説明

養鶏飼料及び鶏卵

【課題】より簡単に鶏卵中のゼアキサンチン濃度を高め、ゼアキサンチンを容易に摂取できる栄養価値の高い鶏卵を得る方法の開発を課題とする。
【解決手段】クコの実またはそのクコの実抽出物を飼料に対し重量で0.1%〜10%混合した養鶏飼料を製造し、養鶏に与えることにより、クコの実の成分であるゼアキサンチンが鶏卵に移行し、ゼアキサンチンを高濃度に含んだ鶏卵を作ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵黄中のゼアキサンチン含量を高めるために用いる養鶏飼料及び該養鶏飼料で飼育されたゼアキサンチン含量が高められた鶏卵に関し、さらに詳しくはクコの実またはその抽出物を含有する養鶏飼料に及び該養鶏飼料を養鶏に与え、飼育されて得た卵にクコの実の成分であるゼアキサンチンが移行され、卵黄中のゼアキサンチン含有量が高められた鶏卵に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゼアキサンチンというカロチノイドの一種が人間の健康において重要な役割を果たしていることがわかってきた。特に目の健康に大きく関係していて、実際網膜の一部で細かい物を見ることを可能にする黄斑色素の主成分はゼアキサンチンであり、加齢による減少要因だけでなく、紫外線などの外部要因や、ストレス、偏食によっても網膜中のゼアキサンチンが減少に影響しているといわれている。実際、失明の原因である加齢黄斑変性症(AMD)とこのゼアキサンチン減少との関連性が、Arch.Ophthalmol.;1992;110(12):1701−8(表題:新生血管性加齢黄斑変性症の危険因子。眼病の場合−抑制グループ)に報告されている。
【0003】
また、この加齢以外にも、近年若い人の間ではTVゲームやコンピューターで目を使う機会が増加しており、年齢に関係なく目の健康関心度も大きくなっている。
【0004】
一方、鶏卵市場では、鶏卵中の栄養成分を高めて高付加価値の鶏卵を開発しようと、色々な栄養素、例えば、ヨウ素、ドコサヘキサエン酸、ビタミンE等を養鶏飼料に加え、鶏卵へ移行させ、商品化され、いわゆる特殊卵として販売されていて、新たなコンセプトを持った特殊卵の開発が期待されている。
【0005】
実際そのような目的を持った特許、例えば、特開2005−348725(栄養成分:トコトリエノール)、特開2005−224157(栄養成分:葉酸)が公開されている。しかし、実際飼料に含まれる栄養素が鶏卵へ移行するものは限られており、また移行してもその鶏卵中での含有量は大変小さく、コスト面、実際鶏卵から得られる栄養的価値も大変少ないというのが現状である。
【0006】
一方、鶏卵中には、飼料の主原料であるとうもろこしを起源とするキサントフィルが含まれているが、その主体はルテインであり、ゼアキサンチンの量はわずかである。
【0007】
鶏卵中のゼアキサンチン含量を高める方法として、特開平10−155430では、藻類の一種であるスピルリナを養鶏飼料に混合して、高濃度のゼアキサンチン含有卵の発明が公開されているが、固い細胞膜に覆われたスピルリナの消化率は鶏にとって低いために、ゼアキサンチンの鶏卵への移行率も悪く、高濃度のゼアキサンチン含有鶏卵を生産しようと思うと、極めて高価になってしまうという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2005−348725号公報
【特許文献2】特開2005−224157号公報
【特許文献3】特開平10−155430号公報
【非特許文献1】Arch.Ophthalmol.;1992;110(12):1701−8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、より簡単に鶏卵中のゼアキサンチン濃度を高められる養鶏飼料を開発し、ゼアキサンチンを容易に摂取できる栄養価値の高い鶏卵を得る方法の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するため、鋭意研究を行い、ゼアキサンチンが、クコの実の色素成分であり、クコの実が日本や、中国、韓国でも自生しており、通常乾燥して、その甘みを生かした食材としての使われ方以外に、含まれる様々な栄養成分により、健康な食材としても、古くから中国、日本でも食されてきたことに着目し、クコの実又はその抽出物を養鶏飼料に混合し、その飼料を用いて飼育された養鶏から得た鶏卵中にはクコの実原料によるゼアキサンチンが高濃度で移行されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、乾燥クコの実を直接養鶏飼料に混合するか、またはクコの実の色素成分のみを抽出したクコの実抽出物を混合することにより製造した養鶏飼料を用いて飼育されて得られた鶏卵中には、ゼアキサンチンが高濃度で移行されたことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
しかして、本発明の主題は、クコの実またはクコの実抽出物を含有する養鶏飼料である。
【0012】
また、本発明は、前記クコの実またはその抽出物の含量が飼料に対して重量で0.1%〜10%の範囲である養鶏飼料である。
【0013】
また、本発明は、前記鶏卵中のゼアキサンチン含量が鶏卵100gあたり2mg以上である鶏卵である。
【発明の効果】
【0014】
クコの実またはその抽出物を養鶏飼料に混合し、含まれる栄養成分であるゼアキサンチンを鶏卵に移行させて、鶏卵中に高濃度含有させることにより、鶏卵の栄養価値を高めることができる。ひいては当該の鶏卵を食することにより、目の健康によいとされるゼアキサンチンを容易に摂取できる食材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
使用されるクコの実は、収穫された生の状態でも養鶏飼料に混合することが可能であるが、乾燥された状態の方が好ましい。通常は天日乾燥または機械乾燥されるが、その乾燥方法については、限定されるものではない。乾燥クコの実の成分分析例を以下に示した。
【0016】
【表1】

