説明

飼料組成物の製造方法

【課題】生理活性物質のルーメンバイパス性を向上し、水に対する溶出性を減少させ、また、栄養価の高い素材で被覆することができ、更に、第四胃での消化および吸収性が高く、より安価な飼料組成物を得ることができる、飼料組成物の製造方法を提供することができる。
【解決手段】脂肪酸、及び該脂肪酸100重量部に対し、タンパク質飼料、アミノ酸類及びビタミン類から選ばれる少なくとも一種1〜600重量部と、金属酸化物及び/又は金属水酸化物5〜50重量部とを、少なくとも原料供給帯域、混錬・反応帯域及び冷却帯域を有するエクストルーダーを用いて混合及び反応させる飼料組成物の製造方法、該製造方法により得られる飼料組成物、及び該飼料組成物を含有する畜産用飼料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛などの反芻動物、養殖魚などの飼料に用いられる飼料組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エネルギー補給や体調の維持、増体速度の加速化、産乳の促進、肉質改善などを目的として、家畜や養殖魚にタンパク質飼料を給餌することがよく行われている。また、これら飼料には特定のタンパク質原料が用いられるため、飼料中に含まれるアミノ酸組成に片寄りができる場合があることから、適用する動物にとって必要なアミノ酸が不足する場合がある。さらに、栄養補給や栄養成分の利用促進、代謝機能の調節などの目的がある。そこで単体アミノ酸やタンパク質を添加し、不足し易いアミノ酸を補足する方法がとられる。また、従来より欠乏障害予防や、生産性の向上に家畜や養殖魚にビタミンを給餌することがよく行われている。
牛などの反芻動物においては、タンパク質飼料やアミノ酸、ビタミンをそのまま経口投与すると第一胃内に共生する微生物によって変質、分解が行われ、タンパク質、アミノ酸、ビタミンなどが本来吸収されるべき第四胃以降の消化器官に達することがないばかりか、アンモニア等の有害な物質が多量に発生して反芻動物の健康を害することがある。また、同様に養殖魚用の飼料の場合は、親水性のタンパク質やアミノ酸、ビタミンが水中に溶解してしまい、飼料としての効率が低下するという問題がある。さらに、BODの増大など環境汚染の問題も起こりうる。
【0003】
このような問題を解決するため、飼料を保護物質で被覆し、ペレット化することによりルーメンバイパス性あるいは水に対する低溶出性を付与したりする方法がとられることがある。
このような方法として、例えば、特許文献1では保護物質として硬化植物脂肪酸や糠ワックスを提案しており、処理例として、例えばDL−メチオニン、カオリン、ステアリン酸をスラリーとし、これを遠心押し出し装置を用いて、水素添加した植物脂肪で被覆している。また、特許文献2には、アミノセルロース類や金属水酸化物類などで被覆することによりルーメンバイパス性を付与する方法が提案されている。また、これ以外にもルーメンバイパス性を付与する方法として、特許文献3には、配合組成を色々変え、高融点の油脂類や脂肪酸あるいは脂肪酸塩と溶融混合し、冷却後造粒する方法が、また特許文献4等には脂肪酸金属塩の製造工程でタンパク質飼料やアミノ酸と混合し被覆する方法が提案されている。
しかし、タンパク質飼料およびアミノ酸を従来のようにコーティングするだけでは第一胃バイパス性および水への溶出を抑制することが不充分であり、保護物質で被覆する方法では保護物質が栄養源とならなかったり、第四胃以降における分解性および消化性が悪い、また被覆に繁雑な操作や時間を要したり、連続的な製造ができないため生産性が劣り製品が高価になる、といった実施上の問題もあった。
【0004】
【特許文献1】特公昭48−12785号公報
【特許文献2】特開昭59−198946号公報
【特許文献3】特開昭63−313546号公報
【特許文献4】特開平9−299038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、生理活性物質のルーメンバイパス性を向上し、水に対する溶出性を減少させ、また、栄養価の高い素材で被覆することができ、更に、第四胃での消化および吸収性が高く、より安価な飼料組成物を得ることができる、飼料組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、脂肪酸、及び該脂肪酸100重量部に対し、タンパク質飼料、アミノ酸類及びビタミン類から選ばれる少なくとも一種1〜600重量部と、金属酸化物及び/又は金属水酸化物5〜50重量部とを、少なくとも原料供給帯域、混錬・反応帯域及び冷却帯域を有するエクストルーダーを用いて混合及び反応させる飼料組成物の製造方法、該製造方法により得られる飼料組成物、及び該飼料組成物を含有する畜産用飼料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により得られる飼料組成物を反芻動物に給餌することによりルーメンバイパス性に優れ、また、養殖魚用としても水への溶出が抑えられるため効率的な給与を行うことができ、更に、栄養価の高い素材で被覆することができ、第四胃での消化および吸収性の高い飼料組成物を与えることができる。また、連続製造によりより安価な飼料組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、脂肪酸、及び該脂肪酸100重量部に対し、タンパク質飼料、アミノ酸類及びビタミン類から選ばれる少なくとも一種1〜600重量部と、金属酸化物及び/又は金属水酸化物5〜50重量部とを、少なくとも原料供給帯域、混錬・反応帯域及び冷却帯域を有するエクストルーダーを用いて混合及び反応させる飼料組成物の製造方法に関する。
