説明

飽和蒸気生成方法及びその装置と蒸気加熱方法及びその装置。

【課題】 低温の飽和蒸気の生成方法及びその装置と、その飽和蒸気を用いた加熱用の、例えば、食品加工用等の蒸気加熱装置の提供。
【解決手段】 本発明は、蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体から一次蒸気を生成する一次蒸気発生手段と、飽和蒸気が生成される母体となる二次液体を備えた飽和蒸気用容器と、前記二次液体中に前記一次蒸気を噴出させる蒸気噴出手段とを備えたことを特徴とする。
又、蒸気噴出手段は、噴出間隙を形成する相対の縁が平行に形成された蒸気噴出部を有することを特徴とする。
又、蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体から生成された一次蒸気を、飽和蒸気が生成される母体となる二次液体中に噴出させて、前記二次液体中を通過させることにより飽和蒸気を生成させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和蒸気を発生させる飽和蒸気生成の方法及びその装置と、その飽和蒸気を用いた蒸気加熱方法及びその装置例えば食品加工用の蒸気加熱装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボイラ等の蒸気発生装置、例えば、食品加熱用の蒸気発生装置が開発され市販されている。
これらの蒸気発生装置では、蒸気の発生効率を高めるために蒸気圧を高く高圧に設定している。この高圧蒸気をそのまま食品加熱に使用するには、食品を加熱する空間領域に、できるだけ減圧した蒸気を供給する必要がある。高圧蒸気の温度は食品加熱に必要な温度に較べて高すぎるため、温度を低下させねばならないからである。例えば、45〜95度程度の低温蒸気が適当である。
【0003】
しかし、高圧蒸気を減圧させると、蒸気の一部が過熱化してしまい、蒸気圧が低下しても蒸気温度は低下しないという不都合な現象が生じ得る。
蒸気温度を低下させないと、高温(過熱化)の蒸気がそのまま食品に接触して、水分を奪ったり、乾き焼けさせたり、硬化させたりするという不都合が生じ、食品加工上好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記不都合を解消するため、低温の飽和蒸気を継続的に安定して供給できる飽和蒸気の生成方法及びその装置と、その飽和蒸気を用いた加熱用の、例えば、食品加工用等の蒸気加熱方法及びその装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の飽和蒸気生成装置の発明は、蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体から一次蒸気を生成する一次蒸気発生手段と、飽和蒸気が生成される母体となる二次液体を備えた飽和蒸気用容器と、前記二次液体中に前記一次蒸気を噴出させる蒸気噴出手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の飽和蒸気生成装置の発明は、蒸気噴出手段は、噴出間隙を形成する相対の縁が平行に形成された蒸気噴出部を有することを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の飽和蒸気生成装置において、二次液体中に設置される蒸気噴出手段に導入される一次蒸気は、噴出間隙の全域から均等に蒸気が噴出される蒸気圧であることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の飽和蒸気生成装置において、噴出間隙は円周状に形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項2乃至請求項4の何れかに記載の飽和蒸気生成装置において、噴出間隙は複数段にわたって形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項6の蒸気加熱装置の発明は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の飽和蒸気生成装置を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載の蒸気加熱装置において、飽和蒸気生成装置からの飽和蒸気が導入される蒸気室と、導入された飽和蒸気で加熱される加熱目的物載置部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明は、請求項6又は請求項7の何れかに記載の蒸気加熱装置において、飽和蒸気生成装置からの飽和蒸気は噴霧手段を介して蒸気室内に噴霧されることを特徴とする。
