香味改善剤
【課題】
微量の添加により飲食品の呈味、特に旨味感を増強し、または、魚節風味飲食品に削りたての魚節、特にカツオ節をイメージさせるウッディー感、節感を付与することができる香味改善剤を提供する。
【解決手段】
2,4,7−トリデカトリエナールまたは4,7−トリデカジエナール((E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)からなる香味改善剤、これらの化合物を10−2ppm〜104ppm含有させた魚節香料組成物、これらの化合物を10−3ppb〜104ppb含有させた飲食品。
微量の添加により飲食品の呈味、特に旨味感を増強し、または、魚節風味飲食品に削りたての魚節、特にカツオ節をイメージさせるウッディー感、節感を付与することができる香味改善剤を提供する。
【解決手段】
2,4,7−トリデカトリエナールまたは4,7−トリデカジエナール((E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)からなる香味改善剤、これらの化合物を10−2ppm〜104ppm含有させた魚節香料組成物、これらの化合物を10−3ppb〜104ppb含有させた飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味改善剤に関し、さらに詳しくは、
【0002】
【化1】
【0003】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる香味改善剤に関する。
【背景技術】
【0004】
(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは、調理したチキンのフレーバーから見いだされ(非特許文献1)、また、アラキドン酸の熱分解物(非特許文献2)やリン脂質の熱分解物(非特許文献3)などから見出された、天然にも存在する、香気を有する揮発性化合物である。香料用途としては、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献1)、4−シスデセナールと(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを併用することによる、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献2)などが提案されている。
【0005】
また、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールはリン脂質の熱分解物(非特許文献3)から見出されている。
【0006】
これらの化合物の香気特性は(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールがEgg white−like、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールがAnimal,beefy、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールがAnimal,pigであると記載されている(非特許文献3)。
【0007】
また、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールは天然物からはオリビ(Ourebia ourebi)の目の上の分泌線からの外分泌物の成分としての報告があり(非特許文献4)、香料用途としては、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献1)、香粧品香料としての使用(特許文献3)が提案されている。しかしながら、前記非特許文献1〜4および特許文献1〜3には、2,4,7−トリデカトリエナールまたは、4,7−トリデカジエナールを飲食品に極微量添加することにより、飲食品の呈味そのものを改善できること、すなわち、飲食品の濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどの自然な旨味感を増強できることは記載も示唆もされていない。また、魚節風味を有する飲食品に極微量添加することにより、魚節特有のウッディー感、節感を増強し、魚節の香味を改善することができることについても記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭41−7822号公報
【特許文献2】特公昭54−12550号公報
【特許文献3】特開昭61−65814号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of American Oil Chemists‘ Society. 51(8),356−9(1974)
【非特許文献2】Frontiers of Flavour Science, [Proceedings of the Weurman Flavour Research Symposium], 9th, Freising, Germany, June 22―25,1999(2000)
【非特許文献3】Journal of Agricultural and Food Chemistry(2004),52(3),581―586
【非特許文献4】Journal of Chemical Ecology(1995),21(8),1191−1215
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、飲食品の香味改善剤を提供することである。また、飲食品の旨味感を増強することのできる呈味増強剤を提供することである。また、さらには魚節特有のウッディー感、節感を増強し、魚節の香味を改善することができる魚節香味改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は先に、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを、魚節風味を有する飲食品に極微量添加することにより、魚節特有のウッディー感、節感を増強し、魚節の香味を改善することができることを見いだし、特許出願を行った(特願2010−180193)。また、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを飲食品に極微量添加することにより、飲食品の呈味そのものを改善できること、すなわち、飲食品の濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどの自然な旨味感を増強できることを見いだし、特許出願を行った(特願2010−247611)。
【0012】
本出願人は、その後さらに、これらの化合物の上記2つの化合物に関連する幾何異性体について合成を行い、その香味特性の評価を行った。その結果、上記2つの化合物に関連する幾何異性体についても、飲食品の濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどの自然な旨味感を増強できること、および、魚節風味を有する飲食品に極微量添加することにより、魚節特有のウッディー感、節感を増強し、魚節の香味を改善することができることを確認することができた。
【0013】
かくして、本発明は以下のものを提供する。
(a)下記式(1)
【0014】
【化2】
【0015】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる香味改善剤。
(b)下記式(1)
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる飲食品の呈味増強剤。
(c)飲食品が旨味感を有する飲食品であることを特徴とする(b)2に記載の飲食品の呈味増強剤。
(d)呈味増強が旨味感の増強であることを特徴とする(b)または(c)に記載の飲食品の呈味増強剤。
(e)旨味感を有する飲食品がアミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂および食塩から選ばれる1種または2種以上を含有する飲食品であることを特徴とする(b)〜(d)のいずれかに記載の飲食品の呈味増強剤。
(f)(b)〜(e)のいずれかに記載の飲食品の呈味増強剤を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−2ppm〜104ppm含有することを特徴とする飲食品の呈味増強剤組成物。
(g)(b)〜(e)のいずれかに記載の飲食品の呈味増強剤を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb添加することを特徴とする飲食品の呈味増強方法。
(h)(f)の飲食品の呈味増強剤組成物を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb添加することを特徴とする飲食品の呈味増強方法。
(i)下記式(1)
【0018】
【化4】
【0019】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる魚節香味改善剤。
(j)(i)に記載の魚節香味改善剤を式(1)の不飽和アルデヒド濃度として10−2ppm〜104ppm含有することを特徴とする魚節香料組成物。
(k)(j)に記載の魚節香料組成物を式(1)の不飽和アルデヒド濃度として10−3ppb〜104ppb含有することを特徴とする飲食品。
【0020】
本発明で使用される(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールは天然物から見いだされた報告があり(前記非特許文献3)、また、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールについてはチキン様フレーバーとしての用途が提案されているが(前記特許文献1)、特許文献1には実際に(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを香料として使用している実施例の記載はない。また、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール、(E,Z)−4,7−トリデカジエナール、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールおよび(E,E)−4,7−トリデカジエナールについては、先行文献中全く記載が見あたらない。
【0021】
したがって、これらの化合物が呈味増強剤としては未だ報告されたことはなく、ましてや、飲食品に添加することにより、濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどの旨味感を増強するといった内容は全く記載も示唆もされたことがない。また、これらの化合物が魚節の成分としては未だ報告されたことはなく、魚節フレーバーとして使用されている記載も見あたらない。
【発明の効果】
【0022】
本発明の風味改善剤の有効成分である不飽和アルデヒドは、呈味増強剤として、飲食品、特に旨味感を有する飲食品、さらには、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂、食塩などを含有する飲食品に10−3ppb〜104ppb添加することにより、従来にはない、自然な旨味感を増強することができる。また、呈味増強剤組成物として、組成物中に本発明の呈味増強剤の有効成分である不飽和アルデヒドを10−2ppm〜104ppm含有させ、その呈味増強剤組成物を飲食品に添加することにより、同様の効果を得ることができる。
【0023】
また本発明の風味改善剤の有効成分である不飽和アルデヒドは、魚節香味改善剤として魚節様、特に鰹節様の香気を有する魚節香料組成物中に10−2ppm〜104ppm配合することで、従来にはない、魚節特有のウッディー感、節感を付与することができる。また、その魚節香料組成物を飲食品に不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppbとなるように添加することにより魚節様のウッディー感、節感のある香味を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例1)
【図2】図2は(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例1)
【図3】図2は(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例1)
【図4】図4は(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例2)
【図5】図5は(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例2)
【図6】図6は(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例2)
【図7】図7は(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例3)
【図8】図8は(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例3)
【図9】図9は(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例3)
【図10】図10は(E,Z)−4,7−トリデカジエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例4)
【図11】図11は(E,Z)−4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例4)
【図12】図12は(E,Z)−4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例4)
【図13】図13は(Z,E)−4,7−トリデカジエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例5)
【図14】図14は(Z,E)−4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例5)
【図15】図15は(Z,E)−4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例5)
【図16】図16は(E,E)−4,7−トリデカジエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例6)
【図17】図17は(E,E)−4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例6)
【図18】図18は(E,E)−4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例6)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明で使用される不飽和アルデヒドは、具体的には、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール、(E,Z)−4,7−トリデカジエナール、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールおよび(E,E)−4,7−トリデカジエナールである。
【0026】
本発明で使用されるこれらの化合物は、例えば、以下の方法により合成して得ることができる。
【0027】
(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは、例えば、市販のシス−3−ノネナールを出発原料としてホーナー・ワーズ・エモンズ反応を行い(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノールエステルとし、未精製のまま水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)還元を行い、得られた(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノールを公知の精製方法により精製した後、酸化して得ることができる。
【0028】
また、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールは、例えば、市販の(E)−オクト―2―エン−1−オールをブロム化し、得られたブロマイドと2−プロピン−1−オールを銅試薬存在下でカップリングして(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オールを得、次いで三重結合をリンドラー還元により二重結合とした後に酸化ウィッティヒ反応により(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエンエステルへと導き、還元および酸化を経て得ることができる。
【0029】
また、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールは、例えば、前記と同様の方法により(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オールを得、水素化アルミニウムリチウム(LAH)還元を行い、得られたジエンアルコールを酸化ウィッティヒ反応により(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエンエステルへと導き、還元および酸化を経て得ることができる。
【0030】
また、(E,Z)−4,7−トリデカジエナールは、例えば、ペンチルブロマイドに2−プロピン−1−オールをカップリングさせ、2−オクチン−1−オールとした後、ブロム化し、さらに2−プロピン−1−オールをカップリングさせ、2,5−ウンデカジイン−1−オールとした後、水素化アルミニウムリチウム(LAH)還元を行い(E)−2のアルコールを得た後に、残された三重結合をリンドラー還元にて二重結合とすることで(E,Z)−2,5−ジエンアルコールを得、引き続きマロン酸エステル縮合、脱カルボニル化を経て炭素鎖を延ばし、得られたジエンアルコールを酸化することで得ることができる。
【0031】
また、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールは、例えば、市販の(E)−2−オクチン−1−オールをブロム化した後、銅試薬存在下で4−ペンチン−1−オ−ルをカップリングして(E)−トリデカ−7−エン―4−イン−1−オールを得、次いで三重結合をリンドラー還元により二重結合とした後に酸化することで得ることができる。
【0032】
また、(E,E)−4,7−トリデカジエナールは、例えば、前記と同様の方法により(E)−トリデカ−7−エン―4−イン−1−オールを得、これをバーチ還元してジエンアルコールを得た後に、水酸基を酸化して得ることができる。
【0033】
本発明の不飽和アルデヒドはそれぞれ単独で使用しても良いが、それぞれ単独よりも、複数を組み合わせて併用して使用した方が、香味改善剤としての効果をより高く得ることができる。また、この際、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールや(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを併用してもよい。併用の際の配合比率は、任意の比率を挙げることができる。
【0034】
本発明ではこれらの不飽和アルデヒドを、微量、飲食品に添加することにより、飲食品の香味の改善を行うことができ、香味改善剤として使用することができる。
【0035】
本発明における香味改善の1つの態様としては、飲食品の呈味増強を例示できる。したがって、本発明の不飽和アルデヒドは飲食品の呈味増強剤として使用することができる。本発明の呈味増強剤が添加されることにより呈味が増強される飲食品は旨味感を有する飲食品であり、また、増強される呈味は主に飲食品の旨味感である。
【0036】
本発明でいう旨味感とは、濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどを想起させる呈味で、主に香気として感じるよりも舌に感じる呈味感であり、かつまた、天然素材の持つ自然な雰囲気を想起させる呈味感を意味する。
【0037】
旨味感を有する飲食品としては、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂、食塩などを比較的豊富に含む飲食品であり、これらの、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂、食塩などは天然物由来であっても合成品由来のいずれであってもよい。
【0038】
このような飲食品としては、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、及び、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、など;その他、チーズ、バターなどの乳製品、野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類、持ち帰り弁当の具や惣菜類、トマトジュース、スポーツ飲料などが例示できる。
【0039】
本発明の呈味増強剤は、これらの飲食品の中でも、特に、カロリーを減らすため、油脂含量を減らした食品;ナトリウム摂取量を減らすために食塩を減らした減塩食品;価格の高い天然素材を多く使用することができないため、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸、アルギニン、セリンなどのアミノ酸系調味料、グアニル酸、アデニル酸、イノシン酸などの核酸系調味料、コハク酸などの有機酸系調味料、などの調味料類を多く配合した飲食品、などに特に効果を発揮する。
【0040】
本発明の不飽和アルデヒドは呈味増強剤としてそのまま飲食品に添加して使用することができるが、本発明の不飽和アルデヒドは油溶性であり、そのままでは水への分散性が悪く、また、飲食品に微量添加することは計量、希釈の観点から困難であるため、本発明の不飽和アルデヒドを極微量配合して呈味増強剤組成物を得て、それを飲食品に配合する方法を採用することができる。このような組成物としては、本発明の不飽和アルデヒドを水混和性有機溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤などを例示することができる。
【0041】
本発明の不飽和アルデヒドを溶解するための水混和性有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2−プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。
【0042】
また、乳化製剤とするためには、本発明の不飽和アルデヒドを乳化剤と共に乳化して得ることができる。本発明の不飽和アルデヒドの乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインなどを使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、本発明の不飽和アルデヒド1質量部に対し、約0.01〜約100重量部、好ましくは約0.1〜約50重量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水あめなどの多価アルコール類の1種または2種以上の混合物を配合することができる。
【0043】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜配合することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0044】
また、本発明の呈味増強剤の有効成分である不飽和アルデヒドを配合した組成物中には、任意の成分を組み合わせることができ、各種の香料成分、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、野菜エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。
【0045】
