説明

骨材の再生方法、骨材及び床材

【課題】製造が容易で難燃性に優れ有毒ガスの発生を低減することができる難燃材とその製造方法及び鉄道車両の床材を提供する。
【解決手段】収集工程#110は、廃車の床構造1から廃床材3'を収集する工程である。収集工程#110では、(A)に示す廃車の床構造1から重機などを使用して床仕上げ材4を廃床材3'から分離するとともに廃床材3'を床板2から分離して、(B)に示すように燃焼用容器5に収容する。燃焼工程#120は、廃床材3'を燃焼させる工程であり、(C)に示すように廃床材3'内のエポキシ樹脂系接着剤などの合成樹脂Rを熱分解して気化させて廃床材3'から除去する。分離工程#130は、燃焼工程#120後の廃床材3'から骨材Aを分離する工程であり、廃床材3'から骨材Aとこの骨材A以外の不純物である珪砂S及び粉材Pとを選別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃床材から骨材を再生する骨材の再生方法、廃床材から再生された骨材、及び廃床材から再生された骨材を含有する床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の床構造は、凹凸の金属製のキーストンプレートと、このキーストンプレートの凹部を塞ぐ硬質素材製の補強カバー部材と、キーストンプレートの上面及び補強カバー部材の上面に塗布された軽量骨材及びエポキシ樹脂からなる中塗り床材と、この中塗り床材の上面に塗布されたエポキシ樹脂からなる上塗り床材とを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の床構造では、キーストンプレートと補強カバー部材との間に空間を形成するため、一層の軽量化を図るとともに強度を向上させている。
【0003】
【特許文献1】特開平7-54431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の鉄道車両では、廃車時に構体及び機器に関しては重機で裁断後、中間処理業者によってシュレッダ処理されて、処理後に産業廃棄物として廃棄されている。鉄道車両の床材には、主に粘土質鉱物を高温焼成した人工軽量骨材をエポキシ樹脂系接着剤で成形したものを中塗り床材として充填しているが、このような中塗り床材などは強固に接着されているため分離できず、廃車時には産業廃棄物として扱われており、車両1両当たり約1,000kgにも及んでいる。近年、不要となった製品のうち再使用不可能な材料を廃棄物として廃棄し、再使用可能な材料を原料として再び加工して、同一又は異なる用途で改めて利用する再資源化(リサイクル)が行われており、廃車車両の床材から取り出した骨材を新車の床材の骨材として再使用可能であれば、車両のリサイクル率を向上させることができる。
【0005】
この発明の課題は、廃床材から骨材を簡単に再生することができるとともにこの骨材を再使用してリサイクル率を向上させることができる骨材の再生方法、骨材及び床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図2及び図3に示すように、廃床材(3')から骨材(A)を再生する骨材の再生方法であって、前記廃床材を燃焼させる燃焼工程(#120)と、前記燃焼工程後の前記廃床材から前記骨材を分離する分離工程(#130)とを含む骨材の再生方法(#100)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の骨材の再生方法において、記燃焼工程は、前記廃床材から合成樹脂(R)を熱分解して除去する工程を含むことを特徴とする骨材の再生方法である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の骨材の再生方法において、前記分離工程は、前記廃床材から前記骨材とこの骨材以外の不純物とを選別する工程を含むことを特徴とする骨材の再生方法である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の骨材の再生方法において、前記分離工程は、前記廃床材から所定の粒径を超える前記骨材を選別する工程を含むことを特徴とする骨材の再生方法である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の骨材の再生方法において、図4に示すように、前記分離工程後の前記骨材を所定の粒径に破砕する破砕工程(#140)を含むことを特徴とする骨材の再生方法である。
【0011】
