説明

骨格について特定のシリカ/アルミニウム比を含む改良貴金属含有触媒

骨格について特定のシリカ/アルミニウム比を含み、かつ炭化水素質原料の水素処理で用いるのに適切な改良貴金属含有触媒。これは、第VIII族貴金属およびそれらの混合物から選択される水素添加−脱水素成分を、アルミニウムがその骨格中に組み込まれ、かつ平均細孔直径15〜40Å未満を有する中間細孔担体上に担持して含む触媒に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素質原料の水素処理で用いるのに適切な貴金属含有触媒に関する。より詳しくは、本発明は、第VIII族貴金属およびそれらの混合物から選択される水素添加−脱水素成分を、アルミニウムがその骨格中に組み込まれ、かつ平均細孔直径15〜40Å未満を有する中間細孔担体上に担持して含む触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、自動車エンジン油などの用途で用いるための潤滑油生成物は、添加剤を用いて、仕上げ生成物を調製するのに用いられる基材の特定の特性が向上された。環境に対する関心の高まりと共に、基材自体に対する性能要求は増大した。グループII基材に対するアメリカ石油協会(API)要求には、飽和分含量少なくとも90%、硫黄含量0.03重量%以下、および粘度指数(VI)80〜120が含まれる。最近、潤滑油市場には、グループI基材の代わりにグループII基材を用いて、より高品質の基材(燃費の向上、エミッションの減少等をもたらす)に対する需要が満たされる傾向がある。
【0003】
基材を調製するための従来技術(水素化分解または溶剤抽出など)は、高い圧力および温度、または高い(溶剤:油)比および高い抽出温度などの過酷な運転条件を必要として、これらのより高い基材品質が到達される。いずれの選択肢も、費用のかかる運転条件および低い収率を必然的に伴う。
【0004】
水素化分解は、予備工程として、水素化処理と組合された。しかし、この組合せはまた、留出油への転化(典型的には、水素化分解プロセスに付随する)による潤滑油の収率の減少をもたらす。
【0005】
特許文献1には、水素添加触媒、およびそれを用いるプロセスが記載される。該文献では、鉱油ベースの潤滑油は、水素添加金属機能を含む中間細孔結晶質物質(好ましくは担体を用いる)の上を通される。担持中間細孔物質は、細孔直径200Å超を有する。水素添加プロセスは、そこで製造される生成物が、低い不飽和度を有するように運転される。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,573,657号明細書
【特許文献2】米国特許第5,098,684号明細書
【非特許文献1】チェン(Chen)ら著「工業用途における形状選択性触媒(Shape Selective Catalysis in Industrial Applications)」(36 CHEMICAL INDUSTRIES、第41〜61頁、1989年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、依然として、良質の潤滑油基材を調製するのに、効果的な触媒が当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、炭化水素質原料の水素処理で用いられることができる触媒に関する。該触媒は、
a)少なくともアルミニウムおよびシリカを含む骨格を有し、シリカ/アルミニウム比が10:1〜100:1であり、平均細孔直径が15〜40Å未満である無機、多孔質、非層状、結晶質の中間細孔担体物質、および
b)第VIII族貴金属およびそれらの混合物から選択される水素添加−脱水素成分
を含む。
【0009】
本発明の一実施形態においては、無機、多孔質、非層状、かつ結晶質の中間細孔担体物質は、少なくとも一つのピークを、d−間隔18Å超に有するX線回折パターンを示すものとして特徴付けられる。担体物質は、更に、50torr(6.67kPa)および25℃におけるベンゼン吸着容量ベンゼン15g超/物質100gを有するものとして特徴付けられる。
【0010】
好ましい形態においては、担体物質は、担体物質の平均細孔直径15〜35Å未満を有する均一な細孔を有する実質的に均一な六方晶系ハニカム微細構造によって特徴付けられる。
【0011】
他の好ましい形態においては、本発明は、更に、結合剤物質を含む。
【0012】
更に他の好ましい形態においては、担体物質は、MCM−41である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、潤滑油原料材の水素処理で用いるのに適切な触媒である。触媒は、無機、多孔質、非層状、結晶質の中間細孔担体物質を、好ましくは適切な結合剤物質と結合されて含む。担体物質の骨格は、少なくともアルミニウムおよびシリカを含み、担体物質は、更に、平均細孔直径15〜40Å未満を有するものとして特徴付けられる。触媒はまた、第VIII族貴金属およびそれらの混合物から選択される水素添加−脱水素成分を含む。
【0014】
その焼成形態においては、本明細書で用いるのに適切なものに類似の特性を有する担体物質は、一般に、その骨格について高いシリカ/アルミニウム比を有した。一般に、これらの物質は、それらの骨格についてシリカ/アルミニウム比を、およそ800:1で有した。より高いシリカ/アルミニウム比は、望ましくない分解反応を防止するのに用いられた。しかし、本発明の発明者は、予想外にも、骨格中に組み込まれるアルミニウムの量が増大するにつれて、次に説明されるより小さな細孔径とつながって、向上された芳香族飽和能力を有する触媒が提供されることを見出した。
【0015】
従って、本発明で用いるのに適切な担体物質には、超大細孔径の結晶質相を含む合成組成物が含まれる。適切な担体物質は、無機、多孔質、かつ非層状の結晶質相物質であり、(その焼成形態で)、少なくとも一つのピークをd−間隔18Å超に相対強度100で有するX線回折パターンによって特徴付けられる。本明細書で用いるのに適切な担体物質はまた、50torr(6.67kPa)および25℃におけるベンゼン収着容量ベンゼン15グラム超/物質100グラムを有するものとして特徴付けられる。好ましい担体物質は、無機、かつ多孔質の非層状物質であり、最大垂直断面積の細孔寸法15〜40Å未満を有する均一サイズの細孔の六方晶系配置を有する。より好ましい担体物質は、MCM−41として識別される。MCM−41は、直径少なくとも13Åの六方晶系配置の均一なサイズの細孔からなる特徴的な構造を有し、d100値18Å超で指標付けされることができる六方晶系の電子線回折パターンを示す。これは、X線回折パターンにおける少なくとも一つのピークに対応する。MCM−41は、特許文献2および特許文献1に記載される。これは、本明細書に参照により援用され、また以下で少し援用される。
【0016】
本発明の成分として用いられる無機、非層状、かつ中間細孔結晶質の担体物質は、式Mn/q(W)の組成を有する。この式において、Wは、二価の第一列遷移金属から選択される二価元素、好ましくはマンガン、コバルト、鉄、および/またはマグネシウムであり、より好ましくはコバルトである。Xは、三価元素であり、好ましくはアルミニウム、ホウ素、鉄、および/またはガリウム、より好ましくはアルミニウムである。Yは、ケイ素および/またはゲルマニウムなどの四価元素であり、好ましくはケイ素である。Zは、リンなどの五価元素である。Mは一種以上のイオンであり、例えばアンモニウム、第IA族、第IIA族、および第VIIB族イオンなどである。通常、水素、ナトリウム、および/またはフッ化物イオンである。「n」は、酸化物として表されるMを除く組成物の電荷であり、qは、Mの加重モル平均原子価であり、n/qは、Mのモル数またはモル分率であり、a、b、c、およびdは、それぞれ、W、X、Y、およびZのモル分率であり、hは、1〜2.5の数であり、(a+b+c+d)=1である。本明細書で用いるのに適切な担体物質の好ましい実施形態においては、(a+b+c)は、d超であり、h=2である。他の更なる実施形態は、aおよびd=0、かつh=2の場合である。本明細書で用いるのに適切な担体物質を作製する際に用いるための好ましい物質は、他のメタロシリケートがまた用いられてもよいものの、アルミノシリケートである。
【0017】
上述されるように、本発明で用いるのに適切な担体物質は、それらの骨格に組み込まれたアルミニウムを、本発明より前に用いられたものより高い濃度で有する。このように、本明細書で用いるのに適切な担体物質は、骨格のシリカ/アルミニウム比10:1〜100:1、好ましくは25:1〜70:1、より好ましくは30:1〜60:1、最も好ましくは45:1〜55:1を有する。
【0018】
合成されたままの形態においては、本明細書で用いるのに適切な担体物質は、無水物ベースで、式rRMn/q(W)によって実験的に表される組成を有する。式中、Rは、イオンとしてMに含まれない全有機物質であり、rはRの係数、即ちRのモル数またはモル分率である。MおよびR成分は、結晶化中にそれらが存在する結果としての物質と結合され、容易に除去されるか、またはMの場合には、次に記載される後結晶化方法によって置換される。所望の程度まで、本発明の合成されたままの物質のもとのM(例えばナトリウム、または塩化物)イオンは、従来のイオン交換技術に従って、置換されることができる。好ましい置換イオンには、金属イオン、水素イオン、水素前駆体(例えばアンモニウム)イオン、およびこれらの混合物が含まれる。特に好ましいイオンは、最終触媒において所望の金属機能性を提供するものである。これらには、水素、希土類金属、および元素周期律表の第VIIA族(例えばMn)、第VIIIA族(例えばNi)、第IB族(例えばCu)、第IVB族(例えばSn)の金属、並びにこれらのイオンの混合物が含まれる。
【0019】
結晶質(即ち、焼成後に、例えばX線、電子線、または中性子線回折によるなどの回折パターンを、少なくとも一つのピークを有して示すのに十分な配列を有する)の中間細孔物質は、それらの構造(極めて大きな細孔窓を含む)によって、並びにその高い収着容量によって特徴付けられる。本明細書で用いられる用語「中間細孔」は、13Å〜200Åの範囲内の均一な細孔を有する結晶を示すことを意味する。本明細書で用いられる「多孔質」は、小さな分子(Ar、N、n−ヘキサン、またはシクロヘキサンなど)少なくとも1g/多孔質物質100gを吸着する物質を指すことを意味することに留意されたい。上述されるように、本発明は、平均細孔直径15〜40Å未満、好ましくは15〜35Å、より好ましくは20〜30Å、最も好ましくは23〜27Åを有する担体物質を用いるものとして特徴付けられる。本発明の細孔径は、本発明の一つの重要な特徴である。何故なら、本発明の発明者は、予期せずして、本発明の平均細孔直径をこの範囲内に限定することによって、本発明の芳香族飽和性能が大いに向上されることを見出したからである。
【0020】
本発明で用いるのに適切な担体物質は、その大きく開口した細孔の規則性によって、他の多孔質無機固形物と区別されることができる。その細孔径は、非晶質または準結晶質物質のそれと非常に似ている。しかし、その規則的な配列、およびサイズの均一性(単一相内の細孔径分布が、その相の平均細孔径の例えば±25%、通常±15%以下である)は、ゼオライトなどの結晶質骨格物質のそれに、更に似ている。従って、本明細書で用いられる担体物質はまた、大きな開口通路の六方晶系配置を有するものとして記載されることができる。これは、開口の内側直径15〜40Å未満、好ましくは15〜35Å、より好ましくは20〜30Å、および最も好ましくは23〜27Åを有して合成されることができる。
【0021】
本明細書で用いられる用語「六方晶系」は、実験的測定の限界内で、数学的に完全な六方晶系の対称性を示す物質だけでなく、その理想的な状態から実質的に観察可能な偏差を有するものもまた包含されることを意味する。従って、本明細書で用いるのに適切な担体物質を記載するのに用いられる「六方晶系」とは、物質中の殆どの通路が、ほぼ同じ間隔で六つの最も隣接する通路によって囲包されるであろうという事実を指すことを意味する。しかし、担体物質中の欠陥および欠点が、この基準を、物質の調製の良否により、種々の程度に破る実質的な通路数をもたらすであろうことに留意されたい。隣接する通路間の平均繰り返し間隔から±25%程度のランダム偏差を示す試料は、更に明確に、MCM−41物質の認識可能な像を示す。比較可能な変動はまた、電子線回折パターンからのd100値で観察される。
【0022】
本明細書で用いるのに適切な担体物質は、当技術分野で知られるいかなる手段によっても調製されることができ、一般に、特許文献2および特許文献1に記載される方法によって形成される。これは、既に参照により援用されている。一般に、担体物質の最も標準的な調製により、いくつかの明確な最大値を極めて低い角度領域に有するX線回折パターンが示される。これらのピークの位置は、六方格子からのhkO鏡映の位置とほぼ一致する。X線回折パターンは、しかし、必ずしも常に、これらの物質の存在の十分な指標ではない。何故なら、微細構造の規則性の程度、および個々の粒子内の構造の繰返し程度が、観察されるであろうピークの数に影響を及ぼすからである。実際に、唯一の明確なピークをX線回折パターンの低角度領域に有する調製物は、それらの中に該物質の実質量を含むことが見出された。この物質の微細構造を示す他の技術は、透過電子顕微鏡法および電子線回折である。適切な担体物質の適切に配向された種は、六方晶系配置の大きな通路を示し、対応する電子線回折パターンは、ほぼ六方晶系配置の回折最大値を示す。電子線回折パターンのd100間隔は、六方格子のhkO投影における隣接する点間の間隔であり、電子顕微鏡写真の式d100=a√3/2によって観察される通路間の繰返し間隔aに関連する。電子線回折パターンに観察されるこのd100間隔は、適切な担体物質のX線回折パターンにおける低角度のピークのd−間隔に対応する。これまでに得られた適切な担体物質の最も高度に規則正しい調製物は、電子線回折パターン上に観察可能な20〜40個の明確な点を有する。これらのパターンは、100、110、200、210等の独特の鏡映の六方晶系hkOサブセット、およびそれらの対称関連の鏡映で指標化されることができる。
【0023】
その焼成形態においては、本明細書で用いるのに適切な担体物質はまた、少なくとも一つのピークを、担体物質の電子線回折パターンのd100値に対応するd−間隔(Cu K−アルファ線に対して2θ=4.909°)18Å超の位置に有するX線回折パターンによって特徴付けられてもよい。また、上述されるように、適切な担体物質は、50torr(6.67kPa)および25℃における平衡ベンゼン吸着容量ベンゼン15g超/結晶100gを示す(基準:必要に応じて、付随する汚染物による細孔の閉塞が無いことを確実にするために処理された結晶物質)。
【0024】
適切な担体物質の平衡ベンゼン吸着容量特性は、付随する汚染物による細孔の閉塞が無いことを基準として測定されることに留意されたい。例えば、収着試験は、細孔を閉塞する汚染物、および通常の方法によって除去される水を有する結晶質物質相について行われるであろう。水は、脱水技術(例えば熱処理)によって除去されてもよい。細孔を閉塞する無機非晶質物質(例えばシリカ)、および有機物は、酸または塩基、もしくは砕屑物質が結晶に有害な影響を及ぼすことなく除去されるであろう他の化学剤と接触させることによって除去されてもよい。
【0025】
より好ましい実施形態においては、本明細書で用いるのに適切な焼成された結晶質の非層状担体物質は、少なくとも二つのピークを、d−間隔(Cu K−アルファ線に対して2θ=8.842°)10Å超の位置に有するX線回折パターンによって特徴付けられることができる。これは、担体物質の電子線回折パターンのd100値に対応する。その少なくとも一つは、d−間隔18Å超の位置にあり、d−間隔10Å未満の位置には、最強ピークの20%超の相対強度を有するピークは全くない。更に最も好ましくは、本発明の焼成物質のX線回折パターンは、d−間隔10Å未満の位置には、最強ピークの10%超の相対強度を有するピークを全く有さないであろう。いずれにしても、X線回折パターンにおける少なくとも一つのピークは、物質の電子線回折パターンのd100値に対応するd−間隔を有するであろう。
【0026】
本明細書で用いるのに適切な焼成された無機、かつ非層状の結晶質担体物質はまた、物理収着測定によって測定されて、細孔径15〜40Å未満またはそれ以上を有するものとして特徴付けられることができる。本明細書で用いられる細孔径は、結晶の最大垂直断面積の細孔寸法とみなされるものであることに留意されたい。
【0027】
上述されるように、本明細書で用いるのに適切な担体物質は、当技術分野で知られるいかなる手段にもよって調製されることができ、一般に、特許文献2および特許文献1に記載される方法によって形成される。これは、既に参照により援用されている。X線回折データ、平衡ベンゼン吸着、およびアンモニウムから水素の形態への物質の転化の測定方法は、当技術分野で知られ、また特許文献1に概説されることができる。これは、既に参照により援用されている。
【0028】
本明細書で用いるのに適切な担体物質は、幅広い種類の粒子径に成形されることができる。概して言えば、担体物質粒子は、粉末、細粒、または成形生成物の形態であることができる。2メッシュ(タイラー[Tyler])の篩を通過し、400メッシュ(タイラー[Tyler])の篩に残るのに十分な粒子径を有する押出し成形物などである。最終触媒が、押出し成形によるなどで、成形されるものである場合においては、担体物質粒子は、乾燥前に押出し成形されるか、または一部が乾燥され、次いで押出し成形されることができる。
【0029】
本担体物質の細孔径は、制御され、そのためにそれらは、分解などの反応における転移状態の種に関する空間的に特定の選択性が最小にされるのに十分に大きい(非特許文献1)。これは、形状選択性に影響を及ぼす要因に関する説明のために引用される。また、拡散制限はまた、非常に大きな細孔の結果として最小にされることに留意されたい。
【0030】
本明細書で用いるのに適切な担体物質は、自己結合されることができる、即ち結合剤なしである。しかし、本発明はまた、適切な結合剤物質を含むことが好ましい。この結合剤物質は、温度、および本発明を用いた方法で用いられる他の条件に耐性があると知られるいかなる結合剤物質からも選択される。担体物質は、結合剤物質と複合化されて、仕上げ触媒が形成され、その上に金属が添加されることができる。本明細書で用いるのに適切な結合剤物質には、活性および不活性な物質、並びに合成または天然ゼオライト、並びに無機物質(クレーなど)および/または酸化物(アルミナ、シリカ、またはシリカ−アルミナなど)が含まれる。シリカ−アルミナ、アルミナ、およびゼオライトは、好ましい結合剤物質である。アルミナは、より良好な結合剤担体物質である。シリカ−アルミナは、天然であるか、もしくはシリカおよび金属酸化物の混合物を含むゼラチン状沈殿物またはゲルの形態であるかのいずれであってもよい。発明者は、これにより、ゼオライト結合剤物質と組み合わせて、即ちその合成中に、これらと組み合わされるか、またはその際に存在する物質(それ自体、触媒活性である)を用いることが、仕上げ物の転化性および/または選択性を変化させ得ることを理解することに留意されたい。発明者は、これにより、同様に、本発明がアルキル化プロセスで用いられ、それによりアルキル化生成物が、反応速度を制御するための他の手段を用いることなく、経済的かつ整然と得られることができる場合には、不活性物質が適切に希釈剤として働いて、転化量が制御されることができることを理解する。これらの不活性物質は、天然クレー(例えばベントナイトおよびカオリン)に組み込まれて、商業運転条件下の触媒の破砕強度が向上され、かつ触媒の結合剤または母材として機能されてもよい。
【0031】
本発明は典型的に、複合物の形態で、担体物質80重量部/結合剤物質20重量部〜担体物質20重量部/結合剤物質80重量部の範囲の担体物質/結合剤物質の比を含む。典型的には、80:20〜50:50の担体物質/結合剤物質であり、好ましくは65:35〜35:65である。複合化は、従来の手段によってなされてもよい。これには、物質の混練、およびそれに引続く所望の仕上げ触媒粒子へのペレット化の押出し成形が含まれる。
【0032】
上述されるように、本発明は更に、第VIII族貴金属およびそれらの混合物から選択される水素添加−脱水素成分を含む。水素添加−脱水素成分は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、およびそれらの混合物から選択されることが好ましい。より好ましくは、白金、パラジウム、およびそれらの混合物である。水素添加−脱水素成分は、白金およびパラジウムであることが最も好ましい。
【0033】
水素添加−脱水素成分は、典型的には、0.1〜2.0重量%、好ましくは0.2〜1.8重量%、より好ましくは0.3〜1.6重量%、最も好ましくは0.4〜1.4重量%の範囲の量で存在する。全ての金属の重量%は、担体に対するものである。「担持に対する」とは、パーセントが、担体、即ち複合化された担体物質および結合剤物質の重量を基準とすることを意味する。例えば、担体が100gと秤量されるとすると、水素添加−脱水素成分20重量%は、水素添加−脱水素金属20gが担体上にあったことを意味するであろう。
【0034】
水素添加−脱水素成分は、担体物質上に交換されるか、それに含浸されるか、または物理的にそれと混合されることができる。水素添加/脱水素成分は、含浸によって組み込まれることが好ましい。水素添加−脱水素成分が複合化された担体物質および結合剤に含浸されるか、またはその上に交換されるものである場合には、それは、例えば、複合物を、水素添加−脱水素成分を含む適切なイオンで処理することによってなされてもよい。水素添加−脱水素成分が白金である場合には、適切な白金化合物には、塩化白金(IV)水素酸、二塩化白金、および白金アミン錯体を含む種々の化合物が含まれる。水素添加−脱水素成分はまた、水素添加−脱水素成分が化合物のカチオンで存在するか、またはそれが化合物のアニオンで存在する化合物を用いることによって、複合化された担体および結合剤物質中に、その上に、またはそれと組み込まれてもよい。カチオンおよびアニオンの両化合物が用いられることができることに留意されたい。金属がカチオンまたはカチオン錯体の形態である適切なパラジウムまたは白金化合物の限定しない例は、Pd(NHCl、またはPt(NHClであり、特に有用なものには、バナジン酸およびメタタングステン酸イオンなどのアニオン錯体である。他の金属のカチオン形態はまた、それらが結晶質物質上に交換されるか、またはそれに含浸されてもよいことから、非常に有用である。
【0035】
上記の説明は、本発明の数種の実施形態に関する。当業者は、等しく効果的である他の実施形態が、本発明の趣旨を実施するために考案されることができることを理解するであろう。
【0036】
以下の実施例は、本発明の改良された効果を例示するであろう。しかし、これは、いかなる意味においても、本発明を限定することを意味しない。
【実施例】
【0037】
一連の触媒を、異なるSiO:Al比および名目細孔径を有するMCM−41中間細孔物質を用いて作製した。基本的には、MCM−41中間細孔物質を、SiO:Al比800:1〜25:1、並びに名目細孔径40および25Åを有して合成した。合成されたMCM−41物質を、洗浄し、ろ過し、250゜F(121℃)で乾燥して、乾燥ケークが調製された。乾燥ケークを、窒素中540℃で予備焼成した。予備焼成されたMCM−41物質を、次いで、バーサル[Versal]−300アルミナ結合剤と混合し、1/16インチ(1.6mm)の円柱に押出し成形した。押出し成形物を、乾燥し、次いで空気中538℃で焼成した。焼成された押出し成形物を、次いで、白金0.15重量%およびパラジウム0.45重量%で共含浸し、120℃で乾燥した。触媒を、次いで、空気中304℃の最終焼成に付して、白金およびパラジウム化合物が分解された。仕上げ触媒の特性を、次の表に要約する。ベンゼン水素添加活性指数は、SiO:Al比の減少、またはMCM−41のアルミニウム含量の増大と共に増大することを注目されたい。
【0038】
ベンゼン水素添加活性(「BHA」)試験は、触媒活性の尺度である。BHA指数が高いほど、触媒はより活性である。従って、各触媒の性能を、BHA試験を用いて、水素添加活性について評価した。BHA試験を、各触媒試料について、触媒0.2gをヘリウム中100℃で1時間乾燥し、次いで試料を、選択された温度(120℃〜350℃、標準的には250℃)で、水素流中で1時間還元することによって行った。触媒を、次いで、水素中で50℃へ冷却し、ベンゼンの水素添加速度を、50℃、75℃、100℃、および125℃で測定した。BHA試験においては、水素を、200sccmで流し、10℃に保持されたベンゼンスパージャーを通した。データは、零次のアルレニウスプロットに当てはめられ、生成物モル/金属モル/時(100℃)の速度定数が報告される。これらの触媒のPt、Pd、Ni、Au、Pt/Sn、並びにコーク化および再生のバージョンは、同様に試験されることができることに留意されたい。BHA試験中に用いられる圧力は、大気圧である。BHA試験の結果を、記録した。これを、次の表に含める。
【0039】
【表1】

【0040】
各触媒を調製した後、各触媒の性能を、別々に、水素化600N脱ロウ油の水素化精製に対して評価した。脱ロウ油を、先ず、水素化して、硫黄含量が200wppmへ低減された。600N脱ロウ油は、芳香族濃度415ミリモル/kgを有した。各触媒約5ccを、別々に、上向き流マイクロリアクターに充填した。80〜120メッシュの砂3ccを、触媒充填に加えて、均一な液体流が確保された。窒素および水素による圧力試験の後、触媒を、窒素中260℃で3時間乾燥し、室温へ冷却し、水素中260℃で8時間活性化し、次いで150℃へ冷却した。600N脱ロウ油原料を、次いで導入し、運転条件を、2LHSV、1000psig(6996kPa)、および2500scf H/bbl(445m/m)へ調整した。反応器温度を、275℃へ昇温し、次いで7〜10日間一定に保持した。水素純度は、100%であり、ガスリサイクルは、全く用いられなかった。
【0041】
芳香族、硫黄、水素、および窒素含量によって規定される生成物品質を、毎日監視した。芳香族は、UV吸収によって測定された(ミリモル/kg)。通油時間に応じた全芳香族を、本明細書の図に、異なるシリカ:アルミナ比および細孔径を有するMCM−41を用いて作製された触媒について示す。本明細書の図から分かるように、本発明の発明者は、予想外にも、より小さなシリカ:アルミナ比(即ち、より高い酸性度)およびより小さな直径の細孔開口を有するMCM−41を用いて作製された触媒は、最高レベルの芳香族飽和をもたらしたことを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】それらの骨格について、種々の細孔径およびアルミニウム濃度を有する触媒の芳香族飽和性能を、種々の触媒が芳香族飽和プロセスで用いられた時間に対して示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくともアルミニウムおよびシリカを含む骨格を有し、シリカ/アルミニウム比が10:1〜100:1であり、平均細孔直径が15〜40Å未満である無機、多孔質、非層状、結晶質の中間細孔担体物質、および
b)第VIII族貴金属およびそれらの混合物よりなる群から選択される水素添加−脱水素成分
を含むことを特徴とする水素処理触媒。
【請求項2】
前記触媒は、活性および不活性物質、合成ゼオライト、天然ゼオライト、無機物質、クレー、アルミナおよびシリカアルミナよりなる群から選択される結合剤物質を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の水素処理触媒。
【請求項3】
前記担体物質は、平均細孔直径23〜27Åを有し、前記結合剤物質と複合化され、50torr(6.67kPa)および25℃における平衡ベンゼン吸着容量ベンゼン15g超/結晶100gを示すことを特徴とする請求項2に記載の水素処理触媒。
【請求項4】
前記結合剤物質は、シリカ−アルミナ、アルミナおよびゼオライトよりなる群から選択されることを特徴とする請求項2または3に記載の水素処理触媒。
【請求項5】
前記担体物質は、担体物質の電子線回折パターンのd100値に対応するd−間隔(Cu K−アルファ線に対して2θ=8.842゜)10Å超の位置に少なくとも二つのピークを有するX線回折パターンを有し、その少なくとも一つは、d−間隔18Å超の位置にあり、d−間隔10Å未満の位置には、最強ピークの20%より大きな相対強度を有するピークが全くないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素処理触媒。
【請求項6】
前記担体物質および前記結合剤物質は、担体物質80重量部/結合剤物質20重量部〜担体物質20重量部/結合剤物質80重量部の範囲の担体物質/結合剤物質の比で複合化されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の水素処理触媒。
【請求項7】
前記担体物質および前記結合剤物質は、担体物質:結合剤物質80:20〜50:50の範囲の担体物質/結合剤物質の比で複合化されることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の水素処理触媒。
【請求項8】
前記水素添加−脱水素成分は、0.1〜2.0重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水素処理触媒。
【請求項9】
前記水素添加−脱水素成分は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウムおよびそれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水素処理触媒。
【請求項10】
前記担体物質は、MCM−41であり、前記水素添加−脱水素成分は、白金およびパラジウムであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水素処理触媒。
【請求項11】
前記担体物質の骨格について前記シリカ/アルミニウム比は、25:1〜70:1であることを特徴とする請求項3に記載の水素処理触媒。

【図1】
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【公表番号】特表2008−512225(P2008−512225A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530334(P2007−530334)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/031059
【国際公開番号】WO2006/028880
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】