説明

飲料調理装置の水回路

【課題】給水ポンプの空回りや氷質異常、製氷異常音の発生、オーガ駆動モータの過負荷などの不具合を防止することができる飲料調理装置の水回路を提供することを目的とする。
【解決手段】給水管T1、T2が接続された水リザーバタンク10のタンク14給水管接続部14aに挿入された気泡除去端子16の先端部16aが尖らせたエッジ状に形成されていることにより、給水管T1、T2中で飲用水に多量に含まれている空気が気泡となっても、尖らせたエッジ状に形成されている先端部16aで飲用水中を浮遊している気泡を破壊して消滅させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料および水を用いて飲料を調理する飲料調理装置の水回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原料および水を用いて飲料を調理する飲料調理装置(例えばカップ式自動販売機や飲料ディスペンサ)が知られている。図5はカップ式自動販売機の水回路図である。カップ式自動販売機1は、弁を開閉して水道から供給される飲用水の給水・停止を行う水入口電磁弁9、水入口電磁弁9が開いて水道から供給された飲用水を所定の水位に保って貯留する水リザーバタンク10、水リザーバタンク10に貯留している飲用水を各機器に圧送する給水ポンプ61、温水タンク50に飲用水を圧送するときに弁を開く飲用水電磁弁56、アイス飲料用の飲用水(冷水)、炭酸水やシロップを冷却する冷却水槽62、炭酸ガスを貯蔵する炭酸ガスボンベ63、シロップを貯蔵するシロップタンク64、炭酸ガスボンベ63から供給される炭酸ガスを冷水に溶かして炭酸水を製造して貯留するカーボネータ65、カップCに炭酸水を注出する炭酸水ノズル66、カップCに飲用水を冷やした冷水を注出する冷水ノズル67、カップCにシロップを注出するシロップノズル68、水リザーバタンク10から供給される飲用水で氷片を製造し、アイス飲料を調理するときに貯蔵している氷片を供給するオーガ式製氷機20、給水ポンプ61を運転して飲用水電磁弁56を開いて水リザーバタンク10から圧送された飲用水を95℃〜97℃に加熱した温水を貯留する温水タンク50などを備えている。
【0003】
そして、利用者がカップ式自動販売機1の硬貨投入口(図示せず)に硬貨を投入してホットコーヒーを選択する飲料選択ボタン(図示せず)を押すと、コーヒーブリュア74にキャニスタ71から供給されるコーヒー豆をミル72で挽いた挽き豆を投入し、温水供給電磁弁54を開いて温水タンク50に貯留している温水を注いでコーヒー液を抽出し、キャニスタ75から供給される砂糖、クリームなどの粉末原料とコーヒーブリュア74から供給されるコーヒー液をミキシングボウル76で攪拌混合してコーヒー飲料を調理してコーヒーノズル77からカップCにコーヒー飲料を注出して利用者に提供する。また、アイスコーヒーを選択する飲料選択ボタンが押されると、濃厚な少量のコーヒー液を抽出して砂糖、クリーム等の粉末原料と攪拌混合したコーヒー飲料をオーガ式製氷機20から氷片が供給されているカップCにコーヒーノズル77から注出し、氷片で冷やされたアイスコーヒーを利用者に提供する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−315244号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カップ式自動販売機1に供給される水道水(飲用水)には多量の空気が含まれている。また、水リザーバタンク10の貯留水に飲用水が供給されるときにもその衝撃で飲用水に空気が捲き込まれて多量の空気が含まれることとなる。そして、水リザーバタンク10から給水ポンプ61に接続されている給水管中で飲用水に多量に含まれている空気が気泡となると、この気泡を給水ポンプ61が吸い込み、給水ポンプ61が空回り状態となって、温水タンク50やカーボネータ65に給水をすることができなくなり、さらには、給水ポンプ61の耐用年数を縮める不具合を招く虞がある。また、オーガ式製氷機20に気泡を含む飲用水が供給されると、製氷筒内壁の着氷が上方へ搬送されなくなって製氷筒内に残留して過冷却状態となり、氷質異常、製氷異常音の発生、オーガの回転抵抗が増大することによるオーガ駆動モータの過負荷が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、給水ポンプの空回りや氷質異常、製氷異常音の発生、オーガ駆動モータの過負荷などの不具合を防止することができる飲料調理装置の水回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る飲料調理装置の水回路は、水道から供給された飲用水を所定の水位に保って貯留する水リザーバタンクと、前記水リザーバタンクに接続している第1給水管から供給された飲用水から氷片を製造して貯蔵する製氷機と、前記水リザーバタンクに接続している第2給水管から供給された飲用水を所定の温度に加熱して貯留する温水タンクと、を備え、飲料を調理する飲料調理装置であって、
