説明

骨接合用プレートの折り曲げ治具及び折り曲げ方法

【課題】骨接合用プレートを所定の角度に簡単に折り曲げることができ、しかも骨接合用プレートに傷が入る心配もない骨接合用プレートの折り曲げ治具と、この折り曲げ治具を用いた骨接合用プレートの折り曲げ方法を提供する。
【解決手段】骨接合用プレート4を保持するプレート保持部1aおよびこのプレート保持部に保持された骨接合用プレート4が突入する溝部1b,1cを備えた治具本体1と、この治具本体1の溝部1b,1cに挿入されて骨接合用プレート4の突入部分4b,4cを溝部1b,1cの側面1d,1eに沿わせて折り曲げる押し子2,3とから成る折り曲げ治具とする。治具本体のプレート保持部に骨接合用プレートを保持させて溝部に骨接合用プレートを突入させ、加熱して骨接合用プレートを軟化させた後、溝部に押し子を挿入して骨接合用プレートの突入部分を溝部の側面に沿わせて所定の角度に折り曲げる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨接合用プレートを所定の角度に簡単に折り曲げることができる骨接合用プレートの折り曲げ治具、及び、この折り曲げ治具を用いた骨接合用プレートの折り曲げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内分解吸収性ポリマーからなる骨接合用プレートを用いて、骨の接合固定が行われるようになってきた。このような骨接合用プレートは、骨接合箇所の形状に合わせて曲げ加工する必要があり、例えば、上顎骨骨切り術後の骨接合固定の場合は、図9の(a)に例示するような骨接合用プレート4を、(b)に示すように2箇所で直角に折り曲げて、段形状の骨接合用プレート40に加工している。この曲げ加工された骨接合用プレート40の段差部分4aの寸法は、5mm程度が標準であり、また、折り曲げ角度は、90°程度が標準であるが、70°程度の折り曲げ角度で使用されることもある。
【0003】
ところで、上記のような骨接合用プレートの曲げ加工は、これまでは一組のコッヘル(鉗子)を使用し、加熱により軟化した骨接合用プレートの折り曲げ部分の片側を片方のコッヘルで挟むと共に、反対側をもう片方のコッヘルで挟んで折り曲げることにより行われている。また、骨接合用プレートの片側をコッヘルで挟み、反対側を指でつまんで折り曲げることもある。
【0004】
また、最近では、骨接合用プレートを加熱するヒータを内蔵したコッヘルタイプの曲げ加工具も提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−185535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来から使用されているコッヘルで骨接合用プレートを曲げ加工する場合は、場合によっては、かなり熟練しなければ骨接合用プレートを所定の角度(例えば、90°や70°)に折り曲げることが難しく、特に、前述のように段差部分4aの両側2箇所で直角に折り曲げる場合は、段差部分4aの寸法が小さくなるほど、コッヘルで段差部分4aを挟み辛くなるので、所定の角度に折り曲げる作業が一層困難になり、通常のコッヘルでは段差部分4aを挟んで曲げ加工することが不可能になるという問題があった。しかも、コッヘルで骨接合用プレートを挟んで曲げ加工すると、コッヘルで挟んだプレートの部分に傷が入る恐れもあった。これらの問題は、生体内分解吸収性ポリマーなどの熱可塑性ポリマーからなる骨接合用プレートにおいて、特に懸念されるものである。
【0007】
また、前記特許文献1のコッヘルタイプの曲げ加工具は、ヒータを内蔵しているため、別の加熱手段で骨接合用プレートを加熱軟化させる必要はないが、曲げ加工の機能については、上述した従来のコッヘルと全く同様の問題があった。
