することができ、かつマンノオリゴ糖又はコンニャクマンナンを実質的に資化できない乳酸菌である請求項1記載の飲料組成物。
【請求項3】
前記乳酸菌がエンテロコッカス(Enterococcus)属に属する菌、ラクトバチルス(Lactobacillus) 属に属する菌、ストレプトコッカス (Streptococcus)属に属する菌、ラクトコッカス (Lactococcus)属に属する菌、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する菌、及びペジオコッカス(Pediococcus)属に属する菌からなる群より選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の飲料組成物。
【請求項4】
部分加水分解作用を有する酵素水溶液中でコンニャクマンナンを膨潤・液化させ、次いで得られる部分加水分解コンニャクマンナンを該コンニャクマンナン以外の糖源を添加することなく乳酸菌により乳酸発酵させることを特徴とする飲料用組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−253174(P2008−253174A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97426(P2007−97426)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】