説明

飲食品材料及びこれを用いた飲料

【課題】 本発明は、単独では独特の風味を有しているノニの果汁及びもろみ酢を所定割合で混合することによって得られ且つ味及び香りに優れた飲食品材料を提供する。
【解決手段】 本発明の飲食品材料は、ノニの果汁100重量部及びもろみ酢100〜400重量部を含有していることを特徴とし、ノニの果汁及びもろみ酢は共に優れた栄養成分を含有しており、高い栄養価を有していると共に、ノニの果汁やもろみ酢が単独では呈し得ない爽やかな芳香及びまろやかで爽やかな味を有しており飲用しやすいものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノニの果汁及びもろみ酢を含有する飲食品材料及びこれを用いた飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から沖縄特産の蒸留酒である泡盛が愛飲されている。この泡盛は、麹原料として古くからタイ米を用い、この米を洗米、蒸した後、麹原料に黒麹菌を散布して全米麹を製造する。
【0003】
そして、この麹に泡盛酵母及び水を加え、黒麹菌によって生成されたグルコースやスクロースといった単糖類、二糖類の糖を栄養源にして泡盛酵母によりアルコール発酵を行ってもろみを製造する。しかる後、もろみを蒸留機を用いて蒸留し、所定期間だけ熟成をさせることによって泡盛を製造している。
【0004】
一方、もろみの蒸留工程ではもろみ粕が発生し、このもろみ粕は、沖縄ではカンジェーと称されて古くから料理に使われたり、養豚用の飼料として活用されている。又、もろみ粕にはクエン酸やアミノ酸が豊富に含まれていることが分かっている。
【0005】
そこで、特許文献1には、もろみ粕中に酢酸菌やエチルアルコールを添加して酢酸発酵させて酢酸として利用することが記載され、特許文献2には、酒粕を濾過し、この濾過物に適量のあわもりを加えてクエン酸酒とすることが提案されている。
【0006】
更に、もろみ粕に圧搾、ろ過、殺菌を施してもろみ酢を製造することも行われている。しかしながら、もろみ酢は、特有の発酵臭や製造過程で生じる「蒸れ香」を有しており、他の原料との組合せが難しいといった問題点を有している。
【0007】
一方、ノニは、東南アジアからオセアニアにかけて自生し或いは栽培されている熱帯低灌木であり、日本においても沖縄で栽培され始めている。ノニの果実は、各種ビタミンやミネラルなどの栄養素を多く含み、ノニの発酵果汁には更に有用な成分が多く含まれており、「ハーブの女王」、「神からの贈り物」、「医者要らずの果実」と言われ、古くから愛用されている。更に、ノニの果実は、抗菌作用や抗ウィルス作用も有していることが知られている。
【0008】
しかしながら、ノニは、上述のように、栄養価が高く、免疫学的にも優れているものの、味や臭いがきつく、非常に飲用しにくいといった問題点を有している。
【0009】
【特許文献1】特開平6−335378号公報
【特許文献2】特開昭63−94965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、単独では独特の風味を有しているノニの果汁及びもろみ酢を所定割合で混合してなり且つ味及び香りに優れた飲食品材料及びこれを用いた飲料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の飲食品材料は、ノニの果汁100重量部及びもろみ酢100〜400重量部を含有していることを特徴とする。
【0012】
上記ノニは、学術名をモリンダシトリフォリア(Morinda citrifolia)といい、東南アジアからオセアニアにかけて自生し或いは栽培されている熱帯低灌木である。本発明の飲食品材料ではノニの果汁が用いられる。
【0013】
ノニの果汁は次の要領で得られる。先ず、ノニの果実を室温、具体的には25〜30℃にて2〜4カ月放置して発酵させる。しかる後、ノニの果実を絞って得られた果実液を室温、具体的には25〜30℃にて1〜2年間に亘って熟成させる。次に、熟成させた果実液をフィルターなどを用いて濾過して、果実液に混入しているノニの果実の皮(果皮)などの不要な固形分を除去することによってノニの果汁を得ることができる。
【0014】
このようにして得られたノニの果汁は、各種酵母菌、酵素、アミノ酸、中鎖脂肪酸、ポリフェノール類などを多く含んでおり、栄養価が高く、更に、スコポレチン、プゼロニン、ダムナカンタール、アントラキノンなども多く含んでおり、生理学的にも優れた効用を有する。
【0015】
しかしながら、ノニの果汁は、中鎖脂肪酸が遊離状態で含有されており、又、発酵熟成していることから独特の臭いや味を有しており、これがノニの果汁を飲用しにくい原因となっている。
【0016】
そこで、発明者らが鋭意研究したところ、ノニの果汁にもろみ酢を所定割合で混合すると、ノニの果汁が有している独特の臭いや味が改善されると共に、もろみ酢の有する特有の発酵臭や蒸れ香をも改善し、全体として爽やかな芳香を有し且つまろやかで爽やかな味を有する飲食品材料が得られることを見出した。
【0017】
もろみ酢とは、泡盛その他の蒸留焼酎を製造する過程で生じるもろみ粕を圧搾・ろ過などしたものをいう。そして、もろみ粕とは、もろみ(穀類又はいも類、これらのこうじ及び水を原料として発酵させたアルコール含有物をいう。)からアルコールを蒸留した際に生じた副産物をいう。
【0018】
もろみ酢を製造する要領の一例を以下に説明する。こうじ原料である米を洗米、蒸した後、麹原料に黒麹菌を散布して全米麹を製造する。そして、この麹に泡盛酵母及び水を加え、黒麹菌によって生成されたグルコースやスクロースといった単糖類、二糖類の糖を栄養源にして泡盛酵母によりアルコール発酵を行ってもろみを製造する。
【0019】
しかる後、もろみを蒸留機を用いて蒸留し、所定期間だけ熟成をさせることによって泡盛を製造する一方、本発明の飲食品材料では、もろみの蒸留により発生した副産物(残渣)であるもろみ粕を利用する。このもろみ粕には、上述したように、クエン酸やアミノ酸が多量に残存しており栄養価が高い。そして、もろみ粕に汎用の要領で圧搾、精製ろ過、殺菌工程を施すことによってもろみ酢を得ることができる。
【0020】
上述では、米と黒麹菌を用いて麹を製造し、この麹に泡盛酵母及び水を仕込んで泡盛を製造する工程で生じるもろみ粕を利用した場合を説明したが、次の要領でもろみ酢を製造してもよい。先ず、サツマイモなどの芋類、そば、麦などの穀類を蒸して原料処理を行った後、こうじ原料の一部に種麹を加えて混合した上で残りのこうじ原料を加えて麹を製造する。そして、この麹に焼酎酵母及び水を加え、麹菌によって生成されたグルコースやスクロースといった単糖類、二糖類の糖を餌にして酵母によりアルコール発酵を行ってもろみを製造する。しかる後、もろみを上記と同様の要領で蒸留し、もろみの蒸留により発生した残渣であるもろみ粕を得、もろみ粕から上記と同様の工程を経てもろみ酢を得ることができる。
【0021】
そして、本発明の飲食品材料では、上述したノニの果汁及びもろみ酢を含有している。飲食品材料中において、もろみ酢の含有量は、少ないと、ノニの果汁が有する特有の臭いや味を改善することができず、多いと、もろみ酢の有する特有の発酵臭や蒸れ香を生じるので、ノニの果汁100重量部に対して100〜400重量部に限定され、100〜300重量部が好ましく、150〜250重量部がより好ましい。
【0022】
このように、ノニの果汁及びもろみ酢を所定割合で混合することによって、ノニの果汁の特有の臭いの原因となっている中鎖脂肪酸と、もろみ酢が含有している微量の脂肪酸とが相乗的に作用し合い、ノニの果汁及びもろみ酢がそれぞれ有している独特の臭いが改善され、その結果、飲食品材料全体として爽やかな芳香が醸し出される。
【0023】
又、ノニの果汁は単独では独特の味を有しており飲用しにくいものであるが、ノニの果汁と、もろみ酢とを混合することによって、ノニの果汁が有している独特の味に、もろみ酢の酸味が加わり、ノニの果汁が有している味が改善、隠蔽されて、飲食品材料全体としてまろやかで爽やかな味を呈する。
【0024】
更に、本発明の飲食品材料は甘味料を含有していてもよい。このように飲食品材料に甘味料を含有させることによって、飲食品材料はコクのある味を呈する。このような甘味料としては、例えば、黒糖、グラニュー糖、糖蜜、粗糖、ブドウ糖、液糖、サトウキビを圧搾して得られるサトウキビ搾汁液などが挙げられ、黒糖、グラニュー糖が好ましく、黒糖単独での使用は黒糖の風味が出過ぎてしまい、飲食品材料本来の風味が損なわれることがあり、グラニュー糖単独での使用では飲食品材料のコク味のある風味が低下することがあるので、グラニュー糖と黒糖との併用がより好ましい。
【0025】
更に、グラニュー糖と黒糖とを併用する場合には、甘味料中において、黒糖の含有量が少ないと、飲食品材料の風味が低下することがあり、多いと、飲食品材料の味が、しつこくなることがあるので、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。同様の理由で、甘味料中において、グラニュー糖の含有量は、50〜95重量%が好ましく、60〜90重量%がより好ましい。
【0026】
甘味料として、サトウキビを圧搾して得られるサトウキビ搾汁液、粗糖、糖蜜及び黒糖を含有してなるサトウキビ糖も好ましい。