前記飲用水中に発生した気泡を破壊して消滅させる気泡除去手段を前記水リザーバタンクの前記第1給水管および/または第2給水管の接続部に設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る飲料調理装置の水回路は、上述した請求項1において、前記気泡除去手段は、前記気泡に接触させる先端部を尖らせたエッジ状に形成し、気泡の表面張力の抵抗を低活性化させて破壊して消滅させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水道から供給された飲用水を所定の水位に保って貯留する水リザーバタンクと、水リザーバタンクに接続している第1給水管から供給された飲用水から氷片を製造して貯蔵する製氷機と、水リザーバタンクに接続している第2給水管から供給された飲用水を所定の温度に加熱して貯留する温水タンクと、を備え、飲料を調理する飲料調理装置であって、飲用水中に発生した気泡を破壊して消滅させる気泡除去手段を水リザーバタンクの第1給水管および/または第2給水管の接続部に設け、当該気泡除去手段は、気泡に接触させる先端部を尖らせたエッジ状に形成し、気泡の表面張力の抵抗を低活性化させて破壊して消滅させることにより、第1給水管および/または第2給水管中で飲用水に多量に含まれている空気が気泡となっても、気泡除去手段の尖らせたエッジ状に形成されている先端部で飲用水中を浮遊している気泡の表面張力の抵抗を低活性化させて破壊して消滅させることにより、給水ポンプが気泡を吸い込むことによる空回りがなくなり、耐用年数に影響を与えることがなくなる。また、製氷機に気泡を含む飲用水が供給されることがなくなるので、製氷筒内壁の着氷が上方へ搬送されなくなって製氷筒内に残留して過冷却状態となり、氷質異常、製氷異常音の発生、オーガの回転抵抗が増大することによるオーガ駆動モータの過負荷が生じることもなくなる。これにより、給水ポンプの空回りや氷質異常、製氷異常音の発生、オーガ駆動モータの過負荷などの不具合を防止することができる飲料調理装置の水回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る飲料調理装置の水回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る飲料調理装置の水回路に設けた気泡除去手段の断面側面図である。
【図3】図2に示した気泡除去手段の側面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る飲料調理装置の水回路に設けた気泡除去手段の断面側面図である。
【図5】カップ式自動販売機の水回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る飲料調理装置の水回路の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、従来と同一構成に関しては同一符号を用いる。
図1は、本発明の実施の形態である飲料調理装置の水回路図であり、水リザーバタンク10、オーガ式製氷機20の一部破断側面図、温水タンク50、それぞれを接続する給水管を示す図である。水リザーバタンク10は、水道から供給された飲用水(水道水)をタンク14に所定の水位に保って貯留するために、水位の変動に伴って上下動するフロート11と、フロート11の位置を検出し、貯留している飲用水が給水開始水位(下限水位)に降下すると給水開始信号を出力する給水開始スイッチ12と、飲用水が給水停止水位(上限水位)に上昇すると給水停止信号を出力する給水停止スイッチ13とを備えている。
【0012】
そして、タンク14に貯留している飲用水の水位の変動に伴ってフロート11が上下動して、給水開始スイッチ12が給水開始信号を出力すると制御部(図示せず)が水入口電磁弁9を開いて水リザーバタンク10に給水し、給水停止スイッチ13が給水停止信号を出力すると水入口電磁弁9を閉じて給水を停止する。このようにして水リザーバタンク10にオーガ式製氷機20で良質の氷片を製造するのに適切な上限水位と下限水位の範囲内に常に保たれて貯留されている飲用水はタンク14の給水管接続部14aに接続された給水管(第1給水管)T1でオーガ式製氷機20に供給され、冷凍サイクル装置80が運転されてオーガ式製氷機20のオーガ駆動モータ22が駆動されると供給された飲用水から氷片が製造される。また、給水管接続部14aに接続された給水管(第2給水管)T2で給水ポンプ61の水入口61aに連通し、給水ポンプ61が駆動されると水リザーバタンク10に貯留してある飲用水が給水管T2を介して温水タンク50やカーボネータ65に供給される。