上記混合及び反応を行うエクストルーダーは、加圧押出機の一種であり、円筒内に回転する1個のスクリューを挿入した1軸形式のものと、断面が8の字型の筒内に、同方向または異方向に回転する2個のスクリューを挿入した2軸形式のものが使用可能である。特に、本発明においては、混練能力の点から2軸形式のものが好ましく用いられる。この2軸エクストルーダーのスクリューは、通常、送り込み、リバース(逆行)、ニーディング(練り)などの操作を行うことの出来る複数の部品を適宜組み合わせてなるように設計されており、本発明においてはこれらの部品を適宜組み合わせたものを使用することができる。なお、本発明において、エクストルーダーにおける「混合」は、「混合及び/又は混練」を指すものとする。
【0009】
図1には本発明の製造方法に用いることのできるエクストルーダーの一例の断面図を示す。本発明で用いることのできるエクストルーダーの円筒部は、例えば原料供給帯域A、混練・反応帯域B、冷却帯域Cなどに相当する複数のバレルに分れており、それぞれのバレルの外周には外部ジャケット2、3、4が装備され、バレル毎に上記帯域のいずれにも適応できるよう加熱・冷却のいずれも可能な仕様をとることができる。
上記のようなエクストルーダーを用いることによって、従来の技術ではなし得なかった脂肪酸金属塩の反応工程を伴う生理活性物質のルーメンバイパス化を連続式で短時間に行うことが可能になった。
【0010】
本発明においては、上記エクストルーダーを用いて、脂肪酸100重量部と、タンパク質飼料、アミノ酸類及びビタミン類から選ばれる少なくとも一種1〜600重量部と、金属酸化物及び/又は金属水酸化物5〜50重量部とを混合、反応させる。このような方法により、ルーメン微生物により分解されやすく水にも溶解しやすいタンパク質飼料、アミノ酸類、ビタミン類等の表面を脂肪酸で被覆することができ、また、その後、金属イオンと反応させ、脂肪酸塩とすることでルーメン微生物の攻撃や水への溶出を抑えることができる。
【0011】
本発明において用いる脂肪酸としては、例えば、牛脂、豚脂、チキン油、魚油などの動物油、コーン油、紅花油、ゴマ油、ボラージ油、菜種油、大豆油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヒマワリ油、アマニ油などの植物油などに由来する油脂のうちから選ばれた1種以上を加水分解して得られた脂肪酸あるいはその蒸留物を用いることができ、また、ステアリン酸、オレイン酸などの単体脂肪酸をいずれも用いることもできるが、家畜飼料として大量に入手可能であること、また、BSEの影響により反芻動物への動物油の使用が敬遠されている点から、コーン油、菜種油、大豆油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、アマニ油などの植物油を加水分解して得られた脂肪酸あるいはその蒸留物が好ましい。
【0012】
本発明で用いるタンパク質飼料は、エネルギー補給、体調維持、体重増加、乳質改善、乳タンパク質の向上、産乳促進などの生物学的活性のいずれかを示すものであればよく、一般に飼料用として用いられるものがいずれも用いられる。例えば、大豆粕、綿実粕、落花生粕、アマニ粕、コーングルテンミール、脱脂大豆、全脂大豆、菜種粕、カゼイン、ホエータンパク、脱脂粉乳等が挙げられる。これらタンパク質飼料は、脂肪酸100重量部あたり1〜600重量部の範囲で用いられ、好ましくは5〜500重量部の範囲で用いられる。上記範囲内であれば、栄養価として充分であり、また、脂肪酸塩によるコーティングが十分であり、優れたルーメンバイパス性あるいは水に対して低い溶出性を実現できる。
【0013】
本発明で用いるアミノ酸類としては、一般の飼料に用いられるリジン、メチオニン、グルタミン酸、バリン、ロイシン、トリプトファン等が挙げられ、家畜の制限アミノ酸として、リジン、メチオニンが好ましい。アミノ酸類の使用量は、脂肪酸100重量部あたり1〜600重量部の範囲にあり、好ましくは5〜500重量部の範囲で用いられる。上記範囲内であれば、アミノ酸の栄養素としての効果が得られ、また、コーティングも充分であり、優れたルーメンバイパス性あるいは水に対して低い溶出性を実現できる。
【0014】
