説明

骨芽細胞分化に関連する遺伝子発現

本発明はプレ骨芽細胞性細胞が分化を起して成熟骨芽細胞になる時に発現パターンが変化する遺伝子を確認する。この確認された遺伝子は分化プロセスのマーカーとして使用できる。本発明はまた分化のプロセスを変調することのできる試薬をスクリーニングする方法も提供する。本発明はまた確認された遺伝子1個又はそれ以上の発現を分析することによって骨形成を刺激する治療剤を確認する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は前駆体プレ骨芽細胞性細胞が骨芽細胞に分化する時に発現パターンが変化するたとえばHey1のような遺伝子を確認する。この確認された遺伝子は分化のプロセスに対するマーカーとして使用されうる。本発明はまた分化のプロセスを変調(modulating)できる薬剤を検索する方法を提供する。本発明はまた確認された遺伝子1個またはそれ以上の発現を分析することによって骨形成を刺激する治療剤を確認する方法も提供する。
【0002】
発明の背景
骨は古い組織が分解され、新しい組織が合成される動的な組織である。分解と新骨組織合成の速度制御は骨格構造の完全性にとって必須である。これらの速度が平衡を失うと、重篤な状態を起すことがある。新骨組織合成のプロセスは骨芽細胞によって媒介される。新骨組織合成の過程で骨芽細胞は前駆体プレ骨芽細胞性細胞から分化して骨形成細胞が成熟する。骨芽細胞分化のプロセスはこれまで主として細胞のレベル又は単一遺伝子のレベルで検討されてきた。多数の外部的調節因子、たとえばTGFbファミリーのメンバーのようなものが知られているが、骨芽細胞の分化及び骨形成の決定的な分子的段階は殆ど知られていない。キーとなっている因子の一つが最近転写因子Cbfa1であることが確認された(総説:Karsenty, 2000, Semin Cell Dev Biol; 11: 343-346)。Cbfa1と協力し、その遺伝子の下流に存在する別な転写因子、オステリックス(Osterix:Osx)も確認された(Nakashima et al., 2002, Cell; 108: 17-29)。例えばアルカリホスファターゼ及びタイプ1コラーゲンなど、様々な酵素及び構造蛋白質の発現レベルは上方調節され、一方他の遺伝子は下方調節される。骨組織の分解と合成速度との平衡失調によって特徴付けられる状態を処置するためには分解及び/又は合成の速度を増減することが好ましいであろう。そこで、臨床的利用の多数においては、前駆体プレ骨芽細胞性細胞の骨芽細胞への分化を促進することによって骨形成速度を高めることが好ましいであろう。特に重要な利用は骨量の減少により骨が脆くなり、骨折しやすくなることで特徴付けられる骨粗しょう症の処置である。骨組織の合成に影響を与えることができる薬剤に対する可能性ある他の使用には骨折の治療、骨が関連する外科手術からの回復、その他を含む。個々の遺伝子多数の発現レベルにおける変化が確認されている一方で、前駆体幹細胞が骨芽細胞に分化する時に起きる遺伝子発現の包括的変化の研究は別報に報告されている(Qi et al., PNAS USA, 2003, 100(6), 3305-10; de Jong et al., J Bone Miner Res. 2002, 17(12): 2119-29; Vaes et al., J Bone Miner Res. 2002, 17(12): 26-18)が、この研究に報告する発見とは重複(又は一部重複)しない。しかしながら、例えば骨組織の形成速度を変化させるように設計された処置の過程における効果の評価など、正確な情報が有用となろう。従って、包括的遺伝子発現レベルにおける変化の研究に対する必要性並びに前駆体細胞から骨芽細胞への分化に関連する新しい分子マーカーを確認する必要性が存在する。さらにそのうえ、分化に関与する別な遺伝子の確認はその発現レベルを変化させるように設計された薬剤の開発を可能にし、それによって分化プロセスの制御を可能にするかもしれない。これに加え、このプロセスに関与する遺伝子の確認は、分化に独特な関連がある診断用または予後推測用マーカーとしての使用を可能にする。
【0003】
骨形成骨芽細胞はインビボ及びインビトロで間葉前駆体から発生する。骨形成の間の様々な細胞表現型が骨プロジェニター、プレ骨芽細胞、成熟骨芽細胞及び鉱質化骨芽細胞として暫定的に定義されており、これらは各々重複するが、なお異なるマーカー遺伝子のセットによって特徴付けられる(Aubin et al., 1995, Bone; 17: 77S-83S)。組織化学的に骨芽細胞分化の古典的マーカーはアルカリホスファターゼに対する染色及び培養における鉱質化骨ノジュールに対する染色である。インビトロで骨芽細胞の分化を検討するために決定的な段階は適切な初代細胞又は細胞系列及び所定の培養条件の使用であり、これらが順次の段階的分化プロセスを可能にする。多くがヒト及びラット起源から入手される骨肉腫細胞系列(SaOS、U2OS、ROS及びUMR)では、これを達成するのは困難である。その理由は腫瘍起源であるために、これらの細胞系列は無調節増殖を示し、しばしば増殖マーカーと共に分化マーカーを発現するからである。加えて、完成された骨形成の特質である鉱質化骨ノジュールの形成をインビトロでこれら細胞系列が示すことは稀である。骨肉腫細胞系列の分化に固有のこれらの問題を回避するためには、新しいモデルの必要性は避けられない。
【0004】
本発明の要約
本発明はMC3T3−E1細胞系列、殊にMC3T3−1bクローン、が骨芽細胞的に分化する間に起す遺伝子発現の包括的変化を解明するものである。一側面では、本発明はMC3T3−E1細胞、特にMC3T3−1b細胞の骨芽細胞への分化に関連する遺伝子又は遺伝子ファミリー1個又はそれ以上の発現レベル変化を検出することに関する。関連する側面では、遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定することにも関する。このような検定はそれ自体として又は発現レベルの測定と共に行ってもよい。ある側面では、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーの1個又はそれ以上の発現レベルを測定し、一方では同時に表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質1個またはそれ以上の活性レベルを測定するのが好ましいであろう。この発現レベルを測定する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーは検定する蛋白質をコードする遺伝子と同一でも相違していてもよい。そこで、ある態様ではある遺伝子の発現レベル及びその遺伝子がコードする蛋白質の活性レベルを測定するのが好ましい。別な態様では、遺伝子1個の発現レベルを測定し、一方で別な遺伝子がコードする蛋白質の活性レベルを測定するのが好ましい。当業者は多くの遺伝子と蛋白質の発現及び/又は活性のレベルが、本発明に従って決定されることを認識することとなろう。関連する側面では、本発明は前記遺伝子又は遺伝子ファミリーを検証する方法、すなわちたとえば骨粗しょう症の遺伝子又は蛋白質の役割を確認することも含む。
【0005】
関連する一側面では、本発明はMC3T3−E1細胞系列、殊にMC3T3−1bクローンから骨芽細胞への分化を変調する薬剤のスクリーニング法を含み、これには次のことを含む:第1の遺伝子又は遺伝子ファミリーの発現プロファイルを作製すること、及び/又はMC3T3−E1細胞、殊にMC3T3−1b細胞1個又はそれ以上を含む細胞集団内にある表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;細胞集団を薬剤に接触させること;薬剤と接触した後に細胞集団の第2の遺伝子又は遺伝子ファミリーの発現プロファイルを作製し、及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;及び第1と第2の発現プロファイル及び/又は活性を比較すること。
【0006】
一側面では本発明は骨組織の異常な沈着で特徴付けられる状態の診断法を提供するが、これは:表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーの1個又はそれ以上の組織標本における発現レベルを検出すること、及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーをコードする蛋白質の活性を検定することを含み、ここに差動的(differential)な発現及び/又は活性は不適切な骨組織沈着の指標である。本発明は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーの1個又はそれ以上の組織試料内における発現レベルを検出すること;及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;を含む患者での骨芽細胞の異常な形成速度によって特徴付けられる状態の診断法を含み、ここに差動的な発現及び/又は活性は骨芽細胞の異常な形成速度を示す指標である。
【0007】
本発明はさらに表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー1個又はそれ以上の組織試料内における発現レベルを検出すること及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;を包含する、患者の骨粗しょう症を診断する方法を含むが、ここにその差動的な発現及び/又は活性は骨粗しょう症の指標であるものとする。
【0008】
別な一側面では、本発明は医薬的組成物を患者に投与すること;患者から得た細胞又は組織試料からの遺伝子又は遺伝子ファミリーの発現プロファイルを作製すること及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーがコードする蛋白質の活性を検定すること;及び患者の発現プロファイル及び/又は活性とMC3T3−E1、殊にMC3T3−1b細胞集団又は骨芽細胞集団の発現プロファイル及び/又は活性とを比較すること;を包含する、異常な骨組織沈着によって特徴付けられる状態を有する患者の処置を監視する方法も含む。
【0009】
関連する側面では、本発明は患者に医薬組成物を投与すること;患者から得た細胞又は組織試料から遺伝子又は遺伝子ファミリーの発現プロファイルを作製すること及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;および患者の発現プロファイル及び/又は活性とMC3T3−E1、殊にMC3T3−1b細胞集団又は骨芽細胞集団からの発現プロファイル及び/又は活性とを比較すること;を包含する、骨粗しょう症患者の処置を監視する方法を提供する。
【0010】
一側面では、本発明は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーの1個又はそれ以上の組織試料内での発現レベルを検出すること及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;を包含する、患者における骨組織沈着の進行を監視する方法であるが、ここに差動的な発現及び/又は活性は骨組織沈着の指標である。
【0011】
本発明は、患者に医薬組成物を投与すること;患者から得た細胞又は組織試料から遺伝子又は遺伝子ファミリーの発現プロファイルを作製すること及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;及び患者の発現プロファイル及び/又は活性とMC3T3−E1、殊にMC3T3−1b細胞集団又は骨芽細胞の細胞集団から得た発現プロファイル及び/又は活性とを比較すること;を包含する、骨芽細胞の異常な形成速度によって特徴付けられる状態を持つ患者の処置を監視する方法を含む。
【0012】
関連する一側面では、本発明は:患者に表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー少なくとも1個の発現を変化させるか及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を変化させる医薬組成物を投与すること;MC3T3−E1細胞、殊にMC3T3−1bからの発現プロファイルを作製するか及び/又は活性について検定すること;及び患者の発現プロファイル及び/又は活性とMC3T3−E1、殊にMC3T3−1b細胞を含む未処置細胞集団からの発現プロファイル及び/又は活性とを比較すること;を包含する、骨芽細胞の異常な形成速度によって特徴付けられる状態を持つ患者を処置する方法を提供する。
【0013】
別な一側面では、本発明は;患者に医薬組成物を投与すること;MC3T3−E1細胞、殊にMC3T3−1b細胞を有する患者から得た細胞又は組織試料からの遺伝子又は遺伝子ファミリーの発現プロファイルを作製すること及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;及び患者の発現プロファイル及び/又は活性とMC3T3−E1細胞、殊にMC3T3−1b細胞を含む未処置細胞集団からの発現プロファイル及び/又は活性とを比較すること;を包含する、異常な骨組織沈着によって特徴付けられる状態を持つ患者を処置する方法も含む。
【0014】
一側面では本発明は:ここにこの組成物は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー少なくとも1個の発現を変化させ、及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を変化させる医薬組成物を患者に投与すること;MC3T3−E1細胞、殊にMC3T3−1b細胞からの発現プロファイルを作製するか及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;及び患者の発現プロファイル及び/又は活性とMC3T3−E1、殊にMC3T3−1b細胞を含む未処置細胞集団からの発現プロファイル及び/又は活性を比較すること;を含む骨粗しょう症の患者を処置する方法を提供する。
【0015】
本発明には、細胞を薬剤に接触させること;及び表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーの1個又はそれ以上について発現レベルを検出すること及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;を包含する、骨粗しょう症の影響を緩和できる薬剤をスクリーニングする方法も含む。
【0016】
さらなる側面では、本発明は:細胞に薬剤を接触させ、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーの1個又はそれ以上の発現レベルを検出すること及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質の活性を検定すること;を包含する、骨組織の沈着を変調できる薬剤のスクリーニング方法である。
【0017】
前記方法は全て表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の発現レベルを検出する段階を含んでいてもよい。好ましくは、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー全ての発現又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバー殆ど全ての発現を検出する。関連する一側面では、本発明の方法は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の活性を検定する段階を包含することもある。ある好適な態様では、本発明の方法は:表1又は表2に示す遺伝子ファミリーのメンバーである遺伝子1個又はそれ以上の発現レベルを測定すること;及び表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質1個又はそれ以上の活性を検定すること;の双方を包含してもよい。ある態様では、遺伝子の発現レベル及び同じ遺伝子がコードする蛋白質の活性レベルを測定してもよい。別な態様では、遺伝子少なくとも1個の発現レベルを測定し、一方で、異なる遺伝子がコードする蛋白質の少なくとも1個の活性レベルを測定してもよい。
【0018】
一側面では、本発明は:細胞集団とその薬剤とを接触させること;及び遺伝子少なくとも1個の活性少なくとも1種又は表1又は表2に規定する遺伝子ファミリーのメンバー少なくとも1種の活性を検定すること;を包含する、MC3T3−E1、殊にMC3T3−1b細胞の骨芽細胞への分化を変調する薬剤を確認する方法を提供する。関連する一側面では、本発明は:患者に医薬組成物を投与すること;及び表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバー少なくとも1個の活性少なくとも1種を検定することを包含する、異常な骨沈着に特徴付けられる状態を持つ患者の処置を監視する方法を提供する。本発明はまた、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個の活性レベルを検出することを包含する、骨芽細胞の異常な形成速度によって特徴付けられる状態を診断する方法を含む。ある好適な側面では、本発明はオリゴヌクレオチド少なくとも2個を含有する組成物を包含するが、ここに各オリゴヌクレオチドは表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの1個又はそれ以上に特異的にハイブリッドを形成する配列を含む。ある側面では、この組成物は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のオリゴヌクレオチドを包含してもよく、ここに各オリゴヌクレオチドは表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバー1個又はそれ以上と特異的なハイブリッド形成する配列を包含する。ある態様では、オリゴヌクレオチドの1個又はそれ以上は固体の支持体に付着していてもよい。固体支持体は当業者に知られているものいずれでもよく、これに限定するものではないが、膜、ガラス支持体、フィルター、組織培養皿、ポリマー材料及びシリコンの支持体を含む。
【0019】
好適な側面では、本発明は少なくとも2個のオリゴヌクレオチドが結合している固体の支持体を提供するが、ここにこのオリゴヌクレオチドは各々表1又は表2に示す遺伝子少なくとも1個又は遺伝子ファミリーのメンバー少なくとも1個と特異的にハイブリッドを形成する配列を含むものとする。ある態様では、オリゴヌクレオチド少なくとも1個は固体の支持体に共有結合的に結合している。ある態様では、オリゴヌクレオチド少なくとも1個は固体の支持体に非共有結合的に結合している。オリゴヌクレオチドは、例えば、別個の位置に平方センチメートル当り少なくとも約10個の異なるオリゴヌクレオチドで、平方センチメートル当り別個の位置に少なくとも約100個の異なるオリゴヌクレオチドで、平方センチメートル当り別個の位置に少なくとも約1000個の異なるオリゴヌクレオチドで、及び/又は別個の位置に平方センチメートル当り少なくとも約10000個の異なるオリゴヌクレオチドで、など当業者に知られているいかなる密度で本発明の固体の支持体に結合していてもよい。所定の利用のために適当な密度の選択は当業者にとって通常の操作である。
【0020】
本発明はまた、休止期にあるMC3T3−E1、殊にMC3T3−1b細胞及び/又は骨芽細胞に分化しつつあるMC3T3−E1細胞、殊にMC3T3−1b細胞及び/又は骨芽細胞における表1又は表2に示す遺伝子ファミリー少なくとも1個のメンバー1個又はそれ以上の発現レベル及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバー少なくとも1個がコードする蛋白質1個又はそれ以上の活性レベルを確認する情報を含むデータベース;を包含する、コンピュータシステム:及びその情報を読取るためのユーザーインターフェース;を含む。このデータベースはさらに表1又は表2に示す遺伝子1個又はそれ以上又は遺伝子ファミリー1個又はそれ以上のメンバー1個又はそれ以上の遺伝子1個又はそれ以上の配列情報を包含していてもよい。このデータベースは分化していないMC3T3−E1、殊にMC3T3−1b細胞に発現される遺伝子1個又はそれ以上又は遺伝子ファミリーのセットにおける遺伝子ファミリー1個又はそれ以上のメンバー1個又はそれ以上の発現レベルを確認する情報を包含してもよい。このデータベースは骨芽細胞以外の細胞型に分化しつつあるMC3T3−E1細胞、殊にMC3T3−1b細胞に発現される遺伝子又は遺伝子ファミリーのセットにおける遺伝子1個又はそれ以上又は遺伝子ファミリー1個又はそれ以上のメンバー1個又はそれ以上の発現レベルを確認する情報を包含してもよい。このデータベースは骨芽細胞に分化しつつある前駆体幹細胞に発現される遺伝子1個又はそれ以上又は遺伝子のセット又は遺伝子ファミリーにおける遺伝子ファミリー1個又はそれ以上のメンバー1個又はそれ以上の発現レベルを確認する情報を包含してもよい。このデータベースはさらに外部データベースの記載を前記遺伝子及び/又は遺伝子ファミリーに関連付ける外部データベースからの記載情報を含んでいるか、又はリンクしていてもよい。
