説明

駆動装置及びそれを備えた撮像装置

【課題】超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる駆動装置及びそれを備えた撮像装置を提供すること。
【解決手段】駆動装置10は、蓄積CCD30を駆動する蓄積クロックを出力する蓄積クロック出力部13を備え、蓄積クロック出力部13は、供給電圧Vd_HとVst_Hとを切り替える切替器13a、供給電圧Vd_LとVst_Lとを切り替える切替器13b、切替器13a及び13bが切り替えた方の供給電圧とタイミングパルスD_pulseとを入力するドライバ素子13cを備え、撮像モードでは高周波で高電圧の駆動信号によって蓄積CCD30を駆動し、読出モードでは低周波で低電圧の駆動信号によって蓄積CCD30を駆動する構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高速度撮像に用いられる画素周辺記録型撮像素子の駆動装置及びそれを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1秒間に100万フレーム程度の超高速度撮像が可能な画素周辺記録型撮像素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。画素周辺記録型撮像素子は、1つ1つの画素に対して多数の蓄積CCD(Charge Coupled Device)を有する構成となっており、受光素子(以下「PD(Photo Diode)」という。)から得られる撮像中の画像情報を直接外に読み出さず、蓄積CCDに連続的に蓄積しておき、撮像後に出力を行うものである。この構成により、撮像装置等において、被写体を撮像することで生じる信号電荷を高速に蓄積CCDに順次転送して超高速度撮像が実現される。以下、画素周辺記録型撮像素子及びこれを駆動する従来の駆動装置について具体的に説明する。
【0003】
図6に示すように、従来の駆動装置1は、タイミングパルス生成部2、露光クロック出力部3、蓄積クロック出力部4、垂直転送クロック出力部5、水平転送クロック出力部6を備え、画素周辺記録型撮像素子20を駆動するものである。画素周辺記録型撮像素子20は、PD21、蓄積CCD30(31〜39)、垂直転送部22、水平転送部23、出力回路24を備えている。なお、一般的な画素周辺記録型撮像素子における蓄積CCDの段数は100程度であるが、この例では蓄積CCD30を便宜上9段構成としている。
【0004】
画素周辺記録型撮像素子20の駆動は、一般的に2段階で行われる。第1段階は撮像段階であり、露光クロック出力部3及び蓄積クロック出力部4により、PD21及び蓄積CCD30が駆動され、PD21で生成された信号電荷が蓄積CCD31〜39に順次蓄積される。第2段階は信号電荷の読出段階であり、蓄積クロック出力部4、垂直転送クロック出力部5、水平転送クロック出力部6により、蓄積CCD30、垂直転送部22及び水平転送部23が駆動され、蓄積CCD30に蓄積された信号電荷が出力回路24を通して読み出される。撮像段階における蓄積CCD30の最高駆動周波数は1MHz程度であり、読出段階における蓄積CCD30の駆動周波数は100kHz程度である。以上説明した駆動方式により、駆動装置1及び画素周辺記録型撮像素子20を備えた従来の撮像装置は、最高100万フレーム/秒程度の超高速度撮像を実現している。
【0005】
しかしながら、従来の駆動装置1では、撮像速度が数十万フレーム/秒以上になると、駆動パルスの実波形の立ち上がりがなだらかとなって振幅が低下し、超高速撮像時のS/N特性が劣化するという課題があった。
【0006】
この課題の解決を図るものとして、例えば特許文献2に開示された高速撮像装置が知られている。特許文献2に開示された従来の高速撮像装置は、画素周辺記録型撮像素子のPD及び蓄積CCDに与える駆動パルスの振幅を通常よりも大きくすることにより、駆動パルスの電圧低下を抑制し、超高速撮像時のS/N特性の向上を図っている。
【0007】
具体的には、従来の高速撮像装置は、図7(A)に示すように、蓄積CCDに駆動パルスを出力するドライバ素子4aを備えている。ドライバ素子4aには、正の供給電圧Vd_H及び負の供給電圧Vd_Lが供給される構成となっている。この構成において、ドライバ素子4aは、5V程度のタイミングパルスを入力し、供給電圧Vd_H及びVd_Lに基づいて電圧変換した駆動パルスを出力するようになっている。
【0008】
