説明

駆動制御装置、受信装置及び駆動制御方法

【課題】光空間伝送における伝送距離を長くすること。
【解決手段】光空間伝送を行う通信装置の送信制御部31では、拡散部120によって、送信データ信号が所定の拡散符号系列で直接スペクトラム拡散変調され、パルス変換部130によって、拡散変調信号が拡散符号系列に同期したパルス信号に変換され、発光制御部140によって、このパルス信号に応じたパターンの通信電流Ibが、信号灯器10のLED部12に供給される。つまり、LED部12には、灯器駆動部20によって供給される信号を現示するための灯器電流Iaに、この通信電流Ibが重畳されて供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道又は交通用のLED式信号灯器の駆動制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
通信用の光信号を空間に伝搬させる光空間伝送の技術として、通信データを符号化したデジタルデータの各ビットを、光信号のオン/オフに変換して送信する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−252860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光空間伝送における伝送距離は、発光源の発光強度によって決まる。発光源としては主にLED(発光ダイオード)が利用されるが、このLEDには定格電流が定められているため発光強度に上限があり、その結果、伝送距離が制限されることになる。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光空間伝送における伝送距離を長くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための第1の形態は、
鉄道又は交通用のLED式信号灯器の駆動制御装置(例えば、図1の通信装置30及び灯器駆動部20)であって、
前記LED式信号灯器のLED部に信号を現示させるための電源電力として、電流が前記LED部の定格電流以下の電力を供給する電源電力供給手段(例えば、図3の灯器駆動部20)と、
電流が前記LED部のピーク定格電流以下で且つ前記定格電流を超えるパルス波であって、デューティ比が当該ピーク定格電流の使用条件に沿ったデューティ比以下で、且つ、デューティ比とビットレートとの関係が滅灯時にも肉眼で視認不可能な関係に定められたパルス波の電力を前記LED部に印加することで、所与の通信データを搬送する光学的信号を前記LED部に発信させるパルス波印加手段(例えば、図3の送信制御部31)と、
を備える駆動制御装置である。
【0006】
また、他の形態として、
鉄道又は交通用のLED式信号灯器の駆動制御方法であって、
電流が前記LED式信号灯器のLED部の定格電流を超え且つピーク定格電流以下のパルス波であって、デューティ比が当該ピーク定格電流の使用条件に沿ったデューティ比以下で、且つ、デューティ比とビットレートとの関係が滅灯時にも肉眼で視認不可能な関係に定められたパルス波の電力を前記LED部に印加することで、所与の通信データを搬送する光学的信号を前記LED部に発信させるステップを含む駆動制御方法を構成しても良い。
【0007】
この第1の形態等によれば、既設の鉄道又は信号用のLED式信号灯器を利用して、光学的信号によるデータ通信(光空間通信)が行えるようになる。すなわち、LED式信号灯器のLED部には、信号を現示させるための電源電力が供給されるとともに、パルス波の電力がLED部に印加されて所与の通信データを搬送する光学的信号がLED部から発信される。つまり、LED式信号灯器は、信号を現示しつつ、通信データを搬送する光学的信号を発信することとなる。
【0008】
このとき、信号を現示させるための電源電力は、電流がLED部の定格電流以下の電力である。一方、光学的信号を発信させるための電力は、電流がLED部のピーク電流以下で且つ定格電流を超えるパルス波であって、デューティ比がピーク定格電流の使用条件に沿ったデューティ比以下のパルス波の電力である。このように、パルス波を印加することで、通信データの1ビット当たりの発光時間を短くしてLED部に流れる電流を定格電流以上とすることができ、その結果、LED部から送信される光学的信号の送信距離を長くすることができる。また、LED部から発信される光学的信号は可視光となるが、パルス波はデューティ比とビットレートとの関係が滅灯時にも肉眼で視認不可能な関係に定められているため、LED式信号灯器における信号現示に影響を与えない。
【0009】
第2の形態は、
複数のLED部を有する信号鉄道又は交通用のLED式信号灯器の駆動制御装置であって、
前記複数のLED部のうち現示させるLED部を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたLED部に電源電力を供給する電源電力供給手段と、
前記選択手段により選択されたLED部に、前記電源電力に重畳させて、光学的信号を発信させるためのパルス波の電力を印加するパルス波印加手段と、
を備える駆動制御装置である。
【0010】
また、他の形態として、
複数のLED部を有する信号鉄道又は交通用のLED式信号灯器の駆動制御方法であって、
前記複数のLED部のうち現示させるLED部を選択する選択ステップと、
前記選択されたLED部に電源電力を供給する電源電力供給ステップと、
前記選択されたLED部に、前記電源電力に重畳させて、光学的信号を発信させるためのパルス波の電力を印加するパルス波印加ステップと、
を含む駆動制御方法を構成しても良い。
【0011】
この第2の形態等によれば、複数のLED部を有する鉄道又は交通用のLED式信号灯器を利用して、光学的信号によるデータ通信(光空間通信)が行えるようになる。すなわち、LED式信号灯器が有する複数のLED部のうち、信号を現示させるとして選択されたLED部には、信号を現示させるための電源電力が供給されるとともに、この電源電力に重畳させて光学的信号を発信させるためのパルス波の電力が印加される。これにより、LED式信号灯器に信号を現示しつつ、通信データを搬送する光学的信号を発信させることが可能となる。
【0012】
また、第3の形態として、第1又は第2の形態の駆動制御装置であって、
前記電源電力供給手段は、商用電源を整流して前記電源電力を生成し、
前記パルス波印加手段は、前記商用電源の周波数より高い周期のビットレートでなるパルス波を前記LED部に印加する、
駆動制御装置を構成しても良い。
【0013】
この第3の形態によれば、LED式信号灯器のLED部に信号を現示させるための電源電力は商用電源を整流して生成され、通信データを搬送するための光学的信号を発信させるための電力として、この商用電源の周波数より高い周期のビットレートでなるパルス波の電力がLED部に印加される。
【0014】
また、第4の形態として、第1〜第3の何れかの形態の駆動制御装置であって、
前記パルス波印加手段は、100kbps以下のビットレートでなるパルス波を前記LED部に印加する、
駆動制御装置を構成しても良い。
【0015】
この第4の形態によれば、通信データを搬送する光学的信号を発信させるための電力として、100kbps以下のビットレートでなるパルス波がLED部に印加される。
【0016】
また、第5の形態として、第1〜第4の何れかの形態の駆動制御装置であって、
送信データを所与の拡散符号系列で直接スペクトラム拡散変調して通信データを生成する通信データ生成手段(例えば、図3の拡散部120)を更に備え、
前記パルス波印加手段は、前記拡散符号系列のチップレートを前記ビットレートとするパルス波を前記LED部に印加する、
駆動制御装置を構成しても良い。
【0017】
この第5の形態によれば、送信データを所与の拡散符号系列で直接スペクトラム拡散変調して通信データが生成され、この通信データを搬送する光学的信号を発信させるための電力として、拡散符号系列のチップレートをビットレートとするパルス波がLED部に印加される。
【0018】
また、第6の形態として、第1〜第5の何れかの形態の駆動制御装置により駆動されたLED式信号灯器の発光信号を受光する受光手段(例えば、図5の受光素子210)と、
前記受光された光信号を電気信号に変換する光電変換手段(例えば、図5の受光素子210)と、
前記変換された電気信号から前記通信データを復元する復元手段(例えば、図5のデータ復旧部230)と、
を備えた受信装置(例えば、図5の受信制御部32)を構成しても良い。
【0019】
この第6の形態によれば、第1〜第5の何れかの形態の駆動制御部により駆動されたLED式信号灯器の発光信号を受信して通信データに復元することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】無線通信システムの設置例。
