説明

駆動制御装置と画像形成装置

【課題】 動作部を安定して動作させる場合に不必要に低速で動作してしまうことのないようにする。
【解決手段】 CPU61は、インク関連動作制御部73を制御してインク関連動作部58を駆動させ、NVRAM64の動作実施回数を加算し、センサ57からの信号に基いて正常動作終了を検出した場合、NVRAM64の正常動作終了回数を加算し、NVRAM64の動作実施回数が判定基準回数以上の場合、(動作OK回数/動作実施回数)の値を算出し、その値がNVRAM64の正常判定閾値以上の場合、加速度に調整加速度を加算して新たな加速度にする。また、(動作OK回数/動作実施回数)の値が異常判定閾値以下の場合、加速度から調整加速度を減算して新たな加速度にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の動作手段を動作させる駆動制御装置とファクシミリ装置、スキャナ装置、プリンタ、複写機、並びにそれらの機能を備えた複合等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ装置、スキャナ装置、プリンタ、複写機、並びにそれらの機能を備えた複合等の画像形成装置の内部の複数の動作部をモータの回転動作で制御する際、モータ立ち上げ時の加速度を低くすることで振動や動作を安定させる技術が知られている。
従来、動作部を最初は最大許容加速度で駆動し、目標速度に近づくと加速度を0に近づけていく制御を行う駆動制御装置(例えば、特許文献1参照)があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の駆動制御装置では、動作部の駆動源であるモータの立ち上げ時の加速度を固定にした場合、その加速度を余裕を持った値にする必要があり、その場合は十分に余裕を持たせるため、加速度が低く設定されてしまい、動作部が不必要に低速で動作してしまうという問題があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、動作部を安定して動作させる場合に不必要に低速で動作してしまうことのないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は上記の目的を達成するため、複数の動作手段と、上記各動作手段の動作の駆動源と、上記駆動源の駆動力の伝達先を上記各動作手段のうちで動作させる動作手段に切替える切替え手段と、上記駆動源によって上記各動作手段を駆動させたときに正常に動作終了したことを検出する正常動作検出手段と、上記駆動源の動作回数と上記正常動作検出手段によって正常に動作終了したことが検出された正常動作終了回数とを計測する計測手段と、上記計測手段によって計測された上記正常動作終了回数を上記動作回数で除した値と予め設定された閾値とを比較し、その比較結果に基いて上記駆動源の動作速度を制御する制御手段を備えた駆動制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0005】
この発明による駆動制御装置と画像形成装置は、動作部を安定して動作させる場合に不必要に低速で動作してしまうことのないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図2に示すインクジェットプリンタの制御部の構成例を示すブロック図である。
【図2】発明の一実施形態であるインクジェットプリンタを前方側から見た外観斜視図である。
【図3】図2に示したインクジェットプリンタの機構部を示す概略構成図である。
【図4】図2に示したインクジェットプリンタの機構部の要部を示す平面図である。
【0007】
【図5】図1に示したインクジェットプリンタのインク関連動作部の概略構成図である。
【図6】モータ駆動プロファイルに基づくモータの回転速度の変化の一例を示す説明図である。
【図7】モータの加速度の異なる変化の一例を示す図である。
【図8】図1に示したNVRAMに予め記憶させたモータ駆動プロファイルのテーブルのデータ内容の一例を示す図である。
【0008】
【図9】図1に示したCPUによるインク関連動作部の動作速度を制御する処理を示すフローチャート図である。
【図10】モータ駆動プロファイルに基いて動作速度を制御するときの速度変化の他の例を示す図である。
【図11】図1に示したNVRAMに予め記憶させたモータ駆動プロファイルのテーブルのデータ内容の他の例を示す図である。
【図12】図1に示したCPUによるインク関連動作部の動作速度を制御する他の処理例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図2は、発明の一実施形態であるインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置とも称す)を前方側から見た外観斜視図である。
このインクジェットプリンタ(以下単に「プリンタ」と云う)は、装置本体1と、その装置本体1に着脱自在に装着される用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。
また、装置本体1には、上部に内部の機構部を覆う上カバー4を開閉可能に設けている。
【0010】
この装置本体1の上面を形成する上カバー4の表面は略平坦な面に形成し、更に、上カバー4の中央部には、内部の機構部を外部から視認することができる透明又は半透明の部材からなる窓部材5を取り付けている。
また、装置本体1の前カバーで形成される前面6は上カバー4の前端部から斜め下後方に向かって傾斜している形状にしている。
したがって、装置本体1の上面を広く活用することができる。
【0011】
さらに、装置本体1の前面6の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面6から装置本体1の前方側に突き出し、上カバー4よりも低くなったカートリッジ装填部7を有し、このカートリッジ装填部7の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作表示部8を備えている。
【0012】
このカートリッジ装填部7には、色の異なる記録液(インク)、例えば、黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ9k、9c、9m、9y(以下、色を区別しないときは総称して「インクカートリッジ9」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能にしている。
インクカートリッジ9k、9c、9m、9yには、それぞれのインクに係る各種の情報であるインク情報を格納するIDチップ(図示を省略)を備えている。
【0013】
また、このカートリッジ装填部7の前面側には、インクカートリッジ9を着脱するときに開く前カバー10を開閉可能に設けている。
さらに、インクカートリッジ9k、9c、9m、9yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成にしている。
