説明

骨成長粒子及びそれの骨誘導組成物

線維状コラーゲン成分及びリン酸カルシウム成分を含む生体適合性合成骨成長組成物である。組成物は粒子状に形成されて、そして骨格異常部位に提供される単一物に形成される。単一物が形成される前または後のどちらかに骨誘導成分が更に加えられてもよい。組成物はペースト状又はパテ状に調合されて、骨成長及び/又は修復を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して骨成長粒子(bone growth particles)を含む組成物、組成物の調製方法、及び骨成長促進における組成物の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
骨形成タンパク質(BMPs)、マイトジェン(mitogenic)成長因子などの骨誘導タンパク質又は成長因子を利用することにより、骨格異常の再建手術(例えば移植)後の臨床転帰を改善できる。そのような骨誘導因子は、未分化の血管周囲結合組織細胞を標的として活性化させることにより骨形成を誘導する。マイトジェン成長因子は既に分化した細胞の骨形成活性を標的として促進させる。技術の進歩によって骨誘導因子の生物活性は向上してきたが、それらの臨床的応用は上部組織の足場(scaffold)/運搬媒体(delivery vehicle)に対する必要要件のために制限されてきた。
【0003】
自家骨移植は、自然組織足場及び骨誘導成長因子の両方を提供するため、骨格異常を修復するための優れた標準規格である。また、同種移植は脱塩(demineralized)骨基質として使用されている。例えば、脱塩骨材料は骨をすりつぶして、酸性溶液で脱塩し、リン酸緩衝液で洗浄し、エタノールで洗浄して乾燥することによって調製される。また、脱塩骨材料は商業用の骨又は組織バンク(例えばアロソース、デンバー コロラド州(AlloSource,Denver CO))からも得ることができる。人骨の自家及び同種材料源は限られており、得るには高価であるか又は痛みを伴うため、代替材料の利用が好ましい。非常に数多くの合成材料又は修飾された天然材料は、代替運搬媒体として実験的に評価されてきており、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、海綿骨同種移植片、ヒトフィブリン、焼石こう、アパタイト、珪灰石(ケイ酸カルシウム)、硝子、セラミックス、チタン、失活骨基質、非コラーゲン性タンパク質、コラーゲン及び同種骨から抽出された自己消化抗原を含む生成物を含むが、これに限定されない。しかしながら、これらの合成又は修飾された天然材料は、まだ自家骨移植又は同種骨移植材料源に匹敵する骨誘導性を有するか又はこれら又は他の骨誘導材料の骨誘導性を促進させる能力を有する運搬媒体をもたらしてはいない。
【0004】
代替生成物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6384196号明細書
【発明の概要】
【0006】
骨成長粒子を含む生体適合性組成物、組成物の調製方法、及び骨成長促進における組成物の利用が開示されている。一実施形態はペースト状又はパテ状に調合できるコラーゲン及びリン酸カルシウムを含む骨成長促進組成物である。組成物及び方法は骨格再生を促進し、新たな骨成長のための足場を提供する。
【0007】
組成物はペースト状又はパテ状に調合できる。これにより使用しやすく生成物の製造において経済的である。ペースト及びパテは液体と固体との間の物理的硬さを有する柔らかい物体である。ペースト及びパテは、より容易に難しい手術部位に届けられて所望の形状にその部位で成形できるため、外科的骨修復に好適である。これらの生成物は、例えば、脊椎、歯、及び/又は他の部位の整形外科的処置などの骨格異常の再建に好適である。それらは自家骨移植の代替として使用されるか又は自家骨移植と共に使用することができる。
【0008】
一実施形態において、骨組織のインビボ(in vivo)における形成を促進して有効性を維持し、その結果骨誘導成長因子の機能活性を維持する加工(すなわち合成)生成組成物が開示されている。局所pH制御は骨形成タンパク質の臨床効果を高め、コラーゲン、カルシウム、及びリン酸塩などの必要不可欠な骨成分の局所的有効性を補足する。弱酸性の微環境はコラーゲンのタンパク質可溶化及びタンパク質遊離の割合を高めるため、タンパク質−刺激による骨誘導をおそらく向上させるであろう。可溶性[Ca2+]及び[PO43-]イオンの局所濃度を補うことで、血清及び他の生体液からの本質的なイオン拡散に対する依存性が低下するため、骨産生の量が増加し、骨形成の割合が高まる。結果的に生じる骨形成タンパク質の局所濃度及び細胞有効性の増加は、改善された酸性コラーゲン運搬媒体をもたらす結果となる。
【0009】
一実施形態は、線維状コラーゲン成分及びリン酸カルシウム成分の粒子組成物を含む生体適合性合成骨成長組成物である。コラーゲン成分は不溶性コラーゲン(例えば架橋コラーゲン又は多孔質粒子)である。リン酸カルシウム成分はリン酸一カルシウム[Ca(H2PO4)2]、リン酸水素カルシウム二水和物[CaHPO4 2H2O]、無水リン酸水素カルシウム[CaHPO4]、部分的に脱水されたリン酸水素カルシウム[CaHPO4・xH2O、xは0以上2以下]及び/又はピロリン酸カルシウム[2CaO・P2O5]などの酸性リン酸カルシウムである。一実施形態において組成物は、例えば精製骨成長因子、組換え骨成長因子、骨髄成分、血液成分、脱塩骨、自家骨、骨髄穿刺液などの骨誘導成分を含む。一実施形態において、組成物のpHは約pH5から約pH7の範囲である。
【0010】
