説明

骨格内に内部エチレン性不飽和結合を含むポリマー、およびその調製方法

【課題】骨格の中に、内部エチレン性不飽和結合を含む新規なポリマーと、簡単に実施可能なそれらのポリマーの調製方法を提案する。
【解決手段】本発明は、エチレン性不飽和結合を含むユニットの連なりを含むポリマーに関し、その不飽和結合は、2つの連続したユニットの間で、3炭素原子ごとに存在している。本発明はさらに、そのようなポリマーを調製するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その骨格内に内部エチレン性不飽和結合(endo ethylenic unsaturation)を含む新規なポリマー、およびそのようなポリマーを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部エチレン性不飽和結合を含むポリマーは、一般にその骨格内に2つの共役二重結合を含むモノマーから合成されるが、一般的な呼称として「ジエンポリマー」としばしば呼ばれている。
【0003】
最も一般的なジエンポリマーとしては、ゴムをあげることができるが、このものはポリイソプレンとして知られていて、そのポリマーは次式で表されるシスの繰り返しユニットからなっている:
【0004】
【化11】

【0005】
(nは、前記ポリマー中に存在する繰り返しユニットの数に相当する)。
【0006】
このものはゴムの木の樹液から収穫するか、またはチーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)触媒を用いて、イソプレンから合成的に得ることができる。
【0007】
ゴムの構造と類似の構造を有するジエンポリマーがポリブタジエンであり、このものもまたブタジエンから、チーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)触媒を用いることにより得られる。
【0008】
ブタジエンはさらに、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)コポリマーの構成要素の1つであるが、このコポリマーはより一般には、SBSの略称または、慣用名としては硬質ゴムとして知られている。このコポリマーはブロックコポリマーであって、順に、長いポリスチレン鎖、長いポリブタジエン鎖、そして再び長いポリスチレン鎖からなっている。このコポリマーは特に、靴底やタイヤの構成要素の一部となっている。
【0009】
網羅する訳ではないが、また別なジエンポリマーを挙げれば、ポリクロロプレンがあり、このものはより一般的にはネオプレンの名前で知られている。このポリマーは、式CH=CCl−CH=CHで表されるクロロプレンを重合させることによって、合成的に得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、その骨格の中に、内部エチレン性不飽和結合を含む新規なポリマーと、簡単に実施可能なそれらのポリマーの調製方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の1つの主題は、その骨格にユニットの連なりを含む新規なポリマーであって、前記ユニットは、同一であっても異なっていてもよく、下記の式(I)に相当するものであり:
−(CR=CR−CR)− (I)
ここで:
・Rは、水素原子または、直鎖状もしくは分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、3〜8個の炭素原子を含むシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含むアリール基、および6〜20個の炭素原子を含むアリールオキシ基から選択される炭化水素基を表し;
・Rは、ハロゲン原子または、直鎖状もしくは分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、3〜8個の炭素原子を含むシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含むアリール基、および6〜20個の炭素原子を含むアリールオキシ基から選択される炭化水素基を表し;
・ラジカルRおよびRは、同一であっても異なっていてもよいが、Rと同じ定義の相当するが、ただし、ラジカルRおよびRの内の少なくとも1つは、それぞれのユニットの中で水素原子を表すが;
前記ラジカルのR、R、RおよびRは、それらが炭化水素系の基を表す場合には、ハロゲン基、1〜20個の炭素原子のアルキル基、1〜20個の炭素原子のアルコキシ基、6〜20個の炭素原子のアリール基、6〜20個の炭素原子のアリールオキシ基、およびアミノ基から選択される1種または複数の置換基を含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ここで指摘しておくべきことは、本発明においては、「アミノ基」という用語は、1級、2級(またはモノ置換した)または3級(またはジ置換した)アミン基を意味するということである。置換基としてはアルキル基などが挙げられる。
【0013】
本発明によるポリマーは、式(I)のそれぞれのユニットの中に内部エチレン性不飽和結合を含み、この内部エチレン性不飽和結合は、3個が全部炭素原子である式(I)の2つの連続ユニットの間に位置している。
【0014】
したがって、このような配置であるために、これらのポリマーは、それらのジエン類似物(すなわち、2つの隣接ユニットの間で、炭素原子4個ごとに、1つのエチレン性不飽和結合を有するユニットの連なりを有しているもの)よりも高い剛性を有することができる。
【0015】
これらのポリマーには、式(I)のユニットの連なりを含む、どのようなタイプのポリマーも該当する。ここで指摘しておくべきことは、「連なり(sequence)」という用語は、少なくとも2個の、好ましくは少なくとも4個、さらに好ましくは少なくとも10個の式(I)の連続ユニットが結合されていることを意味していることである。
【0016】
より具体的には、これらのポリマーは、その骨格が(末端のユニットは例外として)式(I)のユニットだけからなっているポリマーに相当し、それらのユニットは同一であっても、異なっていてもよい。R、R、RおよびRが、1つのユニットと別なユニットとの間で違いがある場合には、式(I)のユニットが異なっているものとする。これらのポリマーはさらに、その骨格が、部分的に式(I)のユニットと、他のユニット、たとえばジオールユニットのような式(I)のユニットから誘導されるユニットとからなる、ポリマーもまた該当する。
【0017】
本発明においては、式(I)のユニットの連なりには、C=O、C=NOHまたはCHOH、および直鎖状または分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキレンジイル基、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの基を含んでいてもよい。別の言い方をすれば、ユニット(I)の連なりにおいて、上で定義した基が、そのユニット(I)の連なり2つの間を相互に結合していてもよい。
【0018】
本発明のポリマーのモル質量は、500g/molから2000000g/molであるのが好ましい。
【0019】
本発明の一般的な定義に収まる具体的なポリマーは、次式(II)に相当する:
−(CR=CR−CR−R (II)
ここでラジカルのR、R、RおよびRは、先に定義したものであり、Rは、直鎖状または分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、3〜20個の炭素原子を含むシクロアルキル基または6〜20個の炭素原子を含むアリール基を表し、Rは、−OH、1級アミン、チオールの−SH、ハロゲンまたは−CHO基、−CHOから誘導された基、エステル基、場合によっては置換されていてもよいアミド基またはアジド基−Nを表し、pは4〜10,000の範囲の整数である。
【0020】
本発明においては、「場合によっては置換されていてもよいアミド」という用語は、明細書のこれ以前およびこれ以降において、1級(または非置換の)アミド、2級(またはモノ置換した)アミドまたは3級(またはジ置換した)アミドを意味している。置換基としてはアルキル基などが挙げられる。
【0021】
「−CHO誘導体」という用語は、明細書のこれ以前およびこれ以降において、−CHOに対する求核試薬による求核性付加反応により生成する基、たとえばイミン、オキシムまたはヒドラジン基を意味する。
【0022】
式(II)において、R、RおよびRは、式(I)のユニットについて定義したものと同様で、同一であってもよい。使用可能なラジカルR、RおよびRの例としては、たとえば水素が挙げられる。
【0023】
式(II)において、Rが、直鎖状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、たとえばメチル基であってもよく、また、Rが、直鎖状の1〜4個の炭素原子を含むアルキル基、たとえばブチル基であってもよい。
【0024】
、RおよびRがHを表し、Rが−CHを表し、Rがブチル基CH−(CH−(以下の化学式では「Bu」とする)を表し、Rが−OHを表す場合には、そのポリマーは次式(III)となる:
Bu−(CH=CCH−CH−OH (III)
ここで、pは先の定義と同じものに相当する。
【0025】
本発明に従うまた別な具体的なポリマーは、次式に相当するものであってもよい:
【0026】
【化12】

【0027】
このラジカルRは、同一であっても異なっていてもよいが、上述の定義と同じものに相当し、p、pおよびpは、同一であっても異なっていてもよいが、2〜5000の範囲の整数である。
【0028】
本発明に従うさらなる具体的なポリマーは、次式(IV)に相当するものであってもよい:
R7-(CR1=CR2−CR3R4)m−A−(CR3R4−CR2=CR1)n−R8 (IV)
ここでラジカルR、R、RおよびRは先の定義と同じものであり、AはC=O基、CO誘導体または−CHOHを表し、ラジカルRおよびRは、同一であっても異なっていてもよいが、直鎖状または分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、3〜20個の炭素原子を含むシクロアルキル基または6〜20個の炭素原子を含むアリール基を表し、mは2〜5000の範囲の整数であり、そしてnは2〜5000の範囲の整数である。
【0029】
「C=O基」という用語は、明細書のこれ以前またはこれ以降において、−C=Oに対する求核試薬による求核性付加反応により生成する基、たとえばイミン、オキシムまたはヒドラジン基を意味する。
【0030】
したがって、式(IV)のポリマーは、そのユニット(I)の連なりが、上で定義した基Aを含む直鎖状のポリマーである。
【0031】
式(IV)において、基Aが−(C=O)−を表していてもよく、
その場合、それに対応するポリマーは次式(V)に相当する:
R7-(CR1=CR2−CR3R4)m−(C=O)−(CR3R4−CR2=CR1)n−R8 (V)
【0032】
、RおよびRがHを表し、Rがメチル基を表し、そしてRおよびRが直鎖のブチル基(先の式においてBuとしたもの)に相当する場合には、そのポリマーは、次式(VI)に相当する:
Bu−(CH=CCH3−CH2)m−(C=O)−(CH2−CCH3=CH)n−Bu (VI)
ここでmおよびnは、上に挙げたのと同じ定義に相当する。
【0033】
最後に、本発明に従うポリマーの中でも、特に挙げるものとしては、次式(VII)に相当するポリマーがある:
【0034】
【化13】

【0035】
ここで:
・ラジカルR、R、RおよびRは、先に挙げた定義と同じものに相当し;
・ラジカルRとR10は、同一であっても異なっていてもよいが、OH、NH、SH、場合によっては置換されていてもよいアミドまたは−CHO基、−CHOから誘導された基、エステル基、場合によっては置換されていてもよいアミド基またはアジド基−Nを表すか;またはRとR10を合わせて、−C(=O)−基、COから誘導される基、または−CHOH−基を形成し;
・Dは、直鎖状または分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキレンジイル基を表すが、その鎖の中に、酸素、硫黄および窒素から選択されるヘテロ原子を1個または複数含んでいてもよく、
・mは2〜5000の範囲の整数であり、そしてnは2〜5000の範囲の整数である。
【0036】
式(VII)のポリマーは、その式(I)のユニットの連なりが基Dを含む直鎖状のポリマーに相当していてもよいが、さらに、そのユニットの連なりが、基Dおよび、−C(=O)−、CHOHまたは−C(NOH)−基を含む環状ポリマーに相当するものであってもよい。
【0037】
前述の式(VII)において、そのポリマーは、上に述べたように、環状ポリマーに相当するものであってもよいが、そのようになるのは、基RとR10が合わさって、−(C=O)基を形成し、Dが直鎖状または分岐状の4〜20個の炭素原子の範囲のアルキレンジイル基である場合で、そのポリマーは次式(VIII)に相当する:
【0038】
【化14】

【0039】
具体的なケースとしては、R、RおよびRがHを表し、Rがメチル基を表し、Dがアルキレン基−(CH−である場合で、そのポリマーは次式(IX)に相当する:
【0040】
【化15】

【0041】
mおよびnは、上に挙げたのと同じ定義に相当する。
【0042】
基RとR10がいずれも同一の基を表していてもよく、その場合、問題となっているそのポリマーは、同一の末端を2つ有する直鎖状のポリマーである。このタイプのポリマーの具体例を挙げれば、RとR10が共に、たとえば基−OHを表し、Dが直鎖状または分岐状のアルキレン基を表しているようなポリマーで、そのような場合には、それに対応するポリマーは、次式(X)に相当する直鎖状のポリマーとなる。
【0043】
【化16】

【0044】
Dが直鎖状の6個の炭素原子を含むアルキレン基であるならば、そのポリマーは次式(XI)に対応する:
【0045】
【化17】

【0046】
本発明においては、本発明に従うユニットの内部エチレン性不飽和結合は、主としてE配位をとっているのがよく、その結果としてポリマーは、E立体化学の二重結合を有することになる。
【0047】
さらに、本発明の主題は、ユニットの連なりを含むポリマーを調製するための方法であり、前記連なりには炭素原子3個ごとにエチレン性不飽和結合を含んでいる。
【0048】
本発明の主題は一般に、その骨格が式(I’)のユニットの連なりを含むポリマーを調製するための方法である:
−(CR=CR’−CR)− (I’)
ラジカルR、RおよびRは先に挙げた定義と同じものに相当し、R’はRの定義と同じものに相当するが場合によっては水素を表すこともでき、前記方法には以下の:
・少なくとも1種の次式(2)に相当するイリドタイプの化合物:
CR=CR’−E (2)
(ここでラジカルR、R’、RおよびRは先に挙げた定義と同じものに相当し、Eは脱離基である)と、
・転位することが可能で、先に定義した式(I’)のユニットの前記シーケンスが得られるような、少なくとも1種の基を含む、3価のホウ素化合物、とを適量で反応させることからなる工程を含む。
【0049】
「3価のホウ素化合物」という用語は、3つの基を担持するホウ素ベースの基を意味する。「転位することが可能な基」という用語は、その反応条件下で、ホウ素原子から隣接の炭素原子へと結合の置換によって転位することが可能な基を意味している。
【0050】
好ましくはホウ素化合物によって形成される転位することが可能な基は、直鎖状または分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基から選択することができるが、ただし、3級炭素を介してホウ素に結合している分岐状のアルキル基は除く。
【0051】
脱離基Eは、N、S(R)、S(O)(R)、N(R)、AsArおよびPArから選択するのが好ましいが、ここでArは、場合によってはメチルまたはメトキシ基で置換したフェニル基を表し、Rはアルキル基、たとえば1〜20個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0052】
具体的には、このイリドタイプの化合物は、次式のメタアリルトリフェニルアルソニウムイリド(methallyltriphenylarsonium ylide)であってもよい:
【0053】
【化18】

【0054】
このイリドは特に、その調製が容易であるという特徴を有している。
【0055】
したがって、本発明による式(I’)のユニットの連なりの生成は、驚くべきことには、以下のような反応特性に基づいている:
・ホウ素原子が電子不足であるために、そのホウ素化合物は、基Rを担持する炭素原子によって生み出される負の電荷を受け取って、錯体を形成することが可能である、
・そのようにして得られた錯体は、イリド化合物と錯体を形成するホウ素化合物が過剰の負の電荷を担持しているという事実のために、不安定であって、そのため、基の内の1つ(または、基が1つだけのばあいにはその基)が1,2転位することによって転位して、ホウ素化合物がRを担持する炭素に転位することが可能となり、その結果、脱離基Eの放出が伴う;
・このようにして形成されたボランが、この化合物は他のイリド化合物と反応すると考えられるのに反して、驚くべきことには、1,3シグマトロピー転位に従って転位する。この転位反応は、ホウ素ベースの基の置換と、それに伴う、Rを担持する炭素原子ともともとはホウ素ベースの化合物から生成した転位基を担持する炭素原子との間の二重結合の置換、が特徴である;
・シグマトロピー転位によって生成するボラン化合物は、もう一度錯体を形成することが可能であり、そのためには、新しいイリド分子に付加し、それに続けて、新しい1,2転位と1−3転位反応が進むが、この反応は、イリド原料が無くなってしまうまで続く可能性がある。このような工程を経て、3炭素原子ごとにエチレン性不飽和結合が存在することを特徴とするユニット(I’)の連なりが得られる。
【0056】
イリドと当初のホウ素化合物との割合は、所望する連なりの長さと、所望するポリマーの分子量の関数として、当業者ならば容易に決定することが可能である、ということは理解されるべきである。
【0057】
1当量のホウ素化合物で開始した場合、この当量のホウ素化合物に、同じ当量のイリドおよび目的とするユニットを添加することによって、同じ量の目的とするユニットが得られるであろうことに注目されたい。
【0058】
より詳細な反応メカニズムについては、具体的に本発明によるポリマーを調製する方法に関連させて、以下において提案する。
【0059】
詳しく述べれば、本発明による方法の実施は、非極性で非プロトン性の溶媒、たとえば脱水THFの中でイリド化合物を生成させることから始める。イリド化合物は、ジアゾニウム中間体を経由する合成により調製するが、その中間体に、塩基を加える。ジアゾニウム中間体は、当業者公知の一般的な方法によって調製する。次いでホウ素化合物を導入し、最後にイリドタイプの化合物を、好ましくは滴下により加える。
【0060】
本発明は特に、次式(II’)のポリマーを調製するための方法に関するが:
−(CR=CR’−CR−R (II’)
それに含まれる工程は、式(1)R−BR1112のホウ素化合物(Rは、先に挙げた定義と同じものであって、転位することが可能な基を表し、R11およびR12は、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは:
・3級炭素を介してホウ素に結合している分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基、または1〜20個の炭素原子を含むアリールオキシ基を表すか;または
・2つ合わせて基−O−X−O−
(ここでXは、直鎖状または分岐状の2〜6個の炭素原子を含むアルキレンジイル基である)である)と、
先に定義した式(2)のイリドタイプの少なくとも1種のアリル性求核化合物とを、適切な量で反応させる工程であり、その手段によって、次式(XII)の中間体が得られるが:
−(CR=CR’−CR−BR1112 (XII)
前記方法にはさらに、ホウ素ベースの基を適切なR基に転化させる工程が含まれ、その手段によって、先に定義した式(II’)のポリマーが得られる。
【0061】
この方法の場合、そのホウ素化合物に含まれる転位することが可能な基は1つだけ(基R)で、基R11およびR12は、その性質から、転位することができない、ということに注目すべきである。
【0062】
ホウ素化合物の例を具体的に挙げてみれば、次式の化合物がある:
【0063】
【化19】

【0064】
記述をより明確にする目的で、以下において、この実施方法を反応メカニズムの手段を用いて説明するが、それには次の工程が含まれる
・第1の工程において、ホウ素化合物R−BR1112(1)をアリル性求核化合物(2)と反応させて、錯体(3)とし、それを基Rの1,2タイプの転位により、自発的に転位させて、中間体化合物(4)を得る:
【0065】
【化20】

【0066】
この中間体化合物(4)が最初のホウ素化合物(1)と異なるのは、ユニット(CR=CR)−CRが、ホウ素−炭素結合B−Rの間に挿入されているという事実においてである。
・第2の工程においては、その中間体化合物(4)を1,3−シグマトロピー転位メカニズムにより再び転位させるが、それは下記のスキームに従う:
【0067】
【化21】

【0068】
この第2の転位反応は、中間体反応物(4)とイリドタイプのアリル性求核化合物(2)との反応よりは早い。
【0069】
この第2の工程で得られるボラン化合物(5)は、新しい重合工程に与ることが可能で、数当量のイリドと反応した結果、次式を有するポリマーが得られる:
−(CR=CR’−CR−BR1112 (XII)
【0070】
最後に、最終工程として、適切な反応試薬と反応させることによって、基BR1112を適切な基Rへと転化させる。
【0071】
例を挙げれば、基−BR1112を−OH基に転化させるためには、式(XII)のポリマーを、塩基性媒体(たとえば3MのNaOH)中で、過酸化水素Hの酸化溶液で処理すればよい。一般に使用されるその他の酸化剤としては、m−クロロ過安息香酸およびトリエチルアミンオキシドなどがある。
【0072】
基−BR1112を−NH基に転化させるためには、式(XII)のポリマーを、塩基性媒体中で、ヒドロキシルアミン−O−スルホン酸のNH−O−SOHまたはクロロアミンのNHClの溶液で処理すればよい。
【0073】
最後に、基−BR1112を−CHO基に転化させるためには、ラジカルR11およびR12がアルコキシ基を表しているとすると、式(XII)のポリマーを、有機リチウム反応剤、たとえばメトキシメチルチオフェニルエーテルと反応させ、次いで、塩化水銀(HgCl)で処理、さらに塩基性媒体中で過酸化水素水溶液を用いた処理をすればよい。
【0074】
この方法によって、出発物質のホウ素化合物から誘導される末端Rと、基BR1112を化学的に転化させて得られる末端Rを有するポリマーが得られる。
【0075】
本発明の1つの変法においては、次式(II)のポリマーを調製するための方法には:
−(CR=CR’−CR−R (II’)
式(R−Bのホウ素化合物(Rは先に挙げた定義と同じもの)を、少なくとも1種の式(2)のイリドタイプのアリル性求核化合物と適切な量で反応させ、その手段によって次式(XIII)の中間体を得る工程が含まれる:
[R−(CR=CR’−CR−B (XIII)
前記方法にはさらに、ホウ素ベースの基を適切なR基に転化させる工程が含まれ、その手段によって、先に定義した式(II’)のポリマーが得られる。
【0076】
中間体化合物(XIII)を転化させてポリマー(II)とするための反応は、中間体化合物(XII)を転化させる際に説明したものとほぼ同じである。
【0077】
具体的には、使用可能なホウ素化合物は化合物BuB(Buは直鎖状のブチル基に相当する)であり、使用可能なイリドタイプの求核化合物はメタアリルトリフェニルアルソニウムイリド(この場合EはPhAs基に相当する)、その手段によって、塩基性媒体中で過酸化水素水溶液によって処理する最後の転化工程の後には、先に定義した式(III)のポリマーが得られる。
【0078】
本発明による、次式に相当する具体的なポリマーを調製するための方法:
【0079】
【化22】

【0080】
(ラジカルRは、同一であっても異なっていてもよいが、先に挙げた定義と同じものに相当し、そしてp、pおよびpは、同一であっても異なっていてもよいが、2〜5000の範囲の整数である)には、次式のホウ素化合物と:
(R−B
先に定義した式(2)のイリドタイプの少なくとも1種のアリル性求核化合物とを、適切な量で反応させる工程が含まれ、その手段によって、次式(XIV)の中間体が得られるが:
【0081】
【化23】

【0082】
前記方法にはさらに、ホウ素ベースの基をC−OH基に転化させる工程が含まれるが、それには、一酸化炭素の存在下、好ましくは150℃でエチレングリコールの存在下で加熱して中間体化合物(XIV)を処理し、それに続けて、塩基性媒体中で過酸化水素水溶液を用いて処理する。
【0083】
本発明はさらに、本発明による、具体的なポリマーを調製するための方法に関するが、前記ポリマーは次式(IV’)に相当し:
R7−(CR1=CR’2−CR3R4)m−A−(CR3R4−CR’2=CR1)n−R8 (IV’)
(R、R’、R、R、R、R、A、mおよびnは、先に挙げた定義と同じ)、前記方法には:
・式(6)R−BR13のホウ素化合物(RおよびRは、先に挙げた定義と同じ、R13は3級炭素を介してホウ素に結合している分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキル基、または1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基またはアリールオキシ基である)を;
・少なくとも1種の式(2)のイリドタイプのアリル性求核化合物:
CR=CR’−E (2)
(先に定義したもの)と反応させることが含まれ、それにより、式(XV)の誘導体を得て:
R7−(CR1=CR’2−CR3R4)m−BR13−(CR3R4−CR’2=CR1)n−R8 (XV)
それに続けて、基BR13を適切な基Aに転化させるための反応を行う。
【0084】
ホウ素化合物の例を挙げてみれば、次式に相当する具体的な化合物がある:
【0085】
【化24】

【0086】
(Buは直鎖状のブチル基に相当する)。
【0087】
たとえば、官能基BR13をCOに変化させるためには、次のような処理を実施すればよい:
・水の存在下で、圧力たとえば100バール、温度少なくとも70℃における、一酸化炭素を用いた処理;
・(CFCO)Oの存在下でのNaCNを用いた処理と、それに続けての、塩基性媒体中での過酸化水素水溶液を用いた処理;
・R13がアルコキシ基を表す場合には、リチウムトリエチルメチラートの存在下でのジクロロメチルメチルエーテルを用いた処理と、塩基性媒体中での過酸化水素水溶液存在下での処理。
【0088】
CO官能基が得られさえすれば、それから誘導される官能基(オキシム、イミン、アルコール)は、当業者公知の標準的な処理によって得ることができる。たとえば、CO官能基からC=NOH官能基に転化させるには、ヒドロキシルアミンで処理することが考えられるし、その一方でCHOH官能基を得ようとすると、CO官能基を、水素化ホウ素ナトリウムのような反応剤を使用して還元すればよい。
【0089】
最後に、本発明の主題の1つは、先に定義したような次式(VII’)の具体的なポリマーを調製するための方法であり:
【0090】
【化25】

【0091】
前記方法には、式(7)の環状ホウ素化合物を:
【0092】
【化26】

【0093】
(R14は、3級炭素を介してホウ素に結合している分岐状の6〜20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基、または1〜20個の炭素原子を含むアリールオキシ基から選択された基を表し、Dは先に挙げた定義と同じ)
・先に定義したような少なくとも1種の式(2)のイリドタイプの求核化合物:
CR=CR’−E (2)
と、反応させることが含まれ、それにより、式(XVI)の誘導体を得て:
【0094】
【化27】

【0095】
それに続けて、基BR14を適切な基RおよびR10へと転化させる工程が含まれる。
【0096】
このようにして、この方法は、環状ホウ素化合物から本発明によるポリマーを調整することに対応している。この方法の際に、環のC−B結合の1,2転位によるホウ素ベースの環の拡大が起きるが、それに対して、R14はこの転位には与ることが出来ない。
【0097】
記述をさらに明確にするために、ここで、この方法を次のような反応メカニズムを用いて説明する:
・第1工程においては、次に示すスキームに従って、環状ホウ素化合物(7)をアリル性求核化合物(2)と反応させて、錯体(8)とし、それを、その環状化合物の炭素−ホウ素結合の1,2転位によって自発的な転位をさせて、化合物(9)を得る:
【0098】
【化28】

【0099】
・第2工程においては、次に示すスキームに従って、化合物(9)を、1,3−シグマトロピー転位のメカニズムにより転位させる:
【0100】
【化29】

【0101】
この第2の工程で得られる化合物(10)は、新しい重合工程に与ることが可能で、数当量のイリドと反応した結果、次式(XIV)のポリマーが得られる:
【0102】
【化30】

【0103】
次に、最終工程で、基B−R14を適切な基−RおよびR10に転化させる。
【0104】
基R14を転化させるのに用いられる反応は、基BR1112を基Rに転化させるために用いたものとほぼ同じである。
【0105】
化合物(7)の定義にあてはまる環状ホウ素化合物の例を挙げれば、次式のB−テキシルボレパン(B−thexylborepane)がある:
【0106】
【化31】

【0107】
ここで、テキシル基−C(CH−CH(CHは、1,2転位による転位ができない、「非labile性」基であるので、ユニット−(CR=CR−CR)−が、環の中に挿入されて、環状中間体が得られる。
【0108】
ホウ素化合物としてB−テキシルボレパンを用い、イリドタイプのアリル性求核化合物としてメタアリルトリフェニルアルソニウムイリド(この場合、EはPhAs基に相当する)を用いた場合で、その反応に続けて、塩基性媒体中で過酸化水素水溶液を作用させることによって転化させる工程を行うと、先に定義した式(XI)のポリマーが得られる。転位の工程が、カルボニル化工程からなっている場合には、得られるポリマーは、先に定義した式(IX)のポリマーである。ケトンへのこの転化工程は、たとえば、ホウ素ベースのポリマー(XVI)を、シアン化ナトリウムで処理し、それに続けて、無水トリフルオロ酢酸、さらに塩基性媒体中での過酸化水素水溶液を用いて処理することからなる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によるポリマーは、幅広い分野での用途があるために、特に有利である。
【0110】
したがって、それらは繊維、樹脂またはフィルムの製造、比較的硬質の材料が要求される物品の製造、たとえば、導電性材料の絶縁のための、充填シール(plugging seal)、シースまたはコーティングを製造するために使用することができる。
【0111】
極性官能基を含むこれらのポリマーは、たとえば、接着剤や粘着剤を製造するのにも使用できる。
【実施例】
【0112】
ここで本発明を、以下の実施例を参照しながら説明するが、それらは、説明のためであって、本発明を限定するために記載しているのではない。
【0113】
実施例1
実施例1は、式(VII)のポリマーの定義の文脈に含まれる、直鎖状のポリマーを調整する例を示すが、ここでR、RおよびRはHを表し、Rは−CHを表し、RおよびR10は−OHを表し、そしてDは−(CH−を表している。
【0114】
その反応スキームは次の通りである:
【0115】
【化32】

【0116】
このタイプのポリマーを調整するための実験計画は次の通りである:
【0117】
1.33mL(2ミリモル、10当量)のtert−ブチルリチウム溶液(ペンタン中1.5M)を、アルゴン雰囲気下で、−78℃に冷却した0.896g(2ミリモル、10当量)のメタアリルトリフェニルアルソニウムテトラフルオロボレートを15mLの脱水THFに懸濁させた懸濁液中に、滴下により添加する。その溶液は直ちにオレンジ色に変色し、透明となる。その温度で30分間撹拌を続けてから、その混合物を氷浴に移す。温度が安定するまで待ち(15分)、次いで、1mLの脱水THFに38.4mg(0.2ミリモル、1当量)の環状ボランを溶解させた溶液を添加する。その溶液は、1時間後には無色となる。次いで、3mLの30%過酸化水素と3mLの3N水酸化ナトリウムを添加する。その混合物を室温に戻し、撹拌を4時間続けてから、30mLの飽和塩化アンモニウム溶液を加え、その混合物を70mLのジクロロメタンを用いて3回抽出する。その有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次いで濾過し、蒸発させる。白色の固形物が得られる。この粗製混合物を、シリカの上に吸着させてから、シリカゲルのカラムの上に置いて、ヘキサン/エーテル/ジクロロメタン(2/5/3)混合物を用いて溶出させると、無色の油状物が得られる。50mLのメタノールを加えると、白色の固形物が生成する。その懸濁液を濾過し、その固形物を20mLのメタノールを用いて2回洗浄してから、真空下で乾燥させる。ポリマーが、白色固形物の形で回収される(112mg、収率=81%)。
【0118】
H NMR(CDCl、δ(ppm)):5.17〜5.12(br t、283H、H4)、4.01(s、2H、H9)、2.69〜2.67(br d、604H、H6)、1.66〜1.58(br s、921H、H10〜H11)。
【0119】
13C NMR(CDCl、δ(ppm)):136.11〜135.34(br s、C5)、122.40〜121.88(br s、C4)、38.58〜32.03(br s、C6)、16.48〜16.22(br s、C11)。
【0120】
得られたポリマーを、ステアリン酸排除クロマトグラフィーによっても、分析する。
【0121】
その分析条件は次の通りである:
カラムのタイプ:PLゲル100+1000
溶出液:THF
ポンプ流量:1.00mL/分
【0122】
分析用のサンプルの濃度は1.45mg/mLであり、屈折率の増分dn/dcは0.130mL/gに設定する。
【0123】
LALLS(小角レーザー光散乱)による測定結果は次の通りである:
重合度:Dp=424=n+m
数平均モル質量:Mn=23040g/モル
重量平均モル質量:Mw=33750g/モル
多分散性指数:DPI=Mw/Mn=1.46
【0124】
上記と同一の操作条件で、0.896g(2ミリモル、50当量)のアルソニウム塩を7.7mg(0.04ミリモル、1当量)の環状ボランと反応させると、酸化反応の後では、同一の構造のポリマーが得られる(83mg、収率=74%)。
【0125】
得られたポリマーを、ステアリン酸排除クロマトグラフィーによっても、分析する。
【0126】
その分析条件は次の通りである:
カラムのタイプ:PLゲル100+1000
溶出液:THF
ポンプ流量:1.00mL/分
【0127】
分析用のサンプルの濃度は1.66mg/mLであり、dn/dcは0.130mL/gに設定する。
【0128】
LALLS測定の結果は次の通りである:
DP=490
Mn=26470g/モル
Mw=39600g/モル
DPI=Mw/Mn=1.50
【0129】
実施例2
実施例2では、式(VII)のポリマーのファミリーの文脈に入る環状ポリマーの場合を示すが、ここでRおよびR10が合わさって−(C=O)−基を形成し、Dがアルキレンの−(CH−であり、R、RおよびRはHを表し、そしてRは−CHを表す。
【0130】
その反応スキームは次の通りである:
【0131】
【化33】

【0132】
1.33mL(2ミリモル、10当量)のtert−ブチルリチウム(ペンタン中1.5M)を、アルゴン雰囲気下で、−78℃に冷却した、0.896g(2ミリモル、10当量)のメタアリルトリフェニルアルソニウムテトラフルオロボレートを15mLの脱水THFに懸濁させた懸濁液中に、滴下により添加する。その溶液は直ちにオレンジ色に変色し、透明となる。その温度で30分間撹拌を続けてから、その混合物を氷浴に移す。温度を0℃に安定させ(15分)、次いで、1mLの脱水THFに38.4mg(0.2ミリモル、1当量)の環状ボランを溶解させた溶液を添加する。その溶液は、1時間後には無色となる。次いでその混合物を室温としてから、20mg(0.4ミリモル、2当量)のNaCNを加える。次いでその混合物を室温で2時間、激しく撹拌する。その溶液は、わずかに黄色となる。次いで温度を−78℃まで低下させ、62μL(0.44ミリモル、2.2当量)の無水トリフルオロ酢酸を添加する。沈殿が現れる。温度を10分間−78℃に保ってから、その混合物を室温にする。5時間撹拌を続けてから、3mLの30%過酸化水素、さらに3mLの3N酢酸ナトリウム溶液を添加する。その混合物を5時間撹拌してから、50mLのジクロロメタンで3回抽出する。その有機相を合わせて、20mLの1N塩酸で洗浄する。その溶液を硫酸マグネシウムの上で乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発除去する。その粗製物をシリカの上に吸着させ、シリカゲルのカラムの上に置いて、ヘキサン/エーテル/ジクロロメタン(3/6/1)混合物を用いて溶出させる。無色の油状物が回収されるので、20mLのメタノールを加えることでそれを白色の固形物に変化させる。次いでそのポリマーを10mLのメタノールで2回洗浄し、白色固形物として単離する(56mg、43%)。
【0133】
(2−メチル)プロペ−1−ニリデンユニットのモル質量:54g/モル
シクロヘキサノンユニットのモル質量:112g/モル
ポリマーのモル質量:(112+(n+m)54)g/モル
【0134】
得られたポリマーを、ステアリン酸排除クロマトグラフィーによっても、分析する。
【0135】
その分析条件は次の通りである:
カラムのタイプ:PLゲル100+1000
溶出液:THF
ポンプ流量:1.00mL/分
【0136】
分析用のサンプルの濃度は1.82mg/mLであり、dn/dcは0.130mL/gに設定する。
【0137】
LALLS測定の結果は次の通りである:
Dp=481
Mn=26050g/モル
Mw=35730g/モル
DPI=Mw/Mn=1.37
【0138】
実施例3
実施例3では、式(II)のポリマーの定義の文脈に入る直鎖状のポリマーを調製する例を示すが、ここで、R、RおよびRはHを表し、Rは−CHを表し、RはCH−(CH−(Buと略す)を表し、そしてRは−OHを表す。
【0139】
その反応スキームは次の通りである:
【0140】
【化34】

【0141】
1.2mL(1.8ミリモル、9当量)のtert−ブチルリチウム溶液(ペンタン中1.5M)を、アルゴン雰囲気下で、−78℃に冷却した、0.806g(1.8ミリモル、9当量)のメタアリルトリフェニルアルソニウムテトラフルオロボレートを15mLの脱水THFに懸濁させた懸濁液中に、滴下により添加する。その溶液は明るいオレンジ色に変色し、透明となる。−78℃で30分間、次いで0℃で15分間撹拌を続ける。2mLの脱水THF中に0.2mL(0.2ミリモル、1当量)のトリブチルボラン(THF中1M)を溶解させて含む溶液を、氷浴で冷却してから、滴下により添加する。添加終了後10分で、全体が無色となる。次いで、3mLの30%過酸化水素と、さらに2mLの3N水酸化ナトリウムを添加する。その混合物を室温で4時間撹拌する。30mLの飽和塩化アンモニウム溶液を加え、次いでその反応媒体を、50mLのジクロロメタンを用いて3回抽出する。その有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次いで濾過し、蒸発させる。粗製の混合物を、シリカの上に吸着させ、その生成物をシリカゲルのカラムの上に置いて、ヘキサン/エーテル(8/2)混合物を用いて溶出させる。ポリマーが、無色の油状物の形で得られる(125mg、収率=89%)。
【0142】
(2−メチル)プロペ−1−ニリデンユニットのモル質量:54g/モル
ヘキサノールユニットのモル質量:74g/モル
ポリマーのモル質量:(74+p54)g/モル
NMRから求めた平均重合度は、DP=p+1=12である。
【0143】
H NMR(CDCl、δ(ppm)):5.45〜5.40(br t、1H、H8)、5.17〜5.12(t app、11.2H、H5)、4.13(s、0.3H、H10)、4.02(s、1.7H、H10')、2.74〜2.64(m、25H、H7)、2.00〜1.96(m、2H、H4)、1.68〜1.66(m、3H、H12)、1.60〜1.56(m、33.9H、H11)、1.33〜1.21(m、4.6H、H2〜H3)、0.90〜0.81(m、3H、H1)。
【0144】
13C NMR(CDCl、δ(ppm)):135.91〜135.26(m)、135.14、135.43、124.69、124.34、123.08〜122.43(m)、69.08、38.35〜37.66(m)、31.27、30.75、30.46、29.84、27.77、23.60、16.25、13.77。
【0145】
同一の操作条件で、896mg(2ミリモル、20当量)の同じアルソニウム塩を0.1mL(0.1ミリモル、1当量)のトリブチルボランを反応させると、酸化反応の後では、同一の構造のポリマーが得られる(93mg、81%)。
【0146】
H NMR(CDCl、δ(ppm)):5.42(m、1H、H8)、5.1〜5.12(t app、25.3H、H5)、4.13(s、0.2H、H10)、4.01(s、1.8H、H10')、2.74〜2.64(m、58H、H7)、1.99〜1.94(m、2H、H4)、1.68〜1.66(m、5H、H12)、1.60〜1.56(m、91H、H11)、1.33〜1.21(m、4.6H、H2〜H3)、0.90〜0.81(m、3H、H1)。
【0147】
NMRから求めた平均重合度は、DP=26である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その骨格に、同一であっても異なっていてもよい、式(I)に相当するユニットの連なりを含むポリマー。
−(CR=CR−CR)− (I)
(ここで:
・Rは、水素原子または、1〜20個の炭素原子を含む直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、3〜8個の炭素原子を含むシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含むアリール基、および6〜20個の炭素原子を含むアリールオキシ基から選択される炭化水素基を表し;
・Rは、ハロゲン原子または、直鎖状もしくは分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、3〜8個の炭素原子を含むシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含むアリール基、および6〜20個の炭素原子を含むアリールオキシ基から選択される炭化水素基を表し;
・ラジカルRおよびRは、同一であっても異なっていてもよいが、Rと同じ定義の相当するが、ただし、ラジカルRおよびRの内の少なくとも1つは、それぞれのユニットの中で水素原子を表すが;
前記ラジカルのR、R、RおよびRは、それらが炭化水素系の基を表す場合には、ハロゲン基、1〜20個の炭素原子のアルキル基、1〜20個の炭素原子のアルコキシ基、6〜20個の炭素原子のアリール基、6〜20個の炭素原子のアリールオキシ基、およびアミノ基から選択される1種または複数の置換基を含んでいてもよい)
【請求項2】
前記式(I)のユニットの連なりが、C=O、C=NOHおよびCHOH、ならびに直鎖状または分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキレンジイル基、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の基を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
次式(II)に相当する、請求項1に記載のポリマー。
−(CR=CR−CR−R (II)
(ラジカルのR、R、RおよびRは、請求項1において定義したものであり、Rは、直鎖状または分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、3〜20個の炭素原子を含むシクロアルキル基または6〜20個の炭素原子を含むアリール基を表し、Rは、−OH、1級アミン、チオールの−SH、ハロゲンまたは−CHO基、−CHOから誘導された基、エステル基、場合によっては置換されていてもよいアミド基またはアジド基−Nを表し、pは4〜10,000の範囲の整数である)
【請求項4】
ラジカルR、RおよびRが、水素原子を表す、請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
が、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基を表す、請求項3または4に記載のポリマー。
【請求項6】
が、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基を表す、請求項3〜5のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
次式(III)に相当するポリマー。
CH−(CH−(CH=CCH−CH−OH (III)
(pは、4〜10,000の範囲の整数)
【請求項8】
次式に相当するポリマー。
【化1】

(ラジカルRは、同一であっても異なっていてもよいが、請求項3の定義と同じものに相当し、p、pおよびpは、同一であっても異なっていてもよいが、2〜5000の範囲の整数である)
【請求項9】
次式(IV)に相当する、請求項2に記載のポリマー。
R7-(CR1=CR2−CR3R4)m−A−(CR3R4−CR2=CR1)n−R8 (IV)
(ラジカルR、R、RおよびRは請求項1における定義と同じものである、AはC=O基、CO誘導体または−CHOH基を表し、ラジカルRおよびRは、同一であっても異なっていてもよいが、直鎖状または分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、3〜20個の炭素原子を含むシクロアルキル基または6〜20個の炭素原子を含むアリール基を表し、mは2〜5000の範囲の整数であり、そしてnは2〜5000の範囲の整数である)
【請求項10】
AがC=O基である、請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
次式(VI)のポリマー。
Bu−(CH=C(CH3)−CR3R4)m−(C=O)−(CR3R4−CR2=CR1)n−Bu (VI)
(Buは直鎖状のブチル基を表す)
【請求項12】
式(VII)に相当する、請求項2に記載のポリマー。
【化2】

(ここで:
・ラジカルR、R、RおよびRは、請求項1において与えられたのと同じ定義に相当し、mおよびnは請求項9において与えられたのと同じ定義に相当し、そして
・ラジカルRとR10は、同一であっても異なっていてもよいが、OH、NH、SH、場合によっては置換されていてもよいアミドまたは−CHO基、−CHOから誘導された基、エステル基、場合によっては置換されていてもよいアミド基またはアジド基−Nを表すか;または
・RとR10を合わせて、−C(=O)−基、COから誘導される基、または−CHOH−基を形成し;
・Dは、直鎖状または分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキレンジイル基を表すが、好ましくは、その鎖の中に、酸素、硫黄および窒素から選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、mは2〜5000の範囲の整数であり、nは2〜5000の範囲の整数である)
【請求項13】
Dが、直鎖状または分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキレン基を表し、RとR10が合わさってC=O基を形成している、請求項12に記載のポリマー。
【請求項14】
次式(IX)のポリマー。
【化3】

(mおよびnは請求項12において定義したもの)
【請求項15】
Dが、直鎖状または分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキレン基を表し、RとR10が共にOH基を表し、そのような場合には、それに対応するポリマーが、次式(X)に相当する直鎖状のポリマーとなる、
【化4】

請求項12に記載のポリマー。
【請求項16】
式(XI)のポリマー。
【化5】

(mおよびnは請求項12において定義したもの)
【請求項17】
二重結合のE立体化学を有している、先行する請求項のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項18】
その骨格に、式(I’)のユニットの連なりを含むポリマーを調製するための方法であって、
−(CR=CR’−CR)− (I’)
(ここで:
・Rは、水素原子または、直鎖状もしくは分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、3〜8個の炭素原子を含むシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含むアリール基、および6〜20個の炭素原子を含むアリールオキシ基から選択される炭化水素基を表し;
・R’は、水素もしくはハロゲン原子または、直鎖状もしくは分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、3〜8個の炭素原子を含むシクロアルキル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基、6〜20個の炭素原子を含むアリール基、および6〜20個の炭素原子を含むアリールオキシ基から選択される炭化水素基を表し;
・ラジカルRおよびRは、同一であっても異なっていてもよいが、Rと同じ定義の相当し、ただし、ラジカルRおよびRの内の少なくとも1つは、それぞれのユニットの中で水素原子を表し;
前記ラジカルのR、R、RおよびRは、それらが炭化水素系の基を表す場合には、ハロゲン基、1〜20個の炭素原子のアルキル基、1〜20個の炭素原子のアルコキシ基、6〜20個の炭素原子のアリール基、6〜20個の炭素原子のアリールオキシ基、およびアミノ基から選択される1種または複数の置換基を含んでいてもよく、
前記方法が、
・少なくとも1種の次式(2)に相当するイリドタイプの化合物:
CR=CR’−E (2)
(ここでラジカルR、R’、RおよびRは先に挙げた定義と同じものに相当し、Eは脱離基である)と、
・転位することが可能で、先に定義した式(I’)の前記ユニットの連なりが得られるような、少なくとも1種の基を含む、3価のホウ素化合物と、
を適量で反応させることからなる工程を含む、方法。
【請求項19】
前記転位することが可能な基が、分岐状のアルキル基が3級炭素を介してホウ素に結合している場合を除いて、直鎖状または分岐状の1〜20個の炭素原子を含むアルキル基から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
脱離基Eが、N、S(R)、S(O)(R)、N(R)、AsArおよびPArから選択されるが、ここでArは場合によってはメチルまたはメトキシ基により置換されたフェニル基を表し、Rはアルキル基である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記イリド化合物が、メタアリルトリフェニルアルソニウムイリド(methallyltriphenylarsonium ylide)である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
次式(II’)に相当するポリマーを調製するための方法であって:
−(CR=CR’−CR−R (II’)
(ラジカルR、R’、RおよびRは、請求項18の定義と同じ定義を有し、そしてR、Rおよびpは、請求項3の定義と同じ定義を有する)、
前記方法が、
・式(1)R−BR1112のホウ素化合物〔Rは請求項3において与えられたのと同じ定義を有して、転位することが可能な基を表し、R11およびR12は、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは:
・3級炭素を介してホウ素に結合している分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基、または1〜20個の炭素原子を含むアリールオキシ基を表すか;または
・2つ合わせて基−O−X−O−(ここでXは、直鎖状または分岐状の2〜6個の炭素原子を含むアルキレンジイル基である)である〕と、
・請求項18において定義した式(2)のイリドタイプの少なくとも1種のアリル性求核化合物と、
を適切な量で反応させる工程を含み、
その手段によって、次式(XII)の中間体が得られるが:
−(CR=CR−CR−BR1112 (XII)
前記方法にはさらに、ホウ素ベースの基を適切なR基に転化させる工程が含まれ、その手段によって、先に定義した式(II’)のポリマーが得られる、方法。
【請求項23】
次式(II’)に相当するポリマーを調製するための方法であって:
−(CR=CR’−CR−R (II’)
ラジカルR、R’、RおよびRは、請求項18の定義と同じ定義を有し、そしてR、Rおよびpは、請求項3の定義と同じ定義を有し、
前記方法が、
式(R−Bのホウ素化合物(Rは上に与えたのと同じ定義を有する)と、
・請求項18において定義した式(2)のイリドタイプの少なくとも1種のアリル性求核化合物と、
を適切な量で反応させる工程を含み、
その手段によって、次式(XIII)の中間体が得られるが:
[R−(CR=CR’−CR−B (XIII)
前記方法にはさらに、ホウ素ベースの基を適切なR基に転化させる工程が含まれ、その手段によって、先に定義した式(II’)のポリマーが得られる、方法。
【請求項24】
前記ホウ素化合物が式BuBを有し、前記イリドタイプの求核化合物がメタアリルトリフェニルアルソニウムであり、その手段により、請求項7のポリマーが、塩基性媒体中での過酸化水素水溶液を用いた処理による転化の最終工程の後で得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
次式に相当するポリマーを調製するための方法であって:
【化6】

(ラジカルRは、同一であっても異なっていてもよいが、請求項3の定義と同じ定義に相当し、そしてp、pおよびpは、同一であっても異なっていてもよいが、2〜5000の範囲の整数である)、
前記方法が、
式(R−Bのホウ素化合物と、
少なくとも1種の請求項18において定義される式(2)のイリドタイプのアリル性求核化合物と、
を適切な量で反応させる工程を含み、
その手段によって、次式(XIV)の中間体が得られ:
【化7】

前記方法にはさらに、一酸化炭素の存在下で加熱して中間体化合物(XIV)を処理し、それに続けて、塩基性媒体中で過酸化水素水溶液を用いて処理することによる、ホウ素ベースの基をC−OH基に転化させる工程が含まれる、方法
【請求項26】
次式(IV’)のポリマーを調製するための方法であって:
R7−(CR1=CR’2−CR3R4)m−A−(CR1=CR’2−CR3R4)n−R8 (IV’)
(R、R’、RおよびRは、請求項18の定義と同じ定義を有し、R、R、A、mおよびnは、請求項9の定義と同じ定義を有する)、
前記方法には、式(6)のR−BR13のホウ素化合物(RおよびRは上で与えた定義と同じ定義を有し、R13は、3級炭素を介してホウ素と結合した、分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキル基、または1〜20個の炭素原子を含むアルコキシまたはアリールオキシ基である)と、
請求項18に定義されているような式(2)のイリドタイプの少なくとも1種のアリル性求核化合物と、
を反応させることを含み:
CR=CR’−E (2)
その手段によって、式(XIII)の誘導体が得られ:
R7−(CR1=CR’2−CR3R4)m−BR13−(CR1=CR’2−CR3R4)n−R8 (XIII)
それに続けて、基BR13を適切な基Aに転化させるための反応を行う、方法。
【請求項27】
次式(VII’)のポリマーを調製するための方法であって:
【化8】

(ラジカルR、R’、RおよびRは、請求項18の定義と同じ定義を有し、R、R10、D、mおよびnは、請求項12の定義と同じ定義を有する)、
前記方法には、式(7)の環状ホウ素化合物と:
【化9】

(R14は、3級炭素を介してホウ素と結合している分岐状の4〜20個の炭素原子を含むアルキル基または、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシまたはアリールオキシ基を表す)
・請求項18に定義されているような少なくとも1種の式(2)のイリドタイプの求核化合物:
CR=CR’−E (2)
と、
を反応させる工程を含み、
それにより式(XIV)の誘導体を得て:
【化10】

それに続けて、基BR14を適切な基RおよびR10へと転化させる工程が含まれる、方法。
【請求項28】
前記環状ホウ素化合物がB−テキシルボレパン(B-thexylborepane)であり、前記イリドタイプの求核化合物がメタアリルトリフェニルアルソニウムであり、その手段によって、塩基性媒体中で過酸化水素水溶液を作用させることによって転化させる工程の後で、請求項16の式(XI)のポリマーが得られる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記環状ホウ素化合物がB−テキシルボレパンであり、前記イリドタイプの求核化合物がメタアリルトリフェニルアルソニウムであり、その手段によって、転化のためのカルボニル化工程の後で、請求項14の式(IX)のポリマーが得られる、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2006−502272(P2006−502272A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542584(P2004−542584)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002995
【国際公開番号】WO2004/033524
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【出願人】(503434139)ソントル ナショナル ド ラ ルシェルシュ ションティフィーク (20)
【Fターム(参考)】