本発明の呈味増強剤組成物への本発明の不飽和アルデヒドの添加量は、特に制限はないが、呈味増強剤組成物の飲食品への添加量は、通常おおよそ0.01%〜1%程度であるため、呈味増強剤組成物への本発明の不飽和アルデヒドの配合量としては10−2ppm〜104ppm、好ましくは0.1ppm〜103ppm、より好ましくは、1ppm〜100ppmである。
【0046】
本発明では、飲食品への本発明の不飽和アルデヒドの添加量は重要であり、特定の濃度範囲において飲食品に添加することにより、前記の通り、飲食品の呈味が増強される。この際の、飲食品への本発明の不飽和アルデヒドの添加量は本発明の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb、好ましくは、10−2ppb〜103ppb、より好ましくは0.1ppb〜100ppbである。飲食品への添加量が10−3ppb未満の場合、本発明の効果である呈味増強効果が得られず、また、飲食品への添加量が104ppbを超えた場合、本発明の不飽和アルデヒド特有のアルデヒド様の香気が感じられるようになってしまう。したがって、一般的には104ppb未満の添加量で使用するが、本発明の不飽和アルデヒド自体の香気が問題にならないような場合は、104ppbを超えて使用しても差し支えない。
【0047】
また、本発明における香味改善の別の態様として、特に、魚節の香味改善を例示できる。本発明の不飽和アルデヒドはカツオ節、宗田節、サバ節、イワシ節、ムロ節、サンマ節、ナマリ節、マグロ節、煮干しなどの魚節香味を有する飲食品に通常、香料として使用するよりも少ない量で飲食品に添加することにより、魚節香味を改善することができる。したがって、本発明の不飽和アルデヒドは魚節の香味改善剤として使用することができる。また、本発明の不飽和アルデヒドを、カツオ節、宗田節、サバ節、イワシ節、ムロ節、サンマ節、ナマリ節、マグロ節、煮干しなどの魚節風味を有する香料組成物に極微量配合して香料組成物を得、それを飲食品や調味料に配合することで、従来にはない魚節特有のウッディー感、節感のある香味を付与することができる。
【0048】
かかる魚節香料組成物の素材としては、例えば、カツオ節エキス、宗田節エキス、サバ節エキス、イワシ節エキス、ムロ節エキス、サンマ節エキス、ナマリ節エキス、マグロ節エキス、煮干しエキスなどの魚肉エキス類;ビール酵母、パン酵母、トルラ酵母などの酵母を自己消化法、酵素分解法、酸分解法などの方法により得られる酵母エキス類;大豆、小麦、コーン、ゼラチン、ホエー蛋白質、魚粉、カゼイン、卵白、ボーンエキスなどのタンパク質を、化学的分解または酵素分解して得られる動植物蛋白分解物類;魚節あるいは魚節エキスから、抽出および/または蒸留および/または吸着処理から選ばれる分画手段により得られる香気成分である魚節分画香気成分;および香料類を例示することができる。また、香料類としては、例えば、リモネン、シクロペンテン、メチルベンゼン、δ−カジネンなどの炭化水素類;イソアミルアルコール、1−ペンテン−3−オール、1−オクテン−3−オール、(Z、Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、2−フェニルエタノール、2,5−オクタジエン−3−オール、(Z)−または(E)−2−ペンテン−1−オール、(Z)−2−ペンテン−3−オール、(E)−2−ヘキセン−1−オール、(E)−2−オクテン−1−オール、(Z)−または(E)−1,5−オクタジエン−3−オール、(Z)−1,5−ウンデカジエン−3−オールなどのアルコール類;プロパナール、ブタナール、ペンタナール、(E)−2−ペンテナール、ヘキサナール、(Z)−3−ヘキセナール、(E)−2−ヘキセナール、ヘプタナール、(E)−2−ヘプテナール、(Z)−4−ヘプテナール、2,4−ヘプタジエナール、(E、Z)または(E、E)−2,4−ヘプタジエナール、オクタナール、(Z)または(E)−2−オクテナール、(E、E)−2,4−オクタジエナール、(E、Z)−2,5−オクタジエナール、ノナナール、(E)−2−ノネナール、(E、Z)−2,6−ノナジエナール、デカナール、2,4−デカジエナール、(E、Z)または(E、E)−2,4−デカジエナール、(E)−2−ウンデセナール、ベンズアルデヒド、クミンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナムアルデヒド、2−フェニル−2−ブテナールなどのアルデヒド類;2−ブタノン、アセトイン、ジアセチル、3−ペンテン−2−オン、3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、2,3−ペンタンジオン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン、2−オクタノン、3−オクタノン、(E、Z)または(E、E)−3,5−オクタジエン−2−オン、2−ノナノン、2−デカノン、2−ウンデカノン、(E)−6,10−ジメチル−5,9−ウンデカジエン−2−オン、シクロペンタノン、2−シクロペンテン−1−オン、2−または3−メチルシクロペンタノン、2,3,4あるいは5−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、2,3−ジメチル−2−シクロペンテン−1−オン、2,4−、2,5−、3,4−あるいは3,5−ジメチル−2−シクロペンテン−1−オン、2,3,4−トリメチル−2−シクロペンテン−1−オン、インダノン、シクロテン、シクロヘキサノン、2−シクロヘキセン−1−オン、2−あるいは3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、アセトフェノン、プロピオフェノン、カンファーなどのケトン類;酢酸、プロピオン酸、2−メチルプロピオン酸、乳酸、酪酸、2−メチル酪酸、イソ吉草酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、安息香酸、フェニル酢酸などの酸類;ギ酸エチル、酢酸エチル、安息香酸メチル、2−メチル安息香酸メチル、4−メチル安息香酸メチルなどのエステル類;ブチロラクトン、4−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸ラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類;トリメチルアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ブタンジアミン、フェニルエチルアミン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ブタンジアミン、ピロール、2−アセチルピロール、インドール、2−メチルインドール、3−メチルインドール、ピリジン、2,3あるいは4−メチルピリジン、2あるいは3−エチルピリジン、3−ビニルピリジン、3−メトキシピリジン、キノリン、ピラジン、メチルピラジン、エチルピラジン、2,3−、2,5−あるいは2,6−ジメチルピラジン、2−エチル−5−あるいは6−メチルピラジン、トリメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメトキシピラジンなどの含窒素塩基類;メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、カーボンジスルフィド、メチオナール、チアゾール、2,4−ジメチルチアゾール、2,4,5−トリメチルチアゾールなどの含硫化合物類;1,8−シネオール、1,4−シネオールなどのエーテル類;アセトニトリル、3−メチルブタンニトリル、4−メチルペンタンニトリル、ベンゾニトリル、フェニルアセトニトリルなどのニトリル類;o−,m−あるいはp−クレゾール、2−エチルフェノール、4−ビニルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−あるいは3,5−ジメチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、5−エチルー3−メチルフェノール、2,3,5−あるいは2,4,6−トリメチルフェノール、1−メトキシ−3−メチルベンゼン、1−メトキシ−4−プロピルベンゼン、2−メトキシ−4−メチルフェノール、4−エチル−2−メトキシフェノール、2−メトキシ−4−プロピルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシ−4−メチルベンゼン、1,3−ジメトキシ−5−メチルベンゼン、4−エチル−1,2−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシ−4−プロピルベンゼン、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール、(Z)または(E)1,2−ジメトキシ−4−(1−プロペニル)ベンゼン、サフロール、イソサフロール、1,2,3−あるいは1,3,5−トリメトキシベンゼン、2,6−ジメトキシフェノール、2,6−ジメトキシ−4−メチルフェノール、4−エチル−2,6−ジメトキシフェノール、2,6−ジメトキシ−4−プロピルフェノール、1,2,3−トリメトキシ−5−メチルベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリメトキシベンゼン、1,2,3−トリメトキシ−5−ビニルベンゼン、1,2,3−トリメトキシ−5−プロピルベンゼン、1,2,3−トリメトキシ−5−(1−プロペニル)−ベンゼン、グアヤコール、4−メチルグアヤコール、4−エチルグアヤコールなどの芳香族化合物類;2−メチルフラン、2−エチルフラン、2−ペンチルフラン、(Z)−2−(2−ペンテニル)フラン、2−ヘキシル−5−メチルフラン、2−エチル−5−ビニルフラン、ベンゾフラン、2−メチルベンゾフラン、2−エチルベンゾフラン、フルフラール、2−メチル−ジヒドロ−3(2H)−フラノン、3−メチル−2(5H)−フラノン、3,4−ジメチル−2(5H)−フラノン、3,4,5−トリメチル−2(3H)−フラノン、3,4,5−トリメチル−2(5H)−フラノン、5−エチル−3,4−ジメチル−2(5H)−フラノン、3,4−ジメチル−5−プロピル−2(5H)−フラノン、3,4−ジメチル−5−ペンチル−2(5H)−フラノン、2−アセチルフラン、2−アセチル−5−メチルフラン、フルフリルアルコール、2−フランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2−フランカルボン酸メチル、酢酸フルフリル、マルトール、2,3−ジメチルベンゾピランなどのフラン類およびピラン類などを挙げることができ、これらを任意に組み合わせて混合した魚節香料組成物をあげることができる。
【0049】
魚節香味改善剤としての本発明の不飽和アルデヒドの配合量もまた重要であり、その目的、あるいは魚節香料組成物の種類によっても異なるが、例えば、魚節香料組成物の全体質量に対して、10−2ppm〜104ppm、好ましくは0.1ppm〜1000ppm、より好ましくは1ppm〜100ppmの範囲内を例示することができる。これらの範囲内では、魚節香料組成物に対し魚節に特有の、ウッディー感、節感などを付与する優れた効果を有する。
【0050】
ここで、ウッディー感、節感とは、カツオ節などの魚節類に特有の好ましい香気で、カツオ節などを削るときに発生する削りたてをイメージさせるようなフレッシュな香気で、木材を削るときの香気をやや想起させるようなさわやかな香気を意味する。
【0051】
一方、魚節香料組成物に対する本発明の不飽和アルデヒドの配合量が104ppmを超えた場合には、シトラス様、石鹸様、劣化した油様の異臭としての香気・香味特性が出てしまい好ましくない。また、魚節香料組成物に対する本発明の不飽和アルデヒドの配合量が10−3ppmを下回る場合は、本発明特有の香気・香味付与効果が得られない。
【0052】
さらに、本発明は、本発明の不飽和アルデヒドを有効成分とする魚節香味改善剤を含有させた魚節香料組成物を有効量添加したことを特徴とする飲食品に関し、該製品に魚節様のウッディー感、節感のある香気・香味を付与することができる。かかる飲食品としては、魚節香味を少なくとも一部に含有するものであればよく、広い分野の各種飲食品に配合利用することができる。
【0053】
これらの飲食品としては、例えば、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、酸味調味料、発酵調味料、ポークエキス、チキンエキス、魚介エキス、酵母エキス、蛋白加水分解物、醤油、味噌、食酢、三杯酢、粉末すし酢、ドレッシング、マヨネーズ、ソース、ケチャップ、魚醤、豆板醤、魚節類、昆布だし、スープストック、中華の素、天つゆ、麺つゆ、焼き肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、本みりん、新みりんなどの調味料類、コンソメスープ、ポタージュスープ、ラーメンスープ等のスープ類、みそ汁、吸い物、豚汁等の汁物、レトルト食品用のデミグラスソース、ホワイトソース、トマトソース、ミートソース等のソース類、カレー類、シチュー類、ハヤシ類、おでんなどを例示することができる。
【0054】
また、本発明の不飽和アルデヒドの飲食品への配合量は、その目的あるいは飲食品の種類によっても異なるが、前記魚節香味改善剤または前記魚節香味改善剤を配合した魚節香料組成物を不飽和アルデヒドとして有効量添加することにより魚節様のウッディー感、節感のある香味を付与することができる。その際の調味料または飲食品への配合量は、本発明の不飽和アルデヒドとして、例えば、飲食品の全体質量に対して10−3ppb〜104ppb好ましくは、10−2ppb〜103ppb、より好ましくは0.1ppb〜100ppbの範囲を例示することができる。一方、飲食品の全体質量に対する本発明の不飽和アルデヒドの配合量が104ppbを超えた場合には、シトラス様、石鹸様、劣化した油様の異臭としての香気・香味特性が出てしまい好ましくない。また、飲食品に対する本発明の不飽和アルデヒドの配合量が10−3ppbを下回る場合は本発明特有の香気・香味付与効果が得られない。
【0055】
以下、実施例、比較例および参考例をあげて本発明の好ましい態様をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
(実施例1)(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(2)の(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0057】
【化5】
【0058】
エチル(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノエート(8)
200mlフラスコに別途調製したウィッティヒ試薬(7.5g,30mmol)およびテトラヒドロフラン(THF)(75ml)を仕込み−78℃に冷却して撹拌した。系内にナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)/テトラヒドロフラン(1.0M,22ml,22mmol)を滴下し22℃まで昇温して30分間撹拌した。再度−78℃まで冷却し、系内に(Z)−3−ノネナール(7)(2.8g,20mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20ml)溶液を滴下して6時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにて反応を追跡したところ、原料が残存していたために1時間かけて15℃まで昇温した。薄層クロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。分液操作後に水層をジエチルエーテルにて抽出し、先の有機層と併せて飽和食塩水にて洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(100g,ヘキサン:酢酸エチル=50:1)により精製し、エチル(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノエート(8)(1.84g,39%,純度50%)を得た。
【0059】
(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(9)
100ml2口フラスコにエチル(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノエート(8)(純度50%,500mg,2.12mmolと仮定),ジエチルエーテル(30ml)を仕込みドライアイスバスを用いて冷却撹拌した。系内に水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)(溶媒:トルエン、0.99M,4.28ml,4.24mmol)を滴下し、緩やかに昇温しながら終夜撹拌した。次いで、系内に10%ロッシェル塩水溶液を加えて3.0時間室温撹拌した。水層をジエチルエーテルにて抽出して、得られた有機層を水および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(100g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜3:1)にて精製し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(9)(287mg,収率82%)を得た。
【0060】
(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール(2)
50mlナスフラスコに(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(9)(50mg,0.26mmol)および塩化メチレン(5ml)を仕込み、室温撹拌しながら二酸化マンガン(226mg,2.6mmol)を加えて2日間撹拌した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(10g,ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール(2)(36mg,収率72%)を得た。
【0061】
(実施例2)(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(3)の(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0062】
【化6】
【0063】
(E)−1−ブロモオクト−2−エン(11)
1Lナスフラスコに(E)−オクト−2−エン−1−オール(10)(50g,390mmol),ジエチルエーテル(480ml)およびピリジン(1.4g)を仕込み、室温撹拌した。系内に三臭化リン(39.2g,145mmol)を1.0時間かけて滴下し、室温で終夜撹拌した。ガスクロマトグラフィーにより原料の消失を確認後、系内に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて30分間撹拌した。水層をジエチルエーテルで抽出して、得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた(E)−1−ブロモオクト−2−エン(11)粗製物(58g)をこれ以上の精製をすることなく次反応に使用した。
【0064】
(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オール(12)
1L4口フラスコに臭化エチルマグネシウム/テトラヒドロフラン(0.9M,400ml,360mmol)を仕込み窒素雰囲気下、氷浴で冷却しながら撹拌した。2−プロピン−1−オール(9.59g,171mmol)のテトラヒドロフラン(130ml)溶液を滴下し、室温で1.5時間撹拌した後に、再度氷浴を用いて冷却した。系内にシアン化銅(4.52g)を加え15分間撹拌後に(E)−1−ブロモオクト−2−エン(11)(32.7g,粗製物)テトラヒドロフラン(65ml)溶液を滴下した。氷浴を除去し、2.0時間還流撹拌後、系内に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。分液操作後、水層を酢酸エチルで抽出して先の有機層とあわせて水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(28.6g)のうち(14g)を、これ以上精製することなく実施例3における水素化アルミニウムリチウム(LAH)還元の原料として使用した。残りの残渣(14g)はシリカゲルクロマトグラフィー(750g,ヘキサン:酢酸エチル=30:1)にて精製し、純粋な(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オール(12)(9.99g,70%,2steps)を得た。
【0065】
(Z,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(13)
500ml3口フラスコに(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オール(12)(4.0g,24.1mmol),キノリン(400mg)およびリンドラー触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製)(400mg)を仕込み、室温、水素雰囲気下で5.0時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、減圧濾過し、濾液を2Nの塩酸水溶液、飽和炭酸水素水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣(4.0g)をシリカゲルクロマトグラフィー(400g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(Z,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(13)(3.6g,89%)を得た。
【0066】
エチル(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエノエ−ト(14)
500mlナスフラスコに(Z,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(13)(2.11g,12.5mmol)および塩化メチレン(150ml)を加えて撹拌した。系内にエチル(トリフェニルホスフォラニリデン)アセテート(28.4g,81.5mmol)を加えて溶解を確認後、二酸化マンガン(21.7g,250mmol)を加えた。室温にて120時間撹拌後、原料の消失を確認して減圧濾過を行うことで得られた濾液にシリカゲル(100g)を加えて減圧濃縮した。残渣として得られた粗精製物を吸着させたシリカゲルを用いてシリカゲルクロマトグラフィー精製(200g,ヘキサン:酢酸エチル=20:1)し、エチル(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエノエ−ト(14)粗精製物(2.4g)を得た。この粗精製物はこれ以上精製することなく次反応に用いた。
【0067】
(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(15)
200ml3口フラスコにエチル(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエノエ−ト(14)(粗精製物1.0g,4.23mmol)およびジエチルエーテル(50ml)を仕込み−78℃に冷却しながら窒素雰囲気下撹拌した。系内に水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)(トルエン溶液)(0.99M,9.4ml,9.3mmol)を滴下し、ドライアイスバスを外して室温まで昇温させながら1.0時間撹拌した。原料の消失を確認し、系内に10%ロッシェル塩水溶液(100ml)を加えて終夜撹拌した。分液操作後、水層をジエチルエーテルにて抽出して先の有機層とあわせて水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(0.95g)をシリカゲルクロマトグラフィー(100g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(15)(600mg,収率59%(2steps)を得た。