従来の高速撮像装置においては、駆動パルスの電圧値が供給電圧によって定まるので、これらの供給電圧は、一般的な高速撮像装置における供給電圧Vst_H及びVst_L(図7(B)参照)よりも高く設定されている。供給電圧Vst_H及びVst_Lを使用した場合は、図7(B)右に示すように、駆動パルスの振幅よりも実波形の振幅が低下してしまう。
【0009】
前述の構成により、従来の高速撮像装置では、被写体を撮像する超高速撮像時において、画素周辺記録型撮像素子に実際に供給される駆動パルスの振幅が供給電圧Vst_H、Vst_L程度となり、超高速撮像時におけるS/N特性の劣化の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−345441号公報
【特許文献2】特開2008−35331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の高速撮像装置では、超高速撮像時におけるS/N特性の向上は図れたが、信号電荷の読出時のS/N特性が劣化してしまい、その改善が望まれていた。読出時のS/N特性が劣化するのは、従来の高速撮像装置による駆動では、超高速撮像時だけでなく読出時においても比較的高い供給電圧が蓄積CCDに印加されるからである。以下、具体的に説明する。
【0012】
一般的な固体撮像素子や画素周辺記録型撮像素子では、蓄積CCDが形成されるシリコン基板と蓄積CCDの電極との間には酸化シリコン等による絶縁膜が設けられる構成となっている。この構成において、比較的高い供給電圧を蓄積CCDに印加した場合、蓄積CCDに蓄積された電荷の一部が、シリコン基板と絶縁膜との界面(Si−SiO界面)に捕獲される現象が知られている(例えば、文献「"固体撮像素子の基礎"、p157、安藤隆男、映像情報メディア学会編集」参照)。
【0013】
この現象により、従来の高速撮像装置による駆動では、信号電荷の読出時に、蓄積CCDに蓄積された信号電荷の一部がSi−SiO界面に捕獲されて消失するので、信号電荷の読出時におけるS/N特性が劣化してしまうこととなる。
【0014】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる駆動装置及びそれを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の駆動装置は、被写体からの光を光電変換して信号電荷を生成する受光素子と、前記受光素子に複数段に接続され前記受光素子が生成した信号電荷を順次蓄積して出力側に読み出す複数の信号電荷蓄積部と、を備えた撮像素子の駆動装置であって、前記被写体を撮像する撮像モードにおいて前記信号電荷蓄積部を駆動する第1周波数の撮像駆動信号を前記信号電荷蓄積部に出力し、該信号電荷蓄積部に蓄積された信号電荷を前記出力側に読み出す読出モードにおいて前記信号電荷蓄積部を駆動する前記第1周波数よりも周波数が低い第2周波数の読出駆動信号を前記信号電荷蓄積部に出力する駆動信号出力手段と、を備え、前記読出駆動信号の振幅は前記撮像駆動信号の振幅よりも小さい構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明の駆動装置は、撮像モードでは高周波で高電圧の撮像駆動信号によって信号電荷蓄積部を駆動し、読出モードでは低周波で低電圧の読出駆動信号によって信号電荷蓄積部を駆動するので、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【0017】
また、本発明の駆動装置は、前記駆動信号出力手段は、第1電圧又は前記第1電圧よりも低い第3電圧を出力する第1の電圧出力部と、前記第3電圧よりも低い第2電圧又は前記第2電圧よりも高く前記第3電圧よりも低い第4電圧を出力する第2の電圧出力部と、前記撮像モードにおいて前記第1周波数のタイミングパルスを入力して前記第1電圧及び前記第2電圧に基づいて前記撮像駆動信号を生成して前記信号電荷蓄積部に出力し、前記読出モードにおいて前記第2周波数のタイミングパルスを入力して前記第3電圧及び前記第4電圧に基づいて前記読出駆動信号を生成して前記信号電荷蓄積部に出力する駆動信号出力部と、を備えた構成を有している。
【0018】
この構成により、本発明の駆動装置は、駆動信号出力手段が、撮像モードでは高周波で高電圧の撮像駆動信号によって信号電荷蓄積部を駆動し、読出モードでは低周波で低電圧の読出駆動信号によって信号電荷蓄積部を駆動するので、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【0019】