【0013】
オーガ式製氷機20は水リザーバタンク10から供給された飲用水を製氷筒24内壁面に着氷させた薄氷を螺旋状回転刃(以下「オーガ」という)23の回転により掻き上げて氷片を製造する製氷部21と、製造された氷片を簀の子33上に貯蔵する貯氷部30とから構成されている。
製氷部21は、オーガ駆動モータ22と、オーガ駆動モータ22の回転を減速して伝達する減速機(図示せず)を介して連結されたオーガ23と、オーガ23が挿通される製氷筒24と、製氷筒24の外周面に巻装された冷凍サイクル装置80の冷媒蒸発パイプ84と、オーガ23の上方に設けられた氷圧縮用の押出しヘッド25と、製氷筒24および冷媒蒸発パイプ84を包囲する断熱材26を備える。製氷筒24には水入口27が設けられて給水管T1を介して水リザーバタンク10に接続されている。
【0014】
貯氷部30は、断面円形状の断熱壁で構成した貯氷室31を製氷部21の上部に配設している。貯氷室31の内部にはオーガ23と同軸の回転軸23aの軸周囲に取り付けられた氷片攪拌用のアジテータ32と、アジテータ32と貯氷室31の底部31aとの間に配設された氷片載置用の簀の子(氷片が溶けた融解水を水切りする役目を有している)33を備えている。また、貯氷室31の側壁には、扉開閉機構35で開閉される氷搬出扉36を備えた氷搬出口34を設けている。扉開閉機構35が駆動されて氷搬出扉36が開くと、簀の子33上に貯蔵され、アジテータ32で攪拌されている氷片が氷搬出口34から搬出され、氷搬出シュート37を滑り落ちてカップ式自動販売機1の販売口に載置したカップCに供給される。さらに、貯氷室31の上蓋38には氷量検知板39が設けられ、貯氷量が減少して氷量検知板39が貯氷量下限位置に下がると製氷開始信号を出力する製氷開始スイッチ40と、製氷動作が進み、貯氷量が増して氷量検知板39が製氷停止位置まで押し上げられると製氷停止信号を出力する製氷停止スイッチ41とが設けられている。
【0015】
貯氷室31の底部31aには氷片が溶けた溶解水を排水する排水口42が設けられ、排水口42は排水管T3で製氷筒24の下部に設けた水入口28、27から給水管T1を介して水リザーバタンク10に接続されている。また、排水管T3は連通管T4および給水管T2を介して給水ポンプ61の水入口61aに連通している。
冷凍サイクル装置80は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒にする圧縮機81と、空気との熱交換により高温高圧のガス冷媒を冷却して液冷媒にする凝縮器82と、凝縮器82で液化された高圧の液冷媒の圧力を下げる膨張弁83と、液冷媒の蒸発熱(気化熱)で水リザーバタンク10から供給された飲用水を製氷筒24内壁面に着氷させる冷媒蒸発パイプ84と、冷媒蒸発パイプ84で蒸発したガス冷媒を圧縮機81に戻す冷媒管路85とを備え、冷媒は図中矢印方向に通流する。
【0016】
給水ポンプ61の水出口61bには給水管T5が接続され、その途中には飲用水電磁弁56が設けられた給水管T6で温水タンク50に接続されて飲用水が供給される。温水タンク50には、給水ポンプ61が運転されて飲用水電磁弁56が開くと水リザーバタンク10から圧送される飲用水の水位の変動に伴って上下動するフロート51の位置を検出し、貯留している飲用水が給水開始水位(下限水位)に降下すると給水開始信号を出力する給水開始スイッチ52と、飲用水が給水停止水位(上限水位)に上昇すると給水停止信号を出力する給水停止スイッチ53とを備え、飲用水は給水開始水位と給水停止水位との間の水位に保たれて貯留され、電気ヒータ55で95℃〜97℃に加熱される。そして、温水供給電磁弁54を開くと95℃〜97℃に加熱された温水がコーヒーブリュア74などに供給される。