【0068】
(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール(3)
50mlナスフラスコに(E,Z,E)−トリデカトリエン−1−オール(15)(300mg,1.54mmol),二酸化マンガン(4.03g,46.3mmol)および塩化メチレン(25ml)を加えて室温にて終夜撹拌した。原料の消失を確認し、減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(280mg)をシリカゲルクロマトグラフィー(30g,ヘキサン:酢酸エチル=100:1)にて精製し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール(3)(248mg,85%)を得た(純度94.1%)。
【0069】
(実施例3)(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(4)の(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0070】
【化7】
【0071】
(E,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(16)
1Lナスフラスコに水素化リチウムアルミニウム(3.20g,84.2mmol)およびジエチルエーテル(300ml)を仕込み、氷浴で冷却しながら撹拌した。系内に、前記実施例2で得られた(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オール(12)(14g,粗精製品)のジエチルエーテル(60ml)溶液を慎重に滴下し、滴下終了後氷浴を除去して6.5時間還流撹拌した。原料の残存が確認されたためにさらに水素化リチウムアルミニウム(1.0g,26.3mmol)を加えた後に、さらに8.0時間還流撹拌した。原料の消失を確認後に氷浴で冷却しながら水(22g)を慎重に加えた。室温で30分間撹拌後、系内に2Nの塩酸水溶液を懸濁液が清澄な二層系になるまで加えた。分液操作の後に水層を酢酸エチルで抽出して、先の有機層とあわせて水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(12.5g)のうち6.0gを次反応のワンポット酸化ウィッティヒ反応に使用した。
【0072】
残りの6.0gをシリカゲルクロマトグラフィー(1200g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(E,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(16)(3.04g,収率70%)を得た。
【0073】
エチル(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエノエート(17)
500mlナスフラスコに(E,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(16)(6.0g,粗精製品)および塩化メチレン(300ml)を加えて撹拌した。系内にエチル(トリフェニルホスフォラニリデン)アセテート(62.2g,178.5mmol)を加えて溶解を確認後、二酸化マンガン(31g,357mmol)を加えた。室温にて95時間撹拌後、原料の消失を確認して、減圧濾過を行うことで得られた濾液にシリカゲル(300g)を加えて減圧濃縮した。残渣として得られた粗精製物を吸着させたシリカゲルを用いてシリカゲルクロマトグラフィー(200g,ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、粗精製物(5.2g)を得た。この粗精製物はこれ以上精製することなく次反応に用いた。
【0074】
(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(18)
200ml3口フラスコにエチル(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエノエート(17)(2.0g,粗精製物)およびジエチルエーテル(100ml)を仕込み、−78℃に冷却しながら窒素雰囲気下撹拌した。系内に水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)(トルエン溶液)(0.99M,19ml,18.7mmol)を滴下し、ドライアイスバスを外して室温まで昇温させながら1.0時間撹拌した。原料の消失を確認し、系内に10%ロッシェル塩水溶液(100ml)を加えて終夜撹拌した。分液操作後、水層をジエチルエーテルにて抽出して先の有機層とあわせて水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(2.3g)をシリカゲルクロマトグラフィー(400g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(18)(1.34g,収率50%,2steps)を得た。
【0075】
(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール(4)
50mlナスフラスコに(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(18)(347mg,1.79mmol),二酸化マンガン(4.67g,53.7mmol)および塩化メチレン(25ml)を加えて室温にて終夜撹拌した。原料の消失を確認し、減圧濾過後、濾液を減圧濃縮することで得られる残渣(314mg)をシリカゲルクロマトグラフィー(40g,ヘキサン:酢酸エチル=100:1)にて精製し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール(4)(289mg,84%)を得た(純度96.3%)。
【0076】
(実施例4)(E,Z)−4,7−トリデカジエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(5)の(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0077】
【化8】
【0078】
2−オクチン−1−オール(20)
500mL4口フラスコに2−プロピン−1−オール(4.68g、83.5mmol)およびテトラヒドロフラン(80mL)を仕込み、窒素雰囲気下で−40℃にて冷却攪拌した。次いで、系中にブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.67M、100mL、167mmol)を30分で滴下し、−20℃まで昇温させながら1時間攪拌した。再度−40℃まで冷却した後に1−ブロモペンタン(19)(11.98g、79.3mmol)の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)溶液(80mL)を30分滴下した。滴下終了後終夜攪拌させ、攪拌終了後に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてさらに15分攪拌し、反応を終了させた。反応液を分液ロートに移し有機層を取り除いた後に、水層を酢酸エチルで抽出して先の有機層とあわせ、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(200g、ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜3:1)にて精製し、2−オクチン−1−オール(20)(7.1g、収率71%)を得た。
【0079】
1−ブロモ−2−オクチン(21)
200mLナスフラスコに2−オクチン−1−オール(20)(7.1g、56.3mmol)、エーテル(70mL)およびピリジン(210mg)を仕込み、室温にて攪拌した。系内に三臭化リン(5.75g、21.3mmol)を30分で滴下し、室温で3時間攪拌した。反応液のサンプリングによりガスクロマトグラフィーにより原料の消失を確認後、系内に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて30分攪拌し、反応を終了させた。反応液を分液ロートに移し有機層を取り除いた後に、水層をジエチルエーテルで抽出して先の有機層とあわせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣を減圧蒸留にて精製し、1−ブロモ−2−オクチン(21)(6.75g、収率63%、沸点66〜67℃/10mmHg)を得た。
【0080】
2,5−ウンデカジイン−1−オール(22)
500mL4口フラスコに臭化エチルマグネシウム/テトラヒドロフラン溶液(1.0M、106mL、106mmol)を仕込み、窒素雰囲気下にて氷浴で冷却しながら攪拌した。2−プロピン−1−オール(2.96g、52.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)を滴下した。室温で1.5時間攪拌した後に、再度氷浴を用いて冷却した。系内にシアン化銅(I)(1.33g)を加え、15分攪拌後に1−ブロモ−2−オクチン(21)(5.0g、26.4mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)を滴下した。水浴を除去し、2時間還流攪拌後、系内に2Nの塩酸水溶液を加え、反応を終了させた。反応液を分液ロートに移し、有機層を取り除いた後に水層をエーテルで抽出し、先の有機層とあわせて、水、2Nの塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(250g、ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、2,5−ウンデカジイン−1−オール(22)(3.37g、収率76%)を得た。
【0081】
(E)−ウンデカ−2−エン−5−イン−1−オール(23)
水素化リチウムアルミニウム1.89g(50mmol)のジエチルエーテル200mL懸濁液に2,5−ウンデカジイン−1−オール(22)(GC純度86.4%)8.21g(50mmol)のジエチルエーテル20mLの溶液を加えた。水素ガスが発生し、空冷下に25〜30℃まで発熱した。次いで加熱を行い還流下(35℃付近)2時間攪拌した。氷水で冷却後、注意深く水10gを滴下した。1時間攪拌後、沈殿物を減圧濾過した。濾液を濃縮して残渣7.4gをシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル200mL、ヘキサン:エーテル=3:1〜1:1)にて精製し、(E)−ウンデカ−2−エン−5−イン−1−オール(23)を得た(5.1g、収率61.4%、GC純度94.2%)。1H−NMRにより、オレフィン水素間のビシナルカップリング定数が15.2Hzであり、E−オレフィンであることを確認した。
【0082】
(E,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(24)
(E)−ウンデカ−2−エン−5−イン−1−オール(23)1.00gの酢酸エチル溶液にリンドラー触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製)100mgを加え、水素下にて5時間攪拌した。反応液を経時的にガスクロマトグラフィー追跡すると、徐々に反応が進行して化合物(24)へと変化する様子が見られた。反応後、セライト濾過し、濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル30g、ヘキサン:ジエチルエーテル=3:1〜1:1)にて精製し、(E,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(24)を得た(0.89g、収率87.9%)。TC−1 GC(FID)、DB−1701 GC−MS(TCI)、NMRからは過還元物らしきシグナルは観測されなかった。
【0083】
メチル 2−メトキシカルボニル−(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(25)
(E,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(24)90mg(0.535mmol)、塩化メチレン5mL、トリエチルアミン224μL(1.607mmol)の溶液に、氷水冷却下にメタンスルホン酸クロリド62μL(0.801mmol)を加えた。1.5時間後、ジエチルエーテルで希釈し水、塩化アンモニウム水溶液、食塩水で2回、順次洗浄した。濃縮後、200mgの粗メシラートを得た。
【0084】
これとは別に、マロン酸ジメチル100mg(0.757mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド5mL溶液にカリウムt−ブトキシド85mg(0.757mmol)を加えた。この溶液を氷水冷却し、先に調製した200mgの粗メシラートのN,N−ジメチルホルムアミド5mL溶液を5分間で加えた。室温に昇温しつつ終夜攪拌した。水を加えて(pH=8)ジエチルエーテルで2回抽出した。食塩水で2回洗浄し、濃縮後130mgの粗製物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル30g、ヘキサン:ジエチルエーテル=4:1)にて精製し、メチル 2−メトキシカルボニル−(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(25)を得た(82mg、収率54.4%)。
【0085】
メチル(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(26)
50mlナスフラスコにメチル 2−メトキシカルボニル−(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(25)(1.53g,5.43mmol),塩化ナトリウム(0.63g,10.77mmol),水(0.63g)およびジメチルスルホキシド(DMSO)(10ml)を仕込み、180℃まで加熱しながら2.5時間撹拌した。系内に水を加えた後にジエチルエーテル抽出して得られた有機層を飽和食塩水にて洗浄した。無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濾過、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー精製(50g,ヘキサン:酢酸エチル=20:1〜10:1)し、メチル(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(26)(0.85g,収率70%)を得た。
【0086】
(E,Z)−4,7−トリデカジエン−1−オール(27)
100mlナスフラスコに水素化リチウムアルミニウム(135mg,3.57mmol)およびジエチルエーテル(15ml)を仕込み氷冷しながら撹拌した。系内にメチル(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(26)(800mg,3.57mmol)のジエチルエーテル(15ml)溶液を慎重に滴下し、徐々に昇温させながら撹拌した。原料の消失をTLCにて確認後に改めて氷冷し、系内に慎重に水(0.71g)を加えて激しく撹拌した。反応混合物が白色スラリーになるまで撹拌した後に減圧濾過にて得られる濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50g,ヘキサン:酢酸エチル=2:1〜1:1)により精製し(E,Z)−4,7−トリデカジエン−1−オール(27)(620mg,収率89%)を得た。
【0087】
(E,Z)−4,7−トリデカジエナール(5)
100mlナスフラスコに(E,Z)−4,7−トリデカジエン−1−オール(27)(590mg,3.01mmol)および塩化メチレン(30ml)を仕込み、氷冷撹拌しながらジメチルホスフェート(1.53g,3.61mmol)を加えた。2.0時間撹拌後、薄層クロマトグラフィーにて原料の残存が確認されたため、さらにジメチルホスフェート(500mg)を追加した。改めて薄層クロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、系内に10%硫酸ナトリウム水溶液を加えて30分間撹拌した。分液操作後に水層をジエチルエーテルで抽出して、得られた有機層と先の有機層をあわせて飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50g,ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により精製し、(E,Z)−4,7−トリデカジエナール(5)(475mg,収率81%)を得た。
【0088】
(実施例5)(Z,E)−4,7−トリデカジエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(6)の(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0089】
【化9】
【0090】
(E)−トリデカ−7−エン−4−イン−1−オール(28)
300mLフラスコに臭化エチルマグネシウム/テトラヒドロフラン(0.9M,100ml,90mmol)を仕込み窒素雰囲気下、室温で撹拌した。ここに4−ペンチン−1−オール(3.8g,45mmol)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液を滴下し、60℃で0.5時間撹拌した後に、室温に戻した。系内にシアン化銅(1.0g)を加え、5〜10℃、15分間撹拌後に実施例2で調製した(E)−1−ブロモオクト−2−エン(11)(9.2g,45mmol,粗精製物)テトラヒドロフラン(10ml)溶液を滴下した。滴下後、室温下、一晩攪拌を行った。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、分液操作後、水層をジエチルエーテルで抽出して先の有機層とあわせて希塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(10g)を減圧蒸留およびシリカゲルクロマトグラフィー(300g,ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜3:2)にて精製し、(E)−トリデカ−7−エン−4−イン−1−オール(28)(1.0g,11%)を得た。
【0091】
(Z,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(29)
50mlフラスコに(E)−トリデカ−7−エン−4−イン−1−オール(28)(1.0g,5.1mmol),キノリン(1滴)、1−ヘキセン(30mL)およびリンドラー触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製)(20mg)を仕込み、氷冷下、水素雰囲気下で3.0時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、反応液をヘキサンにて希釈後、濾過し、粗精製物1.0gを得た。得られた粗精製物をシリカゲルクロマトグラフィー(200g,ヘキサン:酢酸エチル=30:1)にて精製し、(Z,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(29)(604mg,60%)を得た。
【0092】
(Z,E)−4,7−トリデカジエナール(6)
30mLフラスコに2−ヨードキシ安息香酸(IBX)(1.3g,5.4mmol)およびジメチルスルホキシド(DMSO)(15mL)を仕込み、室温下、40分撹拌を行った。IBXの溶解を確認し、(Z,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(29)(600mg,3.1mmol)を加え、室温下4時間撹拌を行った。反応液に水を加え、30分撹拌した後、濾過、ヘキサン洗浄を行い、濾液をエーテル抽出し、先の有機層と合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(600mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(200g,ヘキサン:酢酸エチル=30:1)により精製し、(Z,E)−4,7−トリデカジエナール(6)(10mg,収率17%)を得た。
【0093】
(実施例6)(E,E)−4,7−トリデカジエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(7)の(E,E)−4,7−トリデカジエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0094】
【化10】
【0095】
(E,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(30)
ドライアイス−アセトンバスにて冷却したコールドフィンガー付き200ml3口フラスコに液体アンモニア(60ml)を溜め、金属リチウム(458mg,66mmol)を加えて1.0時間撹拌してリチウムの溶解を確認した。系内に実施例5で得られた(E)−トリデカ−7−エン−4−イン−1−オール(28)(850mg,4.4mmol)のジエチルエーテル(8ml)とt−ブチルアルコール(8ml)の混合溶液を加えて緩やかに昇温させながら終夜撹拌した。翌朝、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて30分間撹拌後に減圧濃縮して残存アンモニアを除去した。残渣の水層をジエチルエーテルにて抽出して得られた有機層を水、飽和食塩水溶液で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(85g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(E,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(30)(630mg,収率73%)を得た。
【0096】
(E,E)−4,7−トリデカジエナール(7)
100mlナスフラスコに(E,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(30)(300mg,1.53mmol),炭酸水素ナトリウム(1.3g)および塩化メチレン(30ml)を仕込み、氷冷撹拌した。系内にデス・マーチン・ペルヨージナン(DMP)(1.3g,3.06mmol)を加えて2.0時間撹拌した。原料の消失を確認後に系内に10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて1.0時間撹拌した。分液操作後に水層をジエチルエーテルで抽出して先の有機層とあわせて、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(30g,ヘキサン:酢酸エチル=100:1)にて精製し、(E,E)−4,7−トリデカジエナール(7)(256mg,86%)を得た。
【0097】
(参考例1)ラーメンスープの調製
本発明の不飽和アルデヒドによる呈味感増強効果の評価系として、表1の処方によりラーメンスープを調製した。
【0098】
【表1】
【0099】
(実施例7)ラーメンスープへの(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表2に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
表2に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0102】
(実施例8)ラーメンスープへの(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表3に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
表3に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0105】
(実施例9)ラーメンスープへの(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表4に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表4に示す。
【0106】
【表4】
【0107】
表4に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0108】
(実施例10)ラーメンスープへの(E,Z)−4,7−トリデカジエナールの添加
(E,Z)−4,7−トリデカジエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表5に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
表5に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,Z)−4,7−トリデカジエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,Z)−4,7−トリデカジエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0111】
(実施例11)ラーメンスープへの(Z,E)−4,7−トリデカジエナールの添加
(Z,E)−4,7−トリデカジエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表6に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表6に示す。
【0112】
【表6】
【0113】
表6に示した通り、ラーメンスープに対し、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(Z,E)−4,7−トリデカジエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(Z,E)−4,7−トリデカジエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0114】
(実施例12)ラーメンスープへの(E,E)−4,7−トリデカジエナールの添加
(E,E)−4,7−トリデカジエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表7に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表7に示す。
【0115】
【表7】
【0116】
表7に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,E)−4,7−トリデカジエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,E)−4,7−トリデカジエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,E)−4,7−トリデカジエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0117】
(実施例13)グルタミン酸ナトリウム低減ラーメンスープへの不飽和アルデヒドの添加
表8の処方により、通常のラーメンスープとL−グルタミン酸ナトリウム(MSG)使用量を通常の2/3に減らしたラーメンスープを調製した。MSG低減ラーメンスープには本発明の不飽和アルデヒドをそれぞれ10ppbずつ添加したものを調製し、これらについて、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。官能評価の評価基準としては、濃厚感、こく味、塩味、複雑さ、天然感、香り、のそれぞれについて、各10点を満点として、次の基準により評価した。非常によい:10点、良い:8点、やや良い:6点、やや悪い:4点、悪い:2点、非常に悪い:0点として官能評価を行った。その評価の平均点を表9に示す。
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
表9に示したとおり、MSGを低減したラーメンスープは、通常のラーメンスープと比べて、濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの呈味に深く係わる官能評価はいずれも通常のラーメンスープと比べて評価が悪かった。また、天然感についても劣るという評価であった。一方、香りについてはほとんど差が見られなかった。それに対し、本発明の不飽和アルデヒドを添加したMSGを低減したラーメンスープは、通常のラーメンスープと比べて、濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの呈味に深く係わる官能評価および、天然感のいずれについても通常のラーメンスープとほぼ同等の評価であった。また、香りについては通常のラーメンスープと比べても良好であった。したがって、本発明の不飽和アルデヒドの添加により、飲食品の濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの旨味感が増強することが示された。
【0121】
(実施例14)呈味増強剤パウダーの調製
本発明の不飽和アルデヒドそれぞれ0.1gに、中鎖脂肪酸トリグリセライド19.9gおよびSAIB30gを混合溶解し油相部とした。他方、軟水680gにパインデックスNo.2を900g及びHLB15のショ糖脂肪酸エステル50gを加えて溶解し、85℃で15分間加熱殺菌した。この溶液を約40℃に冷却後、TK−ホモミキサー(特殊機化工業製)で攪拌混合しながら先に調製した油相部50gを注加し、更に5000回転/分で5分間攪拌混合して乳化処理し、乳化液1690gを得た。この乳化液を、噴霧乾燥機(NIRO社製:モービルマイナー)を用いて送風温度150℃、排風温度80℃で乾燥し、呈味増強剤パウダー950gを得た。
本発明品1:(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール0.01質量%含有
本発明品2:(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール0.01質量%含有
本発明品3:(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール0.01質量%含有
本発明品4:(E,Z)−4,7−トリデカジエナール0.01質量%含有
本発明品5:(Z,E)−4,7−トリデカジエナール0.01質量%含有
本発明品6:(E,E)−4,7−トリデカジエナール0.01質量%含有
(実施例15)めんつゆ(粉末タイプ)への本発明の不飽和アルデヒドの添加
市販めんつゆ(粉末タイプ)に本発明品1〜6の呈味増強剤を不飽和アルデヒド含量として20ppbとなるように0.02質量%添加して粉体混合し、本発明のめんつゆ(粉末タイプ)を調製した。不飽和アルデヒド添加および無添加のめんつゆ10gを熱水にて200mlに希釈し(飲用のめんつゆ中1ppb)、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表10に示す。
【0122】
【表10】
【0123】
表10に示した通り、10名のパネラーのうち大多数が、本発明品を添加しためんつゆが、濃厚感、コク味、複雑さなどの旨味感がややまたは大幅に増加したと評価した。
【0124】
(実施例16)マヨネーズへの本発明の不飽和アルデヒドの添加
クッキングミキサーに水60g、高酸度酢(酸度10%)60g、果糖ぶどう糖混合液糖(Bx75°)60g、凍結卵黄80g、食塩6.0g、化学調味料1.0gおよび粉末香辛料10gを仕込み均一撹拌混合後、大豆油723gを徐々に加え、均一撹拌混合を行った後、90℃まで加熱し、冷却後、撹拌脱気混合を行い、通常のマヨネーズを得た。
【0125】
一方、クッキングミキサーに水60g、高酸度酢(酸度10%)60g、果糖ぶどう糖混合液糖(Bx75°)60g、凍結卵黄80g、食塩6.0g、化学調味料1.0g、粉末香辛料10g、および増粘剤水溶液(カッパカラギーナン0.3%、キサンタンガム1.5%およびマルトデキストリン3%含有)223gを仕込み均一撹拌混合後、大豆油500gを徐々に加え、均一撹拌混合を行った後、90℃まで加熱し、冷却後、撹拌脱気混合を行い、低脂肪マヨネーズを得た(脂肪分約30%低減)。
【0126】
さらに低脂肪マヨネーズには本発明の不飽和アルデヒドを1ppb添加したものを調整し、これらについて、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。官能評価の評価基準としては、濃厚感、こく味、塩味、複雑さ、天然感、香りのそれぞれについて、各10点を満点として、次の基準により評価した。非常によい:10点、良い:8点、やや良い:6点、やや悪い:4点、悪い:2点、非常に悪い:0点として官能評価を行った。その評価の平均点を表11に示す。
【0127】
【表11】
【0128】
表11に示した通り、脂肪を低減したマヨネーズは、通常のマヨネーズと比べて、濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの呈味に深く係わる官能評価は、いずれも通常のマヨネーズと比べて評価が悪く、また、天然感も劣るという評価であった。また、香りもやや劣っていた。それに対し、本発明の不飽和アルデヒドを添加した低脂肪マヨネーズは、通常のマヨネーズと比べて、濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの呈味に深く係わる官能評価および、天然感、香りのいずれも無添加の低脂肪マヨネーズと比べ、大きく評点がアップし、通常のマヨネーズに近づいた。したがって、本発明の不飽和アルデヒドの添加により、飲食品の濃厚感、こく味、複雑さなどの旨味感が増強することが示された。
【0129】
(参考例1)水蒸気蒸留によるカツオ節フレーバーの調製
5リットル容の水蒸気蒸留釜に鰹荒節粉砕物200gおよび水1800gを仕込み、釜の下部より水蒸気を吹き込み、約100℃で約3時間水蒸気蒸留を行った。留出する揮発性香気成分を含んだ水蒸気を水冷式ガラス冷却管に導き、約20℃に冷却し、凝縮させることにより回収香400gを得た。得られた回収香400gにODO(登録商標:日清オイリオ社製の中鎖脂肪酸トリグリセライドの商品名)40gを添加して、室温下30分撹拌抽出した。抽出後60分静置し、油層部をデカント分離し、無水硫酸ナトリウムにて脱水し、濾紙濾過してカツオ節フレーバー(参考品1)38gを得た。
【0130】
(参考例2)含水アルコール抽出によるカツオ節フレーバーの調製
3リットル容のフラスコに鰹本枯節粉砕物200gおよび80%含水アルコール100gを加え、80〜85℃にて3時間撹拌抽出した。抽出後、遠心分離、濾過して抽出液800gを得、減圧下にてアルコールを回収しカツオ節フレーバー(参考品2)15gを得た。
【0131】
(参考例3)香料化合物の調合によるカツオ節フレーバーの調製
下記の各成分を調合した(参考品3)
4−エチルグアヤコール 1質量部
2,6−ジメトキシフェノール 0.5
1,2−ジメトキシ−4−プロピルベンゼン 2
4−エチル−2,6−ジメトキシフェノール 1
オイゲノール 0.5
シス−3−ヘキセナール 0.9
シクロテン 1
3−ヘキサノン 1
6−メチル−5−ヘプテン−2−オン 2
2−メチルインドール 0.5
2−エチル−3,5−ジメチルピラジン 3
2−エチル−3,5−ジメトキシピラジン 2.4
2,4−ジメチルチアゾール 1
2,3−ジメチルベンゾピラン 1
フルフリルアルコール 0.1
マルトール 1
3,4,5−トリメチル−2−(3H)−フラノン 1
メタンチオール 0.1
合計 20.0
【0132】
(参考例4)カツオ節様調合香料組成物の調製
カツオ節様の調合香料組成物として、下記の各成分(質量部)を調製した(比較品1)。
【0133】
参考品1 10質量部
参考品2 25
参考品3 0.5
アルコール 35
水 29.5
合計 100
【0134】
(実施例17)カツオ節様調合香料への(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
上記カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを表12に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、訓練されたパネラー10名により、官能評価を行った。官能評価の評価基準としては、ウッディー感、節感、力強さのそれぞれについて、各10点を満点、コントロール(比較品1)を5点として、次の基準により評価した。非常によい:10点、良い:8点、やや良い:6点、やや悪い:4点、悪い:2点、非常に悪い:0点として官能評価を行った。また、異臭(石鹸感、シトラス感)については、コントロール(比較品1)を0点として、コントロール同程度:0点、わずかに感じる:2点、やや感じる:4点、明らかに感じる:6点、異臭が強く気になる:8点、異臭が強く不快である:10点として官能評価を行った。その評価の平均点を表12に示す。
【0135】
【表12】
【0136】
表12に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物はカツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0137】
(実施例18)カツオ節様調合香料への(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを表13に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表13に示す。
【0138】
【表13】
【0139】
表13に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0140】
(実施例19)カツオ節様調合香料への(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを表14に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表14に示す。
【0141】
【表14】
【0142】
表14に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0143】
(実施例20)カツオ節様調合香料への(E,Z)−4,7−トリデカジエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを表15に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表15に示す。
【0144】
【表15】
【0145】
表15に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0146】
(実施例21)カツオ節様調合香料への(Z,E)−4,7−トリデカジエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを表16に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表16に示す。
【0147】
【表16】
【0148】
表16に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0149】
(実施例22)カツオ節様調合香料への(E,E)−4,7−トリデカジエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,E)−4,7−トリデカジエナールを表17に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表17に示す。
【0150】
【表17】
【0151】
表17に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,E)−4,7−トリデカジエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0152】
(参考例5)カツオ節エキスの調製
カツオ節10Kgをハンマーミル(スクリーン3mm)にて粉砕し、50Lカラム式抽出機に仕込み、カラム上部より60℃に加温した10%エタノール水溶液50Kgを50Kg/時間の流速で通液して抽出液35Kgを得、濾過後減圧下に濃縮し、濃縮液(カツオ節エキス)7Kgを得た(参考品4)。
【0153】
(実施例23)カツオ節風味調味料の調製
参考品4(600g)を用いて、下記に示した調味素材ならびに本発明の不飽和アルデヒドの希釈液をそれぞれ10ppbとなるように加え、90℃加熱溶解した後冷却し、本カツオ節風味調味料を得た。
【0154】
参考品4 600質量部
食塩 40
グルタミン酸ナトリウム 70
コハク酸ナトリウム 5
グラニュー糖 40
核酸系調味料 5
植物蛋白質加水分解物(HVP) 20
酵母エキス 10
水 210
合計 1000
それぞれのカツオ節風味調味料は、訓練されたパネラー10名により、不飽和アルデヒド無添加品をコントロールとして官能評価を行った。その平均的な官能評価結果を表18に示す。
【0155】
【表18】
【0156】
表18に示した通り、カツオ節風味調味料に対し、本発明の不飽和アルデヒドを添加したものは、いずれも不飽和アルデヒド無添加のカツオ節調味料と比べて、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様の風味が強調されているとの評価であった。
【0157】
(実施例24)本発明の不飽和アルデヒドを添加したカツオ節様調合香料の調製
前記比較品1に対し、本発明の不飽和アルデヒドをそれぞれ10ppm添加し、本発明のカツオ節様調合香料とした。
【0158】
本発明品7:比較品1に(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを10ppm添加
本発明品8:比較品1に(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10ppm添加
本発明品9:比較品1に(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10ppm添加
本発明品10:比較品1に(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを10ppm添加
本発明品11:比較品1に(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを10ppm添加
本発明品12:比較品1に(E,E)−4,7−トリデカジエナールを10ppm添加
(実施例25)カツオ節風味蒲鉾へのカツオ節様調合香料の配合
冷凍すけそうすり身100質量部、食塩2.5質量部、L−グルタミン酸ナトリウム1.5質量部、グリシン1質量部、キサンタンガム0.1質量部、参考例4および実施例24で得られたカツオ節様調合香料組成物(それぞれ比較品1または本発明品7〜12のいずれか1品)0.2質量部、馬鈴薯澱粉8質量部、卵白11質量部および氷水50質量部(合計174.3.6質量部)を混練し成形したすり身を95℃、40分間蒸し、カツオ節風味蒲鉾を調製した。
【0159】
これらのカツオ節風味かまぼこを、訓練されたパネラー10人により官能評価を行った。その結果、訓練されたパネラー10人全員が、本発明のカツオ節様調合香料組成物を添加したカツオ節風味かまぼこは比較品1を添加したカツオ節風味かまぼこに比べて、いずれもカツオ節様のウッディー感、節感が強調されていると評価した。
【0160】
(実施例26)粉末香料の調製
水150gにアラビアガム70g及びトレハロース20gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌した。これを40℃に冷却した後、参考例4および実施例24で得られたカツオ節様調合香料組成物(比較品1または本発明品7〜12のいずれか1品)をそれぞれ10gを添加混合し、TK−ホモミキサーで乳化した。この乳化液をニロ社のモービルマイナー型スプレードライヤーを使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、カツオ節粉末香料95g(それぞれ比較品2、本発明品13〜18とする)を得た。
【0161】
(実施例27)カツオ節ふりかけへの配合
市販カツオ節ふりかけ(おかか)100質量部に実施例26で得られたカツオ節粉末香料(比較品2または本発明品13〜18のいずれか1品)0.1gを加えて良く混合した。これらのカツオ節ふりかけを、訓練されたパネラー10人により官能評価を行った。その結果、訓練されたパネラー10人全員が、本発明品13〜18を添加したカツオ節ふりかけは比較品2を添加したカツオ節ふりかけに比べて、いずれもカツオ節様のウッディー感、節感が強調されていると評価した。
【0162】
(実施例28)カツオ節風味ドレッシングへの配合
水46.6質量部と果糖ぶどう糖液糖3質量部を混合し、ここにジェランガム含有製剤0.1質量部とこんにゃく加工品3質量部の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱攪拌溶解した。更に、淡口醤油3質量部、白しょうゆ12質量部、レモン果汁透明濃縮還元4質量部、食塩1質量部、L−グルタミン酸ナトリウム0.3質量部、参考例5で得られたカツオ節エキス(参考品4)1質量部を加え溶解させた後、醸造酢(酸度4.2%)6質量部、リンゴ酢5質量部、を加え攪拌し、水層部を調製した。一方、油層部としてコーンサラダ油14.9質量部、および、参考例4および実施例24で得られたカツオ節様調合香料組成物(比較品1または本発明品7〜12のいずれか1品)0.1質量部を攪拌混合し、合計15質量部の油層部を調製した。そして、水層部と油層部が85:15の割合となるように容器に充填・殺菌し、カツオ節風味のセパレートドレッシング(pH3.8)を調製した。
【0163】
これらのカツオ節風味ドレッシングを、訓練されたパネラー10人により官能評価を行った。その結果、訓練されたパネラー10人全員が、本発明品7〜12を添加したカツオ節風味ドレッシングは比較品1を添加したカツオ節風味ドレッシングに比べて、いずれもカツオ節様のウッディー感、節感が強調されていると評価した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味改善剤に関し、さらに詳しくは、
【0002】
【化1】
【0003】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる香味改善剤に関する。
【背景技術】
【0004】
(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは、調理したチキンのフレーバーから見いだされ(非特許文献1)、また、アラキドン酸の熱分解物(非特許文献2)やリン脂質の熱分解物(非特許文献3)などから見出された、天然にも存在する、香気を有する揮発性化合物である。香料用途としては、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献1)、4−シスデセナールと(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを併用することによる、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献2)などが提案されている。
【0005】
また、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールはリン脂質の熱分解物(非特許文献3)から見出されている。
【0006】
これらの化合物の香気特性は(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールがEgg white−like、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールがAnimal,beefy、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールがAnimal,pigであると記載されている(非特許文献3)。
【0007】
また、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールは天然物からはオリビ(Ourebia ourebi)の目の上の分泌線からの外分泌物の成分としての報告があり(非特許文献4)、香料用途としては、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献1)、香粧品香料としての使用(特許文献3)が提案されている。しかしながら、前記非特許文献1〜4および特許文献1〜3には、2,4,7−トリデカトリエナールまたは、4,7−トリデカジエナールを飲食品に極微量添加することにより、飲食品の呈味そのものを改善できること、すなわち、飲食品の濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどの自然な旨味感を増強できることは記載も示唆もされていない。また、魚節風味を有する飲食品に極微量添加することにより、魚節特有のウッディー感、節感を増強し、魚節の香味を改善することができることについても記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭41−7822号公報
【特許文献2】特公昭54−12550号公報
【特許文献3】特開昭61−65814号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of American Oil Chemists‘ Society. 51(8),356−9(1974)
【非特許文献2】Frontiers of Flavour Science, [Proceedings of the Weurman Flavour Research Symposium], 9th, Freising, Germany, June 22―25,1999(2000)
【非特許文献3】Journal of Agricultural and Food Chemistry(2004),52(3),581―586
【非特許文献4】Journal of Chemical Ecology(1995),21(8),1191−1215
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、飲食品の香味改善剤を提供することである。また、飲食品の旨味感を増強することのできる呈味増強剤を提供することである。また、さらには魚節特有のウッディー感、節感を増強し、魚節の香味を改善することができる魚節香味改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は先に、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを、魚節風味を有する飲食品に極微量添加することにより、魚節特有のウッディー感、節感を増強し、魚節の香味を改善することができることを見いだし、特許出願を行った(特願2010−180193)。また、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを飲食品に極微量添加することにより、飲食品の呈味そのものを改善できること、すなわち、飲食品の濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどの自然な旨味感を増強できることを見いだし、特許出願を行った(特願2010−247611)。
【0012】
本出願人は、その後さらに、これらの化合物の上記2つの化合物に関連する幾何異性体について合成を行い、その香味特性の評価を行った。その結果、上記2つの化合物に関連する幾何異性体についても、飲食品の濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどの自然な旨味感を増強できること、および、魚節風味を有する飲食品に極微量添加することにより、魚節特有のウッディー感、節感を増強し、魚節の香味を改善することができることを確認することができた。
【0013】
かくして、本発明は以下のものを提供する。
(a)下記式(1)
【0014】
【化2】
【0015】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる香味改善剤。
(b)下記式(1)
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる飲食品の呈味増強剤。
(c)飲食品が旨味感を有する飲食品であることを特徴とする(b)2に記載の飲食品の呈味増強剤。
(d)呈味増強が旨味感の増強であることを特徴とする(b)または(c)に記載の飲食品の呈味増強剤。
(e)旨味感を有する飲食品がアミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂および食塩から選ばれる1種または2種以上を含有する飲食品であることを特徴とする(b)〜(d)のいずれかに記載の飲食品の呈味増強剤。
(f)(b)〜(e)のいずれかに記載の飲食品の呈味増強剤を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−2ppm〜104ppm含有することを特徴とする飲食品の呈味増強剤組成物。
(g)(b)〜(e)のいずれかに記載の飲食品の呈味増強剤を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb添加することを特徴とする飲食品の呈味増強方法。
(h)(f)の飲食品の呈味増強剤組成物を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb添加することを特徴とする飲食品の呈味増強方法。
(i)下記式(1)
【0018】
【化4】
【0019】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる魚節香味改善剤。
(j)(i)に記載の魚節香味改善剤を式(1)の不飽和アルデヒド濃度として10−2ppm〜104ppm含有することを特徴とする魚節香料組成物。
(k)(j)に記載の魚節香料組成物を式(1)の不飽和アルデヒド濃度として10−3ppb〜104ppb含有することを特徴とする飲食品。
【0020】
本発明で使用される(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールは天然物から見いだされた報告があり(前記非特許文献3)、また、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールについてはチキン様フレーバーとしての用途が提案されているが(前記特許文献1)、特許文献1には実際に(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを香料として使用している実施例の記載はない。また、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール、(E,Z)−4,7−トリデカジエナール、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールおよび(E,E)−4,7−トリデカジエナールについては、先行文献中全く記載が見あたらない。
【0021】
したがって、これらの化合物が呈味増強剤としては未だ報告されたことはなく、ましてや、飲食品に添加することにより、濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどの旨味感を増強するといった内容は全く記載も示唆もされたことがない。また、これらの化合物が魚節の成分としては未だ報告されたことはなく、魚節フレーバーとして使用されている記載も見あたらない。
【発明の効果】
【0022】
本発明の風味改善剤の有効成分である不飽和アルデヒドは、呈味増強剤として、飲食品、特に旨味感を有する飲食品、さらには、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂、食塩などを含有する飲食品に10−3ppb〜104ppb添加することにより、従来にはない、自然な旨味感を増強することができる。また、呈味増強剤組成物として、組成物中に本発明の呈味増強剤の有効成分である不飽和アルデヒドを10−2ppm〜104ppm含有させ、その呈味増強剤組成物を飲食品に添加することにより、同様の効果を得ることができる。
【0023】
また本発明の風味改善剤の有効成分である不飽和アルデヒドは、魚節香味改善剤として魚節様、特に鰹節様の香気を有する魚節香料組成物中に10−2ppm〜104ppm配合することで、従来にはない、魚節特有のウッディー感、節感を付与することができる。また、その魚節香料組成物を飲食品に不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppbとなるように添加することにより魚節様のウッディー感、節感のある香味を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例1)
【図2】図2は(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例1)
【図3】図2は(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例1)
【図4】図4は(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例2)
【図5】図5は(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例2)
【図6】図6は(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例2)
【図7】図7は(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例3)
【図8】図8は(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例3)
【図9】図9は(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例3)
【図10】図10は(E,Z)−4,7−トリデカジエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例4)
【図11】図11は(E,Z)−4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例4)
【図12】図12は(E,Z)−4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例4)
【図13】図13は(Z,E)−4,7−トリデカジエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例5)
【図14】図14は(Z,E)−4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例5)
【図15】図15は(Z,E)−4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例5)
【図16】図16は(E,E)−4,7−トリデカジエナールのガスクロマトグラフィーチャートである。(実施例6)
【図17】図17は(E,E)−4,7−トリデカトリエナールの1H−NMRのチャートである。(実施例6)
【図18】図18は(E,E)−4,7−トリデカトリエナールの13C−NMRのチャートである。(実施例6)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明で使用される不飽和アルデヒドは、具体的には、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール、(E,Z)−4,7−トリデカジエナール、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールおよび(E,E)−4,7−トリデカジエナールである。
【0026】
本発明で使用されるこれらの化合物は、例えば、以下の方法により合成して得ることができる。
【0027】
(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは、例えば、市販のシス−3−ノネナールを出発原料としてホーナー・ワーズ・エモンズ反応を行い(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノールエステルとし、未精製のまま水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)還元を行い、得られた(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノールを公知の精製方法により精製した後、酸化して得ることができる。
【0028】
また、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールは、例えば、市販の(E)−オクト―2―エン−1−オールをブロム化し、得られたブロマイドと2−プロピン−1−オールを銅試薬存在下でカップリングして(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オールを得、次いで三重結合をリンドラー還元により二重結合とした後に酸化ウィッティヒ反応により(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエンエステルへと導き、還元および酸化を経て得ることができる。
【0029】
また、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールは、例えば、前記と同様の方法により(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オールを得、水素化アルミニウムリチウム(LAH)還元を行い、得られたジエンアルコールを酸化ウィッティヒ反応により(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエンエステルへと導き、還元および酸化を経て得ることができる。
【0030】
また、(E,Z)−4,7−トリデカジエナールは、例えば、ペンチルブロマイドに2−プロピン−1−オールをカップリングさせ、2−オクチン−1−オールとした後、ブロム化し、さらに2−プロピン−1−オールをカップリングさせ、2,5−ウンデカジイン−1−オールとした後、水素化アルミニウムリチウム(LAH)還元を行い(E)−2のアルコールを得た後に、残された三重結合をリンドラー還元にて二重結合とすることで(E,Z)−2,5−ジエンアルコールを得、引き続きマロン酸エステル縮合、脱カルボニル化を経て炭素鎖を延ばし、得られたジエンアルコールを酸化することで得ることができる。
【0031】
また、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールは、例えば、市販の(E)−2−オクチン−1−オールをブロム化した後、銅試薬存在下で4−ペンチン−1−オ−ルをカップリングして(E)−トリデカ−7−エン―4−イン−1−オールを得、次いで三重結合をリンドラー還元により二重結合とした後に酸化することで得ることができる。
【0032】
また、(E,E)−4,7−トリデカジエナールは、例えば、前記と同様の方法により(E)−トリデカ−7−エン―4−イン−1−オールを得、これをバーチ還元してジエンアルコールを得た後に、水酸基を酸化して得ることができる。
【0033】
本発明の不飽和アルデヒドはそれぞれ単独で使用しても良いが、それぞれ単独よりも、複数を組み合わせて併用して使用した方が、香味改善剤としての効果をより高く得ることができる。また、この際、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールや(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを併用してもよい。併用の際の配合比率は、任意の比率を挙げることができる。
【0034】
本発明ではこれらの不飽和アルデヒドを、微量、飲食品に添加することにより、飲食品の香味の改善を行うことができ、香味改善剤として使用することができる。
【0035】
本発明における香味改善の1つの態様としては、飲食品の呈味増強を例示できる。したがって、本発明の不飽和アルデヒドは飲食品の呈味増強剤として使用することができる。本発明の呈味増強剤が添加されることにより呈味が増強される飲食品は旨味感を有する飲食品であり、また、増強される呈味は主に飲食品の旨味感である。
【0036】
本発明でいう旨味感とは、濃厚感、コク味、塩味、複雑さなどを想起させる呈味で、主に香気として感じるよりも舌に感じる呈味感であり、かつまた、天然素材の持つ自然な雰囲気を想起させる呈味感を意味する。
【0037】
旨味感を有する飲食品としては、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂、食塩などを比較的豊富に含む飲食品であり、これらの、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂、食塩などは天然物由来であっても合成品由来のいずれであってもよい。
【0038】
このような飲食品としては、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、及び、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、など;その他、チーズ、バターなどの乳製品、野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類、持ち帰り弁当の具や惣菜類、トマトジュース、スポーツ飲料などが例示できる。
【0039】
本発明の呈味増強剤は、これらの飲食品の中でも、特に、カロリーを減らすため、油脂含量を減らした食品;ナトリウム摂取量を減らすために食塩を減らした減塩食品;価格の高い天然素材を多く使用することができないため、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸、アルギニン、セリンなどのアミノ酸系調味料、グアニル酸、アデニル酸、イノシン酸などの核酸系調味料、コハク酸などの有機酸系調味料、などの調味料類を多く配合した飲食品、などに特に効果を発揮する。
【0040】
本発明の不飽和アルデヒドは呈味増強剤としてそのまま飲食品に添加して使用することができるが、本発明の不飽和アルデヒドは油溶性であり、そのままでは水への分散性が悪く、また、飲食品に微量添加することは計量、希釈の観点から困難であるため、本発明の不飽和アルデヒドを極微量配合して呈味増強剤組成物を得て、それを飲食品に配合する方法を採用することができる。このような組成物としては、本発明の不飽和アルデヒドを水混和性有機溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤などを例示することができる。
【0041】
本発明の不飽和アルデヒドを溶解するための水混和性有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2−プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。
【0042】
また、乳化製剤とするためには、本発明の不飽和アルデヒドを乳化剤と共に乳化して得ることができる。本発明の不飽和アルデヒドの乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインなどを使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、本発明の不飽和アルデヒド1質量部に対し、約0.01〜約100重量部、好ましくは約0.1〜約50重量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水あめなどの多価アルコール類の1種または2種以上の混合物を配合することができる。
【0043】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜配合することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0044】
また、本発明の呈味増強剤の有効成分である不飽和アルデヒドを配合した組成物中には、任意の成分を組み合わせることができ、各種の香料成分、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、野菜エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。
【0045】
本発明の呈味増強剤組成物への本発明の不飽和アルデヒドの添加量は、特に制限はないが、呈味増強剤組成物の飲食品への添加量は、通常おおよそ0.01%〜1%程度であるため、呈味増強剤組成物への本発明の不飽和アルデヒドの配合量としては10−2ppm〜104ppm、好ましくは0.1ppm〜103ppm、より好ましくは、1ppm〜100ppmである。
【0046】
本発明では、飲食品への本発明の不飽和アルデヒドの添加量は重要であり、特定の濃度範囲において飲食品に添加することにより、前記の通り、飲食品の呈味が増強される。この際の、飲食品への本発明の不飽和アルデヒドの添加量は本発明の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb、好ましくは、10−2ppb〜103ppb、より好ましくは0.1ppb〜100ppbである。飲食品への添加量が10−3ppb未満の場合、本発明の効果である呈味増強効果が得られず、また、飲食品への添加量が104ppbを超えた場合、本発明の不飽和アルデヒド特有のアルデヒド様の香気が感じられるようになってしまう。したがって、一般的には104ppb未満の添加量で使用するが、本発明の不飽和アルデヒド自体の香気が問題にならないような場合は、104ppbを超えて使用しても差し支えない。
【0047】
また、本発明における香味改善の別の態様として、特に、魚節の香味改善を例示できる。本発明の不飽和アルデヒドはカツオ節、宗田節、サバ節、イワシ節、ムロ節、サンマ節、ナマリ節、マグロ節、煮干しなどの魚節香味を有する飲食品に通常、香料として使用するよりも少ない量で飲食品に添加することにより、魚節香味を改善することができる。したがって、本発明の不飽和アルデヒドは魚節の香味改善剤として使用することができる。また、本発明の不飽和アルデヒドを、カツオ節、宗田節、サバ節、イワシ節、ムロ節、サンマ節、ナマリ節、マグロ節、煮干しなどの魚節風味を有する香料組成物に極微量配合して香料組成物を得、それを飲食品や調味料に配合することで、従来にはない魚節特有のウッディー感、節感のある香味を付与することができる。
【0048】
かかる魚節香料組成物の素材としては、例えば、カツオ節エキス、宗田節エキス、サバ節エキス、イワシ節エキス、ムロ節エキス、サンマ節エキス、ナマリ節エキス、マグロ節エキス、煮干しエキスなどの魚肉エキス類;ビール酵母、パン酵母、トルラ酵母などの酵母を自己消化法、酵素分解法、酸分解法などの方法により得られる酵母エキス類;大豆、小麦、コーン、ゼラチン、ホエー蛋白質、魚粉、カゼイン、卵白、ボーンエキスなどのタンパク質を、化学的分解または酵素分解して得られる動植物蛋白分解物類;魚節あるいは魚節エキスから、抽出および/または蒸留および/または吸着処理から選ばれる分画手段により得られる香気成分である魚節分画香気成分;および香料類を例示することができる。また、香料類としては、例えば、リモネン、シクロペンテン、メチルベンゼン、δ−カジネンなどの炭化水素類;イソアミルアルコール、1−ペンテン−3−オール、1−オクテン−3−オール、(Z、Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、2−フェニルエタノール、2,5−オクタジエン−3−オール、(Z)−または(E)−2−ペンテン−1−オール、(Z)−2−ペンテン−3−オール、(E)−2−ヘキセン−1−オール、(E)−2−オクテン−1−オール、(Z)−または(E)−1,5−オクタジエン−3−オール、(Z)−1,5−ウンデカジエン−3−オールなどのアルコール類;プロパナール、ブタナール、ペンタナール、(E)−2−ペンテナール、ヘキサナール、(Z)−3−ヘキセナール、(E)−2−ヘキセナール、ヘプタナール、(E)−2−ヘプテナール、(Z)−4−ヘプテナール、2,4−ヘプタジエナール、(E、Z)または(E、E)−2,4−ヘプタジエナール、オクタナール、(Z)または(E)−2−オクテナール、(E、E)−2,4−オクタジエナール、(E、Z)−2,5−オクタジエナール、ノナナール、(E)−2−ノネナール、(E、Z)−2,6−ノナジエナール、デカナール、2,4−デカジエナール、(E、Z)または(E、E)−2,4−デカジエナール、(E)−2−ウンデセナール、ベンズアルデヒド、クミンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナムアルデヒド、2−フェニル−2−ブテナールなどのアルデヒド類;2−ブタノン、アセトイン、ジアセチル、3−ペンテン−2−オン、3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、2,3−ペンタンジオン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン、2−オクタノン、3−オクタノン、(E、Z)または(E、E)−3,5−オクタジエン−2−オン、2−ノナノン、2−デカノン、2−ウンデカノン、(E)−6,10−ジメチル−5,9−ウンデカジエン−2−オン、シクロペンタノン、2−シクロペンテン−1−オン、2−または3−メチルシクロペンタノン、2,3,4あるいは5−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、2,3−ジメチル−2−シクロペンテン−1−オン、2,4−、2,5−、3,4−あるいは3,5−ジメチル−2−シクロペンテン−1−オン、2,3,4−トリメチル−2−シクロペンテン−1−オン、インダノン、シクロテン、シクロヘキサノン、2−シクロヘキセン−1−オン、2−あるいは3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、アセトフェノン、プロピオフェノン、カンファーなどのケトン類;酢酸、プロピオン酸、2−メチルプロピオン酸、乳酸、酪酸、2−メチル酪酸、イソ吉草酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、安息香酸、フェニル酢酸などの酸類;ギ酸エチル、酢酸エチル、安息香酸メチル、2−メチル安息香酸メチル、4−メチル安息香酸メチルなどのエステル類;ブチロラクトン、4−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸ラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類;トリメチルアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ブタンジアミン、フェニルエチルアミン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ブタンジアミン、ピロール、2−アセチルピロール、インドール、2−メチルインドール、3−メチルインドール、ピリジン、2,3あるいは4−メチルピリジン、2あるいは3−エチルピリジン、3−ビニルピリジン、3−メトキシピリジン、キノリン、ピラジン、メチルピラジン、エチルピラジン、2,3−、2,5−あるいは2,6−ジメチルピラジン、2−エチル−5−あるいは6−メチルピラジン、トリメチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメトキシピラジンなどの含窒素塩基類;メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、カーボンジスルフィド、メチオナール、チアゾール、2,4−ジメチルチアゾール、2,4,5−トリメチルチアゾールなどの含硫化合物類;1,8−シネオール、1,4−シネオールなどのエーテル類;アセトニトリル、3−メチルブタンニトリル、4−メチルペンタンニトリル、ベンゾニトリル、フェニルアセトニトリルなどのニトリル類;o−,m−あるいはp−クレゾール、2−エチルフェノール、4−ビニルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−あるいは3,5−ジメチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、5−エチルー3−メチルフェノール、2,3,5−あるいは2,4,6−トリメチルフェノール、1−メトキシ−3−メチルベンゼン、1−メトキシ−4−プロピルベンゼン、2−メトキシ−4−メチルフェノール、4−エチル−2−メトキシフェノール、2−メトキシ−4−プロピルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシ−4−メチルベンゼン、1,3−ジメトキシ−5−メチルベンゼン、4−エチル−1,2−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシ−4−プロピルベンゼン、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール、(Z)または(E)1,2−ジメトキシ−4−(1−プロペニル)ベンゼン、サフロール、イソサフロール、1,2,3−あるいは1,3,5−トリメトキシベンゼン、2,6−ジメトキシフェノール、2,6−ジメトキシ−4−メチルフェノール、4−エチル−2,6−ジメトキシフェノール、2,6−ジメトキシ−4−プロピルフェノール、1,2,3−トリメトキシ−5−メチルベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリメトキシベンゼン、1,2,3−トリメトキシ−5−ビニルベンゼン、1,2,3−トリメトキシ−5−プロピルベンゼン、1,2,3−トリメトキシ−5−(1−プロペニル)−ベンゼン、グアヤコール、4−メチルグアヤコール、4−エチルグアヤコールなどの芳香族化合物類;2−メチルフラン、2−エチルフラン、2−ペンチルフラン、(Z)−2−(2−ペンテニル)フラン、2−ヘキシル−5−メチルフラン、2−エチル−5−ビニルフラン、ベンゾフラン、2−メチルベンゾフラン、2−エチルベンゾフラン、フルフラール、2−メチル−ジヒドロ−3(2H)−フラノン、3−メチル−2(5H)−フラノン、3,4−ジメチル−2(5H)−フラノン、3,4,5−トリメチル−2(3H)−フラノン、3,4,5−トリメチル−2(5H)−フラノン、5−エチル−3,4−ジメチル−2(5H)−フラノン、3,4−ジメチル−5−プロピル−2(5H)−フラノン、3,4−ジメチル−5−ペンチル−2(5H)−フラノン、2−アセチルフラン、2−アセチル−5−メチルフラン、フルフリルアルコール、2−フランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2−フランカルボン酸メチル、酢酸フルフリル、マルトール、2,3−ジメチルベンゾピランなどのフラン類およびピラン類などを挙げることができ、これらを任意に組み合わせて混合した魚節香料組成物をあげることができる。
【0049】
魚節香味改善剤としての本発明の不飽和アルデヒドの配合量もまた重要であり、その目的、あるいは魚節香料組成物の種類によっても異なるが、例えば、魚節香料組成物の全体質量に対して、10−2ppm〜104ppm、好ましくは0.1ppm〜1000ppm、より好ましくは1ppm〜100ppmの範囲内を例示することができる。これらの範囲内では、魚節香料組成物に対し魚節に特有の、ウッディー感、節感などを付与する優れた効果を有する。
【0050】
ここで、ウッディー感、節感とは、カツオ節などの魚節類に特有の好ましい香気で、カツオ節などを削るときに発生する削りたてをイメージさせるようなフレッシュな香気で、木材を削るときの香気をやや想起させるようなさわやかな香気を意味する。
【0051】
一方、魚節香料組成物に対する本発明の不飽和アルデヒドの配合量が104ppmを超えた場合には、シトラス様、石鹸様、劣化した油様の異臭としての香気・香味特性が出てしまい好ましくない。また、魚節香料組成物に対する本発明の不飽和アルデヒドの配合量が10−3ppmを下回る場合は、本発明特有の香気・香味付与効果が得られない。
【0052】
さらに、本発明は、本発明の不飽和アルデヒドを有効成分とする魚節香味改善剤を含有させた魚節香料組成物を有効量添加したことを特徴とする飲食品に関し、該製品に魚節様のウッディー感、節感のある香気・香味を付与することができる。かかる飲食品としては、魚節香味を少なくとも一部に含有するものであればよく、広い分野の各種飲食品に配合利用することができる。
【0053】
これらの飲食品としては、例えば、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、酸味調味料、発酵調味料、ポークエキス、チキンエキス、魚介エキス、酵母エキス、蛋白加水分解物、醤油、味噌、食酢、三杯酢、粉末すし酢、ドレッシング、マヨネーズ、ソース、ケチャップ、魚醤、豆板醤、魚節類、昆布だし、スープストック、中華の素、天つゆ、麺つゆ、焼き肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、本みりん、新みりんなどの調味料類、コンソメスープ、ポタージュスープ、ラーメンスープ等のスープ類、みそ汁、吸い物、豚汁等の汁物、レトルト食品用のデミグラスソース、ホワイトソース、トマトソース、ミートソース等のソース類、カレー類、シチュー類、ハヤシ類、おでんなどを例示することができる。
【0054】
また、本発明の不飽和アルデヒドの飲食品への配合量は、その目的あるいは飲食品の種類によっても異なるが、前記魚節香味改善剤または前記魚節香味改善剤を配合した魚節香料組成物を不飽和アルデヒドとして有効量添加することにより魚節様のウッディー感、節感のある香味を付与することができる。その際の調味料または飲食品への配合量は、本発明の不飽和アルデヒドとして、例えば、飲食品の全体質量に対して10−3ppb〜104ppb好ましくは、10−2ppb〜103ppb、より好ましくは0.1ppb〜100ppbの範囲を例示することができる。一方、飲食品の全体質量に対する本発明の不飽和アルデヒドの配合量が104ppbを超えた場合には、シトラス様、石鹸様、劣化した油様の異臭としての香気・香味特性が出てしまい好ましくない。また、飲食品に対する本発明の不飽和アルデヒドの配合量が10−3ppbを下回る場合は本発明特有の香気・香味付与効果が得られない。
【0055】
以下、実施例、比較例および参考例をあげて本発明の好ましい態様をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
(実施例1)(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(2)の(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0057】
【化5】
【0058】
エチル(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノエート(8)
200mlフラスコに別途調製したウィッティヒ試薬(7.5g,30mmol)およびテトラヒドロフラン(THF)(75ml)を仕込み−78℃に冷却して撹拌した。系内にナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)/テトラヒドロフラン(1.0M,22ml,22mmol)を滴下し22℃まで昇温して30分間撹拌した。再度−78℃まで冷却し、系内に(Z)−3−ノネナール(7)(2.8g,20mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20ml)溶液を滴下して6時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにて反応を追跡したところ、原料が残存していたために1時間かけて15℃まで昇温した。薄層クロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。分液操作後に水層をジエチルエーテルにて抽出し、先の有機層と併せて飽和食塩水にて洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(100g,ヘキサン:酢酸エチル=50:1)により精製し、エチル(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノエート(8)(1.84g,39%,純度50%)を得た。
【0059】
(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(9)
100ml2口フラスコにエチル(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエノエート(8)(純度50%,500mg,2.12mmolと仮定),ジエチルエーテル(30ml)を仕込みドライアイスバスを用いて冷却撹拌した。系内に水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)(溶媒:トルエン、0.99M,4.28ml,4.24mmol)を滴下し、緩やかに昇温しながら終夜撹拌した。次いで、系内に10%ロッシェル塩水溶液を加えて3.0時間室温撹拌した。水層をジエチルエーテルにて抽出して、得られた有機層を水および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(100g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜3:1)にて精製し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(9)(287mg,収率82%)を得た。
【0060】
(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール(2)
50mlナスフラスコに(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(9)(50mg,0.26mmol)および塩化メチレン(5ml)を仕込み、室温撹拌しながら二酸化マンガン(226mg,2.6mmol)を加えて2日間撹拌した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(10g,ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール(2)(36mg,収率72%)を得た。
【0061】
(実施例2)(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(3)の(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0062】
【化6】
【0063】
(E)−1−ブロモオクト−2−エン(11)
1Lナスフラスコに(E)−オクト−2−エン−1−オール(10)(50g,390mmol),ジエチルエーテル(480ml)およびピリジン(1.4g)を仕込み、室温撹拌した。系内に三臭化リン(39.2g,145mmol)を1.0時間かけて滴下し、室温で終夜撹拌した。ガスクロマトグラフィーにより原料の消失を確認後、系内に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて30分間撹拌した。水層をジエチルエーテルで抽出して、得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた(E)−1−ブロモオクト−2−エン(11)粗製物(58g)をこれ以上の精製をすることなく次反応に使用した。
【0064】
(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オール(12)
1L4口フラスコに臭化エチルマグネシウム/テトラヒドロフラン(0.9M,400ml,360mmol)を仕込み窒素雰囲気下、氷浴で冷却しながら撹拌した。2−プロピン−1−オール(9.59g,171mmol)のテトラヒドロフラン(130ml)溶液を滴下し、室温で1.5時間撹拌した後に、再度氷浴を用いて冷却した。系内にシアン化銅(4.52g)を加え15分間撹拌後に(E)−1−ブロモオクト−2−エン(11)(32.7g,粗製物)テトラヒドロフラン(65ml)溶液を滴下した。氷浴を除去し、2.0時間還流撹拌後、系内に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。分液操作後、水層を酢酸エチルで抽出して先の有機層とあわせて水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(28.6g)のうち(14g)を、これ以上精製することなく実施例3における水素化アルミニウムリチウム(LAH)還元の原料として使用した。残りの残渣(14g)はシリカゲルクロマトグラフィー(750g,ヘキサン:酢酸エチル=30:1)にて精製し、純粋な(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オール(12)(9.99g,70%,2steps)を得た。
【0065】
(Z,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(13)
500ml3口フラスコに(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オール(12)(4.0g,24.1mmol),キノリン(400mg)およびリンドラー触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製)(400mg)を仕込み、室温、水素雰囲気下で5.0時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、減圧濾過し、濾液を2Nの塩酸水溶液、飽和炭酸水素水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣(4.0g)をシリカゲルクロマトグラフィー(400g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(Z,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(13)(3.6g,89%)を得た。
【0066】
エチル(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエノエ−ト(14)
500mlナスフラスコに(Z,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(13)(2.11g,12.5mmol)および塩化メチレン(150ml)を加えて撹拌した。系内にエチル(トリフェニルホスフォラニリデン)アセテート(28.4g,81.5mmol)を加えて溶解を確認後、二酸化マンガン(21.7g,250mmol)を加えた。室温にて120時間撹拌後、原料の消失を確認して減圧濾過を行うことで得られた濾液にシリカゲル(100g)を加えて減圧濃縮した。残渣として得られた粗精製物を吸着させたシリカゲルを用いてシリカゲルクロマトグラフィー精製(200g,ヘキサン:酢酸エチル=20:1)し、エチル(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエノエ−ト(14)粗精製物(2.4g)を得た。この粗精製物はこれ以上精製することなく次反応に用いた。
【0067】
(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(15)
200ml3口フラスコにエチル(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエノエ−ト(14)(粗精製物1.0g,4.23mmol)およびジエチルエーテル(50ml)を仕込み−78℃に冷却しながら窒素雰囲気下撹拌した。系内に水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)(トルエン溶液)(0.99M,9.4ml,9.3mmol)を滴下し、ドライアイスバスを外して室温まで昇温させながら1.0時間撹拌した。原料の消失を確認し、系内に10%ロッシェル塩水溶液(100ml)を加えて終夜撹拌した。分液操作後、水層をジエチルエーテルにて抽出して先の有機層とあわせて水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(0.95g)をシリカゲルクロマトグラフィー(100g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(15)(600mg,収率59%(2steps)を得た。
【0068】
(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール(3)
50mlナスフラスコに(E,Z,E)−トリデカトリエン−1−オール(15)(300mg,1.54mmol),二酸化マンガン(4.03g,46.3mmol)および塩化メチレン(25ml)を加えて室温にて終夜撹拌した。原料の消失を確認し、減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(280mg)をシリカゲルクロマトグラフィー(30g,ヘキサン:酢酸エチル=100:1)にて精製し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール(3)(248mg,85%)を得た(純度94.1%)。
【0069】
(実施例3)(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(4)の(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0070】
【化7】
【0071】
(E,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(16)
1Lナスフラスコに水素化リチウムアルミニウム(3.20g,84.2mmol)およびジエチルエーテル(300ml)を仕込み、氷浴で冷却しながら撹拌した。系内に、前記実施例2で得られた(E)−ウンデカ−5−エン−2−イン−1−オール(12)(14g,粗精製品)のジエチルエーテル(60ml)溶液を慎重に滴下し、滴下終了後氷浴を除去して6.5時間還流撹拌した。原料の残存が確認されたためにさらに水素化リチウムアルミニウム(1.0g,26.3mmol)を加えた後に、さらに8.0時間還流撹拌した。原料の消失を確認後に氷浴で冷却しながら水(22g)を慎重に加えた。室温で30分間撹拌後、系内に2Nの塩酸水溶液を懸濁液が清澄な二層系になるまで加えた。分液操作の後に水層を酢酸エチルで抽出して、先の有機層とあわせて水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(12.5g)のうち6.0gを次反応のワンポット酸化ウィッティヒ反応に使用した。
【0072】
残りの6.0gをシリカゲルクロマトグラフィー(1200g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(E,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(16)(3.04g,収率70%)を得た。
【0073】
エチル(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエノエート(17)
500mlナスフラスコに(E,E)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(16)(6.0g,粗精製品)および塩化メチレン(300ml)を加えて撹拌した。系内にエチル(トリフェニルホスフォラニリデン)アセテート(62.2g,178.5mmol)を加えて溶解を確認後、二酸化マンガン(31g,357mmol)を加えた。室温にて95時間撹拌後、原料の消失を確認して、減圧濾過を行うことで得られた濾液にシリカゲル(300g)を加えて減圧濃縮した。残渣として得られた粗精製物を吸着させたシリカゲルを用いてシリカゲルクロマトグラフィー(200g,ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、粗精製物(5.2g)を得た。この粗精製物はこれ以上精製することなく次反応に用いた。
【0074】
(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(18)
200ml3口フラスコにエチル(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエノエート(17)(2.0g,粗精製物)およびジエチルエーテル(100ml)を仕込み、−78℃に冷却しながら窒素雰囲気下撹拌した。系内に水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)(トルエン溶液)(0.99M,19ml,18.7mmol)を滴下し、ドライアイスバスを外して室温まで昇温させながら1.0時間撹拌した。原料の消失を確認し、系内に10%ロッシェル塩水溶液(100ml)を加えて終夜撹拌した。分液操作後、水層をジエチルエーテルにて抽出して先の有機層とあわせて水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(2.3g)をシリカゲルクロマトグラフィー(400g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(18)(1.34g,収率50%,2steps)を得た。
【0075】
(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール(4)
50mlナスフラスコに(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエン−1−オール(18)(347mg,1.79mmol),二酸化マンガン(4.67g,53.7mmol)および塩化メチレン(25ml)を加えて室温にて終夜撹拌した。原料の消失を確認し、減圧濾過後、濾液を減圧濃縮することで得られる残渣(314mg)をシリカゲルクロマトグラフィー(40g,ヘキサン:酢酸エチル=100:1)にて精製し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール(4)(289mg,84%)を得た(純度96.3%)。
【0076】
(実施例4)(E,Z)−4,7−トリデカジエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(5)の(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0077】
【化8】
【0078】
2−オクチン−1−オール(20)
500mL4口フラスコに2−プロピン−1−オール(4.68g、83.5mmol)およびテトラヒドロフラン(80mL)を仕込み、窒素雰囲気下で−40℃にて冷却攪拌した。次いで、系中にブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.67M、100mL、167mmol)を30分で滴下し、−20℃まで昇温させながら1時間攪拌した。再度−40℃まで冷却した後に1−ブロモペンタン(19)(11.98g、79.3mmol)の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)溶液(80mL)を30分滴下した。滴下終了後終夜攪拌させ、攪拌終了後に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてさらに15分攪拌し、反応を終了させた。反応液を分液ロートに移し有機層を取り除いた後に、水層を酢酸エチルで抽出して先の有機層とあわせ、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(200g、ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜3:1)にて精製し、2−オクチン−1−オール(20)(7.1g、収率71%)を得た。
【0079】
1−ブロモ−2−オクチン(21)
200mLナスフラスコに2−オクチン−1−オール(20)(7.1g、56.3mmol)、エーテル(70mL)およびピリジン(210mg)を仕込み、室温にて攪拌した。系内に三臭化リン(5.75g、21.3mmol)を30分で滴下し、室温で3時間攪拌した。反応液のサンプリングによりガスクロマトグラフィーにより原料の消失を確認後、系内に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて30分攪拌し、反応を終了させた。反応液を分液ロートに移し有機層を取り除いた後に、水層をジエチルエーテルで抽出して先の有機層とあわせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣を減圧蒸留にて精製し、1−ブロモ−2−オクチン(21)(6.75g、収率63%、沸点66〜67℃/10mmHg)を得た。
【0080】
2,5−ウンデカジイン−1−オール(22)
500mL4口フラスコに臭化エチルマグネシウム/テトラヒドロフラン溶液(1.0M、106mL、106mmol)を仕込み、窒素雰囲気下にて氷浴で冷却しながら攪拌した。2−プロピン−1−オール(2.96g、52.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)を滴下した。室温で1.5時間攪拌した後に、再度氷浴を用いて冷却した。系内にシアン化銅(I)(1.33g)を加え、15分攪拌後に1−ブロモ−2−オクチン(21)(5.0g、26.4mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)を滴下した。水浴を除去し、2時間還流攪拌後、系内に2Nの塩酸水溶液を加え、反応を終了させた。反応液を分液ロートに移し、有機層を取り除いた後に水層をエーテルで抽出し、先の有機層とあわせて、水、2Nの塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(250g、ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、2,5−ウンデカジイン−1−オール(22)(3.37g、収率76%)を得た。
【0081】
(E)−ウンデカ−2−エン−5−イン−1−オール(23)
水素化リチウムアルミニウム1.89g(50mmol)のジエチルエーテル200mL懸濁液に2,5−ウンデカジイン−1−オール(22)(GC純度86.4%)8.21g(50mmol)のジエチルエーテル20mLの溶液を加えた。水素ガスが発生し、空冷下に25〜30℃まで発熱した。次いで加熱を行い還流下(35℃付近)2時間攪拌した。氷水で冷却後、注意深く水10gを滴下した。1時間攪拌後、沈殿物を減圧濾過した。濾液を濃縮して残渣7.4gをシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル200mL、ヘキサン:エーテル=3:1〜1:1)にて精製し、(E)−ウンデカ−2−エン−5−イン−1−オール(23)を得た(5.1g、収率61.4%、GC純度94.2%)。1H−NMRにより、オレフィン水素間のビシナルカップリング定数が15.2Hzであり、E−オレフィンであることを確認した。
【0082】
(E,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(24)
(E)−ウンデカ−2−エン−5−イン−1−オール(23)1.00gの酢酸エチル溶液にリンドラー触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製)100mgを加え、水素下にて5時間攪拌した。反応液を経時的にガスクロマトグラフィー追跡すると、徐々に反応が進行して化合物(24)へと変化する様子が見られた。反応後、セライト濾過し、濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル30g、ヘキサン:ジエチルエーテル=3:1〜1:1)にて精製し、(E,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(24)を得た(0.89g、収率87.9%)。TC−1 GC(FID)、DB−1701 GC−MS(TCI)、NMRからは過還元物らしきシグナルは観測されなかった。
【0083】
メチル 2−メトキシカルボニル−(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(25)
(E,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(24)90mg(0.535mmol)、塩化メチレン5mL、トリエチルアミン224μL(1.607mmol)の溶液に、氷水冷却下にメタンスルホン酸クロリド62μL(0.801mmol)を加えた。1.5時間後、ジエチルエーテルで希釈し水、塩化アンモニウム水溶液、食塩水で2回、順次洗浄した。濃縮後、200mgの粗メシラートを得た。
【0084】
これとは別に、マロン酸ジメチル100mg(0.757mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド5mL溶液にカリウムt−ブトキシド85mg(0.757mmol)を加えた。この溶液を氷水冷却し、先に調製した200mgの粗メシラートのN,N−ジメチルホルムアミド5mL溶液を5分間で加えた。室温に昇温しつつ終夜攪拌した。水を加えて(pH=8)ジエチルエーテルで2回抽出した。食塩水で2回洗浄し、濃縮後130mgの粗製物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル30g、ヘキサン:ジエチルエーテル=4:1)にて精製し、メチル 2−メトキシカルボニル−(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(25)を得た(82mg、収率54.4%)。
【0085】
メチル(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(26)
50mlナスフラスコにメチル 2−メトキシカルボニル−(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(25)(1.53g,5.43mmol),塩化ナトリウム(0.63g,10.77mmol),水(0.63g)およびジメチルスルホキシド(DMSO)(10ml)を仕込み、180℃まで加熱しながら2.5時間撹拌した。系内に水を加えた後にジエチルエーテル抽出して得られた有機層を飽和食塩水にて洗浄した。無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濾過、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー精製(50g,ヘキサン:酢酸エチル=20:1〜10:1)し、メチル(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(26)(0.85g,収率70%)を得た。
【0086】
(E,Z)−4,7−トリデカジエン−1−オール(27)
100mlナスフラスコに水素化リチウムアルミニウム(135mg,3.57mmol)およびジエチルエーテル(15ml)を仕込み氷冷しながら撹拌した。系内にメチル(E,Z)−4,7−トリデカジエノエート(26)(800mg,3.57mmol)のジエチルエーテル(15ml)溶液を慎重に滴下し、徐々に昇温させながら撹拌した。原料の消失をTLCにて確認後に改めて氷冷し、系内に慎重に水(0.71g)を加えて激しく撹拌した。反応混合物が白色スラリーになるまで撹拌した後に減圧濾過にて得られる濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50g,ヘキサン:酢酸エチル=2:1〜1:1)により精製し(E,Z)−4,7−トリデカジエン−1−オール(27)(620mg,収率89%)を得た。
【0087】
(E,Z)−4,7−トリデカジエナール(5)
100mlナスフラスコに(E,Z)−4,7−トリデカジエン−1−オール(27)(590mg,3.01mmol)および塩化メチレン(30ml)を仕込み、氷冷撹拌しながらジメチルホスフェート(1.53g,3.61mmol)を加えた。2.0時間撹拌後、薄層クロマトグラフィーにて原料の残存が確認されたため、さらにジメチルホスフェート(500mg)を追加した。改めて薄層クロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、系内に10%硫酸ナトリウム水溶液を加えて30分間撹拌した。分液操作後に水層をジエチルエーテルで抽出して、得られた有機層と先の有機層をあわせて飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50g,ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により精製し、(E,Z)−4,7−トリデカジエナール(5)(475mg,収率81%)を得た。
【0088】
(実施例5)(Z,E)−4,7−トリデカジエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(6)の(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0089】
【化9】
【0090】
(E)−トリデカ−7−エン−4−イン−1−オール(28)
300mLフラスコに臭化エチルマグネシウム/テトラヒドロフラン(0.9M,100ml,90mmol)を仕込み窒素雰囲気下、室温で撹拌した。ここに4−ペンチン−1−オール(3.8g,45mmol)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液を滴下し、60℃で0.5時間撹拌した後に、室温に戻した。系内にシアン化銅(1.0g)を加え、5〜10℃、15分間撹拌後に実施例2で調製した(E)−1−ブロモオクト−2−エン(11)(9.2g,45mmol,粗精製物)テトラヒドロフラン(10ml)溶液を滴下した。滴下後、室温下、一晩攪拌を行った。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、分液操作後、水層をジエチルエーテルで抽出して先の有機層とあわせて希塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(10g)を減圧蒸留およびシリカゲルクロマトグラフィー(300g,ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜3:2)にて精製し、(E)−トリデカ−7−エン−4−イン−1−オール(28)(1.0g,11%)を得た。
【0091】
(Z,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(29)
50mlフラスコに(E)−トリデカ−7−エン−4−イン−1−オール(28)(1.0g,5.1mmol),キノリン(1滴)、1−ヘキセン(30mL)およびリンドラー触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製)(20mg)を仕込み、氷冷下、水素雰囲気下で3.0時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、反応液をヘキサンにて希釈後、濾過し、粗精製物1.0gを得た。得られた粗精製物をシリカゲルクロマトグラフィー(200g,ヘキサン:酢酸エチル=30:1)にて精製し、(Z,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(29)(604mg,60%)を得た。
【0092】
(Z,E)−4,7−トリデカジエナール(6)
30mLフラスコに2−ヨードキシ安息香酸(IBX)(1.3g,5.4mmol)およびジメチルスルホキシド(DMSO)(15mL)を仕込み、室温下、40分撹拌を行った。IBXの溶解を確認し、(Z,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(29)(600mg,3.1mmol)を加え、室温下4時間撹拌を行った。反応液に水を加え、30分撹拌した後、濾過、ヘキサン洗浄を行い、濾液をエーテル抽出し、先の有機層と合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣(600mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(200g,ヘキサン:酢酸エチル=30:1)により精製し、(Z,E)−4,7−トリデカジエナール(6)(10mg,収率17%)を得た。
【0093】
(実施例6)(E,E)−4,7−トリデカジエナールの調製
下記一連の反応式にしたがって式(7)の(E,E)−4,7−トリデカジエナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0094】
【化10】
【0095】
(E,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(30)
ドライアイス−アセトンバスにて冷却したコールドフィンガー付き200ml3口フラスコに液体アンモニア(60ml)を溜め、金属リチウム(458mg,66mmol)を加えて1.0時間撹拌してリチウムの溶解を確認した。系内に実施例5で得られた(E)−トリデカ−7−エン−4−イン−1−オール(28)(850mg,4.4mmol)のジエチルエーテル(8ml)とt−ブチルアルコール(8ml)の混合溶液を加えて緩やかに昇温させながら終夜撹拌した。翌朝、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて30分間撹拌後に減圧濃縮して残存アンモニアを除去した。残渣の水層をジエチルエーテルにて抽出して得られた有機層を水、飽和食塩水溶液で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(85g,ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、(E,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(30)(630mg,収率73%)を得た。
【0096】
(E,E)−4,7−トリデカジエナール(7)
100mlナスフラスコに(E,E)−4,7−トリデカジエン−1−オール(30)(300mg,1.53mmol),炭酸水素ナトリウム(1.3g)および塩化メチレン(30ml)を仕込み、氷冷撹拌した。系内にデス・マーチン・ペルヨージナン(DMP)(1.3g,3.06mmol)を加えて2.0時間撹拌した。原料の消失を確認後に系内に10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて1.0時間撹拌した。分液操作後に水層をジエチルエーテルで抽出して先の有機層とあわせて、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(30g,ヘキサン:酢酸エチル=100:1)にて精製し、(E,E)−4,7−トリデカジエナール(7)(256mg,86%)を得た。
【0097】
(参考例1)ラーメンスープの調製
本発明の不飽和アルデヒドによる呈味感増強効果の評価系として、表1の処方によりラーメンスープを調製した。
【0098】
【表1】
【0099】
(実施例7)ラーメンスープへの(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表2に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
表2に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0102】
(実施例8)ラーメンスープへの(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表3に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
表3に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0105】
(実施例9)ラーメンスープへの(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表4に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表4に示す。
【0106】
【表4】
【0107】
表4に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0108】
(実施例10)ラーメンスープへの(E,Z)−4,7−トリデカジエナールの添加
(E,Z)−4,7−トリデカジエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表5に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
表5に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,Z)−4,7−トリデカジエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,Z)−4,7−トリデカジエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0111】
(実施例11)ラーメンスープへの(Z,E)−4,7−トリデカジエナールの添加
(Z,E)−4,7−トリデカジエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表6に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表6に示す。
【0112】
【表6】
【0113】
表6に示した通り、ラーメンスープに対し、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(Z,E)−4,7−トリデカジエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(Z,E)−4,7−トリデカジエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0114】
(実施例12)ラーメンスープへの(E,E)−4,7−トリデカジエナールの添加
(E,E)−4,7−トリデカジエナールのラーメンスープ中の含量がそれぞれ表7に記載した値となるよう添加し、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表7に示す。
【0115】
【表7】
【0116】
表7に示した通り、ラーメンスープに対し、(E,E)−4,7−トリデカジエナールを10−3ppb〜104ppb(10ppm)添加することにより、旨味感が増加することが示された。(E,E)−4,7−トリデカジエナールの添加量としては10−2ppb〜103ppb程度が特に良好であった。なお、100ppm添加では旨味感は増加したが、多少(E,E)−4,7−トリデカジエナール特有のアルデヒド様香気も感じられた。また、10−3ppbという低濃度でも旨味感が若干増加したと感じたパネラーもおり、低濃度でも旨味感の増強効果があることが判明した。
【0117】
(実施例13)グルタミン酸ナトリウム低減ラーメンスープへの不飽和アルデヒドの添加
表8の処方により、通常のラーメンスープとL−グルタミン酸ナトリウム(MSG)使用量を通常の2/3に減らしたラーメンスープを調製した。MSG低減ラーメンスープには本発明の不飽和アルデヒドをそれぞれ10ppbずつ添加したものを調製し、これらについて、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。官能評価の評価基準としては、濃厚感、こく味、塩味、複雑さ、天然感、香り、のそれぞれについて、各10点を満点として、次の基準により評価した。非常によい:10点、良い:8点、やや良い:6点、やや悪い:4点、悪い:2点、非常に悪い:0点として官能評価を行った。その評価の平均点を表9に示す。
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
表9に示したとおり、MSGを低減したラーメンスープは、通常のラーメンスープと比べて、濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの呈味に深く係わる官能評価はいずれも通常のラーメンスープと比べて評価が悪かった。また、天然感についても劣るという評価であった。一方、香りについてはほとんど差が見られなかった。それに対し、本発明の不飽和アルデヒドを添加したMSGを低減したラーメンスープは、通常のラーメンスープと比べて、濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの呈味に深く係わる官能評価および、天然感のいずれについても通常のラーメンスープとほぼ同等の評価であった。また、香りについては通常のラーメンスープと比べても良好であった。したがって、本発明の不飽和アルデヒドの添加により、飲食品の濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの旨味感が増強することが示された。
【0121】
(実施例14)呈味増強剤パウダーの調製
本発明の不飽和アルデヒドそれぞれ0.1gに、中鎖脂肪酸トリグリセライド19.9gおよびSAIB30gを混合溶解し油相部とした。他方、軟水680gにパインデックスNo.2を900g及びHLB15のショ糖脂肪酸エステル50gを加えて溶解し、85℃で15分間加熱殺菌した。この溶液を約40℃に冷却後、TK−ホモミキサー(特殊機化工業製)で攪拌混合しながら先に調製した油相部50gを注加し、更に5000回転/分で5分間攪拌混合して乳化処理し、乳化液1690gを得た。この乳化液を、噴霧乾燥機(NIRO社製:モービルマイナー)を用いて送風温度150℃、排風温度80℃で乾燥し、呈味増強剤パウダー950gを得た。
本発明品1:(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール0.01質量%含有
本発明品2:(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナール0.01質量%含有
本発明品3:(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール0.01質量%含有
本発明品4:(E,Z)−4,7−トリデカジエナール0.01質量%含有
本発明品5:(Z,E)−4,7−トリデカジエナール0.01質量%含有
本発明品6:(E,E)−4,7−トリデカジエナール0.01質量%含有
(実施例15)めんつゆ(粉末タイプ)への本発明の不飽和アルデヒドの添加
市販めんつゆ(粉末タイプ)に本発明品1〜6の呈味増強剤を不飽和アルデヒド含量として20ppbとなるように0.02質量%添加して粉体混合し、本発明のめんつゆ(粉末タイプ)を調製した。不飽和アルデヒド添加および無添加のめんつゆ10gを熱水にて200mlに希釈し(飲用のめんつゆ中1ppb)、呈味増強剤無添加品を対照として、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。その評価結果を表10に示す。
【0122】
【表10】
【0123】
表10に示した通り、10名のパネラーのうち大多数が、本発明品を添加しためんつゆが、濃厚感、コク味、複雑さなどの旨味感がややまたは大幅に増加したと評価した。
【0124】
(実施例16)マヨネーズへの本発明の不飽和アルデヒドの添加
クッキングミキサーに水60g、高酸度酢(酸度10%)60g、果糖ぶどう糖混合液糖(Bx75°)60g、凍結卵黄80g、食塩6.0g、化学調味料1.0gおよび粉末香辛料10gを仕込み均一撹拌混合後、大豆油723gを徐々に加え、均一撹拌混合を行った後、90℃まで加熱し、冷却後、撹拌脱気混合を行い、通常のマヨネーズを得た。
【0125】
一方、クッキングミキサーに水60g、高酸度酢(酸度10%)60g、果糖ぶどう糖混合液糖(Bx75°)60g、凍結卵黄80g、食塩6.0g、化学調味料1.0g、粉末香辛料10g、および増粘剤水溶液(カッパカラギーナン0.3%、キサンタンガム1.5%およびマルトデキストリン3%含有)223gを仕込み均一撹拌混合後、大豆油500gを徐々に加え、均一撹拌混合を行った後、90℃まで加熱し、冷却後、撹拌脱気混合を行い、低脂肪マヨネーズを得た(脂肪分約30%低減)。
【0126】
さらに低脂肪マヨネーズには本発明の不飽和アルデヒドを1ppb添加したものを調整し、これらについて、訓練されたパネラー10名により官能評価を行った。官能評価の評価基準としては、濃厚感、こく味、塩味、複雑さ、天然感、香りのそれぞれについて、各10点を満点として、次の基準により評価した。非常によい:10点、良い:8点、やや良い:6点、やや悪い:4点、悪い:2点、非常に悪い:0点として官能評価を行った。その評価の平均点を表11に示す。
【0127】
【表11】
【0128】
表11に示した通り、脂肪を低減したマヨネーズは、通常のマヨネーズと比べて、濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの呈味に深く係わる官能評価は、いずれも通常のマヨネーズと比べて評価が悪く、また、天然感も劣るという評価であった。また、香りもやや劣っていた。それに対し、本発明の不飽和アルデヒドを添加した低脂肪マヨネーズは、通常のマヨネーズと比べて、濃厚感、こく味、塩味、複雑さなどの呈味に深く係わる官能評価および、天然感、香りのいずれも無添加の低脂肪マヨネーズと比べ、大きく評点がアップし、通常のマヨネーズに近づいた。したがって、本発明の不飽和アルデヒドの添加により、飲食品の濃厚感、こく味、複雑さなどの旨味感が増強することが示された。
【0129】
(参考例1)水蒸気蒸留によるカツオ節フレーバーの調製
5リットル容の水蒸気蒸留釜に鰹荒節粉砕物200gおよび水1800gを仕込み、釜の下部より水蒸気を吹き込み、約100℃で約3時間水蒸気蒸留を行った。留出する揮発性香気成分を含んだ水蒸気を水冷式ガラス冷却管に導き、約20℃に冷却し、凝縮させることにより回収香400gを得た。得られた回収香400gにODO(登録商標:日清オイリオ社製の中鎖脂肪酸トリグリセライドの商品名)40gを添加して、室温下30分撹拌抽出した。抽出後60分静置し、油層部をデカント分離し、無水硫酸ナトリウムにて脱水し、濾紙濾過してカツオ節フレーバー(参考品1)38gを得た。
【0130】
(参考例2)含水アルコール抽出によるカツオ節フレーバーの調製
3リットル容のフラスコに鰹本枯節粉砕物200gおよび80%含水アルコール100gを加え、80〜85℃にて3時間撹拌抽出した。抽出後、遠心分離、濾過して抽出液800gを得、減圧下にてアルコールを回収しカツオ節フレーバー(参考品2)15gを得た。
【0131】
(参考例3)香料化合物の調合によるカツオ節フレーバーの調製
下記の各成分を調合した(参考品3)
4−エチルグアヤコール 1質量部
2,6−ジメトキシフェノール 0.5
1,2−ジメトキシ−4−プロピルベンゼン 2
4−エチル−2,6−ジメトキシフェノール 1
オイゲノール 0.5
シス−3−ヘキセナール 0.9
シクロテン 1
3−ヘキサノン 1
6−メチル−5−ヘプテン−2−オン 2
2−メチルインドール 0.5
2−エチル−3,5−ジメチルピラジン 3
2−エチル−3,5−ジメトキシピラジン 2.4
2,4−ジメチルチアゾール 1
2,3−ジメチルベンゾピラン 1
フルフリルアルコール 0.1
マルトール 1
3,4,5−トリメチル−2−(3H)−フラノン 1
メタンチオール 0.1
合計 20.0
【0132】
(参考例4)カツオ節様調合香料組成物の調製
カツオ節様の調合香料組成物として、下記の各成分(質量部)を調製した(比較品1)。
【0133】
参考品1 10質量部
参考品2 25
参考品3 0.5
アルコール 35
水 29.5
合計 100
【0134】
(実施例17)カツオ節様調合香料への(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
上記カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを表12に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、訓練されたパネラー10名により、官能評価を行った。官能評価の評価基準としては、ウッディー感、節感、力強さのそれぞれについて、各10点を満点、コントロール(比較品1)を5点として、次の基準により評価した。非常によい:10点、良い:8点、やや良い:6点、やや悪い:4点、悪い:2点、非常に悪い:0点として官能評価を行った。また、異臭(石鹸感、シトラス感)については、コントロール(比較品1)を0点として、コントロール同程度:0点、わずかに感じる:2点、やや感じる:4点、明らかに感じる:6点、異臭が強く気になる:8点、異臭が強く不快である:10点として官能評価を行った。その評価の平均点を表12に示す。
【0135】
【表12】
【0136】
表12に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物はカツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0137】
(実施例18)カツオ節様調合香料への(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを表13に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表13に示す。
【0138】
【表13】
【0139】
表13に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0140】
(実施例19)カツオ節様調合香料への(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを表14に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表14に示す。
【0141】
【表14】
【0142】
表14に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0143】
(実施例20)カツオ節様調合香料への(E,Z)−4,7−トリデカジエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを表15に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表15に示す。
【0144】
【表15】
【0145】
表15に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0146】
(実施例21)カツオ節様調合香料への(Z,E)−4,7−トリデカジエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを表16に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表16に示す。
【0147】
【表16】
【0148】
表16に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0149】
(実施例22)カツオ節様調合香料への(E,E)−4,7−トリデカジエナールの添加
カツオ節様調合香料組成物(比較品1)に対し、(E,E)−4,7−トリデカジエナールを表17に記載した割合で添加した。それぞれの調合香料は、実施例17と同じ方法で官能評価を行った。その評価の平均点を表17に示す。
【0150】
【表17】
【0151】
表17に示した通り、カツオ節様調合香料組成物に対し、(E,E)−4,7−トリデカジエナールを10−2ppm、0.1ppm、10ppm、100ppm、1000ppm添加したカツオ節様香料組成物は、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様香気が強調されているとの評価であり、香料組成物中に10−2ppm存在するだけでも香気にカツオ節的なウッディー感が付与されるという結果であった。一方、10−3ppmの添加では無添加と大差なく、1%の添加ではシトラス様、石鹸様、劣化した脂肪様の異臭が出てしまった。
【0152】
(参考例5)カツオ節エキスの調製
カツオ節10Kgをハンマーミル(スクリーン3mm)にて粉砕し、50Lカラム式抽出機に仕込み、カラム上部より60℃に加温した10%エタノール水溶液50Kgを50Kg/時間の流速で通液して抽出液35Kgを得、濾過後減圧下に濃縮し、濃縮液(カツオ節エキス)7Kgを得た(参考品4)。
【0153】
(実施例23)カツオ節風味調味料の調製
参考品4(600g)を用いて、下記に示した調味素材ならびに本発明の不飽和アルデヒドの希釈液をそれぞれ10ppbとなるように加え、90℃加熱溶解した後冷却し、本カツオ節風味調味料を得た。
【0154】
参考品4 600質量部
食塩 40
グルタミン酸ナトリウム 70
コハク酸ナトリウム 5
グラニュー糖 40
核酸系調味料 5
植物蛋白質加水分解物(HVP) 20
酵母エキス 10
水 210
合計 1000
それぞれのカツオ節風味調味料は、訓練されたパネラー10名により、不飽和アルデヒド無添加品をコントロールとして官能評価を行った。その平均的な官能評価結果を表18に示す。
【0155】
【表18】
【0156】
表18に示した通り、カツオ節風味調味料に対し、本発明の不飽和アルデヒドを添加したものは、いずれも不飽和アルデヒド無添加のカツオ節調味料と比べて、カツオ節的なウッディー感、節感が賦与され、良好なカツオ節様の風味が強調されているとの評価であった。
【0157】
(実施例24)本発明の不飽和アルデヒドを添加したカツオ節様調合香料の調製
前記比較品1に対し、本発明の不飽和アルデヒドをそれぞれ10ppm添加し、本発明のカツオ節様調合香料とした。
【0158】
本発明品7:比較品1に(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを10ppm添加
本発明品8:比較品1に(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10ppm添加
本発明品9:比較品1に(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールを10ppm添加
本発明品10:比較品1に(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを10ppm添加
本発明品11:比較品1に(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを10ppm添加
本発明品12:比較品1に(E,E)−4,7−トリデカジエナールを10ppm添加
(実施例25)カツオ節風味蒲鉾へのカツオ節様調合香料の配合
冷凍すけそうすり身100質量部、食塩2.5質量部、L−グルタミン酸ナトリウム1.5質量部、グリシン1質量部、キサンタンガム0.1質量部、参考例4および実施例24で得られたカツオ節様調合香料組成物(それぞれ比較品1または本発明品7〜12のいずれか1品)0.2質量部、馬鈴薯澱粉8質量部、卵白11質量部および氷水50質量部(合計174.3.6質量部)を混練し成形したすり身を95℃、40分間蒸し、カツオ節風味蒲鉾を調製した。
【0159】
これらのカツオ節風味かまぼこを、訓練されたパネラー10人により官能評価を行った。その結果、訓練されたパネラー10人全員が、本発明のカツオ節様調合香料組成物を添加したカツオ節風味かまぼこは比較品1を添加したカツオ節風味かまぼこに比べて、いずれもカツオ節様のウッディー感、節感が強調されていると評価した。
【0160】
(実施例26)粉末香料の調製
水150gにアラビアガム70g及びトレハロース20gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌した。これを40℃に冷却した後、参考例4および実施例24で得られたカツオ節様調合香料組成物(比較品1または本発明品7〜12のいずれか1品)をそれぞれ10gを添加混合し、TK−ホモミキサーで乳化した。この乳化液をニロ社のモービルマイナー型スプレードライヤーを使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、カツオ節粉末香料95g(それぞれ比較品2、本発明品13〜18とする)を得た。
【0161】
(実施例27)カツオ節ふりかけへの配合
市販カツオ節ふりかけ(おかか)100質量部に実施例26で得られたカツオ節粉末香料(比較品2または本発明品13〜18のいずれか1品)0.1gを加えて良く混合した。これらのカツオ節ふりかけを、訓練されたパネラー10人により官能評価を行った。その結果、訓練されたパネラー10人全員が、本発明品13〜18を添加したカツオ節ふりかけは比較品2を添加したカツオ節ふりかけに比べて、いずれもカツオ節様のウッディー感、節感が強調されていると評価した。
【0162】
(実施例28)カツオ節風味ドレッシングへの配合
水46.6質量部と果糖ぶどう糖液糖3質量部を混合し、ここにジェランガム含有製剤0.1質量部とこんにゃく加工品3質量部の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱攪拌溶解した。更に、淡口醤油3質量部、白しょうゆ12質量部、レモン果汁透明濃縮還元4質量部、食塩1質量部、L−グルタミン酸ナトリウム0.3質量部、参考例5で得られたカツオ節エキス(参考品4)1質量部を加え溶解させた後、醸造酢(酸度4.2%)6質量部、リンゴ酢5質量部、を加え攪拌し、水層部を調製した。一方、油層部としてコーンサラダ油14.9質量部、および、参考例4および実施例24で得られたカツオ節様調合香料組成物(比較品1または本発明品7〜12のいずれか1品)0.1質量部を攪拌混合し、合計15質量部の油層部を調製した。そして、水層部と油層部が85:15の割合となるように容器に充填・殺菌し、カツオ節風味のセパレートドレッシング(pH3.8)を調製した。
【0163】
これらのカツオ節風味ドレッシングを、訓練されたパネラー10人により官能評価を行った。その結果、訓練されたパネラー10人全員が、本発明品7〜12を添加したカツオ節風味ドレッシングは比較品1を添加したカツオ節風味ドレッシングに比べて、いずれもカツオ節様のウッディー感、節感が強調されていると評価した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる香味改善剤。
【請求項2】
下記式(1)
【化2】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる飲食品の呈味増強剤。
【請求項3】
飲食品が旨味感を有する飲食品であることを特徴とする請求項2に記載の飲食品の呈味増強剤。
【請求項4】
呈味増強が旨味感の増強であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の飲食品の呈味増強剤。
【請求項5】
旨味感を有する飲食品がアミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂および食塩から選ばれる1種または2種以上を含有する飲食品であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の飲食品の呈味増強剤。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の飲食品の呈味増強剤を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−2ppm〜104ppm含有することを特徴とする飲食品の呈味増強剤組成物。
【請求項7】
請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の飲食品の呈味増強剤を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb添加することを特徴とする飲食品の呈味増強方法。
【請求項8】
請求項6の飲食品の呈味増強剤組成物を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb添加することを特徴とする飲食品の呈味増強方法。
【請求項9】
下記式(1)
【化3】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる魚節香味改善剤。
【請求項10】
請求項9に記載の魚節香味改善剤を式(1)の不飽和アルデヒド濃度として10−2ppm〜104ppm含有することを特徴とする魚節香料組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の魚節香料組成物を式(1)の不飽和アルデヒド濃度として10−3ppb〜104ppb含有することを特徴とする飲食品。
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる香味改善剤。
【請求項2】
下記式(1)
【化2】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる飲食品の呈味増強剤。
【請求項3】
飲食品が旨味感を有する飲食品であることを特徴とする請求項2に記載の飲食品の呈味増強剤。
【請求項4】
呈味増強が旨味感の増強であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の飲食品の呈味増強剤。
【請求項5】
旨味感を有する飲食品がアミノ酸類、核酸類、有機酸類、油脂および食塩から選ばれる1種または2種以上を含有する飲食品であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の飲食品の呈味増強剤。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の飲食品の呈味増強剤を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−2ppm〜104ppm含有することを特徴とする飲食品の呈味増強剤組成物。
【請求項7】
請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の飲食品の呈味増強剤を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb添加することを特徴とする飲食品の呈味増強方法。
【請求項8】
請求項6の飲食品の呈味増強剤組成物を、式(1)の不飽和アルデヒドとして10−3ppb〜104ppb添加することを特徴とする飲食品の呈味増強方法。
【請求項9】
下記式(1)
【化3】
[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す](ただし、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを除く)で表される不飽和アルデヒドからなる魚節香味改善剤。
【請求項10】
請求項9に記載の魚節香味改善剤を式(1)の不飽和アルデヒド濃度として10−2ppm〜104ppm含有することを特徴とする魚節香料組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の魚節香料組成物を式(1)の不飽和アルデヒド濃度として10−3ppb〜104ppb含有することを特徴とする飲食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−178984(P2012−178984A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42255(P2011−42255)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】
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