本発明で用いるビタミン類としては、一般の飼料に用いられるアスコルビン酸、ナイアシン、コリン、リボフラビン、ビタミンA、β−カロチン、ビタミンE、パントテン酸などが挙げられ、ルーメン中でのバイパス性または水中への非溶解性を有する点から、水溶性ビタミンであるアスコルビン酸、ナイアシン、コリン、リボフラビン、パントテン酸などが好ましい。ビタミン類の使用量は、脂肪酸100重量部あたり1〜600重量部の範囲にあり、好ましくは5〜500重量部の範囲で用いられる。上記範囲内であればビタミンの栄養素としての効果が十分であり、また、コーティングも充分であり、優れたルーメンバイパス性あるいは水に対して低い溶出性を実現できる。
【0015】
本発明における金属酸化物及び/又は金属水酸化物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物などから選ばれる1種又は2種以上が用いられる。
脂肪酸塩の製造には、好ましくは油性の脂肪酸と固体の金属酸化物あるいは金属水酸化物が用いられ、それら2者の反応により脂肪酸塩が得られる。従って、反応には、充分な攪拌、混合が必要となることを考慮すれば、上記金属酸化物あるいは金属水酸化物としては微粉状の形態を有するものが好ましく用いられる。その使用量は脂肪酸100重量部あたり5〜50重量部の範囲にあることが好ましく、より好ましくは5〜40の範囲である。
【0016】
図1によれば、本発明の製造方法は、例えば、脂肪酸100重量部と、金属酸化物あるいは金属水酸化物5〜50重量部、タンパク質飼料、アミノ酸類及びビタミン類の中から選ばれる少なくとも1種1〜600重量部とを、前記エクストルーダーを用いて混合反応させるが、この際、エクストルーダーの上記原料供給帯域Aの原料供給口1に上記各原料を適宜導入し、これらを混練・反応帯域Bにおいて混合、反応させて脂肪酸塩を得るとともに、タンパク質飼料、アミノ酸類及びビタミン類から選ばれる少なくとも一種を上記得られる脂肪酸塩によって被覆し、冷却帯域Cにおいてこれを粉砕可能な硬さになる温度にまで冷却することにより行うことができる。
【0017】
上記混合は、少なくとも混練・反応帯域で行うことが必要であるが、より反応を効率よく進める点から、原料供給帯域及び/又は冷却帯域でも行うことが好ましい。
また、混練・反応帯域におけるスクリューは、上述のように送り込み、リバース(逆行)、ニーディング(混練)などの操作を行うことのできる複数の部品を適宜組み合わせたものが使用でき、またそれにより混練・反応帯域中の反応体の滞留時間、混合程度を適宜調整することができる。
【0018】
本発明の製造方法は、上記原料供給帯域の温度を、使用する原料脂肪酸の融点の点から、好ましくは10〜100℃、より好ましくは20〜80℃とし、混練・反応帯域の温度を、より反応を効率よく進める点から、好ましくは80〜350℃、より好ましくは100〜250℃とし、冷却帯域の温度を、生成物を迅速に冷却して固体化するために、好ましくは−20〜5℃、より好ましくは−20〜0℃として行うことができる。各帯域において上記の温度範囲内にあれば、本発明の目的とする効果を十分得ることができる。
【0019】
また、エクストルーダー内における反応時間は、その目的に応じて適宜設定できるが、本発明の前記目的を達成するためには、例えば、5〜120秒、更に10〜100秒であることが好ましい。このような反応時間は、反応体を混練・反応帯域に好ましくは上記時間滞留させることにより達成することができる。
このようにして得られた飼料組成物は、顆粒状あるいは粉末状として使用できるが、小量の粘結剤を加えて圧縮しペレットとして用いてもよい。また、エクストルーダー先端部に成型帯域を設けて、成型しながら製造することも可能である。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1〜6
表1に示す配合で飼料を調製した。すなわち、まず60℃に加温溶解したパーム油脂肪酸、水酸化カルシウム、タンパク質飼料またはアミノ酸類、ビタミン類を個別に2軸式エクストルーダー((株)スエヒロEPM製 EA−100、製造能力 250kg/hr)の原料供給帯域に投入し、上記各原料の混合、及び脂肪酸と水酸化カルシウムとの反応を行った。2軸式エクストルーダーの製造条件について表1に示した。なお、エクストルーダーの各帯域の温度は設定値である。得られた飼料組成物を粉砕機にて顆粒としたものを各々試料1〜6とした。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例7〜12
表2に示す割合で飼料を調製した。すなわち、60℃に加温溶解した脂肪酸、水酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム、タンパク質飼料またはアミノ酸類を個別に2軸式エクストルーダー((株)スエヒロEPM製 EA−100、製造能力 250kg/hr)の原料供給帯域に投入し、タンパク質飼料またはアミノ酸類の混練、及び脂肪酸金属塩の反応を行った。2軸式エクストルーダーの製造条件について表2に示した。なお、エクストルーダーの各帯域の温度は設定値である。得られた飼料組成物を粉砕機にて顆粒としたものを各々試料7〜12とした。
【0023】
【表2】

