説明

飲料

【課題】サーデンペプチドに固有の不快臭を抑制した飲料を提供すること。
【解決手段】サーデンペプチドと、アルギン酸と多価アルコールのエステル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とする飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用しうるサーデンペプチドを配合した飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
サーデンペプチド(イワシペプチド)は、イワシ等の魚類に含まれるタンパク質由来のアミノ酸が2〜10個程度つながったオリゴペプチドを主成分とし、バリルチロシンを含有するペプチドである。このサーデンペプチドは、すぐれた血圧降下作用を有し、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、ドリンク剤等に配合されている(特許文献1参照)他、カルシウム吸収促進効果(特許文献2参照)等の効果が開示されている。また、サーデンペプチドは血圧が高めの方向けの保健機能食品として認可されており、種々の製品が発売されている。
【0003】
サーデンペプチドを配合した製品の従来販売されている形態は飲料、錠剤、粉剤等があるが、保健機能食品の効果を得るために継続して摂取するためには、容易に摂取できる飲料の形態が好ましい。
【0004】
しかし、サーデンペプチドは魚臭がするため、これを飲料として提供するには商品性に問題があった。従来販売されているサーデンペプチドを配合した飲料は、ミックスフルーツ等の風味にすることで魚臭のマスキングを試みているものの、嗅覚で感じる魚臭のマスキング効果は満足できるものではなかった。
【0005】
一方、ペプチド類を含有する飲料の風味改善技術としては、没食子酸誘導体、フラボノイド類等の酸化防止剤を配合することによるペプチド臭の抑制技術(特許文献3参照)等が知られているが、この技術で全てのペプチド類を含有する飲料の風味を改善できるわけではなかった。
【特許文献1】特開昭64−90128号公報
【特許文献2】特開平7−278008号公報
【特許文献3】特開2006−67874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明はサーデンペプチドを含有する飲料の風味、特に嗅覚で知覚される魚臭を改善し、継続的な摂取を可能とした飲料の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、サーデンペプチドを配合する飲料において、特定の高分子化合物を配合することにより、サーデンペプチドの魚臭を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明はサーデンペプチドと、アルギン酸と多価アルコールのエステル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とする飲料である。
【0009】
また、本発明はアルギン酸と多価アルコールのエステル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とするサーデンペプチドを配合した飲料の風味改善剤である。
【0010】
更に、本発明はサーデンペプチドを配合した飲料において、アルギン酸と多価アルコールのエステル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とする該飲料の不快臭を低減させる方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サーデンペプチドに起因する魚臭を抑制した風味良好な飲料を得ることができる。
【0012】
従って、本発明の飲料は継続的な摂取が可能となるので、その結果、サーデンペプチドの有する保健機能を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の飲料は、サーデンペプチドと共に、アルギン酸と多価アルコールのエステル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種が配合するものである。
【0014】
本発明の飲料に配合されるサーデンペプチドは、魚肉、特に好ましくはイワシから採肉機(デボーナー等)で肉質を分離して得たタンパク質を酵素等で分解して得られる、アミノ酸が2〜10個程度つながったオリゴペプチドを主成分とし、バリルチロシンを含有するペプチド組成物である。このサーデンペプチドは、例えば、魚肉を熱変性した後、中性ないしアルカリ性プロテアーゼ処理して加水分解し、酵素を失活せしめた後、分離処理して粗ペプチドを得、この粗ペプチドの水溶液をペプチド吸着樹脂に供してペプチドを該樹脂に吸着せしめた後、エタノール水溶液で溶出することにより製造することができる。このようなサーデンペプチドとしては前記のようにして製造されるものの他に、市販品も利用できる。市販品としては、サーデンペプチドY−2(商品名:仙味エキス株式会社製)等が挙げられる。本発明の飲料におけるサーデンペプチドの含有量は、高血圧に対する効果の点から、1回あたりの服用量がバリルチロシンとして0.1〜1mgになる量が好ましく、0.3〜0.8mgになる量がさらに好ましい。
【0015】
本発明の飲料に配合される高分子化合物のうち、アルギン酸と多価アルコールのエステルは、アルギン酸と多価アルコールとを反応させて得られるエステルである。このエステルを構成するアルギン酸としては、褐藻類から抽出されるものを特段の限定なく使用することができる。また、エステルを構成する多価アルコールとしては、一般的に使用されているものであれば特段の限定なく使用することができ、例えば、炭素数2〜4のものが好ましく、特にこれらの中でもエーテル結合を持たないものが好ましい。具体的な多価アルコールとしては、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール等が挙げられ、中でも親水性と親油性のバランスから、プロピレングリコールが特に好ましい。これらの多価アルコールとアルギン酸のエステルは何れも既知化合物であり、市販されているものを利用することができる。市販されているアルギン酸と多価アルコールのエステルとしては、例えば、キミロイドNLS−K(商品名:キミカ社製:アルギン酸とプロピレングリコールのエステル)等が挙げられる。
【0016】