この前カバー10は、閉じた状態で、カートリッジ装填部7内に装填されている複数のインクカートリッジ9k、9c、9m、9yを外部から視認することができるように、全体が透明又は半透明の部材で形成されている。
【0014】
なお、インクカートリッジ9k、9c、9m、9yを外部から視認することができれば、前カバー10の一部が透明又は半透明の部材で形成されている構成にすることもできる。
また、操作表示部8には、各色のインクカートリッジ9k、9c、9m、9yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ9k、9c、9m、9yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色(黒、シアン、マゼンタ、及びイエロー)の残量表示部11k、11c、11m、11y(以下、色を区別しないときは「残量表示部11」という。)を配置している。
【0015】
この残量表示部11は、例えば対応するインクカートリッジ9に収容されたインクの色と同じ色で発光するLEDで構成し、例えば、点滅でインクニアーエンドを、点灯でインクエンドを表示する。
また、残量表示部11の平面形状は液滴形状(涙形状)として、インクに関係する表示であることをユーザがイメージで認識できるようにするとよい。
【0016】
なお、操作表示部8には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。また、上記残量表示部11、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、及びキャンセルボタン14の近傍には、ユーザが認識できるようにそれぞれ「インク残量表示」、「電源」、「用紙送り/印刷再開」「キャンセル」の各文字も付記するとよい。
【0017】
また、操作表示部8の残量表示部の構成については上記実施形態に限るものではなく、例えば、各色の発光をする残量表示部に対応して更に各色の指標を付設するようにしてもよい。
【0018】
給紙トレイ2は、用紙を収納する(スタックする)トレイ本体と、このトレイ本体の上部を覆う透明又は半透明の部材からなるトレイカバーとを備えている。
そして、給紙トレイ2のトレイ本体の前面側壁部にはスタックされた用紙を視認することができるための覗き窓15を形成している。この覗き窓15は切り欠き部で形成するとよい。
また、給紙トレイ2のトレイカバーの横方向(図中では用紙送り方向と直交する左右方向)の中央部前面側には排紙トレイ3を下側から支えるトレイ支え部16を立ち上げて設けている。
【0019】
これによって、大きなサイズ、例えばA3サイズの用紙を使用できるようにした場合の排紙スタック性を向上することができる。
さらに、給紙トレイ2のトレイカバーの横方向(図中では用紙送り方向と直交する左右方向)の両端部には用紙送り方向に沿って、リブ中央部前面側にリブ17を形成している。
このように、排紙トレイ3の下側に位置する給紙トレイ2のトレイカバー上にリブ17を設けることによって、排紙トレイ3に排紙される用紙の両端部が下方向に撓んだ場合でも、リブ17によって横方向へのズレを規制することができる。
【0020】
次に、このプリンタの機構部の一例を説明する。
図3は、図2に示したプリンタの機構部を示す概略構成図であり、図4は、図2に示したプリンタの機構部の要部を示す平面図である。
このプリンタの機構部は、図4に示すフレーム20を構成する左右の側板20a、20bに横架したガイド部材であるガイドロッド21と図3に示すステー22とで、キャリッジ23を主走査方向に移動自在に図2に示した装置本体1に保持している。そのキャリッジ23を図示を省略した主走査モータとベルト機構等によって、図4の矢示X方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0021】
このキャリッジ23には、前述したように黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェットヘッドからなる記録ヘッド24をその複数のインク吐出口を主走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
その記録ヘッド24は、例えば、図4に示すように、黒(B)のインク滴を吐出する記録ヘッド24kと、シアン(C)のインク滴を吐出する記録ヘッド24cと、マゼンタ(M)のインク滴を吐出する記録ヘッド24mと、イエロー(Y)のインク滴を吐出する記録ヘッド24yとで構成されている。色を区別しないときは総称して「記録ヘッド24」という。
【0022】
記録ヘッド24を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものを使用できる。
【0023】
また、記録ヘッドの構成は上述した例に限られるものではなく、一つまたは複数の色のインク滴を吐出する一つまたは複数のノズル列を有する記録ヘッドを一つまたは複数用いて構成することができる。
この記録ヘッド24にはドライバICを搭載しており、図2乃至図4では図示を省略した制御部との間で、図4のハーネス(フレキシブルプリントケーブル)25を介してデータのやり取りが可能に接続されている。
【0024】
また、キャリッジ23には、記録ヘッド24に各色のインクを供給するための各色のヘッドタンク26を搭載している。
ヘッドタンク26は、例えば、図4に示すように、黒(B)のインクのヘッドタンク26kと、シアン(C)のインクのヘッドタンク26cと、マゼンタ(M)のインクのヘッドタンク26mと、イエロー(Y)のインクのヘッドタンク26yとの4つから構成されている。以下、色を区別しないときは総称して「ヘッドタンク26」という。
【0025】
この各色のヘッドタンク26にはそれぞれ、図4に示すように、各色のインク供給チューブ27を介して、前述したカートリッジ装填部7に装着されたインクカートリッジ9(9k、9c、9m、9y)から各色のインクが補充供給される。
なお、このカートリッジ装填部7にはインクカートリッジ9内のインクを送液するための供給ポンプユニット28が設けられている。また、インク供給チューブ27は這い回しの途中で、フレーム20を構成する後板20cにホルダ29を用いて固定保持されている。
さらに、そのインク供給チューブ27はキャリッジ23上でも、固定リブ30を用いて固定されている。
【0026】
一方、図3に示すように、給紙トレイ2の用紙積載部(昇降板)31上に積載した用紙Pを給紙するための給紙部として、矢示方向に回転して用紙積載部31から用紙Pを1枚ずつ給送する給紙コロ(半月コロ)32と、その給紙コロ32に対向する摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド33とを備え、その分離パッド33は給紙コロ32側に押付けられている。
【0027】
