養子免疫療法のためのIL−21の使用法および腫瘍抗原の同定法
養子免疫療法で使用するためのIL-21組成物を用いるエクスビボT細胞培養物を調製するための方法を記載する。単離されたか、または末梢血単核細胞に存在するかいずれかの、最終分化していないT細胞集団の培養物へIL-21が添加され、1つまたは複数の腫瘍抗原に曝露され、ならびにIL-21組成物および抗原提示細胞(APC)の存在下で、結果として生じるT細胞集団は増強された抗原特異性を有し、かつ患者の中に再導入することができる。また、腫瘍物質の存在下で、IL-21組成物およびAPCに曝露されたT細胞集団を培養することによって、腫瘍抗原を同定する方法も開示する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
サイトカインは通常、造血系の細胞の増殖もしくは分化を刺激し、または身体の免疫反応機構および炎症反応機構に関与する。インターロイキンは、免疫学的反応を媒介するサイトカインのファミリーである。免疫反応の中心は、多くのサイトカインを産生し、および抗原に対する適応免疫において役割を果たす、T細胞である。T細胞によって産生されるサイトカインは、1型および2型として分類されている(Kelso, A. Immun. Cell Biol. 76: 300-317, 1998(非特許文献1))。1型サイトカインは、IL-2、IFN-γ、LT-αを含み、ならびに炎症反応、ウイルス免疫、細胞内寄生虫免疫、および同種移植片拒絶に関与する。2型サイトカインは、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、およびIL-13を含み、ならびに液性反応、蠕虫免疫、およびアレルギー反応に関与する。1型と2型に共通のサイトカインには、IL-3、GM-CSF、およびTNF-αが含まれる。1型および2型を産生するT細胞集団は異なる種類の炎症組織に選択的に移動するということを示唆するある証拠がある。
【0002】
IL-21は細胞傷害性T細胞およびNK細胞の潜在的な調節因子であることが示されている(Parrish-Novak, et al. Nature 408: 57-63, 2000(非特許文献2); Parrish-Novak, et al., J. Leuk. Bio. 72: 856-863, 2002(非特許文献3); Collins et al., Immunol. Res. 28: 131-140, 2003(非特許文献4); Brady, et al. J. Immunol. 172: 2048-58, 2004(非特許文献5))。T細胞反応には、メモリーT細胞機能の調節としての1次抗原反応の増強が含まれる。
【0003】
マウスの研究において、IL-21はNK細胞の成熟およびエフェクター機能を助長し、かつ同種抗原に反応してT細胞活性化を促進する(Kasaian et al., Immunity 16: 559-569, 2002(非特許文献6))。NK細胞拡大を制限し、かつマウスCD8 T細胞の活性化を促進するサイトカインとして、IL-21は自然免疫から適応免疫への移行において役割を果たすと考えられている(Kasaian, 前記, 2002(非特許文献6))。CD4 T細胞の中で、IL-21は、自然免疫と関連がある遺伝子の発現をアップレギュレートするTh1(Tヘルパー1)サイトカイン(Strengell et al., J. Immunol. 170: 5464, 2003(非特許文献7))、およびナイーブTh細胞のIFN-γ産生Th1細胞への分化を阻害するTh2サイトカイン(Wurster et al., J. Exp. Med. 196: 969, 2002(非特許文献8))の両方として記載されている。自然免疫およびCD4 Th反応の発達におけるIL-21の効果は十分に特徴付けされているが(Strengell, 前記, 2003(非特許文献7); Strengell et al., J. Leukoc. Biol. 76: 416, 2004(非特許文献9))、特にヒトでの、抗原特異的CD8+ T細胞反応におけるその役割は十分に調査されてこなかった。本発明は、IL-21を投与することにより、高親和性の抗原特異的な細胞傷害性T細胞反応を誘導するための方法を提供する。癌免疫療法における潜在的な免疫標的として次第に表されるようになった、自己抗原に対する高親和性のCD8反応の誘導は、抗原特異的な抗腫瘍戦略におけるIL-21の重要な役割を示している。したがって、本発明は、腫瘍ワクチンにおけるアジュバントとしてIL-21を投与するための方法、および養子免疫療法で使用するための腫瘍抗原特異的な細胞傷害性T細胞のエクスビボ拡大のための方法を提供する。本発明はまた、ワクチン用のアジュバントとしてIL-21を投与するための方法、ならびに一般にウイルス、およびその他の標的抗原に対する抗原特異的な細胞傷害性T細胞のエクスビボ拡大のための方法を提供する。本明細書における開示から、これらのおよびその他の使用が、当業者には明らかであると考えられる。
【0004】
【非特許文献1】Kelso, A. Immun. Cell Biol. 76: 300-317, 1998
【非特許文献2】Parrish-Novak, et al. Nature 408: 57-63, 2000
【非特許文献3】Parrish-Novak, et al., J. Leuk. Bio. 72: 856-863, 2002
【非特許文献4】Collins et al., Immunol. Res. 28: 131-140, 2003
【非特許文献5】Brady, et al. J. Immunol. 172: 2048-58, 2004
【非特許文献6】Kasaian et al., Immunity 16: 559-569, 2002
【非特許文献7】Strengell et al., J. Immunol. 170: 5464, 2003
【非特許文献8】Wurster et al., J. Exp. Med. 196: 969, 2002
【非特許文献9】Strengell et al., J. Leukoc. Biol. 76: 416, 2004
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
ある局面において、本発明は、腫瘍抗原を同定するための方法であって、IL-21組成物および抗原提示細胞(APC)の存在下で、対象から単離された腫瘍物質を末梢血単核細胞(PBMC)と共培養する工程、培養物からT細胞集団を単離する工程、T細胞集団から個々のT細胞を濃縮する工程、ならびに抗原特異性についてT細胞クローンを特徴分析する工程を含む方法を提供する。ある態様において、濃縮とは個々のT細胞のクローニングである。
【0006】
本発明の別の局面において、IL-21組成物の存在下で、対象由来の腫瘍物質を単離された最終分化していないT細胞集団と共培養する工程;T細胞集団から個々のT細胞をクローニングする工程;および抗原特異性についてT細胞クローンを特徴分析する工程を含む、腫瘍抗原を同定する方法が提供される。ある態様において、単離されたT細胞集団はCD4+細胞を含まない。
【0007】
本方法のある態様において、PBMCまたはT細胞集団は自己の細胞集団である。その他の態様において、腫瘍物質には、全RNA、溶解した腫瘍細胞、ネクローシスを起こした腫瘍細胞、腫瘍タンパク質、またはアポトーシス小体が含まれる。別の態様において、共培養は、IL-21組成物および1つまたは複数のさらなるサイトカインの存在下である。
【0008】
別の局面において、本発明は、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、腫瘍を有する対象に対して組織適合性のある表現型を有するPBMCを同定する工程;IL-21組成物およびAPCの存在下で、患者由来の腫瘍物質または腫瘍関連ペプチドを末梢血単核細胞(PBMC)と共培養する工程;これらの細胞を培養で拡大する工程;ならびにこれらの細胞を患者に再導入し戻す工程を含む方法を提供する。ある態様において、PBMCは自己である。ある態様において、T細胞集団は自己である。別の態様において、腫瘍物質には全RNA、溶解した腫瘍細胞、またはアポトーシス小体が含まれる。別の態様において、PBMCまたはT細胞は同種である。
【0009】
別の局面において、本発明は、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、腫瘍を有する対象に対して組織適合性のある表現型を有するT細胞集団を同定する工程;IL-21組成物およびAPCの存在下で、対象由来の腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程;これらの細胞を培養で拡大する工程;ならびにこれらの細胞を対象に再導入し戻す工程を含む方法を提供する。ある態様において、T細胞集団はナイーブであり、または最終分化していない。別の態様において、T細胞集団は自己である。別の態様において、腫瘍物質には全RNA、溶解した腫瘍細胞、またはアポトーシス小体が含まれる。
【0010】
発明の説明
本発明を詳細に説明する前に、以下の用語を定義することがその理解に役立つ可能性がある。
【0011】
「アレル変異体」という用語は、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の任意の2つまたはそれより多くの選択的形態を意味するために本明細書において使用される。アレル変異は突然変異を通じて自然に発生し、かつ集団内の表現型多型をもたらす可能性がある。遺伝子突然変異はサイレントである(コードされたポリペプチドに変化がない)ことができ、または変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしてもよい。アレル変異体という用語はまた、遺伝子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を意味するために本明細書において使用される。
【0012】
「アミノ末端」および「カルボキシル末端」という用語は、ポリペプチド内の位置を意味するために本明細書において使用される。文脈から可能である場合、これらの用語は、近接性または相対的位置を示すために、ポリペプチドの特定の配列または部分に対する参照を伴って使用される。例えば、ポリペプチド内で参照配列に対してカルボキシル末端に位置するある配列は、参照配列のカルボキシル末端に近接した位置にあるが、必ずしも完全なポリペプチドのカルボキシル末端にあるとは限らない。
【0013】
「癌」または「癌細胞」という用語は、それを正常組織または正常組織の細胞から分化させる特性を有する新生物で発見される組織または細胞を意味するために本明細書において使用される。そのような特性の中には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:ある程度の退形成、形の不規則性、細胞輪郭の不明瞭さ、核の大きさ、核または細胞質の構造の変化、その他の表現型の変化、癌状態または前癌状態を示唆する細胞タンパク質の存在、有糸分裂の数の増加、および転移能。「癌」に関連する語として、癌腫、肉腫、腫瘍、上皮腫、白血病、リンパ腫、ポリープ、およびスキルス、形質転換、新生物、ならびにそれらと同様のものが含まれる。
【0014】
「同時投与」という用語は、IL-21ポリペプチドまたはタンパク質および第2の治療的分子を同時にまたは別の時間に与えてもよいということを意味するために本明細書において使用される。同時投与は、IL-21および第2の治療的分子両方の1回の同時投与であってもよいし、または複数回の同時投与であってもよい。IL-21または第2の治療的分子のいずれか一方を患者に投与する場合に限り、同時投与である必要はない。
【0015】
「併用療法」という用語は、少なくとも1つの治療的有効量のIL-21および第2の治療的分子を患者に投与することを意味するために本明細書において使用される。IL-21は、IL-21の生物学的活性を示す成熟ポリペプチド、その断片、融合体または共役体であってもよい。
【0016】
免疫反応に言及する場合、「増強する」という用語は、免疫反応の規模および/もしくは効率を高め、または免疫反応の持続時間を延ばすことを意味するために本明細書において使用される。この用語は、「強化する」と互換的に使用される。免疫反応には、増強された細胞溶解活性、アポトーシス活性、またはCD8+ T細胞の数もしくは生存の増加が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
ポリヌクレオチドに適用される場合、「単離された」という用語は、ポリヌクレオチドが、その天然の遺伝的環境から取り除かれ、したがってその他の無関係なまたは望まないコード配列を含まず、かつ遺伝的に改変したタンパク質生産系内での使用に好適な形状にあることを意味する。そのような単離された分子は、それらの天然の環境から分離された分子であり、ならびにcDNAおよびゲノムクローンを含む。本発明の単離されたDNA分子は、通常はそれらが関連するその他の遺伝子を含まないが、プロモーターおよびターミネーターなどの天然の5'および3'非翻訳領域を含んでもよい。関連する領域の同定は当業者にとっては明白であると考えられる(例えば、Dynan and Tijan, Nature 316: 774-78, 1985を参照されたい)。
【0018】
「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、血液および動物組織から離れているような、その天然の環境以外の状況で見出されるポリペプチドまたはタンパク質である。好ましい形態において、単離されたポリペプチドは、その他のポリペプチド、特に動物起源のその他のポリペプチドを実質的に含まない。高度に精製された形で、すなわち95%を越える純度で、より好ましくは99%を越える純度で、ポリペプチドを提供することが好ましい。この文脈で使用される場合、「単離された」という用語は、ダイマーまたは選択的に糖鎖修飾されたもしくは誘導体化された形態などの、代わりの物理的形態にある同一のポリペプチドの存在を除外しない。
【0019】
NK細胞、T細胞、特に細胞傷害性T細胞、B細胞、およびそれらと同様の細胞などの、免疫細胞に言及する場合、「レベル」という用語は、細胞の数または細胞の活性を表す。レベルの増加とは、細胞の数の増加または細胞機能の活性の亢進のいずれかである。
【0020】
ウイルス感染に言及する場合、「レベル」という用語は、ウイルス感染のレベルの変化を表し、および(上で記載したような)CTLまたはNK細胞のレベルの変化、ウイルス量の減少、抗ウイルス抗体価の増加、アラニンアミノ基転移酵素の血清学的レベルの減少、または標的組織もしくは器官の組織学的検査によって決定されるような改善を含むが、これらに限定されない。これらのレベルの変化が有意差であるか変化であるかということの決定は、当業者に十分可能である。
【0021】
細胞に言及する場合、「新生物性」という用語は、特に、増殖が無制御でかつ進行性で、結果的に新生物を生じさせる組織において、新しい異常な増殖を経ている細胞を指す。新生物性細胞は悪性、すなわち浸潤性かつ転移性であるか、良性であるかのいずれかであることができる。
【0022】
「ポリヌクレオチド」は、5'末端から3'末端へ読まれるデオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の1本鎖または2本鎖のポリマーである。ポリヌクレオチドはRNAおよびDNAを含み、ならびに自然源から単離してもよいし、インビトロで合成してもよいし、または天然分子および合成分子の組み合わせから調製してもよい。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(「bp」と略す)、ヌクレオチド(「nt」)、またはキロベース(「kb」)のように表現される。文脈から可能である場合、後者2つの用語は、1本鎖または2本鎖であるポリヌクレオチドを記載してもよい。この用語が2本鎖分子に適用される時、それは全長を指すために用いられ、および「塩基対」という用語と同等であることが理解されると思われる。2本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖の長さがわずかに異なる可能性があり、およびその末端が酵素的切断の結果として互い違いになる可能性があり;したがって、2本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドが対を成すとは限らない可能性があるということが当業者には正しく理解されると思われる。
【0023】
「ポリペプチド」は、自然に生じたものであれ、合成で生じたものであれ、ペプチド結合で繋がれたアミノ酸残基のポリマーである。約10アミノ酸残基より少ないポリペプチドは、一般に「ペプチド」と呼ばれる。
【0024】
「タンパク質」は、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む巨大分子である。タンパク質はまた、炭水化物基などの、非ペプチド性成分を含んでもよい。炭水化物およびその他の非ペプチド性置換基は、タンパク質を産生する細胞によってタンパク質に付加される可能性があり、ならびに細胞の種類によって異なると考えられる。タンパク質は、それらのアミノ酸骨格構造の点から、本明細書において定義される;炭水化物基などの置換基は通常特定されないが、それでも存在する可能性がある。
【0025】
「受容体」という用語は、生物活性分子(すなわち、リガンド)に結合し、細胞に対するリガンドの作用を媒介する細胞関連タンパク質を指す。膜結合型受容体は、細胞外リガンド結合ドメインおよび典型的にはシグナル伝達に関与する細胞内エフェクタードメインを含む多ペプチド構造を特徴とする。リガンドの受容体への結合は、細胞内のエフェクタードメインとその他の分子との相互作用を引き起こす受容体の立体構造変化をもたらす。この相互作用が今度は、細胞の代謝の変動をもたらす。受容体-リガンド相互作用と関係がある代謝事象には、遺伝子転写、リン酸化、脱リン酸化、サイクリックAMP産生の増加、細胞カルシウムの動員、膜脂質の動員、細胞接着、イノシトール脂質の加水分解、およびリン脂質の加水分解が含まれる。一般に、受容体は、膜結合型、細胞質型、または核型であることができ;単量体(例えば、甲状腺刺激ホルモン受容体、β-アドレナリン受容体)または多量体(例えば、PDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL-3受容体、GM-CSF受容体、G-CSF受容体、エリスロポエチン受容体、およびIL-6受容体)であることができる。
【0026】
不正確な分析方法(例えば、ゲル電気泳動)によって決定されたポリマーの分子量および長さは、近似値であると理解されると考えられる。そのような値が「約」Xまたは「およそ」Xのように表現される場合、表示されたXという値は±10%まで正確であると理解されると考えられる。
【0027】
使用した参考文献は全て、参照により本明細書に組み入れられる。
【0028】
本発明は、抗原特異的T細胞の増殖および生存を増加させるためのIL-21の使用に向けられる。IL-21による抗原特異的T細胞の増強は、抗原特異的T細胞の頻度を増加させ、増強された親和性を有する抗原特異的T細胞の集団を濃縮し、かつ増加したCD28発現および「ヘルパー非依存的」表現型を有する抗原特異的T細胞の集団を発生させるために有用である(Widmer et al., Nature 294: 750, 1981; Topp et al., J. Exp Med 198(6): 947, 2003; Cheng et al., J Immunol 169: 4990, 2002)。
【0029】
ある局面において、本発明は、IL-21非存在下で培養したT細胞よりも抗原に対する高い親和性を有する細胞傷害性T細胞集団を生じさせるIL-21組成物および抗原の存在下で、ナイーブT細胞を培養する工程を含む方法を提供する。特に興味深いのは、腫瘍抗原である。低親和性のT細胞は腫瘍抗原特異性を有する可能性はあるが、依然として腫瘍細胞を認識し、かつ殺すことがないのに対し、高親和性の抗原特異的T細胞は腫瘍を認識し、かつ殺す能力を有する。腫瘍に対するT細胞の親和性は、1つには、腫瘍細胞によって提示される抗原の密度に依存している。腫瘍細胞上の抗原提示が少ない場合には、高親和性のT細胞のみが腫瘍細胞を認識し、かつ細胞溶解を起こすことができる可能性がより高い。さらに、抗原特異的T細胞のさらなる濃縮を伴わずに、拡大および養子細胞移植に十分なほど高いレベルまでT細胞頻度を増加させ、それによって治療までの時間を著しく減らすために、ならびにさらなる選別またはクローニングの必要性を除去するために、本発明の方法を使用することができる。
【0030】
本発明の別の局面において、本発明の方法は、最終分化していないT細胞をIL-21組成物に対して培養することにより、自己抗原に対して高い親和性を有する抗原特異的CTL集団を発生させる工程を含む。ある態様において、T細胞は単離されたナイーブT細胞である。一度、抗原特異的T細胞集団がエクスビボで拡大されたら、細胞は患者に再導入される。ある態様において、患者へのIL-21投与は継続されると考えられ、およびその他の治療法と組み合わせられる可能性がある。
【0031】
別の局面において、本発明の方法は、T細胞集団によって認識される抗原のレパートリーを拡大するための方法を提供する。本方法は、腫瘍細胞株またはその派生物(例えば、全RNA、溶解した腫瘍細胞、アポトーシス小体)などの腫瘍物質を対象から単離された自己のT細胞と共培養する工程を含む。腫瘍物質およびT細胞をIL-21組成物の存在下で培養し、T細胞を増殖させた後、T細胞をクローニングする。抗原特異的T細胞を同定し、および抗原特異性を特徴付けるためにさらに解析する。
【0032】
A. IL-21の説明
ヒトIL-21(配列番号:1および配列番号:2)は、最初はzalpha11リガンドと表され、参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許第6,307,024号、および第6,686,178号に記載されている。IL-21受容体は、米国特許第6,057,128号に記載されている。以前はzalpha1J(配列番号:5および配列番号:6)と表された、IL-21受容体、ならびにヘテロダイマーの受容体であるIL-21R/IL-21Rγもまた、参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許第6,576,744号、第6,803,451号、第6,692,924号、および国際公開公報第00/17235号に記載されている。これらの刊行物に記載されているように、IL-21は、CD3について選別された、活性化ヒト末梢血細胞(hPBC)から作製されたcDNAライブラリーから単離された。CD3は、リンパ系起源の細胞、特にT細胞に特有の細胞表面マーカーである。
【0033】
IL-21Rのアミノ酸配列により、コードされた受容体は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、EPO、TPO、GM-CSF、およびG-CSFの受容体を含むが、これらに限定されない、クラスIのサイトカイン受容体サブファミリーに属することが示された(概説については、Cytokine 5(2):95-106, 1993のCosman, 「The Hematopoietin Receptor Superfamily」を参照されたい)。IL-21受容体は、NK細胞、T細胞、およびB細胞上で同定され、-21が造血系細胞、特にリンパ系前駆細胞およびリンパ系細胞に作用することが示されている。リンパ系細胞に作用するその他の公知の4本ヘリックスバンドルサイトカインには、IL-2、IL-4、IL-7、およびIL-15が含まれる。4本ヘリックスバンドルサイトカインの概説については、Nicola et al., Advances in Protein Chemistry 52: 1-65, 1999、およびKelso, A., Immunol. Cell Biol. 76: 300-317, 1998を参照されたい。
【0034】
IL-21については、分泌シグナル配列が、アミノ酸残基1(Met)〜29(Ser)から構成され、かつ成熟ポリペプチドが、(配列番号:2に示すように)アミノ酸残基30(Gln)〜162(Ser)から構成されている。対応するポリヌクレオチド配列を配列番号:1に示す。配列番号:1に開示した配列がヒトIL-21の単一のアレルを表すこと、ならびにアレル変異および選択的スプライシングが起こると期待されることが、当業者に正しく理解されると考えられる。
【0035】
B. IL-21ワクチン療法の使用、養子免疫療法、および腫瘍特異的抗原の同定
本発明は、抗原特異的ヒトCD8+ T細胞の1次反応の誘導におけるIL-21の正の調節的な役割が示された、ヒト健康ドナーおよびメラノーマ患者両方の研究に一部基づいている。正常な自己抗原を認識する希少ではあるが測定可能なナイーブT細胞集団を探知するために、IL-21存在下で、ペプチド-MHCテトラマーを使用すると、誘発され得る抗原特異的CD8 T細胞の頻度および絶対数が、IL-21非存在下で増殖させた培養と比べて、20倍よりも多く増加する。初期のプライミング期間中のIL-2、IL-7、またはIL-15の添加によって、サイトカインを与えられない培養を上回る付加的な効果がなかったので、抗原特異的T細胞反応の発生の増強は、このγ鎖受容体サイトカインに特異的である。IL-21に曝露され、および抗原によるプライミングを受けたT細胞は、IL-2およびIL-7などの、増殖を促進するサイトカインに反応する能力を保持し、ならびに容易に単離および拡大することができた。本発明は、抗原によって引き起こされるヘルパー非依存的IL-2産生、標的結合力の増強、および抗原特異的殺腫瘍の強化をもたらす、CD28アップレギュレーションおよび高親和性TCRの発現を特徴とする、IL-21によって増強されたヒト抗原特異的CD8+ T細胞の発生を提供する。本発明は、ヒト抗原特異的CD8+ T細胞反応の誘導および免疫療法、特に養子細胞療法のためのIL-21の使用法を提供する。
【0036】
本明細書で記載される研究において、IL-21によって強化される抗原特異的反応は、ナイーブT細胞集団に限られ、予め選別されたレスポンダーT細胞を用いるメモリーT細胞集団では見られなかった。ナイーブT細胞は、それまでに抗原に出会ったことがなく、かつ単一の特異な抗原を認識および結合する能力を有する。腫瘍抗原は、非腫瘍細胞上で見出される抗原とは異なる発現プロファイルを有するペプチドまたはポリペプチドまたはペプチド複合体である。例えば、非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞の方が、高い頻度または密度で非腫瘍抗原を発現する可能性がある。腫瘍抗原は、非腫瘍抗原と構造的に異なる可能性があり、例えば、抗原は切断されたポリペプチドとして発現し、アミノ酸配列もしくは抗原をコードするポリヌクレオチドに何らかの突然変異を有し、誤って折り畳まれ、または翻訳後に不適切に修飾される可能性がある。宿主生物中の正常な、非腫瘍細胞上に存在する抗原との類似性により、腫瘍細胞は宿主の免疫学的監視機構を回避することが可能となる。
【0037】
腫瘍関連抗原が腫瘍を攻撃する特異的な免疫学的反応を発生させたという観察により、腫瘍特異的抗原癌治療法を開発する基礎が研究者に与えられた。しかしながら、腫瘍は多数の抗原を発現し、その多くは単離または特徴付けされていない。さらに、全ての腫瘍抗原が十分な免疫反応を刺激するのに十分なほど高いレベルで発現しているわけではない。
【0038】
近年、細胞傷害性Tリンパ球によって認識され得る腫瘍抗原をコードする多くの遺伝子がヒト腫瘍細胞のcDNAから同定されている(Gomi et al., J. Immunol. 163: 4994-5004, 1999.)。例として、遺伝子HER/neu(Peoples et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 432-436, 1995)および突然変異体CASP-8(Mandruzzato et al., J. Exp. Med., 186: 785-793, 1997)が含まれる。患者から腫瘍抗原特異的T細胞を単離することはできるが、これらのT細胞培養を維持することは困難である。腫瘍抗原特異的T細胞は、血液、脾臓などのリンパ系組織に特定され、または腫瘍それ自体由来であることができる。通常、腫瘍組織は生検を行ない、および細胞懸濁液をインビトロで培養する。IL-2、IL-7、IL-4、およびIL-15などの、サイトカインの存在下にある抗原特異的腫瘍細胞がより長く生存することが示されている(Vella et al., PNAS 95: 3810-3815, 1998)。本発明において、樹状細胞による第1次抗原提示の存在下で、腫瘍抗原特異的T細胞の培養にIL-21を添加することにより、IL-15、IL-6、IL-12、2、またはIL-17単独で見られる増加を超える、抗原特異的T細胞の絶対数の著しい増加がもたらされる。したがって、本発明は、新しい腫瘍特異的抗原を同定し、およびT細胞をIL-21に曝露することによって、これらの腫瘍を標的とする腫瘍抗原特異的T細胞集団を増強するための方法を提供する。腫瘍特異的細胞株を作製することによって、T細胞集団により認識される抗原のレパートリーを増強するための方法は、最終分化していないT細胞に抗原が提示された時に、IL-21組成物が抗原特異的T細胞集団の増殖を増強することを示したことから生まれた。この方法は、腫瘍細胞株またはその派生物(例えば、全RNA、溶解された腫瘍細胞、アポトーシス小体)などの腫瘍物質を対象から単離された自己のT細胞と共培養する工程を含む。腫瘍物質およびT細胞をIL-21組成物の存在下で培養し、T細胞を増殖させた後、T細胞を濃縮し、例えば、T細胞をクローニングすることができる。幾つかの態様において、IL-21の投与によって、IL-2またはその他の増殖因子の必要性を最小限にする。別の態様において、CD4+ T細胞を培養に存在させる必要はない。抗原特異性を特徴付けるために、同定された抗原特異的T細胞をさらに解析する。(van der Bruggen Science 254: 1643, 1991およびEngelhard et al., Mol. Immunol. 39: 127, 2002を参照されたい。)
【0039】
より多数のMART-1特異的T細胞がナイーブ集団の中に存在することが知られている(Pittet et al., J. Exp. Med. 190: 705, 1999)。しかしながら、測定可能な頻度のMART-1特異的T細胞をメモリー集団の中に検出することもでき(D'Souza et al., Int. J. Cancer 78: 699, 2004)、それにもかかわらずIL-21を添加した際、これらは拡大しなかった。メラノーマのある患者の場合、抗原を有する腫瘍細胞との事前接触により、メモリーT細胞の中での防御的シグナル伝達が引き起こされ、インビトロでのIL-21を介する増殖にそれらが反応しない可能性がある(Zippelius, et al., Cancer Res. 64: 2865, 2004; Lee et al., Nature Medicine 5: 677, 1999)。
【0040】
抗原によるプライミングを受けたT細胞は、IL-21に曝露された際、それらの未処理の等価物と比べて、増殖の増加およびアポトーシスの減少を経験し、それ故にT細胞を介するワクチンを増強するための方法が提供され、かつ免疫療法的な癌治療のためのアジュバントが提供される。IL-21処理により、CD28発現のアップレギュレーションが引き起こされ、かつCD45RO+、CD28hi、CCR7-、CD8+という、安定した独特の表現型を発現するT細胞の集団が濃縮された。この表現型を、ナイーブT細胞(CD45RO-、CD28+、CCR7+)とメモリーT細胞(CD45RO+、CD28-、CCR7-/+)の中間物として特徴付けしてもよい(Tomiyama, et al., J. Exp. Med. 198: 947, 2003)。抗原によって引き起こされる増殖のための自己分泌シグナルを与えることができるので、CD28+CD8+ T細胞は、養子免疫療法のための潜在的により効果的なCTLを代表している。そのようなヘルパー非依存的なCD8 T細胞は、生存し、かつ拡大するために、IL-2またはCD4+ T細胞という形態での外因性の助けを必要としないと考えられる(Ho et al., Cancer Cell 3: 431, 2003; およびTopp et al., J. Exp. Med. 198: 947, 2003)。したがって、本発明は、IL-2などの、追加のサイトカインもしくはCD4+ T細胞の非存在下または低存在下で細胞傷害活性を増強したCD8+ T細胞集団を対象に提供することによって、免疫介在性疾患を治療するための方法を提供する。この方法は、細胞溶解性の、抗原特異的CD8+ T細胞のエクスビボ拡大に特に有用であるが、追加のサイトカインが望まない副作用をもたらし、またはCD4+細胞集団が損傷される場合、インビボで使用することも可能である。
【0041】
本明細書において開示した実施例により、初回インビトロ刺激期間中のIL-21への曝露によっても、均一により高い親和性および標的細胞結合力のある抗原特異的T細胞クローンの発生が引き起こされたことが示されている。これらのクローンは多様なTCR Vβで表され、これは少数の高親和性クローンの集団の拡大の結果であった可能性は高くないが、T細胞レパートリーに対するより全体的な影響の結果である可能性が高かったことを示唆している。これまでの研究により、APCの刺激能をダウンレギュレートする、IL-10などのサイトカインが培養で使用される場合、より高い親和性のT細胞クローンが単離される可能性の増加が示されている(Tsai et al., Critical Rev. Immunol. 18: 65, 1998)。IL-21(Brandt et al., Blood 102: 4090, 2003)は、マウスDCの中での成熟停止を引き起こし、MHC発現の減少およびT細胞活性化に対する刺激能の低下をもたらすことが示されている。しかしながら、その場合、既に完全な成熟を経ていたヒトDCにIL-21を加えていた。予備的な研究において、成熟DCへのIL-21の添加は、未処理のDCと比べて、MHCクラスI、HLA-DR、CD80、CD83、またはCD86の表面発現に影響を及ぼさなかった。理論に束縛されることを望まないが、この結果は、表面刺激分子の発現の低下がインビトロでの高親和性T細胞の発生の増強に対する説明である可能性が高くないことを示唆している。成熟ヒトDCのIL-21とのプレインキュベーションもまた、発生し得るCD8+ テトラマー+ T細胞の頻度または親和性に影響がなかった。
【0042】
抗原特異的CD8 T細胞反応を強化する際のIL-21の使用がマウスモデルで検討され、攻撃的な腫瘍を根絶する際に極めて効果的であることが分かった(Ma et al., J. Immunol. 171: 608, 2002; Kishida et al., Mol. Ther. 8: 552, 2003; Moroz et al., J. Immunol. 173: 900, 2003)。メモリーT細胞と比較したナイーブT細胞に対するIL-21の選択的効果によって、プライミング中のより大きな影響が示唆され、ならびに実際、マウスの研究によって、緩徐な拒絶反応および持続的な抗腫瘍記憶の誘導により特徴付けられる強いプライミング効果が示されている。IL-21は、おそらくはSTAT3リン酸化またはセントラル記憶表現型の誘導を伴う不確定な機構を通じたアポトーシスの減少の結果として、それまでに活性化された抗原特異的CD8 T細胞のインビボでの長期間の生存を促進する(Brenne et al., Blood 99: 3756, 2002)。これらの効果の中には、IL-21処理したCD8 T細胞の中でのCD28アップレギュレーションに起因する可能性があるものもある。
【0043】
養子細胞療法のためのT細胞集団をヒト対象の治療で使用する方法は、当業者に公知である。本明細書において記載され、かつ当技術分野において公知の方法によって調製されるT細胞集団を、そのような方法において使用することができる。例えば、MART-1抗原特異的T細胞と共に腫瘍浸潤リンパ球を用いる養子細胞療法が臨床で試験されている(Powell et al., Blood 105: 241-250, 2005)。腎細胞癌のある患者は、放射線照射した自己の腫瘍細胞でワクチン接種されている。採取された細胞は抗CD3モノクローナル抗体およびIL-2で2次的に活性化され、その後、患者に再投与された(Chang et al., J. Clinical Oncology 21: 884-890, 2003)。
【0044】
本発明は、エクスビボで細胞を刺激し、その後それらを患者に再投与することにより、患者にある程度の免疫の増強を与えることによって養子免疫療法を増強するための方法を提供する。細胞は対象との組織適合性があり、および同種または自己であってもよい。調製の方法は、患者から末梢血単核細胞(PBMC)を単離する工程、IL-21組成物を含む培地で、これらの細胞を培養で極めて多数にまで拡大する工程、およびこれらの細胞を再導入して患者に戻す工程を含む。NK細胞、LAK細胞、および腫瘍特異的T細胞を含む、これらのエフェクター細胞の増殖に、IL-2(Dudley et al., J. Immunother. 24: 363-73, 2001)またはIL-15(Marks-Konezalik et al., Proc Natl Acad Sci USA, 97: 11445-50 2000; Waldmann TA. Nat Med., 9: 269-77, 2003; Fehniger et al., Cytokine Growth Factor Rev., 13: 169-83, 2002.)などの追加のサイトカインが必要とされてもよい。細胞を移植して患者に戻した後で、IL-21およびIL-2を含み得るサイトカインで患者を治療することによって、彼らの生存率を維持するために、この方法を利用する(Bear et al., Cancer Immunol. Immunother. 50: 269-74, 2001;およびSchultz et al., Br. J. Haematol. 113: 455-60, 2001)。別の態様において、一度PBMCを単離すれば、この細胞をさらに単離して、より均一なCD8+ 細胞の培養を提供することができ、およびこれらの細胞をIL-21組成物の存在下で培養し、その後、患者に再投与する。IL-21は、さらなる抗原特異的T細胞の濃縮なしで、拡大および養子移植に十分なほど高いレベルまでT細胞頻度を増加させることができるので、本発明は、治療までの時間を大いに減少させることができ、かつさらなる選別および/またはクローニングの必要性を除去することができる方法を提供する。
【0045】
本発明は、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、腫瘍患者に対して組織適合性がある表現型を有するPBMCを同定する工程;IL-21組成物および自己の樹状細胞、単球、B細胞、EBVで形質転換したB細胞株、共有される制限的アレルを発現する、EBVで形質転換した同種のB細胞株、人工的な抗原提示細胞などの、抗原提示細胞(APC)の存在下で、患者由来の腫瘍物質を末梢血単核細胞(PBMC)と共培養する工程(Yee et al., Proc Natl Acad Sci. 99 (25): 16168, 2002; Oelke et al., Nat Med. 9 (5): 619-24, 2003; Maus et al., Clin Immunol. 106 (1): 16-22, 2003; Cai et al., Immunol Rev. 165: 249-65, 1998);これらの細胞を培養で拡大する工程;ならびにこれらの細胞を再導入して患者に戻す工程を含む方法を提供する。ある態様において、PBMCは自己である。別の態様において、腫瘍物質は、ペプチド、全RNA、溶解した腫瘍細胞、またはアポトーシス小体を含む。
【0046】
本発明はまた、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、腫瘍患者に対して組織適合性がある表現型を有するT細胞集団を同定する工程;IL-21組成物およびAPCの存在下で、患者由来の腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程;これらの細胞を培養で増幅する工程;ならびにこれらの細胞を再導入して患者に戻す工程を含む方法を提供する。ある態様において、T細胞集団は自己である(Dudley et al., Science 290: 850, 2002)。
【0047】
本発明は、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、(ウイルス伝達、トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはその他の遺伝物質の導入法によって)標的抗原を認識する、T細胞受容体またはシグナル伝達分子と融合したキメラT細胞受容体を発現するように人工的に改変されたT細胞、骨髄細胞、または(NK細胞を含む)PBMC;IL-21組成物の存在下で培養する工程;これらの細胞を培養で拡大する工程;およびこれらの細胞を再導入して患者に戻す工程を含む方法を提供する。(Hughes et al., Hum Gene Ther 16 (4): 457, 2005; Roszkowski et al., Cancer Res 65 (4): 1570, 2005; Cooper et al., Blood 101: 1637, 2003; Alajez et al., Blood 105: 4583, 2005)。ある態様において、T細胞集団は自己である。
【0048】
本発明はまた、癌ワクチン療法を改良するための方法を提供する。多くの腫瘍は、免疫系による破壊のための標的として潜在的に機能を果たすことができる外来抗原を発現する(Boon, T., Adv. Cancer Res. 58: 177-211, 1992)。癌ワクチンは、液性成分および細胞性成分の両方を含む、対象における全身性の腫瘍特異的免疫反応を発生させる。腫瘍から離れた部位に、または局在化した腫瘍の部位にワクチン組成物を投与することによって、対象自身の免疫系から反応を誘発する。抗体または免疫細胞は腫瘍抗原に結合し、かつ腫瘍細胞を溶解させる。しかしながら、インビボでの増強された免疫反応の産生が可能なT細胞集団の増殖の増加に対する必要性が依然として存在する。
【0049】
癌抗原で患者に免疫性を与えるための多数の方法が利用され、および抗原送達の後で免疫反応の強さを増幅するための様々な技術が使用されている(Rosenberg, SA. (編), Principles and practice of the Biologic Therapy of Cancer., 第3版, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, 2000で概説されている)。IL-21を腫瘍ワクチンと組み合わせて使用することができる方法には、IL-21遺伝子を発現するか、またはアジュバントタンパク質との関連でIL-21を送達するかのいずれかの、自己および同種の腫瘍細胞の送達が含まれるが、これらには限定されない。同様に、精製した腫瘍抗原タンパク質、注射されたDNAから発現される腫瘍抗原、または樹状細胞に基づく療法を用いてエフェクター細胞に提示される腫瘍抗原ペプチドの注射と組み合わせてIL-21を送達することができる。これらの種類の療法の例として、改変した腫瘍細胞(Antonia et al., J. Urol. 167: 1995-2000, 2002; およびSchrayer et al., Clin. Exp. Metastasis 19: 43-53, 2002)、DNA(Niethammer et al., Cancer Res. 61:6178-84, 2001)、ならびに樹状細胞(Shimizu et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 96: 2268-73, 1999)によるワクチン接種との関連におけるIL-2のようなサイトカインの使用が含まれる。IL-21を抗癌ワクチンアジュバントとして使用することができる。
【0050】
ワクチン有効性の決定は評価するのが難しい。有効性の究極的な実証は、腫瘍退縮の割合、無病生存の期間、または、少なくとも、進行までの時間(TTP)であり、これらの評価項目は、その後の何年にもわたる患者の経過を必要とする。有効性を評価するためのより直接的な手段を提供するために、早期の測定を可能にし、かつ臨床的結果の予測になると考えられるいわゆる「代理マーカー」の探索が進行中である。今日現在、腫瘍特異的および/またはワクチン特異的免疫反応のインビボ測定は、代理マーカーとして成功していない(Srivastava P., Nat Immunol. 1:363-366, 2000参照)。
【0051】
任意の癌療法に対して、各プロトコルはそれぞれ別に腫瘍反応評価を定義してもよいが、Clinical Research Associates Manual, Southwest Oncology Group, CRAB, Seattle, WA. October 6, 1998, 改訂版, August 1999の中に、例示的な指針を見出すことができる。CRAマニュアル(第7章「Response Accessment」参照)によれば、腫瘍反応とは、全ての測定可能な病変または転移の減少または除去を意味する。医療用写真もしくはX線コンピュータ体軸断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、または触診によって明確に境界が定められる縁を有する2次元的に測定可能な病変を含む場合、疾患は通常、測定可能とみなされる。評価可能な疾患とは、1次元的に測定可能な病変、明確に境界が定められない縁を有する塊、0.5cm未満の両側直径を有する病変、切片間の距離よりも小さい片側直径を有するスキャン画像上の病変、2cm未満の直径を有する触診可能な病変、または骨疾患を含む疾患を意味する。評価不可能な疾患には、胸膜滲出、腹水症、および間接的証拠によって立証される疾患が含まれる。以前に放射線照射を受けた、進行していない病変も通常、評価不可能とみなされる。
【0052】
固形腫瘍反応を評価するための客観的状態プロトコルを用いて、正の治療結果を測定することができる。代表的な基準には、以下のものが含まれる:(1)新しい病変、および疾患関連の症状を伴わない、全ての測定可能な疾患および評価可能な疾患の完全な消失として定義される完全反応(CR)。評価不可能な疾患の証拠なし;(2)評価可能な疾患の進行、新しい病変を伴わない、全ての測定可能な病変の直交する直径の積の合計におけるベースラインから30%を上回る減少または30%と等しい減少として定義される部分反応(PR)。RESIST基準によれば、少なくとも1つの測定可能な病変を有する患者;(3)同じ技術をベースラインとして用いて観察された最小合計に対する測定可能な病変の積の合計における20%もしくは10cm2の増加、または任意の評価可能な疾患の明瞭な悪化、または消失していた任意の病変の再出現、または任意の新しい病変の出現、または死もしくは悪化状態により評価のための回答ができないこと(この癌に無関係でない場合)として定義される進行;(4)CR、PR、または進行の適格性を得ないものとして定義される安定または無反応(前記Clinical Research Associates Manualを参照されたい)。
【0053】
本発明を、以下の限定的でない実施例によってさらに説明する。
【0054】
実施例
実施例1
A. 細胞株および試薬
メラノーマ細胞株A375(CRL 1619; American Type Culture Collection (ATCC), Manassas, VA)、およびMel 526(Arrighi et al., Cancer Res. 60 (16): 4446-52, 2000; Marcinola et al. J. Immunother Emphasis Tumor Immunol. 19 (3): 192-205, 1996)を、HEPES(25mM)、L-グルタミン(4mM)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50mg/ml)、ピルビン酸ナトリウム(10mM)、非必須アミノ酸(1mM)、および10%胎児ウシ血清(Hyclone, Utah)を含むRPMI中で維持した。両株ともHLA-A2アレルを発現しているが、Mel 526のみがMART-1抗原を発現している。T2細胞株は、HLA-A2アレルを発現するTAP欠損T-B細胞ハイブリッドである。EBV-LCL細胞株は、エプスタインバーウイルスにより形質転換されたリンパ芽球様細胞株である(Yee, FHCRC, Seattle, WA)。
【0055】
B. ヒト抗原特異的CD8+ T細胞の誘導
メラノーマM26-35ペプチド特異的T細胞を作製した(Yee at al., PNAS 99: 16168, 2002; Yee et al., J. Immunol. 162: 2227, 1999; Tsai et al., J. Immunol. 158: 1796, 1997)。ドナーの血液は、Puget Sound Blood Center(Seattle, WA)のHLAタイピング研究室によってタイピングされた。まず、CD8+ T細胞をCD8陽性単離キット(Dynabeads, Dynal, Oslo, Norway)によって、白血球分離採血法で採血したPBMCから単離し、RPMI1640、25mM HEPES、2mM L-グルタミン、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50mg/ml)(Life Technologies, Gaithersburg, MD)、および10%正常ドナー由来ヒト血清からなるCTL培地に懸濁し、その後、6ウェル組織培養皿(Costar, Corning Incorporated, Corning, NY)に6×106細胞/ウェルで置いた。成熟DCを採取し、室温で4時間、1%ヒト血清アルブミン(Life Technologies, Gaithersburg, MD)を含むPBS中の3μg/mlのβ2ミクログロビン(Scripps Lab, San Diego, CA)の存在下、2×106細胞/mlで、40μg/mlの合成ペプチドでパルスした。滅菌PBS(Life Technologies)で3回洗浄した後、純化したCD8 T細胞とDCを、6ウェルプレートに、3×105細胞/ウェルで混合した。培養を開始した直後に、サイトカイン、IL-15(10ng/ml, R&D Systems, Minneapolis, MN)、IL-2(10U/ml, Chiron, Emeryville, CA)、IL-7(10ng/ml, R&D Systems)、またはIL-21(30ng/ml, ZymoGenetics, Seattle, WA)、を各ウェルに個別に加えた。2回目の刺激の1日後、活性化した抗原特異的T細胞のさらなる拡大の促進のために、IL-2(50IU/ml)およびIL-7(10ng/ml)を加えた。
【0056】
AIM-V(登録商標)培地(Life Technologies)の中で、付着性のPBMCをIL-4(500U/ml, R&D)およびGM-CSF(800U/ml, Amgen, Thousand Oaks, CA)に曝露させることによってDCを作製し(Bender et al., J. Immunol. Methods 196: 121, 1996)、その後、さらに2日間、2ng/mlのIL-1β、1000U/mlのIL-6、10ng/mlのTNF-α(R&D Systems)、および1μg/mlのPGE-2(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いて成熟させた。FACS解析で明らかにされたように、成熟DC集団は、8日目に90%を上回るCD83+ DCを含んでいた。
【0057】
C. T細胞の抗体+ペプチド-MHCテトラマー染色
以前に記載されたプロトコル(Altman et al., Science 274: 94, 1996)に基づいて、Fred Hutchinson Cancer Center の免疫モニタリング研究室で、PEまたはAPC標識したM26-MHC-テトラマーおよびG154-MHC-テトラマーを作製した。試料分析用に、まず、25μlの2% FCS/PBS中の0.5×106細胞を、室温で1時間、ペプチドテトラマー-PEまたはAPC(20μg MHC/mlの最終濃度)で染色し、その後、4℃で20分間、抗CD28-APC(BD, PharMingen, San Diego, CA)または抗CD28-FITC(Caltac Lab, Burlingame, CA)、抗CCR7-PE、および抗CD45ROまたは抗CD45RA-FITC(BD, PharMingen, San Diego, CA)で染色した。PBSで洗浄した後、2%FBSを含むPBSに細胞を再懸濁し、DAPIを加えた。データを、FACScaliburフローサイトメーターおよびCellQuest(BD)を用いて取得し、ならびにFlowJoソフトウェア(Tree Star, San Carlos, CA)を用いて解析した。
【0058】
D. ナイーブおよびメモリーサブセットの濃縮
磁気ビーズの組み合わせおよびAutomacs磁気分離装置(Miltenyi Biotech, Auburn California)の連続適用により、ヒト末梢血単核細胞からT細胞を純化した。CD8単離キットIIによる陰性選別を用いて、CD8+細胞を単離した。それに続くナイーブ(CD8+ CD45RO- CD45RA+ CD62L+)細胞の選別は、CD45ROビーズを用いたメモリーCD8細胞の除去、その後、PE結合CD62L抗体(BD, PharMingen, San Diego, CA)を用いた染色によるCD62L陽性細胞の陽性選別および抗PEビーズとのインキュベーションを伴った。メモリー細胞の単離(CD8+ CD45RA- CD45RO+)は、CD45RA+ビーズを用いたナイーブ集団の除去を伴った。FACsで評価した典型的な純度は95%を上回っていた。
【0059】
E. 抗原特異的CTLのクローニングおよび拡大
Yee, 前記, 2002; Riddell et al., J. Immunolog. Methods 128: 189, 1990に記載されているようなクローニングおよび拡大の手順を用いて、T細胞を単離した。0.2mlのCTL培地に、抗CD3 mAb(OKT3, Ortho Tech, Raritan, NJ)および50U IL-2/mlと共に、1:50,000のレスポンダー 対 スティミュレーターの比率にした放射線照射フィーダー細胞(PBLおよびLCL)の存在下で、96ウェル丸底プレート(Nalge Nunc International, Denmark)にテトラマー+分離したT細胞を限界希釈でプレーティングした。プレーティング後10〜14日で、クローンの増殖について陽性のウェルを同定し、微小細胞毒性アッセイ法でスクリーニングした。ペプチド特異的クローンを25cm2フラスコ(Costar, Corning Incorporated, Corning, NY)に移し、抗CD3 mAbで再刺激し、かつ放射線照射した同種のPBLおよびLCLを速やかな拡大のためのフィーダー細胞として加えた。再刺激の24時間後、およびその後3日毎に、培養にIL-2を50U/mlで与えた。14日後、細胞をさらなる解析のために使用し、または凍結保存した。
【0060】
F. インビトロ細胞毒性アッセイ法
標的細胞(375、526メラノーマ細胞株、またはT2細胞)を100μCi 51Crで標識し、および37℃+5% CO2で4時間、エフェクター細胞と共培養した。ペプチド量力価の検討のために、T2を101〜107pg/mlの範囲の濃度のペプチドで1時間パルスし、その後、51Cr標識の前に洗浄した。放出された51Crをγシンチレーションカウンターで測定し、以下の方程式を用いて、%特異的溶解を決めた:%特異的放出=実験的放出−自然放出/全放出。全てのアッセイ法において、自然放出は全放出の<10%であった。
【0061】
G. 高親和性CTLクローンおよび低親和性CTLクローンを同定するためのMHC/ペプチド解離アッセイ法
CTLクローンを、室温で1時間、APC-テトラマー(20μg/ml)で染色し、結合していないテトラマーを除去するために、冷PBSで1回洗浄した。TCRからのそれらの解離の後、APC-テトラマーの再結合を防ぐために、過剰(100μg/ml)のPE標識テトラマーの存在下で、細胞をインキュベートした。この期間中、細胞のアリコートを異なる時点で回収し、かつフローサイトメトリー解析用に1%パラホルムアルデヒド中で固定した。APC テトラマーの解離の割合は、TCR親和性と逆相関した(Dutoit et al., J. Immunol. 168: 1167, 2002)。
【0062】
実施例2
IL-21は初回インビトロ刺激後に発生する抗原特異的CD8+ T細胞の頻度を強化する
HLA A2+健康ドナーのPBMCからCD8+ T細胞を単離し、かつ腫瘍関連自己抗原である、MART-1(M26-35ペプチド)の免疫原性エピトープでパルスした自己の成熟樹状細胞と共培養することにより、抗原特異的T細胞の初回インビトロ刺激についてのモデル系を確立した。サイトカインの添加なしで、またはIL-21を用いて、培養を増殖させた(図1)。刺激の7日後、テトラマー染色によって、培養におけるMART-1特異的CD8 T細胞反応の頻度を評価した。代表的な健康ドナー(CG、NE、およびLD)において、1サイクルのインビトロ刺激の後、サイトカインなしの対照培養と比べて、IL-21に曝露された培養では、16〜20倍のMART-1特異的CD8+ T細胞頻度の増加が観察された(それぞれ、0.12%対2.26%;0.12%対1.95%、および0.11%対2.2%)(図1)。IL-21処理した培養で発生した抗原特異的T細胞の絶対数は、対照培養を20〜30倍より多く上回った(表1)。
【0063】
【表1】
【0064】
初回インビトロ刺激の間の、共通γ鎖サイトカイン受容体ファミリーに属するその他のサイトカイン、IL-2、IL-7、およびIL-15の使用は、サイトカインなしの対照培養と比べて、MART-1特異的CD8+ T細胞の頻度に対する付加的な効果を生まなかった。
【0065】
しかしながら、本発明者らのグループおよびその他により示されているように、IL-2およびIL-7の添加は、以前に刺激された、抗原を経験したT細胞のエクスビボ拡大を実際に促進する(Gervois, et al., Clin Cancer Res 6: 1459-1467, 2000; Liao et al., Mol Ther 9: 757-764, 2004)。2回目のインビトロ刺激の後で培養に添加した場合、IL-2(10U/ml)およびIL-7(10ng/ml)は、未処理の培養(2.43%)を上回り、IL-21処理した培養(11.8%)の中で、大きなMART-1特異的CD8 T細胞集団のさらなる増加を生んだ(図2、ドナーCG)。
【0066】
これらの研究は、IL-21が、MART-1の発現を共有する腫瘍である、メラノーマのある患者における腫瘍関連抗原特異的CTL反応を強化する能力を有することを示している。代表的な患者において、2サイクルのインビトロ刺激後、未処理の培養と比べて、IL-21処理した培養で発生するMART-1特異的CTLの頻度は、IL-21を加えた場合、未処理の対照と比べて、40倍の増加を示す(19.1%対0.46%)(図2、患者ST)。
【0067】
IL-21処理した培養の中で発生する抗原特異的CD8 T細胞の頻度および絶対数の増加が、増殖の増強および/または生存の増強によるかどうかを評価するために、ナイーブCD8 T細胞をCFSEで標識し、MART-1ペプチドをパルスした自己のDCによりインビトロで刺激し、7日目に、分裂細胞(各細胞分裂に伴うCFSE染色の量子減少によって決定される)およびアポトーシス(アネキシンV染色)の分画について評価した。CFSE染色について、テトラマー陽性(MART-1特異的)T細胞集団に対して行なわれた解析は、IL-21処理した培養物(18%)よりも実質的に多い、未処理の培養(44%)中の非分裂細胞の分画(右端の区画)を示している(図4)。事実、急速に分裂している抗原特異的T細胞(左端の区画) 対 分裂していない抗原特異的T細胞の比率は、IL-21処理した培養の中で、未処理の培養と比べて、3倍よりも大きい(63%:18% 対 36%:44%)。T細胞集団に対するIL-21の効果が抗原特異的であることは、大部分のテトラマー陰性(非抗原特異的)T細胞が非分裂相に留まっていることにより示されている(95.6%および87.9%)。
【0068】
7日目のテトラマー陽性T細胞のアネキシンV染色は、未処理の培養と比べて、IL-21処理した培養でのアポトーシスを起こした(アネキシンV+)抗原特異的T細胞の分画のささやかな減少を示している(それぞれ、テトラマー+ T細胞の10.4% 対 5.4%、図2)。総合すれば、これらの結果は、IL-21処理した培養の中で発生する抗原特異的CD8 T細胞の頻度および絶対数の増加が、主として抗原特異的な細胞増殖の増強に起因し、およびごく一部、生存の増加またはアポトーシスの減少に起因するということを示唆している。
【0069】
実施例3
IL-21は主としてナイーブのCTL集団の中での抗原特異的T細胞反応を増強する
IL-21が抗原特異的CD8+ T細胞の発生を増強する能力を、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞の中で別々に評価した。純化したナイーブ(CD45RA+、CD62L+が>98%)CD8+ T細胞の集団を、健常ドナー(CG)(図5)および転移性メラノーマのある個体(ST)の両方由来のメモリー(CD45RO+が100%)CD8+ T細胞と比較した。IL-21がメモリーCD8+ T細胞から発生するMART-1特異的細胞の頻度に最小限の効果を及ぼす(0.10%から0.15%へ、および0.05%から0.037%へ)のに対し、IL-21曝露の後、ナイーブCD8 T細胞の中では12〜90倍の増加が観察され(0.94%から12.5%へ、および0.08%から7.08%へ)、IL-21が主としてナイーブT細胞に影響を及ぼすという証拠を与えている。
【0070】
実施例4
IL-21処理した培養物から発生するCTLは増強された腫瘍反応性を有する高親和性の抗原特異的T細胞の集団を表す
IL-21の影響下、発生した抗原特異的T細胞集団の機能をクローンレベルでさらに特徴付けるために、健康ドナー(CG)およびメラノーマ患者(ST)の両方由来のテトラマー+ CD8+ T細胞を7日目に分離し、96ウェルプレートの中に限界希釈でクローニングした。微小細胞毒性アッセイ法によって同定したMART-1特異的クローンを拡大し、かつ1)ペプチドをパルスしたT2細胞の50%最大溶解に必要なペプチド濃度(P50)、および2)抗原陽性のメラノーマ標的を溶解する能力について検査した。P50を評価するために、HLA-A2をトランスフェクトしたEBV B細胞株、T2、を107〜102pMの範囲のペプチド濃度で滴定した。50%溶解(P50)のためのペプチド必要量(nM)として結果を示す。IL-21処理した培養物から発生したCTLクローンは、それらの未処理の等価物よりも>1ログ低いペプチド必要量が必要であった−それぞれ、平均3nM(0.6〜30nMの範囲) 対 平均80nM(16〜500nMの範囲)(図6A)。IL-21の同様の効果は、メラノーマ患者(ST)から発生したCTLクローンについても見られた(図6B)。
【0071】
10:1というエフェクター 対 標的(E:T)の比率では、IL-21の存在下で刺激した後に単離したT細胞クローンは、IL-21の非存在下で単離したT細胞クローンよりもずっと高いMART-1陽性526メラノーマ細胞株に対する特異的溶解活性(35〜45%)を示した(図6Cおよび6D)。それぞれの個々のクローンについて、腫瘍反応性の増加はペプチド必要量の減少と一致し、IL-21の存在下で発生したCTLが、その同族の標的とのより高い結合力相互作用を示したことを示唆している。
【0072】
テトラマーに基づくTCR染色アッセイ法を用いて、腫瘍結合力の増加は、より高い親和性のTCRによるものであり、かつその他の副次的な要因によるものではないということを示すことができる。テトラマー染色の強度は、通常、TCR親和性と相関関係があることができるが(Yee et al., J. Immunol. 162: 2227, 1999; Crawford et al., Imuunity 8: 675, 1998)、その特異的TCRリガンドからのテトラマー解離の割合、Kd、に基づいて、より正確なTCR親和性の定義を得ることができる(Dutoit et al., J. Immunol. 168: 675, 1990)。このアッセイ法において、TCR-ペプチド-MHC相互作用またはTCR親和性のKdは、過剰の非標識テトラマーの存在下で、長時間にわたって残留する結合したテトラマーの分画と逆相関する。IL-21処理した培養または未処理の培養から誘発されたCTLクローンをM27ペプチド-テトラマー-PEで染色し、かつ過剰の非標識M27-テトラマーとインキュベートした。特定の時点(2〜60分)でのフローサイトメトリーによって、テトラマーが結合したCTLの分画を決定した。IL-21処理した培養物で発生したクローンと比べて、未処理の培養物から単離されたクローンでは、TCR/テトラマー-ペプチド解離速度が有意により速いことが分かった(図7)。総合すると、これらの結果は、IL-21処理が、高親和性TCRを発現するT細胞クローンの発生をもたらすことを示している。
【0073】
IL-21を介する高親和性T細胞の濃縮が、限られた数の抗原特異的T細胞のオリゴクローンの拡大によるのか、またはT細胞レパートリーに対するより広範な効果を表すのかを示すために、抗Vβ抗体のパネルを用いて、高親和性T細胞クローンおよび低親和性T細胞クローンのコホート間のTCR Vβ発現を調べた。例えば、患者CGについて、9つの高親和性T細胞クローンの中で、7つは特有のVβ鎖を発現し(2つだけがVβ発現を共有した)、および同様に多様なTCRレパートリーが、この患者の低親和性T細胞クローンの集団の中で観察され(10の異なる低親和性クローンの中で、2つだけが同じVβを共有した)、IL-21の効果が単にインビトロでの高親和性T細胞クローンのオリゴクローン集団の拡大によるのではないことを示唆している(図3)。
【0074】
実施例5
IL-21を用いた抗原特異的CD8 T細胞の培養はCD28発現、IFN-γおよびIL-2の産生を維持する
CD28はCD4 T細胞反応およびCD8 T細胞反応の両方の発生にとって重要な共刺激分子である。CD28受容体を介するシグナル伝達は、CD4 T細胞およびCD8 T細胞の両方におけるIL-2 mRNAの安定性の増加およびIL-2産生の増加をもたらす(Boise et al., Immunity 3: 87-98, 1995; Ragheb et al., J. Immunol. 163: 120-129, 1999)。活性化の後、CD28発現はヒトCD8+ T細胞のサブセットで失われ、および抗CD3刺激の後、このサブセットは増殖の減少を示す(Azuma et al., J. Immunol. 150: 1147-1159, 1993)。CD28-CD8+ T細胞は、高齢者、ならびに持続的ウイルス感染、EBVおよびCMVのある人々のCD8メモリーT細胞プールで増加している(Posnett et al., Int. Immunol. 11: 229-241, 1999)。CD28発現の消失はHIV患者において最も顕著であり(Appay et al., Nat. Med. 8: 379-385, 2002)、およびこの集団の増加はメラノーマのある患者で報告されている。最近、CMV特異的CD8 T細胞でCD28発現を回復することにより、インビトロでのIL-2産生および抗原特異的CD8 T細胞の生存の増加が維持されることが示された(Topp et al., J. Exp. Med. 198: 947-955, 2005)。したがって、この経路は、持続的なCD8の生存および機能のための重要な経路として認識されている。
【0075】
自己抗原MART-1を認識するCTLは、健康ドナーの末梢血に少数で存在し、および通常、ナイーブ表現型(CD45RA+、CCR7+、およびCD28int)によって特徴付けられる。IL-21存在下におけるこの希少な集団の分化を調べた。培養1週間後、抗原刺激した、未処理の細胞は、CCR7発現およびCD28発現の消失を伴うCD45RO+表現型を示した。対照的に、IL-21処理した培養は、抗原による初回刺激の4週後でさえ、持続的レベルのCD28発現を示した(図10)。このCD28アップレギュレーションは、MART-1特異的CTLおよびgp-100特異的CTLの両方について、ナイーブ健康ドナーおよびメラノーマ患者の両方で観察された。
【0076】
アップレギュレートされたCD28発現が機能的に能力のあるシグナルをもたらすかどうかを評価するために、抗原により引き起こされたIL-2およびIFNγの産生をこれらの培養で解析した。図11に示すように、未処理のCD28lo発現細胞と比べて、IL-21処理したCD28hi細胞では、IL-2の産生が有意に亢進していた。さらに、Il-2の産生はCTLA-4Igの添加によって阻害され、CD28発現がこれらの細胞におけるIL-2産生に必須であったことを示唆している。
【0077】
これらのデータは、インビトロで、IL-21が、IL-2産生の能力のあるCD28発現メモリーCD8 T細胞集団を誘導することができることを示唆している。このことは、インビトロおよびインビボにおけるこれらのCD8 T細胞の生存および活性化の増加と置き換えてもよく、かつ単剤療法としての、ならびに癌およびウイルス感染に対する養子細胞療法における、IL−21処理の重要な役割を示唆している。
【0078】
実施例6
IL-21はgp100およびNY-ESO-1抗原に対するCD8 T細胞反応に影響を及ぼす
T細胞がその他の自己抗原を認識することを示すために、その他2つの腫瘍関連自己抗原、メラノソーム抗原である、gp100(G154ペプチド)、および癌精巣抗原である、NY-ESO-1(NY157)を用いて、同様の方法で、CD8+ T細胞に対するIL-21の影響を評価した。Li et al., J. Immunol. 175: 2261-2269, 2005を参照されたい。
【0079】
NY-ESO-1(NY157)またはgp100(G154)ペプチドでパルスした自己の樹状細胞(DC)を用いて、インビトロでCD8+ T細胞を刺激した。IL-21処理した培養に、IL-21(30ng/ml)を添加した。初回インビトロ刺激の6日後、フローサイトメトリーでのテトラマー染色および多重パラメーター解析により、抗原特異性および表面表現型について、培養を解析した。
【0080】
図13パネルAで、囲んだゲートの隣に、全CD8+ T細胞の%として、NY-157およびG154特異的CTLの頻度を示す。例えば、NY-ESO-1特異的CTLの増加倍数は、IL-21処理した細胞では、対照を9.8倍大きく上回った(5.3% : 0.54%)。NY-ESO-1特異的CTLの絶対数の増加倍数は、それぞれの培養における細胞の数に基づいて計算し、およびNY-ESO-1については、IL-21処理した細胞の中でほぼ20倍大きいことが分かった。
【0081】
図13パネルBで、対照またはIL-21処理した培養物由来のゲートしたテトラマー陽性細胞を、CD28発現について解析した。(細胞は全て、CD45RO+、CCR7陰性であった)。NY-ESO-1またはgp100特異的CTLの中でのCD28発現についてのヒストグラム解析は、対照対照と比べて、IL-21処理した培養物の中で、有意にアップレギュレートされていることが分かった。これらの結果は、3人のHLA-A2+の個体からの6回の別々の実験の代表例であった。
【0082】
実施例7
骨髄機能廃絶療法および養子細胞移植の後にIL-21を受けるメラノーマ患者における抗腫瘍免疫の増強
養子細胞療法(ACT)は、腫瘍反応性リンパ球のエクスビボ選択、および自己の腫瘍を有する宿主に対するその活性化に基づく。サイトカインの存在下、患者自身の腫瘍抗原の存在下で、腫瘍特異的T細胞(TIL)をインビトロで活性化および拡大し、その後、同じ患者に移し、その後、サイトカインによる維持治療を行う。非常に多くの患者で、これは、末梢における抗原特異的T細胞の数の増加を引き起こし、客観的な腫瘍反応によって見られるような抗腫瘍効果をもたらす。IL-21は、抗原特異的T細胞のインビトロ活性化剤/増量剤の両方として使用し、および癌患者に一度移されたT細胞の維持療法のためにも使用する。
【0083】
ヒト対象を用いる全ての研究は、臨床試験を行う病院の施設内審査委員会の事前承認を受ける。インフォームドコンセントの後、末梢血単核細胞(PBMC)を入手し、MART-1(M27)もしくはgp100(G154)のA2拘束性ペプチドエピトープでパルスした自己の樹状細胞を用いることによって、または患者自身の腫瘍からの生検に由来する腫瘍細胞溶解物を用いることによって、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を発生させる。適切なサイトカイン(25〜50ng/mlのIL-2または10〜50ng/mlのIrIL-21)を用いて、GMP承認を受けた反応器で、T細胞を拡大させる。場合によっては、1週間間隔の3サイクルの刺激の後、T細胞をクローニングし、かつインビトロ試験用に拡大させる。クロミウム放出アッセイ法で抗原陽性腫瘍標的の特異的溶解を示すCTLクローンを選別する。2〜3日毎に、30ng/mlの抗CD3抗体(OKT3, Orthoclone; Ortho Biotech, Raritan, NJ)、106細胞/mlの放射線照射した同種PBMC、放射線照射した同種リンパ芽球様細胞株(2×105細胞/ml)、および25〜50ユニット/mlの一連のIL-2(aldesleukin; Chiron)を使用することによって、14日サイクルでクローンを拡大させる。全てのクローンは、CD3+、CD4-、CD8+として特徴付けられ、および抗原刺激後、高親和性IL-2受容体(CD25)を発現する。
【0084】
第III〜IV期の転移性メラノーマのある患者は、2日間のシクロホスファミド(60mg/kg)、その後の5日間のフルダラビン(25mg/m2)からなる非骨髄機能廃絶的化学療法を受ける。フルダラビンの最後の投与の翌日に、患者は腫瘍反応性リンパ球の細胞注入(106〜1010細胞/注入)およびサイトカイン療法(8時間毎の高用量IL-2 720,000IU/kgの静脈内注射、または様々な治療計画での10〜30μg/kgのrIL-21)を受ける。患者の中には、皮下に注射するフロイント不完全アジュバント(IFA)中の1mgのMART-1:26〜35(27L)ペプチドまたはgp100:209〜217(210M)ペプチドでワクチン接種を受けるものもいる。患者の血液学的パラメーターを毎日モニターする。固形腫瘍反応を評価するための客観的状態プロトコルを用いて、正の治療結果を測定することができる。標準的な放射線学的検討および身体検査を用いて患者の反応を評価する。Clinical Research Associates Manual, Southwest Oncology Group, CRAB, Seattle, WA, October 6, 1998, 改訂版, August, 1999を参照されたい。
【0085】
IL-21を用いて細胞をインビトロで培養するか、またはACT後にIL-21を用いて患者を維持するかのいずれかによる養子細胞療法との関連で、この試験における客観的なCRおよび/またはPR反応の存在は、抗腫瘍反応におけるIL-21の潜在的役割を示唆している。
【0086】
実施例8
IL-21を用いたインビトロ培養はACTのマウスモデルにおける抗腫瘍効果を増強する
Pmel-1トランスジェニックマウスは、ヒトメラノーマ特異的ペプチド抗原gp10025〜33に特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するように人工的に作製されたマウスである(Overwijk et al., J. Exp. Med. 198: 569-580, 2003)。pmel-1トランスジェニックマウス由来の脾細胞を単離し、ならびに1μM ヒトgp10025〜33ペプチドおよび30IU/mlの組換えヒトIL-2または10〜100ng/mlのマウスIL-21を含む培地の存在下で、6〜7日間、培養した。
【0087】
メスのC57Bl/6マウス(6〜12週齢、Charles River Laboratories)に、2〜5×105のB16-F10メラノーマ細胞を皮下注射し、10〜14日後、(上で詳述したような)インビトロで培養したpmel-1脾細胞の静脈内注射での養子移植による処理を施す。移植の日に、担腫瘍マウスの亜致死的な全身放射線照射(5Gy)によって、リンパ球減少を誘導する。その後、ヒトgp100を発現する2×105 pfuの組換え鶏痘ウイルスを用いたワクチン接種、それに続くサイトカインによる処理(rhIL-2、100μg/用量を6〜15投与)、または(ワクチン接種なしで)サイトカインのみによる処理のいずれかをマウスに施す。カリパスを用いて腫瘍を測定し、および公式 腫瘍容積=1/2(B2×L)、式中、Bは腫瘍の最短直径、かつLは腫瘍の最長直径、を用いて容積を測定する。
【0088】
IL-21で培養したpmel細胞を移植した時の腫瘍増殖の減少は、ACTのための抗原特異的T細胞のインビトロ活性化および拡大におけるIL-21の潜在的役割の証拠を提供している。
【0089】
実施例9
インビボでのIL−21処理はACTのマウスモデルにおける抗腫瘍効果を増強する
Pmel-1トランスジェニックマウスは、ヒトメラノーマ特異的ペプチド抗原gp10025〜33に特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するように人工的に作製されたマウスである(Klebanoff et al., PNAS 101: 1969-1974, 2004)。pmel-1トランスジェニックマウス由来の脾細胞を単離し、ならびに1μM ヒトgp10025〜33ペプチドおよび30IU/mlの組換えヒトIL-2または10〜100ng/mlのマウスIL-21を含む培地の存在下で、6〜7日間、培養した。
【0090】
メスのC57Bl/6マウス(6〜12週齢、Charles River Laboratories)に、2〜5×105のB16-F10悪性黒色腫細胞を皮下注射し、10〜14日後、(上で詳述したような)インビトロで培養したpmel-I脾細胞の静脈内注射での養子移植による処理を施す。移植の日に、担腫瘍マウスの亜致死的な全身放射線照射(5Gy)によって、リンパ球減少を誘導する。その後、ヒトgp100を発現する2×105 pfuの組換え鶏痘ウイルスを用いたワクチン接種、それに続くサイトカインによる処理(rhIL-2、100μg/用量、またはmIL-2、20〜100μg/用量を6〜15投与)、または(ワクチン接種なしで)サイトカインのみによる処理のいずれかをマウスに施す。カリパスを用いて腫瘍を測定し、および公式 腫瘍容積=1/2(B2×L)、式中、Bは腫瘍の最短直径、かつLは腫瘍の最長直径、を用いて容積を測定する。
【0091】
インビボでのIL-21処理後の腫瘍増殖の減少は、ACT後の腫瘍特異的T細胞の維持および活性化におけるIL-21の役割を示している。
【0092】
本発明の具体的態様が例示の目的のために本明細書において記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を行ってもよいということが、上記の内容から、正しく理解されると考えられる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除き、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】IL-21がMART-1特異的CTLの発生を増強することを示す。実施例で記載されているようなMART-1、M26ペプチドでパルスした自己の成熟樹状細胞を用いて、健康なHLA-A2+ドナーCG、NE、およびLD由来のCD8+ T細胞をインビトロで刺激した。 刺激後7日目に、各実験群からの106細胞を採取し、20μg/mlのペプチド/MHCテトラマー(PE、縦軸)および生体染色色素(PIまたはDAPI、横軸)で染色した。ゲートしたリンパ球(純化したCD8+細胞)中のテトラマー陽性細胞のパーセンテージとしてデータを表す。
【図2】IL-21がMART-1特異的CTLの発生を増強することを示す。実施例で記載されているようなMART-1、M26ペプチドでパルスした自己の成熟樹状細胞を用いて、健康なHLA-A2+ドナーCG、NE、およびLD由来のCD8+ T細胞をインビトロで刺激した。 Aに示すドナーCG、NE、およびLD由来の未処理のおよびIL-21処理した培養に対応する何百万ものテトラマー+細胞における絶対数、ならびに未処理の培養に対するIL-21処理した培養の絶対数の増加倍数。C、健常ドナーCG、および転移性メラノーマのある患者ST由来の培養を、刺激1の間、IL-21の存在下または非存在下で、第1の刺激(刺激1)および第2の刺激(刺激2)の7日後に解析した。刺激2の後に、IL-2およびIL-7を添加した。ゲートしたリンパ球(純化したCD8+細胞)中のテトラマー陽性細胞のパーセンテージとしてデータを表す。上の結果は、各ドナーについての3回の別々の実験の代表例である。
【図3】その他のγ鎖サイトカイン、IL-2、IL-7、またはIL-15への曝露が抗原特異的CTLの発生を増強しないことを示す。健康なHLA-A2+ドナー由来のCD8+ T細胞を、実施例で記載したようなMART-1、M26ペプチドでパルスした自己の成熟樹状細胞によりインビトロで刺激した。刺激後7日目に、各実験群からの106細胞を採取し、かつ20μg/mlのペプチド/MHCテトラマー(PE、縦軸)および生体染色色素(PIまたはDAPI、横軸)で染色した。ゲートしたリンパ球(純化したCD8+細胞)中のテトラマー陽性細胞のパーセンテージとしてデータを表す。データは、3人のHLA-A2+ドナー由来の培養の代表例である。
【図4】初回インビトロ刺激の間に、IL-21処理した細胞が、増殖の増加およびアポトーシスの減少を経ることを示す。純化したナイーブ(CD45RA+、CD62L+)リンパ球の集団をCFSEでプレインキュベートし、IL-21の非存在下(サイトカインなし)または存在下(IL-21処理)で、MART-1ペプチドで刺激した。7日目に、細胞をMART-1ペプチド‐MHCテトラマー‐PEで染色し、分裂している細胞(CFSE)またはアポトーシスを経ている細胞(アネキシンV)の分画について解析した。CFSE染色された細胞は連続的な分裂に伴って蛍光強度を失う。分裂していない(右端の囲み)、分裂している(真ん中の囲み)、および急速に分裂している(左端の囲み)テトラマー+細胞のパーセンテージとして結果を表す。アポトーシスを起こしている細胞については、アネキシンV染色性テトラマー+細胞を右上の区画のパーセンテージとして表す。
【図5】IL-21が、メモリーCD8+ T細胞に対して、主にナイーブT細胞に影響を及ぼすことを示す。健常ドナー(CG)およびメラノーマのあるドナー(ST)由来の高度に純化したナイーブ(CD45RA+、CD62L+)T細胞またはメモリー(CD45RO+)T細胞の集団を、IL-21非存在下または存在下でのMART-1ペプチドに対する抗原特異的反応の誘導について評価した。MART-1特異的CTLのパーセンテージを、2サイクルのインビトロ刺激後のゲートした全てのリンパ球(純化したCD8+細胞)の中のテトラマー+細胞のパーセンテージとして表す。結果は、別の2人の健常ドナー(NE、LD)および別の2人の患者ドナー(AM、RE)に対して行なわれた実験の代表例である。
【図6】IL-21が、高結合力の抗原特異的CTLの発生を選択的に誘導することを示す。個々のMART-1特異的CD8+ T細胞クローンを、IL-21の非存在下(対照)または存在下(IL-21)で刺激した培養から単離した。各実験条件からの8〜12の代表的なCTLクローンを、漸減的な濃度のM26ペプチドでパルスしたT2細胞を用いるクロミウム放出アッセイ法で、標的親和性について評価した(ペプチド量滴定解析)。標的細胞の50%最大溶解に達するのに必要な濃度(nM)としてデータを表す。概して、IL-21によって発生したCTLクローンは、サイトカインなしの対照で発生したCTLクローンと比べて、特異的溶解のためのペプチド必要量の減少を示した(* p<0.01)。A:健康ドナー、CG(●);B:メラノーマ患者、ST(△)。これらの同じクローンを、標準的な4時間の51クロミウム放出アッセイ法(CRA)における、10対1のE/T比での、MART-1+腫瘍細胞株(526)に対する特異的反応性について評価した。サイトカインなしの対照から単離されたCTLクローンよりも有意に多い、抗原陰性腫瘍のバックグラウンド溶解(375 ○、△)を含む抗原陽性腫瘍の溶解(526 ●、▲)が、IL-21処理した培養から単離されたCTLクローンで観察された(†p<0.01)。C:健康ドナー、CG(●、○);D:メラノーマ患者、ST(△、▲)。結果は、3人の健常ドナーおよび3人の患者ドナーの代表例である。
【図7】IL-21処理した培養がより高い親和性のTCRを発現するCTLを濃縮することを示す:テトラマー解離アッセイ法。過剰の非標識テトラマーの存在下で、長時間にわたって残留する結合したテトラマーの分画を表す、テトラマー解離アッセイ法を、個々のクローンのTCR解離率またはTCR親和性の代理測定として用いた。IL-21処理した培養物由来のPE-テトラマー標識されたMART−1特異的CTLクローン(●)の分画を、未処理の培養物由来のクローン(○)と長時間にわたって(2〜60分)比較した。時間0からのテトラマー染色のパーセント蛍光強度の減少率は、TCR親和性と逆相関している。結果は4人のドナーの代表例である。
【図8】IL-21処理した培養がCD28hi抗原特異的CTLの集団を産出することを示す。刺激前のPBMCから細胞を回収し、その後、IL-21の非存在下または存在下で、MART-1ペプチドをパルスした自己の樹状細胞による刺激後、7日。細胞をMART-1テトラマーについて染色し、かつ同時に、CD45RAまたはCD45ROのいずれか、CD28、およびCCR7で染色した(図7)。個々の表現型マーカーについてのヒストグラム解析を、ゲートしたMART-1テトラマー染色細胞に対して行なった。刺激後27日目由来の培養について、ゲートしたテトラマー染色細胞上のCD28発現をさらに示す。これらの結果は3人のドナー由来の培養の代表例である。
【図9】CD28hiおよびCD28低発現CTLの抗原特異的刺激後のIL-2産生を示す。IL-21処理した(CD28hi)培養または未処理の(CD28low)培養由来のMART-1テトラマー+ CD8+ T細胞を選別し、およびパルスしていないT2細胞、MART-1(M26)ペプチドをパルスしたT2細胞のみ、またはB7-CD28の関与を阻止するためのCTLA4-Ig(0.5μg/ml)を伴うMART-1(M26)ペプチドをパルスしたT2細胞のいずれかと共に共培養した。48時間後に上清を回収し、およびELISAでIL-2について解析した。抗原刺激後のCD28高発現MART-1特異的CTLの中のIL-2産生の特異的誘導、およびCTLA4-Igによる阻害が観察され、IL-21処理した細胞の中でのIL-2誘導がCD28依存的であることを示唆している。結果は3回のアッセイ法の平均であり、エラーバーは示した通りである。
【図10】CD28hiおよびCD28low発現CTLの抗原特異的刺激後のIL-2産生を示す。IL-21処理した培養または未処理の培養由来のMART-1テトラマー陽性CD8細胞を選別し、およびパルスしていないT2細胞、MART-1(M26)ペプチドをパルスしたT2細胞のみ、またはB7-CD28の関与を阻止するためのCTLA4-Igを伴うMART-1ペプチドをパルスしたT2細胞のいずれかと共に共培養した。48時間後に上清を回収し、ELISAでIL-2について解析した。抗原刺激後のCD28hi発現MART-1特異的CTLの中でのIL-2産生の特異的誘導、およびCTLA4-Igによる阻害が観察される。結果は3回のアッセイ法の平均である。
【図11】IL-21がgp100およびNY-ESO-1抗原に対するCD8 T細胞反応に影響を及ぼすことを示す。CD8 T細胞をNY-ESO-1またはgp100ペプチドでパルスした自己のDCを用いてインビトロ両方で刺激した。IL-21処理した培養物にIL-21を添加した。初回インビトロ刺激の6日後、フローサイトメトリーでのテトラマー染色および多重パラメーター解析により、培養を抗原特異性および表面の表現型について解析した。パネルAにおいて、NY-ESO-1およびG154特異的CTL頻度を囲んだゲートの隣に全てのCD8 T細胞のパーセンテージとして示す。NY-ESO-1特異的CTLの絶対数の増加倍数をそれぞれの培養における細胞の数に基づいて計算し、およびNY-ESO-1については、IL-21処理した細胞で約20倍多いことが分かった。パネルB、対照培養およびIL-21処理培養由来のゲートしたテトラマー陽性細胞をCD8発現について解析した。細胞は全て、CD45RO+、CCR7-であった。NY-OEST-1またはgp1000特異的CTLの中でのCD28発現についてのヒストグラム解析は、対照と比べて、IL-21処理した培養の中で顕著にアップレギュレートされていることが分かった。これらの結果は、3人のHLA-2+の個体由来の6回の別々の実験の代表例である。
【図12】IL-6およびIL-12、IL-2、IL-7、またはIL-15単独へのIL-21の添加が、IL-6およびIL-12、IL-2、IL-7、またはIL-15単独と比べて、CD8 T細胞反応を有意に増強することを示す。
【図13】IL-21が、さらなる抗原特異的T細胞の濃縮なしで、増幅および養子移植に十分なほど高いレベルまでT細胞頻度を増加させることができることを示す。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
サイトカインは通常、造血系の細胞の増殖もしくは分化を刺激し、または身体の免疫反応機構および炎症反応機構に関与する。インターロイキンは、免疫学的反応を媒介するサイトカインのファミリーである。免疫反応の中心は、多くのサイトカインを産生し、および抗原に対する適応免疫において役割を果たす、T細胞である。T細胞によって産生されるサイトカインは、1型および2型として分類されている(Kelso, A. Immun. Cell Biol. 76: 300-317, 1998(非特許文献1))。1型サイトカインは、IL-2、IFN-γ、LT-αを含み、ならびに炎症反応、ウイルス免疫、細胞内寄生虫免疫、および同種移植片拒絶に関与する。2型サイトカインは、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、およびIL-13を含み、ならびに液性反応、蠕虫免疫、およびアレルギー反応に関与する。1型と2型に共通のサイトカインには、IL-3、GM-CSF、およびTNF-αが含まれる。1型および2型を産生するT細胞集団は異なる種類の炎症組織に選択的に移動するということを示唆するある証拠がある。
【0002】
IL-21は細胞傷害性T細胞およびNK細胞の潜在的な調節因子であることが示されている(Parrish-Novak, et al. Nature 408: 57-63, 2000(非特許文献2); Parrish-Novak, et al., J. Leuk. Bio. 72: 856-863, 2002(非特許文献3); Collins et al., Immunol. Res. 28: 131-140, 2003(非特許文献4); Brady, et al. J. Immunol. 172: 2048-58, 2004(非特許文献5))。T細胞反応には、メモリーT細胞機能の調節としての1次抗原反応の増強が含まれる。
【0003】
マウスの研究において、IL-21はNK細胞の成熟およびエフェクター機能を助長し、かつ同種抗原に反応してT細胞活性化を促進する(Kasaian et al., Immunity 16: 559-569, 2002(非特許文献6))。NK細胞拡大を制限し、かつマウスCD8 T細胞の活性化を促進するサイトカインとして、IL-21は自然免疫から適応免疫への移行において役割を果たすと考えられている(Kasaian, 前記, 2002(非特許文献6))。CD4 T細胞の中で、IL-21は、自然免疫と関連がある遺伝子の発現をアップレギュレートするTh1(Tヘルパー1)サイトカイン(Strengell et al., J. Immunol. 170: 5464, 2003(非特許文献7))、およびナイーブTh細胞のIFN-γ産生Th1細胞への分化を阻害するTh2サイトカイン(Wurster et al., J. Exp. Med. 196: 969, 2002(非特許文献8))の両方として記載されている。自然免疫およびCD4 Th反応の発達におけるIL-21の効果は十分に特徴付けされているが(Strengell, 前記, 2003(非特許文献7); Strengell et al., J. Leukoc. Biol. 76: 416, 2004(非特許文献9))、特にヒトでの、抗原特異的CD8+ T細胞反応におけるその役割は十分に調査されてこなかった。本発明は、IL-21を投与することにより、高親和性の抗原特異的な細胞傷害性T細胞反応を誘導するための方法を提供する。癌免疫療法における潜在的な免疫標的として次第に表されるようになった、自己抗原に対する高親和性のCD8反応の誘導は、抗原特異的な抗腫瘍戦略におけるIL-21の重要な役割を示している。したがって、本発明は、腫瘍ワクチンにおけるアジュバントとしてIL-21を投与するための方法、および養子免疫療法で使用するための腫瘍抗原特異的な細胞傷害性T細胞のエクスビボ拡大のための方法を提供する。本発明はまた、ワクチン用のアジュバントとしてIL-21を投与するための方法、ならびに一般にウイルス、およびその他の標的抗原に対する抗原特異的な細胞傷害性T細胞のエクスビボ拡大のための方法を提供する。本明細書における開示から、これらのおよびその他の使用が、当業者には明らかであると考えられる。
【0004】
【非特許文献1】Kelso, A. Immun. Cell Biol. 76: 300-317, 1998
【非特許文献2】Parrish-Novak, et al. Nature 408: 57-63, 2000
【非特許文献3】Parrish-Novak, et al., J. Leuk. Bio. 72: 856-863, 2002
【非特許文献4】Collins et al., Immunol. Res. 28: 131-140, 2003
【非特許文献5】Brady, et al. J. Immunol. 172: 2048-58, 2004
【非特許文献6】Kasaian et al., Immunity 16: 559-569, 2002
【非特許文献7】Strengell et al., J. Immunol. 170: 5464, 2003
【非特許文献8】Wurster et al., J. Exp. Med. 196: 969, 2002
【非特許文献9】Strengell et al., J. Leukoc. Biol. 76: 416, 2004
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
ある局面において、本発明は、腫瘍抗原を同定するための方法であって、IL-21組成物および抗原提示細胞(APC)の存在下で、対象から単離された腫瘍物質を末梢血単核細胞(PBMC)と共培養する工程、培養物からT細胞集団を単離する工程、T細胞集団から個々のT細胞を濃縮する工程、ならびに抗原特異性についてT細胞クローンを特徴分析する工程を含む方法を提供する。ある態様において、濃縮とは個々のT細胞のクローニングである。
【0006】
本発明の別の局面において、IL-21組成物の存在下で、対象由来の腫瘍物質を単離された最終分化していないT細胞集団と共培養する工程;T細胞集団から個々のT細胞をクローニングする工程;および抗原特異性についてT細胞クローンを特徴分析する工程を含む、腫瘍抗原を同定する方法が提供される。ある態様において、単離されたT細胞集団はCD4+細胞を含まない。
【0007】
本方法のある態様において、PBMCまたはT細胞集団は自己の細胞集団である。その他の態様において、腫瘍物質には、全RNA、溶解した腫瘍細胞、ネクローシスを起こした腫瘍細胞、腫瘍タンパク質、またはアポトーシス小体が含まれる。別の態様において、共培養は、IL-21組成物および1つまたは複数のさらなるサイトカインの存在下である。
【0008】
別の局面において、本発明は、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、腫瘍を有する対象に対して組織適合性のある表現型を有するPBMCを同定する工程;IL-21組成物およびAPCの存在下で、患者由来の腫瘍物質または腫瘍関連ペプチドを末梢血単核細胞(PBMC)と共培養する工程;これらの細胞を培養で拡大する工程;ならびにこれらの細胞を患者に再導入し戻す工程を含む方法を提供する。ある態様において、PBMCは自己である。ある態様において、T細胞集団は自己である。別の態様において、腫瘍物質には全RNA、溶解した腫瘍細胞、またはアポトーシス小体が含まれる。別の態様において、PBMCまたはT細胞は同種である。
【0009】
別の局面において、本発明は、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、腫瘍を有する対象に対して組織適合性のある表現型を有するT細胞集団を同定する工程;IL-21組成物およびAPCの存在下で、対象由来の腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程;これらの細胞を培養で拡大する工程;ならびにこれらの細胞を対象に再導入し戻す工程を含む方法を提供する。ある態様において、T細胞集団はナイーブであり、または最終分化していない。別の態様において、T細胞集団は自己である。別の態様において、腫瘍物質には全RNA、溶解した腫瘍細胞、またはアポトーシス小体が含まれる。
【0010】
発明の説明
本発明を詳細に説明する前に、以下の用語を定義することがその理解に役立つ可能性がある。
【0011】
「アレル変異体」という用語は、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の任意の2つまたはそれより多くの選択的形態を意味するために本明細書において使用される。アレル変異は突然変異を通じて自然に発生し、かつ集団内の表現型多型をもたらす可能性がある。遺伝子突然変異はサイレントである(コードされたポリペプチドに変化がない)ことができ、または変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしてもよい。アレル変異体という用語はまた、遺伝子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を意味するために本明細書において使用される。
【0012】
「アミノ末端」および「カルボキシル末端」という用語は、ポリペプチド内の位置を意味するために本明細書において使用される。文脈から可能である場合、これらの用語は、近接性または相対的位置を示すために、ポリペプチドの特定の配列または部分に対する参照を伴って使用される。例えば、ポリペプチド内で参照配列に対してカルボキシル末端に位置するある配列は、参照配列のカルボキシル末端に近接した位置にあるが、必ずしも完全なポリペプチドのカルボキシル末端にあるとは限らない。
【0013】
「癌」または「癌細胞」という用語は、それを正常組織または正常組織の細胞から分化させる特性を有する新生物で発見される組織または細胞を意味するために本明細書において使用される。そのような特性の中には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:ある程度の退形成、形の不規則性、細胞輪郭の不明瞭さ、核の大きさ、核または細胞質の構造の変化、その他の表現型の変化、癌状態または前癌状態を示唆する細胞タンパク質の存在、有糸分裂の数の増加、および転移能。「癌」に関連する語として、癌腫、肉腫、腫瘍、上皮腫、白血病、リンパ腫、ポリープ、およびスキルス、形質転換、新生物、ならびにそれらと同様のものが含まれる。
【0014】
「同時投与」という用語は、IL-21ポリペプチドまたはタンパク質および第2の治療的分子を同時にまたは別の時間に与えてもよいということを意味するために本明細書において使用される。同時投与は、IL-21および第2の治療的分子両方の1回の同時投与であってもよいし、または複数回の同時投与であってもよい。IL-21または第2の治療的分子のいずれか一方を患者に投与する場合に限り、同時投与である必要はない。
【0015】
「併用療法」という用語は、少なくとも1つの治療的有効量のIL-21および第2の治療的分子を患者に投与することを意味するために本明細書において使用される。IL-21は、IL-21の生物学的活性を示す成熟ポリペプチド、その断片、融合体または共役体であってもよい。
【0016】
免疫反応に言及する場合、「増強する」という用語は、免疫反応の規模および/もしくは効率を高め、または免疫反応の持続時間を延ばすことを意味するために本明細書において使用される。この用語は、「強化する」と互換的に使用される。免疫反応には、増強された細胞溶解活性、アポトーシス活性、またはCD8+ T細胞の数もしくは生存の増加が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
ポリヌクレオチドに適用される場合、「単離された」という用語は、ポリヌクレオチドが、その天然の遺伝的環境から取り除かれ、したがってその他の無関係なまたは望まないコード配列を含まず、かつ遺伝的に改変したタンパク質生産系内での使用に好適な形状にあることを意味する。そのような単離された分子は、それらの天然の環境から分離された分子であり、ならびにcDNAおよびゲノムクローンを含む。本発明の単離されたDNA分子は、通常はそれらが関連するその他の遺伝子を含まないが、プロモーターおよびターミネーターなどの天然の5'および3'非翻訳領域を含んでもよい。関連する領域の同定は当業者にとっては明白であると考えられる(例えば、Dynan and Tijan, Nature 316: 774-78, 1985を参照されたい)。
【0018】
「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、血液および動物組織から離れているような、その天然の環境以外の状況で見出されるポリペプチドまたはタンパク質である。好ましい形態において、単離されたポリペプチドは、その他のポリペプチド、特に動物起源のその他のポリペプチドを実質的に含まない。高度に精製された形で、すなわち95%を越える純度で、より好ましくは99%を越える純度で、ポリペプチドを提供することが好ましい。この文脈で使用される場合、「単離された」という用語は、ダイマーまたは選択的に糖鎖修飾されたもしくは誘導体化された形態などの、代わりの物理的形態にある同一のポリペプチドの存在を除外しない。
【0019】
NK細胞、T細胞、特に細胞傷害性T細胞、B細胞、およびそれらと同様の細胞などの、免疫細胞に言及する場合、「レベル」という用語は、細胞の数または細胞の活性を表す。レベルの増加とは、細胞の数の増加または細胞機能の活性の亢進のいずれかである。
【0020】
ウイルス感染に言及する場合、「レベル」という用語は、ウイルス感染のレベルの変化を表し、および(上で記載したような)CTLまたはNK細胞のレベルの変化、ウイルス量の減少、抗ウイルス抗体価の増加、アラニンアミノ基転移酵素の血清学的レベルの減少、または標的組織もしくは器官の組織学的検査によって決定されるような改善を含むが、これらに限定されない。これらのレベルの変化が有意差であるか変化であるかということの決定は、当業者に十分可能である。
【0021】
細胞に言及する場合、「新生物性」という用語は、特に、増殖が無制御でかつ進行性で、結果的に新生物を生じさせる組織において、新しい異常な増殖を経ている細胞を指す。新生物性細胞は悪性、すなわち浸潤性かつ転移性であるか、良性であるかのいずれかであることができる。
【0022】
「ポリヌクレオチド」は、5'末端から3'末端へ読まれるデオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の1本鎖または2本鎖のポリマーである。ポリヌクレオチドはRNAおよびDNAを含み、ならびに自然源から単離してもよいし、インビトロで合成してもよいし、または天然分子および合成分子の組み合わせから調製してもよい。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(「bp」と略す)、ヌクレオチド(「nt」)、またはキロベース(「kb」)のように表現される。文脈から可能である場合、後者2つの用語は、1本鎖または2本鎖であるポリヌクレオチドを記載してもよい。この用語が2本鎖分子に適用される時、それは全長を指すために用いられ、および「塩基対」という用語と同等であることが理解されると思われる。2本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖の長さがわずかに異なる可能性があり、およびその末端が酵素的切断の結果として互い違いになる可能性があり;したがって、2本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドが対を成すとは限らない可能性があるということが当業者には正しく理解されると思われる。
【0023】
「ポリペプチド」は、自然に生じたものであれ、合成で生じたものであれ、ペプチド結合で繋がれたアミノ酸残基のポリマーである。約10アミノ酸残基より少ないポリペプチドは、一般に「ペプチド」と呼ばれる。
【0024】
「タンパク質」は、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む巨大分子である。タンパク質はまた、炭水化物基などの、非ペプチド性成分を含んでもよい。炭水化物およびその他の非ペプチド性置換基は、タンパク質を産生する細胞によってタンパク質に付加される可能性があり、ならびに細胞の種類によって異なると考えられる。タンパク質は、それらのアミノ酸骨格構造の点から、本明細書において定義される;炭水化物基などの置換基は通常特定されないが、それでも存在する可能性がある。
【0025】
「受容体」という用語は、生物活性分子(すなわち、リガンド)に結合し、細胞に対するリガンドの作用を媒介する細胞関連タンパク質を指す。膜結合型受容体は、細胞外リガンド結合ドメインおよび典型的にはシグナル伝達に関与する細胞内エフェクタードメインを含む多ペプチド構造を特徴とする。リガンドの受容体への結合は、細胞内のエフェクタードメインとその他の分子との相互作用を引き起こす受容体の立体構造変化をもたらす。この相互作用が今度は、細胞の代謝の変動をもたらす。受容体-リガンド相互作用と関係がある代謝事象には、遺伝子転写、リン酸化、脱リン酸化、サイクリックAMP産生の増加、細胞カルシウムの動員、膜脂質の動員、細胞接着、イノシトール脂質の加水分解、およびリン脂質の加水分解が含まれる。一般に、受容体は、膜結合型、細胞質型、または核型であることができ;単量体(例えば、甲状腺刺激ホルモン受容体、β-アドレナリン受容体)または多量体(例えば、PDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL-3受容体、GM-CSF受容体、G-CSF受容体、エリスロポエチン受容体、およびIL-6受容体)であることができる。
【0026】
不正確な分析方法(例えば、ゲル電気泳動)によって決定されたポリマーの分子量および長さは、近似値であると理解されると考えられる。そのような値が「約」Xまたは「およそ」Xのように表現される場合、表示されたXという値は±10%まで正確であると理解されると考えられる。
【0027】
使用した参考文献は全て、参照により本明細書に組み入れられる。
【0028】
本発明は、抗原特異的T細胞の増殖および生存を増加させるためのIL-21の使用に向けられる。IL-21による抗原特異的T細胞の増強は、抗原特異的T細胞の頻度を増加させ、増強された親和性を有する抗原特異的T細胞の集団を濃縮し、かつ増加したCD28発現および「ヘルパー非依存的」表現型を有する抗原特異的T細胞の集団を発生させるために有用である(Widmer et al., Nature 294: 750, 1981; Topp et al., J. Exp Med 198(6): 947, 2003; Cheng et al., J Immunol 169: 4990, 2002)。
【0029】
ある局面において、本発明は、IL-21非存在下で培養したT細胞よりも抗原に対する高い親和性を有する細胞傷害性T細胞集団を生じさせるIL-21組成物および抗原の存在下で、ナイーブT細胞を培養する工程を含む方法を提供する。特に興味深いのは、腫瘍抗原である。低親和性のT細胞は腫瘍抗原特異性を有する可能性はあるが、依然として腫瘍細胞を認識し、かつ殺すことがないのに対し、高親和性の抗原特異的T細胞は腫瘍を認識し、かつ殺す能力を有する。腫瘍に対するT細胞の親和性は、1つには、腫瘍細胞によって提示される抗原の密度に依存している。腫瘍細胞上の抗原提示が少ない場合には、高親和性のT細胞のみが腫瘍細胞を認識し、かつ細胞溶解を起こすことができる可能性がより高い。さらに、抗原特異的T細胞のさらなる濃縮を伴わずに、拡大および養子細胞移植に十分なほど高いレベルまでT細胞頻度を増加させ、それによって治療までの時間を著しく減らすために、ならびにさらなる選別またはクローニングの必要性を除去するために、本発明の方法を使用することができる。
【0030】
本発明の別の局面において、本発明の方法は、最終分化していないT細胞をIL-21組成物に対して培養することにより、自己抗原に対して高い親和性を有する抗原特異的CTL集団を発生させる工程を含む。ある態様において、T細胞は単離されたナイーブT細胞である。一度、抗原特異的T細胞集団がエクスビボで拡大されたら、細胞は患者に再導入される。ある態様において、患者へのIL-21投与は継続されると考えられ、およびその他の治療法と組み合わせられる可能性がある。
【0031】
別の局面において、本発明の方法は、T細胞集団によって認識される抗原のレパートリーを拡大するための方法を提供する。本方法は、腫瘍細胞株またはその派生物(例えば、全RNA、溶解した腫瘍細胞、アポトーシス小体)などの腫瘍物質を対象から単離された自己のT細胞と共培養する工程を含む。腫瘍物質およびT細胞をIL-21組成物の存在下で培養し、T細胞を増殖させた後、T細胞をクローニングする。抗原特異的T細胞を同定し、および抗原特異性を特徴付けるためにさらに解析する。
【0032】
A. IL-21の説明
ヒトIL-21(配列番号:1および配列番号:2)は、最初はzalpha11リガンドと表され、参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許第6,307,024号、および第6,686,178号に記載されている。IL-21受容体は、米国特許第6,057,128号に記載されている。以前はzalpha1J(配列番号:5および配列番号:6)と表された、IL-21受容体、ならびにヘテロダイマーの受容体であるIL-21R/IL-21Rγもまた、参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許第6,576,744号、第6,803,451号、第6,692,924号、および国際公開公報第00/17235号に記載されている。これらの刊行物に記載されているように、IL-21は、CD3について選別された、活性化ヒト末梢血細胞(hPBC)から作製されたcDNAライブラリーから単離された。CD3は、リンパ系起源の細胞、特にT細胞に特有の細胞表面マーカーである。
【0033】
IL-21Rのアミノ酸配列により、コードされた受容体は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、EPO、TPO、GM-CSF、およびG-CSFの受容体を含むが、これらに限定されない、クラスIのサイトカイン受容体サブファミリーに属することが示された(概説については、Cytokine 5(2):95-106, 1993のCosman, 「The Hematopoietin Receptor Superfamily」を参照されたい)。IL-21受容体は、NK細胞、T細胞、およびB細胞上で同定され、-21が造血系細胞、特にリンパ系前駆細胞およびリンパ系細胞に作用することが示されている。リンパ系細胞に作用するその他の公知の4本ヘリックスバンドルサイトカインには、IL-2、IL-4、IL-7、およびIL-15が含まれる。4本ヘリックスバンドルサイトカインの概説については、Nicola et al., Advances in Protein Chemistry 52: 1-65, 1999、およびKelso, A., Immunol. Cell Biol. 76: 300-317, 1998を参照されたい。
【0034】
IL-21については、分泌シグナル配列が、アミノ酸残基1(Met)〜29(Ser)から構成され、かつ成熟ポリペプチドが、(配列番号:2に示すように)アミノ酸残基30(Gln)〜162(Ser)から構成されている。対応するポリヌクレオチド配列を配列番号:1に示す。配列番号:1に開示した配列がヒトIL-21の単一のアレルを表すこと、ならびにアレル変異および選択的スプライシングが起こると期待されることが、当業者に正しく理解されると考えられる。
【0035】
B. IL-21ワクチン療法の使用、養子免疫療法、および腫瘍特異的抗原の同定
本発明は、抗原特異的ヒトCD8+ T細胞の1次反応の誘導におけるIL-21の正の調節的な役割が示された、ヒト健康ドナーおよびメラノーマ患者両方の研究に一部基づいている。正常な自己抗原を認識する希少ではあるが測定可能なナイーブT細胞集団を探知するために、IL-21存在下で、ペプチド-MHCテトラマーを使用すると、誘発され得る抗原特異的CD8 T細胞の頻度および絶対数が、IL-21非存在下で増殖させた培養と比べて、20倍よりも多く増加する。初期のプライミング期間中のIL-2、IL-7、またはIL-15の添加によって、サイトカインを与えられない培養を上回る付加的な効果がなかったので、抗原特異的T細胞反応の発生の増強は、このγ鎖受容体サイトカインに特異的である。IL-21に曝露され、および抗原によるプライミングを受けたT細胞は、IL-2およびIL-7などの、増殖を促進するサイトカインに反応する能力を保持し、ならびに容易に単離および拡大することができた。本発明は、抗原によって引き起こされるヘルパー非依存的IL-2産生、標的結合力の増強、および抗原特異的殺腫瘍の強化をもたらす、CD28アップレギュレーションおよび高親和性TCRの発現を特徴とする、IL-21によって増強されたヒト抗原特異的CD8+ T細胞の発生を提供する。本発明は、ヒト抗原特異的CD8+ T細胞反応の誘導および免疫療法、特に養子細胞療法のためのIL-21の使用法を提供する。
【0036】
本明細書で記載される研究において、IL-21によって強化される抗原特異的反応は、ナイーブT細胞集団に限られ、予め選別されたレスポンダーT細胞を用いるメモリーT細胞集団では見られなかった。ナイーブT細胞は、それまでに抗原に出会ったことがなく、かつ単一の特異な抗原を認識および結合する能力を有する。腫瘍抗原は、非腫瘍細胞上で見出される抗原とは異なる発現プロファイルを有するペプチドまたはポリペプチドまたはペプチド複合体である。例えば、非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞の方が、高い頻度または密度で非腫瘍抗原を発現する可能性がある。腫瘍抗原は、非腫瘍抗原と構造的に異なる可能性があり、例えば、抗原は切断されたポリペプチドとして発現し、アミノ酸配列もしくは抗原をコードするポリヌクレオチドに何らかの突然変異を有し、誤って折り畳まれ、または翻訳後に不適切に修飾される可能性がある。宿主生物中の正常な、非腫瘍細胞上に存在する抗原との類似性により、腫瘍細胞は宿主の免疫学的監視機構を回避することが可能となる。
【0037】
腫瘍関連抗原が腫瘍を攻撃する特異的な免疫学的反応を発生させたという観察により、腫瘍特異的抗原癌治療法を開発する基礎が研究者に与えられた。しかしながら、腫瘍は多数の抗原を発現し、その多くは単離または特徴付けされていない。さらに、全ての腫瘍抗原が十分な免疫反応を刺激するのに十分なほど高いレベルで発現しているわけではない。
【0038】
近年、細胞傷害性Tリンパ球によって認識され得る腫瘍抗原をコードする多くの遺伝子がヒト腫瘍細胞のcDNAから同定されている(Gomi et al., J. Immunol. 163: 4994-5004, 1999.)。例として、遺伝子HER/neu(Peoples et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 432-436, 1995)および突然変異体CASP-8(Mandruzzato et al., J. Exp. Med., 186: 785-793, 1997)が含まれる。患者から腫瘍抗原特異的T細胞を単離することはできるが、これらのT細胞培養を維持することは困難である。腫瘍抗原特異的T細胞は、血液、脾臓などのリンパ系組織に特定され、または腫瘍それ自体由来であることができる。通常、腫瘍組織は生検を行ない、および細胞懸濁液をインビトロで培養する。IL-2、IL-7、IL-4、およびIL-15などの、サイトカインの存在下にある抗原特異的腫瘍細胞がより長く生存することが示されている(Vella et al., PNAS 95: 3810-3815, 1998)。本発明において、樹状細胞による第1次抗原提示の存在下で、腫瘍抗原特異的T細胞の培養にIL-21を添加することにより、IL-15、IL-6、IL-12、2、またはIL-17単独で見られる増加を超える、抗原特異的T細胞の絶対数の著しい増加がもたらされる。したがって、本発明は、新しい腫瘍特異的抗原を同定し、およびT細胞をIL-21に曝露することによって、これらの腫瘍を標的とする腫瘍抗原特異的T細胞集団を増強するための方法を提供する。腫瘍特異的細胞株を作製することによって、T細胞集団により認識される抗原のレパートリーを増強するための方法は、最終分化していないT細胞に抗原が提示された時に、IL-21組成物が抗原特異的T細胞集団の増殖を増強することを示したことから生まれた。この方法は、腫瘍細胞株またはその派生物(例えば、全RNA、溶解された腫瘍細胞、アポトーシス小体)などの腫瘍物質を対象から単離された自己のT細胞と共培養する工程を含む。腫瘍物質およびT細胞をIL-21組成物の存在下で培養し、T細胞を増殖させた後、T細胞を濃縮し、例えば、T細胞をクローニングすることができる。幾つかの態様において、IL-21の投与によって、IL-2またはその他の増殖因子の必要性を最小限にする。別の態様において、CD4+ T細胞を培養に存在させる必要はない。抗原特異性を特徴付けるために、同定された抗原特異的T細胞をさらに解析する。(van der Bruggen Science 254: 1643, 1991およびEngelhard et al., Mol. Immunol. 39: 127, 2002を参照されたい。)
【0039】
より多数のMART-1特異的T細胞がナイーブ集団の中に存在することが知られている(Pittet et al., J. Exp. Med. 190: 705, 1999)。しかしながら、測定可能な頻度のMART-1特異的T細胞をメモリー集団の中に検出することもでき(D'Souza et al., Int. J. Cancer 78: 699, 2004)、それにもかかわらずIL-21を添加した際、これらは拡大しなかった。メラノーマのある患者の場合、抗原を有する腫瘍細胞との事前接触により、メモリーT細胞の中での防御的シグナル伝達が引き起こされ、インビトロでのIL-21を介する増殖にそれらが反応しない可能性がある(Zippelius, et al., Cancer Res. 64: 2865, 2004; Lee et al., Nature Medicine 5: 677, 1999)。
【0040】
抗原によるプライミングを受けたT細胞は、IL-21に曝露された際、それらの未処理の等価物と比べて、増殖の増加およびアポトーシスの減少を経験し、それ故にT細胞を介するワクチンを増強するための方法が提供され、かつ免疫療法的な癌治療のためのアジュバントが提供される。IL-21処理により、CD28発現のアップレギュレーションが引き起こされ、かつCD45RO+、CD28hi、CCR7-、CD8+という、安定した独特の表現型を発現するT細胞の集団が濃縮された。この表現型を、ナイーブT細胞(CD45RO-、CD28+、CCR7+)とメモリーT細胞(CD45RO+、CD28-、CCR7-/+)の中間物として特徴付けしてもよい(Tomiyama, et al., J. Exp. Med. 198: 947, 2003)。抗原によって引き起こされる増殖のための自己分泌シグナルを与えることができるので、CD28+CD8+ T細胞は、養子免疫療法のための潜在的により効果的なCTLを代表している。そのようなヘルパー非依存的なCD8 T細胞は、生存し、かつ拡大するために、IL-2またはCD4+ T細胞という形態での外因性の助けを必要としないと考えられる(Ho et al., Cancer Cell 3: 431, 2003; およびTopp et al., J. Exp. Med. 198: 947, 2003)。したがって、本発明は、IL-2などの、追加のサイトカインもしくはCD4+ T細胞の非存在下または低存在下で細胞傷害活性を増強したCD8+ T細胞集団を対象に提供することによって、免疫介在性疾患を治療するための方法を提供する。この方法は、細胞溶解性の、抗原特異的CD8+ T細胞のエクスビボ拡大に特に有用であるが、追加のサイトカインが望まない副作用をもたらし、またはCD4+細胞集団が損傷される場合、インビボで使用することも可能である。
【0041】
本明細書において開示した実施例により、初回インビトロ刺激期間中のIL-21への曝露によっても、均一により高い親和性および標的細胞結合力のある抗原特異的T細胞クローンの発生が引き起こされたことが示されている。これらのクローンは多様なTCR Vβで表され、これは少数の高親和性クローンの集団の拡大の結果であった可能性は高くないが、T細胞レパートリーに対するより全体的な影響の結果である可能性が高かったことを示唆している。これまでの研究により、APCの刺激能をダウンレギュレートする、IL-10などのサイトカインが培養で使用される場合、より高い親和性のT細胞クローンが単離される可能性の増加が示されている(Tsai et al., Critical Rev. Immunol. 18: 65, 1998)。IL-21(Brandt et al., Blood 102: 4090, 2003)は、マウスDCの中での成熟停止を引き起こし、MHC発現の減少およびT細胞活性化に対する刺激能の低下をもたらすことが示されている。しかしながら、その場合、既に完全な成熟を経ていたヒトDCにIL-21を加えていた。予備的な研究において、成熟DCへのIL-21の添加は、未処理のDCと比べて、MHCクラスI、HLA-DR、CD80、CD83、またはCD86の表面発現に影響を及ぼさなかった。理論に束縛されることを望まないが、この結果は、表面刺激分子の発現の低下がインビトロでの高親和性T細胞の発生の増強に対する説明である可能性が高くないことを示唆している。成熟ヒトDCのIL-21とのプレインキュベーションもまた、発生し得るCD8+ テトラマー+ T細胞の頻度または親和性に影響がなかった。
【0042】
抗原特異的CD8 T細胞反応を強化する際のIL-21の使用がマウスモデルで検討され、攻撃的な腫瘍を根絶する際に極めて効果的であることが分かった(Ma et al., J. Immunol. 171: 608, 2002; Kishida et al., Mol. Ther. 8: 552, 2003; Moroz et al., J. Immunol. 173: 900, 2003)。メモリーT細胞と比較したナイーブT細胞に対するIL-21の選択的効果によって、プライミング中のより大きな影響が示唆され、ならびに実際、マウスの研究によって、緩徐な拒絶反応および持続的な抗腫瘍記憶の誘導により特徴付けられる強いプライミング効果が示されている。IL-21は、おそらくはSTAT3リン酸化またはセントラル記憶表現型の誘導を伴う不確定な機構を通じたアポトーシスの減少の結果として、それまでに活性化された抗原特異的CD8 T細胞のインビボでの長期間の生存を促進する(Brenne et al., Blood 99: 3756, 2002)。これらの効果の中には、IL-21処理したCD8 T細胞の中でのCD28アップレギュレーションに起因する可能性があるものもある。
【0043】
養子細胞療法のためのT細胞集団をヒト対象の治療で使用する方法は、当業者に公知である。本明細書において記載され、かつ当技術分野において公知の方法によって調製されるT細胞集団を、そのような方法において使用することができる。例えば、MART-1抗原特異的T細胞と共に腫瘍浸潤リンパ球を用いる養子細胞療法が臨床で試験されている(Powell et al., Blood 105: 241-250, 2005)。腎細胞癌のある患者は、放射線照射した自己の腫瘍細胞でワクチン接種されている。採取された細胞は抗CD3モノクローナル抗体およびIL-2で2次的に活性化され、その後、患者に再投与された(Chang et al., J. Clinical Oncology 21: 884-890, 2003)。
【0044】
本発明は、エクスビボで細胞を刺激し、その後それらを患者に再投与することにより、患者にある程度の免疫の増強を与えることによって養子免疫療法を増強するための方法を提供する。細胞は対象との組織適合性があり、および同種または自己であってもよい。調製の方法は、患者から末梢血単核細胞(PBMC)を単離する工程、IL-21組成物を含む培地で、これらの細胞を培養で極めて多数にまで拡大する工程、およびこれらの細胞を再導入して患者に戻す工程を含む。NK細胞、LAK細胞、および腫瘍特異的T細胞を含む、これらのエフェクター細胞の増殖に、IL-2(Dudley et al., J. Immunother. 24: 363-73, 2001)またはIL-15(Marks-Konezalik et al., Proc Natl Acad Sci USA, 97: 11445-50 2000; Waldmann TA. Nat Med., 9: 269-77, 2003; Fehniger et al., Cytokine Growth Factor Rev., 13: 169-83, 2002.)などの追加のサイトカインが必要とされてもよい。細胞を移植して患者に戻した後で、IL-21およびIL-2を含み得るサイトカインで患者を治療することによって、彼らの生存率を維持するために、この方法を利用する(Bear et al., Cancer Immunol. Immunother. 50: 269-74, 2001;およびSchultz et al., Br. J. Haematol. 113: 455-60, 2001)。別の態様において、一度PBMCを単離すれば、この細胞をさらに単離して、より均一なCD8+ 細胞の培養を提供することができ、およびこれらの細胞をIL-21組成物の存在下で培養し、その後、患者に再投与する。IL-21は、さらなる抗原特異的T細胞の濃縮なしで、拡大および養子移植に十分なほど高いレベルまでT細胞頻度を増加させることができるので、本発明は、治療までの時間を大いに減少させることができ、かつさらなる選別および/またはクローニングの必要性を除去することができる方法を提供する。
【0045】
本発明は、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、腫瘍患者に対して組織適合性がある表現型を有するPBMCを同定する工程;IL-21組成物および自己の樹状細胞、単球、B細胞、EBVで形質転換したB細胞株、共有される制限的アレルを発現する、EBVで形質転換した同種のB細胞株、人工的な抗原提示細胞などの、抗原提示細胞(APC)の存在下で、患者由来の腫瘍物質を末梢血単核細胞(PBMC)と共培養する工程(Yee et al., Proc Natl Acad Sci. 99 (25): 16168, 2002; Oelke et al., Nat Med. 9 (5): 619-24, 2003; Maus et al., Clin Immunol. 106 (1): 16-22, 2003; Cai et al., Immunol Rev. 165: 249-65, 1998);これらの細胞を培養で拡大する工程;ならびにこれらの細胞を再導入して患者に戻す工程を含む方法を提供する。ある態様において、PBMCは自己である。別の態様において、腫瘍物質は、ペプチド、全RNA、溶解した腫瘍細胞、またはアポトーシス小体を含む。
【0046】
本発明はまた、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、腫瘍患者に対して組織適合性がある表現型を有するT細胞集団を同定する工程;IL-21組成物およびAPCの存在下で、患者由来の腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程;これらの細胞を培養で増幅する工程;ならびにこれらの細胞を再導入して患者に戻す工程を含む方法を提供する。ある態様において、T細胞集団は自己である(Dudley et al., Science 290: 850, 2002)。
【0047】
本発明は、養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、(ウイルス伝達、トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはその他の遺伝物質の導入法によって)標的抗原を認識する、T細胞受容体またはシグナル伝達分子と融合したキメラT細胞受容体を発現するように人工的に改変されたT細胞、骨髄細胞、または(NK細胞を含む)PBMC;IL-21組成物の存在下で培養する工程;これらの細胞を培養で拡大する工程;およびこれらの細胞を再導入して患者に戻す工程を含む方法を提供する。(Hughes et al., Hum Gene Ther 16 (4): 457, 2005; Roszkowski et al., Cancer Res 65 (4): 1570, 2005; Cooper et al., Blood 101: 1637, 2003; Alajez et al., Blood 105: 4583, 2005)。ある態様において、T細胞集団は自己である。
【0048】
本発明はまた、癌ワクチン療法を改良するための方法を提供する。多くの腫瘍は、免疫系による破壊のための標的として潜在的に機能を果たすことができる外来抗原を発現する(Boon, T., Adv. Cancer Res. 58: 177-211, 1992)。癌ワクチンは、液性成分および細胞性成分の両方を含む、対象における全身性の腫瘍特異的免疫反応を発生させる。腫瘍から離れた部位に、または局在化した腫瘍の部位にワクチン組成物を投与することによって、対象自身の免疫系から反応を誘発する。抗体または免疫細胞は腫瘍抗原に結合し、かつ腫瘍細胞を溶解させる。しかしながら、インビボでの増強された免疫反応の産生が可能なT細胞集団の増殖の増加に対する必要性が依然として存在する。
【0049】
癌抗原で患者に免疫性を与えるための多数の方法が利用され、および抗原送達の後で免疫反応の強さを増幅するための様々な技術が使用されている(Rosenberg, SA. (編), Principles and practice of the Biologic Therapy of Cancer., 第3版, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, 2000で概説されている)。IL-21を腫瘍ワクチンと組み合わせて使用することができる方法には、IL-21遺伝子を発現するか、またはアジュバントタンパク質との関連でIL-21を送達するかのいずれかの、自己および同種の腫瘍細胞の送達が含まれるが、これらには限定されない。同様に、精製した腫瘍抗原タンパク質、注射されたDNAから発現される腫瘍抗原、または樹状細胞に基づく療法を用いてエフェクター細胞に提示される腫瘍抗原ペプチドの注射と組み合わせてIL-21を送達することができる。これらの種類の療法の例として、改変した腫瘍細胞(Antonia et al., J. Urol. 167: 1995-2000, 2002; およびSchrayer et al., Clin. Exp. Metastasis 19: 43-53, 2002)、DNA(Niethammer et al., Cancer Res. 61:6178-84, 2001)、ならびに樹状細胞(Shimizu et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 96: 2268-73, 1999)によるワクチン接種との関連におけるIL-2のようなサイトカインの使用が含まれる。IL-21を抗癌ワクチンアジュバントとして使用することができる。
【0050】
ワクチン有効性の決定は評価するのが難しい。有効性の究極的な実証は、腫瘍退縮の割合、無病生存の期間、または、少なくとも、進行までの時間(TTP)であり、これらの評価項目は、その後の何年にもわたる患者の経過を必要とする。有効性を評価するためのより直接的な手段を提供するために、早期の測定を可能にし、かつ臨床的結果の予測になると考えられるいわゆる「代理マーカー」の探索が進行中である。今日現在、腫瘍特異的および/またはワクチン特異的免疫反応のインビボ測定は、代理マーカーとして成功していない(Srivastava P., Nat Immunol. 1:363-366, 2000参照)。
【0051】
任意の癌療法に対して、各プロトコルはそれぞれ別に腫瘍反応評価を定義してもよいが、Clinical Research Associates Manual, Southwest Oncology Group, CRAB, Seattle, WA. October 6, 1998, 改訂版, August 1999の中に、例示的な指針を見出すことができる。CRAマニュアル(第7章「Response Accessment」参照)によれば、腫瘍反応とは、全ての測定可能な病変または転移の減少または除去を意味する。医療用写真もしくはX線コンピュータ体軸断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、または触診によって明確に境界が定められる縁を有する2次元的に測定可能な病変を含む場合、疾患は通常、測定可能とみなされる。評価可能な疾患とは、1次元的に測定可能な病変、明確に境界が定められない縁を有する塊、0.5cm未満の両側直径を有する病変、切片間の距離よりも小さい片側直径を有するスキャン画像上の病変、2cm未満の直径を有する触診可能な病変、または骨疾患を含む疾患を意味する。評価不可能な疾患には、胸膜滲出、腹水症、および間接的証拠によって立証される疾患が含まれる。以前に放射線照射を受けた、進行していない病変も通常、評価不可能とみなされる。
【0052】
固形腫瘍反応を評価するための客観的状態プロトコルを用いて、正の治療結果を測定することができる。代表的な基準には、以下のものが含まれる:(1)新しい病変、および疾患関連の症状を伴わない、全ての測定可能な疾患および評価可能な疾患の完全な消失として定義される完全反応(CR)。評価不可能な疾患の証拠なし;(2)評価可能な疾患の進行、新しい病変を伴わない、全ての測定可能な病変の直交する直径の積の合計におけるベースラインから30%を上回る減少または30%と等しい減少として定義される部分反応(PR)。RESIST基準によれば、少なくとも1つの測定可能な病変を有する患者;(3)同じ技術をベースラインとして用いて観察された最小合計に対する測定可能な病変の積の合計における20%もしくは10cm2の増加、または任意の評価可能な疾患の明瞭な悪化、または消失していた任意の病変の再出現、または任意の新しい病変の出現、または死もしくは悪化状態により評価のための回答ができないこと(この癌に無関係でない場合)として定義される進行;(4)CR、PR、または進行の適格性を得ないものとして定義される安定または無反応(前記Clinical Research Associates Manualを参照されたい)。
【0053】
本発明を、以下の限定的でない実施例によってさらに説明する。
【0054】
実施例
実施例1
A. 細胞株および試薬
メラノーマ細胞株A375(CRL 1619; American Type Culture Collection (ATCC), Manassas, VA)、およびMel 526(Arrighi et al., Cancer Res. 60 (16): 4446-52, 2000; Marcinola et al. J. Immunother Emphasis Tumor Immunol. 19 (3): 192-205, 1996)を、HEPES(25mM)、L-グルタミン(4mM)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50mg/ml)、ピルビン酸ナトリウム(10mM)、非必須アミノ酸(1mM)、および10%胎児ウシ血清(Hyclone, Utah)を含むRPMI中で維持した。両株ともHLA-A2アレルを発現しているが、Mel 526のみがMART-1抗原を発現している。T2細胞株は、HLA-A2アレルを発現するTAP欠損T-B細胞ハイブリッドである。EBV-LCL細胞株は、エプスタインバーウイルスにより形質転換されたリンパ芽球様細胞株である(Yee, FHCRC, Seattle, WA)。
【0055】
B. ヒト抗原特異的CD8+ T細胞の誘導
メラノーマM26-35ペプチド特異的T細胞を作製した(Yee at al., PNAS 99: 16168, 2002; Yee et al., J. Immunol. 162: 2227, 1999; Tsai et al., J. Immunol. 158: 1796, 1997)。ドナーの血液は、Puget Sound Blood Center(Seattle, WA)のHLAタイピング研究室によってタイピングされた。まず、CD8+ T細胞をCD8陽性単離キット(Dynabeads, Dynal, Oslo, Norway)によって、白血球分離採血法で採血したPBMCから単離し、RPMI1640、25mM HEPES、2mM L-グルタミン、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50mg/ml)(Life Technologies, Gaithersburg, MD)、および10%正常ドナー由来ヒト血清からなるCTL培地に懸濁し、その後、6ウェル組織培養皿(Costar, Corning Incorporated, Corning, NY)に6×106細胞/ウェルで置いた。成熟DCを採取し、室温で4時間、1%ヒト血清アルブミン(Life Technologies, Gaithersburg, MD)を含むPBS中の3μg/mlのβ2ミクログロビン(Scripps Lab, San Diego, CA)の存在下、2×106細胞/mlで、40μg/mlの合成ペプチドでパルスした。滅菌PBS(Life Technologies)で3回洗浄した後、純化したCD8 T細胞とDCを、6ウェルプレートに、3×105細胞/ウェルで混合した。培養を開始した直後に、サイトカイン、IL-15(10ng/ml, R&D Systems, Minneapolis, MN)、IL-2(10U/ml, Chiron, Emeryville, CA)、IL-7(10ng/ml, R&D Systems)、またはIL-21(30ng/ml, ZymoGenetics, Seattle, WA)、を各ウェルに個別に加えた。2回目の刺激の1日後、活性化した抗原特異的T細胞のさらなる拡大の促進のために、IL-2(50IU/ml)およびIL-7(10ng/ml)を加えた。
【0056】
AIM-V(登録商標)培地(Life Technologies)の中で、付着性のPBMCをIL-4(500U/ml, R&D)およびGM-CSF(800U/ml, Amgen, Thousand Oaks, CA)に曝露させることによってDCを作製し(Bender et al., J. Immunol. Methods 196: 121, 1996)、その後、さらに2日間、2ng/mlのIL-1β、1000U/mlのIL-6、10ng/mlのTNF-α(R&D Systems)、および1μg/mlのPGE-2(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いて成熟させた。FACS解析で明らかにされたように、成熟DC集団は、8日目に90%を上回るCD83+ DCを含んでいた。
【0057】
C. T細胞の抗体+ペプチド-MHCテトラマー染色
以前に記載されたプロトコル(Altman et al., Science 274: 94, 1996)に基づいて、Fred Hutchinson Cancer Center の免疫モニタリング研究室で、PEまたはAPC標識したM26-MHC-テトラマーおよびG154-MHC-テトラマーを作製した。試料分析用に、まず、25μlの2% FCS/PBS中の0.5×106細胞を、室温で1時間、ペプチドテトラマー-PEまたはAPC(20μg MHC/mlの最終濃度)で染色し、その後、4℃で20分間、抗CD28-APC(BD, PharMingen, San Diego, CA)または抗CD28-FITC(Caltac Lab, Burlingame, CA)、抗CCR7-PE、および抗CD45ROまたは抗CD45RA-FITC(BD, PharMingen, San Diego, CA)で染色した。PBSで洗浄した後、2%FBSを含むPBSに細胞を再懸濁し、DAPIを加えた。データを、FACScaliburフローサイトメーターおよびCellQuest(BD)を用いて取得し、ならびにFlowJoソフトウェア(Tree Star, San Carlos, CA)を用いて解析した。
【0058】
D. ナイーブおよびメモリーサブセットの濃縮
磁気ビーズの組み合わせおよびAutomacs磁気分離装置(Miltenyi Biotech, Auburn California)の連続適用により、ヒト末梢血単核細胞からT細胞を純化した。CD8単離キットIIによる陰性選別を用いて、CD8+細胞を単離した。それに続くナイーブ(CD8+ CD45RO- CD45RA+ CD62L+)細胞の選別は、CD45ROビーズを用いたメモリーCD8細胞の除去、その後、PE結合CD62L抗体(BD, PharMingen, San Diego, CA)を用いた染色によるCD62L陽性細胞の陽性選別および抗PEビーズとのインキュベーションを伴った。メモリー細胞の単離(CD8+ CD45RA- CD45RO+)は、CD45RA+ビーズを用いたナイーブ集団の除去を伴った。FACsで評価した典型的な純度は95%を上回っていた。
【0059】
E. 抗原特異的CTLのクローニングおよび拡大
Yee, 前記, 2002; Riddell et al., J. Immunolog. Methods 128: 189, 1990に記載されているようなクローニングおよび拡大の手順を用いて、T細胞を単離した。0.2mlのCTL培地に、抗CD3 mAb(OKT3, Ortho Tech, Raritan, NJ)および50U IL-2/mlと共に、1:50,000のレスポンダー 対 スティミュレーターの比率にした放射線照射フィーダー細胞(PBLおよびLCL)の存在下で、96ウェル丸底プレート(Nalge Nunc International, Denmark)にテトラマー+分離したT細胞を限界希釈でプレーティングした。プレーティング後10〜14日で、クローンの増殖について陽性のウェルを同定し、微小細胞毒性アッセイ法でスクリーニングした。ペプチド特異的クローンを25cm2フラスコ(Costar, Corning Incorporated, Corning, NY)に移し、抗CD3 mAbで再刺激し、かつ放射線照射した同種のPBLおよびLCLを速やかな拡大のためのフィーダー細胞として加えた。再刺激の24時間後、およびその後3日毎に、培養にIL-2を50U/mlで与えた。14日後、細胞をさらなる解析のために使用し、または凍結保存した。
【0060】
F. インビトロ細胞毒性アッセイ法
標的細胞(375、526メラノーマ細胞株、またはT2細胞)を100μCi 51Crで標識し、および37℃+5% CO2で4時間、エフェクター細胞と共培養した。ペプチド量力価の検討のために、T2を101〜107pg/mlの範囲の濃度のペプチドで1時間パルスし、その後、51Cr標識の前に洗浄した。放出された51Crをγシンチレーションカウンターで測定し、以下の方程式を用いて、%特異的溶解を決めた:%特異的放出=実験的放出−自然放出/全放出。全てのアッセイ法において、自然放出は全放出の<10%であった。
【0061】
G. 高親和性CTLクローンおよび低親和性CTLクローンを同定するためのMHC/ペプチド解離アッセイ法
CTLクローンを、室温で1時間、APC-テトラマー(20μg/ml)で染色し、結合していないテトラマーを除去するために、冷PBSで1回洗浄した。TCRからのそれらの解離の後、APC-テトラマーの再結合を防ぐために、過剰(100μg/ml)のPE標識テトラマーの存在下で、細胞をインキュベートした。この期間中、細胞のアリコートを異なる時点で回収し、かつフローサイトメトリー解析用に1%パラホルムアルデヒド中で固定した。APC テトラマーの解離の割合は、TCR親和性と逆相関した(Dutoit et al., J. Immunol. 168: 1167, 2002)。
【0062】
実施例2
IL-21は初回インビトロ刺激後に発生する抗原特異的CD8+ T細胞の頻度を強化する
HLA A2+健康ドナーのPBMCからCD8+ T細胞を単離し、かつ腫瘍関連自己抗原である、MART-1(M26-35ペプチド)の免疫原性エピトープでパルスした自己の成熟樹状細胞と共培養することにより、抗原特異的T細胞の初回インビトロ刺激についてのモデル系を確立した。サイトカインの添加なしで、またはIL-21を用いて、培養を増殖させた(図1)。刺激の7日後、テトラマー染色によって、培養におけるMART-1特異的CD8 T細胞反応の頻度を評価した。代表的な健康ドナー(CG、NE、およびLD)において、1サイクルのインビトロ刺激の後、サイトカインなしの対照培養と比べて、IL-21に曝露された培養では、16〜20倍のMART-1特異的CD8+ T細胞頻度の増加が観察された(それぞれ、0.12%対2.26%;0.12%対1.95%、および0.11%対2.2%)(図1)。IL-21処理した培養で発生した抗原特異的T細胞の絶対数は、対照培養を20〜30倍より多く上回った(表1)。
【0063】
【表1】
【0064】
初回インビトロ刺激の間の、共通γ鎖サイトカイン受容体ファミリーに属するその他のサイトカイン、IL-2、IL-7、およびIL-15の使用は、サイトカインなしの対照培養と比べて、MART-1特異的CD8+ T細胞の頻度に対する付加的な効果を生まなかった。
【0065】
しかしながら、本発明者らのグループおよびその他により示されているように、IL-2およびIL-7の添加は、以前に刺激された、抗原を経験したT細胞のエクスビボ拡大を実際に促進する(Gervois, et al., Clin Cancer Res 6: 1459-1467, 2000; Liao et al., Mol Ther 9: 757-764, 2004)。2回目のインビトロ刺激の後で培養に添加した場合、IL-2(10U/ml)およびIL-7(10ng/ml)は、未処理の培養(2.43%)を上回り、IL-21処理した培養(11.8%)の中で、大きなMART-1特異的CD8 T細胞集団のさらなる増加を生んだ(図2、ドナーCG)。
【0066】
これらの研究は、IL-21が、MART-1の発現を共有する腫瘍である、メラノーマのある患者における腫瘍関連抗原特異的CTL反応を強化する能力を有することを示している。代表的な患者において、2サイクルのインビトロ刺激後、未処理の培養と比べて、IL-21処理した培養で発生するMART-1特異的CTLの頻度は、IL-21を加えた場合、未処理の対照と比べて、40倍の増加を示す(19.1%対0.46%)(図2、患者ST)。
【0067】
IL-21処理した培養の中で発生する抗原特異的CD8 T細胞の頻度および絶対数の増加が、増殖の増強および/または生存の増強によるかどうかを評価するために、ナイーブCD8 T細胞をCFSEで標識し、MART-1ペプチドをパルスした自己のDCによりインビトロで刺激し、7日目に、分裂細胞(各細胞分裂に伴うCFSE染色の量子減少によって決定される)およびアポトーシス(アネキシンV染色)の分画について評価した。CFSE染色について、テトラマー陽性(MART-1特異的)T細胞集団に対して行なわれた解析は、IL-21処理した培養物(18%)よりも実質的に多い、未処理の培養(44%)中の非分裂細胞の分画(右端の区画)を示している(図4)。事実、急速に分裂している抗原特異的T細胞(左端の区画) 対 分裂していない抗原特異的T細胞の比率は、IL-21処理した培養の中で、未処理の培養と比べて、3倍よりも大きい(63%:18% 対 36%:44%)。T細胞集団に対するIL-21の効果が抗原特異的であることは、大部分のテトラマー陰性(非抗原特異的)T細胞が非分裂相に留まっていることにより示されている(95.6%および87.9%)。
【0068】
7日目のテトラマー陽性T細胞のアネキシンV染色は、未処理の培養と比べて、IL-21処理した培養でのアポトーシスを起こした(アネキシンV+)抗原特異的T細胞の分画のささやかな減少を示している(それぞれ、テトラマー+ T細胞の10.4% 対 5.4%、図2)。総合すれば、これらの結果は、IL-21処理した培養の中で発生する抗原特異的CD8 T細胞の頻度および絶対数の増加が、主として抗原特異的な細胞増殖の増強に起因し、およびごく一部、生存の増加またはアポトーシスの減少に起因するということを示唆している。
【0069】
実施例3
IL-21は主としてナイーブのCTL集団の中での抗原特異的T細胞反応を増強する
IL-21が抗原特異的CD8+ T細胞の発生を増強する能力を、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞の中で別々に評価した。純化したナイーブ(CD45RA+、CD62L+が>98%)CD8+ T細胞の集団を、健常ドナー(CG)(図5)および転移性メラノーマのある個体(ST)の両方由来のメモリー(CD45RO+が100%)CD8+ T細胞と比較した。IL-21がメモリーCD8+ T細胞から発生するMART-1特異的細胞の頻度に最小限の効果を及ぼす(0.10%から0.15%へ、および0.05%から0.037%へ)のに対し、IL-21曝露の後、ナイーブCD8 T細胞の中では12〜90倍の増加が観察され(0.94%から12.5%へ、および0.08%から7.08%へ)、IL-21が主としてナイーブT細胞に影響を及ぼすという証拠を与えている。
【0070】
実施例4
IL-21処理した培養物から発生するCTLは増強された腫瘍反応性を有する高親和性の抗原特異的T細胞の集団を表す
IL-21の影響下、発生した抗原特異的T細胞集団の機能をクローンレベルでさらに特徴付けるために、健康ドナー(CG)およびメラノーマ患者(ST)の両方由来のテトラマー+ CD8+ T細胞を7日目に分離し、96ウェルプレートの中に限界希釈でクローニングした。微小細胞毒性アッセイ法によって同定したMART-1特異的クローンを拡大し、かつ1)ペプチドをパルスしたT2細胞の50%最大溶解に必要なペプチド濃度(P50)、および2)抗原陽性のメラノーマ標的を溶解する能力について検査した。P50を評価するために、HLA-A2をトランスフェクトしたEBV B細胞株、T2、を107〜102pMの範囲のペプチド濃度で滴定した。50%溶解(P50)のためのペプチド必要量(nM)として結果を示す。IL-21処理した培養物から発生したCTLクローンは、それらの未処理の等価物よりも>1ログ低いペプチド必要量が必要であった−それぞれ、平均3nM(0.6〜30nMの範囲) 対 平均80nM(16〜500nMの範囲)(図6A)。IL-21の同様の効果は、メラノーマ患者(ST)から発生したCTLクローンについても見られた(図6B)。
【0071】
10:1というエフェクター 対 標的(E:T)の比率では、IL-21の存在下で刺激した後に単離したT細胞クローンは、IL-21の非存在下で単離したT細胞クローンよりもずっと高いMART-1陽性526メラノーマ細胞株に対する特異的溶解活性(35〜45%)を示した(図6Cおよび6D)。それぞれの個々のクローンについて、腫瘍反応性の増加はペプチド必要量の減少と一致し、IL-21の存在下で発生したCTLが、その同族の標的とのより高い結合力相互作用を示したことを示唆している。
【0072】
テトラマーに基づくTCR染色アッセイ法を用いて、腫瘍結合力の増加は、より高い親和性のTCRによるものであり、かつその他の副次的な要因によるものではないということを示すことができる。テトラマー染色の強度は、通常、TCR親和性と相関関係があることができるが(Yee et al., J. Immunol. 162: 2227, 1999; Crawford et al., Imuunity 8: 675, 1998)、その特異的TCRリガンドからのテトラマー解離の割合、Kd、に基づいて、より正確なTCR親和性の定義を得ることができる(Dutoit et al., J. Immunol. 168: 675, 1990)。このアッセイ法において、TCR-ペプチド-MHC相互作用またはTCR親和性のKdは、過剰の非標識テトラマーの存在下で、長時間にわたって残留する結合したテトラマーの分画と逆相関する。IL-21処理した培養または未処理の培養から誘発されたCTLクローンをM27ペプチド-テトラマー-PEで染色し、かつ過剰の非標識M27-テトラマーとインキュベートした。特定の時点(2〜60分)でのフローサイトメトリーによって、テトラマーが結合したCTLの分画を決定した。IL-21処理した培養物で発生したクローンと比べて、未処理の培養物から単離されたクローンでは、TCR/テトラマー-ペプチド解離速度が有意により速いことが分かった(図7)。総合すると、これらの結果は、IL-21処理が、高親和性TCRを発現するT細胞クローンの発生をもたらすことを示している。
【0073】
IL-21を介する高親和性T細胞の濃縮が、限られた数の抗原特異的T細胞のオリゴクローンの拡大によるのか、またはT細胞レパートリーに対するより広範な効果を表すのかを示すために、抗Vβ抗体のパネルを用いて、高親和性T細胞クローンおよび低親和性T細胞クローンのコホート間のTCR Vβ発現を調べた。例えば、患者CGについて、9つの高親和性T細胞クローンの中で、7つは特有のVβ鎖を発現し(2つだけがVβ発現を共有した)、および同様に多様なTCRレパートリーが、この患者の低親和性T細胞クローンの集団の中で観察され(10の異なる低親和性クローンの中で、2つだけが同じVβを共有した)、IL-21の効果が単にインビトロでの高親和性T細胞クローンのオリゴクローン集団の拡大によるのではないことを示唆している(図3)。
【0074】
実施例5
IL-21を用いた抗原特異的CD8 T細胞の培養はCD28発現、IFN-γおよびIL-2の産生を維持する
CD28はCD4 T細胞反応およびCD8 T細胞反応の両方の発生にとって重要な共刺激分子である。CD28受容体を介するシグナル伝達は、CD4 T細胞およびCD8 T細胞の両方におけるIL-2 mRNAの安定性の増加およびIL-2産生の増加をもたらす(Boise et al., Immunity 3: 87-98, 1995; Ragheb et al., J. Immunol. 163: 120-129, 1999)。活性化の後、CD28発現はヒトCD8+ T細胞のサブセットで失われ、および抗CD3刺激の後、このサブセットは増殖の減少を示す(Azuma et al., J. Immunol. 150: 1147-1159, 1993)。CD28-CD8+ T細胞は、高齢者、ならびに持続的ウイルス感染、EBVおよびCMVのある人々のCD8メモリーT細胞プールで増加している(Posnett et al., Int. Immunol. 11: 229-241, 1999)。CD28発現の消失はHIV患者において最も顕著であり(Appay et al., Nat. Med. 8: 379-385, 2002)、およびこの集団の増加はメラノーマのある患者で報告されている。最近、CMV特異的CD8 T細胞でCD28発現を回復することにより、インビトロでのIL-2産生および抗原特異的CD8 T細胞の生存の増加が維持されることが示された(Topp et al., J. Exp. Med. 198: 947-955, 2005)。したがって、この経路は、持続的なCD8の生存および機能のための重要な経路として認識されている。
【0075】
自己抗原MART-1を認識するCTLは、健康ドナーの末梢血に少数で存在し、および通常、ナイーブ表現型(CD45RA+、CCR7+、およびCD28int)によって特徴付けられる。IL-21存在下におけるこの希少な集団の分化を調べた。培養1週間後、抗原刺激した、未処理の細胞は、CCR7発現およびCD28発現の消失を伴うCD45RO+表現型を示した。対照的に、IL-21処理した培養は、抗原による初回刺激の4週後でさえ、持続的レベルのCD28発現を示した(図10)。このCD28アップレギュレーションは、MART-1特異的CTLおよびgp-100特異的CTLの両方について、ナイーブ健康ドナーおよびメラノーマ患者の両方で観察された。
【0076】
アップレギュレートされたCD28発現が機能的に能力のあるシグナルをもたらすかどうかを評価するために、抗原により引き起こされたIL-2およびIFNγの産生をこれらの培養で解析した。図11に示すように、未処理のCD28lo発現細胞と比べて、IL-21処理したCD28hi細胞では、IL-2の産生が有意に亢進していた。さらに、Il-2の産生はCTLA-4Igの添加によって阻害され、CD28発現がこれらの細胞におけるIL-2産生に必須であったことを示唆している。
【0077】
これらのデータは、インビトロで、IL-21が、IL-2産生の能力のあるCD28発現メモリーCD8 T細胞集団を誘導することができることを示唆している。このことは、インビトロおよびインビボにおけるこれらのCD8 T細胞の生存および活性化の増加と置き換えてもよく、かつ単剤療法としての、ならびに癌およびウイルス感染に対する養子細胞療法における、IL−21処理の重要な役割を示唆している。
【0078】
実施例6
IL-21はgp100およびNY-ESO-1抗原に対するCD8 T細胞反応に影響を及ぼす
T細胞がその他の自己抗原を認識することを示すために、その他2つの腫瘍関連自己抗原、メラノソーム抗原である、gp100(G154ペプチド)、および癌精巣抗原である、NY-ESO-1(NY157)を用いて、同様の方法で、CD8+ T細胞に対するIL-21の影響を評価した。Li et al., J. Immunol. 175: 2261-2269, 2005を参照されたい。
【0079】
NY-ESO-1(NY157)またはgp100(G154)ペプチドでパルスした自己の樹状細胞(DC)を用いて、インビトロでCD8+ T細胞を刺激した。IL-21処理した培養に、IL-21(30ng/ml)を添加した。初回インビトロ刺激の6日後、フローサイトメトリーでのテトラマー染色および多重パラメーター解析により、抗原特異性および表面表現型について、培養を解析した。
【0080】
図13パネルAで、囲んだゲートの隣に、全CD8+ T細胞の%として、NY-157およびG154特異的CTLの頻度を示す。例えば、NY-ESO-1特異的CTLの増加倍数は、IL-21処理した細胞では、対照を9.8倍大きく上回った(5.3% : 0.54%)。NY-ESO-1特異的CTLの絶対数の増加倍数は、それぞれの培養における細胞の数に基づいて計算し、およびNY-ESO-1については、IL-21処理した細胞の中でほぼ20倍大きいことが分かった。
【0081】
図13パネルBで、対照またはIL-21処理した培養物由来のゲートしたテトラマー陽性細胞を、CD28発現について解析した。(細胞は全て、CD45RO+、CCR7陰性であった)。NY-ESO-1またはgp100特異的CTLの中でのCD28発現についてのヒストグラム解析は、対照対照と比べて、IL-21処理した培養物の中で、有意にアップレギュレートされていることが分かった。これらの結果は、3人のHLA-A2+の個体からの6回の別々の実験の代表例であった。
【0082】
実施例7
骨髄機能廃絶療法および養子細胞移植の後にIL-21を受けるメラノーマ患者における抗腫瘍免疫の増強
養子細胞療法(ACT)は、腫瘍反応性リンパ球のエクスビボ選択、および自己の腫瘍を有する宿主に対するその活性化に基づく。サイトカインの存在下、患者自身の腫瘍抗原の存在下で、腫瘍特異的T細胞(TIL)をインビトロで活性化および拡大し、その後、同じ患者に移し、その後、サイトカインによる維持治療を行う。非常に多くの患者で、これは、末梢における抗原特異的T細胞の数の増加を引き起こし、客観的な腫瘍反応によって見られるような抗腫瘍効果をもたらす。IL-21は、抗原特異的T細胞のインビトロ活性化剤/増量剤の両方として使用し、および癌患者に一度移されたT細胞の維持療法のためにも使用する。
【0083】
ヒト対象を用いる全ての研究は、臨床試験を行う病院の施設内審査委員会の事前承認を受ける。インフォームドコンセントの後、末梢血単核細胞(PBMC)を入手し、MART-1(M27)もしくはgp100(G154)のA2拘束性ペプチドエピトープでパルスした自己の樹状細胞を用いることによって、または患者自身の腫瘍からの生検に由来する腫瘍細胞溶解物を用いることによって、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を発生させる。適切なサイトカイン(25〜50ng/mlのIL-2または10〜50ng/mlのIrIL-21)を用いて、GMP承認を受けた反応器で、T細胞を拡大させる。場合によっては、1週間間隔の3サイクルの刺激の後、T細胞をクローニングし、かつインビトロ試験用に拡大させる。クロミウム放出アッセイ法で抗原陽性腫瘍標的の特異的溶解を示すCTLクローンを選別する。2〜3日毎に、30ng/mlの抗CD3抗体(OKT3, Orthoclone; Ortho Biotech, Raritan, NJ)、106細胞/mlの放射線照射した同種PBMC、放射線照射した同種リンパ芽球様細胞株(2×105細胞/ml)、および25〜50ユニット/mlの一連のIL-2(aldesleukin; Chiron)を使用することによって、14日サイクルでクローンを拡大させる。全てのクローンは、CD3+、CD4-、CD8+として特徴付けられ、および抗原刺激後、高親和性IL-2受容体(CD25)を発現する。
【0084】
第III〜IV期の転移性メラノーマのある患者は、2日間のシクロホスファミド(60mg/kg)、その後の5日間のフルダラビン(25mg/m2)からなる非骨髄機能廃絶的化学療法を受ける。フルダラビンの最後の投与の翌日に、患者は腫瘍反応性リンパ球の細胞注入(106〜1010細胞/注入)およびサイトカイン療法(8時間毎の高用量IL-2 720,000IU/kgの静脈内注射、または様々な治療計画での10〜30μg/kgのrIL-21)を受ける。患者の中には、皮下に注射するフロイント不完全アジュバント(IFA)中の1mgのMART-1:26〜35(27L)ペプチドまたはgp100:209〜217(210M)ペプチドでワクチン接種を受けるものもいる。患者の血液学的パラメーターを毎日モニターする。固形腫瘍反応を評価するための客観的状態プロトコルを用いて、正の治療結果を測定することができる。標準的な放射線学的検討および身体検査を用いて患者の反応を評価する。Clinical Research Associates Manual, Southwest Oncology Group, CRAB, Seattle, WA, October 6, 1998, 改訂版, August, 1999を参照されたい。
【0085】
IL-21を用いて細胞をインビトロで培養するか、またはACT後にIL-21を用いて患者を維持するかのいずれかによる養子細胞療法との関連で、この試験における客観的なCRおよび/またはPR反応の存在は、抗腫瘍反応におけるIL-21の潜在的役割を示唆している。
【0086】
実施例8
IL-21を用いたインビトロ培養はACTのマウスモデルにおける抗腫瘍効果を増強する
Pmel-1トランスジェニックマウスは、ヒトメラノーマ特異的ペプチド抗原gp10025〜33に特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するように人工的に作製されたマウスである(Overwijk et al., J. Exp. Med. 198: 569-580, 2003)。pmel-1トランスジェニックマウス由来の脾細胞を単離し、ならびに1μM ヒトgp10025〜33ペプチドおよび30IU/mlの組換えヒトIL-2または10〜100ng/mlのマウスIL-21を含む培地の存在下で、6〜7日間、培養した。
【0087】
メスのC57Bl/6マウス(6〜12週齢、Charles River Laboratories)に、2〜5×105のB16-F10メラノーマ細胞を皮下注射し、10〜14日後、(上で詳述したような)インビトロで培養したpmel-1脾細胞の静脈内注射での養子移植による処理を施す。移植の日に、担腫瘍マウスの亜致死的な全身放射線照射(5Gy)によって、リンパ球減少を誘導する。その後、ヒトgp100を発現する2×105 pfuの組換え鶏痘ウイルスを用いたワクチン接種、それに続くサイトカインによる処理(rhIL-2、100μg/用量を6〜15投与)、または(ワクチン接種なしで)サイトカインのみによる処理のいずれかをマウスに施す。カリパスを用いて腫瘍を測定し、および公式 腫瘍容積=1/2(B2×L)、式中、Bは腫瘍の最短直径、かつLは腫瘍の最長直径、を用いて容積を測定する。
【0088】
IL-21で培養したpmel細胞を移植した時の腫瘍増殖の減少は、ACTのための抗原特異的T細胞のインビトロ活性化および拡大におけるIL-21の潜在的役割の証拠を提供している。
【0089】
実施例9
インビボでのIL−21処理はACTのマウスモデルにおける抗腫瘍効果を増強する
Pmel-1トランスジェニックマウスは、ヒトメラノーマ特異的ペプチド抗原gp10025〜33に特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するように人工的に作製されたマウスである(Klebanoff et al., PNAS 101: 1969-1974, 2004)。pmel-1トランスジェニックマウス由来の脾細胞を単離し、ならびに1μM ヒトgp10025〜33ペプチドおよび30IU/mlの組換えヒトIL-2または10〜100ng/mlのマウスIL-21を含む培地の存在下で、6〜7日間、培養した。
【0090】
メスのC57Bl/6マウス(6〜12週齢、Charles River Laboratories)に、2〜5×105のB16-F10悪性黒色腫細胞を皮下注射し、10〜14日後、(上で詳述したような)インビトロで培養したpmel-I脾細胞の静脈内注射での養子移植による処理を施す。移植の日に、担腫瘍マウスの亜致死的な全身放射線照射(5Gy)によって、リンパ球減少を誘導する。その後、ヒトgp100を発現する2×105 pfuの組換え鶏痘ウイルスを用いたワクチン接種、それに続くサイトカインによる処理(rhIL-2、100μg/用量、またはmIL-2、20〜100μg/用量を6〜15投与)、または(ワクチン接種なしで)サイトカインのみによる処理のいずれかをマウスに施す。カリパスを用いて腫瘍を測定し、および公式 腫瘍容積=1/2(B2×L)、式中、Bは腫瘍の最短直径、かつLは腫瘍の最長直径、を用いて容積を測定する。
【0091】
インビボでのIL-21処理後の腫瘍増殖の減少は、ACT後の腫瘍特異的T細胞の維持および活性化におけるIL-21の役割を示している。
【0092】
本発明の具体的態様が例示の目的のために本明細書において記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を行ってもよいということが、上記の内容から、正しく理解されると考えられる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除き、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】IL-21がMART-1特異的CTLの発生を増強することを示す。実施例で記載されているようなMART-1、M26ペプチドでパルスした自己の成熟樹状細胞を用いて、健康なHLA-A2+ドナーCG、NE、およびLD由来のCD8+ T細胞をインビトロで刺激した。 刺激後7日目に、各実験群からの106細胞を採取し、20μg/mlのペプチド/MHCテトラマー(PE、縦軸)および生体染色色素(PIまたはDAPI、横軸)で染色した。ゲートしたリンパ球(純化したCD8+細胞)中のテトラマー陽性細胞のパーセンテージとしてデータを表す。
【図2】IL-21がMART-1特異的CTLの発生を増強することを示す。実施例で記載されているようなMART-1、M26ペプチドでパルスした自己の成熟樹状細胞を用いて、健康なHLA-A2+ドナーCG、NE、およびLD由来のCD8+ T細胞をインビトロで刺激した。 Aに示すドナーCG、NE、およびLD由来の未処理のおよびIL-21処理した培養に対応する何百万ものテトラマー+細胞における絶対数、ならびに未処理の培養に対するIL-21処理した培養の絶対数の増加倍数。C、健常ドナーCG、および転移性メラノーマのある患者ST由来の培養を、刺激1の間、IL-21の存在下または非存在下で、第1の刺激(刺激1)および第2の刺激(刺激2)の7日後に解析した。刺激2の後に、IL-2およびIL-7を添加した。ゲートしたリンパ球(純化したCD8+細胞)中のテトラマー陽性細胞のパーセンテージとしてデータを表す。上の結果は、各ドナーについての3回の別々の実験の代表例である。
【図3】その他のγ鎖サイトカイン、IL-2、IL-7、またはIL-15への曝露が抗原特異的CTLの発生を増強しないことを示す。健康なHLA-A2+ドナー由来のCD8+ T細胞を、実施例で記載したようなMART-1、M26ペプチドでパルスした自己の成熟樹状細胞によりインビトロで刺激した。刺激後7日目に、各実験群からの106細胞を採取し、かつ20μg/mlのペプチド/MHCテトラマー(PE、縦軸)および生体染色色素(PIまたはDAPI、横軸)で染色した。ゲートしたリンパ球(純化したCD8+細胞)中のテトラマー陽性細胞のパーセンテージとしてデータを表す。データは、3人のHLA-A2+ドナー由来の培養の代表例である。
【図4】初回インビトロ刺激の間に、IL-21処理した細胞が、増殖の増加およびアポトーシスの減少を経ることを示す。純化したナイーブ(CD45RA+、CD62L+)リンパ球の集団をCFSEでプレインキュベートし、IL-21の非存在下(サイトカインなし)または存在下(IL-21処理)で、MART-1ペプチドで刺激した。7日目に、細胞をMART-1ペプチド‐MHCテトラマー‐PEで染色し、分裂している細胞(CFSE)またはアポトーシスを経ている細胞(アネキシンV)の分画について解析した。CFSE染色された細胞は連続的な分裂に伴って蛍光強度を失う。分裂していない(右端の囲み)、分裂している(真ん中の囲み)、および急速に分裂している(左端の囲み)テトラマー+細胞のパーセンテージとして結果を表す。アポトーシスを起こしている細胞については、アネキシンV染色性テトラマー+細胞を右上の区画のパーセンテージとして表す。
【図5】IL-21が、メモリーCD8+ T細胞に対して、主にナイーブT細胞に影響を及ぼすことを示す。健常ドナー(CG)およびメラノーマのあるドナー(ST)由来の高度に純化したナイーブ(CD45RA+、CD62L+)T細胞またはメモリー(CD45RO+)T細胞の集団を、IL-21非存在下または存在下でのMART-1ペプチドに対する抗原特異的反応の誘導について評価した。MART-1特異的CTLのパーセンテージを、2サイクルのインビトロ刺激後のゲートした全てのリンパ球(純化したCD8+細胞)の中のテトラマー+細胞のパーセンテージとして表す。結果は、別の2人の健常ドナー(NE、LD)および別の2人の患者ドナー(AM、RE)に対して行なわれた実験の代表例である。
【図6】IL-21が、高結合力の抗原特異的CTLの発生を選択的に誘導することを示す。個々のMART-1特異的CD8+ T細胞クローンを、IL-21の非存在下(対照)または存在下(IL-21)で刺激した培養から単離した。各実験条件からの8〜12の代表的なCTLクローンを、漸減的な濃度のM26ペプチドでパルスしたT2細胞を用いるクロミウム放出アッセイ法で、標的親和性について評価した(ペプチド量滴定解析)。標的細胞の50%最大溶解に達するのに必要な濃度(nM)としてデータを表す。概して、IL-21によって発生したCTLクローンは、サイトカインなしの対照で発生したCTLクローンと比べて、特異的溶解のためのペプチド必要量の減少を示した(* p<0.01)。A:健康ドナー、CG(●);B:メラノーマ患者、ST(△)。これらの同じクローンを、標準的な4時間の51クロミウム放出アッセイ法(CRA)における、10対1のE/T比での、MART-1+腫瘍細胞株(526)に対する特異的反応性について評価した。サイトカインなしの対照から単離されたCTLクローンよりも有意に多い、抗原陰性腫瘍のバックグラウンド溶解(375 ○、△)を含む抗原陽性腫瘍の溶解(526 ●、▲)が、IL-21処理した培養から単離されたCTLクローンで観察された(†p<0.01)。C:健康ドナー、CG(●、○);D:メラノーマ患者、ST(△、▲)。結果は、3人の健常ドナーおよび3人の患者ドナーの代表例である。
【図7】IL-21処理した培養がより高い親和性のTCRを発現するCTLを濃縮することを示す:テトラマー解離アッセイ法。過剰の非標識テトラマーの存在下で、長時間にわたって残留する結合したテトラマーの分画を表す、テトラマー解離アッセイ法を、個々のクローンのTCR解離率またはTCR親和性の代理測定として用いた。IL-21処理した培養物由来のPE-テトラマー標識されたMART−1特異的CTLクローン(●)の分画を、未処理の培養物由来のクローン(○)と長時間にわたって(2〜60分)比較した。時間0からのテトラマー染色のパーセント蛍光強度の減少率は、TCR親和性と逆相関している。結果は4人のドナーの代表例である。
【図8】IL-21処理した培養がCD28hi抗原特異的CTLの集団を産出することを示す。刺激前のPBMCから細胞を回収し、その後、IL-21の非存在下または存在下で、MART-1ペプチドをパルスした自己の樹状細胞による刺激後、7日。細胞をMART-1テトラマーについて染色し、かつ同時に、CD45RAまたはCD45ROのいずれか、CD28、およびCCR7で染色した(図7)。個々の表現型マーカーについてのヒストグラム解析を、ゲートしたMART-1テトラマー染色細胞に対して行なった。刺激後27日目由来の培養について、ゲートしたテトラマー染色細胞上のCD28発現をさらに示す。これらの結果は3人のドナー由来の培養の代表例である。
【図9】CD28hiおよびCD28低発現CTLの抗原特異的刺激後のIL-2産生を示す。IL-21処理した(CD28hi)培養または未処理の(CD28low)培養由来のMART-1テトラマー+ CD8+ T細胞を選別し、およびパルスしていないT2細胞、MART-1(M26)ペプチドをパルスしたT2細胞のみ、またはB7-CD28の関与を阻止するためのCTLA4-Ig(0.5μg/ml)を伴うMART-1(M26)ペプチドをパルスしたT2細胞のいずれかと共に共培養した。48時間後に上清を回収し、およびELISAでIL-2について解析した。抗原刺激後のCD28高発現MART-1特異的CTLの中のIL-2産生の特異的誘導、およびCTLA4-Igによる阻害が観察され、IL-21処理した細胞の中でのIL-2誘導がCD28依存的であることを示唆している。結果は3回のアッセイ法の平均であり、エラーバーは示した通りである。
【図10】CD28hiおよびCD28low発現CTLの抗原特異的刺激後のIL-2産生を示す。IL-21処理した培養または未処理の培養由来のMART-1テトラマー陽性CD8細胞を選別し、およびパルスしていないT2細胞、MART-1(M26)ペプチドをパルスしたT2細胞のみ、またはB7-CD28の関与を阻止するためのCTLA4-Igを伴うMART-1ペプチドをパルスしたT2細胞のいずれかと共に共培養した。48時間後に上清を回収し、ELISAでIL-2について解析した。抗原刺激後のCD28hi発現MART-1特異的CTLの中でのIL-2産生の特異的誘導、およびCTLA4-Igによる阻害が観察される。結果は3回のアッセイ法の平均である。
【図11】IL-21がgp100およびNY-ESO-1抗原に対するCD8 T細胞反応に影響を及ぼすことを示す。CD8 T細胞をNY-ESO-1またはgp100ペプチドでパルスした自己のDCを用いてインビトロ両方で刺激した。IL-21処理した培養物にIL-21を添加した。初回インビトロ刺激の6日後、フローサイトメトリーでのテトラマー染色および多重パラメーター解析により、培養を抗原特異性および表面の表現型について解析した。パネルAにおいて、NY-ESO-1およびG154特異的CTL頻度を囲んだゲートの隣に全てのCD8 T細胞のパーセンテージとして示す。NY-ESO-1特異的CTLの絶対数の増加倍数をそれぞれの培養における細胞の数に基づいて計算し、およびNY-ESO-1については、IL-21処理した細胞で約20倍多いことが分かった。パネルB、対照培養およびIL-21処理培養由来のゲートしたテトラマー陽性細胞をCD8発現について解析した。細胞は全て、CD45RO+、CCR7-であった。NY-OEST-1またはgp1000特異的CTLの中でのCD28発現についてのヒストグラム解析は、対照と比べて、IL-21処理した培養の中で顕著にアップレギュレートされていることが分かった。これらの結果は、3人のHLA-2+の個体由来の6回の別々の実験の代表例である。
【図12】IL-6およびIL-12、IL-2、IL-7、またはIL-15単独へのIL-21の添加が、IL-6およびIL-12、IL-2、IL-7、またはIL-15単独と比べて、CD8 T細胞反応を有意に増強することを示す。
【図13】IL-21が、さらなる抗原特異的T細胞の濃縮なしで、増幅および養子移植に十分なほど高いレベルまでT細胞頻度を増加させることができることを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍抗原を同定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
IL-21組成物および抗原提示細胞(APC)の存在下で、対象から単離された腫瘍物質を末梢血単核細胞(PBMC)と共培養する工程;
培養物からT細胞集団を単離する工程;
T細胞集団から個々のT細胞をクローニングする工程;ならびに
抗原特異性についてT細胞クローンを特徴分析する工程。
【請求項2】
T細胞集団が最終分化していないT細胞集団である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
PBMCまたはT細胞集団が自己の細胞集団である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
腫瘍物質が全RNA、溶解した腫瘍細胞またはアポトーシス小体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
単離されたT細胞集団がCD4+細胞を含まない、請求項2記載の方法。
【請求項6】
共培養がIL-21組成物および1つまたは複数の追加のサイトカインの存在下である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
生物学的試料から末梢血単核細胞(PBMC)を単離する工程;
腫瘍を有する対象に対して組織適合性がある表現型を有するPBMCを同定する工程;
IL-21組成物およびAPCの存在下で、対象から単離された腫瘍物質をPBMCと共培養する工程;
細胞を培養で拡大する工程;ならびに
細胞を再導入して対象に戻す工程。
【請求項8】
PBMCが自己である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程の後に、T細胞を濃縮する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
T細胞を含む生物学的試料を単離する工程;
腫瘍を有する対象に対して組織適合性がある表現型を有するT細胞集団を同定する工程;
IL-21組成物およびAPCの存在下で、対象由来の腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程;
これらの細胞を培養で拡大する工程;ならびに
これらの細胞を対象に再導入して戻す工程。
【請求項11】
T細胞集団が自己である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
腫瘍物質が全RNA、溶解した腫瘍細胞、もしくはアポトーシス小体を含む、請求項7または10記載の方法。
【請求項13】
T細胞集団がナイーブであるか、または最終分化していない、請求項10記載の方法。
【請求項14】
腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程の後に、T細胞を濃縮する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
抗原特異的な細胞傷害性T細胞のエクスビボ増幅のための方法であって、以下の工程を含む方法:
T細胞を含む生物学的試料を単離する工程;
対象に対して組織適合性がある表現型を有するT細胞集団を同定する工程;
IL-21組成物の存在下で、対象由来の抗原性物質をT細胞集団と共培養する工程;
細胞を培養で拡大する工程;および
細胞を対象に再導入して戻す工程。
【請求項16】
腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程の後に、T細胞を濃縮する、請求項15記載の方法。
【請求項1】
腫瘍抗原を同定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
IL-21組成物および抗原提示細胞(APC)の存在下で、対象から単離された腫瘍物質を末梢血単核細胞(PBMC)と共培養する工程;
培養物からT細胞集団を単離する工程;
T細胞集団から個々のT細胞をクローニングする工程;ならびに
抗原特異性についてT細胞クローンを特徴分析する工程。
【請求項2】
T細胞集団が最終分化していないT細胞集団である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
PBMCまたはT細胞集団が自己の細胞集団である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
腫瘍物質が全RNA、溶解した腫瘍細胞またはアポトーシス小体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
単離されたT細胞集団がCD4+細胞を含まない、請求項2記載の方法。
【請求項6】
共培養がIL-21組成物および1つまたは複数の追加のサイトカインの存在下である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
生物学的試料から末梢血単核細胞(PBMC)を単離する工程;
腫瘍を有する対象に対して組織適合性がある表現型を有するPBMCを同定する工程;
IL-21組成物およびAPCの存在下で、対象から単離された腫瘍物質をPBMCと共培養する工程;
細胞を培養で拡大する工程;ならびに
細胞を再導入して対象に戻す工程。
【請求項8】
PBMCが自己である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程の後に、T細胞を濃縮する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
養子免疫療法で使用するためのT細胞集団を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
T細胞を含む生物学的試料を単離する工程;
腫瘍を有する対象に対して組織適合性がある表現型を有するT細胞集団を同定する工程;
IL-21組成物およびAPCの存在下で、対象由来の腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程;
これらの細胞を培養で拡大する工程;ならびに
これらの細胞を対象に再導入して戻す工程。
【請求項11】
T細胞集団が自己である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
腫瘍物質が全RNA、溶解した腫瘍細胞、もしくはアポトーシス小体を含む、請求項7または10記載の方法。
【請求項13】
T細胞集団がナイーブであるか、または最終分化していない、請求項10記載の方法。
【請求項14】
腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程の後に、T細胞を濃縮する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
抗原特異的な細胞傷害性T細胞のエクスビボ増幅のための方法であって、以下の工程を含む方法:
T細胞を含む生物学的試料を単離する工程;
対象に対して組織適合性がある表現型を有するT細胞集団を同定する工程;
IL-21組成物の存在下で、対象由来の抗原性物質をT細胞集団と共培養する工程;
細胞を培養で拡大する工程;および
細胞を対象に再導入して戻す工程。
【請求項16】
腫瘍物質をT細胞集団と共培養する工程の後に、T細胞を濃縮する、請求項15記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−521406(P2008−521406A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543536(P2007−543536)
【出願日】平成17年11月23日(2005.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/042782
【国際公開番号】WO2006/065495
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507169978)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月23日(2005.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/042782
【国際公開番号】WO2006/065495
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507169978)
【Fターム(参考)】
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