説明

駐輪設備

【課題】 多数の自転車を効率的に格納でき、且つ自転車の入出庫を短時間で効率的に行うことができる駐輪設備を提供する。
【解決手段】 自転車入出庫位置から下方に向けて形成された縦穴状の空間に、複数の自転車格納部が放射状に設けられた格納棚を多段に有する円筒状の格納庫を昇降可能に配置し、この格納庫を昇降機構により昇降させることにより任意の格納棚が前記自転車入出庫位置に停止でき、且つこの自転車入出庫位置において各格納棚の任意の自転車格納部に対して自転車の入出庫を行えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自転車用の駐輪設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の自転車を駐輪させるための設備として、地下式の立体駐輪設備が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2000−230340号公報
【特許文献2】特開平11−270171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これら従来の地下式立体駐輪設備は、地下格納庫(駐輪部)と地上ゲート部(自転車入出庫部)との間で、エレベータ式の移送装置を用いて自転車を移送するものであるため、自転車の入出庫に手間と時間がかかる難点がある。特に、駅周辺に設置される駐輪施設では、朝夕の短い時間に自転車の入出庫が集中するため、従来の地下式立体駐輪設備では、このような入出庫の集中に十分対応することができない。
【0004】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、多数の自転車を効率的に格納できるとともに、自転車の入出庫を短時間で効率的に行うことができる駐輪設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 自転車入出庫位置から下方に向けて形成された縦穴状の空間に、複数の自転車格納部が放射状に設けられた格納棚を多段に有する円筒状の格納庫を昇降可能に配置し、該格納庫を昇降機構により昇降させることにより任意の格納棚が前記自転車入出庫位置に停止でき、且つ該自転車入出庫位置において各格納棚の任意の自転車格納部に対して自転車の入出庫を行えるようにしたことを特徴とする駐輪設備。
[2] 上記[1]の駐輪設備において、自転車入出庫位置が地上部であり、縦穴状の空間が地下空間であることを特徴とする駐輪場。
【0006】
[3] 上記[1]又は[2]の駐輪設備において、各自転車格納部の内方に、自転車の前輪を係脱可能にクランプして、駆動機構により上下昇降できる自転車保持手段を有することを特徴とする駐輪場。
[4] 複数の自転車格納部が放射状に設けられた円筒状の格納庫を、その筒軸を中心に回転自在に設け、該格納庫の外側位置に、自転車格納部への自転車入出庫を防止するための遮蔽体を格納庫外周に沿って設置するとともに、該遮蔽体に、1つの自転車格納部のみから自転車を入出庫できる大きさの開閉可能なゲートを設けたことを特徴とする駐輪設備。
【発明の効果】
【0007】
請求項1〜3に係る発明によれば、格納庫を昇降させ、所定の格納棚を自転車入出庫位置に停止させるだけで、自転車格納部に対する自転車の入出庫を行うことができる。また、自転車の入出庫は、格納棚周方向の任意の位置で任意の自転車格納部に対して行うことができ、しかも、各格納棚の複数の自転車格納部に対して、同時に自転車の入出庫を行うことができる。このため、従来の駐輪設備に較べて自転車の入出庫を短時間で効率的に行うことができ、特に、駅周辺の駐輪施設に極めて有用な設備であると言える。
【0008】
また、請求項4に係る発明によれば、格納庫を回転させて所望の自転車格納部をゲートの位置に停止させることにより、その自転車格納部に対する自転車入出庫を簡単に行うことができる。また、格納庫の外側に遮蔽体を設け、これに設けられたゲートだけから自転車入出庫を行えるようにしたので、自転車の盗難防止にも役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の第一の形態の駐輪設備について説明する。
図1〜図3は本発明の第一の形態の駐輪設備の一実施形態を示すもので、図1は全体説明図、図2は格納庫の水平断面図、図3は格納庫を部分的に示す縦断面図である。
図において、Aは自転車入出庫位置、Bはこの自転車入出庫位置Aから下方に向けて形成された縦穴状の空間であり、通常、地下式立体駐輪設備の場合には、自転車入出庫位置Aが地上部、縦穴状の空間Bが地下空間となる。但し、これに限定されるものではなく、地上式立体駐輪設備や半地下式立体駐輪設備としてもよく、これらの場合には、例えば、自転車入出庫位置Aを建物の上層階、縦穴状の空間Bの一部又は全部を建物内の空間としてもよい。
【0010】
前記縦穴状の空間B(以下、便宜上「地下空間B」という)には、円筒状の格納庫1が昇降可能に配置されている。この格納庫1は、複数の自転車格納部20が放射状に設けられた格納棚2を多段(本実施形態では4段の格納棚2a〜2d)に有している。また、最下部の格納棚2dの下部には、適当な厚さ(高さ)の底部構造部6が連設されている。この底部構造部6は、最下部の格納棚2dを自転車入出庫位置Aに位置させるために設けられるものである。
各格納棚2では、適当な仕切11(仕切り板又はフレームなど)で複数の自転車格納部20(格納用空間)が区画されており、これら自転車格納部20は格納庫外周方向に向けて開放し、自転車の入出庫を自由に行えるように構成されている。図において、12は各格納棚2の床部である。
【0011】
各自転車格納部20の内方(最内方)には、自転車の前輪を係脱可能にクランプして、駆動機構により上下昇降する自転車保持手段3が設けられている。
この自転車保持手段3は、図3に示すように自転車Cを前輪aが上、後輪bが下になるような姿勢で格納するために、自転車をその姿勢に持ち上げ、保持するための手段である。各自転車保持手段3は、自転車格納部20の内方の上下方向に設けられた移動用ガイド4(ガイドレール)に沿って上下昇降駆動する本体30と、この本体30に搭載される、自転車前輪をクランプするためのクランプ装置5とを備えている。前記本体30は、走行ローラを駆動モータなどで駆動させることにより(いずれも図示せず)、前記移動用ガイド4に沿って上下昇降する。前記クランプ装置31のクランプ機構は任意であるが、例えば、油圧装置などで開閉動作する鋏状のクランプなどで構成してもよい。
【0012】
格納庫1は、昇降機構により昇降させることにより任意の格納棚2が前記自転車入出庫位置Aに停止でき、且つこの自転車入出庫位置Aにおいて各格納棚2の任意の自転車格納部20に対して自転車の入出庫ができるように構成される。
格納庫1の周方向複数箇所(本実施形態では4箇所)には、格納庫上下方向に沿ってガイドレール9が設けられるともに、この格納庫1が収納される地下空間Bには、前記各ガイドレール9に係合するガイドロール10が上下方向で適当な間隔で配置され、格納庫1は各ガイドレール9に係合するガイドロール10にガイドされて上下昇降できるようになっている。
【0013】
格納庫1を昇降させるための昇降機構は任意であるが、本実施形態では、ドラム式の巻取機5を用いている。この巻取機5は地下空間Bの底部に設置され、これから繰り出されるワイヤ7が自転車入出庫位置A側に設けられたシーブ8を経由して反転し、格納庫1の底部構造部6の下端に導かれ、そこに接続70されている。
前記自転車入出庫位置Aは、格納庫1の各格納棚2に対してその周方向の任意の位置から任意の自転車格納部20に対して自転車の入出庫を行えるよう、そのスペースが確保されている。
【0014】
以上のような本発明の第一の形態の駐輪設備によれば、格納庫1を昇降させ、所定の格納棚2を自転車入出庫位置Aに停止させるだけで、格納庫1に対する自転車の入出庫を行うことができる。また、その自転車入出庫は、格納棚2の周方向の任意の位置で任意の自転車格納部20に対して行うことができ、したがって、各格納棚2の複数の自転車格納部20に対して、同時に自転車の入出庫を行うことができる。
【0015】
次に、本発明の第二の形態の駐輪設備について説明する。
図4及び図5は、本発明の第二の形態の駐輪設備の一実施形態を示すもので、図4は縦断面図、図5は水平断面図である。
図において、13は格納庫、14は格納庫13を外囲するように設置される遮蔽体である。
前記格納庫13は、複数の自転車格納部15が放射状に設けられた円筒状の格納庫であり、適宜な基礎部Xに筒軸を中心に回転自在に設けられている。本実施形態の格納庫13は、その中心の筒体130の下端部が、基礎部Xに設けられた支持部16(軸受部)に回転自在に支持されている。
前記格納庫13は手動で回転させるようにしてもよいが、本実施形態では、回転駆動装置(図示せず)で回転できるようにしている。この回転駆動装置は、例えば、前記筒体130の外周に設けられるギアと、駆動モータと、この駆動モータの回転を前記ギアに伝える減速機構などから構成される。
【0016】
格納庫13内は、適当な仕切18(仕切り板又はフレームなど)で複数の自転車格納部15(格納用空間)が区画されており、これら自転車格納部15は格納庫外周方向に向けて開放し、自転車の入出庫を自由に行えるように構成されている。図において、19は格納庫13の床部である。
各自転車格納部15の内方(最内方)には、図1〜図3の実施形態と同様、自転車の前輪を係脱可能にクランプして、駆動機構により上下昇降する自転車保持手段3が設けられている。この自転車保持手段3の構成は図1〜図3の実施形態と同一なので、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0017】
前記遮蔽体14は、自転車格納部15への自転車入出庫を防止するために、格納庫13の外側位置に格納庫外周に沿って設置されるもので、主として自転車の盗難防止の目的で設けられるものである。この遮蔽体14は、通常、フェンスやフレーム体などで構成される。
この遮蔽体14には、1つの自転車格納部15のみから自転車を入出庫できる大きさの開閉可能なゲート17が設けられている。このゲートは、開閉可能な扉又はフレームなどで構成される。
【0018】
以上のような本発明の第二の形態の駐輪設備によれば、格納庫13を回転させて所望の自転車格納部15をゲート17の位置に停止させることにより、その自転車格納部15に対する自転車入出庫を簡単に行うことができる。また、格納庫13の外側に遮蔽体14を設け、これに設けられたゲート17だけから自転車の入出庫を行えるようにしたので、自転車の盗難防止にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一の形態の駐輪設備の一実施形態を示す全体説明図
【図2】図1の実施形態における格納庫の水平断面図
【図3】図1の実施形態における格納庫を部分的に示す縦断面図
【図4】本発明の第二の形態の駐輪設備の一実施形態を示す縦断面図
【図5】図4の実施形態の水平断面図
【符号の説明】
【0020】
1 格納庫
2a〜2d 格納棚
3 自転車保持手段
4 移動用ガイド
5 巻取機
6 底部構造部
7 ワイヤ
8 シーブ
9 ガイドレール
10 ガイドローラ
11 仕切
12 床部
13 格納庫
14 遮蔽体
15 自転車格納部
16 支持部
17 ゲート
18 仕切
19 床部
20 自転車格納部
30 本体
31 クランプ装置
70 接続部
130 筒体
A 自転車入出庫位置
B 空間
X 基礎部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車入出庫位置から下方に向けて形成された縦穴状の空間に、複数の自転車格納部が放射状に設けられた格納棚を多段に有する円筒状の格納庫を昇降可能に配置し、該格納庫を昇降機構により昇降させることにより任意の格納棚が前記自転車入出庫位置に停止でき、且つ該自転車入出庫位置において各格納棚の任意の自転車格納部に対して自転車の入出庫を行えるようにしたことを特徴とする駐輪設備。
【請求項2】
自転車入出庫位置が地上部であり、縦穴状の空間が地下空間であることを特徴とする請求項1に記載の駐輪場。
【請求項3】
各自転車格納部の内方に、自転車の前輪を係脱可能にクランプして、駆動機構により上下昇降できる自転車保持手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の駐輪場。
【請求項4】
複数の自転車格納部が放射状に設けられた円筒状の格納庫を、その筒軸を中心に回転自在に設け、該格納庫の外側位置に、自転車格納部への自転車入出庫を防止するための遮蔽体を格納庫外周に沿って設置するとともに、該遮蔽体に、1つの自転車格納部のみから自転車を入出庫できる大きさの開閉可能なゲートを設けたことを特徴とする駐輪設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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