そして、この給紙部から1枚ずつ分離されて給紙される用紙Pを記録ヘッド24の下方側へ送り込むための搬送部として、用紙Pを静電吸着して記録ヘッド24に対向する位置で搬送するための搬送ベルト34と、給紙部からガイド35を介して送られる用紙Pを搬送ベルト34との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ36と、図3において略鉛直上方に送られる用紙Pを略90°方向転換させて、搬送ベルト34上に倣わせるための搬送ガイド37と、押さえ部材38で搬送ベルト34側に押付けられた先端加圧コロ39とを備えている。
【0028】
また、搬送ベルト34の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ40を備えている。
ここで、搬送ベルト34は、無端状ベルトであり、搬送ローラ41とテンションローラ42との間に掛け渡されて、搬送ローラ41が矢示方向に回転することにより、図4に矢示Yで示すベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動(以下「回動」と云う)するように構成している。
【0029】
この搬送ベルト34は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、ETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(例えば、中抵抗層、又はアース層)とを有している。
一方、図3に示す帯電ローラ40は、搬送ベルト34の表面を帯電させるための帯電手段であり、その搬送ベルト34の表層に接触して、搬送ベルト34の回動に従って連れ回り(従動回転)するように配置されており、搬送ベルト34に対する加圧力として軸の両端に所定の押圧力をかけている。
【0030】
また、搬送ローラ41はアースローラの役目も担っており、搬送ベルト34の中抵抗層(裏層)と接触しており、それを接地する。
また、搬送ベルト34の裏側には、記録ヘッド24による印刷領域に対応してガイド部材43を配置している。
このガイド部材43は、上面が搬送ベルト34を支持する2つのローラ(搬送ローラ41とテンションローラ42)に共通の外接線よりも記録ヘッド24側に突出している。
【0031】
これにより、搬送ベルト34は印刷領域ではガイド部材43の上面にて押し上げられてガイドされるので、高精度な平面性を維持される。
さらに、記録ヘッド24で記録された用紙Pを排紙するための排紙部として、搬送ベルト34から用紙Pを分離するための分離爪52と、排紙ローラ53及び排紙コロ54とを備え、排紙ローラ53の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0032】
ここで、排紙ローラ53と排紙コロ54との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
また、装置本体1の背面部には、両面給紙ユニット44が着脱自在に装着されている。
この両面給紙ユニット44は、両面印刷時に、搬送ベルト34の逆方向回転で戻される用紙を取り込んで反転させ、再度先端加圧コロ39と搬送ベルト34との間に給紙する機能を有する。
【0033】
また、この両面給紙ユニット44の上面には、手差しの用紙を給紙するための手差し給紙部45が設けられている。
一方、図4に示すように、キャリッジ23の走査方向の一方側(右側)の非印字領域には、記録ヘッド24のノズルの状態を維持し、回復するための図4の維持回復機構部46を配置している。
【0034】
この維持回復機構部46には、記録ヘッド24の各ノズル面をキャッピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)47a〜47d(区別しないときは「キャップ47」と総称する)と、そのノズル面を拭取る(ワイピングする)ためのブレード部材であるワイパーブレード48と、増粘したインクを排出するために、記録に寄与しないインク滴を吐出させる空吐出を行うときのインク滴を受ける空吐出受け49などを備えている。
【0035】
ここでは、キャップ47aを吸引及び保湿用キャップにし、他のキャップ47b〜47dは保湿用キャップのみにしている。
また、キャリッジ23の走査方向の他方側(図4では左側)の非印刷領域には、記録中などに増粘したインクを排出するために、記録に寄与しないインク滴を吐出させる空吐出を行うときのインク滴を受ける空吐出受け50を配置し、この空吐出受け50には記録ヘッド24のノズル配列方向に沿った開口部51を設けている。
【0036】
このように構成した実施形態のプリンタにおいては、図3に示した給紙トレイ2から用紙Pが1枚ずつ分離給紙され、同図中で略鉛直上方に給紙された用紙Pはガイド35で案内され、搬送ベルト34とカウンタローラ36との間に挟まれて搬送される。さらに、先端を搬送ガイド37で案内されて、先端加圧コロ39で搬送ベルト34に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0037】
このとき、図1によって後述する制御部によって、ACバイアス供給部から帯電ローラ40に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返す交番電圧が印加され、搬送ベルト34が交番する帯電電圧パターン、すなわち、回動方向である副走査方向に、プラスとマイナスの電荷が所定の幅で帯状に交互に生じたものとなる。
【0038】
このプラスとマイナスに交互に帯電した搬送ベルト34上に用紙Pが給紙されると、その用紙Pにも静電誘導によって、搬送ベルト34の帯電極性と反対極性のプラスとマイナスに交互に帯電が生じる。そのため、用紙Pが搬送ベルト34に静電引力によって吸着されると共に、相対的な位置ずれが生じることなく、その搬送ベルト34の回動によって用紙Pが副走査方向に正確に搬送される。
そこで、キャリッジ23を主走査方向へ移動させながら、画像信号に応じて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙Pにインク滴を吐出して1行分を記録し、その用紙Pを所定量搬送後、次の行の記録を行う。
【0039】
そして、記録終了信号又は用紙Pの後端が記録領域の副走査端に達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙Pを排紙トレイ3に排紙する。
また、印刷(記録)待機中はキャリッジ23は維持回復機構46側に移動されて、キャップ47で記録ヘッド24がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインクの乾燥によるインクの吐出不良を防止する。
【0040】
さらに、キャップ47で記録ヘッド24をキャッピングした状態で図示を省略した吸引ポンプによってノズルからインクを吸引(これを「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘したインクや気泡を排出する回復動作を行う。
また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド24の安定した吐出性能を維持する。
【0041】
次に、このプリンタの制御部の構成例を説明する。
図1は、図2〜図4によって説明したプリンタの制御部の構成例を示すブロック図である。
この制御部60は、この実施形態のプリンタの装置全体の制御を司るCPU61と、CPU61が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM62と、画像データ等を一時格納するRAM63と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)64と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC65を備えている。
【0042】
また、この制御部60は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置(あるいはデータ処理装置)とのデータ、信号の送受を行うためのホストインタフェース(I/F)部66と、記録ヘッド24を駆動するための駆動波形を生成する駆動波形生成部67と、記録ヘッド24を駆動制御するヘッドドライバ68と、主走査モータ55を駆動するための主走査モータ駆動部69と、副走査モータ56を駆動するための副走査モータ駆動部70と、帯電ローラ40に対してACバイアス電圧を供給するACバイアス供給部71と、各種のセンサ57からの検知信号などを入力するためのインプット・アウトプット(I/O)部72を備えている。
【0043】
さらに、後述するインク関連動作部58を駆動するインク関連動作制御部73を備えている。これらは全てCPUバス75によって接続され、相互にデータ及び信号のやり取りが可能である。
ここで、制御部60は、情報処理装置からの画像データを含む印刷データ(印字データ)等をケーブル或いはネットを介してホストI/F部66で受信する。
そして、CPU61は、ホストI/F部66に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC65によって必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ってヘッドドライバ68に画像データを転送する。
【0044】
なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM62にフォントデータを格納して行ってもよいし、情報処理装置側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしてもよい。
駆動波形生成部67は、駆動パルスのパターンデータをデジタルアナログ(D/A)変換するD/A変換器等で構成され、1つの駆動パルス及び複数の駆動パルスで構成される駆動波形をヘッドドライバ68に対して出力する。
【0045】
ヘッドドライバ68は、シリアルに入力される記録ヘッド24の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて駆動波形生成部67から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド24のアクチュエータ手段に印加してヘッドを駆動する。
【0046】
また、この制御部60には、図2及び図4に示したカートリッジ装填部7に装填するインクカートリッジ9のインク残量を検出するための残量センサ(センサ57に含まれる)からの検知信号が入力される。
そして、制御部60はインクカートリッジ9の残量センサの検知結果がインクニアーエンドになったときには残量表示部11を点滅させ、検知結果がインクエンドになったときには、前述したように、図2に示した残量表示部11を点灯させて、インクカートリッジ9の交換を促すようにしている。
【0047】
さらに、制御部60は、インク関連動作部58の動作を制御するインク関連動作制御部73を備えている。
この実施形態のプリンタでは、前述した供給ポンプユニット28、維持回復機構部46と、センサ57、CPU61、及びこのインク関連動作制御部73によって駆動制御装置を構成した場合の例を説明する。
【0048】
次に、このインク関連動作部58の構成について図5以降によって詳細に説明する。
図5は、インク関連動作部58の概略構成図である。
インク関連動作部58は、複数の動作手段である上記供給ポンプユニット28と維持回復機構部46をそれぞれ動作させる駆動源であるモータ80を備えている。
モータ80は、回転軸81にギア82が取付けられており、そのギア82を図中矢示D方向に回転させる。
【0049】
切替え部83は、切替え軸84の位置を図中矢示A方向に所定角度ずつ回転させて図中矢示83a〜83eの位置にそれぞれ切替えることにより、切替え部83の縁部の回転につれて回転部85をその切替え毎に図中矢示B方向に所定距離だけ回転移動させる。
この回転移動は、例えば、制御部60のCPU61がインク関連動作制御部73に指示することにより、インク関連動作制御部73がインク関連動作部58の切替え部83に対して実行するとよい。
【0050】
回転部85は、その表面に設けた歯がモータ80の側面に設けた歯と噛み合っており、上記所定距離の回転移動によって回転軸81及びギア82を含むモータ80の全体を図中矢示C方向(図中の上方向)に段階的に移動させる。
この移動により、モータ80の回転軸81のギア82の噛み合せ先をギア90,86〜89に移動させることができる。
【0051】
ギア86〜89は、ギア82の回転動作につれて図中矢示E方向にそれぞれ回転することによって上記供給ポンプユニット28に対してマゼンタのインクカートリッジ9m、イエローのインクカートリッジ9y、シアンのインクカートリッジ9c、黒のインクカートリッジ9kのインク供給動作をそれぞれ実行させる。
また、ギア90は、ギア82の回転動作につれて図中矢示E方向に回転することによって上記回転することによって維持回復機構部46に動作を実行させる。
【0052】
図中では、切替え軸84が図中矢示83aの位置にあるときには、ギア82の噛み合せ先がギア89であり、この状態でモータ80を回転させると、その回転動作によってギア82が図中矢示D方向に回転し、その駆動力の伝達先であるギア89が回転し、上記供給ポンプユニット28に対してマゼンタのインクカートリッジ9mのインク供給を行わせる。
【0053】
また、切替え軸84を図中矢示83bの位置に移動させると、切替え部83の図中矢示A方向の所定角度の移動につれて回転部85も図中矢示B方向に所定距離だけ移動し、その移動分だけモータ80の回転軸81を図中矢示C方向に押上げ、ギア82の噛み合せ先がギア89からギア88に切替えられる。
そして、その状態でモータ80を回転させると、その回転動作によってギア82が図中矢示D方向に回転することにより、その駆動力の伝達先であるギア88が回転し、上記供給ポンプユニット28に対してイエローのインクカートリッジ9yのインク供給を行わせる。
【0054】
また、切替え軸84を図中矢示83cの位置に移動させると、上述と同様にしてギア82の噛み合せ先がギア88からギア87に切替えられ、その状態でモータ80を回転させると、その駆動力の伝達先であるギア87が回転し、上記供給ポンプユニット28に対してシアンのインクカートリッジ9cのインク供給を行わせる。
【0055】
さらに、切替え軸84を図中矢示83dの位置に移動させると、上述と同様にしてギア82の噛み合せ先がギア87からギア86に切替えられ、その状態でモータ80を回転させると、その駆動力の伝達先であるギア86が回転し、上記供給ポンプユニット28に対して黒のインクカートリッジ9kのインク供給を行わせる。
さらにまた、上述と同様にして切替え軸84を図中矢示83eの位置に移動させると、ギア82の噛み合せ先がギア86からギア90に切替えられ、モータ80の回転によって上記維持回復機構部46を動作させる。
【0056】
すなわち、上記供給ポンプユニット28と維持回復機構部46が複数の動作手段に相当し、上記モータ80が上記各動作手段の動作の駆動源に相当し、上記切替え部83、回転部85、回転軸81、及びギア82が上記駆動源の駆動力の伝達先を上記各動作手段のうちで動作させる動作手段に切替える切替え手段の機能を果す。
【0057】
次に、上記モータ80の回転動作の制御について説明する。
上記制御部60のCPU61は、インク関連動作部58のモータ80の回転動作の制御を行う際、例えば、NVRAM64に予め記憶されたモータ駆動プロファイルに基いてインク関連動作制御部73に制御信号を送り、インク関連動作制御部73はその制御信号に応じてモータ80の回転動作を制御する。
【0058】
図6は、モータ駆動プロファイルに基づくモータの回転速度の変化の一例を示す説明図である。
図1のCPU61は、モータ駆動プロファイルに基いてインク関連動作制御部73にモータ80の回転速度をPID制御させる。
このPID制御では、図6に示すように、まず、回転開始から時間t1までは速度を図中Laで示すように加速し、時間t1で所定の速度まで達したら時間t2まで等速にし、時間t2から減速させるという動きで回転動作させる。
【0059】
このように、PID制御では上述のようにモータ80の回転を制御することにより、インク供給と維持回復動作の振動を抑えてモータ80の回転動作による動作の安定性を保つようにしている。
ところが、モータ80の動作速度に上記加速度を加えることによってインク供給と維持回復動作にギアの回転動作等による振動が発生し、モータ80の回転動作による動作が不安定になることがある。
【0060】
図7は、モータの加速度の異なる変化の一例を示す図である。
図7中にLaで示すように加速度の傾きが小さい場合、インク供給と維持回復動作にギアの回転動作等による振動は小さく、モータ80の回転動作によるインク供給と維持回復動作は安定する。
一方、図7中にLa′で示すように加速度の傾きが大きくすると、インク供給と維持回復動作にギアの回転動作等による振動が大きくなり、モータ80の回転動作によるインク供給と維持回復動作は不安定になる。
【0061】
例えば、図5のギア82の噛み合せ先をギア89からギア88に切替えた直後は、ギア89とギア88の噛み合いが不安定な状態である場合がある。
このような場合、モータ80の回転速度に大きな加速度を加えて回転動作させると、ギア89とギア88がうまく噛み合わないまま互いに回転してしまい、異常動作となってしまうことがある。
一方、小さい加速度であれば動作は安定するが、加速に時間がかかる分、インク供給と維持回復動作に時間を要してしまう。
【0062】
そこで、この実施形態のプリンタでは、インク供給と維持回復動作のためのモータの回転動作を次のようにして制御することにより、動作部を安定して動作させる場合に不必要に低速で動作してしまうことのないようにしている。
この制御のため、図1のセンサ57は、駆動源であるモータ80によって各動作手段である供給ポンプユニット28と維持回復機構部46を駆動させたときに正常に動作終了したことを検出する正常動作検出手段の機能を果す。
【0063】
このセンサ57における正常動作検出手段の機能については、例えば、図5に示したギア90,86〜89のそれぞれの回転数を計測し、予め正常動作時にインクタンクからインクカートリッジへの単位時間あたりのインク供給量を計測し、インク供給時に上記単位時間あたりのインク供給量を満たす場合に正常に動作を終了したことを検出するようにするとよい。
【0064】
さらに、図1のCPU61は、モータ80の動作実施回数(駆動源の「動作回数」に相当する)とセンサ57によって正常に動作終了したことが検出された動作OK回数(「正常動作終了回数」に相当する)を計測する計測手段の機能を果す。
また、CPU61は、上記計測手段によって計測された動作OK回数を同じく計測された動作実施回数で除した値と予め設定された閾値とを比較し、その比較結果に基いてモータ80の動作速度を制御する制御手段の機能を果す。
【0065】
さらに、上記制御では、上記動作OK回数を上記動作実施回数で除した値が予め設定した正常判定閾値以上の場合、モータ80の動作速度に所定の調整加速度を加算する動作速度の制御と、上記動作OK回数を上記動作実施回数で除した値が予め設定した異常判定閾値以下の場合、モータ80の動作速度から所定の調整加速度を減算する動作速度の制御を含む。
【0066】
この制御では、図1のNVRAM64に、次のようなモータ駆動プロファイルのテーブルを予め格納する。
図8は、図1のNVRAM64に予め記憶させたモータ駆動プロファイルのテーブルのデータ内容の一例を示す図である。
このテーブルには、モータ80を回転させるときの加速度の初期値である15000mm/sと、判定基準回数200(回)と、正常判定閾値0.8と、異常判定閾値0.6と、調整加速度1000mm/sが記憶されている。
【0067】
また、動作実施回数と動作OK回数の各計測結果を格納するエリアを有し、この各エリアには、CPU61がそれぞれの回数を計測する度に値が加算され、その内容が更新される。
ここでは、動作実施回数と動作OK回数について、それぞれ100(回)と90(回)が格納された場合を図示している。
【0068】
図9は、図1に示したCPU61によるインク関連動作部の動作速度を制御する処理を示すフローチャート図である。
ステップ(図中「S」で示す)1では、図1のインク関連動作制御部73を制御してインク関連動作部58を駆動させ、ステップ2へ進む。
ステップ2では、図1のNVRAM64のテーブルの動作実施回数を加算し、ステップ3へ進む。
例えば、図8の動作実施回数のエリアに記憶されている値に1を加算する。
【0069】
ステップ3では、図1のセンサ57からの信号に基いて正常動作終了を検出したか否かを判断する。
ステップ3の判断で、正常動作終了を検出した場合(Yの場合)はステップ4へ進み、正常動作終了を検出しなかった場合(Nの場合)はステップ5へ進む。
ステップ4では、図1のNVRAM64のテーブルの正常動作終了回数を加算し、ステップ5へ進む。
例えば、図8の動作OK回数のエリアに記憶されている値に1を加算する。
【0070】
ステップ5では、図1のNVRAM64のテーブルの判定基準回数と動作実施回数を参照し、動作実施回数が判定基準回数以上か否かを判断する。
例えば、図8の動作実施回数が判定基準回数200以上か否かを判断する。
ステップ5の判断で、動作実施回数が判定基準回数以上の場合(Yの場合)はステップ6へ進み、動作実施回数が判定基準回数以上ではない場合(Nの場合)はこの処理を終了する。
【0071】
ステップ6では、図1のNVRAM64のテーブルの正常判定閾値と動作OK回数と動作実施回数を参照し、(動作OK回数/動作実施回数)の値を算出し、その値が正常判定閾値以上か否かを判断する。
例えば、(動作OK回数/動作実施回数)の値が図8の正常判定閾値0.8以上か否かを判断する。
ステップ6の判断で、(動作OK回数/動作実施回数)の値が正常判定閾値以上の場合(Yの場合)はステップ7へ進み、(動作OK回数/動作実施回数)の値が正常判定閾値以上ではない場合(Nの場合)はステップ8へ進む。
【0072】
ステップ7では、図1のNVRAM64のテーブルの加速度に調整加速度を加算して新たな加速度にし、この処理を終了する。
例えば、図8の加速度15000mm/sに調整加速度1000mm/sを加算した新たな加速度16000mm/sに変更する。
この場合、次に図1のインク関連動作部58を動作させる場合、上記新たな加速度(調整加速度を加算した後の加速度)を用いて図5のモータ80の回転速度のPID制御を実行する。
【0073】
ステップ8では、図1のNVRAM64のテーブルの異常判定閾値と動作OK回数と動作実施回数を参照し、(動作OK回数/動作実施回数)の値を算出し、その値が異常判定閾値以下か否かを判断する。
例えば、(動作OK回数/動作実施回数)の値が図8の異常判定閾値0.6以下か否かを判断する。
ステップ8の判断で、(動作OK回数/動作実施回数)の値が異常判定閾値以下の場合(Yの場合)はステップ9へ進み、(動作OK回数/動作実施回数)の値が異常判定閾値以上ではない場合(Nの場合)はこの処理を終了する。
【0074】
ステップ9では、図1のNVRAM64のテーブルの加速度から調整加速度を減算して新たな加速度にし、この処理を終了する。
例えば、図8の加速度15000mm/sから調整加速度1000mm/sを減算した新たな加速度14000mm/sに変更する。
この場合、次に図1のインク関連動作部58を動作させる場合、上記新たな加速度(調整加速度を減算した後の加速度)を用いて図5のモータ80の回転速度のPID制御を実行する。
【0075】
なお、上記正常判定閾値と上記異常判定閾値は分かり易い値の例を示したが、実際に使用する値の場合は、例えば、0.9999などの限りなく0に近い値にすると上記判定の精度を高めることができる。
また、上述の処理において、加速度を調整した後は、動作実施回数と動作OK回数をリセットするようにし、動作実施回数が判定基準回数200を超える度に加速度を調整するようにしてもよい。
【0076】
このようにして、供給ポンプユニット28又は維持回復機構部46の動作実施回数あたりの動作OK回数が閾値以上の場合、モータ80の回転速度を加速してもモータ80の回転動作によるインク供給と維持回復動作は不安定になる恐れがないので、モータ80の回転動作を速くしてインク供給又は維持回復動作の不具合を心配することなくインク供給又は維持回復動作を素早く実行することができる。
【0077】
次に、インク供給と維持回復動作のためのモータの回転動作を複数の段階に分けて制御するようにしてもよい。
この制御の場合、図1のセンサ57は、モータ80によって供給ポンプユニット28と維持回復機構部46を駆動させたときに正常に動作を開始したことを検出する動作正常開始検出手段の機能も果す。
【0078】
このセンサ57における動作正常開始検出手段の機能については、例えば、図5に示したギア90,86〜89のそれぞれの回転数を計測し、予め正常動作時に計測した回転数を満たす場合に正常に動作を開始したことを検出するようにするとよい。
また、図1のCPU61は、センサ57によって正常に動作を開始したことを検出するまでは上記動作速度の制御をし、正常に動作を開始したことを検出した場合、所定の動作速度に移行させる手段の機能も果す。
【0079】
例えば、図5のギア82の噛み合せ先をギア89からギア88に切替えた直後、ギア89とギア88の噛み合いが不安定な状態である場合、モータ80を大きい加速度で回転動作させると、ギア89とギア88がうまく噛み合わないまま互いに回転してしまい、異常動作となってしまうことがある。
そこで、ギア89とギア88が噛み合うまで駆動する第1段の加速度と、ギア89とギア88が噛み合って正常に動作したことを検出したタイミングで切替える第2段の加速度とに分けて制御するとよい。
【0080】
図10は、モータ駆動プロファイルに基いて動作速度を制御するときの速度変化の他の例を示す図である。
図1に示したCPU61は、図5のモータ80側のギア82が噛み合せ先のギア90,86〜89のいずれかと噛み合うまで駆動する第1段の加速度として、上述した加速度の調整によって実施する。
【0081】
例えば、図10中のLdで示す加速度の値は、加速度に調整加速度を加算した後の加速度で動作させた場合を示し、図10中のLd′で示す加速度の値は、加速度から調整加速度を減算した後の加速度で動作させた場合を示している。
そして、ギア82が噛み合せ先のギア86〜90のいずれかと噛み合って正常に動作したことを検出したタイミングで切替える第2段の加速度では、図中のLeとLfでそれぞれ示すように同じ加速度で動作させる。
【0082】
このようにして、2つのギアが噛み合うまでは加速度を調整してインク供給と維持回復動作に伴う振動を抑え、2つのギアが噛み合ったら調整加速度を加算あるいは減算した場合でも加速度を所定値にして動作速度を高めることができる。
なお、上記第2段の加速度を、ギアが噛み合うまで十分に駆動したタイミングで切替えるようにしてもよい。
【0083】
次に、この実施形態のプリンタにおいて、インク供給と維持回復動作のためのモータの回転動作の他の制御例を説明する。
上述の制御では、例えば、黒、シアン、マゼンダ、イエローのインクの各ヘッドタンク26k〜26yによるインク供給動作と維持回復機構部46の動作の速度の調整をそれぞれ行う場合を示したが、1つの動作部の動作速度を調整した場合、それと同じ調整を他の動作部にも適用するようにすれば全ての動作部の動作の安定化を図ると共に動作速度を速めることもできる。
【0084】
この制御のため、図1のCPU61は、いずれかの動作手段に上記動作速度の制御をした場合、その動作手段の次に動作させる動作手段に対しても上記動作速度の制御を実行する手段の機能も果す。
図11は、図1のNVRAM64に予め記憶させたモータ駆動プロファイルのテーブルのデータ内容の他の例を示す図である。
【0085】
この制御では、図1のNVRAM64に、図11に示すようなモータ駆動プロファイルのテーブルを予め格納する。
このテーブルには、黒、シアン、マゼンダ、イエローのインクの各ヘッドタンク26k〜26yによるインク供給動作と、維持回復機構部46の動作の速度の調整用に、それぞれのテーブルを格納する。
図11では、マゼンダとイエローのインクの各ヘッドタンク26m、26yによるインク供給動作の速度の調整用のテーブル例を示している。
【0086】