請求項6の発明は、図1及び図3に示すように、廃床材(3')から再生された骨材であって、前記廃床材を燃焼することによってこの廃床材から分離可能であることを特徴とする骨材(A)である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載の骨材であって、所定の粒径に破砕されていることを特徴とする骨材である。
【0013】
請求項8の発明は、図1及び図3に示すように、廃床材(3')から再生された骨材(A)を含有する床材であって、前記再生された骨材は、前記廃床材を燃焼することによってこの廃床材から分離可能であることを特徴とする床材(3)である。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8に記載の床材であって、前記再生された骨材は、所定の粒径に破砕されていることを特徴とする床材である。
【0015】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載の床材において、前記再生された骨材と新品の骨材(A)とを含有することを特徴とする床材である。
【0016】
請求項11の発明は、請求項10に記載の床材であって、前記新品の骨材は、前記廃床材を燃焼することによってこの廃床材から分離可能であることを特徴とする床材である。
【0017】
請求項12の発明は、請求項10又は請求項11に記載の床材であって、前記新品の骨材は、所定の粒径に破砕されていることを特徴とする床材である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、廃床材から骨材を簡単に再生することができるとともにこの骨材を再使用してリサイクル率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る骨材を含有する床材によって施工された床構造を模式的に示す断面図である。
図1に示す床構造(床構え)1は、車体下部の基本構造であり、車両内の旅客、荷物、貨物及び接客設備などの重量を支持する機能を有する。床構造1は、梁状に構成された台枠上に施工されており、車体の前後の荷重及びねじりに対する強度を負担し、車両内の遮音及び断熱などを図るとともに防火対策が施されている。床構造1は、図1に示すように、床板2と、床材(床詰め物)3と、床仕上げ材(床敷物)4などを備えている。床構造1は、液状の樹脂を床板2上に塗り込み床材3を形成する湿式工法によって多層構造に製造されており、車両の種類によって異なるが台枠上面から床仕上げ材4の上面まで所定の厚さで施工されている。
【0020】
床板2は、床構造1の構成要素のうち車内側を構成する部材であり、床構造1の一部を構成する板材である。図2に示す床板2は、断面が台形状又は矩形状(凹凸状)に成形されたステンレスなどの金属性の波形鋼板(キーストンプレート(デッキプレート))であり、面外方向の剛性と長手方向の耐座屈性を向上させている。床板2は、車体の台枠上に敷設されている。
【0021】
床材3は、床板2と床仕上げ材4との間に充填される部材であり、廃床材から再生された骨材(再生骨材)A、又はこの再生された骨材Aと新品の骨材Aとを含有している。床材3は、遮音及び断熱効果を有し、車両の種類に応じて所定の厚さ(例えば7.5mm程度)に施工されている。床材3は、図1に示すように、多層構造であり、下塗り床材3aと、中塗り床材3bと、上塗り床材3c,3dとを備えている。下塗り床材3aは、床板2の表面に塗布された部材であり、エポキシ樹脂系接着剤などの合成樹脂Rを床板2の表面に、作業員が刷毛を使用して所定の厚さで塗り込め表面が平滑に仕上げられている。
【0022】
中塗り床材3bは、下塗り床材3aの表面に塗布された部材であり、エポキシ樹脂系接着剤などの合成樹脂Rと骨材Aとの混合材を下塗り床材3aの表面に所定の厚さで塗布し平滑に仕上げている。骨材Aは、廃床材から再生された再生品、又はこの再生品と新品との混合品であり、廃床材を燃焼することによってこの廃床材から分離可能である。骨材Aは、粘土質鉱物を高温で焼成した人工軽量骨材を再生したものである。このような人工軽量骨材としては、例えば、天然産鉱物であるカオリナイト系粘土質鉱物を1000〜2000℃で焼成したものであり、原石組成としてはカオリナイト、モントモリナイト、セリサイト、珪酸分、酸化鉄及びアルカリ土類の酸化物を含有する。このような人工軽量骨材は、例えば、1000℃以上の耐火性を有する鉄道車両用床骨材として使用されており、内部に多数の気孔が形成されているが、表面を合成樹脂Rによって被覆されてもこの合成樹脂Rが内部に殆ど浸透せず中空状態を維持している。中塗り床材3bは、骨材Aのバインダーとして使用されるエポキシ系接着剤とこの骨材Aとを混練した混合材を、左官用のこてを作業員が使用して床板2の凹凸部分に充填するように塗り込めて形成されている。
【0023】
上塗り床材3cは、中塗り床材3bの表面に塗布された部材であり、エポキシ樹脂系接着剤などの合成樹脂Rと珪砂Sとの混合材を中塗り床材3bの表面に、左官用のこてを作業員が使用して所定の厚さ (例えば1mm程度)で塗り込め平滑に仕上げられている。上塗り床材3dは、上塗り床材3cの表面に塗布された部材であり、エポキシ樹脂系接着剤などの合成樹脂Rと粉材Pとの混合材を上塗り床材3cの表面に、左官用のこてを作業員が使用して所定の厚さ(例えば1mm程度)で塗り込め平滑に仕上げられている。
【0024】
床仕上げ材4は、床構造1のうち最上面に施工される部材であり、床構造1の表面仕上げに用いる敷物である。床仕上げ材4は、例えば、塩化ビニル又はリノリウムなどの合成樹脂製の板材であり、床材3の上塗り材3dの表面に接着剤などによって接着され貼り付けられている。
【0025】
次に、この発明の第1実施形態に係る骨材の再生方法について説明する。
図2は、この発明の第1実施形態に係る骨材の再生方法を説明するための工程図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る骨材の再生方法を説明するための概略図であり、図3(A)は再生処理前の状態を示し、図3(B)は収集工程後の状態を示し、図3(C)は燃焼工程中の状態を示し、図3(D)は分離工程中の状態を示す概略図である。
【0026】
図2に示す再生方法#100は、廃床材から骨材Aを再生する方法であり、収集工程#110と、燃焼工程#120と、分離工程#130とを含む。収集工程#110は、図3(A)に示す廃車の床構造1から廃床材3'を収集する工程である。図3に示す廃床材3'は、図1に示す床材3と同一構造であり、この廃床材3'を燃焼することによってこの廃床材3'から分離可能な骨材Aを含有している。収集工程#110では、図3(A)に示す廃車の床構造1から重機などを使用して床仕上げ材4を廃床材3'から分離するとともに、廃床材3'を床板2から分離して、図3(B)に示すように廃床材3'の塊を人力で採取し、燃焼用容器5内に廃床材3'の塊が収集される。図3(B)(C)に示す燃焼用容器5は、廃床材3'を燃焼するための容器であり、例えば廃棄ドラム缶などである。
【0027】
図2に示す燃焼工程#120は、廃床材3'を燃焼させる工程である。燃焼工程#120は、図3(C)に示すように、廃床材3'から合成樹脂Rを熱分解して除去する工程であり、図3(B)(C)に示す廃床材3'の下塗り床材3a、中塗り床材3b及び上塗り床材3c,3dのエポキシ樹脂系接着剤を図3(C)に示すように熱分解して気化させて廃床材3'中から除去する。燃焼工程#120では、図3(C)に示すように、廃床材3'を燃焼用容器5内に収容した状態で、焼却炉などの余熱を利用して燃焼する燃焼装置内にこの燃焼用容器5を搬入し、新品の骨材Aを焼成するときの加熱温度よりも低い加熱温度で廃床材3'を燃焼装置内で燃焼させる。燃焼工程#120では、加熱温度が600℃を下回ると廃床材3'中のエポキシ樹脂系接着剤を効率よく除去することができないおそれがあり、加熱温度が800℃を超えると骨材Aの物性が変化するおそれがあるため、600〜800℃の範囲内で廃床材3'を燃焼することが好ましい。
【0028】
図2に示す分離工程#130は、燃焼工程#120後の廃床材3'から骨材Aを分離する工程である。分離工程#130は、廃床材3'から骨材Aとこの骨材A以外の不純物とを選別する工程であり、廃床材3'から所定の粒径(例えば、3mm又は5mm)を超える骨材Aを選別する。分離工程#130では、図3(D)に示すように、燃焼用容器5を燃焼装置から搬出し、燃焼後の粉粒状の廃床材3'を燃焼用容器5から分級装置6に移し、中塗り床材3b内の骨材Aと上塗り床材3c,3d内の珪砂S及び粉材Pとを分級装置6によって分離する。図3(D)に示す分級装置6は、骨材Aとこの骨材A以外の不純物とに選別する網ふるいなどの分級器具であり、骨材Aの粒径よりも小さく、珪砂S及び粉材Pの粒径よりも大きな篩目開き(粒度メッシュ)のものが使用される。分離工程#130では、図3(D)に示すように、骨材Aの粒径の大きさに応じて、骨材Aを粒径の大きいものから小さいものまで数種類(例えば4種類)に選別する。
【0029】
この発明の第1実施形態に係る骨材の再生方法、骨材及び床材には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、燃焼工程#120において廃床材3'を燃焼させ、この燃焼工程#120後の分離工程#130において廃床材3'から骨材Aを分離する。このため、廃床材3'から骨材Aを再生して再使用し、リサイクル率を向上させることができる。
【0030】
(2) この第1実施形態では、燃焼工程#120において廃床材3'から合成樹脂Rを熱分解して除去する。このため、廃床材3'中のエポキシ樹脂系接着剤などの合成樹脂Rを気化させて簡単に除去することができる。
【0031】
(3) この第1実施形態では、分離工程#130において廃床材3'から骨材Aとこの骨材A以外の不純物とを選別する。このため、廃床材3'中の粉材Pや珪砂Sなどの不純物を除去して、再生可能な骨材Aを抽出することができる。
【0032】
(4) この第1実施形態では、分離工程#130において廃床材3'から所定の粒径を超える骨材Aを選別する。このため、廃床材3'から再生された骨材Aのうち床材3に再使用するのに適した粒径のものを選り分けることができる。
【0033】
(5) この第1実施形態では、廃床材3'を燃焼することによってこの廃床材3'から骨材Aが分離可能である。その結果、廃床材3'から骨材Aを簡単に再生して、床材3に再使用することができるため、廃床材3'のリサイクル率を向上させることができる。
【0034】
(6) この第1実施形態では、廃床材3'を燃焼することによってこの廃床材3'から分離可能である再生された骨材Aを床材3が含有している。このため、廃床材3'から骨材Aを繰り返し再生し、骨材Aとして要求される物性をある程度維持しつつ安全に低コストで床材3を施工することができる。
【0035】
(7) この第1実施形態では、再生された骨材Aと新品の骨材Aとを床材3が含有している。このため、再生品の骨材Aの一部を使用して新品の骨材Aと混合し、安全に低コストで床材3を施工することができる。その結果、廃床材3'から骨材Aを僅かな量しか再生できないような場合には、新品の骨材Aに再生品の骨材Aを混合して再生品の骨材Aの有効利用を図り、床材3を量産することができる。
【0036】
(8) この第1実施形態では、新品の骨材Aは廃床材3'を燃焼することによってこの廃床材3'から分離可能である。その結果、廃床材3'から可能な限り繰り返し骨材Aを再生して新しい床材3にリサイクルすることができるため、床材3の製造コストを低減することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態に係る骨材の再生方法について説明する。
図4は、この発明の第2実施形態に係る骨材の再生方法を説明するための工程図である。図5は、この発明の第2実施形態に係る骨材の再生方法を説明するための概略図であり、図5(A)は再生処理前の状態を示し、図5(B)は収集工程後の状態を示し、図5(C)は燃焼工程中の状態を示し、図5(D)は分離工程中の状態を示し、図5(E)は破砕工程後の状態を示す概略図である。以下では、図1及び図3に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略するとともに、図2に示す工程と同一の工程及びについては同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
図4に示す破砕工程#140は、分離工程#130後の骨材Aを所定の粒径に破砕する工程である。破砕工程#140は、図5(E)に示すように、分離工程#130後の骨材Aのうち所定の粒径を越える骨材Aを所定の粒径に低下するまで破砕する。一般に、車両の形式に応じて中塗り床材3bの厚さが異なる場合があるため、骨材Aを再使用する中塗り床材3bの厚さによっては再生後の骨材Aの粒径が大きすぎる場合もある。例えば、鉄道車両の場合には、車両の種類に応じて使用される骨材Aの粒径が異なり、平均粒径3mmの骨材Aと平均粒径5mmの骨材Aとが通常使用されることが多い。このため、平均粒径3mmの骨材Aを使用する必要がある床材3に、廃床材3'から再生した平均粒径5mmの骨材Aを再使用することは、作業性などの観点から好ましくない。破砕工程#140では、例えば、破砕機などの破砕装置を使用して粒径5mm以上の骨材Aを平均粒径3mmまで破砕する。
【0039】
