説明

駐車車両の退出阻止装置

【課題】駐車車両の前後タイヤ間に起立して車両を鎖錠する鎖錠装置内に、車両検知の確実性が向上できるように車両検知センサを組込むようにした駐車車両の退出阻止装置を提供する。
【解決手段】鎖錠装置2の駐車区画の中央に向けて延設される鎖錠部5の延設端部側に回動軸14の軸受部17をカバーで覆ったカバー部6を設け、このカバー部6内に、送信コイルを含む送信ユニット18と受信コイルを含む受信ユニット19からなる車両検知センサ20を収納配置する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車区画毎に設けた鎖錠装置の鎖錠手段を駐車車両の前後タイヤ間に起立させて駐車車両を鎖錠して不正退出を阻止する駐車車両の退出阻止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車場の駐車区画毎に駐車を管理する無人管理方式の有料駐車場においては、駐車料金を精算せずに不正に退出することを防止するために、駐車区画毎に車両の退出を阻止する退出阻止装置を設けている。
かかる退出阻止装置として、従来、駐車車両の前後タイヤ間に鎖錠板を起立させて不正退出を阻止する構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された退出阻止装置は、回動軸を介して回動され起立して駐車車両の退出を阻止する鎖錠位置と倒伏して車両の退出を可能とする解錠位置をとる鎖錠板を備えた鎖錠装置と、この鎖錠装置に内蔵され送信コイルと受信コイルにより車両の有無を検知する車両検知センサとを備え、駐車区画の中央部において車両の進入・退出方向に対して略直角方向に鎖錠板を駐車区画内に向けて延設してある。そして、車両の進入に伴って送信コイルから受信コイルに向かう磁束が変化し車両検知センサから車両検知信号が発せられると、鎖錠装置の駆動部により回動軸を駆動して、鎖錠板を駐車車両の前後タイヤ間で起立させ駐車車両の退出を阻止する。駐車料金が精算されると、鎖錠装置の駆動部により回動軸を駆動して鎖錠板を倒伏させて車両の退出を可能にする。
【0003】
かかる構成の駐車車両の退出阻止装置によれば、車両検知センサを鎖錠装置に組込んだことにより、鎖錠装置と同時に車両検知センサが設置でき、駐車区画内に埋設する必要があるこの種の車両検知センサの埋設工事が不要となり、退出阻止装置の設置コストを低減できる利点がある。
【特許文献1】特開2000−200372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載した従来の退出阻止装置は、車両検知センサの送信コイルと受信コイルを、鎖錠板の延設方向と平行に間隔を設けて配置する構成であったため、車両検知センサの検知領域が進入車両の車体の端側に偏ると共に、金属製の鎖錠板の回動動作による影響を受け易く、車両検知センサの進入車両検知の確実性の点で十分なものではなかった。
【0005】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、車両検知の確実性が向上できるように車両検知センサを組込んだ駐車車両の退出阻止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、請求項1の発明は、車両の進入・退出方向に対して交差する方向に駐車区画内に延設された鎖錠手段を、駐車車両の前後タイヤ間に起立して駐車車両の退出を阻止する鎖錠位置と倒伏して車両の退出を可能とする解錠位置とに回動軸を介して選択的に駆動可能な鎖錠装置と、送信コイルから受信コイルに向かう磁束の変化に基づいて前記駐車区画内の車両の有無を検知する車両検知センサとを備え、前記車両検知センサの車両検知信号で前記鎖錠手段を前記鎖錠位置に駆動する構成の駐車車両の退出阻止装置において、前記鎖錠装置は、前記駐車区画の中央部に位置する前記鎖錠手段の延設端部側に前記回動軸の軸受部をカバーで覆ったカバー部を備え、該カバー部内に、前記車両検知センサを収納配置する構成としたことを特徴とする。
かかる構成では、駐車区画に車両が進入する際に、車両検知センサが進入車両の車体の略真下付近に位置することになるので、進入車両を確実に検知できるようになる。また、鎖錠手段の回動動作による影響を軽減できるようになる。
【0007】
請求項2のように、前記車両検知センサの前記送信コイルと受信コイルを、前記鎖錠手段の延設方向と交差する方向に間隔を設けて配置する構成とするとよい。
【0008】
請求項3のように、前記カバー部のカバーは、金属製であり、前記送信コイルからの磁束をカバー部の外部へ漏れる易くするための開口部を有する構成とするとよい。
かかる構成では、カバーの強度が高く進入車両の乗り上げ等によるカバーの破損を防止でき、しかも、車両検知センサの検知感度の低下を防止できるようになる。この場合、請求項4のように、前記開口部を、樹脂部材で覆う構成とすれば、カバー部内に塵や雨水等が入るのを防止できるようになる。
【0009】
請求項5のように、前記カバー部のカバーを樹脂製とすれば、送信コイルからの磁束がカバーを通過し易く、車両検知センサの検知感度の低下を防止できるようになる。この場合に、請求項6のように、前記カバーの内側に補強リブを設ける構成とすれば、カバーの強度を高めることができるようになる。また、請求項7のように、前記補強リブを、格子状に形成すれば、より一層カバーの強度を高めることができるようになる。
【0010】
また、カバーが樹脂製である場合、請求項8のように、前記カバーを締結する前記鎖錠装置のベース部に係合孔を形成すると共に、前記カバーに、当該カバーの固定時に前記係合孔に係合する係合突起を形成する構成とするとよい。
かかる構成では、車両がカバー部に乗り上げてもカバーが大きく変形することを防止でき、カバーの損傷を防止できるようになる。
【0011】
請求項9のように、前記車両検知センサは、前記送信コイルを含む送信部と受信コイルを含む受信部をそれぞれ筐体内に収納してユニット化し、各ユニットを防水構造とするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、進入車両の車体の真下付近に車両検知センサが位置すると共に、鎖錠手段の回動動作の影響を低減できるので、進入車両を確実に検知でき、車両検知センサの車両検知の確実性を向上できる。また、カバー部のカバーを樹脂で形成した場合に、カバーに係合突起を設けてベース部の係合孔に係合させるように構成すれば、車両の乗り上げ等によりカバーが大きく変形することを防止でき、樹脂製カバーの破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の駐車車両の退出阻止装置を駐車区画に配置した状態を示しており、退出阻止装置1は、駐車車両の鎖錠を行う鎖錠装置2と、後述するように鎖錠装置2に内蔵された車両検知センサ24(図3に示す)とを備えて構成され、各駐車区画3毎に配置される。
【0014】
尚、本実施形態の駐車管理システムは、鎖錠装置2にCPUを備えた制御部を内蔵し、車両検知センサ24の出力状態及び料金精算機からの出力情報に基づいて鎖錠装置2の鎖錠・解錠動作を制御すると共に、駐車区画3における駐車時間等の管理処理を行う。退出時の料金精算は、例えば駐車場の出入口等に設置した集中料金精算機と各駐車区画の鎖錠装置2内に設けた制御部との間で情報を交信することにより、集中料金精算機で行う構成である。
【0015】
前記鎖錠装置2は、図2及び図3に示すように構成される。
鎖錠装置2は、図1に示すように駐車区画3の側端の略中央部に配置される駆動部4と、図1に示すように矢印で示す車両の進入・退出方向と交差するよう前記進入・退出方向に対して略直角方向に駆動部4側から駐車区画3内に延設した鎖錠部5と、鎖錠部5の延設端部側に設けられるカバー部6とを備える。
【0016】
前記駆動部4は、モータや動力伝達機構等からなる駆動機構と、車両検知センサ24の出力状態や料金精算機から出力情報に基づいてモータを駆動制御する前記制御部等がカバー11A、11Bで覆われて設けられている。12は、トラブル発生時に手動で鎖錠部5の鎖錠板15を倒伏させるために駆動部4に設けられた手動スイッチを外部から操作するための窓を覆っている錠付きの窓カバーであり、悪戯防止のために通常は鎖錠されて取り外せないようになっている。8は、退出阻止装置1の各機器の動作状態を表示する状態表示部である。
【0017】
前記鎖錠部5は、地面に設置されるベース部13の両端壁に回動可能に軸支され前記駆動機構により駆動される回動軸14と、回動軸14と一体に設けられて駐車車両の前後タイヤ間に起立して駐車車両の退出を阻止する鎖錠位置と倒伏して車両の退出を可能とする解錠位置とに回動軸14を介して回動される鎖錠手段としての鎖錠板15とを備える。前記ベース部13は、前記鎖錠板15と対応する位置で車両が通過し易いように回動軸14とは反対方向に下方に傾斜する傾斜部を有する。前記鎖錠板15は、回動軸14に金属製の板材15aと金属製パイプ15bを固定して構成してある。
【0018】
前記カバー部6は、図3に示すようにベース部13の端壁13aに取付けられて回動軸14の延設端部を軸支する軸受部17と、鎖錠板15の延設方向と交差する方向、例えば鎖錠板15の延設方向に対して略直角方向に間隔を設けてベース部13に配置された送信コイルを含む送信ユニット18と受信コイルを含む受信ユニット19からなる車両検知センサ20とが設けられており、図4及び図5に示すような樹脂製カバー30で覆っている。前記送信ユニット18と受信ユニット19は、送信コイルを含む送信回路と受信コイルを含む受信回路をそれぞれ筐体内に収納して防水構造としてある。また、カバー部6のベース部13部分には、樹脂製カバー30を取付ける際に樹脂製カバー30の形成された後述する係合突起38が係合する複数の係合孔21が形成されている。図3中、22、22は送信ユニット18及び受信ユニット19を駆動部4の制御部に接続するセンサケーブル、23はベース部13を地面に固定するボルトの挿通孔、24は樹脂製カバー30をベース部13に固定するボルトのネジ孔である。
【0019】
前記樹脂製カバー30について説明する。
図4は、樹脂製カバー30の外観を示す図で、(A)は上面図、(B)は(A)の右側面図、(C)は(A)の底面図をそれぞれ示し、図5は樹脂製カバー30の内側を示す。
図4に示すように、樹脂製カバー30の上面は、図の左端側中央部から上下方向と図の右端側に向けてそれぞれ下方に傾斜する形状であり、傾斜部分に上下対称に窪みをそれぞれ形成し、一方の窪み(図の上側)にベース部13を地面に固定するボルトの取付孔31を形成し、各窪みから更に一段窪んだそれぞれのカバー30をベース部13に固定するボルトの取付孔32,32が形成されている。また、図5に示すように、樹脂製カバー30の内側には、軸受部17、送信ユニット18、受信ユニット19の各収納部33,34,35を除いた部分に、補強リブ36が格子状に設けられている。また、前記センサケーブル22,22の配線部分の補強リブ36を短く形成してセンサケーブル22,22の配線逃げ部37を形成してある。更に、ベース部13に形成した図3に示す各係合孔21に対応する補強リブ36の部位に、前述した係合突起38が形成されている。
【0020】
次に、本実施形態の退出阻止装置の一連の動作について説明する。
駐車区画3に車両が存在しない状態では、鎖錠板15は倒伏して解錠位置にある。この状態で、車両が駐車区画3に進入しカバー部6の上方を通過すると送信ユニット18内の送信コイルから受信ユニット19内の受信コイルに向かう磁束が変化する。この磁束の変化に基づいて車両検知センサ20から車両検知信号が駆動部4内の制御部に出力される。制御部は前記車両検知信号の入力により駆動機構を駆動制御して回動軸14を介して鎖錠板15を起立させて鎖錠位置に駆動し、進入車両の退出を阻止する。
【0021】
車両が退出する場合は、使用者は集中料金精算機で精算操作を行う。精算が完了すると料金精算機から該当する駐車区画3の制御部に対して鎖錠板15の倒伏指令が発せられ、駆動機構を介して鎖錠板15を倒伏駆動制御して解錠位置とし、駐車車両の退出を可能とする。
【0022】
かかる構成の退出阻止装置によれば、鎖錠装置2の駐車区画3中央部付近に配置されるカバー部6に車両検知センサ20を配置したことにより、車体の略真下で車両検知ができると共に、鎖錠板15の延設方向に対して交差方向に送信ユニット18と受信ユニット19を配置したので、回動軸14及び鎖錠板15の動きの影響を軽減できる。また、樹脂製カバー30としたことによりセンサ感度が良好である。従って、車両検知の確実性が従来と比較して格段に向上する。
【0023】
また、樹脂製カバー30は格子状に補強リブ36を設けると共に、ベース部13に固定した時に図6に示すように係合突起38が係合孔21に係合するようになっており、例えばタイヤの乗り上げ等により図6の矢印方向から力が作用して樹脂製カバー30が変形した場合、係合突起38が係合孔21に周縁に当接することにより、樹脂製カバー30の変形が抑えられるので、十分な強度を有し、カバー30の破損を防止できる。
【0024】
また、車両検知センサ20をカバー部6内に収納したので、タイヤ等が直接接触してセンサ20が破損するということがない。
また、車両検知センサ20の送信部と受信部をユニット化して防水構造としたので、カバー6全体を防水構造にする必要がない。
【0025】
尚、カバー部6を金属製カバーで覆うようにすれば、強度が格段に向上する。この場合、図7に示すように、金属製カバー40に送信コイルからの磁束が外部に漏れ易くするための開口部41を設け、該開口部41を図に斜線で示す樹脂部材42で閉塞すると構成とすればよい。樹脂部材42を設けず開口部41を開放状態としてもよいが、樹脂部材42で開口部41を閉塞すれば、カバー部6内に塵や雨水等が入り込むことがない。開口部41は、上面でなくとも良い。また、金属製カバーの場合、磁束が外部に漏れる経路があればよいので、磁束を漏れ易くする開口部として任意の箇所に隙間ができるように金属製カバーを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る駐車車両の退出阻止装置の一実施形態を駐車区画に配置した状態を示す図
【図2】同上実施形態の鎖錠装置の平面図
【図3】図2の鎖錠装置のカバー部の構成図
【図4】カバー部を覆う樹脂製カバーの構成図
【図5】樹脂製カバーの内側を示す斜視図
【図6】係合孔と係合突起の係合状態を示す図
【図7】カバー部を覆う金属製カバーの構成例を示す図
【符号の説明】
【0027】
1 退出阻止装置
2 鎖錠装置
3 駐車区画
4 駆動部
5 鎖錠部
6 カバー部
13 ベース部
14 回動軸
15 鎖錠板
17 軸受部
18 送信ユニット
19 受信ユニット
20 車両検知センサ
21 係合孔
30 樹脂製カバー
36 補強リブ
38 係合突起
40 金属製カバー
41 開口部
42 樹脂部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進入・退出方向に対して交差する方向に駐車区画内に延設された鎖錠手段を、駐車車両の前後タイヤ間に起立して駐車車両の退出を阻止する鎖錠位置と倒伏して車両の退出を可能とする解錠位置とに回動軸を介して選択的に駆動可能な鎖錠装置と、送信コイルから受信コイルに向かう磁束の変化に基づいて前記駐車区画内の車両の有無を検知する車両検知センサとを備え、前記車両検知センサの車両検知信号で前記鎖錠手段を前記鎖錠位置に駆動する構成の駐車車両の退出阻止装置において、
前記鎖錠装置は、前記駐車区画の中央部に位置する前記鎖錠手段の延設端部側に前記回動軸の軸受部をカバーで覆ったカバー部を備え、該カバー部内に、前記車両検知センサを収納配置する構成としたことを特徴とする駐車車両の退出阻止装置。
【請求項2】
前記車両検知センサの前記送信コイルと受信コイルを、前記鎖錠手段の延設方向と交差する方向に間隔を設けて配置する構成とした請求項1に記載の駐車車両の退出阻止装置。
【請求項3】
前記カバー部のカバーは、金属製であり、前記送信コイルからの磁束をカバー部の外部へ漏れる易くするための開口部を有する請求項1又は2に記載の駐車車両の退出阻止装置。
【請求項4】
前記開口部を、樹脂部材で覆う構成とした請求項3に記載の駐車車両の退出阻止装置。
【請求項5】
前記カバー部のカバーは、樹脂製である請求項1又は2に記載の駐車車両の退出阻止装置。
【請求項6】
前記カバーは、内側に補強リブを有する請求項5に記載の駐車車両の退出阻止装置。
【請求項7】
前記補強リブを、格子状に形成した請求項6に記載の駐車車両の退出阻止装置。
【請求項8】
前記カバー部のカバーを締結する前記鎖錠装置のベース部に係合孔を形成すると共に、前記カバーに、当該カバーの固定時に前記係合孔に係合する係合突起を形成した請求項5〜7のいずれか1つに記載の駐車車両の退出阻止装置。
【請求項9】
前記車両検知センサは、前記送信コイルを含む送信部と受信コイルを含む受信部をそれぞれ筐体内に収納してユニット化し、各ユニットを防水構造とした請求項1〜8のいずれか1つに記載の駐車車両の退出阻止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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