説明

駐車支援システム

【課題】 複雑な演算処理を行うこと無く駐車支援を実現することができる駐車支援システムを提供する。
【解決手段】 駐車支援システム1は、駐車スペースを形成する駐車ライン上に埋め込まれた複数のICタグ2と、車両に搭載されたICタグリーダ3A,3B及びECU4とを備えている。ICタグリーダ3A,3Bは、ICタグ2の情報を読み取る機器であり、車両後部の左右両側に取り付けられている。ECU4は、車両位置算出部7と、車両誘導部8とを有している。車両位置算出部7は、ICタグリーダ3A,3Bにより読み取られたICタグ2の情報を受け取り、読み込まれたICタグ2の数を検出し、そのICタグ2の数の変化から駐車スペースと車両との位置関係を求める。車両誘導部8は、車両位置データに基づいて車両を駐車スペースに誘導するための支援情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車を支援する駐車支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の駐車支援システムとしては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の駐車支援システムは、車両が停止する目標停止位置を設定すると共に、車両の絶対位置及び絶対姿勢角を演算し、それらのデータに基づいて車両の駐車エリアに至る理想経路を演算し、車両を理想経路に沿って走行させるように操舵系及び駆動系を制御するものである。
【特許文献1】特開2001−107594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、車両の絶対位置及び絶対姿勢角や車両の駐車エリアに至る理想経路等を演算するため、全体的に演算処理が複雑になり、高性能の演算機が必要となる。
【0004】
本発明の目的は、複雑な演算処理を行うこと無く駐車支援を実現することができる駐車支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の駐車支援システムは、駐車スペースを示す駐車ライン上に埋め込まれた複数の無線タグと、車両の左右両側に配置され、無線タグの情報を読み取る複数の無線タグリーダと、各無線タグリーダにより読み取られた無線タグの情報に基づいて、駐車スペースと車両との位置関係を求める位置関係演算手段と、駐車スペースと車両との位置関係に応じて、駐車スペースに車両を駐車するための支援を行う駐車支援手段とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このような本発明の駐車支援システムにおいては、駐車スペースを示す駐車ライン上に複数の無線タグを予め埋め込んでおく。そして、車両の左右両側に配置された複数の無線タグリーダにより無線タグの情報を読み取り、その無線タグの情報に基づいて駐車スペースと車両との位置関係を求め、その結果に応じて駐車スペースに車両を駐車するための支援を行う。このように駐車ライン上に埋め込まれた無線タグの情報を用いることにより、駐車スペースと車両との位置関係を容易に求めることができる。これにより、複雑な演算処理を行うこと無く駐車支援を実現することができる。
【0007】
好ましくは、位置関係演算手段は、無線タグの情報に基づいて、各無線タグリーダにより読み込まれた無線タグの数を検出し、駐車スペースと車両との位置関係を求める。
【0008】
例えば駐車ライン上に無線タグがほぼ均一に埋め込まれている場合には、車両の左右両側に配置された各無線タグリーダにより読み取られた無線タグの数を検出することで、駐車スペースと車両との位置関係を確実に求めることができる。例えば、各無線タグリーダにより読み込まれた無線タグの数がほぼ等しいときは、車両は駐車スペースに対してほぼ適切な位置にあると判断し、各無線タグリーダにより読み込まれた無線タグの数に大きな差があるときは、車両は駐車スペースに対して左右何れかに寄った位置にあると判断することができる。
【0009】
また、各無線タグは、駐車ライン上における無線タグの埋め込み位置の情報を記憶しており、位置関係演算手段は、駐車ライン上における無線タグの埋め込み位置の情報に基づいて、駐車スペースと車両との位置関係を求めても良い。
【0010】
このように駐車ライン上における無線タグの埋め込み位置の情報を当該無線タグに記憶しておくことにより、その無線タグの埋め込み位置の情報を取得すれば、駐車スペースと車両との位置関係を容易に求めることができる。また、この場合には、駐車ライン上に埋め込まれる無線タグの数が少なくて済むため、無線タグの設置に要する手間を軽減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無線タグを有効利用することで、複雑な演算処理を行うこと無く駐車支援を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係わる駐車支援システムの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係わる駐車支援システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。同図において、本実施形態の駐車支援システム1は、駐車スペースSを形成する長方形の駐車ラインL(図3参照)上に埋め込まれた複数のICタグ(無線タグ)2と、車両に搭載されたICタグリーダ(無線タグリーダ)3A,3B、ECU(Electronic Control Unit)4、表示器5及び音声出力器6とを備えている。
【0014】
駐車ラインLは、容易に目視可能となるように地面とは異なる色で枠取りされている。駐車ラインLの幅は、全体的にほぼ等しくなっている。ICタグ2は、駐車ラインL上に略均一の密度で埋め込まれている。各ICタグ2には、個々のICタグ2を識別するために割り当てられた情報であるタグIDと、駐車スペースSを識別するための情報である駐車スペースIDとが記憶されている。
【0015】
ICタグリーダ3A,3Bは、ICタグ2の情報を近距離無線通信により読み取る機器である。ICタグリーダ3Aは、車両の左側後端部に取り付けられ、ICタグリーダ3Bは、車両の右側後端部に取り付けられている(図3参照)。
【0016】
ECU4は、車両位置算出部7と、車両誘導部8とを有している。車両位置算出部7は、ICタグリーダ3A,3Bにより読み取られたICタグ2の情報(タグ情報)を受け取り、そのタグ情報に基づいて駐車スペースSに対する車両の位置を算出する。車両誘導部8は、車両位置算出部7により得られた車両位置データに基づいて、車両を駐車スペースSに誘導するための支援情報を生成し、その支援情報を表示器5及び音声出力器6に送出する。
【0017】
表示器5は、車両誘導部8で生成された支援情報を運転者に対して画面表示する。音声出力器6は、車両誘導部8で生成された支援情報を運転者に対して音声出力する。これにより、運転者は、表示器5の表示案内や音声出力器6の音声案内に従って運転操作することで、車両を駐車スペースSの適正位置に駐車させることが可能となる。
【0018】
図2は、車両位置算出部7によって実行される車両位置算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0019】
同図において、まずICタグリーダ3A,3Bに対してICタグリード要求を行う(手順S51)。すると、ICタグリーダ3A,3Bは、駐車ラインL上に埋め込まれたICタグ2のタグ情報を読み取る。
【0020】
その後、ICタグリーダ3A,3Bにより読み取ったタグ情報を取得する(手順S52)。続いて、所得したタグ情報の中のタグIDに基づいて、ICタグリーダ3A,3Bにより読み込まれたICタグ2の数をカウントする(手順S53)。そして、ICタグリーダ3A,3Bにより前後のタイミングで読み込まれたICタグ2の数の変化(図4参照)を検出する(手順S54)。続いて、そのICタグ2の検出数の変化から、駐車スペースSと車両との位置関係を求める(手順S55)。
【0021】
このような駐車支援システム1において、上記の車両位置算出処理の具体例を示しつつ、駐車スペースSに車両を駐車するときの動作について説明する。ここでは、図3に示すように、駐車スペースSに車両Mをバックで駐車するものとする。なお、図3では、車両Mが駐車スペースSの適正な位置に駐車される様子を示している。
【0022】
同図において、ICタグリーダ3A,3Bは、同じ広さのICタグ検出可能領域RA,RBを有している。車両Mが図示矢印方向に移動するに従って、ICタグ検出可能領域RA,RBも同じように移動する。このとき、ICタグ検出可能領域RA,RBが駐車ラインLと重なり合う範囲に存在するICタグ2が、ICタグリーダ3A,3Bによって検出されることになる。
【0023】
まず車両Mが駐車開始地点(2点鎖線A参照)にある状態では、車両Mの右後部に配置されたICタグリーダ3Bが駐車ラインLの手前側部分と交差するため、図4の破線Pで示すように、数多くのICタグ2がICタグリーダ3Bにより検出される。なお、図4の破線Pは、ICタグリーダ3Bにより検出されるICタグ2の数の変化を表している。
【0024】
その後、車両Mが図示矢印方向に沿ってバックすると、車両Mの左後部に配置されたICタグリーダ3Aが駐車ラインLの手前側部分と交差するため、図4の実線Qで示すように、数多くのICタグ2がICタグリーダ3Aにより検出される。なお、図4の実線Qは、ICタグリーダ3Aにより検出されるICタグ2の数の変化を表している。
【0025】
その後、車両Mが更にバックすると、ICタグリーダ3A,3Bの持つICタグ検出可能領域RA,RBが、何れも駐車ラインLの横側部分と重なり合う(2点鎖線B参照)状態となる。このとき、車両Mから駐車ラインLの横側部分までの距離が左右両側でほぼ等しければ、図4に示すように、ほぼ同じ数のICタグ2がICタグリーダ3A,3Bにより検出される。
【0026】
そして、車両Mが駐車ラインLの奥側部分に近づくと、ICタグリーダ3A,3Bの持つICタグ検出可能領域RA,RBが、何れも駐車ラインLの奥側部分にも重なり合うようになる(実線C参照)。このため、駐車ラインLの横側部分に存在するICタグ2に加え、駐車ラインLの奥側部分に存在するICタグ2もICタグリーダ3A,3Bにより検出されるため、図4に示すように、ICタグリーダ3A,3Bにより検出されるICタグ2の数が急激に増加する。
【0027】
図5は、比較として、車両Mが駐車スペースSの不適正な位置に駐車される様子を示したものである。図5に示す例では、車両Mの駐車位置が駐車スペースSの左側に寄っているため、図6に示すように、ICタグリーダ3A,3Bにより検出されるICタグ2の数が大きく異なるようになる。具体的には、車両Mの左後部に配置されたICタグリーダ3Aにより検出されるICタグ2の数が、車両Mの右後部に配置されたICタグリーダ3Bにより検出されるICタグ2の数よりもかなり多くなる。
【0028】
以上のように本実施形態にあっては、駐車スペースSを形成する駐車ラインL上に埋め込まれたICタグ2の情報を読み取るICタグリーダ3A,3Bを車両後部の左右両側に搭載し、車両を駐車スペースSに駐車する際に、ICタグリーダ3A,3Bにより読み込まれたICタグ2の数を検出するようにしたので、ICタグ2の数の変化から駐車スペースSと車両との位置関係を容易に求めることができる。従って、ECU4の車両位置算出部7において複雑な計算処理を行わなくて済む。また、安価なICタグ2を駐車ラインLに沿って均一に埋め込めば良いため、ICタグ2の設置を容易に行うことができる。以上により、駐車支援を簡単な構成で実現することが可能となる。
【0029】
なお、本発明に係わる駐車支援システムは、上記実施形態に限定されるものでなく、種々変形可能である。
【0030】
例えば、書き換え可能なROMが内蔵されたICタグ2を幾つか用意し、駐車スペースSを示す駐車ラインL上にICタグ2を少ない密度で埋め込んだ後、各ICタグ2に必要な情報を書き込むようにしても良い。この場合、具体的には、上記のタグID及び駐車スペースIDの他、ICタグ2が駐車ラインLのどの位置に存在するかを示すタグ埋め込み位置情報を各ICタグ2に書き込む。タグ埋め込み位置情報は、例えば駐車ラインLの右奥側角部を基準点とした縦及び横の距離情報として保持しておく。
【0031】
図7は、上記のようにタグ埋め込み位置情報を記憶したICタグ2が駐車ラインL上に埋め込まれている場合に、ECU4の車両位置算出部7によって実行される車両位置算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0032】
同図において、まずICタグリーダ3A,3Bに対してICタグリード要求を行い(手順S61)、ICタグリーダ3A,3Bにより読み取ったタグ情報を取得する(手順S62)。そして、所得したタグ情報の中のタグ埋め込み位置情報に基づいて、駐車スペースSと車両との位置関係を求める(手順S63)。
【0033】
このようにすれば、駐車スペースSに車両を駐車する際に、ICタグリーダ3A,3Bにより読み込まれたタグ埋め込み位置情報から、駐車スペースSと車両との位置関係を容易に求めることができる。これにより、ECU4において複雑な演算処理を行うこと無く、駐車支援を実現することができる。また、駐車ラインL上に埋め込むICタグ2の数を少なくすることができる。
【0034】
また、上記実施形態では、車両の後部の左右両側にICタグリーダ3A,3Bを設ける構成としたが、ICタグリーダ3A,3Bを車両の前部または中央部の左右両側に設けても良い。また、ICタグリーダ3A,3Bを車両の前部及び後部の左右両側に3つ以上設けることにより、縦列駐車等への対応を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係わる駐車支援システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した車両位置算出部によって実行される車両位置算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】車両が駐車スペースの適正な位置に駐車される様子を示す概念図である。
【図4】図3に示した移動軌跡に沿って車両が駐車されるときに、ICタグリーダにより読み取られるICタグの数の一例を示すグラフである。
【図5】車両が駐車スペースの不適正な位置に駐車される様子を示す概念図である。
【図6】図5に示した移動軌跡に沿って車両が駐車されるときに、ICタグリーダにより読み取られるICタグの数の一例を示すグラフである。
【図7】本発明に係わる駐車支援システムの一実施形態の変形例において、図1に示した車両位置算出部によって実行される車両位置算出処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1…駐車支援システム、2…ICタグ(無線タグ)、3A,3B…ICタグリーダ(無線タグリーダ)、4…ECU、5…表示器(駐車支援手段)、6…音声出力器(駐車支援手段)、7…車両位置算出部(位置関係演算手段)、8…車両誘導部(駐車支援手段)、S…駐車スペース、L…駐車ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車スペースを示す駐車ライン上に埋め込まれた複数の無線タグと、
車両の左右両側に配置され、前記無線タグの情報を読み取る複数の無線タグリーダと、
前記各無線タグリーダにより読み取られた前記無線タグの情報に基づいて、前記駐車スペースと前記車両との位置関係を求める位置関係演算手段と、
前記駐車スペースと前記車両との位置関係に応じて、前記駐車スペースに前記車両を駐車するための支援を行う駐車支援手段とを備えることを特徴とする駐車支援システム。
【請求項2】
前記位置関係演算手段は、前記無線タグの情報に基づいて、前記各無線タグリーダにより読み込まれた前記無線タグの数を検出し、前記駐車スペースと前記車両との位置関係を求めることを特徴とする請求項1記載の駐車支援システム。
【請求項3】
前記各無線タグは、前記駐車ライン上における前記無線タグの埋め込み位置の情報を記憶しており、
前記位置関係演算手段は、前記駐車ライン上における前記無線タグの埋め込み位置の情報に基づいて、前記駐車スペースと前記車両との位置関係を求めることを特徴とする請求項1記載の駐車支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−162937(P2010−162937A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4668(P2009−4668)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】