【0024】
比較例1〜3
湿式直接法により表3に示す配合で飼料を調製した。すなわち、まず攪拌機およびジャケット付き1000L容反応釜に水500kg、水酸化カルシウム、タンパク質飼料、アミノ酸類を加え均一に分散させた。この分散液を60℃に加温した後、これにあらかじめ60℃に加温し界面活性剤、タンパク質飼料またはアミノ酸類を溶解または分散させた脂肪酸を30分程かけて滴下し、その後1時間程かけて熟成反応させた。1時間後に加圧濾過機を用いて6回ほど濾過して含水率約70%の反応生成物を得た。これを、連続式熱風乾燥で乾燥して得られた飼料組成物を粉砕機にて顆粒としたものを試料13〜15とした。
【0025】
【表3】

【0026】
比較例4及び5
乾式直接法により表4に示す配合で飼料を調製した。すなわち、攪拌機およびジャケット付き1000L容反応釜に脂肪酸、界面活性剤、タンパク質飼料またはビタミン類を加えよく攪拌して80℃に加温した後、酸化カルシウムを加えてよく攪拌し、さらに水を加えてよく攪拌し、反応が始まって固体化する前に攪拌を止めた。1時間ほど放置した後に得られた固形分を、連続式温風乾燥機で乾燥して調製した。得られた飼料組成物を粉砕機にて顆粒としたものを試料16及び17とした。
【0027】
【表4】

【0028】
比較例6〜8
乾式直接法により表5に示す配合で飼料を調製した。すなわち、界面活性剤を溶解してあらかじめ60℃に加温した脂肪酸、酸化カルシウム、タンパク質飼料またはアミノ酸類、水20kg/hrを連続式ミキサーに投入し、数秒後にミキサー出口から出てきた混合物をコンベアーに流してコンベアー上で移動させながら反応させた。コンベアー上で移動させながら1時間放置して得られた反応物を粉砕機にて顆粒としたものを試料18〜20とした。試料20は大豆油脂肪酸を使用していることに起因するコンベア上での反応の遅延および冷却固化遅延がおきるため、製造効率が低下した。
【0029】
【表5】

【0030】
比較例9及び10
表6のように配合したものを各々、以下の方法により合成した。すなわち、あらかじめ合成したパーム油脂肪酸カルシウムとタンパク質飼料、粘結剤をベンチニーダーに仕込み、最後に水5kgを加え、70℃に加温保持しながら1時間混練した後、0.9mmφの目開きのスクリーンを有する押し出し機を用いて得られたものを連続式温風乾燥機で乾燥した。これらをそれぞれ試料21及び22とした。
【0031】
【表6】

【0032】
比較例11及び12
表7に示すように配合したものを各々、以下の方法により合成した。すなわち、パーム硬化油とタンパク質飼料、ビタミン類、界面活性剤をベンチニーダーに仕込み、最後に水50重量部を加え、70℃に加温保持しながら1時間混練した後、0.9mmφの目開きのスクリーンを有する押し出し機を用いて得られたものを80℃で3時間乾燥した。これらをそれぞれ試料23及び24とした。
【0033】
【表7】