【0008】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、骨接合用プレートを所定の角度に簡単に折り曲げることができ、しかも骨接合用プレートに傷が入る心配もない骨接合用プレートの折り曲げ治具と、この折り曲げ治具を用いた骨接合用プレートの折り曲げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る骨接合用プレートの折り曲げ治具は、骨接合用プレートを保持するプレート保持部およびこのプレート保持部に保持された骨接合用プレートが突入する溝部を備えた治具本体と、この治具本体の溝部の端から溝部に挿入されて骨接合用プレートの突入部分を溝部の側面に沿わせて折り曲げる押し子とから成ることを特徴とするものである。
【0010】
そして、本発明に係る骨接合用プレートの折り曲げ方法は、上記の折り曲げ治具を使用し、その治具本体のプレート保持部に、生体内分解吸収性ポリマーなどの熱可塑性ポリマーからなる骨接合用プレートを保持させて治具本体の溝部に骨接合用プレートを突入させ、加熱して骨接合用プレートを軟化させた後、治具本体の溝部に押し子を挿入して、骨接合用プレートの突入部分を溝部の側面に沿わせて折り曲げることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の折り曲げ治具は、プレート保持部の両側に、骨接合用プレートの一端側が突入する第一の溝部と骨接合用プレートの他端側が突入する第二の溝部を備えた治具本体と、これらの溝部に挿入される第一の押し子及び第二の押し子とからなることが好ましく、また、第一の溝部と第二の溝部に、第一の押し子と第二の押し子が互いに対向する方向に挿入されることが好ましい。そして、第一の溝部と第二の溝部の深さが異なり、それに対応して第一の押し子と第二の押し子の厚さが異なる構成とすることも好ましい。
【0012】
また、本発明の折り曲げ治具においては、プレート保持部が、骨接合用プレートの厚さよりも極く僅かに大きい溝幅を有する保持溝、具体的には骨接合用プレートの厚さよりも0.005〜0.5mm程度、好ましくは0.005〜0.2mm程度大きい溝幅を有する保持溝であることが好ましく、更に、骨接合用プレートの突入部分を折り曲げる押し子の先端部から側面に至る部分が凸湾曲面に形成され、この凸湾曲面に対して押し子の側面が接面となる関係を有していることが好ましい。そして、治具本体の溝部の側面に、骨接合用プレートの折り曲げられた突入部分を収容する凹部が形成されているが好ましく、また、治具本体と押し子に、押し子が治具本体の溝部から浮かないように摺動自在に係合する係合部と被係合部が形成されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る骨接合用プレートの折り曲げ治具は、骨接合用プレートを保持するプレート保持部およびこのプレート保持部に保持された骨接合用プレートが突入する溝部を備えた治具本体と、この治具本体の溝部の端から溝部に挿入されて骨接合用プレートの突入部分を溝部の側面に沿わせて折り曲げる押し子とから成るものであるから、本発明の折り曲げ方法のように、治具本体のプレート保持部に、生体内分解吸収性ポリマーなどの熱可塑性ポリマーからなる骨接合用プレートを保持させて溝部に骨接合用プレートを突入させ、加熱して骨接合用プレートを軟化させた後、治具本体の溝部に押し子を挿入することによって、熟練者でなくても、骨接合用プレートの突入部分を溝部の側面に沿わせて所定の角度に簡単且つ確実に折り曲げることができる。
【0014】
そして、プレート保持部の両側に、骨接合用プレートの一端側が突入する第一の溝部と骨接合用プレートの他端側が突入する第二の溝部を備えた治具本体と、これらの溝部に挿入される第一の押し子及び第二の押し子からなる折り曲げ治具であって、第一の押し子と第二の押し子が互いに対向する方向に挿入されるものは、プレート保持部に骨接合用プレートを保持させて第一と第二の溝部に骨接合用プレートの一端側と他端側をそれぞれ突入させ、加熱して骨接合用プレートを軟化させた後、第一と第二の溝部に第一と第二の押し子を互いに対向する方向に挿入することによって、骨接合用プレートの一端側と他端側を、第一と第二の溝部の側面に沿わせて、プレート保持部の両側2箇所で互いに反対方向に所定の角度に折り曲げ、段形状の骨接合用プレートに曲げ加工することができる。その場合、治具本体の第一の溝部と第二の溝部の深さが異なり、それに対応して第一の押し子と第二の押し子の厚さが異なっていると、図8の(a)に示すようなL形の骨接合用プレート4のストレートな一端側4bを浅い方の第一の溝部に突入させ、鉤形に曲がった他端側4cを深い方の第二の溝部に突入させて、第一と第二の押し子を互いに対向する方向に挿入することにより、図8の(b)に示すようなL形で段形状の骨接合用プレート40に曲げ加工することができる。
【0015】
また、プレート保持部が、骨接合用プレートの厚さよりも極く僅かに大きい溝幅を有する保持溝、具体的には骨接合用プレートの厚さよりも0.005〜0.5mm程度、好ましくは0.005〜0.2mm程度大きい溝幅を有する保持溝であると、この保持溝に骨接合用プレートの保持すべき部分を差し挟むだけで、簡単且つ確実に骨接合用プレートを保持させることができる。そして、骨接合用プレートの突入部分を折り曲げる押し子の先端部から側面に至る部分が凸湾曲面に形成され、この凸湾曲面に対して押し子の側面が接面となる関係を有していると、押し子を溝部に挿入したとき、凸湾曲面によって骨接合用プレートの溝部への突入部分をスムーズに折り曲げることができ、折り曲げた突入部分に傷が入ることもなく、凸湾曲面と接面の関係にある押し子の側面で、折り曲げた突入部分をスプリングバックしないように押さえて形状を固定することができる。
【0016】
また、骨接合用プレートの折り曲げられた突入部分が溝部の側面に沿って押し子の挿入、進行の障害になる程度に溝部の側面から内側に突出している場合は、押し子の押圧力が骨接合用プレートの折り曲げ箇所に集中的に作用するため、折り曲げ箇所に破損や変形を生じる恐れがあるが、治具本体の溝部の側面に骨接合用プレートの折り曲げられた突入部分を収容する凹部が形成されていると、押し子の押圧力が骨接合用プレートの折り曲げ箇所に集中的に作用しないので、折り曲げ箇所に損傷や変形を生じる恐れはなくなる。
【0017】
更に、治具本体と押し子に、押し子が治具本体の溝部から浮上しないように摺動自在に係合する係合部と被係合部が形成されていると、押し子を溝部に挿入する際に押し子が溝部から浮上することがないので、押し子によって骨接合用プレートの溝部への突入部分を溝部の側面に確実に沿わせて折り曲げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る骨接合用プレートの折り曲げ治具の分解斜視図、図2は同折り曲げ治具の分解平面図、図3は骨接合用プレートを保持させると共に押し子の先端部を治具本体の溝部に挿入したところを示す同折り曲げ治具の平面図、図4は押し子を治具本体の溝部の中間部まで挿入して骨接合用プレートを折り曲げている途中の状態を示す同折り曲げ治具の平面図、図5は押し子を治具本体の溝部に挿入し終えて骨接合用プレートを折り曲げたところを示す同折り曲げ治具の平面図、図6は図3のA−A線断面図である。
【0020】
この骨接合用プレートの折り曲げ治具は、治具本体1と2つの押し子2,3とからなるものであって、治具本体1の中央部には、図9の(a)に示すL形の骨接合用プレート4を保持するプレート保持部1aが形成されており、このプレート保持部1aの両側には第一の溝部1bと第二の溝部1cが互いに平行に形成されている。
【0021】
このプレート保持部1aは、骨接合用プレート4の厚さよりも極く僅かに大きい溝幅を有する保持溝(以下、プレート保持溝1aと記す)、具体的には骨接合用プレート4の厚さよりも0.005〜0.5mm程度、好ましくは0.005〜0.2mm程度大きい溝幅を有する保持溝であり、骨接合用プレート4の保持すべき中間部分を差し挟むだけで、簡単に骨接合用プレート4を保持できるようになっている。上顎骨骨切り術後の骨接合固定に用いられる骨接合用プレート4は、約1mmの厚さを有するものであるから、上記の溝幅拡大寸法を考慮すると、プレート保持溝1aの具体的な溝幅は、1.5mm程度、好ましくは1.2mm程度に設定すべきである。この実施形態の折り曲げ治具は、骨接合用プレート4を2箇所で90°の角度に折り曲げることができるように、プレート保持溝1aを溝部1b,1cに対して直角に形成しているが、骨接合用プレート4を2箇所で70°の角度に折り曲げる必要がある場合には、プレート保持溝1aを溝部1b,1cに対して70°の角度に形成すればよい。尚、本実施形態では、骨接合用プレート4を90°や70°の角度で折り曲げているが、折り曲げ角度は90°や70°に限定されるものではなく、45°〜120°の範囲で適宜選択することができ、その場合は、プレート保持溝1aの角度を45°〜120°の範囲で適宜調整して形成すればよい。
【0022】
図3,図6に示すように、治具本体1の第一の溝部1bには、プレート保持溝1aに保持されたL形の骨接合用プレート4のストレートな一端側4bが突入し、第二の溝部21cには、骨接合用プレート4の鉤形に曲がった他端側4cが突入するようになっている。第一の溝部1bと第二の溝部1cは、溝幅も深さも異なっており、第一の溝部1bの溝幅および深さは、骨接合用プレート4のストレートな一端側4bの突出寸法および上下寸法と実質的に同一(僅かに大きい)に設定され、第二の溝部1cの溝幅および深さは、骨接合用プレート4の鉤形に曲がった他端側4cの突出寸法および上下寸法と実質的に同一(僅かに大きい)に設定されている。従って、骨接合用プレート4の中間部4aをプレート保持溝1aに差し挟んで保持させると、骨接合用プレート4のストレートな一端側4bと鉤形に曲がった他端側4cが第一と第二の溝部1b,1cにすっぽりと嵌まり込んで、骨接合用プレート4がガタツキなくセットされるようになっており、その結果、所定の位置、角度で正確に折り曲げることができるようになっている。
【0023】
第一の押し子2と第二の押し子3は、図4,図5に示すように、治具本体1の第一の溝部1bと第二の溝部1cに互いに対向する方向に挿入される角棒体であって、第一の溝部1bと第二の溝部1cに突入した骨接合用プレート4のストレートな一端側4bと鉤形に曲がった他端側4cを、これら溝部1b,1cの側面1d,1eに沿わせて折り曲げるものである。従って、第一の押し子2の幅および厚さは、第一の溝部1bの溝幅および深さと実質的に同一(僅かに小さい)に設定され、第二の押し子3の幅および厚さは、第二の溝部1cの溝幅および深さと実質的に同一(僅かに小さい)に設定されている。
【0024】
第一の押し子2と第二の押し子3は、いずれも骨接合用プレート4を折り曲げる先端部から側面に至る部分が凸湾曲面2a,3aに形成され、この凸湾曲面2a,3aに対して押し子2,3の骨接合用プレートを折り曲げる側の側面2b,3bが接面となる関係を有するように連続している。そのため、この凸湾曲面2a,3aによって、第一と第二の溝部1b,1cに突入した骨接合用プレート4の一端側4bと他端側4cをスムーズに折り曲げることができ、骨接合用プレート4の一端側4bや他端側4cに傷が入ることもなく、この凸湾曲面2a,3aと接面の関係を有して連続する側面2b,3bよって、折り曲げた骨接合用プレート4の一端側4bと他端側4cをスプリングバックしないように押さえて形状を固定できるようになっている。
【0025】
また、第一の溝部1bの側面1d(プレート保持溝1aが形成されている側の側面)には、骨接合用プレート4の折り曲げられた一端側4bを収容する、奥行き寸法が骨接合用プレートの厚さと実質的に同一の凹部1fが形成されており、同様に、第二の溝部1cの側面1e(プレート保持溝1aが形成されている側の側面)には、骨接合用プレート4の折り曲げられた他端側4cを収容する、奥行き寸法が骨接合用プレートの厚さと実質的に同一の凹部1gが形成されている。従って、骨接合用プレート4の折り曲げられた一端側4bおよび他端側4cが第一および第二の溝部1b,1cの側面1d,1eの内側へ出ないので、押し子2,3の押圧力が骨接合用プレート4の折り曲げ箇所に集中的に作用しなくなり、折り曲げ箇所に損傷や変形が生じるのを防止できるようになっている。
【0026】
更に、上記の凹部1f,1gとプレート保持溝1aとのコーナーには、図2,図3に示すようにアールRを形成し、このアールRによって、骨接合用プレート4の折り曲げ箇所の折損を防止できるようにすることが好ましい。
【0027】
治具本体1や押し子2,3の材質については特に限定されないが、蒸気滅菌温度(121℃)に耐える耐熱性を有する滑性の良好なPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などのスーパーエンジニアリングプラスチックが好ましく使用され、金属なども使用可能である。