【図2】通信装置の内部構成図。
【図3】送信制御部の内部構成図。
【図4】信号灯器のLED部に供給される電流波形。
【図5】受信制御部の内部構成図。
【図6】通信装置の動作を説明するタイムチャート。
【図7】送信制御部の他の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下では、本発明を交通用のLED式信号灯器に適用した場合を説明するが、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0022】
[構成]
図1は、本実施形態における無線通信システムの設置例を示す図である。この無線通信システムは、例えば隣接交差点間の無線通信に用いられ、交差点毎に設置された複数の通信装置30を備えて構成される。通信装置30は、交差点における交通信号の制御などを行う制御装置(いわゆる交通信号制御機)に内蔵或いは別途設置され、該制御装置の制御のもと、光通信方式のデータ通信を行う。図1においては、通信装置30は制御装置内に設けられることとし、当該交差点に1台設置されているとして図示しているが、当該交差点の各LED式信号灯器10近傍にそれぞれ設置することとしても良い。また、この通信装置30は、図2に示すように、送信制御部31と、受信制御部32とを有する。
【0023】
送信制御部31は、入力される送信データに基づいてLED式信号灯器10に光学的信号を発信させるためのパルス波の信号(パルス信号)を生成し、このパルス信号の電力を信号灯器10に印加する。図3は、送信制御部31のブロック図である。図3に示すように、送信制御部31は、クロック生成部110と、拡散部120と、パルス変換部130と、発光制御部140とを有する。
【0024】
クロック生成部110は、周期が同じで位相が異なる2種類のクロック信号φ1,φ2を生成する。
【0025】
拡散部120は、拡散符号発生器121と、乗算器122とを有し、1ビットのnrz信号として入力された送信データの信号(送信データ信号)を、所定の拡散符号系列(例えば、PN符号系列)で直接スペクトラム拡散変調する。拡散符号発生器121は、クロック信号φ1に同期した拡散符号系列を発生する。ここで発生する拡散符号系列は、例えば、光通信を行う交差点間の通信装置30の組合せ毎に定められた符号配列のものとする。乗算器122は、入力された送信データ信号と拡散符号発生器121により発生された拡散符号系列とを乗算(合成)し、送信データ信号を直接スペクトラム拡散変調した拡散変調信号を生成する。
【0026】
パルス変換部130は、ANDゲート131と、パルス幅整形部132とを有し、拡散変調信号をパルス信号に変換する。ANDゲート131は、乗算器122による拡散変調信号とクロック信号φ2との論理和を演算する。これにより、NRZ信号である拡散変調信号が、クロック信号φ2に同期したパルス信号に変換される。パルス幅整形部132は、ANDゲート131から出力されるパルス信号のパルス幅を所定幅とし、デューティ比を所定値とする波形整形を行う。パルス幅とデューティ比については、図4を参照して後述する。
【0027】
発光制御部140は、パルス変換部130から入力されるパルス信号(発光制御信号)に従って、光通信用の発光素子の発光を制御して光学的信号を発信させる。本実施形態では、この光通信用の発光素子として、LED式信号灯器10が有するLED部12を利用する。LED式信号灯器10は、交差点に設置されて交通信号現示を表示するものであり、各色(例えば、車両用では、赤、青及び黄の三色)のLED部12を有する。この複数のLED部12のうち、何れか一つを、光通信用の発光素子として利用する。
【0028】
発光制御部140は、通信用DC電源141と、発光切替スイッチ142と、抵抗143と、逆流防止用ダイオード144とを有する。
【0029】
通信用DC電源141は、発光切替スイッチ142、抵抗143及び逆流防止用ダイオード144を介して、LED式信号灯器10のLED部12に光通信用の電力を印加する。この通信用DC電源141は、該通信用DC電源141からの電力によってLED部12の各LEDに供給される通信電流Iaが、該LEDの定格電流を超え且つピーク定格電流を超えないように設計されている。
【0030】
発光切替スイッチ142は、発光制御信号(パルス信号)に従ってそのスイッチング動作(オン/オフ)が制御されるスイッチング素子である。すなわち、発光切替スイッチ142がオンのときに、通信用DC電源141からの供給電力がLED部12に印加されることとなるが、発光制御信号はパルス信号であってそのオン時間が短時間であるため、LED部12に電力が印加されるのは極めて短い時間である。つまり、LED部12に印加される電力はパルス信号である発光制御信号に応じたパルス状の電力であり、従って、LED部12に供給される通信電流Iaはパルス状の電流となる。この電力によって、LED部12は高強度に発光する。
【0031】
灯器駆動部20は、LED式信号灯器10における各LED部12を駆動して所定の信号現示を表示させるものであり、灯器用DC電源21と、灯色切替スイッチ22と、抵抗23及び逆流防止用ダイオード24とを有する。
【0032】
灯器用DC電源21は、商用電源を整流した脈流電力を供給する。この灯器用DC電源21からの脈流電力は、灯色切替スイッチ22、抵抗23及び逆流防止用ダイオード24を介して、信号灯器10の各LED部12に印加される。ここで、灯器用DC電源21は、該灯器用DC電源21からの脈動電力によってLED部12に供給される灯器電流Iaが、LED部12の各LEDの定格電流を超えないように設計されている。
【0033】
灯色切替スイッチ22は、所定の現示信号(不図示)に従ってそのスイッチング動作(オン/オフ)が制御されるスイッチング素子である。すなわち、灯色切替スイッチ22がオンのときには、灯器用DC電源21からの脈流電力がLED部12に印加され、該脈流電力に応じた灯器電流IaがLED部12に供給される。
【0034】
図4は、信号灯器10の各LEDへの供給電流の一例を示す図である。図4に示すように、LED部12への供給電流は、灯器用DC電源21による灯器電流Iaに、通信用DC電源141による通信電流Ibが重畳された電流となる。灯器電流Iaは、商用電源の周波数で脈動する波形となっている。
【0035】
また、通信電流Ibは、灯器電流Iaの周波数(すなわち、商用電源の周波数)より高い周波数のパルス状の波形となっている。この通信電流Ibのパルス間隔は、拡散符号系列のチップレートによって決まる。具体的には、通信電流Ibの周波数は、灯器電流Iaの周波数の10〜1000倍程度とする。例えば、100倍とした場合、商用電源の周波数を50Hz又は60Hzとすると、通信電流Ibの周波数は5〜6kHz程度となる。
【0036】
また、通信電流Ibのパルス幅(すなわち、デューティ比)は、LED部12における通信電流Ibによる発光が人間の肉眼では認識できない程度に短い時間とする。この通信電流Ibのパルス幅は、パルス変換部130によって調整される。具体的には、通信電流Ibのデューティ比は1/100程度とする。この場合、通信データの1ビット幅を1msとすると、通信電流Ibのパルス幅は10μsとなる。なお、通信電流Ibのパルス幅には、発光切替スイッチ142の性能(スイッチング速度)によって決まる下限がある。
【0037】
また、通信電流Ibの振幅(大きさ)は灯器電流Iaの振幅よりも大きい。これは、灯器用DC電源21が基本的には定電圧であり(実際には脈動しているが)、灯器電流IaがLED部12の各LEDの定格電流を超えないように設計されているのに対して、通信電流Ibは、デューティ比が小さいパルス電流であるため、LEDの定格電流を超える電流を流すことができるためである。但し、通信電流Ibは、瞬時に流せる最大電流であるピーク定格電流以下となる。具体的には、例えば、灯器電流Iaの大きさは「20mA」程度であり、通信電流Ibの大きさは「1A」程度である。
【0038】
このように、送信制御部31では、通信データをデューティ比が小さいパルス信号に変換することで、LED部12に供給する通信電流Ibを大きくして発光強度を高めることで、光信号として伝送できる距離を長くすることができる。
【0039】
受信制御部32は、他の通信装置30からの光信号を受信し、もとの送信データに復元して受信データとする。図5は、受信制御部32の内部構成図である。図5に示すように、受信制御部32は、受光素子210と、フィルタ回路部220と、データ復旧部230と、逆拡散部240とを有する。
【0040】
受光素子210は、受信した光信号を電気信号に変換する光電変換素子であり、入射光の光量に応じた電流を発生する。この受光素子210を有する受光部は、受信する光信号の発信元、すなわち隣接交差点の信号灯器10に向けられて配置される。従って、この受信部は、通信装置30内でなく、例えば信号灯器10が備え付けられた柱の上部に、通信相手となる隣接交差点の信号灯器10に向けて設置されるとしても良い。
【0041】
フィルタ回路部220は、受光素子210にて光電変換された受信信号(電気信号)に含まれる低周波成分を遮断する。このフィルタ回路部220は、オペアンプ221と、抵抗Rf,Rbと、LPF222と、飽和防止用のショットキーダイオード223とを有して構成され、フィルタ回路部220では、オペアンプ221の出力をLPF222を介してフィードバックすることで、入力信号に含まれる低周波成分を除去するように構成されている。
【0042】
データ復旧部230は、ビット復旧カウンタ231と、ORゲート232と、D−FF233と、波形整形部234を有し、RZ信号である受信信号をもとのNRZ信号である通信データ信号に変換(復旧)する。
【0043】
ビット復旧カウンタ231は、通信データ信号の1ビット幅(すなわち、拡散符号系列の1ビット幅)に相当する時間に設定されており、不図示のクロック信号に同期してカウントアップしたカウント値が設定値に達すると、タイムアップ信号を出力する。また、このビット復旧カウンタ231には、リセット信号としてORゲート232の出力信号が入力される。ORゲート232には、フィルタ回路部220を通した受信信号と、ビット復旧カウンタ231からのカウントアップ信号とが入力される。つまり、ビット復旧カウンタ231は、受信信号のパルスが入力された場合、或いは、該ビット復旧カウンタ231のカウント値が設定値に達した(タイムアップとなった)場合にリセットされる。
【0044】
D−FF233のデータ端子Dには、常時「H」レベルの信号が入力され、クロック端子CLには、フィルタ回路部220を通した受信信号が入力され、リセット端子Rには、ビット復旧カウンタ231からのタイムアップ信号が入力される。つまり、D−FF233は、データ端子Dに受信信号のパルスが入力されると出力信号Qを「H」レベルとし、リセット端子Rにビット復旧カウンタ231からのタイムアップ信号が入力されると出力信号Qをリセットして「L」レベルとする。このD−FF233の出力端子Qからの出力信号が、RZ信号である受信信号を、もとのNRZ信号に復旧した信号(復旧信号)となる。
【0045】
波形整形部234は、データ復旧部230によって復旧された信号(復旧信号)に対する波形整形を行う。この波形整形部234からの信号が、復旧受信信号となる。
【0046】
逆拡散部240は、波形整形部234からの復旧受信信号に対する逆拡散を行って、送信データ信号を復調する。この逆拡散部240は、クロックジェネレータ241と、拡散符号発生器242と、乗算器243と、積分器244と、比較器245とを有する。
【0047】
クロックジェネレータ241は、当該通信装置30の内部で生成される内部基準クロックをもとに、拡散符号クロックを生成する。また、クロックジェネレータ241は、比較器245により非同期と判定されたときには、同期と判定されるまで、拡散符号クロックの生成タイミングを少しずつずらし、復旧受信信号に同期させた拡散符号クロックを生成する。
【0048】
拡散符号発生器242は、クロックジェネレータ241によって生成された拡散符号クロックに同期した基準符号系列を生成する。ここで生成される基準符号系列は、受信しようとする通信装置30との組合せに割り当てられた拡散符号系列と同じものである。乗算器243は、波形整形部234からの復旧受信信号と、拡散符号発生器242によって発生された基準符号系列とを乗算(合成)して相関値を算出する。
【0049】
積分器244は、乗算器243によって算出された相関値を、基準符号系列の1符号周期に亘って積算する。比較器245は、積分器244によって算出された積算値と所定の相関閾値とを比較して、復旧受信信号と基準符号系列とが同期しているか否かを判定する。そして、同期していると判定したならば、積分器244による積算値の正負に基づき、送信データ信号を復調する。
【0050】
[タイムチャート]