【0017】
また、乾燥クコの実をヘキサン、ブタン、エタノール等極性溶媒によって、色素成分を抽出するか、またはCO2超臨界抽出した抽出液を直接飼料に噴霧するかまたはシリカ、大豆粕、脱脂糠などの基材に吸着させて、養鶏飼料に混合することもできる。
【0018】
本発明によるクコの実またはその抽出物は、養鶏において通常使用されているどんなタイプの養鶏試料にも容易に混合することができる。
本発明の養鶏飼料におけるクコの実の添加量は、乾燥クコの実の場合、含まれるゼアキサンチン平均含量(上記分析例)から重量で0.1%〜10%までが好ましく、鶏卵100g中にゼアキサンチン2mg以上を含有させるためには0.5%〜5%が更に好ましい。鶏卵に蓄積されるゼアキサンチン量はクコの実の添加量が5%以上の場合、比例して蓄積量が増える傾向はないために、経済的でもない。
【0019】
本発明のクコの実は、養鶏飼料に混合して、養鶏に与えることもできるが、ビタミン等と共にプレミックス中に前もって混合して与えることも可能である。
【実施例】
【0020】
実施例1
中国産乾燥クコの実をフードプロセッサーで細かくペースト状に粉砕し、日和産業株式会社製の養鶏飼料(ニュースター、タンパク17%)に混合し、28週齢の産卵鶏(ボリスブラウン種)21羽を7羽ずつ3区に分け、クコの実無添加区、1%添加区、5%添加区として4週間飼育、採取された鶏卵の分析を行った。その分析結果を表1に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
無添加区では飼料原料とうもろこしからのゼアキサンチンが検出されているが、上記の表のように、クコの実添加区ではクコの実由来のゼアキサンチンが鶏卵に移行することが確認され、添加量に比例して含有量が増大することがわかった。
【0023】
実施例2
中国産乾燥クコの実を500gヘキサン10kgに浸漬し、室温下で6時間放置してクコの実の色素成分であるゼアキサンチンを抽出する。濾過吸引後、常圧にてヘキサン抽出液を濃縮、除去したところ、粘性のある赤褐色のペースト色素1.5gを得た。このペースト色素を分析したところ、ゼアキサンチンが約30%であった。このペースト色素に脱脂ぬかを色素含有量が3%になるよう混合して、ゼアキサンチン含有量が3%のクコの実抽出粉末を得た。
このクコの実抽出粉末を実施例1と同様に養鶏飼料に混合した後、産卵鶏21羽を3区に分け、無添加区、0.5%添加区、1%添加区として、4週間飼育後、採取された鶏卵を分析し、表2の結果を得た。
【0024】
【表3】

【0025】
上記の表のように、無添加区に比べて、クコの実抽出物粉末を養鶏飼料に添加した区では、鶏卵中のゼアキサンチン含有量は添加量に比例して移行されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クコの実またはその抽出物を含有する養鶏飼料。
【請求項2】
前記クコの実またはその抽出物の含量が、飼料に対し重量で0.1%〜10%の範囲である請求項1に記載の養鶏飼料。
【請求項3】
養鶏を請求項1または2に記載の養鶏飼料を用いて飼育して、卵黄中のゼアキサンチンが高められた鶏卵。
【請求項4】
前記卵黄中のゼアキサンチン含量が、鶏卵100gあたり2mg以上である請求項3に記載の鶏卵。

【公開番号】特開2008−22703(P2008−22703A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181476(P2006−181476)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(506212503)株式会社やなぎた (1)
【出願人】(592256047)日和産業株式会社 (4)
【出願人】(592256058)大和化成株式会社 (4)
【Fターム(参考)】