【0028】
本発明の骨接合用プレートの折り曲げ方法は、以上のような構成の本発明の折り曲げ治具を用いて、図3に示すように、治具本体1のプレート保持溝1aに骨接合用プレート4を差し挟んで保持させ、骨接合用プレート4の一端側4bと他端側4cを第一と第二の溝部1b,1cに突入させる。そして、第一と第二の押し子2,3の先端部分を、治具本体1の第一と第二の溝部1b,1cに互いに反対側から対向する方向に挿入する。骨接合用プレート4としては、ポリ乳酸その他の熱可塑性の生体内分解吸収性ポリマーからなるプレート、該生体内分解吸収性ポリマーに生体活性なバイオセラミックス粉体を混合したものからなるプレート、更にこれらの材料を圧縮し分子鎖や結晶を配向させたプレートなどが使用される。
【0029】
次いで、上記のように骨接合用プレート4と押し子2,3をセットした治具本体1を、70℃より若干低い温度の温水又は生理食塩水に数十秒漬けて骨接合用プレート4を軟化させた後、直ちに第一と第二の押し子2,3を図4,図5に示すように摺動させて第一と第二の溝部1b,1cに完全に挿入する。このように第一と第二の押し子2,3を挿入すると、その凸湾曲面2a,3aによって骨接合用プレート4の一端側4bと他端側4cが互いに反対方向にスムーズに押されながら、溝部1b,1cの側面1d,1eの凹部1f,1gに沿うように、プレート保持溝1aの両端2箇所でアールを付けて直角に折り曲げられ、この折り曲げられた骨接合用プレート4の一端側4bと他端側4cがスプリングバックしないように押し子2,3の側面2b,3bで押さえられたまま骨接合用プレート4が固化する。従って、押し子2,3を抜き取って骨接合用プレート4を治具本体1から取り出すと、図9の(b)に示すようなL形で段形状に曲げ加工された骨接合用プレート40が得られる。
【0030】
尚、加熱の手段は、上記の温水や生理食塩水に限定されるものではなく、例えば温風を吹きつけるなど、種々の手段を採用できることは言うまでもない。
【0031】
本発明の折り曲げ治具を用いた折り曲げ方法は、上記のように操作が簡単であるため、熟練者でなくても確実に骨接合用プレートを曲げ加工することができる。
【0032】
上記の折り曲げ治具は、第一と第二の押し子2,3を挿入する際に、これらの押し子2,3が治具本体1の第一と第二の溝部1b,1cから浮く可能性があるので、治具本体1と押し子2,3に、押し子2,3が治具本体1の溝部1b,1cから浮かないように摺動自在に係合する係合部と被係合部を形成することが望ましい。図7はそのような係合部と被係合部を形成した折り曲げ治具の実施形態を示す断面図であって、第一と第二の押し子2,3の底面には、係合部として逆T字形の断面形状を有するアリ条2c,3cが、また、第一と第二の溝部1bの1c底には、被係合部として上記アリ条2c,3cに対応する逆T字形の中空断面を備えたアリ溝1h,1iが、それぞれ形成されており、これらのアリ条とアリ溝が摺動自在に係合して、第一と第二の押し子2,3が第一と第二の溝部1b,1cから浮かないようになっている。尚、係合部と被係合部の形状は、押し子2,3が第一と第二の溝部1b,1cから浮かないようにする機能を有するものであれば、上記の逆T字形に限定されることなく、適宜形状を変更し得る。
【0033】
また、図8に示すように、第一と第二の押し子20,30の側面20d,30d(骨接合用プレートを折り曲げる側の側面と反対側の側面)を斜面に形成して係合部とすると共に、これに対応して、第一と第二の溝部1b,1cの側面1j,1k(プレート保持溝のある側と反対側の側面)を斜面に形成して被係合部とし、これらの係合部と被係合部を摺動自在に係合させて、第一と第二の押し子20,30が第一と第二の溝部1b,1cから浮かないように構成してもよい。なお、この場合も、係合部と被係合部の形状は、押し子20,30が第一と第二の溝部1b,1cから浮かないようにする機能を有するものであれば、上記の形状に限定されることなく、適宜変更し得る。
【0034】
以上、図9の(a)に示すL形の骨接合用プレート4を折り曲げる折り曲げ治具を例に挙げて、本発明の骨接合用プレートの折り曲げ治具と折り曲げ方法を説明したが、本発明は骨接合用プレートの形状に応じて種々の実施形態を採り得るものである。その若干例を以下に挙げる。
【0035】
図10〜図12はいずれも、異なる形状の骨接合用プレートを保持させた他の実施形態に係る折り曲げ治具の治具本体の断面図であって、図10の実施形態は、ストレート形の骨接合用プレート41を折り曲げるために、治具本体1に、第一と第二の溝部1b,1cを、骨接合用プレート41の一端側41bと他端側41cの上下寸法(幅寸法)に合わせて浅く形成し、骨接合用プレート41の中間部41aをプレート保持溝1aで保持させるようにしたものである。
【0036】
また、図11の実施形態は、横T形の骨接合用プレート42を折り曲げるために、治具本体1に、第一の溝部1bを骨接合用プレート42の一端側42bの高さ位置に合わせて中間の深さに形成すると共に、第二の溝部1cを骨接合用プレート42の他端側42cの上下寸法に合わせて深く形成し、骨接合用プレート42の中間部42aをプレート保持溝1aに保持させるようにしたものである。
【0037】
更に、図12の実施形態は、X形の骨接合用プレート43を折り曲げるために、治具本体1に、第一と第二の溝部1b,1cを、骨接合用プレート43の一端側43bと他端側44cの上下寸法に合わせて深く形成し、骨接合用プレート43の中間部43aをプレート保持溝1aに保持させるようにしたものである。
【0038】
このように、本発明の折り曲げ治具は、骨接合用プレートの形状、寸法に応じて第一と第二の溝部1b,1cの形状、寸法を変更し、その溝部に合うように第一と第二の押し子2,3の形状、寸法を変更するだけで、種々の形状、寸法の骨接合用プレートの曲げ加工に対応できるものである。
【0039】
また、以上の実施形態はいずれも、2つの溝部1b,1cと2つの押し子2,3を有し、骨接合用プレートを2箇所で段形状に折り曲げるものであるが、本発明の折り曲げ治具は、溝部と押し子を1つだけとし、骨接合用プレートを1箇所で折り曲げるようにしても勿論よいものである。更に、上記の実施形態では、骨接合用プレートとほぼ同様の溝幅を有するプレート保持溝1cを形成し、骨接合用プレートをプレート保持溝1cに差し挟むことによって保持させるようにしたが、プレートを保持する手段としては、プレート保持溝1c以外にも種々の手段が採用可能であり、例えば、溝幅の大きい溝を設けて骨接合用プレートを挿入したのち楔材を打ち込んで保持させたり、骨接合用プレートをバネ力で挟むクリップのような保持部材を設けて骨接合用プレートを保持させるようにしても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る骨接合用プレートの折り曲げ治具の分解斜視図である。
【図2】同折り曲げ治具の分解平面図である。
【図3】骨接合用プレートを保持させると共に押し子の先端部を治具本体の溝部に挿入したところを示す同折り曲げ治具の平面図である。
【図4】押し子を治具本体の溝部の中間部まで挿入して骨接合用プレートを折り曲げている途中の状態を示す同折り曲げ治具の平面図である。
【図5】押し子を治具本体の溝部に挿入し終えて骨接合用プレートを折り曲げたところを示す同折り曲げ治具の平面図である。
【図6】図3のA−A線断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る骨接合用プレートの折り曲げ治具の横断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態に係る骨接合用プレートの折り曲げ治具の横断面図である。
【図9】(a)は上顎骨骨切り術後の骨接合固定に用いられる曲げ加工前の骨接合用プレートの一例を示す斜視図、(b)は曲げ加工後の骨接合用プレートの一例を示す斜視図である。
【図10】骨接合用プレートを保持させた本発明の更に他の実施形態に係る折り曲げ治具の治具本体の断面図である。
【図11】骨接合用プレートを保持させた本発明の更に他の実施形態に係る折り曲げ治具の治具本体の断面図である。
【図12】骨接合用プレートを保持させた本発明の更に他の実施形態に係る折り曲げ治具の治具本体の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 治具本体
1a プレート保持部(プレート保持溝)
1b 第一の溝部
1c 第二の溝部
1d,1e 溝部の側面
1f,1g 凹部
1h,1i,1j,1k 被係合部(アリ溝,斜面)
2,20 第一の押し子
2a 凸湾曲面
2b 側面
2c,20c 係合部(アリ条,斜面)
3,30 第二の押し子
3a 凸湾曲面
3b 側面
3c,30c 係合部(アリ条,斜面)
4,41,42,43 骨接合用プレート
4a 中間部(段差部)
4b 一端側(突入部分)
4c 他端側(突入部分)
40 曲げ加工された骨接合用プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨接合用プレートを保持するプレート保持部およびこのプレート保持部に保持された骨接合用プレートが突入する溝部を備えた治具本体と、この治具本体の溝部の端から溝部に挿入されて骨接合用プレートの突入部分を溝部の側面に沿わせて折り曲げる押し子とから成ることを特徴とする骨接合用プレートの折り曲げ治具。
【請求項2】
上記プレート保持部の両側に、骨接合用プレートの一端側が突入する第一の溝部と骨接合用プレートの他端側が突入する第二の溝部を備えた治具本体と、これらの溝部に挿入される第一の押し子及び第二の押し子とからなることを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ治具。
【請求項3】
第一の溝部と第二の溝部に、第一の押し子と第二の押し子が互いに対向する方向に挿入されることを特徴とする請求項2に記載の折り曲げ治具。
【請求項4】
第一の溝部と第二の溝部の深さが異なり、それに対応して第一の押し子と第二の押し子の厚さが異なることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の折り曲げ治具。
【請求項5】
上記プレート保持部が、骨接合用プレートの厚さよりも極く僅かに大きい溝幅を有する保持溝であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の折り曲げ治具。
【請求項6】
骨接合用プレートの突入部分を折り曲げる上記押し子の先端部から側面に至る部分が凸湾曲面に形成され、この凸湾曲面に対して押し子の側面が接面となる関係を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の折り曲げ治具。
【請求項7】
上記治具本体の溝部の側面に、骨接合用プレートの折り曲げられた突入部分を収容する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の折り曲げ治具。
【請求項8】
上記治具本体と上記押し子に、上記押し子が上記治具本体の溝部から浮かないように摺動自在に係合する係合部と被係合部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の折り曲げ治具。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載された骨接合用プレートの折り曲げ治具を使用し、その治具本体のプレート保持部に、生体内分解吸収性ポリマーなどの熱可塑性ポリマーからなる骨接合用プレートを保持させて治具本体の溝部に骨接合用プレートを突入させ、加熱して骨接合用プレートを軟化させた後、治具本体の溝部に押し子を挿入して、骨接合用プレートの突入部分を溝部の側面に沿わせて折り曲げることを特徴とする骨接合用プレートの折り曲げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−82344(P2009−82344A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254644(P2007−254644)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】