図6は、通信装置30における送受信動作を説明するタイムチャートである。図6では、横方向を時間軸として、上から順に、送信側の通信装置30の送信制御部31における信号波形として、送信データ信号、拡散変調に用いられる拡散符号系列、拡散変調信号、クロック生成部110からのクロックφ1,φ2、LED部12から送信される光信号(送信波)を示し、更に、受信側の通信装置30における信号波として、フィルタ回路部220を通した受信信号、ビット復旧カウンタ231のカウント値、データ復旧部230による復旧受信信号、逆拡散部240により復調された送信データ信号を示している。
【0051】
図6に示すように、先ず、送信側の通信装置30の送信制御部31においては、送信データ信号に拡散符号系列を乗算することで拡散変調され、拡散変調信号が生成される。次いで、この拡散変調信号とクロックφ2とが乗算され、クロックφ2に同期したパルス信号が生成される。ここで生成されるパルス信号は、拡散変調信号が「1(H)」のときにパルス“有り”、「0(L)」のときにはパルス“無し”の信号が生成される。そして、このパルス信号が波形整形部234によって波形整形されることで、パルス幅が小さい(すなわち、デューティ比が小さい)発光制御信号とされ、この発光制御信号のパターンで発光する光信号が送信される。
【0052】
そして、受信側の通信装置30の受信制御部32においては、受光素子210にて受光されて電気信号に変換された受信信号が、フィルタ回路部220を通すことで太陽光等による低周波成分が遮断された後、受信信号にパルスが発生するタイミングで、ビット復旧カウンタ231のカウント値がリセットされるとともに、D−FF233からの出力信号、すなわち復旧受信信号が「1(H)」に変化する。なお、ビット復旧カウンタ231におけるカウント値が設定値に達する毎に、すなわち拡散符号系列の1ビットに相当する時間が経過する毎に、該ビット復旧カウンタ231がリセットされるとともに、受信信号にパルスが発生していないときにはD−FF233がリセットされて復旧受信信号が「0(L)」に変化する。そして、この復旧受信信号と基準符号系列とが乗算されて逆拡散されて送信データ信号が復調される。
【0053】
[作用・効果]
このように、本実施形態によれば、光空間伝送を行う通信装置30において、送信制御部31では、拡散部120によって、送信データ信号が所定の拡散符号系列で直接スペクトラム拡散変調され、パルス変換部130によって、拡散変調信号が拡散符号系列に同期したパルス信号に変換され、そして、発光制御部140によって、このパルス信号に応じたパターンの通信電流Ibが、信号灯器10のLED部12に供給される。つまり、LED部12には、灯器駆動部20によって供給される信号を現示するための灯器電流Iaに、この通信電流Ibが重畳されて供給される。これにより、従来の交通用のLED信号灯器10を利用した光空間伝送が可能となる。また、通信データ信号をパルス信号に変換し、このパルス信号に応じた発光パターンの光信号を送信することで、通信電流IbをLED部12の各LEDの定格電流よりも大きくすることができ、その結果、通信データを搬送する光信号の伝送距離を長くすることができる。
【0054】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0055】
(A)
例えば、上述の実施形態では、信号灯器10が有する複数(例えば、赤青黄の三色)のLED部12のうちの何れかを利用することとしたが、信号灯器10が有する複数のLED部12を利用することにしても良い。具体的には、図7に示すように、発光制御部140では、通信電流Ibが、選択スイッチ145を介して複数のLED部12それぞれに供給されるように構成する。この選択スイッチ145のスイッチング動作(オン/オフ)は、灯色切替スイッチ22を制御する、複数のLED部12のうち何れを点灯させるかを制御する灯色切替信号を利用することで、点灯しているLED部12にのみ通信電流Ibが供給されるようにする。
【0056】
(B)
また、上述の実施形態では、交差点等に設置される交通用のLED式信号灯器に適用した場合に説明したが、例えば、鉄道用のLED式信号灯器にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 信号灯器、12 LED部
20 灯器駆動部
21 灯器用DC電源、22 灯色切替スイッチ、23 抵抗、24 ダイオード
30 通信装置
31 送信制御部
110 クロック生成部
120 拡散部
121 拡散符号発生器、122 乗算器
130 パルス変換部
131 ANDゲート、132 パルス幅整形部
140 発光制御部
141 通信用DC電源、142 発光切替スイッチ
143 抵抗、144 ダイオード
32 受信制御部
210 受光素子
220 フィルタ回路部
221 オペアンプ、222 LPF
230 データ復旧部
231 ビット復旧カウンタ、232 ORゲート
233 D−FF、234 波形整形部
240 逆拡散部
241 クロックジェネレータ、242 拡散符号発生器
243 乗算器、244 積分器、245 比較器
Ia 灯器電流、Ib 通信電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道又は交通用のLED式信号灯器の駆動制御装置であって、
前記LED式信号灯器のLED部に信号を現示させるための電源電力として、電流が前記LED部の定格電流以下の電力を供給する電源電力供給手段と、
電流が前記LED部のピーク定格電流以下で且つ前記定格電流を超えるパルス波であって、デューティ比が当該ピーク定格電流の使用条件に沿ったデューティ比以下で、且つ、デューティ比とビットレートとの関係が滅灯時にも肉眼で視認不可能な関係に定められたパルス波の電力を前記LED部に印加することで、所与の通信データを搬送する光学的信号を前記LED部に発信させるパルス波印加手段と、
を備える駆動制御装置。
【請求項2】
複数のLED部を有する信号鉄道又は交通用のLED式信号灯器の駆動制御装置であって、
前記複数のLED部のうち現示させるLED部を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたLED部に電源電力を供給する電源電力供給手段と、
前記選択手段により選択されたLED部に、前記電源電力に重畳させて、光学的信号を発信させるためのパルス波の電力を印加するパルス波印加手段と、
を備える駆動制御装置。
【請求項3】
前記電源電力供給手段は、商用電源を整流して前記電源電力を生成し、
前記パルス波印加手段は、前記商用電源の周波数より高い周期のビットレートでなるパルス波を前記LED部に印加する、
請求項1又は2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記パルス波印加手段は、100kbps以下のビットレートでなるパルス波を前記LED部に印加する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
送信データを所与の拡散符号系列で直接スペクトラム拡散変調して通信データを生成する通信データ生成手段を更に備え、
前記パルス波印加手段は、前記拡散符号系列のチップレートを前記ビットレートとするパルス波を前記LED部に印加する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の駆動制御装置により駆動されたLED式信号灯器の発光信号を受光する受光手段と、
前記受光された光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、
前記変換された電気信号から前記通信データを復元する復元手段と、
を備えた受信装置。
【請求項7】
鉄道又は交通用のLED式信号灯器の駆動制御方法であって、
電流が前記LED式信号灯器のLED部の定格電流を超え且つピーク定格電流以下のパルス波であって、デューティ比が当該ピーク定格電流の使用条件に沿ったデューティ比以下で、且つ、デューティ比とビットレートとの関係が滅灯時にも肉眼で視認不可能な関係に定められたパルス波の電力を前記LED部に印加することで、所与の通信データを搬送する光学的信号を前記LED部に発信させるステップを含む駆動制御方法。
【請求項8】
複数のLED部を有する信号鉄道又は交通用のLED式信号灯器の駆動制御方法であって、
前記複数のLED部のうち現示させるLED部を選択する選択ステップと、
前記選択されたLED部に電源電力を供給する電源電力供給ステップと、
前記選択されたLED部に、前記電源電力に重畳させて、光学的信号を発信させるためのパルス波の電力を印加するパルス波印加ステップと、
を含む駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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