図11の(a)は、マゼンダのインクのヘッドタンク26mによるインク供給動作の速度の調整用のテーブル例であり、モータ80を回転させるときの加速度の初期値である15000mm/sと、判定基準回数200(回)と、正常判定閾値0.8と、異常判定閾値0.6と、調整加速度1000mm/sが記憶されている。
また、テーブル中には、動作実施回数と動作OK回数の各計測結果を格納するエリアを有し、この各エリアには、CPU61がそれぞれの回数を計測する度に値が加算され、その内容が更新される。
ここでは、それぞれ100(回)と90(回)が格納された場合を図示している。
【0087】
図11の(b)は、イエローのインクのヘッドタンク26yによるインク供給動作の速度の調整用のテーブル例であり、マゼンダの場合とは加速度の初期値が10000mm/sであることと、動作実施回数と動作OK回数の各計測結果を格納するエリア内の値が異なることがあるという点が異なる。
なお、図11の(b)では、動作実施回数と動作OK回数の値は図11の(a)と同じ場合を示している。
【0088】
図12は、図1に示したCPU61によるインク関連動作部の動作速度を制御する他の処理例を示すフローチャート図である。
ステップ(図中「S」で示す)11では、図1のインク関連動作制御部73を制御してインク関連動作部58のマゼンダのインク供給を駆動させ、ステップ12へ進む。
ステップ12では、図1のNVRAM64のマゼンダの動作実施回数を加算し、ステップ13へ進む。
例えば、図11の(a)のマゼンダのテーブルの動作実施回数のエリアに記憶されている値に1を加算する。
【0089】
ステップ13では、図1のセンサ57からの信号に基いてマゼンダのインク供給の正常動作終了を検出したか否かを判断する。
ステップ13の判断で、マゼンダのインク供給の正常動作終了を検出した場合(Yの場合)はステップ14へ進み、マゼンダのインク供給の正常動作終了を検出しなかった場合(Nの場合)はステップ15へ進む。
【0090】
ステップ14では、図1のNVRAM64のテーブルのマゼンダの正常動作終了回数を加算し、ステップ5へ進む。
例えば、図11の(a)のマゼンダのテーブルの動作OK回数のエリアに記憶されている値に1を加算する。
【0091】
ステップ15では、図1のNVRAM64のマゼンダのテーブルの判定基準回数と動作実施回数を参照し、マゼンダの動作実施回数がマゼンダの判定基準回数以上か否かを判断する。
例えば、図11の(a)のマゼンダのテーブルの動作実施回数が判定基準回数200以上か否かを判断する。
【0092】
ステップ15の判断で、マゼンダの動作実施回数がマゼンダの判定基準回数以上の場合(Yの場合)はステップ16へ進み、マゼンダの動作実施回数がマゼンダの判定基準回数以上ではない場合(Nの場合)はこの処理を終了する。
ステップ16では、図1のNVRAM64のマゼンダのテーブルの正常判定閾値と動作OK回数と動作実施回数を参照し、(マゼンダの動作OK回数/マゼンダの動作実施回数)の値を算出し、その値がマゼンダの正常判定閾値以上か否かを判断する。
例えば、(マゼンダの動作OK回数/マゼンダの動作実施回数)の値が図11の(a)のマゼンダの正常判定閾値0.8以上か否かを判断する。
【0093】
ステップ16の判断で、(マゼンダの動作OK回数/マゼンダの動作実施回数)の値がマゼンダの正常判定閾値以上の場合(Yの場合)はステップ17へ進み、(マゼンダの動作OK回数/マゼンダの動作実施回数)の値がマゼンダの正常判定閾値以上ではない場合(Nの場合)はステップ19へ進む。
【0094】
ステップ17では、図1のNVRAM64のマゼンダのテーブルの加速度に調整加速度を加算して新たな加速度にし、ステップ18へ進む。
例えば、図11の(a)のマゼンダの加速度15000mm/sに調整加速度1000mm/sを加算した新たな加速度16000mm/sに変更する。
【0095】
ステップ18では、図1のNVRAM64のイエローのテーブルの加速度に調整加速度を加算して新たな加速度にし、この処理を終了する。
例えば、図11の(b)のイエローの加速度10000mm/sに調整加速度1000mm/sを加算した新たな加速度11000mm/sに変更する。
この場合、次に図1のインク関連動作部58を動作させる場合、マゼンダとイエローのインクの供給動作のため、上記新たな加速度(調整加速度を加算した後の加速度)を用いて図5のモータ80の回転速度のPID制御を実行する。
【0096】
ステップ19では、図1のNVRAM64のマゼンダのテーブルの異常判定閾値と動作OK回数と動作実施回数を参照し、(マゼンダの動作OK回数/マゼンダの動作実施回数)の値を算出し、その値がマゼンダの異常判定閾値以下か否かを判断する。
例えば、(マゼンダの動作OK回数/マゼンダの動作実施回数)の値が図11の(a)のマゼンダの異常判定閾値0.6以下か否かを判断する。
【0097】
ステップ19の判断で、(マゼンダの動作OK回数/マゼンダの動作実施回数)の値がマゼンダの異常判定閾値以下の場合(Yの場合)はステップ20へ進み、(マゼンダの動作OK回数/マゼンダの動作実施回数)の値がマゼンダの異常判定閾値以下ではない場合(Nの場合)はこの処理を終了する。
【0098】
ステップ20では、図1のNVRAM64のマゼンダのテーブルの加速度から調整加速度を減算して新たな加速度にし、ステップ21へ進む。
例えば、図11の(a)のマゼンダの加速度15000mm/sから調整加速度1000mm/sを減算した新たな加速度14000mm/sに変更する。
【0099】
ステップ21では、図1のNVRAM64のイエローのテーブルの加速度から調整加速度を減算して新たな加速度にし、この処理を終了する。
例えば、図11の(b)のイエローの加速度10000mm/sから調整加速度1000mm/sを減算した新たな加速度9000mm/sに変更する。
この場合、次に図1のインク関連動作部58を動作させる場合、マゼンダとイエローのインクの供給動作のため、上記新たな加速度(調整加速度を減算した後の加速度)を用いて図5のモータ80の回転速度のPID制御を実行する。
【0100】
なお、上記正常判定閾値と上記異常判定閾値は分かり易い値の例を示したが、実際に使用する値の場合は、例えば、0.9999などの限りなく0に近い値にすると上記判定の精度を高めることができる。
また、上述の処理において、加速度を調整した後は、動作実施回数と動作OK回数をリセットするようにし、動作実施回数が判定基準回数200を超える度に加速度を調整するようにしてもよい。
【0101】
このようにして、供給ポンプユニット28又は維持回復機構部46の動作実施回数あたりの動作OK回数が閾値以上の場合、モータ80の回転速度を加速してもモータ80の回転動作によるインク供給と維持回復動作は不安定になる恐れがないので、モータ80の回転動作を速くしてインク供給又は維持回復動作の不具合を心配することなくインク供給又は維持回復動作を素早く実行することができる。
【0102】
なお、上述の実施例では、マゼンダとイエローについての速度調整の場合を説明したが、その他の組合わせでも上述と同様にして実施できる。
また、マゼンダとイエローのみでなく、その他の黒とシアンと維持回復機構部46の速度調整もイエローと同様に実施することもできる。
【0103】
この実施形態のプリンタは、モータの回転駆動で異常を検出した頻度を記録し、一定期間内での閾値を超えた場合は加速度を段階的に下げていき、逆に一定期間異常を検出しなかったら上げるので、異常を検出し難くすると共に、モータの回転駆動による動作をできるだけ早くさせることができる。
したがって、プリンタ内でモータの回転駆動で動作する動作部を安定して動作させる場合に不必要に低速で動作してしまうことのないようにすることができる。
【0104】
なお、上述の実施例では、モータ駆動によってインクの供給先と維持回復機構部46のいずれかの機構を動作させる場合について説明したが、その他にも、例えば、印刷を行う際に記録ヘッドを主走査方向に移動させる機構と、用紙を副走査方向に搬送する機構とを駆動させるための駆動源を1つのモータで実施する場合にも上述と同様にして実施することができる。
【0105】
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、各部の具体的な構成、処理の内容、データの形式等は、実施形態で説明したものに限るものではない。
また、上述の実施形態では、この発明をインクジェットプリンタに適用した例について説明した。
しかし、この発明は、電子写真方式等の他の方式のプリンタ、及びファクシミリ装置、スキャナ装置、複写機、並びにそれらの機能を備えた複合等の画像形成装置にも適用可能である。
また、モータ駆動によって複数の機構を動作させる装置全般にも適用することができる。
さらに、以上説明してきた実施形態の構成は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0106】
1:プリンタの装置本体 2:給紙トレイ 3:排紙トレイ 4:上カバー 5:窓部材 6:装置本体の前面 7:カートリッジ装填部 8:操作表示部 9:インクカートリッジ 9k:黒のインクカートリッジ 9c:シアンのインクカートリッジ 9m:マゼンタのインクカートリッジ 9y:イエローのインクカートリッジ 10:カートリッジ装填部の前カバー 11:残量表示部 11k:黒の残量表示部 11c:シアンの残量表示部 11m:マゼンタの残量表示部 11y:イエローの残量表示部 12:電源ボタン 13:用紙送り/印刷再開ボタン 14:キャンセルボタン 15:覗き窓 16:トレイ支え部 17:リブ 20:フレーム 20a:フレームの左側板 20b:フレームの右側板 20c:フレームの後板 21:ガイドロッド 22:ステー 23:キャリッジ 24:記録ヘッド 24k:黒のインク滴を吐出する記録ヘッド 24c:シアンのインク滴を吐出する記録ヘッド 24m:マゼンタのインク滴を吐出する記録ヘッド 24y:イエローのインク滴を吐出する記録ヘッド 25:ハーネス 26:ヘッドタンク 26k:黒のインクのヘッドタンク 26c:シアンのインクのヘッドタンク 26m:マゼンタのインクのヘッドタンク 26y:イエローのインクのヘッドタンク 27:インク供給チューブ 28:供給ポンプユニット 29:ホルダ 30:固定リブ 31:用紙積載部 32:給紙コロ 33:分離パッド 34:搬送ベルト 35:ガイド 36:カウンタローラ 37:搬送ガイド 38:押さえ部材 39:先端加圧コロ 40:帯電ローラ 41:搬送ローラ 42:テンションローラ 43:ガイド部材 44:両面給紙ユニット 45:手差し給紙部 46:維持回復機構部(サブシステム) 47:キャップ 47a〜47d:キャップ部材 48:ワイパーブレード 49、50:空吐出受け 51:空吐出受けの開口部 52:分離爪 53:排紙ローラ 54:排紙コロ 55:主走査モータ 56:副走査モータ 57:センサ 58:インク関連動作部 60:制御部 61:CPU 62:ROM 63:RAM 64:不揮発性メモリ(NVRAM) 65:ASIC 66:ホストインタフェース(I/F)部 67:駆動波形生成部 68:ヘッドドライバ 69:主走査モータ駆動部 70:副走査モータ駆動部 71:ACバイアス供給部 72:インプットアウトプット(I/O)部 73:インク関連動作制御部 75:CPUバス 80:モータ 81:回転軸 82、86〜89、90:ギア 83:切替え部 84:切替え軸 85:回転部 P:用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特開2006−67750号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の動作手段と、
前記各動作手段の動作の駆動源と、
前記駆動源の駆動力の伝達先を前記各動作手段のうちで動作させる動作手段に切替える切替え手段と、
前記駆動源によって前記各動作手段を駆動させたときに正常に動作終了したことを検出する正常動作検出手段と、
前記駆動源の動作回数と前記正常動作検出手段によって正常に動作終了したことが検出された正常動作終了回数とを計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された前記正常動作終了回数を前記動作回数で除した値と予め設定された閾値とを比較し、該比較結果に基いて前記駆動源の動作速度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記正常動作終了回数を前記動作回数で除した値が前記閾値以上の場合、前記駆動源の動作速度に所定の加速度を加算して前記動作速度を制御する手段を有することを特徴とする請求項1記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記正常動作終了回数を前記動作回数で除した値が前記閾値以下の場合、前記駆動源の動作速度から所定の加速度を減算して前記動作速度を制御する手段を有することを特徴とする請求項1記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記駆動源によって前記各動作手段を駆動させたときに正常に動作を開始したことを検出する動作正常開始検出手段を設け、
前記制御手段は、前記動作正常開始検出手段によって正常に動作を開始したことを検出するまでは前記動作速度の制御をし、前記動作正常開始検出手段によって正常に動作を開始したことを検出した場合、所定の動作速度に移行させる手段を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記いずれかの動作手段に前記動作速度の制御をした場合、該動作手段の次に動作させる動作手段に対しても前記動作速度の制御を実行する手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
複数の動作手段を有する画像形成装置であって、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の駆動制御装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate