説明

飲食料品用機能性エキス及び加工食料品の製造方法

【課題】従前は廃棄処分されていたジャバラの果皮の活用、特に飲料品に関し、ジャバラ果皮の苦味の除去、また、花粉症などに有効とされるナリルチンを如何に有効に抽出するかという課題があった。
【解決手段】ジャバラの果皮を乳を含む液中で煮沸加熱する第1工程と、当該第1工程後の果皮を洗浄する第2工程と、当該第2工程後の果皮を6時間以上水中に浸漬する第3工程と、当該第3工程後の液体を滅菌処理する第4工程とを経ることによって、上記課題の解決されたジャバラ飲食料品機能性エキスが得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類、特にジャバラの果皮を利用した飲食料品用機能性エキス及び加工食料品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジャバラに花粉症などのアレルギーを引き起こすとされる脱顆粒現象の抑制効果があるとされるナリルチンが豊富に含まれていることが判ってきている(例えば、非特許文献1参照)。そのため、ジャバラを利用した飲料品、食料品の開発が行われ、すでに関連商品も市販されている。例えば、ジャバラの果汁を中心とした飲料品であり、又はジャバラ果肉、果汁を含む加工食品である。
【0003】
しかしながら、既市販商品はいずれも、ジャバラの果肉、果汁を利用するもので、その果皮は廃棄処分されることが多かった。
【0004】
本発明は、ジャバラの果皮の有効利用をもっぱら重視し、種々検討、試行を繰り返した結果、果皮の機能性成分を十分に利用できるエキスの開発に成功した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】和歌山県工業技術センター テクノリッジ261、P7(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ジャバラの果皮には特に苦味があり、果皮の利用には苦味を除去する技術が必要であった。また、有効成分であるナリルチンを如何に有効に抽出するかという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明請求項1に係る発明は、ジャバラの果皮を乳を含む液中で煮沸加熱する第1工程と、当該第1工程後の果皮を洗浄する第2工程と、当該第2工程後の果皮を水中に浸漬する第3工程と、当該第3工程後の液体を滅菌処理する第4工程とを備えたことを特徴とする飲食料品用機能性エキスの製造方法を提供する。
【0008】
詳細は後述するが、前記第1工程により苦味成分であるリモニンの除去が主として行われ、前記第3工程によりナリルチンの抽出が十分に行われる。
【0009】
本発明請求項2に係る発明は、ジャバラの果皮を乳を含む液中で煮沸加熱する第1工程と、当該第1工程後の果皮を洗浄する第2工程と、当該第2工程後の果皮を6時間以上水中に浸漬する第3工程と、当該第3工程後の液体を滅菌処理する第4工程とを備えたことを特徴とする飲食料品用機能性エキスの製造方法を提供する。本項発明は、第3工程の水中浸漬時間の望ましい時間を規定するものである。
【0010】
本発明請求項3に係る発明は、柑橘類の果皮を乳を含む液中で煮沸加熱する第1工程と、当該第1工程後の果皮を洗浄する第2工程と、当該第2工程後の果皮を水中に浸漬する第3工程と、当該第3工程後の液体を滅菌処理する第4工程とを備えたことを特徴とする飲食料品用機能性エキスの製造方法を提供する。本項発明は、ジャバラに代えて広く柑橘類に本発明が適用できるものである。
【0011】
本発明請求項4に係る発明は、前記第1工程における煮沸加熱する時間が5分〜30分であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の飲食料品用機能性エキスの製造方法を提供する。本項発明は、第1工程における煮沸過熱する時間の望ましい時間を規定するものである。
【0012】
本発明請求項5に係る発明は、ジャバラの果皮を乳を含む液中で煮沸加熱する第1工程と、当該第1工程後の果皮を洗浄する第2工程と、当該第2工程後の果皮を水中に浸漬する第3工程と、当該第3工程後の果皮を食品に添加する第4工程とを備えたことを特徴とする加工食料品の製造方法を提供する。本項発明は、第3工程後の果皮の利用に関し、後述するように、第3工程後の果皮は苦味が除去され、且つナリルチンも尚含むため、例えば、パン、タルト、ケーキなどの加工食料品に添加することを提案するものである。
【0013】
本発明請求項6に係る発明は、請求項1、2、3または4に記載の方法により製造された飲食料品用機能性エキスを提供する。
【0014】
本発明請求項7に係る発明は、請求項5に記載の方法により製造された加工食料品を提供する。
【発明の効果】
【0015】
前述のような手段により、苦味成分であるリモニンが除去され、かつナリルチンが十分に抽出された飲食料品用エキスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例における製造工程中のジャバラ果皮中のリモニン含量の変化を示す図である。
【図2】本発明の一実施例における製造工程中のジャバラ浸漬液中のナリルチン量の浸漬時間による変化を示す図である。