この発明の第2実施形態に係る骨材の再生方法、骨材及び床材には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態では、破砕工程#140において分離工程#130後の骨材Aを所定の粒径に破砕する。その結果、廃床材3'から再生された骨材Aを再使用する床材3の厚さに応じて、骨材Aの大きさを最適な大きさに調整することができるため、再生後の骨材Aを広く活用してリサイクル化をより一層向上させることができる。
【実施例】
【0040】
次に、この発明の実施例について説明する。
(骨材の採取)
先ず、実際の鉄道車両の廃車体から骨材を採取した。重機を使用して床構体(床構造体)から床材を分離し、この床材の塊を人力で収集した。その結果、車両の形式にかかわらず床材全体の約60%程度を採取可能であることが確認された。次に、バインダーとして使用されているエポキシ樹脂系接着剤を熱分解して除去するために、床材の塊をドラム缶に入れ焼却炉の余熱を利用して800℃で約8時間燃焼した。その結果、ほぼ全ての床材の塊からエポキシ樹脂系接着剤などの合成樹脂を除去することができた。また、床材を燃焼するための空気及び熱の供給量とエポキシ樹脂の分解量との間に比例関係があることが確認された。次に、燃焼後の床材からモルタル、ドラム缶の鉄片及び粉材などを除去するためにふるい掛けを行って、燃焼後の床材から骨材を選別した。以下に、各車両形式の床材から回収可能な骨材の割合を骨材の粒径毎に表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、東日本旅客鉄道株式会社の115系車両の場合には、一両の床材重量は1400kgであり、廃車体から回収可能な床材回収重量は700kg(床材回収割合は50.0%)であり、最も回収割合が高い粒径φ2.80〜4.75mmの回収骨材重量は269kgであった。また、東日本旅客鉄道株式会社の201系車両の場合には、一両の床材重量は690kgであり、廃車体から回収可能な床材回収重量は345kg(床材回収割合は50.0%)であり、最も回収割合が高い粒径φ0.85〜2.80mmの回収骨材重量は173kgであった。東日本旅客鉄道株式会社のE231系車両の場合には、平均粒径3mm(粒径φ0.85〜2.80mm)の骨材が使用されており、201系車両の粒径φ0.85〜2.80mmの骨材に比べて、115系車両の粒径φ2.80〜4.75mmの骨材では、再使用可能な骨材の割合が少ないことが確認された。このため、表1に示す粒径φ4.75mm以上の骨材を破砕して粒径を揃え、非破砕品、破砕品及び現行品(新品)について基礎物性及び施工性を評価した。以上より、115系車両の場合には、床材総重量約1400kgのうち骨材の取り出し可能量は約140kg(総重量比約10%)であり、201系車両の場合には床材総重量約690kgのうち骨材の取り出し可能量は約180kg(総重量比約27%)であることが確認された。
【0043】
(骨材の基礎物性評価試験)
次に、非破砕品、破砕品及び現行品を測定試料として基礎物性評価を行った。ここで、現行品は、鉄道車両用床骨材として現在使用されている株式会社宝建材製作所の人工軽量骨材(商品名:ユニカロン)であり、平均粒径が3mmの骨材と平均粒径が3mm+5mmの混合した骨材の二種類についてそれぞれ評価した。非破砕品は、現行品の人工軽量骨材を再生して平均粒径が5mmと3mmの二種類に選別した骨材についてそれぞれ評価した。破砕品は、現行品の人工軽量骨材を再生して平均粒径が5mmと3mmの二種類に破砕した骨材についてそれぞれ評価した。測定項目及び測定方法は、現行品の骨材の測定項目及び測定方法と同様である。物性評価試験は、破砕強度(メーカ規格)、比重、陥没強度(メーカ規格)、曲げ強度(JIS R 5201)、圧縮強度(JIS R 5201)、耐水性、熱伝導率(JIS A 1412)、疲労試験(メーカ規格)、音特性(メーカ規格)及び燃焼性について行った。ここで、メーカ規格は、現行品の骨材について規定されている測定方法である。以下に、非破砕品及び破砕品の基礎物性を現行品の基礎物性と比べたときの評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2に示すように、非破砕品については基礎物性評価試験の全ての内容について現行品とほぼ同等の物性値が得られた。このため、非破砕品の骨材については新車の床材に再使用可能であることが確認された。一方、破砕品については、基礎物性評価試験の耐水性及び疲労試験による変位について現行品に比べてやや劣っていたが、熱伝導性及び音特性については現行品と同等であり、燃焼性については不燃性であった。
【0046】
(骨材の施工性評価試験)
次に、非破砕品、破砕品及び現行品を施工試料として施工性評価を行った。ここで、非破砕品、破砕品及び現行品は、基礎物性評価試験で使用した測定試料と同じものを使用した。施工性評価試験では、再生した骨材を用いて床詰物構造を作製し施工性評価を行った。評価方法としては、非破砕品、破砕品及び現行品の施工試料を使用して、実車を模擬した試験片を作業員によって実際に作製し、この作成過程を通じて作業者が体感した施工性について意見を集約した。なお、試験片は、平均粒径3mmの骨材を使用したときの中塗り床材の厚さと同じ厚さで製作した。以下に、非破砕品及び破砕品の施工性を現行品と比べたときの評価結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表3に示すように、非破砕品3mmについては現行品と同等の施工性であり良好であった。このため、非破砕品3mmの骨材については新車の床材に再使用可能であることが確認された。また、非破砕品5mmについては、中塗り床材の厚さを仕上げ厚さまで薄くするためにサンダ掛けをしたときに、大粒の粒子が剥がれてキーストンプレートの表面が露出するとともに、作業時にこてが骨材に引っ掛かり滑り難く現行品に比べて作業性がやや劣っていた。破砕品5mmについては、骨材の粒が尖っているため現行品に比べて施工がやや困難であり、骨材の粒径が大きいため上塗り材の骨材への浸透量が現行品に比べて多かった。破砕品3mmについては、骨材の粒が尖っているため現行品に比べて施工がやや困難であった。
【0049】
以上の結果より、非破砕品3mmについては基礎物性評価試験及び施工性評価試験のいずれについても現行品と同等の性能を有しており、新車の床材に再使用可能であることが確認された。非破砕品5mmについては、平均粒径3mmの骨材を使用したときの中塗り床材の厚さと同じ厚さで施工する場合には、現行品に比べて施工性がやや劣っているが、基礎物性評価試験について現行品とほぼ同等の物性値を得られることが確認された。その結果、非破砕品5mmについては、平均粒径5mmの骨材を使用する新車の床材に再使用可能であることが確認された。破砕品3mm及び破砕品5mmについては、基礎物性評価試験及び施工性評価試験のいずれについても現行品に比べてやや劣っていることが確認されたが、鉄道車両用床材として要求される不燃性などの重要な性能を満たしていることが確認された。
【0050】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、鉄道車両の廃床材3'を例に挙げて説明したが、鉄道車両以外の自動車、航空機、船舶又は建築物などの床材、内装材又は外装材などの廃材についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、骨材Aが鉄道車両用床骨材である場合を例に挙げて説明したが、樹脂型の軽量充填材又は軽量コンクリートとして使用される骨材についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、骨材Aがカオリナイト系粘土質鉱物である場合を例に挙げて説明したが、パーライト系又はゼオライト系の骨材についてもこの発明を適用することができる。
【0051】
(2) この実施形態では、床板2がキーストンプレートである場合を例に挙げて説明したが、アルミニウム合金の押出成形材によって車外面板と車内面板とをトラス又はリブによって結合したダブルスキン構体などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、床材3中の合成樹脂Rがエポキシ樹脂である場合を例に挙げて説明したが、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂又はビニルエステル樹脂などである場合についてもこの発明を適用することができる。
【0052】
(3) この実施形態では、中塗り床材3bに非破砕品又は破砕品の骨材Aを使用する場合を例に挙げて説明したが、非破砕品と破砕品とを混合した骨材を使用することもできる。また、この実施形態では、骨材Aを平均粒径5mm又は平均粒径3mmに破砕する場合を例に挙げて説明したが、骨材Aを平均粒径1mmに破砕することもできる。
【0053】
(4) この実施形態では、再生品の骨材Aと新品の骨材Aとが同一種類である場合を例に挙げて説明したが、再生品の骨材と新品の骨材とが異なる種類である場合についてもこの発明を適用することができる。例えば、再生可能な骨材Aと再生不可能な骨材とを混合して使用することもできる。また、この第2実施形態では、再生品の骨材Aを所定の粒径に破砕して床材3を施工する場合を例に挙げて説明したが、新品の骨材Aを所定の粒径に破砕して再生品の骨材Aと混合して使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の第1実施形態に係る骨材を含有する床材によって施工された床構造を模式的に示す断面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る骨材の再生方法を説明するための工程図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る骨材の再生方法を説明するための概略図であり、(A)は再生処理前の状態を示し、(B)は収集工程後の状態を示し、(C)は燃焼工程中の状態を示し、(D)は分離工程中の状態を示す概略図である。
【図4】この発明の第2実施形態に係る骨材の再生方法を説明するための工程図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係る骨材の再生方法を説明するための概略図であり、(A)は再生処理前の状態を示し、(B)は収集工程後の状態を示し、(C)は燃焼工程中の状態を示し、(D)は分離工程中の状態を示し、(E)は破砕工程後の状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 床構造
2 床板
3 床材
3' 廃床材
3a 下塗り床材
3b 中塗り床材
3c,3d 上塗り床材
4 床仕上げ材
5 燃焼用容器
6 分級装置
A 骨材
R 合成樹脂
S 珪砂
P 粉材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃床材から骨材を再生する骨材の再生方法であって、
前記廃床材を燃焼させる燃焼工程と、
前記燃焼工程後の前記廃床材から前記骨材を分離する分離工程と、
を含む骨材の再生方法。
【請求項2】
請求項1に記載の骨材の再生方法において、
前記燃焼工程は、前記廃床材から合成樹脂を熱分解して除去する工程を含むこと、
を特徴とする骨材の再生方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の骨材の再生方法において、
前記分離工程は、前記廃床材から前記骨材とこの骨材以外の不純物とを選別する工程を含むこと、
を特徴とする骨材の再生方法。
【請求項4】
請求項3に記載の骨材の再生方法において、
前記分離工程は、前記廃床材から所定の粒径を超える前記骨材を選別する工程を含むこと、
を特徴とする骨材の再生方法。
【請求項5】
請求項4に記載の骨材の再生方法において、
前記分離工程後の前記骨材を所定の粒径に破砕する破砕工程を含むこと、
を特徴とする骨材の再生方法。
【請求項6】
廃床材から再生された骨材であって、
前記廃床材を燃焼することによってこの廃床材から分離可能であること、
を特徴とする骨材。
【請求項7】
請求項6に記載の骨材であって、
所定の粒径に破砕されていること、
を特徴とする骨材。
【請求項8】
廃床材から再生された骨材を含有する床材であって、
前記再生された骨材は、前記廃床材を燃焼することによってこの廃床材から分離可能であること、
を特徴とする床材。
【請求項9】
請求項8に記載の床材であって、
前記再生された骨材は、所定の粒径に破砕されていること、
を特徴とする床材。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の床材において、
前記再生された骨材と新品の骨材とを含有すること、
を特徴とする床材。
【請求項11】
請求項10に記載の床材であって、
前記新品の骨材は、前記廃床材を燃焼することによってこの廃床材から分離可能であること、
を特徴とする床材。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の床材であって、
前記新品の骨材は、所定の粒径に破砕されていること、
を特徴とする床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−12995(P2009−12995A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174691(P2007−174691)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(501212793)東日本トランスポーテック株式会社 (5)
【出願人】(502188848)直富商事株式会社 (3)
【Fターム(参考)】