他の実施形態は、骨成長組成物を調製するための方法である。コラーゲン成分は鉱化(mineralized)コラーゲン成分を調製するためリン酸カルシウム成分と結合される。鉱化コラーゲン成分は、冷凍して凍結乾燥されることでスポンジ(sponge)と称される生成物となるコラーゲンゲルとして調製できる。鉱化コラーゲン成分(例えばスポンジ)の粒子は、鉱化コラーゲン成分をすりつぶすこと、製粉すること、切断すること、及び/又は成形すること(molding)により調製される。粒子組成物は、液体と共に粒子を混合するための装置(例えば容器)を含めたキット(kit)として包装することができる。骨誘導成分は、粒子の形成前又は後のいずれにおいても添加することができる。
【0011】
他の実施形態は、骨誘導成分を粒状鉱化コラーゲン成分に加えて組成物を患者に移植することにより、患者の骨成長を促進させる方法である。組成物は手術部位に適合するように注入及び/又は成形される。
【0012】
これらとその他の実施形態は、以下の図面、説明、及び実施例と関連して更に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コラーゲン足場を示す図である。
【図2】鉱化コラーゲン成分を調製するための方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
骨形成のために必要な基礎的な要素は、細胞分化、増殖及び基質形成を刺激するため、立体的であること、開口多孔性組織足場、細胞、及び骨誘導シグナル伝達分子を含む。成功する骨形成はこれらの要素が十分に調整された空間及び時間に依存するよう組合わさることを必要とする。夫々の要素の相対的な寄与は、例えば、患者の年齢、性別、健康状態、全身の状態、習慣、解剖学的部位の違いによって変化する可能性がある。
【0015】
改善された骨形成及び治癒に対する実施形態は以下の生体適合性、開口多孔性組織足場、カルシウム及びリン酸などの可溶性骨塩要素の高められた局所濃度、及び維持された骨誘導タンパク質溶解性を含む。続いてそれぞれが検討される。
【0016】
生体適合性のある開口多孔性組織足場は、新しい骨組織が修復及び/又は再生されるまで骨成長に伴う細胞増殖及び細胞外マトリックスの沈着のための一時的な基質を提供することで、機能を回復及び/又は骨を再生する。基質はこの組織の血管新生のための鋳型(template)を提供することもできる。足場は、成長分化因子の放出を介して再生過程に能動的に関与できる。
【0017】
足場のマクロ及びミクロ構造特性は、細胞の生存、シグナル伝達、成長、増殖、及び再組織化に影響を及ぼす。また、それらは細胞の遺伝子発現及び表現型保存に影響を及ぼす可能性がある。以下の特性は骨形成のための足場特徴に寄与する:細胞生体適合性、界面化学、生分解性、多孔性、及び細孔サイズ。
【0018】
一実施形態において組成物は線維状コラーゲンを含む。コラーゲンは動物における結合組織の主要なタンパク質であり、哺乳動物において一番豊富なタンパク質である。骨はヒドロキシアパタイトとして知られるリン酸カルシウムの硬基質内に包含されるコラーゲンの頑丈な線維束から成る。また、コラーゲンは軟骨、腱、及び他の結合組織における構成要素である。
【0019】
コラーゲンタンパク質は、共通軸の周囲において超らせん状であり、水素結合によって連結される3本のポリペプチド鎖の特徴的な三重らせん三次構造を有する。少なくとも19の異なる分子はコラーゲンとして分類され、特殊なタイプは特定の組織と関連する。コラーゲンは、煮沸又は酸で処理することによりゼラチンに変化する。コラーゲンの溶解性はその構造及び結合の程度に影響され、新たに合成されたコラーゲン鎖は一般的に可溶性であるが、線維状に形成した後はそれらは本質的に不溶性となる。
【0020】
線維状コラーゲンと称されるコラーゲン線維は、鎖を増強して安定させる酵素機構による超らせん鎖の間の共有結合架から生じる。線維状コラーゲンは、ヒト又は動物の皮膚、腱、軟骨又は骨などの天然材料源から得られる。それは一般的にトロポコラーゲンを産生するため天然コラーゲン架橋をタンパク質分解的に分解することで回収される。基礎的アミノ酸成分であるトロポコラーゲンは酸性溶液に可溶である(一実施形態においてはpH3からpH4の間)。これらの溶液はpH中和によるコラーゲン線維再構築の前に洗浄されて精製される。線維状コラーゲンは一般的に非線維状コラーゲンよりも低密度で、溶けにくく、溶液中でより膨張する。
【0021】
人体との高度な生体適合性により、コラーゲンは最小限の拒絶反応のみで長年の間様々な医学的及び歯科的用途に有効的に利用されてきた。それの製造において、コラーゲン分子の潜在的な抗原部分は取り除かれて、結果的に組織による高生体適合性及び良好な耐久性を示す生成物となる。また、コラーゲンは骨組織修復に含まれる線維芽細胞及び他の細胞に対して走化性である。コラーゲンの生体適合性は、生成物が免疫反応を誘発することなく宿主組織に良好に融合されることを保証する。
【0022】
粒子組成物において使用されるコラーゲンは任意の材料源に由来する。これらはヒト及び哺乳動物の組織などの天然材料源、及び組換え技術を用いて製造される合成材料源を含む。それらは任意の型(例えばI、II、III、X型コラーゲン及び/又はゼラチン)である。一実施形態において、使用されるコラーゲンはI型コラーゲンである。一実施形態において、コラーゲンはウシの皮膚(dermis)に由来する。一実施形態において、線維状コラーゲンはセメド エフ.(Semed F.)という名でケンシー ナッシュ コーポレーション(Kensey Nash Corporation)によって製造されるウシの皮膚に由来する。一実施形態において、線維状コラーゲンはP1000という名でケンシー ナッシュ コーポレーションから得られる。一実施形態において、粒子は乾燥重量で少なくとも約33%のコラーゲンを含む。他の実施形態において粒子は約25%から75%の乾燥重量コラーゲンから構成される。
【0023】
足場の界面化学は細胞接着を制御して影響を及ぼす。また、細胞内シグナル伝達のために必要不可欠なタンパク質の溶解性及び有効性にも影響を与える。細胞内シグナル伝達は、制御された細胞分化、増殖、及び刺激を介して骨誘導を最大限にする。
【0024】
コラーゲンは開示された構造足場を組立て、骨の再生に好適な物理的及び化学的環境を提供する。また、コラーゲンは例えば骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞などの骨形成細胞のために好ましい細胞外マトリックスを提供する。コラーゲン基質に対する骨形成細胞の自然親和性は、正常細胞活性に対して必要とされる機能及びシグナル伝達に好適に影響することが立証されている。
【0025】
足場の分解速度は、理想的には骨治癒速度と一致すべきである。遅い分解速度は再形成される耐荷重骨の形成速度を阻害しかねない。早い分解は欠損を治癒しないという結果になりうる。
【0026】
コラーゲンの溶解性及び吸収はそれの構造及びコラーゲンの架橋度の影響を受ける。また、コラーゲンのインビボにおける溶解性及び吸収は、その部位におけるタンパク質分解試薬の局所濃度及び血管質によって影響を受ける。
【0027】
一実施形態において、組成物は溶解性及びコラーゲン吸収の程度及び速度を制御するために架橋される。コラーゲンの架橋は熱的脱水(DHT)、紫外線暴露、アルデヒド(すなわち、グリセルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド)、カルボジイミド、及び様々なアミノ酸による化学的架橋などの様々な方法により実施できる。架橋状態はそれが骨治癒のための足場として機能しながら最大で約12週間にわたる組成物のインビボ存続期間を維持できる。コラーゲンは最終的には宿主酵素によって周囲の組織に吸収される。一実施形態において、非架橋コラーゲンは組成物の成分であってもよい。
【0028】
足場は好ましくは、均質及び速い細胞成長が可能なように十分に相互連結した形状である開孔を有し、周囲の組織からの構築における血管新生を促進する。
【0029】
この目的を達成するために、足場の全細孔容積空隙率は海綿骨の値を模倣している。海綿骨はトラベキュラ(trabeculae)と呼ばれる様々なサイズの分岐したバー、プレート及びロッドのハニカム構造であるスポンジ様形状に形成された高度な多孔質構造(約50容積%から約90容積%)である。合成足場は、栄養素及び気体の拡散、及び足場内での細胞の活性によって生じる代謝廃棄物の除去を可能とするために細孔相互連結を確保しなければならない。細孔の直径は理想的な骨形成のために約200μmから約900μmの範囲内でなければならないことが当業者に一般に認知されている。より小さな細孔は細胞透過、基質産生、及び組織の血管新生を阻害及び制限する。より大きな細孔は構造足場の機械的特性に有害な影響を及ぼす。
【0030】
開示された方法は骨形成における骨の天然構造設計を模造した合成足場を生産する。一実施形態において、足場は線維状コラーゲンを用いて組立てられる。線維状コラーゲンは全ての組織及び臓器の基質内における細胞骨格線維である。自然骨の基本要素であることに加えて、線維状コラーゲンは図1に示すように高表面積の足場、及び高度に多孔質の相互連結ネットワークの形成を可能とする。全体細孔容積は、線維内におけるコラーゲンらせん構造の間の空間である微小孔10、及びコラーゲン線維の間の空間であるマクロ孔12の両方で構成されている。一実施形態において、組成物は、全細孔容積が約50容量%から約97容量%の間の範囲であり、細孔の直径は1μmから1000μmの間の範囲である海綿骨の空隙率と一致する。
【0031】
[Ca2+]及び/又は[PO43-]などの可溶性骨塩要素の局所濃度を高めることは、改善された骨形成及び治癒に寄与する。
【0032】
生成物に基づくリン酸カルシウムは80年を越えて骨修復のために使用されてきた。それらの多数の好ましい特性は、組成物における骨塩との類似性、生物活性(それらの表面にアパタイト又は炭酸ヒドロキシアパタイトを形成する能力)、細胞機能及び発現を促進する能力、骨との直接の強い界面を形成する能力、及び骨誘導能(新しい骨形成のための足場又は鋳型を提供する能力)を含む。市販のリン酸カルシウム生物材料とは由来(例えば天然又は合成)、組成(例えば、ヒドロキシアパタイト、β−リン酸三カルシウム、及び二相性リン酸カルシウム)、物理的形状(例えば、粒子、ブロック、セメント、金属移植片に対する被覆、ポリマーによる複合材料)、及び物理化学特性の点で異なる。化学的組成物及び結晶構造におけるわずかな違いは、それらのインビボにおける物理的及び生物学的性能に重大な影響を及ぼす可能性がある。
【0033】
開示された組成物及び方法は、例えばカルシウム及びリン酸塩などの必要不可欠な可溶性骨成分の局所的有効性を補足する。生物学的適合性のあるやや溶けにくいリン酸カルシウムは、局所的に可溶性カルシウム[Ca2+]及びリン酸[PO43-]イオンの供給を増加させるための好適な補足剤である。表1に示すように、リン酸カルシウム塩は異なる平衡イオン濃度で溶解し、カルシウム[Ca2+]及びリン酸[PO43-]イオンの局所的補足濃度は10000倍以上変更できる。開示された組成物において使用されるリン酸カルシウム添加物の例であるリン酸水素カルシウム(ジカル(dical))は、リン酸三カルシウム(TCP)(Ca3(PO4)2)又はリン酸四カルシウム(TTCP)(Ca4(PO4)2(OH)2)又はカルシウムヒドロキシアパタイト(HA)(Ca5(PO4)3(OH))などの従来のリン酸カルシウムと比較して約200から約300倍の可溶性塩要素の濃度を提供する。
【0034】
表1.様々な異なる生物学的に適合するリン酸カルシウム塩由来のカルシウムイオン及びリン酸イオンの平衡溶解度

【0035】
ジカルは可溶性であり、生分解のための破骨細胞性吸収を必要としない。それは、生成物が数週間かけて可溶性塩イオン濃度を補足できるよう十分遅く吸収する。
【0036】
可溶性カルシウム[Ca2+]及びリン酸[PO43-]の局所的な補足は、動物において生産される骨量を増加させ、その形成速度を向上させた。特定の理論と結び付けることなく、リン酸カルシウムの可溶型を使用することは、局所破骨細胞性吸収及び血漿流体からの本質的なイオン拡散に対する治癒速度の依存性を低下させると考えられる。
【0037】
その方法及び組成物は骨誘導タンパク質の溶解性を維持した。骨誘導は幹細胞及び骨幹細胞が骨治癒部位に誘導されて骨形成分化経路を経るために刺激されるプロセスである。典型的な合成生分解性足場は、ただ骨伝導的(osteoconductive)であるだけで、骨治癒を刺激して促進するためには誘導骨形成試薬との組合せが必要とされる。
【0038】
また、骨成長因子サイトカインは、骨形成タンパク質(BMPs)としても知られており、骨中に高濃度で取込まれて多くの種類の骨形成細胞によって分泌される。BMPの主要な機能は細胞のシグナル伝達である。細胞内シグナル伝達は、可溶性成長因子の特定の細胞受容体部位への結合を介して起こる。このシグナル経路は骨形成細胞の増殖、移動、及び分化を含む様々な異なる重要な骨治癒事象を刺激する。細胞は、骨組織形成を調節及び制御するために重要な他のタンパク質及び成長因子の合成に順々に関与する。開示されて当業者に周知であるBMPsは無数にあるが、BMPs2、4、6及び7が一般的に最も骨誘導的であると考えられている。
【0039】
開示された組成物は、特に骨誘導タンパク質の溶解性を維持するために生分解性合成骨移植材料を提供する。様々な種類のリン酸カルシウムは内因性の骨誘導タンパク質(例えばBMPs)に対して異なる化学的親和性を有していることが知られている。TCP及びHAなどのリン酸カルシウムはそれらのアルカリ性界面化学によって酸可溶性BMPsに強く結合することが知られている。その一方、ジカルは酸性タンパク質を結合しない弱酸性の界面化学を示す。その高められた溶解性により、それはまた骨誘導BMPs溶解性をさらに維持するよう局所環境を酸性範囲に適度に緩衝する。
【0040】
インビトロ(in vitro)調査によって、様々な組成のリン酸カルシウム塩が骨誘導タンパク質の溶解濃度に与える影響を分析した。可溶性組換え型BMP-2の残留濃度が、制御された濃度の一定分量をモル当量のリン酸カルシウム塩に暴露した後測定された。表2に示すように、ジカルなどの弱酸性リン酸カルシウム塩は骨誘導タンパク質の最も高い溶解濃度を維持した。増強された局所濃度及び骨形成タンパク質(BMPs)の細胞有効性は良好に骨形成を刺激する。
【0041】
表2.様々なリン酸カルシウムの等モル濃度存在下における骨誘導組換えヒトBMP-2タンパク質の平衡溶解度

【0042】
一実施形態において、パテ状又はペースト状として調合される添加物(例えば骨誘導成分)は、骨格再生を促進して新たな骨の成長のための足場を提供する生体適合性組成物に含まれる。合成成分の使用は、病気の転移及び免疫システム不適合の恐れを減少させる。用語パテ及びペーストは定性的であり、夫々成形/形成可能で流動性を有する組成物を一般的に表す。用語ペーストが液体を含めた組成物を表すために用いられる時は、パテも一般的に組成物と混合される液体の体積を減少させることによって形成可能であると理解されうる。
【0043】
一実施形態において、組成物は、骨組織の形成を促進し有効性を高め、それ故骨誘導成長因子の機能活性を高めるペーストを形成する。それは骨格異常の再建の際に手術部位に提供される。例えば、ペーストは脊椎、歯、再建による外傷、及び他の部位の整形手術で使用できる。ペーストは自家骨移植の代替品又は添加物として使用できる。組成物は合成であるが、例えばウシコラーゲンなどの天然成分を含んでも良いし、及び/又は例えば骨髄穿刺液などの天然成分と組み合わせても良い。
【0044】
ペーストは、骨誘導タンパク質の臨床的効果を高めるためにpHを制御し、コラーゲン、カルシウム、及びリン酸などの骨成分の局所的有効性を補足する。特定の理論及び上述の分析に拘束されることなく、弱酸性微小環境は、タンパク質溶解の程度及びコラーゲンからのタンパク質遊離を促進することによって、おそらくタンパク質刺激による骨誘導を向上させる。カルシウム[Ca2+]及びリン酸[PO43-]イオンの局所濃度を補足することで、血清及び他の生体液からのイオン拡散への依存性を減少させて骨形成速度を向上させる。骨形成タンパク質の高められた細胞有効性と組み合わされたコラーゲン及び塩構成要素の局所濃度において結果的に生じる増加は、酸性コラーゲン運搬媒体を改善する。
【0045】
一実施形態において、ペーストとして調合された組成物は骨誘導性(osteoinductive)、すなわち骨成長を開始するか又は誘発する、及び骨伝導性(osteoconductive)、すなわち既に開始された骨成長を促進するがそれ自身は骨成長を開始させない、の双方である。その骨誘導効果は、ペーストを調製するために使用される例えば骨髄穿刺液などの溶液中に存在する骨誘導因子から生じる。また、組成物は骨誘導性であり、組成物は、上記で分析されたように局所pHの低下を誘因する組成物の能力によって、BMPsなどの骨誘導因子の溶解性を抑制又は減少させない。その骨伝導効果はコラーゲン足場及び骨成長材料源の供給から生じる。一実施形態において、外因性骨誘導因子は組成物への添加物として含まれている。
【0046】
一般的化学組成xCaO,P2O5によって表される様々なリン酸カルシウム塩は、同時に局所[Ca2+]及び[PO43-]イオン濃度を補足するため、及び短期の生理的緩衝液としての役割を果たすために使用できる。一実施形態において、組成物は架橋コラーゲン及びリン酸カルシウムから形成される粒子を含む。
【0047】
他の実施形態において粒子組成物を調製する方法が提供されている。コラーゲン及びリン酸カルシウムは以下に説明されるように、混合、乾燥、架橋及び粒子化される。
【0048】
他の実施形態において、コラーゲン及びリン酸カルシウムの粒子を用いた方法が開示されている。粒子組成物は、ペースト状にするために、例えば骨髄穿刺液などの液体と混合させることができる。そしてペーストは、注入されるか、手作業で塗布されるか又は、その他の場合は骨の部位に運ばれる。一実施形態において、ペーストは注入可能な骨空洞充填剤である。ペーストとすることで取扱い性及び送達性が改善されるため、外科医は組成物を複雑な形態の骨欠損に導入することができる。ペースト成分は十分に吸収可能で、自然骨が形成されるのと同様の方法で骨の再生を刺激する。
【0049】
一実施形態において、組成物は粒子状の線維状コラーゲン及びリン酸カルシウムを含む。組成物はペーストを形成するために生体液(例えば骨髄穿刺液、全血、血清、血漿)などの液体と混合される。そしてペーストは、例えば脊椎固定、歯の分岐増加討論、骨折修復への最初の適用のために注入可能及び/又は形成可能(すなわち成形可能(moldable))な骨移植材料として使用される。
【0050】
線維状コラーゲン成分が、鉱化コラーゲン成分を調製するためにリン酸カルシウム成分と混合される一実施形態において、鉱化コラーゲン成分の多孔質粒子の調整が可能である。一実施形態において、全開孔容積として測定される粒子多孔率は約90容量%を超える。他の実施形態において、粒子内の全開孔容積は約50%から約97%の範囲である。一実施形態において、粒子孔サイズは約1μmから約1000μmの範囲である。他の実施形態において、粒子孔サイズは約125μmから約300μmの範囲である。一実施形態において粒子サイズは約100μmから約840μmの範囲である。
【0051】
一般的な化学式Cax(PO4)y(O,OH,H2O)で表される様々なリン酸カルシウム塩は、[Ca2+]及び[PO43-]イオン濃度の局所濃度を同時に補足するため及び短期の生理的緩衝液として使用するために生成組成物に使用できる。組成物に使用されるリン酸カルシウムは、リン酸一カルシウム(モノカル(monocal))[Ca(H2PO4)2]、リン酸水素カルシウム(ジカル)[CaHPO4]、ピロリン酸カルシウム[2CaO・P2O5]、リン酸三カルシウム[3CaO・P2O5]、ヒドロキシアパタイト[3.33CaO・P2O5(OH)2(多結晶及び非結晶組成物)]、リン酸四カルシウム[4CaO・P2O5]及び炭酸カルシウム[CaCO3(アラゴナイト)、CaCO3(方解石)]を含む。一実施形態において、組成物はリン酸カルシウムの酸性混合物を含む。酸性リン酸カルシウムは、カルシウム(x)/リン酸(y)が1.5を下回る組成であるそれらの組成物を指し、それらは酸性界面化学を示すか、又は溶液を酸性値(pH<7.0)に緩衝する十分な程度に水溶液に溶けるかのどちらかである。一実施形態において、酸性リン酸カルシウムはリン酸水素カルシウム二水和物[CaHPO4・2H2O]である。一実施形態において、酸性リン酸カルシウムは無水リン酸水素カルシウム[CaHPO4]である。一実施形態において、組成物のリン酸カルシウムは乾燥重量で約25%を超える。他の実施形態において粒子組成物のリン酸カルシウムは乾燥重量で約67%である。
【0052】
組成物は例えば生物活性を示す試薬等の生物活性物質及び液体などの添加物をさらに含んでいてもよい。例えば、骨誘導及び/又は骨形成物質が含まれていてもよい。前述したように、骨誘導物質は骨成長を刺激する。骨誘導物質の例は骨成長因子、骨髄穿刺液、血液成分、及び骨成分を含む。骨成長因子は精製されるか又は組換え体であり、骨形成タンパク質(BMP)を含むことができる。骨髄穿刺液(BMA)は、骨成長因子及び間充織幹細胞などの骨誘導物質を含んでいるため組成物に使用される。間充織幹細胞(MSCs)は、骨の産生を補助するためにいくつかの系統経路に沿って分化誘導可能な多数の可能性を有する細胞(multi-potent cell)である。MSCsは多数の組織加工及び再生医療の応用のためにすぐに利用可能な細胞源であると考えられている。これらの理由より、骨誘導タンパク質及びMSCsは、自家及び同種骨移植に対する代替としての骨伝導的骨形成足場の性能を補完するために使用されてきた。
【0053】
一実施形態において、骨髄穿刺液は組成物に含まれる。全血及び多血小板血漿などの血液成分は組成物に含まれていてもよい。組成物に含まれる骨誘導的骨成分は、脱塩骨及び自家骨を含む。脱塩骨は、リン酸カルシウム塩成分の全て又は大部分を取り除くように処理された骨を指す。脱塩は一般的に、任意のヒト又は哺乳動物由来の骨粉をpHが約4未満の酸性溶液(すなわち塩酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸)にさらすことにより実行される。脱塩されていない骨は、組成物に含まれていてもよく、また自家又は哺乳動物源由来の骨も含む。
【0054】
組成物に液体を加えることにより、液体と固体との間の物理的硬さを有する柔らかい物体として定義されるペースト状又はパテ状となる。液体は血液、血漿、血清、骨髄などの生体液であるか又は緩衝液であり、ヒト血清の生理的pH値(pH7.1からpH7.4)に緩衝することができる。緩衝液の例は当業者に周知であり、トリス(Tris)及びリン酸緩衝生理食塩水を含む。一実施形態において、組成物は約pH5から約pH7.4の範囲のpHを有している。他の実施形態において、組成物は約pH5.5から約pH6.9の範囲のpHを有している。1つ以上の液体が組成物に含まれていてもよい。例えば、組成物は骨髄穿刺液及び緩衝塩溶液を含むことができる。また、液体は水、生理食塩水、グリセリン、界面活性剤、カルボン酸、ジメチルスルホキシド、及び/又はテトラヒドロフランなどの生体適合性の液体を含んでいてもよい。一実施形態において、液体は組成物において約25体積%を超える。他の実施形態において、液体は組成物において約75体積%から約90体積%を占める。更に、脂肪族ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリ無水物、デキストランポリマー、及び/又はオルトリンサン塩ポリマーなどの天然及び合成ポリマーを組成物に含むことができる。
【0055】
一実施形態において、コラーゲン及びリン酸カルシウムを含む粒状鉱化コラーゲン組成物を調製する工程が提供されている。一実施形態において、図2に示すように架橋コラーゲン及びリン酸カルシウム組成物が調製されて、そして粒子状に形成される。最初にコラーゲン及びリン酸カルシウムは、スラリーを調製するために例えば塩酸などの酸と混合される。また、スラリーは酸性環境にコラーゲンが存在するためゲル状であるかもしれない。使用されるコラーゲンの種類は上述されており、ウシ皮膚線維状コラーゲンを含む。適切なリン酸カルシウムは、リン酸一カルシウム[Ca(H2PO4)2]、リン酸水素カルシウム[CaHPO4]、及び/又はピロリン酸カルシウム[2CaO・P2O5]などの酸性リン酸カルシウムを含む。一実施形態において、約33重量%のコラーゲンが約67重量%のリン酸カルシウムと混合される。
【0056】
そして混合物は冷凍、凍結乾燥、及び架橋される。一実施形態において、組成物は約2時間約−80℃で凍結される。一実施形態において、組成物は少なくとも約16時間凍結乾燥される。他の実施形態において、組成物は少なくとも約48時間凍結乾燥される。
【0057】
組成物は架橋されていてもよい。架橋は熱的脱水(DHT)架橋に制限されることなくこれを含んだ当業者に周知である様々な方法によって達成される。DHT架橋において、組成物は真空オーブンチャンバー内に置かれて、チャンバーは真空を作るために空気が抜かれ、組成物は一定時間加熱される。一実施形態において、組成物は約110℃まで加熱される。一実施形態において、組成物は約48時間真空オーブンで加熱される。
【0058】
冷凍、凍結乾燥、及び架橋の後に、固形組成物は粒子状に形成される。粒子を形成する方法は当業者に周知であり、すりつぶすこと、製粉すること、切断すること、及び/又は成形することを含むがこれに制限されない。一実施形態において、粒子は固形組成物を製粉することにより形成される。製粉はウィリー ミル(Wiley mill)(トーマス サイエンティフィック,スウィーズボーロ ニュージャージー州(Thomas Scientific,Swedesboro NJ))を使用して行うことができる。ミルのメッシュサイズは結果的に生じる粒子のサイズを決める。一実施形態において、a−20メッシュ(a-20 mesh)が約100μmから約840μmの範囲の粒子を調製するのに使用される。粒子は、例えばふるいによってサイズ調整されてもよい。任意の工程段階において、追加成分は上述したように組成物に加えることができる。例えば、骨誘導成分は粒子を形成する前に加えることができる。
【0059】
組成物はキットとして提供可能である。一実施形態においてキットは上述した組成物を含み、更に他の成分を含むことができる。これらは、組成物を収納するため及びペースト状又はパテ状に組成物を形成するよう液体を加えるためのプラスチック容器などの容器と、ヘラ、かき混ぜ棒などの混合器具と、混合したペーストを収容して運搬するための針のない使い捨て注射筒と、組成物を調合及び/又は使用するための説明書などとを含む。
【0060】
他の実施形態において、骨成長を促進する方法が提供されている。一実施形態において、その方法は、上述したとおり精製された骨成長因子、組換え骨成長因子、骨髄成分、血液成分、脱塩骨、自家骨などの少なくとも1つの骨誘導成分を粒子組成物に加えることを含む。骨誘導成分が骨髄穿刺液、血液、又は血液成分である実施形態において、それは急速に採取されて組成物に加えられる(例えば血液及び/又は骨髄は欠損を修復するために同じ手術部位から得られる)。骨誘導成分及び/又は他の液体はかき混ぜながら組成物に加えられ、結果的にペースト状又はパテ状となり、それらは患者の所望の構造部位に提供される。一実施形態において、ペーストは針無しの使い捨て5ccシリンジ筒に詰められて、筒の開口部を通って所望の構造部位に押出される。他の実施形態において、パテは手作業又は器具を使用して所望のサイズ、形状、長さ等の構造に操作されるか又は形成されて、徐々に所望の構造部位に押圧される及び/又は押込まれる。その部位は、好ましくはその後の骨成長を促進するように健康な出血骨をむき出しにするように調製されている。その方法は当業者に周知な低侵襲処理を用いて行うことができる。その方法は骨構造の安定性に本質的に関連しない骨の空洞及び/又は骨格系の隙間(すなわち四肢、骨盤、脊椎、口腔)を少なくとも部分的に埋めるのに使用可能である。これらの空洞及び/又は隙間は自然又は外科的のどちらかで形成された外傷の結果であってもよい。ペーストは徐々に空洞及び/又は隙間に押圧及び/又は押込まれる。ペーストは治癒過程の間に(数日、数週間、及び数ヶ月かけて)身体に吸収される。ペーストは手作業又は器具(例えばヘラ、シリンジ、プローブ、カニューレ等)を使用するかのどちらかによって扱うことで、骨の空洞又は欠損に対して成形可能である。
【0061】
以下の例は本発明における実施形態を更に例示する。
【0062】
実施例1
複合コラーゲン及びリン酸カルシウムゲル分散物は、6gのコラーゲンを量り取って調製された(5体積%コラーゲンゲル)。10mM塩酸は5体積%ゲルを調製するために容量計量された(246ml)。12gの滅菌されたリン酸二カルシウム[CaHPO4]パウダー(66.7重量%リン酸カルシウム)は加えられて、均一濃度に撹拌された。混合物は、適度な粘度(約1000Pから約1500P)をもった均一なコラーゲンゲル分散物が得られるまで、例えば反復せん断材料輸送(shear material transport)によって混合された。
【0063】
約16.5mlのコラーゲン及びリン酸カルシウムゲル分散物は、それから取り外し可能な上部及び下部のオートクレーブされたガラスプレートを備える4.5cm(L)×1.7cm(W)×2.1cm(H)のオートクレーブされたテフロン(登録商標)(TEFRON(R))鋳型に流し込まれた。コラーゲンゲル分散物は下部のガラスプレートを取り付けられた鋳型に注入され、組成物は均一にヘラを用いて広げられた。その後に、上部のオートクレーブされたガラスプレートは分散物と接触した状態で固定され、両プレートは平らな皿頭ネジを使用して固定された。そして鋳型は少なくとも一時間−80℃に維持された。
【0064】
凍結させた後、ガラスプレートは鋳型の裏の両側から取り外されて、凍結した生成物が入った鋳型は滅菌紙オートクレーブポーチに入れられ、2時間ガラス凍結乾燥容器内で凍結された。
【0065】
そして、凍結した組成物は少なくとも24時間研究室の凍結乾燥機(フリーズモバイル 25イーエル,バーティス インコーポレーテッド,ガーディナー ニューヨーク州(Freezemobile 25EL,VirTis Inc.,Gardiner NY))にて室温で凍結乾燥(すなわちフリーズドライ)された。生成物の入った凍結乾燥容器は、コンデンサ温度−50℃以下、及び10−3mmHg以下の吸気圧で稼動中のフリーズモバイルの真空口に取り付けられた。容器につながる真空口は室温で24時間以内に生成物を凍結乾燥させるよう凍結した生成物を十分に圧力にさらすよう開口していた。
【0066】
そして、組成物は熱的脱水(DHT)工程を経て架橋された。組成物は鋳型から取り外されてオートクレーブされたアルミニウムの皿に載せられた。そして試料は真空オーブン内に置かれた。気体通気孔は閉じられており、チャンバーは10−3mmHgで真空であった。バキュームチャンバーは110℃まで加熱された。48時間の定温加熱の後、試料は真空の下で室温(約20℃から約22℃)まで冷却された。棒状の組成物が冷却された後、チャンバーは0.2μmでろ過された空気によって再加圧された。棒状組成物は滅菌ハサミを用いて取り外されて滅菌紙オートクレーブポーチに保存された。
【0067】
そして、試料は粒子に加工された。試料は清浄なウィリー ミニ−ミル(Wiley Mini-Mill)(トーマス サイエンティフィック、スウィーズボーロ ニュージャージー州(Thomas Scientific,Swedesboro NJ))のホッパーに入れられて、約1700rpmで製粉された。試料は、チャンバーの底を形成する導管のふるい上部を通過するよう十分に細かく裁断されるまで回転子によって攪拌された。最終生成物はミルの刃の下に位置する20メッシュ輸送ユニット(20 mesh delivery unit)を用いて集められた。
【0068】
一実施形態において、また、粒子は保存用円盤を形成するために圧縮成形された。粒子は計量されて、一軸圧縮によって固形円盤状を調製するために円筒形の鋳型に導入された。圧縮圧力は、同時に固形生成物を形成するよう最適化された。この生成物は通常の運搬の際の破損に耐えて、迅速な生成物混合(2分未満)を促進した。
【0069】
実施例2
上記組成物の粒子が入った容器を開ける前に、修復する骨空洞の体積が決定された。骨空洞に基づいて、ヒトでなない動物の血液の適切な量が得られ、血液又は骨髄穿刺液:骨空洞容積が0.75:1の割合で使用された。続いて説明されるように適切な量の液体が加えられることで、所望の粘度の生成物(例えばペースト)が得られた。一実施形態として、1ccの乾燥粒子量につき、粘性のあるパテを得るために0.75mlの全血が加えられるか、又はペーストを得るために0.85mlの全血が加えられた。他の実施形態において、1ccの乾燥粒子量につき、粘性のあるパテを得るために0.75mlの骨髄穿刺液が加えられるか、又はペーストを得るためには0.85mlの骨髄穿刺液が加えられた。
【0070】
分離骨に移植する直前に、液体は所望の粘度のペーストを得るために組成物と混合された。骨空洞部は必要に応じて注水されてペーストが骨空洞に詰め込まれた。その部位は、例えば傷を閉じて柔組織構造を復元するためなどの必要に応じて周囲の軟組織で閉鎖された。欠損部位の強固な固定は骨空洞を安定化した。
【0071】
説明された実施形態及び実施例は単なる実例であり、あらゆる方法において制限されるものではないと理解されるべきである。従って、これらの実施形態への様々な変更、修正又は代替は本発明の精神及び以下の請求項の範囲から逸脱することなく実施されるか又は採用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨成長組成物であって、
粒子状の線維状コラーゲン成分、及び
リン酸カルシウム成分を含む組成物。
【請求項2】
コラーゲン成分は不溶性コラーゲンを含む請求項1の組成物。
【請求項3】
コラーゲン成分は架橋コラーゲンを含む請求項2の組成物。
【請求項4】
コラーゲンは熱的脱水架橋コラーゲンを含む請求項3の組成物。
【請求項5】
コラーゲン成分は多孔質粒子を含む請求項2の組成物。
【請求項6】
粒子内の全開孔容積は約50%から約90%の範囲である請求項5の組成物。
【請求項7】
多孔質粒子の孔の直径は約125から約300μmの範囲である請求項5の組成物。
【請求項8】
粒子のサイズは約100から約840μmの範囲である請求項5の組成物。
【請求項9】
コラーゲン成分は20乾燥重量%を超える請求項1の組成物。
【請求項10】
コラーゲン成分は架橋されていないコラーゲンを含む請求項1の組成物。
【請求項11】
コラーゲン成分はウシ皮膚コラーゲンを含む請求項1の組成物。
【請求項12】
コラーゲン成分は1型コラーゲンを含む請求項1の組成物。
【請求項13】
リン酸カルシウム成分は酸性リン酸カルシウムを含む請求項1の組成物。
【請求項14】
酸性リン酸カルシウムは、リン酸一カルシウム[Ca(H2PO4)2]、リン酸水素カルシウム[CaHPO4]、ピロリン酸カルシウム[2CaO・P2O5]及びそれらの組み合わせから成るグループより選択される請求項13の組成物。
【請求項15】
酸性リン酸カルシウムはリン酸水素カルシウム[CaHPO4]である請求項14の組成物。
【請求項16】
リン酸カルシウム成分は30乾燥重量%を超える請求項1の組成物。
【請求項17】
骨誘導成分を含む請求項1の組成物。
【請求項18】
骨誘導成分は、精製された骨成長因子、組換え骨成長因子、骨髄成分、血液成分、脱塩骨及び自家骨から成るグループより選択される物質を含む請求項17の組成物。
【請求項19】
骨誘導成分は骨髄穿刺液を含む請求項17の組成物。
【請求項20】
液体を含む請求項1の組成物。
【請求項21】
液体は25体積%を超える請求項20の組成物。
【請求項22】
組成物は約pH5から約pH7.4の間のpHを有する請求項20の組成物。
【請求項23】
骨成長組成物を調製するための方法であって、
線維状コラーゲン成分をリン酸カルシウム成分と混合することで鉱化コラーゲン成分を調製すること、及び
鉱化コラーゲン成分の粒子を調製することを含む方法。
【請求項24】
粒子の調製は、すりつぶすこと、製粉すること、切断すること又は成形することを含む請求項23の方法。
【請求項25】
粒子の調製は製粉することを含む請求項23の方法。
【請求項26】
鉱化コラーゲン成分は、粒子を調製する前のゲルの形態である請求項23の方法。
【請求項27】
鉱化コラーゲン成分は、粒子を調製する前のスポンジの形態である請求項23の方法。
【請求項28】
スポンジは架橋されている請求項27の方法。
【請求項29】
粒子をキットに加えることを含む請求項23の方法。
【請求項30】
キットは粒子を流体と混合するための装置を含む請求項29の方法。
【請求項31】
キットは粒子を流体と混合するための容器を含む請求項29の方法。
【請求項32】
骨誘導成分を組成物に加えることを含む請求項23の方法。
【請求項33】
骨誘導成分は粒子が形成された後に加えられる請求項32の方法。
【請求項34】
粒子をサイズ調整することを含む請求項23の方法。
【請求項35】
粒子のサイズはふるいによって選択される請求項34の方法。
【請求項36】
鉱化コラーゲン成分の調製はコラーゲンゲルを調製することを含む請求項23の方法。
【請求項37】
コラーゲンゲルは酸性リン酸カルシウムを含む請求項36の方法。
【請求項38】
酸性リン酸カルシウムは、リン酸一カルシウム[Ca(H2PO4)2]、リン酸二カルシウム[CaHPO4]、ピロリン酸カルシウム[2CaO・P2O5]及びそれらの組み合わせから成るグループより選択される請求項37の方法。
【請求項39】
酸性リン酸カルシウムはリン酸二カルシウム[CaHPO4]を含む請求項38の方法。
【請求項40】
鉱化コラーゲン成分を凍結乾燥することを含む請求項36の方法。
【請求項41】
鉱化コラーゲン成分のコラーゲンを架橋することを含む請求項36の方法。
【請求項42】
コラーゲンは熱的脱水架橋されている請求項41の方法。
【請求項43】
患者の骨成長を促進する方法であって、
骨誘導成分を粒子状鉱化コラーゲン成分に加えること、及び
患者に組成物を移植することを含む方法。
【請求項44】
鉱化コラーゲン成分の粒子は、骨誘導成分を加える前に形成される請求項43の方法。
【請求項45】
骨誘導成分は、精製された骨成長因子、組換え骨成長因子、骨髄成分、血液成分、脱塩骨及び自家骨から成るグループより選択される物質を含む請求項43の方法。
【請求項46】
骨誘導成分は骨髄穿刺液を含む請求項45の方法。
【請求項47】
組成物に液体を加えることを含む請求項43の方法。
【請求項48】
液体は組成物の25体積%を越える請求項47の方法。
【請求項49】
移植はシリンジから組成物を骨格異常部位に押出すことを含む請求項43の方法。
【請求項50】
組成物を成形することを含む請求項43の方法。
【請求項51】
骨成長組成物であって、
架橋コラーゲンを含む粒子状の線維状コラーゲン成分、及び
酸性リン酸カルシウムを含むリン酸カルシウム成分を含む骨成長組成物。
【請求項52】
骨誘導成分を含む請求項51の骨成長組成物。
【請求項53】
骨成長組成物であって、
架橋コラーゲンを含む粒子状の線維状コラーゲン成分であって、コラーゲン成分は20乾燥重量%を超える粒子状の線維状コラーゲン、
リン酸水素カルシウム[CaHPO4]である酸性リン酸カルシウムを含むリン酸カルシウム成分であって、リン酸カルシウム成分は30乾燥重量%を超えるリン酸カルシウム成分、及び
骨誘導成分を含む骨成長組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−512967(P2010−512967A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543018(P2009−543018)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/085853
【国際公開番号】WO2008/076604
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509172457)ジマー オーソバイオロジクス,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】