説明

駆動装置

【課題】機械的な回転駆動を伴わずに可撓性環状体に撓み変形を生起させることにより、装置構成を簡単かつ小型化してメンテナンス工数を減らすことができるとともに作動時における機械的振動を抑えることができる駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置100は、円筒状のハウジング101の内側に磁性体で構成された可撓性環状体103を回転不能な状態で固定的に備えている。可撓性環状体103の外側には、ハウジング101の内周面上にステータ102a〜102fが設けられている。ステータ102a〜102fは、電磁石で構成されており可撓性環状体103に径方向への撓み変形を周方向に沿って連続的に生じさせる。可撓性環状体103の内側には、軸状に形成された従動体105が配置されている。可撓性環状体103の内周面および従動体105の外周面には、可撓性環状体103が撓み変形した際に互いに噛合う内歯104および外歯106が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状に形成された可撓性環状体に径方向への撓み変形を周方向に沿って連続的に生じさせることによって撓み変形位置にて接触する従動体を回転駆動または直線駆動させる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環状に形成した可撓性環状体に径方向への撓み変形を周方向に沿って連続的に生じさせることにより、この撓み変形位置において接触する従動体を回転駆動させる駆動装置がある。例えば、下記特許文献1には、内歯が形成されたフレクスプライン(可撓性環状体に相当)の外側に電磁力によって回転する楕円形状のロータを配置するとともに、同フレクスプラインの内側に同フレクスプラインの内歯に噛合う外歯が形成されたサーキュラスプラインを配置して構成された駆動装置が開示されている。この駆動装置においては、ロータの回転駆動によってフレクスプラインに径方向への撓み変形が周方向に沿って移動しながら生じる。これにより、フレクスプラインの内側においてフレクスプラインの撓み変形位置に対応する位置で噛合うサーキュラスプラインが歯数差に応じた減速比で回転駆動する。
【0003】
また、下記特許文献2には、内歯歯車の外周面に8極の永久磁石が設けられた可撓性歯車(可撓性環状体に相当)の外側に4極の永久磁石が設けられた環状の回転子を配置するとともに、可撓性歯車の内側に同可撓性歯車の内歯に噛合う外歯が形成された円形歯車を配置して構成された駆動装置が開示されている。この駆動装置においては、回転子の回転駆動によって可撓性歯車に径方向への撓み変形が周方向に沿って移動しながら生じる。これにより、可撓性歯車の内側において可撓性歯車の撓み変形位置に対応する位置で噛合う円形歯車が歯数差に応じた減速比で回転駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2006/003847号公報
【特許文献2】特開平02−17246号公報
【0005】
しかしながら、上記したような各駆動装置においては、可撓性環状体の撓み変形は、可撓性環状体の外側に配置されたロータや回転子などの所謂ウェーブジェネレータの回転駆動によって生起される。このため、ウェーブジェネレータの他にウェーブジェネレータを回転駆動するための構成が別途必要となり、駆動装置の構成が複雑かつ大型化するととともにメンテナンス工数が増加するという問題がある。また、ウェーブジェネレータの回転駆動に起因して振動が生じるため、この駆動装置によって駆動される被駆動体を振動させることがあるという問題もあった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、機械的な回転駆動を伴わずに可撓性環状体に撓み変形を生起させることにより、装置構成を簡単かつ小型化してメンテナンス工数を減らすことができるとともに作動時における機械的振動を抑えることができる駆動装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の特徴は、径方向に撓み変形可能に形成された可撓性環状体と、可撓性環状体の外側または内側に回転不能な状態で固定的に配置され、可撓性環状体を周方向に沿って撓み変形させるための変形生起手段と、可撓性環状体の内側または外側に配置された変形生起手段とは反対側となる可撓性環状体の外側または内側に配置され、撓み変形した可撓性環状体の内周面または外周面に接触することにより回転駆動または直線駆動する従動体とを備えることにある。
【0008】
この場合、請求項2に示すように、前記駆動装置において、変形生起手段は、例えば、可撓性環状体の外側に配置されており、従動体は、可撓性環状体の内側に配置するとよい。
【0009】
このように構成した請求項1に記載した本発明の特徴によれば、従動体を回転駆動または直線駆動する可撓性環状体は、同可撓性環状体の外側または内側に回転不能な状態で固定的に配置された変形生起手段によって径方向への撓み変形が周方向に沿って連続的に生起される。これにより、可撓性環状体は、可撓性環状体の外側または内側に配置された変形生起手段のみによって直接撓み変形が与えられる。すなわち、本発明においては、可撓性環状体を撓み変形させるための従来技術に係るウェーブジェネレータとこのウェーブジェネレータを回転駆動するための構成とが1つにまとめられている。そして、この変形生起手段は、可撓性環状体に対して回転不能な状態で固定的に配置されている。これらの結果、駆動装置の構成を簡単かつ小型化してメンテナンス工数を減らすことができるとともに作動時における機械的振動を抑えることができる。
【0010】
また、請求項3に記載した本発明の他の特徴は、前記駆動装置において、可撓性環状体は、少なくとも変形生起手段に対向する側が磁性体で構成されており、変形生起手段は、可撓性環状体の周方向に沿って配置された電磁石を備えて構成されていることにある。
【0011】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、変形生起手段に対向する側が磁性体で形成された可撓性環状体は、変形生起手段が備える電磁石による吸引力または反発力からなる磁力の作用によって径方向へ撓み変形が与えられる。これにより、機械的振動がない状態で可撓性環状体に径方向への撓み変形を周方向に沿って連続的に生じさせることができる。
【0012】
また、請求項4に記載した本発明の他の特徴は、前記駆動装置において、可撓性環状体は、従動体との接触面に動力伝達用の複数の歯が形成されており、従動体は、可撓性環状体に形成された歯と互いに噛合う動力伝達用の歯が可撓性環状体に形成された歯数とは異なる歯数で形成されていることにある。
【0013】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、可撓性環状体と従動体とは、可撓性環状体における撓み変形位置で互いに噛合う歯車によって構成されている。これにより、可撓性環状体と従動体とを摩擦接触させる場合に比べて大きな駆動力を伝達できるとともに、可撓性環状体に形成した歯数と従動体に形成した歯数との歯数差によって大きな減速比で従動体を回転駆動することができる。
【0014】
また、請求項5に記載した本発明の他の特徴は、前記駆動装置において、従動体は、可撓性環状体との接触面の反対側に動力伝達用の複数の螺旋状の溝が形成されており、従動体の内側または外側に配置された可撓性環状体とは反対側となる従動体体の外側または内側に配置され、従動体に形成された螺旋状の溝と互いに噛合う動力伝達用の複数の螺旋状の溝が形成されて従動体の軸線方向に直線駆動する直動体を備えていることにある。
【0015】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、互い噛合う螺旋状の溝を介して従動体に直動体が相対変位可能な状態で配置されている。これにより、従動体が回転駆動することによって直動体が軸線方向に沿って直進駆動される。この結果、被駆動体の駆動方向が直線方向である分野にも本発明に係る駆動装置を適用することができ、本駆動装置の適用分野を広げることができる。
【0016】
また、請求項6に係る本発明の他の特徴は、前記駆動装置において、可撓性環状体は、従動体との接触面に動力を伝達するための複数の螺旋状の溝が形成されており、従動体は、可撓性環状体に形成された螺旋状の溝と互いに噛合う複数の螺旋状の溝が形成されていることにある。
【0017】
このように構成した請求項6に係る本発明の他の特徴によれば、可撓性環状体における撓み変形の位置において互い噛合う螺旋状の溝を介して可撓性環状体と従動体とが接触した状態で配置されている。これにより、可撓性環状体における撓み変形によって従動体が軸線方向に沿って直進駆動される。この結果、前記と同様に、被駆動体の駆動方向が直線方向である分野にも本発明に係る駆動装置を適用することができ、本駆動装置の適用分野を広げることができる。
【0018】
また、本発明は駆動装置の発明として実施できるばかりでなく、同駆動装置の駆動方法としても実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る駆動装置の主要部の断面および回路構成を模式的に示す構成概略図である。
【図2】本発明の変形例に係る駆動装置の主要部の断面を模式的に示す概略断面図である。
【図3】本発明の他の変形例に係る駆動装置の主要部の断面を模式的に示す概略断面図である。
【図4】本発明の他の変形例に係る駆動装置における可撓性環状体および従動体をそれぞれ示す概略斜視図である。
【図5】本発明の他の変形例に係る駆動装置における可撓性環状体、従動体および直動体をそれぞれ示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る駆動装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る駆動装置100の主要部の断面および回路構成を模式的に示した構成概略図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。
【0021】
(駆動装置100の構成)
駆動装置100は、ハウジング101を備えている。ハウジング101は、駆動装置100の外側の筐体を構成する部品であり、アルミニウム材を有底円筒状に形成して構成されている。このハウジング101の内周面には、6つのステータ102a〜102fが略等間隔に設けられている。ステータ102a〜102fは、鉄心の外周面にコイルを巻きました電磁石で構成されている。これらのステータ102a〜102fは、互いに対向する一対のステータ102a〜102f同士、具体的には、ステータ102aとステータ102d、ステータ102bとスタータ102eおよびステータ102cとスタータ102fが1つの相を構成し、後述するドライブ回路107から順次通電されることによりハウジング101内に回転磁場を形成する。
【0022】
ハウジング101の内周面に設けられたステータ102102a〜102fの内側には、可撓性環状体103が設けられている。可撓性環状体103は、後述する従動体105を回転駆動するための部品であり、磁性を有する素材(例えば、鋼材)を径方向に撓み変形可能な円筒状に形成して構成されている。可撓性環状体103の内周面には、可撓性環状体103の軸線方向に沿って内歯104が形成されている。この可撓性環状体103は、ハウジング101と同軸上に回転不能な状態で固定的に設けられている。
【0023】
可撓性環状体103の内側には、従動体105が設けられている。従動体105は、駆動装置100の回転出力を取り出すための部品であり、鋼製の軸体で構成されている。従動体105の外周面には、可撓性環状体103が径方向に撓み変形した際に可撓性環状体103の内周面に形成された内歯104と噛合う外歯106が内歯104の歯数より少ない歯数で軸線方向に沿って形成されている。この従動体105は、図示しない軸受けを介してハウジング101および可撓性従動体103に対して回転可能な状態で支持されている。
【0024】
ドライブ回路107は、主として、ステータ102a〜102fの励磁順序を決定する図示しない励磁回路と、直流電源108から供給される電力をステータ102a〜102fに供給する図示しない駆動回路とから構成されている。このドライブ回路107は、制御装置109によって作動が制御される。制御装置109は、マイクロコンピュータによって構成されており、図示しない入力装置を介して入力される駆動装置100の使用者からの入力信号に従ってドライブ回路107を介して従動体105の回転駆動を制御する。
【0025】
(駆動装置100の作動)
次に、上記のように構成した駆動装置100の作動について説明する。駆動装置100の使用者は、駆動装置100の回転駆動力の出力先となる図示しない被駆動装置に従動体105の出力側端部を接続する。そして、使用者は、図示しない入力装置を操作することによって駆動装置100(制御装置109)に従動体105の回転駆動を指示する。この指示に応答して、制御装置109は、ドライブ回路107を介してステータ102a〜102fにパルス状の電流を供給する。これにより、駆動装置100のステータ102a〜102fは、各相ごとに順次かつ連続的に励磁される。
【0026】
ステータ102a〜102fが各相ごとに励磁されると、励磁されたステータ102a〜102fの周囲には磁界が生じる。これにより、励磁されたステータ102a〜102fに対向する可撓性環状体103が引き寄せられて楕円状に撓み変形するとともに、可撓性環状体103の内側に形成された内歯104の一部が従動体105の外歯106の一部に噛合う。
【0027】
例えば、1つの相を構成するステータ102aとステータ102dとが励磁された場合、可撓性環状体103におけるステータ102aおよびステータ102dにそれぞれ対向する部分がステータ102aおよびステータ102d側にそれぞれ引き寄せられる。これにより、可撓性環状体103は、図示左右方向が長軸となるとともに図示上下方向が短軸となる楕円状に撓み変形し可撓性環状体103の内側に形成された内歯104と従動体105の外歯106とが互いに噛合う。具体的には、楕円状に撓み変形した可撓性環状体103の短軸側における図示上側および図示下側の各内歯104が従動体105の外歯106の図示上側および図示下側にそれぞれ噛合う。
【0028】
そして、次の瞬間にはステータ102aおよびステータ102dの励磁が解消されて、例えば、隣接するステータ102bおよびステータ102eが励磁される。これにより、可撓性環状体103が引き寄せられる位置がステータ102aおよびステータ102d側から励磁状態にあるステータ102bおよびステータ102e側に移る。このため、内歯104と外歯106とが噛合う位置もステータ102aおよびステータ102d側から励磁状態にあるステータ102bおよびステータ102e側に移る。このように励磁されるステータ102a〜102fが図示時計回りに各相ごとに順次かつ連続的に変化することにより、可撓性環状体103の撓み変形位置も図示時計回りに波動的に変化する。
【0029】
これにより、可撓性環状体103の内歯104と従動体105の外歯106とが噛合う位置も図示時計回りに連続的に変化する。この結果、従動体105が時計回りに回転駆動されて被駆動装置に駆動力が伝達される。すなわち、ステータ102a〜102fが、本発明に係る変形生起手段に相当する。なお、ステータ102a〜102fが図示反時計回りに励磁させた場合においても、前記と同様に、従動体105が反時計回りに回転駆動される。また、互いに隣接する一対のステータ102a〜102f間で互いに異なる磁極側に連続的に変化(所謂マイクロステッピング)させるようにしてもよい。
【0030】
そして、使用者による入力装置の操作によって駆動装置100の回転駆動の停止が指示された場合には、制御装置109は、ドライブ回路107を制御してステータ102a〜102fへの電流の供給を停止する。これにより、ステータ102a〜102fにおける連続的な励磁状態の変化が停止するため、可撓性環状体103の撓み変形が解消されて元の円形形状に戻る。この結果、可撓性環状体103の内歯104と従動体105の外歯106との噛合い状態が解消されて従動体105の回転駆動が停止する。
【0031】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、従動体105を回転駆動する可撓性環状体103は、同可撓性環状体103の外側にて回転不能な状態で固定的に配置されたステータ102a〜102fによって径方向への撓み変形が周方向に沿って連続的に生起される。これにより、可撓性環状体103は、可撓性環状体103の外側に固定的に配置されたステータ102a〜102fのみによって直接撓み変形が与えられる。すなわち、本発明においては、可撓性環状体103を撓み変形させるための従来技術に係るウェーブジェネレータと同ウェーブジェネレータを回転駆動するための構成とが1つにまとめられている。そして、このステータ102a〜102fは、可撓性環状体103に対して回転不能な状態で固定的に配置されている。これらの結果、駆動装置100における構成を簡単かつ小型化してメンテナンス工数を減らすことができるとともに作動時における機械的振動を抑えることができる。
【0032】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記変形例の説明においては、参照する各図における上記実施形態と同様の構成部分に同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0033】
例えば、上記実施形態においては、可撓性環状体103の外側にステータ102a〜102fを配置するとともに、同可撓性環状体103の内側に従動体105を配置して駆動装置100を構成した。しかし、可撓性環状体103に対するステータ102a〜102fおよび従動体105の配置位置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図2に示すように、可撓性環状体103の外側に環状の従動体105を配置するとともに、同可撓性環状体103の内側にステータ102a〜102fを配置して駆動装置100を構成することもできる。この場合、可撓性環状体103の外周面および従動体105の内周面には、可撓性環状体103の撓み変形時において互いに噛合う外歯104aおよび内歯106aがそれぞれ形成されている。また、ステータ102a〜102fは、可撓性環状体103の内側にて回転不能な状態で固定的に設けられた軸体110の外周面に略等間隔に設けられている。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0034】
また、上記実施形態においては、可撓性環状体103を磁性体で構成するとともに可撓性103の外側にステータ102a〜102fを配置することにより、磁力を用いて可撓性環状体103に径方向への撓み変形を周方向に沿って連続的に生じさせるように構成した。しかし、可撓性環状体103に撓み変形を生起させる変形生起手段は、可撓性環状体103の外側または内側に回転不能な状態で固定的に配置されて可撓性環状体103を周方向に沿って撓み変形させる構成であれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、静電力や磁歪を利用して可撓性環状体103を撓み変形させてもよいし、圧電素子やソレノイドなどを用いて機械的接触による押圧または引っ張りにより可撓性環状体103に撓み変形を与えるように構成してもよい。また、例えば、図3に示すように、ステータ102a〜102fに代えて、ハウジング101の内周面にエア吸引用ノズル111(またはエア噴射用ノズル)を複数配置することにより、ハウジング101内のエアを吸引(または可撓性環状体103に向けてエアを噴射)して可撓性環状体103を撓み変形させることもできる。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0035】
また、上記実施形態においては、ステータ102a〜102fから生じる磁力によって撓み変形させるために可撓性環状体103を磁性体である鋼材で構成した。しかし、可撓性環状体103は、少なくともステータ102a〜102fに対向する側が磁性体で構成されていればよく、必ずしも可撓性環状体103全体を磁性体で構成する必要はない。例えば、可撓性環状体103の内側の内歯104を可撓性を有するゴム材や樹脂材などで構成するとともに、その外側を磁性体で覆うように構成することもできる。この場合、可撓性を有するゴム材や樹脂材などで構成された内歯104の外側を覆う磁性体は、可撓性を有する磁性体(例えば、マグネットシート)で構成してもよいし、可撓性を有しない磁性体(例えば、板状の磁性体プレート)を複数貼り付けて構成するようにしてもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0036】
また、上記実施形態においては、従動体105は、従動体105の外周面に形成された外歯106と可撓性環状体103の内周面に形成された内歯104とが噛合って回転駆動するように構成されている。しかし、従動体105は、可撓性環状体103における撓み変形した部分に接触して回転駆動するように構成されていれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、従動体105の外周面と可撓性環状体103の内周面とを互いに直接接触させた摩擦接触により動力を伝達するように構成することもできる。この場合、従動体105の外周面および可撓性環状体103の内周面は、耐磨耗性に優れるとともに摩擦抵抗が大きな材料(例えば、ゴム材や樹脂材)で構成するとよい。これによれば、上記実施形態と同様の効果に加えて、上記実施形態における歯車伝動に比べて低騒音かつ低振動で駆動力を伝達することができる。
【0037】
また、上記実施形態においては、従動体105は、可撓性環状体103に対して回転駆動するように構成されている。しかし、従動体105を可撓性環状体103の軸線方向に沿って直線駆動させるように構成することもできる。例えば、図4に示すように、可撓性環状体103の内周面に螺旋状の複数の溝からなる雌ネジ112を形成するとともに、円筒状に形成された従動体105の外周面に前記雌ネジ112に噛合う螺旋状の複数の溝からなる雄ネジ113を形成する。そして、従動体105の内周面には、従動体105の回転を防止するためのキーが嵌め込まれるキー溝114を形成する。これによれば、可撓性環状体103が撓み変形することにより従動体105が可撓性環状体103(従動体105)の軸線方向に沿って直線駆動(図示矢印参照)する。この場合、従動体105は、可撓性103が周方向に1回転分だけ撓み変形することにより、雌ネジ112と雄ネジ113とのリード差分だけ直線変位する。
【0038】
また、例えば、図5に示すように、従動体105を円筒状に形成するとともに、従動体105の内周面に螺旋状の複数の溝からなる内ヘリコイド115を形成する。そして、従動体105の内側に、円筒状の直動体117を配置する。この直動体117の外周面には、
従動体105の内周面に形成された内ヘリコイド115に噛合う螺旋状の複数の溝からなる外ヘリコイド116が形成されている。また、直動体117の内周面には、前記と同様のキー溝114が形成されている。これによれば、従動体105は、上記実施形態と同様に、可撓性環状体103が撓み変形することにより回転駆動する。そして、従動体105の回転駆動により、従動体105の内側に配置された直動体117が可撓性環状体103(従動体105、直動体117)の軸線方向に沿って直線駆動(図示矢印参照)する。この場合、直動体117は、可撓性環状体103の内歯104の歯数と従動体105の外歯105の歯数との歯数差に対応する減速比で回転する従動体103の回転数に応じて内ヘリコイド115と外ヘリコイド116とのリード差分だけ直線変位する。これにより、直動体117を極めて小さい送り量で直線変位させることができる。
【符号の説明】
【0039】
100…駆動装置、101…ハウジング、102a〜102f…ステータ、103…可撓性環状体、104,104a…内歯、105…従動体、106,106a…外歯、107…ドライブ回路、108…直流電源、109…制御装置、110…軸体、111…エア吸引用ノズル(エア噴射ノズル)、112…雌ネジ、113…雄ネジ、114…キー溝、115…内ヘリコイド、116…外ヘリコイド、117…直動体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に撓み変形可能に形成された可撓性環状体と、
前記可撓性環状体の外側または内側に回転不能な状態で固定的に配置され、前記可撓性環状体を周方向に沿って前記撓み変形させるための変形生起手段と、
前記可撓性環状体の内側または外側に配置された前記変形生起手段とは反対側となる前記可撓性環状体の外側または内側に配置され、前記撓み変形した前記可撓性環状体の内周面または外周面に接触することにより回転駆動または直線駆動する従動体とを備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載した駆動装置において、
前記変形生起手段は、前記可撓性環状体の外側に配置されており、
前記従動体は、前記可撓性環状体の内側に配置されている駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した駆動装置において、
前記可撓性環状体は、少なくとも前記変形生起手段に対向する側が磁性体で構成されており、
前記変形生起手段は、前記可撓性環状体の周方向に沿って配置された電磁石を備えて構成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した駆動装置において、
前記可撓性環状体は、前記従動体との接触面に動力伝達用の複数の歯が形成されており、
前記従動体は、前記可撓性環状体に形成された歯と互いに噛合う動力伝達用の歯が前記可撓性環状体に形成された歯数とは異なる歯数で形成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載した駆動装置において、
前記従動体は、前記可撓性環状体との接触面の反対側に動力伝達用の複数の螺旋状の溝が形成されており、
前記従動体の内側または外側に配置された前記可撓性環状体とは反対側となる前記従動体体の外側または内側に配置され、前記従動体に形成された螺旋状の溝と互いに噛合う動力伝達用の複数の螺旋状の溝が形成されて前記従動体の軸線方向に直線駆動する直動体を備えていることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した駆動装置において、
前記可撓性環状体は、前記従動体との接触面に動力を伝達するための複数の螺旋状の溝が形成されており、
前記従動体は、前記可撓性環状体に形成された螺旋状の溝と互いに噛合う複数の螺旋状の溝が形成されていることを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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