本発明の飲料に配合される高分子化合物のうち、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体はプロピレンオキシドとエチレンオキシドの共重合体である。このポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体は、構造中に4〜200単位のエチレンオキシドおよび5〜100単位のプロピレンオキシドを含んでいるものが好ましく、特に構造中に30〜200単位のエチレンオキシドおよび10〜80単位のプロピレンオキシドを含んでいるものが好ましい。これらポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体としては、プルロニック系界面活性剤として市販されているものを利用することができる。市販されているプルロニック系界面活性剤としては、例えば、プルロニックF68(160単位のエチレンオキシドおよび30単位のプロピレンオキシド)、P123(42単位のエチレンオキシドおよび67単位のプロピレンオキシド)、P85(54単位のエチレンオキシドおよび39単位のプロピレンオキシド)、F127(196単位のエチレンオキシドおよび67単位のプロピレンオキシド)(いずれもADEKA社製)等が挙げられ、これらの中でもとりわけプルロニックF68が好ましい。
【0017】
本発明の飲料に配合される高分子化合物のうち、ポリビニルピロリドンとは、N−ビニル−2−ピロリドンの重合体であり、ビニルピロリドンの水溶液に少量のアンモニアを加えて過酸化水素触媒の存在下で重合することにより得られるものである。重合の際には、過酸化水素触媒のほかにも亜硫酸ナトリウム、過酸化物、アゾ触媒等も用いることができる。本発明に用いるポリビニルピロリドンのK値(25℃)は通常15〜100であり、好ましくは15〜80であり、より好ましくは15〜50である。ここでいうK値とは固有粘度のことでフィケンチャー(Fikentscher)のK値のことである。このK値は、例えば、文献(第十五改正 日本薬局方解説書 C-4112 廣川書店(2006))に記載の方法で計算することができる。
【0018】
本発明の飲料に配合される高分子化合物のうち、(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルとエステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステルの共重合体である。この共重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。前記炭素数1〜8のアルキル基としては、直鎖または分枝アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基または2−エチルヘキシル基がより好ましく、メチル基、エチル基、ブチル基が特に好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは共重合体中、1種以上、好ましくは2種を用いることが好ましい。また、この共重合体を構成するエステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノエチル基またはアルキルアンモニオエチル基が挙げられる。前記炭素数1〜8のアルキル基としては、直鎖または分枝アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基または2−エチルヘキシル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。具体的なエステル残基としては、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアンモニオエチル基またはトリメチルアンモニオエチル基が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の好ましい具体例としては、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸ブチルおよびメタアクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチルおよびメタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルの共重合体等が挙げられる。これらはそれぞれオイドラギットE100(商品名:レーム・ファルマ社製)、オイドラギットRS30D(商品名:レーム・ファルマ社製)等として市販されているので、これらを利用しても良い。
【0019】
本発明の飲料に配合する上記した高分子化合物の少なくとも1種の配合量は、サーデンペプチドのマスキングができる濃度であれば特に制限はないが、一般的に0.01W/V%以上、好ましくは0.1W/V%以上配合することにより、サーデンペプチドを含有する飲料の風味、特に嗅覚で知覚される魚臭を改善することができる。
【0020】
上記した本発明の飲料は、一般的な飲料の製造方法に準じ、各成分を混合することにより製造することができる。本発明の飲料には、茶様飲料、清涼飲料等の通常の飲料の他に、ドリンク剤、シロップ剤、液剤等の飲料と同等に扱われる経口製剤等も含まれる。
【0021】
また、本発明の飲料には上記成分の他に、本発明の効果を損なわない程度に、飲料に適宜配合される任意成分を添加することができる。任意成分としては、水、アルコール、ビタミンおよびその塩類、ミネラル、アミノ酸およびその塩類、ハーブおよびハーブエキス、生薬および生薬抽出物、ローヤルゼリー、カフェイン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、甘味剤、矯味剤、pH調整剤、保存剤、抗酸化剤、着色剤等の飲食品または製剤に一般に使用される物質が挙げられる。
【0022】
上記のようにして製造された本発明の飲料は、瓶(無色または有色ガラス製)、缶(アルミニウム製、スチール製等)、ポリエチレンテレフタレート製ボトル等の容器に封入して流通させることができる。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例、比較例および試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0024】
実 施 例
飲料の製造(1):
サーデンペプチドY−2(商品名:仙味エキス株式会社製:バリルチロシンを約150mg/100g含む)を0.15質量%の濃度で配合した水溶液に、表1に示す添加物を所定濃度で添加し、攪拌した。これらをガラス容器に充填し、キャップを施し、飲料(実施品1〜4)とした。これら飲料を65℃の恒温槽にて1日保管後、専門パネル4名により、下記の評価基準にて不快臭(魚臭)を評価した。結果を表1に示した。
【0025】
<官能評価の基準>
( 内容 ) (評点)
不快臭を非常に感じる :0点
不快臭をかなり感じる :1点
不快臭を感じる :2点
不快臭をやや感じる :3点
不快臭を僅かに感じる :4点
不快臭を感じない :5点
【0026】
【表1】

【0027】
表1から明らかなように、アルギン酸と多価アルコールのエステル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体またはポリビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、サーデンペプチドとを組み合わせて配合した飲料の不快臭は確かに顕著に軽減されることが官能評価により確認された。
【0028】
比 較 例
飲料の製造(2):
サーデンペプチドY−2(商品名:仙味エキス株式会社製:バリルチロシンを約150mg/100g含む)を0.15質量%の濃度で配合した水溶液に、表2に示した、他の飲料等において風味の改善効果が知られている各種成分を混合溶解し、攪拌した。これらをガラス容器に充填し、キャップを施し、飲料とした(比較品1〜10)。これら飲料を65℃の恒温槽にて1日保管後、専門パネル4名により、実施例と同様の評価基準にて不快臭(魚臭)を評価した。結果を表2に示した。なお、各添加物の配合量は、風味改善効果が得られ、かつ飲料として適している風味となる量である。
【0029】
【表2】

【0030】
表2よりも明らかなように、比較品の飲料は表1に示した特定の添加物を配合していないため、サーデンペプチド由来の不快臭を感じ、風味改善効果は限られたものだった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、サーデンペプチドを含有する飲料の風味、特に嗅覚で知覚される魚臭を改善することができる。
【0032】
従って、本発明は、サーデンペプチドを継続的な摂取を可能とし得る飲料に好適に用いることができる。

以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーデンペプチドと、アルギン酸と多価アルコールのエステル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とする飲料。
【請求項2】
アルギン酸と多価アルコールのエステル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とするサーデンペプチドを配合した飲料の風味改善剤。
【請求項3】
サーデンペプチドを配合した飲料において、アルギン酸と多価アルコールのエステル、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とする該飲料の不快臭を低減させる方法。


【公開番号】特開2009−254290(P2009−254290A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107425(P2008−107425)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【復代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
【Fターム(参考)】