【0027】
飲食品材料中における甘味料の含有量は、少ないと、飲食品材料の味が淡白になることがあり、多いと、飲食品材料の甘味が過度になることがあるので、ノニの果汁及びもろみ酢の合計量100重量部に対して5〜10重量部が好ましい。
【0028】
本発明の飲食品材料を構成しているノニの果汁ともろみ酢とを混合する要領としては、特に限定されず、例えば、ノニの果汁と、もろみ酢とを混合して汎用の要領で均一に攪拌する方法などが挙げられる。
【0029】
本発明の飲食品材料は、この状態のまま或いは水などによって希釈することによって飲料として摂取することができる。この他に、本発明の飲食品材料は、ゼリー、飴、クッキー、パンなどに含有させてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の飲食品材料は、ノニの果汁100重量部及びもろみ酢100〜400重量部を含有していることを特徴とし、ノニの果汁及びもろみ酢は共に優れた栄養成分を含有しており、高い栄養価を有している。
【0031】
そして、ノニの果汁はこれ単独では独特の臭いや味を有し、もろみ酢はこれ単独では発酵臭や蒸れ香を有するものの、本発明の飲食品材料は、ノニの果汁及びもろみ酢を所定割合で混合することによって両者の有する独特の臭いや味を改善し、ノニの果汁やもろみ酢が単独では呈し得ない爽やかな芳香及びまろやかで爽やかな味を有しており飲用しやすいものとなっている。
【0032】
更に、上記飲食品材料において、甘味料を含有している場合には、本発明の飲食品材料は、更にまろやかな味を呈しており、更に飲用しやすいものとなる。
【0033】
又、上記飲食品材料において、グラニュー糖と黒糖とを含有している場合には、本発明の飲食品材料は、深みのある濃い味を呈する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(実施例1〜7、比較例1〜5)
沖縄県産のノニの果汁に、黒麹菌と泡盛酵母を用いて得られたもろみから得られたもろみ酢(有限会社 芳源製)、黒糖、グラニュー糖及びサトウキビ糖を表1に示した重量割合となるように加えて均一に攪拌して飲料を得た。なお、表1中における単位は全て「重量部」である。なお、サトウキビ糖は、サトウキビを圧搾して得られるサトウキビ搾汁液、粗糖、糖蜜及び黒糖を含有していた。
【0035】
得られた飲料の味と臭いを確認したところ、実施例1、2の飲料は、ノニの果汁やもろみ酢に起因した味や臭いはなく、全体として爽やかな芳香と、まろやかで爽やかな味を呈していた。実施例3の飲料は、もろみ酢に起因した臭いが僅かにしたが殆ど気になることはなく、全体として爽やかな芳香と、まろやかで爽やかな味を呈していた。実施例4、5、7の飲料は、ノニの果汁やもろみ酢に起因した味や臭いはなく、全体として爽やかな芳香と、まろやかで爽やか且つ深みのある濃い味を呈していた。実施例6の飲料は、ノニの果汁やもろみ酢に起因した味や臭いはなく、全体として爽やかな芳香と、まろやかで爽やか且つ少し深みのある味を呈していた。
【0036】
又、比較例1の飲料は、ノニの果汁の有する独特の味と臭いを呈しており、極めて飲用しにくいものであった。比較例2、3の飲料は、ノニの果汁の有する独特の味と臭いを呈しており、飲用しにくいものであった。比較例4、5は、もろみ酢が有する独特の発酵臭及び蒸れ香を呈していた。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニの果汁100重量部及びもろみ酢100〜400重量部を含有していることを特徴とする飲食品材料。
【請求項2】
甘味料を含有していることを特徴とする請求項2に記載の飲食品材料。
【請求項3】
甘味料が黒糖を含有していることを特徴とする請求項2に記載の飲食品材料。
【請求項4】
甘味料が、グラニュー糖と黒糖とを含有していることを特徴とする請求項2に記載の飲食品材料。
【請求項5】
甘味料が、サトウキビ糖を含有していることを特徴とする請求項2に記載の飲食品材料。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の飲食品材料を含有することを特徴とする飲料。

【公開番号】特開2010−148417(P2010−148417A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329529(P2008−329529)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(500229086)有限会社 芳源 (2)
【Fターム(参考)】