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1に係る気泡除去端子(気泡除去手段)16を水リザーバタンク10のタンク14給水管接続部14aに設けた断面側面図であり、図3は、気泡除去端子16の側面図である。給水管接続部14aには、気泡除去端子16が挿入され、給水管T1および/または給水管T2が接続されている。気泡除去端子16は、飲用水中を浮遊している気泡の表面張力の抵抗を低活性化させて破壊して消滅させるためにその先端部16aを尖らせたエッジ状に形成している。また、胴部16cの幅を端部16bの幅より小さい寸法として給水管接続部14aに挿入しやすくするとともに、頭部16dの幅を給水管接続部14aの内径より大きい寸法としてタンク14から給水管T1、T2に落ち込まないようにしている。さらに、空間16eを設けることにより、先端部16aで破壊された気泡の泡沫が給水管接続部14a中を上昇しやすいようにしている。
【0017】
このように、給水管T1および/または給水管T2が接続される給水管接続部14aに先端部16aが尖らせたエッジ状に形成された気泡除去端子16を挿入して設けたことにより、給水管T1および/または給水管T2中で飲用水に多量に含まれている空気が気泡となっても、尖らせたエッジ状に形成されている先端部16aで飲用水中を浮遊している気泡の表面張力の抵抗を低活性化させて破壊して消滅させることにより、給水ポンプ61が気泡を吸い込むことによる空回りがなくなり、耐用年数に影響を与えることがなくなる。また、オーガ式製氷機20に気泡を含む飲用水が供給されることがなくなるので、製氷筒24内壁の着氷が上方へ搬送されなくなって製氷筒24内に残留して過冷却状態となり、氷質異常、製氷異常音の発生、オーガ23の回転抵抗が増大することによるオーガ駆動モータ22の過負荷が生じることもなくなる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る円筒状の気泡除去チップ(気泡除去手段)18をタンク14の給水管接続部14aに設けた断面側面図である。気泡除去チップ18は、飲用水中を浮遊している気泡の表面張力の抵抗を低活性化させて破壊して消滅させるためにその先端部18aを尖らせたエッジ状に形成している。また、接合部18bは給水管接続部14a内径に密着するようにその外径が定めらて、給水管T1、T2に落ち込まないようにし、胴部18cは上部の径を底部の径より大きい寸法として先端部18aで破壊された気泡の泡沫が給水管接続部14a中を上昇しやすいようにしている。
【0018】
このように、給水管接続部14aに先端部18aが尖らせたエッジ状に形成された円筒状の気泡除去チップ18を挿入して設けることにより、飲用水に多量に含まれている空気が気泡となっても、尖らせたエッジ状に形成されている先端部18aで飲用水中を浮遊している気泡の表面張力の抵抗を低活性化させて破壊して消滅させることにより、給水ポンプ61が気泡を吸い込むことによる空回りがなくなり、耐用年数に影響を与えることがなくなる。また、オーガ式製氷機20に気泡を含む飲用水が供給されることがなくなるので、製氷筒24内壁の着氷が上方へ搬送されなくなって製氷筒24内に残留して過冷却状態となり、氷質異常、製氷異常音の発生、オーガ23の回転抵抗が増大することによるオーガ駆動モータ22の過負荷が生じることもなくなる。
【符号の説明】
【0019】
1 カップ式自動販売機(飲料調理装置)
10 水リザーバタンク
14 タンク
14a 給水管接続部
16 気泡除去端子(気泡除去手段)
18 気泡除去チップ(気泡除去手段)
20 オーガ式製氷機(製氷機)
50 温水タンク
56 飲用水電磁弁
61 給水ポンプ
T1 給水管(第1給水管)
T2 給水管(第2給水管)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道から供給された飲用水を所定の水位に保って貯留する水リザーバタンクと、前記水リザーバタンクに接続している第1給水管から供給された飲用水から氷片を製造して貯蔵する製氷機と、前記水リザーバタンクに接続している第2給水管から供給された飲用水を所定の温度に加熱して貯留する温水タンクと、を備え、飲料を調理する飲料調理装置であって、
前記飲用水中に発生した気泡を破壊して消滅させる気泡除去手段を前記水リザーバタンクの前記第1給水管および/または第2給水管の接続部に設けたことを特徴とする飲料調理装置の水回路。
【請求項2】
前記気泡除去手段は、前記気泡に接触させる先端部を尖らせたエッジ状に形成し、気泡の表面張力の抵抗を低活性化させて破壊して消滅させることを特徴とする請求項1に記載の飲料調理装置の水回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−189022(P2010−189022A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33796(P2009−33796)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】