説明

養鰻用曝気水車

【課題】水と空気を効率よく撹拌するとともに、空気を含んだ水を水槽内に行き渡らせるための十分な水流を作り出す曝気水車を提供する。
【解決手段】羽根2の中央部2aにはその先端部2bと本体部2cに、羽根2の軽量化及び回転抵抗力の軽減を目的とした複数の穴2g及び長穴2hを設け、中央部2aの本体部2cには水車1の本体回転部との取付け部2jを設け、羽根の中央部2aの先端部2bの接線を、先端部2bの回転軌跡の外周円(不図示)とほぼ90°の角度をなすようにし、両端部2dは全体が回転方向に向けて凹面に彎曲し、その先端部2eの接線を外周円に沿う形状とし、さらに、両端部2dは回転軸に平行な断面において、各々中央部から遠い側が回転方向に対して後退せしめられている形状とし、本体部2fの正面側の片側に4枚ずつの仕切り板2iを先端側よりも回転軸側が中央部から離れる方向に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鰻の養殖場で使用される曝気水車に関する。
【背景技術】
【0002】
鰻の養殖場で使用されている曝気水車はたえず水車で水槽の水を撹拌して水中に酸素を送り込んでおり、熱帯魚の水槽の中に設けられている酸素ポンプのような役割を果たしている。曝気水車は、養殖場の水槽の中ではフロートで水面に浮かべて使用されるため、水槽内の水全体に空気を行き渡らせるには、水と空気を撹拌するだけでなく、空気を含んだ水を拡散させるための水流を作り出す必要がある。
【0003】
特許文献1には、フロートの構造に特徴を有するとともに、水車の羽根の先端部に屈曲部を設けた曝気水車について記載されている。
特許文献2には、翼板の両側に汚水のこぼれ落ち防止用の補助版を設置したことを特徴とする汚水処理装置について記載されている。
特許文献3には、水車の羽根が中央部近辺から先端側及び基端側に延びるにしたがって同一方向に彎曲し、かつその中央部近辺から左右に延びるにしたがって前期方向と逆方向に彎曲してなることを特徴とする曝気水車について記載されている。
【0004】
【特許文献1】実開昭52−001799号公報
【特許文献2】実開昭53−132761号公報
【特許文献3】実開昭60−024393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の曝気水車に取り付けられている羽根は、水と空気を撹拌する効率や、空気を含んだ水を水槽内に行き渡らせる効率が不十分であった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決して、水と空気を効率よく撹拌するとともに、空気を含んだ水を水槽内に行き渡らせるための十分な水流を作り出す曝気水車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、水面に浮かべて水と空気を撹拌し水中に空気をとりこむ曝気水車であって、上記曝気水車は複数の略直方体のフロートと、該フロートを結合する基礎枠に載置された動力源と、該動力源と回転軸にて結合された複数の水車とを備え、上記水車は上記回転軸の中心から放射状に配置される複数の羽根を備え、該羽根は回転軸に垂直な断面において、上記羽根の先端部の接線方向と水車の回転時に羽根先端の描く外周円との角度がほぼ90°である上記羽根の幅方向の中央部と、該中央部の両側に連続して設けられ、全体が回転方向に向けて凹面に彎曲し、先端部の接線が上記外周円に沿うように形成されている上記羽根の幅方向の両端部とを有することを特徴とする。これにより、羽根の中央部で十分な水流を形成することができ、羽根の両端部で効率よく水を空気と撹拌することができる。
請求項2の発明は、さらに、上記両端部は、回転軸に平行な断面において、各々中央部から遠い側が回転方向に対して後退せしめられていることを特徴とする。これにより、羽根の両端部で掻き上げた水の一部を水車の回転面の左右両側へと広げ、より広い範囲で水を空気と撹拌することができる。
請求項3の発明は、さらに、上記両端部は各々回転方向の前面側に複数の仕切板を有し、該仕切板は上記羽根の先端側よりも回転軸側が上記中央部から離れる方向に配設されていることを特徴とする。これにより、上記よりさらに広い範囲で水を空気と撹拌することができる。
請求項4の発明は、さらに、上記フロートは上面に長手方向と直角方向に傾斜を有する本体と、該本体の底面に突設され、上記水槽から水を抜いた際、上記水槽の底面と当接して本体を支え、上記羽根を保護する下部とからなり、上記下部は流線形状の水平断面を有することを特徴とする。これにより、上記水流をスムーズに形成するとともに水抜き時に羽根を保護することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明の曝気水車によれば水と空気の撹拌を効率よく行うとともに、空気を含んだ水を水槽内に十分に行き渡らせるスムーズな水流を形成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の曝気水車の実施形態について図を用いて説明する。
まず、本実施形態の曝気水車の全体構成を図10で説明する。
2台の発泡スチロール製のフロート4の上部に基礎枠9が渡されており、その中間部にモーター5、減速機6が設置され、カバー10で覆われている。減速機6からは継手7を介して両側のフロート4の方向に回転軸8が延びてり、その両先端部に水車1が2台取り付けられている。
【0010】
次に個々の部品の構成を説明する。
水車1の羽根2の構成について説明する。羽根2は中央部2aと両端部2dからなり、それぞれ構成、機能が異なる。
【0011】
図1に示すように、羽根2の中央部2aにはその先端部2bと本体部2cに、羽根2の軽量化及び回転抵抗力の軽減を目的とした複数の穴2g及び長穴2hが設けられている。 さらに、中央部2aの本体部2cには水車1の本体回転部との取付け部2jが設けられている。
【0012】
図4、図6、図7及び図8に示すように、羽根の中央部2aの先端部2bの接線は、先端部2bの回転軌跡の外周円3(図8)とほぼ90°の角度をなしている。さらに、先端部2bは両端部2dとは壁により区分された一区画Cを形成している。
【0013】
これに対し両端部2dは、図5、図6及び図7に示すように全体が回転方向に向けて凹面に彎曲し、かつ、図3及び図6に示すように各々中央部から遠い側が回転方向に対して後退せしめられている。また、先端部2eの接線は、図5及び図8に示すように外周円3に対してほぼ0°の角度をなして外周円3に沿うように形成されている。
【0014】
さらに、本体部2fは、図1に示すように回転方向の前面側である正面側に各々4枚ずつの仕切り板2iを有しており、仕切り板2iは、羽根2の根元にいくほど外側に広がる角度で両端部2dに配設されている。また、両端部2dの本体部2fにも中央部2aと同様の目的で複数の穴2gが設けられている。
【0015】
フロート4の構成について説明する。図9に示すように上記構成においては略直方体の上部4aとその底面に突設された下部4bからなるフロートが2台備えられており、長手方向を平行に配設されている。上部4aの上面は図9(a)の左右に向けた傾斜が付いている。下部4bの水平断面は図9(b)に示すように長手方向の両端部4cをはじめ外周全体が流線形状をなしている。
【0016】
次に、上記構成の曝気水車の機能について説明する。
曝気水車は、モーター5の回転を減速機6、継手7及び回転軸8を介して両側の水車1に伝えて回転させ、複数の羽根2の回転により水面付近の水を撹拌するとともに、水面から水を掻き上げて空中に放出し、落下させて空気を水中に送り込む。これと同時に羽根の一部により水を羽根の回転方向に押し出して水流を形成させ、空気を含んだ水を水槽内に行き渡らせる。この曝気水車の稼動時の水車と水面との位置関係を図8に示す。
【0017】
次に、羽根2の機能、効果について説明する。
中央部2aの先端部2bの接線が図8に示す外周円3とほぼ90°の角度をなすことにより、中央部2aは回転により水を前方に押し出す効率が最も高くなるように構成されている。これにより水を水槽に行き渡らせるための水流を従来よりも多くすることができる。また、先端部2bを含む上記一区画Cには、複数の穴2g及び長穴2hが設けられているが、これには羽根2の軽量化と水と空気の撹拌効率を高めるという効果もある。
いずれにしてもこの中央部2aの上記区分された一区画Cは、上記のように主に水流の形成に特化された部分なのである。
【0018】
これに対し両端部2dは、水と空気を撹拌する機能に特化された部分である。すなわち、両端部2dの先端部2eは上記外周円3に沿う角度を有することで、回転により最も効率よく水を掬い上げることができるように構成されている。これにより、両端部2dは従来の曝気水車の羽根に比較して、より大量の水を救い上げて空中に放出することができる。
【0019】
さらに、両端部2dの上記反り形状及び仕切り板2iの存在により、空中に放出される水の一部は水車1の回転面の左右両側へと広がり、その水が落下して水面に衝突することで、より広い範囲で水を空気と撹拌することができる。
【0020】
以上説明したように、羽根の形状が全体的になだらかに連続していて、各部の機能分担が明確にされていなかった従来技術(特許文献3参照方)の水車と比較して、本実施形態の水車は上記構成により、水流の形成のための機能と水の掻き上げによる空気と撹拌するための機能とをそれぞれに特化した部分に分割したため、両機能をともに強化することができたのである。
【0021】
フロート4の機能、効果について説明する。
そもそも上記突設された下部4bは以下の理由で取り付けられている。すなわち、まず、水車1をフロート4への取付ける場合、上記水流の発生と、空気のかき混ぜに最も効率のよい高さに取付けなければならないという要請がある。しかし、このベストな位置で取付けた場合、フロート4の底面位置より羽根2先端位置が下となるため、水槽の掃除などで水を抜いたときにフロート4より先に羽根2が地面に当たって羽根2が破損するという問題が生じる。この水抜き時の羽根2の保護のためにフロート4の下部に上記下部4bを取り付けるようにしたのである。
しかし、この下部4bが水流の抵抗となってしまい、水槽内に空気を含んだ水を行き渡らせる障害となっていたのである。
【0022】
上述したように図9に示された流線形状を有する下部4bにより、2つのフロート4の外側の水流は、従来のものに較べてフロートによる抵抗が極めて少なくなる。これにより、羽根2の中央部2aにより形成された水流は当初の勢いを失うことなく曝気水車の前方中央側に流出し、同時に曝気水車の後方の水流も同様に抵抗なく水車に流入することができる。
【0023】
さらに、フロート4の上面に傾斜を設けたことにより、羽根4によって空中に放出された水の内、フロート4の上部に落下したものがスムーズに流れ落ちる構成としている。これにより、この水がフロート4の前後方向に流れ落ちて水流の妨げになることを防止している。
【0024】
本実施形態では上記構成のように羽根の中央部と両端部で異なる構成とすることで、各々の機能の分割を行っている。これは従来にない本発明の特徴であり、これにより、水をかき混ぜる機能と水流を作り出す機能の両方を従来の曝気水車よりも強化することができる。さらに、上記構成によればフロートの下部断面形状を流線形状とすることで、水車前後の水流をスムーズに保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の羽根を示す平面図である。
【図2】図1の羽根を本体側から見た図である。
【図3】図1の羽根を先端側から見た図である。
【図4】図1の羽根のA−A断面図である。
【図5】図1の羽根のB−B断面図である。
【図6】図1の羽根の正面側から見た斜視図である。
【図7】図1の羽根の背面側から見た斜視図である。
【図8】本実施形態の曝気水車の側面図である。
【図9】本発明の一実施形態のフロートを示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図10】本実施形態の曝気水車の組立斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 曝気水車
2 羽根
2a 中央部
2b 先端部(中央部)
2c 本体部(中央部)
2d 両端部
2e 先端部(両端部)
2f 本体部(両端部)
2g 穴
2h 長穴
2i 仕切板
2j 取付け部
3 外周円
4 フロート
4a 上部
4b 下部
4c 両端部(フロート)
5 モーター
6 減速機
7 継手
8 回転軸
9 基礎枠
10 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮かべて水と空気を撹拌し水中に空気をとりこむ曝気水車であって、
上記曝気水車は複数の略直方体のフロートと、該フロートを結合する基礎枠に載置された動力源と、該動力源と回転軸にて結合された複数の水車と、を備え、
上記水車は上記回転軸の中心から放射状に配置される複数の羽根を備え、該羽根は回転軸に垂直な断面において、
上記羽根の先端部の接線方向と水車の回転時に羽根先端の描く外周円との角度がほぼ90°である上記羽根の幅方向の中央部と、
該中央部の両側に連続して設けられ、全体が回転方向に向けて凹面に彎曲し、先端部の接線が上記外周円に沿うように形成されている上記羽根の幅方向の両端部と、を有することを特徴とする曝気水車。
【請求項2】
上記両端部は、回転軸に平行な断面において、各々中央部から遠い側が回転方向に対して後退せしめられていることを特徴とする、請求項1に記載の曝気水車。
【請求項3】
上記両端部は各々回転方向の前面側に複数の仕切板を有し、該仕切板は上記羽根の先端側よりも回転軸側が上記中央部から離れる方向に配設されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の曝気水車。
【請求項4】
上記フロートは上面に長手方向と直角方向に傾斜を有する本体と、該本体の底面に突設され、上記水槽から水を抜いた際、上記水槽の底面と当接して本体を支え、上記羽根を保護する下部と、からなり、
上記下部は流線形状の水平断面を有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の曝気水車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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