【0034】
比較例13及び14
表8に示すように配合したものを各々、以下の方法により合成した。すなわち、アミノ酸類またはビタミンを芯物質として流動コーティング装置に仕込み、70℃に加温したパーム硬化油と界面活性剤混合物を芯物質に噴霧しながら冷風にて冷却してコーティングした。これらをそれぞれ試料25及び26とした。
【0035】
【表8】

【0036】
試料1〜26を製造した際に要した所要時間および製造量、歩留まり(%)から、一日あたりの生産性を算出し、表9及び表10に示した。試料1〜12の生産性は試料13〜26に比べて優れていた。
【0037】
【表9】

【0038】
【表10】

【0039】
IN VITROにおける溶出性試験
試料1〜26の各々を用いて以下の方法で溶出性の試験を行った。まず、各試料につきタンパク質飼料類を混合した試料1〜3、7、8、10、13、14、16、18、19、21、22及び23は各々ケルダール法により窒素含量を、アミノ酸類およびビタミン類を混合した試料4〜6、9、11、12、15、17、20及び24〜26は各々高速液体クロマトグラフ法により目的とするアミノ酸およびビタミン(いずれもAとする)を予め求めた。次に各試料5gを蒸留水200mLに浸漬し、39℃で12時間振盪した後、濾布(300mesh)にて濾過を行ない、濾過残渣中に残存する窒素またはアミノ酸、ビタミン含量(B)を同じく求めた。以下の式より溶出率を算出した。
溶出率(%)=(A−B)/A*100
この結果を表11に示した。
【0040】
【表11】

以上の結果から試料1〜12は試料13〜26に比べ溶出率が低くなっており、水に対する低溶出性が付与された飼料であることが判った。
【0041】
フィステル牛でのルーメンバイパス性試験
フィステル装着ホルスタイン種5頭を用いて、試料1〜26のルーメンバイパス率について試験を行った。まず各試料の窒素またはアミノ酸、ビタミン含量(A)を求めた。次に前もって体重の2%に相当する市販飼料で予備飼育したフィステル装着ホルスタイン種5頭それぞれに、試料1〜26を各々5gナイロンバック(300mesh)に入れた。第一胃内浸漬12時間後にルーメンからナイロンバックを取り出して120℃で乾燥後、残渣中の窒素またはアミノ酸、ビタミン含量(B)を求めた。バイパス率は以下の式により算出した。
バイパス率(%)=B/A*100
各試料につき5頭を用いて計5回の試験を行ない、その平均値を算出した。この結果を表12に示した。
【0042】
【表12】

以上の結果から試料1〜12は試料13〜26に比べバイパス率が高くなっており、反芻動物に於いて効率的な飼料組成物であることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の製造方法により得られる飼料組成物を反芻動物に給餌することによりルーメンバイパス性に優れ、また、養殖魚用としても水への溶出が抑えられるため効率的な給与を行うことができることなどから、牛などの反芻動物、養殖魚などの飼料に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の製造方法に用いることのできるエクストルーダーの一例の断面図。
【符号の説明】
【0045】
A・・・・・・原料供給帯域
B・・・・・・混練・反応帯域
C・・・・・・冷却帯域
1・・・・・・原料供給口
2、3、4・・外部ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸、及び該脂肪酸100重量部に対し、タンパク質飼料、アミノ酸類及びビタミン類から選ばれる少なくとも一種1〜600重量部と、金属酸化物及び/又は金属水酸化物5〜50重量部とを、少なくとも原料供給帯域、混錬・反応帯域及び冷却帯域を有するエクストルーダーを用いて混合及び反応させる飼料組成物の製造方法。
【請求項2】
エクストルーダーの原料供給帯域の温度が10〜100℃、混練・反応帯域の温度が80〜350℃であり、かつ冷却帯域の温度が―20〜5℃である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
脂肪酸の融点が−50〜70℃の範囲にある、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
金属酸化物及び金属水酸化物が、それぞれカルシウム又はマグネシウムの酸化物又は水酸化物である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られる飼料組成物。
【請求項6】
請求項5記載の飼料組成物を含有する畜産用飼料。

【図1】
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【公開番号】特開2008−136447(P2008−136447A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328166(P2006−328166)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(591247868)ニチユソリューション株式会社 (6)
【Fターム(参考)】