【0013】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載の蒸気加熱装置において、蒸気室の底に層状に溜まる空気を排出する空気排気手段を備え、加熱目的物載置部が空気の溜まる層より高い部位に設置されたことを特徴とする。
【0014】
請求項10の発明は、請求項7乃至請求項8の何れかに記載の蒸気加熱装置において、蒸気室の底は外部開放であることを特徴とする。
【0015】
請求項11の発明は、請求項7乃至請求項10の何れかに記載の食品加工用の蒸気加熱装置において、蒸気室への蒸気供給量調整手段と、蒸気室内の蒸気温度測定手段と、前記蒸気温度測定手段からの温度情報に基づいて前記蒸気供給量調整手段を制御する加熱制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項12の発明は、請求項11に記載の食品加工用の蒸気加熱装置において、蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体と飽和蒸気が生成される母体となる二次液体とは、双方又は何れか一方が食品加工用液体組成物であることを特徴とする。
【0017】
請求項13の飽和蒸気生成方法の発明は、蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体から生成された一次蒸気を、飽和蒸気が生成される母体となる二次液体中に噴出させて、前記二次液体中を通過させることにより飽和蒸気を生成させることを特徴とする。
【0018】
請求項14の食品加工用の蒸気加熱方法の発明は、請求項13の方法による飽和蒸気を用いて食品を加熱することを特徴とする。
【0019】
請求項15の発明は、請求項13に記載の食品加工用の蒸気加熱方法において、蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体と飽和蒸気が生成される母体となる二次液体との双方又は何れか一方を食品加工用液体組成物とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1乃至請求項5の発明によれば、何れも、飽和蒸気を継続的に安定して供給できる飽和蒸気生成装置を提供できる。
【0021】
請求項2乃至請求項5の発明によれば、何れも、噴出口が無数に形成されたことになるので、飽和蒸気を効率よく発生させることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、何れも、継続的に安定して供給できる飽和蒸気を用いた蒸気加熱装置を提供できる。
【0023】
請求項7乃至請求項10の発明によれば、何れも、継続的に安定して供給できる飽和蒸気を用いて効率よく加熱することができる。
【0024】
請求項11の発明によれば、食品加工用に適し、継続的に安定して供給できる飽和蒸気を、所望の温度を維持しつつ用いることのできる食品加工用の蒸気加熱装置を提供できる。
【0025】
請求項12の発明によれば、継続的に安定して供給できる飽和蒸気による加熱加工と同時に効果的に食品加工を施すことができる食品加工用の蒸気加熱装置を提供できる。
【0026】
請求項13の発明によれば、安定して供給できる加熱用の低温の飽和蒸気を生成することができる。
【0027】
請求項14の発明によれば、安定して供給できる食品加工用の低温の飽和蒸気を生成することができる。
【0028】
請求項15の発明によれば、安定して供給できる飽和蒸気による加熱加工と同時に効果的に食品加工を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を、食品加工用の低温飽和蒸気を生成する飽和蒸気生成装置を備えた食品加工用の蒸気加熱装置を例にして、図1乃至図6に基づいて説明する。
【0030】
図1は食品加工用の蒸気加熱装置の構成を示した概念図、図2は飽和蒸気生成装置の拡大図、図3は飽和蒸気生成装置の外観斜視図、図4は飽和蒸気生成装置の縦断面図、図5は飽和蒸気生成装置の第2の実施例を示す概念図、図6は飽和蒸気生成装置の第3の実施例を示す概念図である。
【実施例1】
【0031】
図1において、図示の食品加工用の蒸気加熱装置1は、一次蒸気発生手段10と飽和蒸気生成装置20と蒸気加熱装置30とで構成されている。
【0032】
一次蒸気発生手段10は、蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体11(図示せず)から一次蒸気を生成する手段であって、例えばボイラ等の蒸気を発生させる手段であればよい。
以下、この一次蒸気発生手段10を単に蒸気発生手段ともいう。
尚、ここで一次液体とは例えば水であり、或いは、後述する食品加工用液体組成物である。
【0033】
飽和蒸気生成装置20は、飽和蒸気が生成される母体となる二次液体21を備えた飽和蒸気用容器22と、この二次液体21中に前記の一次蒸気11を噴出させる蒸気噴出手段40とを備えている。
【0034】
蒸気加熱装置30は、飽和蒸気生成装置20からの飽和蒸気が導入される蒸気室31と、この蒸気室31に導入された飽和蒸気で加熱される加熱目的物を載置するための加熱目的物載置部32とを備えている。
【0035】
図2乃至図4において、蒸気噴出手段40は、噴出間隙41を形成する相対の縁42,43が平行に形成された蒸気噴出部44を有している。
図示の噴出間隙41は円周状に形成されているが、必ずしもこのように長さ方向が無端である必要はなく、例えば、適当な長さ間隔をおいた両端を有する有端の長方形状や長孔形状等のスリット状に噴出間隙を形成してもよい(図示せず)。
【0036】
このように、縁42,43が平行な蒸気噴出部44を設けることにより、丸口等のノズル口を多数設けるよりも、無数に或いは無限にノズル口を設けたようになるために、無数の微細気泡を継続的かつ安定的に極めて効率よく二次液体21中に噴出させることができ、生成させることができる。
噴出させる気泡をより微細にするためには、噴出間隙41をより狭くすればよい。又、二次液体21中に微細気泡を更に効率的に噴出させるには、噴出間隙41を複数段にわたって形成するとよい。
【0037】
蒸気噴出手段40の噴出間隙41は、二次液体21の組成成分にもよるが、例えば、平均で0.01mm以上1mm以下、好ましくはその下限が0.05mm以上でありその上限が、0.7mm以下、更に好ましくはその下限が0.1mm以上でありその上限が、0.5mm以下がよい。
【0038】
又、この蒸気噴出手段40を構成する材料は、金属、プラスチック、木材、等その材料や材質を問わないが、耐熱性や耐腐食性を考慮すれば、金属或いは硬化プラスチック等が好ましい。
【0039】
又、この蒸気噴出手段40を形成する方法も、何れの方法であるかを問わないが、図示のように、傘状に形成された2枚の円盤を内部に通気空間45が形成されるよう向かい合わせに近接させて一つの円周状の噴出間隙41を持つ噴出部44を形成するとよい。
【0040】
上記のように噴出部44を円盤状に形成すると、噴出される一次蒸気11が前記通気空間45中を噴出間隙41に近づくにつれて、円盤構成部材及び当該円盤構成部材を介して、相対的に温度が低い二次液体21の冷却作用を受けて、噴出される一次蒸気11が次第に冷却されて行き、噴出される前に冷却される効果を生むので、噴射される一次蒸気11はその圧力が下がり微細な噴射流即ち微細気泡となって、二次液体21との接触効果が上がるだけでなく、噴出時の騒音や振動も抑制される。
【0041】
又、上記のように噴出間隙41を形成すると、一次蒸気11が円盤の円周側から均等に噴射されるので、後述の図5や図6に示すノズル52の口という部分的に特定された部位ノズル口から一時に多量の一次蒸気11が噴射されることもなく、しかも、一次蒸気11が二次液体21中に効果的に分散して噴出され易くなる。
従って、例えば、噴射された一次蒸気11が筒状の塊となって二次液体21の水面まで突き抜けてしまうというような不都合な現象が抑制できる。
【0042】
二次液体21中に設置された蒸気噴出手段40に導入される一次蒸気圧は、全ての段の各噴出間隙41の全域即ち、全周から均等に蒸気が噴出されるに必要な蒸気圧であることが望ましい。
噴出間隙41の全域からの噴出が可能な蒸気圧が与えられれば、図2で示すように、噴出間隙41の延在方向が水平となるように蒸気噴出手段40を二次液体21中に設置するだけでなく、図4に示すように、噴出間隙41の延在方向が垂直となるように設置してもよく、要するに、二次液体21中に於ける噴出間隙41の傾き如何様でもよい。
【0043】
上記のように、この飽和蒸気生成装置20によれば、蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体から生成された一次蒸気11を、飽和蒸気が生成される母体となる二次液体21中に噴出させて、二次液体中21を通過させることにより低温の飽和蒸気を効率よく生成させることができる。
【0044】
この場合、一次蒸気11を生成させた一次液体即ち蒸気発生組成物と同じ組成とした二次液体21中に、一次蒸気11を通過させて生成させた飽和蒸気を、蒸気室31内に導入することが好ましい。
この様な手段を用いることにより、蒸気室31内の飽和蒸気の化学的安定平衡を保持させることができる。
【0045】
又、比較的高圧高温の一次蒸気11を比較的低温の二次液体21中に噴出させて通過させることにより、一次蒸気11の蒸気圧が減圧されると共に冷却されるため、このシステムを連続稼動させて、二次液体21の液面上に低温の飽和蒸気を効率よく継続的且つ安定的に生成させることができる。
【0046】
尚、図5及び図6は、上記実施例とは別の蒸気噴出手段50の例を示すもので、蒸気管51の側面に多数の丸口のノズル52を列設したものである。図5はノズル52の口を上方(液面)に向けて設置した例、図6はノズル52の口を下方に向けて設置した例である。
二次液体21中における微細気泡の生成効率は、ノズル52の口を上方に向けるよりも、下方に向ける方がよい。ノズル52を下方にして一次蒸気11を可能な限り減圧して噴射させることにより、二次液体21との接触時間が長くなって低温の飽和蒸気の生成効率をより高めることができる。
【0047】
図5及び図6の何れの例でも、ノズル52を噴出部とした蒸気噴出手段50では、上記実施例の蒸気噴出手段40に比べて微細気泡の生成効率、即ち、低温の飽和蒸気の生成効率は劣るものの、用途に応じては十分に実用的であり、上記実施例においても、蒸気噴出手段40に代えて蒸気噴出手段50を用いることもできる。
尚、図示の例では20Aパイプ(内径21.6mm)に、噴出部として3mm口径の穴(ノズル口)を36個列設したものである。
【0048】
次に、図1において、上記飽和蒸気生成装置20で生成された低温の飽和蒸気を用いて食品を加熱する食品加工用の蒸気加熱装置30について説明する。
【0049】
この蒸気加熱装置30は、前述の通り、蒸気室31内に加熱目的の食品36を置くための加熱目的物載置部32の他に、蒸気室31内の適所に蒸気温度測定手段34としての温度センサと、この蒸気温度測定手段(温度センサ)34からの温度情報に基づいて、蒸気室31への蒸気供給量を調整する蒸気供給量調整手段33としての電動可変弁を制御して、蒸気室31内の蒸気温度を制御する加熱制御手段35としての温度コントローラとを備えており、飽和蒸気生成装置20で生成された低温の飽和蒸気は、噴霧手段37を介して蒸気室31内に噴霧されている。
【0050】
このようにこの実施例では噴霧手段37として噴霧ノズルを用いて噴霧させているが、蒸気室31に、飽和蒸気生成装置20からの飽和蒸気を導入する際には、そのまま導入してもよい。
尚、この蒸気室31(室内空間領域)は、飽和蒸気(層)を所望の温度で安定的に保つ機能を備えていれば閉鎖空間であっても、一部が開放された空間領域であってもよい(図示せず)。
【0051】
蒸気室31内の飽和蒸気の温度は必要に応じて前記加熱制御手段35により適宜調整されるが、食品加工の場合には、好ましくは低温度、より好ましくは大気圧下100℃以下の温度(より好ましくは加熱する物品(例えば食品)の硬化しない温度)に調整しておくことが好ましい。食品の加熱源としてこのような低温度の飽和蒸気を得ることができることは極めて理想的である。
【0052】
このような所望の温度で飽和蒸気を蒸気室31内に維持するには、室31内の食品加工空間領域内、この例では加熱目的物載置部32を包む領域の飽和蒸気の温度を温度センサ34で測定し、測定した温度情報に応じて、加熱制御手段35により蒸気供給量調整手段33を制御して、飽和蒸気生成装置20からの飽和蒸気の当該蒸気室31内への導入量等を適宜調整させている。
【0053】
尚、温度センサ34で測定した温度情報に基づく温度調整は適宜の常套手段を用いればよい。
例えば、温度測定により測定した温度情報を入力し、所望温度との差を計算する演算器を備えた温度コントローラ(コンピュータ等)により解析し、その情報に基づいて、蒸気供給量調整手段33としての電動可変弁等を開閉させればよい。
【0054】
こうして、蒸気室31に飽和蒸気が導入されて行くと、室31内の加熱空間領域の上部から飽和蒸気(層)が満たされて行き、飽和蒸気導入前に室31内に存在した空気が飽和蒸気と空気との比重の差から、飽和蒸気層の下部に移動する。
この蒸気加熱装置30は、蒸気室30の底にこのようにして層状に溜まる空気38を排出する空気排気手段39を備えており、前記の加熱目的物載置部32はこの空気が溜まる層(空気層38)より高い部位に位置するよう予め設置されている。
尚、蒸気室31の底に、このような空気層38が形成されないように、蒸気室31の底の全部又は一部を外部開放としてもよい(図示せず)。
【0055】
蒸気室31は、加熱目的物載置部32に配置した食品36を加熱するため、蒸気室31内の飽和蒸気を所望の温度で一定に維持する必要がある。
このため蒸気室31は閉鎖空間とするのがよいが、飽和蒸気から液化した液体(液体組成物)を自然除去するための廃液手段339として、上記の空気排気手段39とは別に廃液口を設けてもよい。
【0056】
この場合、上述した空気(層)38は飽和蒸気との比重差により下方に移動するので、蒸気室31の下部から自然に排気されることが好ましく、蒸気室31が閉鎖領域として形成されている場合には、室31内下部に空気が逃げる空気排気手段39を設けておくとよい。この空気排気手段39には、食品36を加熱する際に生じるドリップなどの排出物質をも排除する役割も担わせることができる。
【0057】
更に、この食品加工用の蒸気加熱装置30においては、一次蒸気11が原始的に生成される母体となる一次液体と飽和蒸気が生成される母体となる二次液体21との双方又は何れか一方を、食品加工用の液体組成物(以下、食品加工用液体組成物という)とすることもできる。
この場合、一次蒸気11の発生母体となる一次液体としての食品加工用液体組成物としては、例えば、水やアルコール、或いは、有機酸又はこれらの混合物が好ましい。
【0058】
このような一次蒸気の生成のためには、一次液体の沸点、又は水、
アルコール、又は有機酸の混合物を使用する場合、会合条件等を考慮して行う。
【0059】
アルコールは、炭素数1〜5の直鎖又分岐鎖を有する低級アルコールが使用可能であり、その具体例としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、アリルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、好ましくはエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールが挙げられる。
【0060】
又、これらのアルコールを含む飲用酒(ワイン、日本酒、ビール、ブランデー、焼酎、ジン、ウォッカ、リキュール等)を用いても良い。
有機酸の具体例としては、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ショウ酸、フマル酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられ、好ましくは酢酸、リンゴ酸、クエン酸が挙げられる。
【0061】
アルコール、有機酸を使用することにより、食品の安全性(殺菌性)が向上し、又、食品に所望の風味を添加することも可能となる。
特に、飲用酒を用いた場合、飲用酒に含まれる香味又は風味成分を食品に浸透又は付着させることができるので、消費者の嗜好に合致させた食品の製造が可能となる。
【0062】
他方、飽和蒸気生成装置20で用いられる二次液体21の食品加工用液体組成物としては、上記の一次液体即ち蒸気発生組成物と同一又は異なる、前記と同様の食品加工用液体組成物を適宜用いてもよいが、好ましくは同一のものがよい。
【0063】
上記のようにして、食品36を飽和蒸気によって加熱する前後には、食品添加物及び/又は食品素材を食品36に予め適宜付与(添加、付着等)しておくことが好ましい。
このような前処理を施すことにより、消費者の嗜好に沿った加工食品を提供とすることができる。
【0064】
食品添加物や食品素材としては、調味料(グルタミン酸、イノシン酸、コハク酸、アミノ酸液、HVP、魚介エキス等)、酸味料(梅酢、よね酢、米酢、ポン酢、スダチ酢等)、保存料(うど抽出物、しらこたんぱく抽出物、ペクチン分解物等)、酵素(アミラーゼ、カタラーゼ、プロテアーゼ等)、乳化剤(ダイズサポニン、レシチン等)、製造用剤(くん液、トウガラシ水性抽出物、ニンニク抽出物、次亜塩素酸ナトリウム等)及びこれらの混合物の群から選択されるものが挙げられる。
又、加工される食品としては、肉類、魚類、野菜類等がある。
【0065】
上記の実施例によれば、従来のように一次蒸気を強制的に減圧することが無いので、従来問題であった過熱化蒸気の発生を無くすことができると共に、所望の低温(度)の飽和蒸気を食品加工用として継続的に、しかも安定して得ることができるので、加熱される目的物を一定の高品質に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、上記実施例では、食品加工用の飽和蒸気生成装置、或いは蒸気加熱装置とし説明したが、食品加工用に限らず、他の用途や分野においても、低温の飽和蒸気生成手段として、或いは飽和蒸気を用いた加熱手段として広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は食品加工用の蒸気加熱装置の構成を示した概念図である。
【図2】図2は飽和蒸気生成装置の拡大図である。
【図3】図3は飽和蒸気生成装置の外観斜視図である。
【図4】図4は飽和蒸気生成装置の縦断面図である。
【図5】図5は飽和蒸気生成装置の第2の実施例を示す概念図である。
【図6】図6は飽和蒸気生成装置の第3の実施例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0068】
1 食品加工用の蒸気加熱装置
10 一次蒸気発生手段
11 一次蒸気
20 飽和蒸気生成装置
21 二次液体
22 飽和蒸気用容器
30 蒸気加熱装置
31 蒸気室
32 加熱目的物載置部
33 蒸気供給量調整手段
34 蒸気温度測定手段
35 加熱制御手段
36 食品
37 噴霧手段
38 空気(空気層)
39 空気排気手段
40 蒸気噴出手段
41 噴出間隙
42 縁
43 縁
44 蒸気噴出部
45 通気空間
50 蒸気噴出手段
51 蒸気管
52 ノズル
339 廃液手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体から一次蒸気を生成する一次蒸気発生手段と、飽和蒸気が生成される母体となる二次液体を備えた飽和蒸気用容器と、前記二次液体中に前記一次蒸気を噴出させる蒸気噴出手段とを備えたことを特徴とする飽和蒸気生成装置。
【請求項2】
蒸気噴出手段は、噴出間隙を形成する相対の縁が平行に形成された蒸気噴出部を有することを特徴とする飽和蒸気生成装置。
【請求項3】
二次液体中に設置される蒸気噴出手段に導入される一次蒸気は、噴出間隙の全域から均等に蒸気が噴出される蒸気圧であることを特徴とする請求項2に記載の飽和蒸気生成装置。
【請求項4】
噴出間隙は円周状に形成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の飽和蒸気生成装置。
【請求項5】
噴出間隙は複数段にわたって形成されたことを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載の飽和蒸気生成装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の飽和蒸気生成装置を備えたことを特徴とする蒸気加熱装置。
【請求項7】
飽和蒸気生成装置からの飽和蒸気が導入される蒸気室と、導入された飽和蒸気で加熱される加熱目的物載置部とを備えたことを特徴とする請求項6に記載の蒸気加熱装置。
【請求項8】
飽和蒸気生成装置からの飽和蒸気は噴霧手段を介して蒸気室内に噴霧されることを特徴とする請求項6又は請求項7の何れかに記載の蒸気加熱装置。
【請求項9】
蒸気室の底に層状に溜まる空気を排出する空気排気手段を備え、加熱目的物載置部が空気の溜まる層より高い部位に設置されたことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の蒸気加熱装置。
【請求項10】
蒸気室の底は外部開放であることを特徴とする請求項7乃至請求項8の何れかに記載の蒸気加熱装置。
【請求項11】
蒸気室への蒸気供給量調整手段と、蒸気室内の蒸気温度測定手段と、
前記蒸気温度測定手段からの温度情報に基づいて前記蒸気供給量調整手段を制御する加熱制御手段とを備えたことを特徴とする請求項7乃至請求項10の何れかに記載の食品加工用の蒸気加熱装置。
【請求項12】
蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体と飽和蒸気が生成される母体となる二次液体とは、双方又は何れか一方が食品加工用液体組成物であることを特徴とする請求項11に記載の食品加工用の蒸気加熱装置。
【請求項13】
蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体から生成された一次蒸気を、飽和蒸気が生成される母体となる二次液体中に噴出させて、前記二次液体中を通過させることにより飽和蒸気を生成させることを特徴とする飽和蒸気生成方法。
【請求項14】
請求項13の方法による飽和蒸気を用いて食品を加熱する食品加工用の蒸気加熱方法。
【請求項15】
蒸気が原始的に生成される母体となる一次液体と飽和蒸気が生成される母体となる二次液体との双方又は何れか一方を食品加工用液体組成物とすることを特徴とする請求項13に記載の食品加工用の蒸気加熱方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−180448(P2008−180448A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14454(P2007−14454)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(506365289)株式会社 T.M.L (1)
【出願人】(399123579)
【Fターム(参考)】