さらに、本発明の駆動装置は、前記駆動信号出力手段は、前記第1周波数のタイミングパルスを入力して第1電圧及び前記第1電圧よりも低い第2電圧に基づいて前記撮像駆動信号を生成する第1の駆動信号出力部と、前記第2周波数のタイミングパルスを入力して前記第2電圧よりも高く前記第1電圧よりも低い第3電圧及び前記第2電圧よりも高く第3電圧よりも低い第4電圧に基づいて前記読出駆動信号を生成する第2の駆動信号出力部と、前記撮像モードにおいて前記第1の駆動信号出力部の出力信号を選択し、前記読出モードにおいて前記第2の駆動信号出力部の出力信号を選択して前記信号電荷蓄積部に出力する駆動信号選択部と、を備えた構成を有している。
【0020】
この構成により、本発明の駆動装置は、撮像モードでは高周波で高電圧の撮像駆動信号によって信号電荷蓄積部を駆動し、読出モードでは低周波で低電圧の読出駆動信号によって信号電荷蓄積部を駆動するので、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【0021】
本発明の撮像装置は、被写体からの光を光電変換して信号電荷を生成する受光素子と、前記受光素子に複数段に接続され前記受光素子が生成した信号電荷を順次蓄積して出力側に読み出す複数の信号電荷蓄積部と、を有する撮像素子と、駆動装置と、を備えた構成を有している。
【0022】
この構成により、本発明の撮像装置は、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができるという効果を有する駆動装置及びそれを備えた撮像装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態における駆動装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態における駆動装置の駆動方式の説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態における駆動装置の4相駆動方式の説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態における駆動装置及びその駆動方式の説明図である。
【図5】本発明の第3実施形態における撮像装置の構成図である。
【図6】従来の駆動装置の構成図である。
【図7】従来の駆動装置の駆動方式の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態における駆動装置10は、画素周辺記録型撮像素子20を駆動するものである。駆動装置10は、タイミングパルス生成部11、露光クロック出力部12、蓄積クロック出力部13、垂直転送クロック出力部14、水平転送クロック出力部15を備えている。画素周辺記録型撮像素子20は、PD21、蓄積CCD30、垂直転送部22、水平転送部23、出力回路24を備えている。
【0027】
次に、駆動装置10の構成を説明する。以下の説明において、被写体を超高速度で撮像するモードを撮像モード、撮像によりPD21が生成した信号電荷を出力回路24側に読み出すモードを読出モードという。
【0028】
タイミングパルス生成部11は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成され、図示を省略した制御信号生成回路から入力したクロック信号に基づき、振幅が5V程度のタイミングパルスを生成して出力するようになっている。
【0029】
露光クロック出力部12は、タイミングパルスを入力して電圧変換することにより露光クロックφPDを生成し、生成した露光クロックφPDを画素周辺記録型撮像素子20に出力するようになっている。この露光クロックφPDは、撮像モードにおいてPD21に出力される駆動クロックであり、PD21に信号電荷を生成させるためのものである。
【0030】
蓄積クロック出力部13は、タイミングパルスD_pulseを入力して電圧変換することにより蓄積クロックφMを生成し、生成した蓄積クロックφMを画素周辺記録型撮像素子20に出力するようになっている。この蓄積クロックφMは、撮像モードと読出モードとにおいて蓄積CCD30に出力される駆動クロックである。蓄積クロック出力部13の詳細な構成については後述する。
【0031】