【図3】本発明の一実施例における製造工程中の牛乳処理液およびジャバラ浸漬液中のリモニン量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例につき説明する。先ず、ジャバラ果実を粉砕し、果汁、果肉を主とする中味は別途利用する。残された果皮20gを牛乳の中に浸る程度に入れて10分間煮沸加熱する(第1工程)。
【0018】
前記第1工程後、果皮を水にて洗浄する(第2工程)。この第2工程処理は、果皮に付着した牛乳を除去するためである。
【0019】
牛乳分が適切に除去されたところで当該果皮を水(100mL)中に浸漬して冷蔵庫中で放置する(第3工程)。
【0020】
第3工程後の浸漬液を加熱して滅菌処理する(第4工程)。
【0021】
尚、前記第1工程における煮沸加熱時間は10分間に限定されることは当然ないが、およそ5分〜30分程度が望ましい。
【0022】
また、第1工程における処理により、果皮とじょうのうの分離が促進されているものと推測される。苦味の成分とされる果皮中のリモニンの含有量は図1に示すとおりであり、ジャバラ果皮20gを20mLの牛乳の中に入れて第1工程を経たところ、処理前において、リモニン含量は、276.8μg/g dry-peelだったものが、第1工程処理後は4
5.0μg/g dry-peelとなった。その後第3工程による水中浸漬時間によるリモニン含量は、浸漬24時間で15.0μg/g dry-peel、同48時間で11.5μg/g dry-peel、同72時間で7.4μg/g dry-peelとなった。
【0023】
次に、第3工程における水中への浸漬時間に関連し、浸漬液中のナリルチンの量を測定した結果が図2に示すとおりである。
【0024】
図2より判るように、6時間の浸漬でナリルチン量は600μg/mL程度であり実用上は6時間以上の浸漬でよい。さらに、12時間程度浸漬するとナリルチン量が1000μg/mL程度となり、12時間以上浸漬してもナリルチンの含有量はほとんど一定であり、製造経済上は12時間程度浸漬すれば十分であることが判る。
【0025】
尚、第3工程経過後の浸漬液のリモニン量は図3に示すとおりで、24時間以上浸漬でおよそ15μg/mL前後であり、本エキスを飲食料品に添加しても、苦味による問題はない程度となっている。
【0026】
尚、第3工程後再度、再再度、同果皮を第3工程処理をしてもナリルチン量は相当量確保できることも判明した。
【0027】
また、前述の実施例では、冷蔵庫中で浸漬放置したが、これは主として果皮の腐敗防止のためであり、必ずしも冷蔵庫中での浸漬放置が必須要件ではない。
【0028】
更にまた、上記実施例はジャバラを使用したものであるが、柑橘類の中でナリルチンを相当程度含む、例えば、橙などの果皮についても上記実施例と同様な処理によって、目的とする飲食料品エキスが得られることは十分に根拠のあることである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、従来は廃棄物とされていたジャバラ等の果皮の有効利用、特に花粉症に効果がありとされるナリルチンを豊富に含む飲食料品として活用される途が開けたことで、その産業上の効果は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャバラの果皮を乳を含む液中で煮沸加熱する第1工程と、当該第1工程後の果皮を洗浄する第2工程と、当該第2工程後の果皮を水中に浸漬する第3工程と、当該第3工程後の液体を滅菌処理する第4工程とを備えたことを特徴とする飲食料品用機能性エキスの製造方法。
【請求項2】
ジャバラの果皮を乳を含む液中で煮沸加熱する第1工程と、当該第1工程後の果皮を洗浄する第2工程と、当該第2工程後の果皮を6時間以上水中に浸漬する第3工程と、当該第3工程後の液体を滅菌処理する第4工程とを備えたことを特徴とする飲食料品用機能性エキスの製造方法。
【請求項3】
柑橘類の果皮を乳を含む液中で煮沸加熱する第1工程と、当該第1工程後の果皮を洗浄する第2工程と、当該第2工程後の果皮を水中に浸漬する第3工程と、当該第3工程後の液体を滅菌処理する第4工程とを備えたことを特徴とする飲食料品用機能性エキスの製造方法。
【請求項4】
前記第1工程における煮沸加熱する時間が5分〜30分であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の飲食料品用機能性エキスの製造方法。
【請求項5】
ジャバラの果皮を乳を含む液中で煮沸加熱する第1工程と、当該第1工程後の果皮を洗浄する第2工程と、当該第2工程後の果皮を水中に浸漬する第3工程と、当該第3工程後の果皮を食品に添加する第4工程とを備えたことを特徴とする加工食料品の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2、3または4に記載の方法により製造された飲食料品用機能性エキス。
【請求項7】
請求項5に記載の方法により製造された加工食料品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−223188(P2012−223188A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−70853(P2012−70853)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(508056752)
【Fターム(参考)】