説明

駆動系ダイナミックダンパー

【課題】とくに小型の車体の場合に問題のない組立後の長寿命を示すように組立て及び配列がなされる駆動系ダイナミックダンパーを提供する。
【解決手段】振動リング及びハブを含む、回転軸に配置するための駆動系ダイナミックダンパーであり、前記ハブがエラストマーを用いて前記振動リングに結合され、前記振動リングが前記ハブを収容して取り囲み、前記振動リング及び前記ハブが回転軸に対して同心的に配置される駆動系ダイナミックダンパーであって、前記ハブがマルチアーム型フランジの突出部を受け入れるための受入れ部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動リング及びハブを有し、ハブがエラストマーを介して振動リングに結合され、振動リングがハブを収容して取り囲み、振動リング及びハブが回転軸に対して同心的に配置される構造の、回転軸に装着されるための駆動系ダイナミックダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等車両の後輪駆動あるいは四輪駆動における回転軸の振動および/または騒音を遮断するため、防振ゴム(カップリングゴム)を備えるカップリングが使用されている。しかしながら回転軸の所定のセグメントは、伝動機構中における回転不同調形成性(Drehungleichfoermigkeiten)によって共振を引き起こす場合があり、このような場合には、振動および/または騒音の発生、またそれゆえ搭乗者にとっての快適性の損失を招く可能性がある。このため、追加的にカップリングに対してしばしば、ねじれ性(ねじれ方向吸振特性)を備える駆動系ダイナミックダンパーが使用されている。
【0003】
上記背景のため、ドイツ特許出願公開第102004022862A1号明細書(特許文献1)並びにドイツ特許第102007053316B3号明細書(特許文献2)により、回転軸に配置可能な、中心近くにエラストマーを有する駆動系ダイナミックダンパーが提案されている。
【0004】
しかしながら、この駆動系ダイナミックダンパーの場合、ハブがトルク伝達の力の流れ(Drehmomentenkraftfluss)の中にあるという点で不利である。これは具体的には、ハブがカップリングゴム及び3アーム又は4アーム型フランジと一緒にねじ(組立ボルト)止めされることに由来する。深絞り加工品であるハブはその強度が制限されているため、たびたびの動力学的負荷作用時に、より大きな設定挙動(Setzverhalten)を示す。そしてこのとき組立ボルトの結合が緩む。これはボルトの破損を招くことにもなる。
【0005】
また、ドイツ特許第102005055800B4号明細書(特許文献3)により、負荷作用の不均衡を補償するための駆動系ダイナミックダンパー及びセンタリングスリーブの組み合わせよりなるユニットが提案されている。駆動系ダイナミックダンパー及びセンタリングスリーブよりなるこのユニットは、確かにトルク伝達の力の流れの中に殆んどないが、別の欠点を示すことになる。すなわちメンテナンスサービスにおいて自動車整備工場にて、故障した駆動系ダイナミックダンパーを交換する場合、センタリングスリーブを一緒に取り外さなければならない。したがって駆動系ダイナミックダンパー及びセンタリングスリーブよりなる新しいユニットを組み立てた後、駆動系ダイナミックダンパーの不均衡が比較的大きくなる場合があり、これにより振動や騒音が発生する可能性がある。更にはこのコンセプトの場合、振動リングがカップリングを取り囲むため、望ましくない部品体積率(Bauraumverhaeltnisse)が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102004022862A1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第102007053316B3号明細書
【特許文献3】ドイツ特許第102005055800B4号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、本発明は、冒頭に挙げた技術の駆動系ダイナミックダンパーが、とくに小型の車体の場合に問題のない組立後の長寿命を示すようにこれ(組立て及び配列)を実施し(auszugestalten)、更に発展させる(weiterzubilden)という課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1による駆動系ダイナミックダンパーは、振動リング及びハブを含む、回転軸に配置するための駆動系ダイナミックダンパーであり、前記ハブがエラストマーを用いて前記振動リングに結合され、前記振動リングが前記ハブを収容して取り囲み、前記振動リング及び前記ハブが回転軸に対して同心的に配置される駆動系ダイナミックダンパーであって、前記ハブがマルチアーム型フランジの突出部を受け入れるための受入れ部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2による駆動系ダイナミックダンパーは、上記した請求項1に記載の駆動系ダイナミックダンパーにおいて、前記受入れ部が、前記振動リングと前記エラストマーを通るラジアル面に対して軸方向にオフセットされるラジアル面に少なくとも部分的に入っていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3による駆動系ダイナミックダンパーは、上記した請求項1又は2に記載の駆動系ダイナミックダンパーにおいて、前記受入れ部が、圧入嵌合により組み立てるための円筒状の中空管として形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4による駆動系ダイナミックダンパーは、上記した請求項1又は2に記載の駆動系ダイナミックダンパーにおいて、前記受入れ部が、安全ナットをねじ止め可能な突出部を導通させるための貫通孔として形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5による駆動系ダイナミックダンパーは、上記した請求項1乃至4のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパーにおいて、前記ハブが、その外縁部にボルトを通すための第一のクリアランスを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6による駆動系ダイナミックダンパーは、上記した請求項1乃至5のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパーにおいて、前記振動リングが、径方向に延在するホイール面を有し、前記ホイール面中に、ボルトを通すための通路が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7による駆動系ダイナミックダンパーは、上記した請求項1乃至6のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパーにおいて、前記振動リングが、径方向に延在するホイール面を有し、前記ホイール面中に、ボルトを通すための第二のクリアランスが設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8による駆動系ダイナミックダンパーは、上記した請求項1乃至7のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパーにおいて、前記振動リング中に、第三のクリアランス及び第四のクリアランスを有する圧入リングが収容されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9による駆動系ダイナミックダンパーは、上記した請求項1乃至8のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパーにおいて、前記ハブ及び前記振動リングが、深絞り成形された薄鋼板で製造されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項10による駆動系ダイナミックダンパーは、上記した請求項1乃至9のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパーにおいて、前記ハブが、3つ又は4つのフランジアームを有するダンパーフランジであり、前記エラストマーが、前記フランジアーム間の対向位置に配置されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項11による駆動系ダイナミックダンパー及びマルチアーム型フランジの配列構造は、前記請求項1乃至10のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパーと、円筒状の突出部を有し前記駆動系ダイナミックダンパーの受入れ部中に収容されるマルチアーム型フランジとを含み、前記マルチアーム型フランジがカップリングに連結され、前記カップリングに中央通路が形成され、前記中央通路中に前記突出部が延在している配置を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項12による配列構造は、上記した請求項11に記載の駆動系ダイナミックダンパー及びマルチアーム型フランジの配列構造において、前記突出部が圧入嵌合によって収容されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項13による配列構造は、上記した請求項11に記載の配列構造において、前記突出部上に安全ナットがねじ止めされることを特徴とする。
【0021】
更にまた、本発明の請求項14による配列構造は、上記した請求項11乃至13のいずれか一つに記載の配列構造において、前記マルチアーム型フランジ中にセンタリングスリーブが収容されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上述の課題は、請求項1の特徴を有する駆動系ダイナミックダンパーによって解決される。
【0023】
それによれば、ハブが、マルチアーム型フランジの突出部を受け入れるための受入れ部(受容部)を有しており、この受入れ部は多くの場合、回転軸の方向に延び、そして回転軸に対して同心的に配置される。この構造によりハブはマルチアーム型フランジ及びこれに組み付けられるセンタリングスリーブと別体とされ、これらに対して分解可能に組み立てられる。
【0024】
また本発明による構造の場合、ハブはマルチアーム型フランジに保持されて、トルク伝達の力の流れの中に殆んど存在しないことになり、具体的にはハブがトルク伝達のための回転軸の力の流れの中に殆んどないことになる(ハブがその受入れ部をもってマルチアーム型フランジの突出部によって保持される構造であってねじ止めされるものではないため、ハブは、駆動軸からマルチアーム型フランジを経由して従動軸へと至るトルク伝達経路から外れた位置に配置される(ハブが経路上に配置されない)ことになる)。したがって本発明により、マルチアーム型フランジの突出部を圧入嵌合又は安全ナットによるねじ止めでハブの受入れ部に連結することにより、ハブの万一の設定挙動(Setzverhalten)によるボルトの緩みや破損を回避することができる。
【0025】
またユニットの分解に際しては、単に圧入嵌合や安全ナットによるねじ止めを外すとともに組立ボルトを解除すれば良いため、メンテナンスサービスにおいてセンタリングスリーブを脱離させることなく、駆動系ダイナミックダンパーを簡単に解体可能にし、センタリングスリーブを装着状態に留めることができる。したがって新しいユニットの組立て後、駆動系ダイナミックダンパーに新たな不均衡が発生するのを抑制することができる。
【0026】
そのほか、上記圧入嵌合やねじ止めによる締結手段を採用することによって、3アーム又は4アーム型フランジを用いる構造において、振動リングによる構造体積が節約される。すなわち、これによって駆動系ダイナミックダンパーの最大外径を比較的小さく形成できるのである。したがって駆動系ダイナミックダンパーを小型構造とすることが可能となる。尚、このことは、ドイツ特許第102005055800B4号明細書から公知の駆動系ダイナミックダンパー及びセンタリングスリーブよりなるユニットに対する本発明の本質的な利点であり、この場合、作動時のブレを防止するために、振動リングはカップリングの外側に配置されることが望ましい。したがってカップリングとの相対的な関係において、振動リングの外径は拡大される。
【0027】
また、本発明によれば、駆動系ダイナミックダンパーが、要求された規格(Lehre)で製造される限り、問題なく組み立てた後の小型の構造の場合にも長寿命を示す。
【0028】
したがって、冒頭に挙げた課題が解決される。
【0029】
上記の受入れ部は、少なくとも部分的に、一つのラジアル面において存在できる(配置される)ものとすることができる。このラジアル面は別のラジアル面に対して軸方向に変位して配置され、後者の別のラジアル面上に振動リング及びエラストマーが存在する。能動的に作動するエラストマー及び振動リングは、受入れ部にて受け入れられ(連結され)、受入れ部とは軸方向に変位した位置に配置される。これにより、ハブ縁部範囲の外側(エラストマー及び振動リングの内周側)でねじ止め結合が行なわれなくなるため、駆動系ダイナミックダンパーの最大外径を減少させることができる。それ以外には、エラストマーを中心付近に位置決めすることにより、余分な不均衡を最適化できる。
【0030】
また、上記の受入れ部は、圧入嵌合するための、円筒状の中空連結部として形成できるものである。これにより、駆動系ダイナミックダンパーの補強が、マルチアーム型フランジ、特に3アーム又は4アーム型フランジの中央突出部に対してハブを押圧することによる、カップリングの範囲内での駆動系ダイナミックダンパーの補強が可能となる。
【0031】
この円筒状の中空連結部は、隆起部を有するものとすることができる。この隆起部は、駆動系ダイナミックダンパーの把持を、そしてマルチアーム型フランジの突出部からの比較的簡単なそれの取り外しを可能にする。
【0032】
また、上記の受入れ部は、安全ナットでねじ止め可能な突出部を貫通させるための、貫通孔としても形成できるものである。これにより、ボルトで取り付けられる突出部を安全ナットによって駆動系ダイナミックダンパーに問題なく堅固にねじ止めすることができる。これにより、駆動系ダイナミックダンパーの軸方向の安全が保証される。また、ナットの固定による軸方向の摩擦係合でのセンタリング化(Zentriersitz)が可能となる。
【0033】
ハブは、ボルトを貫通させるための第一のクリアランスをその外縁部に有し得るものである。その第一のクリアランスにより、ハブはトルク伝達の力の流れの中に殆んど存在しないことになる。ボルトは、ハブにはねじ止めされない。これにより、ハブの万一の設定挙動によるボルト結合の緩みも招かないことになる。したがってボルトの破損が回避される。
【0034】
振動リングは、径方向に延びるホイールフランジを有し、そこにボルトを貫通させるための通路を形成し得るものである。これにより、3アーム又は4アーム型フランジをカップリングにねじ止めすることができる。
【0035】
また、振動リングは、径方向に延びるホイールフランジを有し、そこにボルトを貫通させるための第二のクリアランスを有し得るものである。これにより、過負荷に対抗するねじれ防振作用を創出することができる。
【0036】
振動リング中に、圧入リングを収容することができ、このリングは、第三又は第四のクリアランスを有し得るものである。この圧入リングは、所要の質量を備える鋳鉄製とすることができる。この圧入リングにより、振動リングの回転質量(Schwungmasse)が有利に高められる。第三及び第四のクリアランスは、圧入リングとボルトとの接触を回避するために形成される。好ましくは、通路を第三のクリアランスで振動リング中で取り囲み、そして振動リング中で圧入リングの第四のクリアランスを第二のクリアランスと同列に置く。第四のクリアランスが第二のクリアランスを取り囲むようにすることも考慮される。
【0037】
ハブ及び振動リングは、深絞りされた薄鋼板(Sahlblech)から製造され得るものである。この具体的な形態により、経済的に有利な製造プロセスが実現可能となる。そのほか、鋼からなる振動リング及びハブは、加硫によってエラストマーと問題なく結合させることができる。それゆえ、エラストマーとしてゴムを使用することが考慮される。
【0038】
ハブは、3つ又は4つのフランジアームを有するダンパーフランジとして形成できるものである。3つのフランジアームを備えることにより駆動系ダイナミックダンパーのシャフトにおける特に堅固な連結が可能となる。エラストマーは、フランジアーム間の対向位置(Umkehrstellen)に配置されるものとすることができる。それゆえ、その対向位置を、最も高い山として弓状のセグメントに構成することが考えられる。この具体的な形態により、駆動系ダイナミックダンパーの特に高い径方向の剛性が達成される。したがって駆動系ダイナミックダンパーにより、不均衡化を極めて制限することができる。
【0039】
配置構造の一つとしては、本明細書において説明する駆動系ダイナミックダンパー及びマルチアーム型フランジを有し、このフランジが円筒状の突出部を有しており、そして駆動系ダイナミックダンパーの受入れ部中に収容され、マルチアーム型フランジはカップリングにねじ止めされ、そのカップリング中には通路が形成され、そこに上記の受入れ部とともに突出部を延在させるという配置が考えられる。
【0040】
突出部には、安全ナットをねじ止めすることができる。これにより、駆動系ダイナミックダンパーの軸方向抜けに対する安全性が確保される。
【0041】
マルチアーム型フランジ中には、センタリングスリーブが収容される。これにより、シャフトジャーナルをセンタリングし、そしてそれを案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例に係る駆動系ダイナミックダンパーを示す半裁の斜視図
【図2】同駆動系ダイナミックダンパーにマルチアーム型フランジを組み付けた状態を示す半裁の斜視図
【図3】同駆動系ダイナミックダンパーの正面図
【図4】同駆動系ダイナミックダンパーにマルチアーム型フランジを組み付ける前の状態を示す斜視図
【図5】同駆動系ダイナミックダンパーにマルチアーム型フランジ及びカップリングを組み付けた状態を示す半裁の斜視図
【図6】参考例に係る駆動系ダイナミックダンパーにマルチアーム型フランジ及びカップリングを組み付けた状態を示す半裁の斜視図
【図7】本発明の他の実施例に係る駆動系ダイナミックダンパーにマルチアーム型フランジを組み付ける前の状態を示す半裁の斜視図
【図8】本発明の他の実施例に係る駆動系ダイナミックダンパーにマルチアーム型フランジ及びカップリングを組み付けた状態を示す半裁の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0043】
つぎに本発明の実施例を説明する。
【0044】
図1は、振動リング(フライホイールとも称する)2及びハブ(ダンパーハブ又はアブソーバーハブとも称する)3を有するとともに回転軸5に装着される駆動系ダイナミックダンパー(カルダンシャフトアブソーバーとも称する)1を示しており、ハブ3はエラストマー(ゴム状弾性体とも称する)4を介して振動リング2に結合され、振動リング2はその内周側にハブ3を収容し、振動リング2及びハブ3は回転軸5に対して同心的に配置される。ハブ3は、マルチアーム型フランジ11(図2参照)の突出部20(図5参照)を受け入れるための受入れ部(受容部とも称する)6を有しており、この受入れ部6は回転軸5の方向に延び、そして回転軸5に対し同心的に配置される。
【0045】
具体的には、図1に示すハブ3は、マルチアーム型フランジ11の突出部20を圧入嵌合するための受入れ部6を有しており、この受入れ部6は回転軸5の方向に延び、そして回転軸5に対して同心的に配置される。受入れ部6は、ハブ3の径方向面の内周縁部から軸方向一方へ向けて一体成形された円筒状の中空管(最小径筒状部とも称する)として形成され、その内周側にマルチアーム型フランジ11の突出部20が圧入嵌合される。したがってハブ3はその受入れ部6をもってマルチアーム型フランジ11の突出部20の外周側に着脱自在に装着される。
【0046】
上記圧入嵌合によって、ハブ3の縁領域からその中央領域へ補強位置が移動される。そして上記圧入嵌合によってハブ3はトルク伝達の力の流れの外に配置される。エラストマー4は、余剰の不均衡を解消(最適化)するために非常に中心近くに配置される。
【0047】
ハブ3は、3つのフランジアーム3aを有するダンパーフランジとして形成される。エラストマー4はフランジアーム3a間の対向位置4aに配置される。それゆえ、この対向位置4aは、最も高い山部として、弓形状のセグメントに形成される。エラストマー4は3つの対向位置4aにそれぞれ配置される。
【0048】
ハブ3は、振動リング2に対して可動(相対変位可能)である。中心付近のエラストマー4は、振動リング2に対するハブ3の径方向の偏向時に、伸縮方向の負荷を招じ入れ、ねじれ方向の偏向時に、せん断方向の応力を受ける。
【0049】
図2は、振動リング2及びエラストマー4を通るラジアル面8、9に対して軸方向にオフセットされるラジアル面7中に少なくとも部分的に入っている受入れ部6を示している(振動リング2及びエラストマー4に対して受入れ部6が軸方向にオフセットして配置されることを示している)。
【0050】
受入れ部6は、上記したように円筒状の中空管として形成されている。受入れ部6の端部には隆起部(環状突起とも称する)10が形成され、この隆起部10は駆動系ダイナミックダンパー1を容易に把持することを可能にしている。これにより駆動系ダイナミックダンパー1は、受入れ部6中へ圧入されたマルチアーム型フランジ11から容易に取り外すことができる。受入れ部6は、ハブ3の径方向部から軸方向一方へ張り出している中空管として外側へ張り出されている。
【0051】
図1は、ハブ3が、その外縁部12に組立ボルトを非接触で通すための第一のクリアランス13を有することを示している。第一のクリアランス13は丸くした(凹んだ円弧形の)縁部によって形成されている。このような第一のクリアランス13が形成され、ここに組立ボルトか配置されることにより、ハブ3はカップリング(カップリングゴムとも称する)21及びマルチアーム型フランジ11と一緒にねじ止めされないことになる(図5)。したがって上記したようにハブ3はトルク伝達の力の流れの外に配置される。
【0052】
振動リング2は、径方向に延在するホイール面14を有し、このホイール面14に、ボルトを通すための貫通孔状の通路15が形成されている。また振動リング2は、径方向に延在するホイール面14を有し、このホイール面14に、ボルト及び3アーム又は4アーム型フランジのアームを貫通させるための第二のクリアランス16が形成されている。また振動リング2の中(円筒部内周面)に圧入リング17が収容(嵌合)されている。
【0053】
図3は、駆動系ダイナミックダンパー1をその軸方向一方から見たときの圧入リング17の内周面に、第三のクリアランス18及び第四のクリアランス19が形成されていることを示している。圧入リング17は所定の質量を備える鋳鉄によって製造されている。図示するように第三のクリアランス18は、振動リング2に設けた通路15を取り囲んでいる。第四のクリアランス19は、振動リング2に設けた第二のクリアランス16と並置されている。
【0054】
ハブ3及び振動リング2は、深絞りされた薄鋼板(Sahlblech)によって製造されている。
【0055】
図4は、駆動系ダイナミックダンパー1及びマルチアーム型フランジ11を示しており、このフランジ11は、円筒状の突出部20を有している。この突出部20は、図2に示されるように、駆動系ダイナミックダンパー1の受入れ部6の内周側に圧入嵌合によって収容される。
【0056】
図5は、駆動系ダイナミックダンパー1及び、円筒状の突出部20を有するとともに駆動系ダイナミックダンパー1の受入れ部6の内周側に圧入嵌合によって収容されたマルチアーム型フランジ11を示しており、マルチアーム型フランジ11がカップリング21に連結(ねじ止め)されており、そのカップリング21の内周側に中央通路22が形成されており、この中央通路22中に、受入れ部6とともに突出部20が十分な空間をもって延びている、と云う配置を示している。尚、カップリング21のボルトスリーブ23中に収容される各組立ボルトは図示していない。
【0057】
また、図5は、カップリング21が、振動リング2の軸方向の隣り(軸方向横並び)に配置されることを示している。
【0058】
図6は、マルチアーム型フランジ11の内側にセンタリングスリーブ24が収容される場合の配置を示している。ハブ3は、センタリングスリーブ24を取り外すことなく、マルチアーム型フランジ11から抜き取ることができる。これにより構造上の大きな利点が生じる。尚、図6は、図1乃至図5の駆動系ダイナミックダンパー1を全く示していない。というのは、図6は、センタリングスリーブ24をマルチアーム型フランジ11の内側に残すことができる場合、これを駆動系ダイナミックダンパー1から分離させる場合の圧入嵌合の利点をはっきり示すことだけを企図するものだからである。
【0059】
図7は、他の実施例に係る最終組立前の駆動系ダイナミックダンパー1’、マルチアーム型フランジ11’及び安全ナット20aの透視的かつ部分的な断面図を示している。この実施例の場合、駆動系ダイナミックダンパー1’の受入れ部6’は、安全ナット20aでねじ止めされる突出部20’を導通させるための貫通孔として形成されている。すなわち受入れ部6’は、ハブ3’から突き出ている中空管として形成されるのではなく、ハブ3’の平面部の中心部に単なる貫通孔として形成されている。円筒状の突出部20’上には、ねじ山20bが設けられ、これが安全ナット20aにねじ止めされる。
【0060】
マルチアーム型フランジ11’は、突出部20’に関連(隣接)して段差状に形成された縁部20cを有し、これにより受入れ部6’の内側に挿入されるこのマルチアーム型フランジ11’の同心度(同軸度)が確保されている。この縁部20cは、突出部20’に比べ、少なくとも部分的により大きな外径を有している。またマルチアーム型フランジ11’は、突出部20’に関連(隣接)して円周上一部の扁平状に形成された扁平領域を有し、この扁平領域では縁部20cの外径は突出部20’の外径と同一とされている。一方、ハブ3’の受入れ部6’の内周面には、同じく円周上一部の扁平状に形成された扁平端部3’cが形成され、ここでは前記扁平領域及び扁平端部3’cに係合している。このため受入れ部6’は、完全なる円形の貫通孔としてではなく、円周上一部に扁平部を備える貫通孔として形成されている。これによりマルチアーム型フランジ11’の配置は、駆動系ダイナミックダンパー1’に関連して確保されている(マルチアーム型フランジ11’及び駆動系ダイナミックダンパー1’が共回りすることが確保されている)。
【0061】
図8は、駆動系ダイナミックダンパー1’及び、円筒状の突出部20’を有するとともに駆動系ダイナミックダンパー1’の受入れ部6’の内周に安全ナット20aでねじ止めされたマルチアーム型フランジ11’を示している。また駆動系ダイナミックダンパー1’にはカップリング21がねじ止めされており、このカップリング21に、突出部20’および安全ナット20aが十分な自由空間をもって延びるような中央通路22が形成されている配置を示している。尚、上記と同様、カップリング21のボルトスリーブ23に収容されるボルトは図示されていない。突出部20’はその外周面にねじ山20bを有し、このねじ山20bが安全ナット20aと螺合する。
【0062】
本発明の更なる有利な実施形態及び発展形態に関しては、一方では、上記説明の概要部分に基づいて、そして他方では、添付の請求項の記載に基づいて示されている。
【0063】
また、上記実施例は単に本発明の一実施例を示すものに過ぎない。本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1,1’ 駆動系ダイナミックダンパー
2 振動リング
3、3’ ハブ
3a フランジアーム
3’c 端部
4 エラストマー
4a 対向位置
5 回転軸
6、6’ 受入れ部
7、8、9 ラジアル面
10 隆起部
11、11’ マルチアーム型フランジ
12 外縁部
13 第一のクリアランス
14 ホイール面
15、22 通路
16 第二のクリアランス
17 圧入リング
18 第三のクリアランス
19 第四のクリアランス
20、20’ 突出部
20a 安全ナット
20b ねじ山
20c 縁部
21 カップリング
23 ボルトスリーブ
24 センタリングスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動リング(2)及びハブ(3、3’)を含む、回転軸に配置するための駆動系ダイナミックダンパー(1,1’)であり、前記ハブ(3、3’)がエラストマー(4)を用いて前記振動リング(2)に結合され、前記振動リング(2)が前記ハブ(3、3’)を収容して取り囲み、前記振動リング(2)及び前記ハブ(3、3’)が回転軸(5)に対して同心的に配置される駆動系ダイナミックダンパー(1,1’)であって、前記ハブ(3、3’)がマルチアーム型フランジ(11、11’)の突出部(20、20’)を受け入れるための受入れ部(6、6’)を有することを特徴とする駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項2】
前記受入れ部(6、6’)が、前記振動リング(2)と前記エラストマー(4)を通るラジアル面(8、9)に対して軸方向にオフセットされるラジアル面(7)に少なくとも部分的に入っていることを特徴とする請求項1に記載の駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項3】
前記受入れ部(6)が、圧入嵌合により組み立てるための円筒状の中空管として形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項4】
前記受入れ部(6’)が、安全ナット(20a)をねじ止め可能な突出部(20’)を導通させるための貫通孔として形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項5】
前記ハブ(3、3’)が、その外縁部(12)にボルトを通すための第一のクリアランス(13)を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項6】
前記振動リング(2)が、径方向に延在するホイール面(14)を有し、前記ホイール面(14)中に、ボルトを通すための通路(15)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項7】
前記振動リング(2)が、径方向に延在するホイール面(14)を有し、前記ホイール面(14)中に、ボルトを通すための第二のクリアランス(16)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項8】
前記振動リング(2)中に、第三のクリアランス(18)及び第四のクリアランス(19)を有する圧入リング(17)が収容されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項9】
前記ハブ(3、3’)及び前記振動リング(2)が、深絞り成形された薄鋼板で製造されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項10】
前記ハブ(3、3’)が、3つ又は4つのフランジアーム(3a)を有するダンパーフランジであり、前記エラストマー(4)が、前記フランジアーム(3a)間の対向位置(4a)に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパー。
【請求項11】
前記請求項1乃至10のいずれか一つに記載の駆動系ダイナミックダンパー(1、1’)と、円筒状の突出部(20、20’)を有し前記駆動系ダイナミックダンパー(1、1’)の受入れ部(6、6’)中に収容されるマルチアーム型フランジ(11、11’)とを含み、前記マルチアーム型フランジ(11、11’)がカップリング(21)に連結され、前記カップリング(21)に中央通路(22)が形成され、前記中央通路(22)中に前記突出部(20、20’)が延在している配置を有することを特徴とする駆動系ダイナミックダンパー(1、1’)及びマルチアーム型フランジ(11、11’)の配列構造。
【請求項12】
前記突出部(20)が圧入嵌合によって収容されることを特徴とする請求項11に記載の配列構造。
【請求項13】
前記突出部(20’)上に安全ナット(20a)がねじ止めされることを特徴とする請求項11に記載の配列構造。
【請求項14】
前記マルチアーム型フランジ(11、11’)中にセンタリングスリーブ(24)が収容されることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一つに記載の配列構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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