垂直転送クロック出力部14は、タイミングパルスを入力して電圧変換することにより垂直転送クロックφMRを生成し、生成した垂直転送クロックφMRを画素周辺記録型撮像素子20に出力するようになっている。この垂直転送クロックφMRは、読出モードにおいて垂直転送部22に出力される駆動クロックである。
【0032】
水平転送クロック出力部15は、タイミングパルスを入力して電圧変換することにより水平転送クロックφHを生成し、生成した水平転送クロックφHを画素周辺記録型撮像素子20に出力するようになっている。この水平転送クロックφHは、読出モードにおいて水平転送部23に出力される駆動クロックである。
【0033】
なお、露光クロック出力部12、蓄積クロック出力部13、垂直転送クロック出力部14及び水平転送クロック出力部15は、周波数が1Hz〜100MHz程度の各駆動クロック(φPD、φM、φMR、φH)を生成できるよう構成するのが好ましい。
【0034】
次に、画素周辺記録型撮像素子20の構成を説明する。
【0035】
PD21は、露光クロックφPDを入力すると被写体からの光を受光し、光信号を電気信号に変換して信号電荷を生成するようになっている。
【0036】
蓄積CCD30は、蓄積クロックφMに基づいて、PD21が生成した信号電荷を順次蓄積しながら転送するようになっている。本実施形態では、蓄積CCD30は、PD21に隣接した初段の蓄積CCD31、次段の蓄積CCD32、・・・最終段の蓄積CCD39を含む9段構成としている。なお、一般的な画素周辺記録型撮像素子における蓄積CCDの段数は100程度であるが、本実施形態では便宜上9段構成としている。また、蓄積CCD30は、本発明に係る信号電荷蓄積部を構成する。
【0037】
垂直転送部22は、複数のCCDを備え、蓄積CCD39からの信号電荷を図中上側から下側の方向に順次転送し、水平転送部23に出力するようになっている。水平転送部23は、複数のCCDを備え、垂直転送部22からの信号電荷を図中右側から左側に転送し、出力回路24に出力するようになっている。出力回路24は、水平転送部23からの信号電荷を電圧に変換して出力するようになっている。
【0038】
次に、蓄積クロック出力部13の詳細な構成について説明する。
【0039】
蓄積クロック出力部13は、供給電圧Vd_HとVst_Hとを切り替える切替器13a、供給電圧Vd_LとVst_Lとを切り替える切替器13b、切替器13a及び13bが切り替えた方の供給電圧とタイミングパルスD_pulseとを入力するドライバ素子13cを備えている。なお、蓄積クロック出力部13は、本発明に係る駆動信号出力手段を構成する。
【0040】
ここで、供給電圧の大きさは、Vd_H>Vst_H>Vst_L>Vd_Lの関係である。これらの供給電圧は、供給電圧源(図示省略)から供給される電圧である。また、供給電圧Vd_H及びVd_Lは、それぞれ、本発明に係る第1電圧及び第2電圧に対応する。また、供給電圧Vst_H及びVst_Lは、それぞれ、本発明に係る第3電圧及び第4電圧に対応する。
【0041】
切替器13a及び13bは、それぞれ、タイミングパルス生成部11が出力するSWh_flag信号及びSWl_flag信号に基づいて入力を切り替え、切り替えた方の供給電圧をドライバ素子13cに出力するようになっている。ここで、SWh_flag信号及びSWl_flag信号は、撮像モード又は読出モードを表すための信号であって、両信号の電圧値がともにハイレベルのときは撮像モードを表し、両信号の電圧値がともにローレベルのときは読出モードを表す。なお、切替器13a及び13bは、それぞれ、本発明に係る第1及び第2の電圧出力部を構成する。
【0042】
具体的には、切替器13aは、SWh_flag信号がハイレベルのとき供給電圧Vd_Hを出力し、SWh_flag信号がローレベルのとき供給電圧Vst_Hを出力するようになっている。一方、切替器13bは、SWl_flag信号がハイレベルのとき供給電圧Vd_Lを出力し、SWl_flag信号がローレベルのとき供給電圧Vst_Lを出力するようになっている。
【0043】
ドライバ素子13cは、タイミングパルスD_pulseを入力し、切替器13a及び13bが出力する供給電圧に基づいて蓄積クロックφMを生成するようになっている。具体的には、ドライバ素子13cは、SWh_flag信号及びSWl_flag信号がともにハイレベルのとき(撮像モード)、切替器13a及び13bからそれぞれ供給電圧Vd_H及びVd_Lを入力し、これらの供給電圧に基づいてタイミングパルスD_pulseを電圧変換して撮像モードでの蓄積クロックφMを生成する。
【0044】
一方、ドライバ素子13cは、SWh_flag信号及びSWl_flag信号がともにローレベルのとき(読出モード)、切替器13a及び13bからそれぞれ供給電圧Vst_H及びVst_Lを入力し、これらの供給電圧に基づいてタイミングパルスD_pulseを電圧変換して読出モードでの蓄積クロックφMを生成する。なお、ドライバ素子13cは、本発明に係る駆動信号出力部を構成する。
【0045】
次に、本実施形態における蓄積CCD30の駆動方式について図1及び図2を用いて説明する。図2は、被写体を所定のフレームレートで撮像する撮像モードから、信号電荷を読み出す読出モードに切り替わる際の各パルスを模式的に示したものである。
【0046】
図2において、撮像モードから読出モードに切り替わる時刻をT1で示している。この時刻T1は、タイミングパルス生成部11が、撮像モードにおける最後の撮像フレームのタイミングパルスD_pulseを出力してから次のタイミングパルスD_pulseが立ち上がるまでの間に設定される。この時刻T1においてSWh_flag信号がハイレベルからローレベルに切り替わる。また、この時刻T1においてタイミングパルスD_pulseの周波数が、撮像モードでの周波数(第1周波数)から読出モードでの周波数(第2周波数)切り替わる。
【0047】
また、図中の時刻T2は、撮像モードから読出モードに切り替わった後、最初のタイミングパルスD_pulseがハイレベルにある間にSWl_flag信号がハイレベルからローレベルに切り替わる時刻である。
【0048】
図2に示すように、撮像モードにおいてはSWh_flag信号及びSWl_flag信号がともにハイレベルである。したがって、撮像モードにおいて、切替器13aは供給電圧Vd_Hを入力してドライバ素子13cに出力し、切替器13bは供給電圧Vd_Lを入力してドライバ素子13cに出力する。その結果、ドライバ素子13cは、撮像モードにおいて、供給電圧Vd_H及びVd_Lを入力して、タイミングパルスD_pulseの周波数の駆動パルス(撮像モードでの蓄積クロックφM)を生成する。
【0049】
一方、時刻T2以降の読出モードにおいてはSWh_flag信号及びSWl_flag信号がともにローレベルである。したがって、読出モードにおいて、切替器13aは供給電圧Vst_Hを入力してドライバ素子13cに出力し、切替器13bは供給電圧Vst_Lを入力してドライバ素子13cに出力する。その結果、ドライバ素子13cは、読出モードにおいて、供給電圧Vst_H及びVst_Lを入力して、タイミングパルスD_pulseの周波数の駆動パルス(読出モードでの蓄積クロックφM)を生成する。
【0050】
図2に示したタイミングパルスD_pulseは、ピークツーピーク電圧が例えば5Vp−p程度である。また、その周波数は、超高速撮像を行うとして、撮像モードでは例えば1MHz程度、読出モードでは例えば100kHz程度である。また、撮像モードでの供給電圧Vd_Lから供給電圧Vd_Hまでは例えば20Vp−p程度である。また、読出モードでの供給電圧Vst_Lから供給電圧Vst_Hまでは例えば8Vp−p〜15Vp−p程度である。この読出モードでの供給電圧は、一般的な画素周辺記録型撮像素子に供給される通常の供給電圧である。すなわち、撮像モードに比べて駆動周波数が低い読出モードで同一の電圧を供給した場合、蓄積CCDにおける駆動パルスの実波形のなまりが撮像モードに比べ小さいために電圧振幅が必要以上に増加する。これを防ぐため、読出モードの供給電圧を撮像モードの供給電圧よりも低い値としている。なお、図2においては、供給電圧Vd_H及びVst_Hを正電圧とし、供給電圧Vst_L及びVd_Lを負電圧としているが、これに限定されない。例えば、全ての供給電圧が正電圧であってもよい。
【0051】
前述の駆動方式により、本実施形態における駆動装置10は、蓄積クロックφMの実波形を、図2に太実線で示す形状とすることができ、撮像モード及び読出モードの両モードにおいて供給電圧Vst_L程度から供給電圧Vst_H程度までの電圧、すなわち、一般的な画素周辺記録型撮像素子に供給される通常の供給電圧程度にすることができる。その結果、本実施形態における駆動装置10は、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【0052】
次に、蓄積クロックφMを4相(φM1〜4)として蓄積CCD30を駆動する例を挙げる。この場合、各蓄積CCD30は、それぞれ4つの電極を備える構成となる。蓄積CCD30ごとのこれら4つの電極をPD21側から電極M1〜4とすると、図3に示す蓄積クロックφM1〜4をそれぞれ電極M1〜4に印加する構成となる。
【0053】
図3に示した蓄積クロックφM1〜4は、図1に示した蓄積クロック出力部13を4つ備えることにより生成することができる。したがって、タイミングパルス生成部11が出力する、図2に示したSWh_flag信号、SWl_flag信号、タイミングパルスD_pulseはそれぞれ4とおりとなる。図3においては、タイミングパルスD_pulseの図示は省略し、撮像モードと読出モードとが切り替わる前後での駆動パルス波形と、SWh_flag信号及びSWl_flag信号がハイレベルからローレベルに切り替わる位置を矢印でそれぞれ示している。
【0054】
図3に示したタイミングにより、4つの蓄積クロック出力部13が蓄積クロックφM1〜4を各蓄積CCD30の電極M1〜4にそれぞれ出力することにより、本実施形態における駆動装置10は、蓄積CCD30の4相駆動において、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【0055】
以上のように、本実施形態における駆動装置10によれば、撮像モードでは高周波で高電圧の駆動信号によって蓄積CCD30を駆動し、読出モードでは低周波で低電圧の駆動信号によって蓄積CCD30を駆動する構成としたので、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【0056】
(第2実施形態)
本実施形態における駆動装置は、第1実施形態における駆動装置10(図1参照)が備える蓄積クロック出力部13に代えて、図4(A)に示す蓄積クロック出力部41を備えたものである。したがって、蓄積クロック出力部41について説明し、その他の構成要素の説明は第1実施形態における符号を用い、重複する説明は省略する。
【0057】
本実施形態における蓄積クロック出力部41は、蓄積クロックφMを生成するドライバ素子41a及び41bと、ドライバ素子41a及び41bのいずれか一方の出力を選択する切替器41cと、を備えている。なお、蓄積クロック出力部41は、本発明に係る駆動信号出力手段を構成する。
【0058】
ドライバ素子41aは、タイミングパルス生成部11からのタイミングパルスD_pulseと、供給電圧源(図示省略)から供給される供給電圧Vd_H及びVd_Lとを入力するようになっている。この構成により、ドライバ素子41aは、供給電圧に基づいてタイミングパルスD_pulseを電圧変換し、蓄積クロックφMを生成するようになっている。なお、ドライバ素子41aは、本発明に係る第1の駆動信号出力部を構成する。
【0059】
ドライバ素子41bは、タイミングパルス生成部11からのタイミングパルスD_pulseと、供給電圧源(図示省略)から供給される供給電圧Vst_H及びVst_Lとを入力するようになっている。この構成により、ドライバ素子41bは、供給電圧に基づいてタイミングパルスD_pulseを電圧変換し、蓄積クロックφMを生成するようになっている。なお、ドライバ素子41bは、本発明に係る第2の駆動信号出力部を構成する。
【0060】
ここで、供給電圧の大きさは、Vd_H>Vst_H>Vst_L>Vd_Lの関係である。これらの供給電圧は、供給電圧源(図示省略)から供給される電圧である。また、供給電圧Vd_H及びVd_Lは、それぞれ、本発明に係る第1電圧及び第2電圧に対応する。また、供給電圧Vst_H及びVst_Lは、それぞれ、本発明に係る第3電圧及び第4電圧に対応する。
【0061】
切替器41cは、タイミングパルス生成部11が出力するSWa_flag信号を入力し、この信号に基づいてドライバ素子41a又は41bの出力を選択するようになっている。具体的には、切替器41cは、SWa_flag信号がハイレベルのとき(撮像モード)、ドライバ素子41aの出力を選択し、撮像モードでの蓄積クロックφMを蓄積CCD30に出力する。また、切替器41cは、SWa_flag信号がローレベルのとき(読出モード)、ドライバ素子41bの出力を選択し、読出モードでの蓄積クロックφMを蓄積CCD30に出力する。なお、切替器41cは、本発明に係る駆動信号選択部を構成する。
【0062】
次に、本実施形態における蓄積CCD30の駆動方式について図4(A)及び図4(B)を用いて説明する。図4(B)は、撮像モードから読出モードに切り替わる際の各パルス波形を模式的に示したものである。
【0063】
図4(B)において、撮像モードから読出モードに切り替わる時刻をT1で示している。この時刻T1は、タイミングパルス生成部11が、撮像モードにおける最後の撮像フレームのタイミングパルスD_pulseを出力した後、次のタイミングパルスD_pulseの立ち上がり時刻に相当する。この時刻T1においてSWa_flag信号がハイレベルからローレベルに切り替わる。
【0064】
図4(B)に示すように、時刻T1までの撮像モードにおいては、SWa_flag信号はハイレベルである。したがって、切替器41cは、ドライバ素子41aの出力を選択する。このとき、図示のようにタイミングパルスD_pulseは高周波(例えば1MHz)であって、ドライバ素子41aは、タイミングパルスD_pulseの周波数の駆動パルス、すなわち、撮像モードでの蓄積クロックφMを生成している。その結果、撮像モードにおいて、切替器41cは、ドライバ素子41aから撮像モードでの蓄積クロックφMを入力して蓄積CCD30に出力することとなる。
【0065】
一方、時刻T1以降の読出モードにおいては、SWa_flag信号はローレベルである。したがって、切替器41cは、ドライバ素子41bを選択する。このとき、図示のようにタイミングパルスD_pulseは低周波(例えば100kHz)であって、ドライバ素子41bは、タイミングパルスD_pulseの周波数の駆動パルス、すなわち、読出モードでの蓄積クロックφMを生成している。その結果、読出モードにおいて、切替器41cは、ドライバ素子41bから読出モードでの蓄積クロックφMを入力して蓄積CCD30に出力することとなる。
【0066】
前述の駆動方式により、本実施形態における駆動装置は、蓄積クロックφMの実波形を、図4(B)に太実線で示す形状とすることができ、撮像モード及び読出モードにおいて供給電圧Vst_L程度から供給電圧Vst_H程度までの電圧、すなわち、一般的な画素周辺記録型撮像素子に供給される通常の供給電圧程度にすることができる。その結果、本実施形態における駆動装置は、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【0067】
以上のように、本実施形態における駆動装置によれば、ドライバ素子41a及び41bと、切替器41cとで蓄積クロック出力部41を構成し、切替器41cは、撮像モードではドライバ素子41aの出力を選択することにより、高周波で高電圧の蓄積クロックφMを入力して蓄積CCD30に出力し、読出モードではドライバ素子41bの出力を選択することにより、低周波で低電圧の蓄積クロックφMを入力して蓄積CCD30に出力する。その結果、本実施形態における駆動装置は、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【0068】
また、この構成により、本実施形態における駆動装置は、第1実施形態と比べて切替器の個数を半減することができる。
【0069】
(第3実施形態)
図5に示すように、本実施の形態における撮像装置50は、駆動装置10(図1参照)、画素周辺記録型撮像素子20、レンズ51、A/D変換部52、信号処理部53、映像出力回路56を備えている。信号処理部53は、信号処理回路54及び映像信号メモリ55を備えている。映像出力回路56は、映像信号メモリ55からの映像信号を例えばHD−SDI(High Definition - Serial Digital Interface)の規格の映像信号に変換して出力するものである。
【0070】
撮像装置50は、レンズ51を通過して得られる光信号を画素周辺記録型撮像素子20で受光する。画素周辺記録型撮像素子20は、駆動装置10から得られる駆動クロック(φPD、φM、φMR、φH)に基づいて、信号電荷の転送が制御される。
【0071】
画素周辺記録型撮像素子20は、駆動装置10からの駆動クロックに基づいて出力信号をA/D変換部52に出力する。A/D変換部52は、画素周辺記録型撮像素子20から得られるアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を信号処理部53の信号処理回路54に出力する。
【0072】
信号処理回路54は、A/D変換部52から得られる映像信号をフレームに対応させて並べ替えを行い、並べ替えた映像信号を映像信号メモリ55に出力する。この映像信号メモリ55は、信号処理回路54から得られる並べ替えた映像信号を、例えば数千フレーム程度保存することができ、保存した映像信号を所定レートで出力する。例えば、通常のテレビレートの場合、映像信号メモリ55は30フレーム/秒で映像信号を出力する。
【0073】
以上のように、撮像装置50は、第1実施形態における駆動装置10を備えたことにより、超高速撮像時だけでなく、信号電荷の読出時においてもS/N特性の劣化の低減を図ることができる。
【0074】
なお、第3実施形態では、撮像装置50が第1実施形態における駆動装置10を備えた構成を例に挙げて説明したが、第2実施形態における駆動装置を備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 駆動装置
11 タイミングパルス生成部
12 露光クロック出力部
13 蓄積クロック出力部(駆動信号出力手段)
13a 切替器(第1の電圧出力部)
13b 切替器(第2の電圧出力手部)
13c ドライバ素子(駆動信号出力部)
14 垂直転送クロック出力部
15 水平転送クロック出力部
20 画素周辺記録型撮像素子
21 PD(受光素子)
22 垂直転送部
23 水平転送部
24 出力回路
30(31〜39) 蓄積CCD(信号電荷蓄積部)
41 蓄積クロック出力部(駆動信号出力手段)
41a ドライバ素子(第1の駆動信号出力部)
41b ドライバ素子(第2の駆動信号出力部)
41c 切替器(駆動信号選択部)
50 撮像装置
51 レンズ
52 A/D変換部
53 信号処理部
54 信号処理回路
55 映像信号メモリ
56 映像出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を光電変換して信号電荷を生成する受光素子と、前記受光素子に複数段に接続され前記受光素子が生成した信号電荷を順次蓄積して出力側に読み出す複数の信号電荷蓄積部と、を備えた撮像素子の駆動装置であって、
前記被写体を撮像する撮像モードにおいて前記信号電荷蓄積部を駆動する第1周波数の撮像駆動信号を前記信号電荷蓄積部に出力し、該信号電荷蓄積部に蓄積された信号電荷を前記出力側に読み出す読出モードにおいて前記信号電荷蓄積部を駆動する前記第1周波数よりも周波数が低い第2周波数の読出駆動信号を前記信号電荷蓄積部に出力する駆動信号出力手段と、を備え、
前記読出駆動信号の振幅は前記撮像駆動信号の振幅よりも小さいことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記駆動信号出力手段は、第1電圧又は前記第1電圧よりも低い第3電圧を出力する第1の電圧出力部と、前記第3電圧よりも低い第2電圧又は前記第2電圧よりも高く前記第3電圧よりも低い第4電圧を出力する第2の電圧出力部と、前記撮像モードにおいて前記第1周波数のタイミングパルスを入力して前記第1電圧及び前記第2電圧に基づいて前記撮像駆動信号を生成して前記信号電荷蓄積部に出力し、前記読出モードにおいて前記第2周波数のタイミングパルスを入力して前記第3電圧及び前記第4電圧に基づいて前記読出駆動信号を生成して前記信号電荷蓄積部に出力する駆動信号出力部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動信号出力手段は、前記第1周波数のタイミングパルスを入力して第1電圧及び前記第1電圧よりも低い第2電圧に基づいて前記撮像駆動信号を生成する第1の駆動信号出力部と、前記第2周波数のタイミングパルスを入力して前記第2電圧よりも高く前記第1電圧よりも低い第3電圧及び前記第2電圧よりも高く第3電圧よりも低い第4電圧に基づいて前記読出駆動信号を生成する第2の駆動信号出力部と、前記撮像モードにおいて前記第1の駆動信号出力部の出力信号を選択し、前記読出モードにおいて前記第2の駆動信号出力部の出力信号を選択して前記信号電荷蓄積部に出力する駆動信号選択部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
被写体からの光を光電変換して信号電荷を生成する受光素子と、前記受光素子に複数段に接続され前記受光素子が生成した信号電荷を順次蓄積して出力側に読み出す複数の信号電荷蓄積部と、を有する撮像素子と、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の駆動装置と、を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate