説明

駆動装置

【課題】磁気カップリングを用いて入力側から出力側へトルクを伝達する駆動装置において、組立作業性の向上を図る。
【解決手段】磁気カップリング5のうち入力側動力伝達用マグネット33を固着したロータ23と出力側動力伝達用マグネット34を固着した出力側マグネットホルダ16との間にスペーサー機能と緩衝機能とを併せ持つOリング35を設ける。磁気カップリング5の組立作業時には、両動力伝達用マグネット33,34間の吸引力に任せて出力側マグネットホルダ16をロータ23の底壁28に接近させることで、Oリング35が緩衝機能を発揮しつつ両動力伝達用マグネット33,34同士の間にギャップGを形成することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機の振動や入力側と出力側との回転軸心のずれを磁気カップリングによって吸収しつつ被駆動部材を回転駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、磁気カップリングは磁力を利用して入力側から出力側へトルクを伝達するものであり、このような磁気カップリングを有する駆動装置として例えば特許文献1に記載のものが提案されている。この特許文献1に記載の駆動装置は、入力軸であるモータ軸の先端と出力軸の先端とに永久磁石を固着した略円板状のホルダをそれぞれ設け、それらのホルダの永久磁石同士を所定のギャップを隔てて近接対峙させることで磁気カップリングを構成しているものであって、モータ軸の振動やモータ軸と出力軸との軸心のずれを両永久磁石間のギャップによって吸収しつつ、両永久磁石の磁力によってモータ軸から出力軸へトルクを伝達するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−38087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の磁気カップリングは、一対の永久磁石間の磁力をもってトルクを伝達するようになっていることから、当然のことながら両永久磁石同士の間には常時吸引力が作用することになる。したがって、磁気カップリングの組立時には、両永久磁石同士を近接対峙させ、それら両永久磁石同士が吸着しないように両永久磁石をそれらの吸引力に抗して保持しつつ、その状態で両永久磁石同士を両者の間に所定のギャップが形成されるように位置決めしなければならず、その組立作業が非常に煩雑なものとなっていた。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、磁気カップリングを用いて入力側から出力側へトルクを伝達する駆動装置において、その組立作業性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、入力側動力伝達用マグネットを固定した入力側回転部材と出力側動力伝達用マグネットを固定した出力側回転部材とを、両動力伝達用マグネット同士が近接対峙するように配置することで磁気カップリングを構成し、上記入力側回転部材を原動機によって回転駆動することにより、上記出力側回転部材に連結された被駆動部材に磁気カップリングを介してトルクを伝達する駆動装置であることを前提とし、その上で、ゴム状弾性を有するスペーサー部材が上記両回転部材同士の間に介在していて、そのスペーサー部材によって上記両動力伝達用マグネット同士の間にギャップが形成されていることを特徴としている。
【0007】
したがって、この請求項1に記載の発明では、上記両回転部材間に上記スペーサー部材が介在していることから、上記磁気カップリングの組立時に、上記両動力伝達用マグネット同士が密着したり衝突してしまうことを防止できる。そして、上記磁気カップリングの組付後には、上記スペーサー部材の撓み変形をもって上記原動機の振動や上記両回転部材同士の回転軸心のずれを吸収しつつ、上記原動機から被駆動部材へトルクを伝達することができる。
【0008】
その上で請求項2に記載の発明は、上記両動力伝達用マグネット同士が上記両回転部材の回転軸心方向で互いに近接対峙していて、上記両回転部材間に挟持された環状のスペーサー部材によって上記両動力伝達用マグネット間にギャップが形成されていることを特徴としている。
【0009】
この請求項2に記載の発明では、上記スペーサー部材が環状に形成されていることから、上記原動機の振動や両回転部材同士の回転軸心のずれをより効果的に吸収できるようになる。
【0010】
さらにその上で請求項3に記載の発明は、上記スペーサー部材は、上記両動力伝達用マグネットの外周側となる位置で上記両回転部材間に挟持されていて、そのスペーサー部材の内周側に上記ギャップとなる空間を隔成していることを特徴としている。
【0011】
この請求項3に記載の発明では、上記ギャップとしての空間が上記スペーサー部材の内周側に隔成されることにより、その空間への塵埃や腐食性物質の進入を防止することができる。
【0012】
また、請求項2または3に記載の発明を前提とした上で上記磁気カップリングの組立作業性をさらに向上させる上では、請求項4に記載の発明のように、上記両回転部材の一方に上記スペーサー部材を嵌合保持する環状溝が形成されていて、上記スペーサー部材がその環状溝に嵌合保持されつつ他方の回転部材に着座していることが望ましい。具体的には請求項5に記載の発明のように、上記スペーサー部材と引っ掛かりの関係になるアンダーカット部を上記環状溝に形成するとよい。
【0013】
つまり、請求項4,5に記載の発明では、上記磁気カップリングの組立時において、上記両回転部材同士を近接対峙させるときに、上記環状溝に上記スペーサー部材を嵌合保持させることでそのスペーサー部材の脱落が防止されることになる。
【0014】
また、請求項2〜5のいずれかに記載の発明を前提とした上で構造の簡素化および省スペース化を図る上では、請求項6に記載の発明のように、略有底円筒状のロータの内周側にステータを配置してなるアウタロータモータを上記原動機として有していて、上記ロータを上記入力側回転部材として当該ロータの底壁外面に入力側動力伝達用マグネットを固着し、そのロータの底壁外面に上記出力側回転部材を対向配置することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、上記磁気カップリングの組立時に、上記両回転部材間に介在する上記スペーサー部材により、上記両動力伝達用マグネット同士がそれらの吸引力によって密着したり衝突することを防止することで、組立作業性を向上させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、上記スペーサー部材を環状に形成することで、上記原動機の振動や両回転部材同士の回転軸心のずれをより効果的に吸収できるようになる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、上記両動力伝達用マグネット間への塵埃や腐食性物質の進入を防止して所期の性能を長期に亘って維持できるようになる。
【0018】
請求項4,5に記載の発明によれば、上記磁気カップリングの組立作業時に、上記スペーサー部材の上記環状溝からの脱落を防止することができるようになり、上記磁気カップリングの組立作業性がさらに向上するメリットがある。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、上記原動機としてのアウタロータモータのロータを上記入力側回転部材とし、そのロータに入力側動力伝達用マグネットを固着するようになっているため、部品点数を削減して構造を簡素化することができる上に、省スペース化を図ることができるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であって、本発明に係る駆動装置の軸方向に沿った断面図。
【図2】図1に示す磁気カップリングの分解斜視図。
【図3】図1に示すOリングと環状溝との嵌合状態を示す拡大図。
【図4】図1〜3に示す実施の形態の変形例を示す図。
【図5】図1〜3に示す実施の形態の別の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜3は、本発明の好適な実施の形態として、原動機であるアウタロータモータが磁気カップリングを介して被駆動部材としての歯車を回転駆動する駆動装置を示す図であり、そのうち図1は駆動装置の軸方向に沿った断面図、図2は図1に示す磁気カップリングの分解斜視図、図3は後述するOリングと環状溝との嵌合状態を示す拡大図である。
【0022】
図1に示すように、原動機としてのアウタロータモータ1は、振動減衰作用を奏するゴム材料からなる複数の防振支持部材2を介してベースプレート3に固定されているとともに、略有底円筒状のケーシング4によって覆われていて、同じくケーシング4によって覆われたいわゆるディスク型の磁気カップリング5を介して当該アウタロータモータ1と同軸上に設けられた出力軸6にトルクを伝達するようになっている。これにより、出力軸6のうちケーシング4外に突出する端部にキー7をもって固定された被駆動部材としての歯車8が回転駆動されることになる。なお、図示は省略しているが、歯車8は他の歯車と噛み合って減速機を構成し、駆動対象となる図示外の機構にトルクを伝達することになる。
【0023】
ケーシング4は、アウタロータモータ1および磁気カップリング5を収容する略有底円筒状のケーシング本体9と、そのケーシング本体9の開口端に形成されたフランジ部10と、ケーシング本体9のうち底壁の略中央部に形成された略有底円筒状の軸受収容部11と、を備えていて、そのケーシング4のフランジ部10がベースプレート3に着座しつつねじ部材によって固定されているとともに、ケーシング4の軸受収容部11に収容されたベアリング12によって出力軸6が回転可能に支持されている。
【0024】
ベアリング12は、耐摩耗性および潤滑性の良好な樹脂材料をもって形成された円筒状のものであって、当該ベアリング12のうち歯車8側の端面が軸受収容部11の底壁11aに着座することによって軸方向で位置決められている。
【0025】
一方、出力軸6は、アウタロータモータ1側の端部に小径部14が形成された段付き形状のものであって、当該出力軸6の一般部13に装着された出力軸側スナップリング15がベアリング12のうち磁気カップリング5側の端面に着座することにより、軸方向で位置決められている。つまり、出力軸側スナップリング15が出力軸6の位置決め手段として機能するようになっている。
【0026】
そして、当該出力軸6の小径部14には、アウタロータモータ1に近接対峙する円板状の出力側マグネットホルダ16が出力側回転部材としてキー17をもって固定されている。なお、出力側マグネットホルダ16は出力軸6のうち小径部14と一般部13との間の段状部18に着座していて、その段状部18が出力側マグネットホルダ16を軸方向で位置決めする位置決め手段として機能するようになっている。
【0027】
アウタロータモータ1は、円筒状を呈するハウジング本体20の軸方向一端部にフランジ状の取付基部21を形成してなるハウジング19と、ハウジング本体20の内周側に回転自在に支持されたロータシャフト22と、薄板を略有底円筒状に折曲形成してなり、ハウジング本体20の外周側を覆う入力側回転部材としてのロータ23と、そのロータ23の内周側に収容されたステータ24と、を備えている。そして、ハウジング19の取付基部21が各防振支持部材2を介してベースプレート3に固定されている。
【0028】
ステータ24は、周知のように、ハウジング本体20の外周側に固定された積層磁性綱板からなるステータコア25と、そのステータコア25に巻回された複数のコイル26と、を備えている。そして、各コイル26に通電することでステータ24に発生する磁力とロータ23のうち周壁27の内面に固定されたロータマグネット29の磁力との相互作用により、ロータ23がロータシャフト22を中心として回転することになる。
【0029】
ロータシャフト22は、ハウジング本体20のうち軸方向両端部の内周側にそれぞれ固定された第1,第2ボールベアリング30,31によって回転自在に軸支されているものであって、当該ロータシャフト22のうち出力軸6側の端部をロータ23のうち底壁28の中央部に形成された略円筒状のかしめ継ぎ部28aに挿入しつつそのかしめ継ぎ部28aをかしめることで、ロータ23に一体的に固定されている。
【0030】
また、両ボールベアリング30,31は、周知のようにインナレース30a,31aとアウタレース30b,31bおよび転動体30c,31cによってそれぞれ構成されており、ハウジング本体20のうち軸方向両端部にそれぞれ凹設されたベアリング収容凹部20a,20bに両ボールベアリング30,31のアウタレース30b,31bがそれぞれ挿入されている。
【0031】
さらに、両ボールベアリング30,31のうち出力軸6側の第1ボールベアリング30のインナレース30aにロータ23側のかしめ継ぎ部28aが着座することで、ロータ23が軸方向で位置決められている。つまり、かしめ継ぎ部28aがロータ23の位置決め手段として機能するようになっている。なお、ロータシャフト22は、当該ロータシャフト22のうち反出力軸6側の端部に装着されたロータシャフト側スナップリング32と、両ボールベアリング30,31のうち反出力軸6側の第2ボールベアリング31のインナレース31aとの引っ掛かりによって抜け止めされている。
【0032】
そして、このアウタロータモータ1のうちロータ23の底壁28外面に略円板状の入力側動力伝達用マグネット33が固定されている一方、そのロータ23の底壁28に対向する出力側マグネットホルダ16にも同様に略円板状の出力側動力伝達用マグネット33が固定されており、これらの両動力伝達用マグネット33が回転軸心方向でギャップGを隔てて近接対峙することで、アウタロータモータ1から出力軸6へトルクを伝達する磁気カップリング5が形成されている。
【0033】
図1のほか図2に示すように、入力側動力伝達用マグネット33は、出力軸6側にN極が露出するように配置された略半円板状の第1入力側マグネットピース33aと、出力軸6側にS極が露出するように配置された略半円板状の第2入力側マグネットピース33bとに径方向で二分割されていて、ロータ23のうち底壁28の外面にその回転軸心を中心として凹設された平面視略円形状の入力側マグネット収容凹部28bに収容配置されている。これにより、ロータ23のうち底壁28の外面と入力側動力伝達用マグネット33の外面とが面一となっている。
【0034】
一方、出力側動力伝達用マグネット34も同様に、ロータ23側にN極が露出するように配置された略半円板状の第1出力側マグネットピース34aと、ロータ23側にS極が露出するように配置された略半円板状の第2出力側マグネットピース34bとに径方向で二分割されていて、出力側マグネットホルダ16の先端面16aにその回転軸心を中心として凹設された平面視略円形状の出力側マグネット収容凹部16bに収容配置されている。これにより、出力側マグネットホルダ16の先端面16aと出力側動力伝達用マグネット34の外面とが面一となっている。なお、両動力伝達用マグネット33,34は、例えば接着剤などの固定手段をもってロータ23または出力側マグネットホルダ16に一体的に固定されている。
【0035】
そして、出力側マグネットホルダ16は、第2出力側マグネットピース34bが第1入力側マグネットピース33aに、第1出力側マグネットピース34aが第2入力側マグネットピース33bにそれぞれ対向するようにロータ23に対して周方向で相対位置決めされた状態、つまり両動力伝達用マグネット33,34同士の間に吸引力が発生する状態で、ロータ23との間にスペーサー部材たるOリング35を挟持している。これにより、両動力伝達用マグネット33,34同士がギャップGを隔てて近接対峙し、ロータ23と出力軸6とが磁気的に連結されている。なお、図1に矢印Aで示すように、両動力伝達用マグネット33,34によって形成される磁界はアウタロータモータ1のロータマグネット29およびステータ25に及んでいないことから、その磁界がアウタロータモータ1のロータマグネット29およびステータ25によって形成される磁界に与える影響は小さいものとなる。
【0036】
また、Oリング35は、出力側マグネットホルダ16の先端面16aのうち出力側マグネット収容凹部16bの外周側に凹設された環状溝16cに嵌合保持されている。詳しくは図3に拡大して示すように、環状溝16cは、Oリング35と略同径の断面略不完全円形状であって、且つその開口角度θが180度以下となるように設定されている。つまり、環状溝16cのうち内外周側の両開口縁部16dが、図3に示す断面上においてOリング35を回転軸心方向で二分する仮想線Bよりもロータ23側に延出しており、それらの両開口縁部16dがアンダーカット部としてOリング35と引っ掛かりの関係になることで、後述する駆動装置の組立時にOリング35の脱落を防止するようになっている。
【0037】
他方、ロータ23の底壁28外面のうち入力側マグネット収容凹部28bの外周側には、出力側マグネットホルダ16の環状溝16cよりも浅い円環状の環状溝28cが形成されていて、この環状溝28cにOリング35が着座している。
【0038】
つまり、このように出力側マグネットホルダ16とロータ23との間にOリング35を挟持することにより、Oリング35の内周側にギャップGを形成しつつ、そのギャップGとしての空間と外部の空間との間をシールし、ギャップGとしての空間への塵埃や腐食性物質の進入を防止するようになっている。
【0039】
そして、以上のように構成した駆動装置を組み立てる際には、まず、出力側マグネットホルダ16にOリング35および出力側動力伝達用マグネット34を組み付け、その出力側マグネットホルダ16を出力軸6に固定する。その上で、ベースプレート3に予め固定したアウタロータモータ1のロータ23と出力側マグネットホルダ16とを上述したように回転方向で位置決めしつつ、その出力側マグネットホルダ16とロータ23とをOリング35を挟んで重合させることになる。このとき、出力側マグネットホルダ16とロータ23との間に介在するOリング35が緩衝機能とスペーサー機能とを併せ持っていることから、従来のように両動力伝達用マグネット33,34間の吸引力に抗して出力側マグネットホルダ16を保持する必要はなく、両動力伝達用マグネット33,34間の吸引力に任せて出力側マグネットホルダ16をロータ23の底壁28に接近させればよい。
【0040】
このようにして磁気カップリング5を組み立てたならば、その磁気カップリング5およびアウタロータモータ1にケーシング4を被せ、そのケーシング4のフランジ部10をベースプレート3に固定した上で、出力軸6に歯車8を固定して組立作業が完了することになる。
【0041】
そして、このように組み立てられた駆動装置では、アウタロータモータ1の振動、およびアウタロータモータ1のロータ23と出力軸6との相対的な傾きや軸直角方向のずれをOリング35の撓み変形によって吸収しつつ、両駆動伝達用マグネット33,34間の磁力によってロータ23から出力軸6へトルクが伝達されることになる。
【0042】
したがって、本実施の形態によれば、ロータ23と出力側マグネットホルダ16との間に緩衝機能とスペーサー機能とを併せ持つOリング35を設けることにより、両動力伝達用マグネット33,34間の吸引力に任せて出力側マグネットホルダ16をロータ23の底壁28に接近させるだけで両動力伝達用マグネット33,34同士を正規の相対位置関係で近接対峙させることができるから、駆動装置の組立作業性が飛躍的に向上する。
【0043】
さらに、両動力伝達用マグネット33,34間への塵埃や腐食性物質の進入をOリング35によって防止することにより、それら両動力伝達用マグネット33,34の腐食や塵埃等の付着による性能の劣化を防止することができ、磁気カップリング5の耐久性が向上するメリットもある。
【0044】
なお、本実施の形態では、スペーサー部材としてOリング35を用いているが、両動力伝達用マグネット33,34同士の間にギャップGを形成でき、且つゴム状弾性による緩衝機能を有してさえいれば、断面非円形状のスペーサー部材を用いることも可能であるほか、環状でないスペーサー部材を用いることも可能である。但し、ギャップGとしての空間への塵埃や腐食性物質の進入を防止する上では、スペーサー部材が環状に形成されていることが望ましいことは言うまでもない。
【0045】
図4は図1〜3に示した実施の形態の変形例を示す図であって、アウタロータモータのロータを単体で示す軸方向に沿った断面図である。
【0046】
図4に示す変形例は、入力側マグネット収容凹部36aおよび環状溝36bを形成した略円板状の入力側マグネットホルダ36を入力側回転部材としてのロータ37の底壁38に装着したものであって、他の部分は図1〜3に示した実施の形態と同様である。なお、図4中の符号39はロータ37の周壁を示している。
【0047】
具体的には、入力側マグネットホルダ36は、当該入力側マグネットホルダ36のうちロータ37の底壁38に対する着座面に形成された位置決め凹部36cと、ロータ37の底壁38に形成された位置決め突部38aとの凹凸嵌合をもって、ロータ37に対して径方向で相対的に位置決めされつつ、例えば接着剤などの固定手段をもってロータ37に対して一体的に固定されている。なお、位置決め凹部36cと位置決め突部38aは、ロータ37の軸心を中心とした平面視略円形状のものとしていずれも形成されている。
【0048】
そして、この変形例によれば、図1〜3に示した実施の形態と略同様の効果が得られるのは勿論のこと、ロータ37のうち底壁38の構造が簡素化されてそのロータ37の折曲加工が容易になるほか、入力側動力伝達用マグネット33が比較的剛性の高い入力側マグネットホルダ36によって保持されていることから、磁気カップリングを介したトルクの伝達をより安定して行えるようになるメリットがある。
【0049】
また、図5は図1〜3に示した実施の形態の別の変形例を示す図であって、本発明に係る駆動装置の軸方向に沿った断面図である。なお、図5において図1〜3に示した実施の形態と同様または相当する部分には同一の符号を付している。
【0050】
図5に示す別の変形例は、磁気カップリング48を構成する両動力伝達用マグネット45,46の内周側にスペーサー部材としてのOリング47を設けたものであって、他の部分は図1〜3に示した実施の形態と同様である。
【0051】
具体的には、アウタロータモータ40のロータ41のうち底壁43の外周側に入力側マグネット収容凹部43bが形成されているとともに、そのロータ41の底壁43のうち入力側マグネット収容凹部43bの内周側にOリング47が着座する環状溝43cが形成されている。一方、出力側マグネットホルダ44の先端面44aも同様であって、当該先端面44aの外周側に出力側マグネット収容凹部44bが、その先端面44aのうち出力側マグネット収容凹部44bの内周側にOリング47を嵌合保持する環状溝44cがそれぞれ形成されている。なお、図5中の符号42はロータの周壁を示しているとともに、図5中の符号43aはかしめ継ぎ部を示している。
【0052】
そして、第1,第2入力側マグネットピース45a,45bからなる入力側動力伝達用マグネット45がロータ41側の入力側マグネット収容凹部43bに、第1,第2出力側マグネットピース46a,46bからなる出力側動力伝達用マグネット46が出力側マグネットホルダ44の出力側マグネット収容凹部44bにそれぞれ収容保持されているとともに、出力側マグネットホルダ44の環状溝44cに嵌合保持されつつロータ41側の環状溝43cに着座するOリング47によって両動力伝達用マグネット45,46間にギャップGを形成している。
【0053】
その結果、図5に矢印Bで示す磁界が形成されて両動力伝達用マグネット45,46同士の間に吸引力が発生し、ロータ41と出力軸6とが磁気的に連結されることになる。
【0054】
したがって、この変形例によれば、両動力伝達用マグネット45,46間のギャップGへの塵埃や腐食性物質の進入を防止することはできないものの、両動力伝達用マグネット45,46のうち互いに対向する対向面の面積を図1〜3に示した実施の形態よりも大きくすることができるので、より大きなトルクを伝達できるようになるメリットがある。
【0055】
その上、Oリング47が図1〜3に示した実施の形態のものよりも小径となり、シール部品として広く一般に用いられている汎用のOリングをスペーサー部材として利用できるようになるため、コスト的に有利になるメリットもある。
【符号の説明】
【0056】
1…アウタロータモータ(原動機)
5…磁気カップリング
8…歯車(被駆動部材)
16…出力側マグネットホルダ(出力側回転部材)
16c…環状溝
16d…環状溝の開口縁部(アンダーカット部)
23…アウタロータモータのロータ(入力側回転部材)
24…アウタロータモータのステータ
28…ロータの底壁
33…入力側動力伝達用マグネット
34…出力側動力伝達用マグネット
35…Oリング(スペーサー部材)
37…アウタロータモータのロータ(入力側回転部材)
38…ロータの底壁
40…アウタロータモータ
41…アウタロータモータのロータ(入力側回転部材)
43…ロータの底壁
44…出力側マグネットホルダ(出力側回転部材)
44c…環状溝
45…入力側動力伝達用マグネット
46…出力側動力伝達用マグネット
47…Oリング(スペーサー部材)
48…磁気カップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側動力伝達用マグネットを固定した入力側回転部材と出力側動力伝達用マグネットを固定した出力側回転部材とを、両動力伝達用マグネット同士が近接対峙するように配置することで磁気カップリングを構成し、上記入力側回転部材を原動機によって回転駆動することにより、上記出力側回転部材に連結された被駆動部材に磁気カップリングを介してトルクを伝達する駆動装置であって、
ゴム状弾性を有するスペーサー部材が上記両回転部材同士の間に介在していて、そのスペーサー部材によって上記両動力伝達用マグネット同士の間にギャップが形成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
上記両動力伝達用マグネット同士が上記両回転部材の回転軸心方向で互いに近接対峙していて、上記両回転部材間に挟持された環状のスペーサー部材によって上記両動力伝達用マグネット間にギャップが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
上記スペーサー部材は、上記両動力伝達用マグネットの外周側となる位置で上記両回転部材間に挟持されていて、そのスペーサー部材の内周側に上記ギャップとなる空間を隔成していることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
上記両回転部材の一方に上記スペーサー部材を嵌合保持する環状溝が形成されていて、上記スペーサー部材がその環状溝に嵌合保持されつつ他方の回転部材に着座していることを特徴とする請求項2または3に記載の駆動装置。
【請求項5】
上記環状溝は、上記スペーサー部材と引っ掛かりの関係になるアンダーカット部を有していることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
略有底円筒状のロータの内周側にステータを配置してなるアウタロータモータを上記原動機として有していて、
上記ロータを上記入力側回転部材として当該ロータの底壁外面に入力側動力伝達用マグネットを固着し、そのロータの底壁外面に上記出力側回転部材を対向配置したことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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