【0021】
さらに、本発明は組織又は細胞内における表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー少なくとも1個の発現レベルとデータベース内の遺伝子の発現レベルとを比較すること;を包含する、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー少なくとも1個の遺伝子を含むセット及び/又は遺伝子ファミリーの組織又は細胞内における発現レベルを確認する本発明情報への本発明コンピュータシステムの使用法も含む。
【0022】
本発明はまた:表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバー1個がコードする蛋白質少なくとも1個の組織内又は細胞内における活性レベルとデータベース内のその蛋白質の活性レベルとを比較すること;を包含する、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー少なくとも1個を包含する1個又はそれ以上の遺伝子及び/又は遺伝子ファミリーのメンバーがコードする蛋白質1個又はそれ以上の、組織又は細胞内における活性レベルを確認する本発明情報に開示したコンピュータシステムを使用する方法も含む。
【0023】
詳細な説明
生物学的機能の多くは転写(たとえば開始、RNA前駆体の準備、RNAプロセッシングなどの制御によって)及び/又は翻訳の制御によって様々な遺伝子の発現を変化させることによって達成される。例えば、細胞周期、細胞分化及び細胞死のような基礎的な生物学的プロセスは一群の遺伝子の発現レベルにおける変化によって特徴付けられることが多い。悪い遺伝子発現の変化は病因学にも関連する。例えば機能性腫瘍抑制遺伝子の十分な発現の欠如及び/又はオンコジーン/プロトオンコジーンの過剰発現は発癌又は細胞の過形成を起すことがある(Marshall, (1991) Cell 64: 313-326; Weinberg, (1991) Science 254: 1138-1146)。そこで、特定遺伝子(たとえばオンコジーン又は腫瘍抑制因子)の発現レベルにおける変化は様々な疾患の存在又は悪化の指針として役立つ。遺伝子発現変化の監視は薬剤のスクリーニング開発の期間にある種の利点を提供することもある。薬剤はしばしばその薬剤が細胞に示すその他の効果を参酌せずに主な標的との相互作用能についてスクリーニングされる。かかる別な効果はしばしば動物全身に毒性をもたらし、薬剤候補の開発及び使用に至らない。
【0024】
本発明者は骨芽細胞に分化するように誘導されたMC3T3−E1細胞、殊にMC3T3−1b細胞を含む細胞集団について試験して、この分化プロセスの間に見られる遺伝子発現の包括的変化を確認した。これらの遺伝子発現の包括的変化はまた発現プロファイルとも呼ばれて、診断用マーカー並びに疾患状態、疾患悪化、毒性、薬剤の効果及び薬剤代謝を監視するために使用できる有用なマーカーを提供する。
【0025】
この発現プロファイルは1個又はそれ以上の条件下に差動的に発現される個々の遺伝子を確認するために使用された。これに加えて、本発明は差動的に発現される遺伝子のファミリーを確認する。本明細書に使用する「遺伝子ファミリー」はこれに限定するものではないが、本明細書に記載する寄託番号で同定される特定の遺伝子並びにそれに関連する配列を含む。関連する配列は例えばヌクレオチドのレベルで又はコードするポリペプチドアミノ酸のレベルのいずれかで特定的に確認される配列と高度な配列同一性を持つ配列であってもよい。高度な配列同一性は前記遺伝子に対してヌクレオチドレベルで少なくとも約65%の配列同一性、好ましくは前記遺伝子に対して約80又は85%配列同一性、又はより好ましくは約90又は95%又はそれ以上の配列同一性であると解釈する。コードするポリペプチドのアミノ酸同一性に関しては、高度な同一性は少なくとも約50%の同一性、より好ましくは約75%の同一性、及び最も好ましくは約85%又はそれ以上の配列同一性を示すものであると解釈する。殊に、関連する配列には異なる生物からの相同性遺伝子を含む。例えば、もしも特定的に確認した遺伝子が非ヒト哺乳類由来であれば、遺伝子ファミリーはヒトを含む他種哺乳類からの相同性遺伝子を包容することとなろう。もしも特定的に確認した遺伝子がヒトの遺伝子であれば、遺伝子ファミリーは他種哺乳類からの相同性遺伝子を包容することとなろう。当業者は相同性遺伝子の長さが異なり、特定的に確認された配列に対して程度の異なる配列同一性を持つ領域を含んでいてもよいことを認識することとなるであろう。
【0026】
検定方法:分化するように誘導された細胞集団に差動的に発現されることが確認された遺伝子及び配列、並びに関連配列は所与の試料内の遺伝子1個又は多種の発現レベルを検出又は定量するために様々な核酸の検出検定法で使用してもよい。例えば、慣例的なノーザンブロッティング、リボヌクレアーゼ保護、RT−PCR、QPCR(定量的RT−PCR)、たとえばTaqMan Systemのような即時PCR及び差動的なディスプレー方法は遺伝子発現レベルを検出するために使用してもよい。この方法は本発明のある態様のために有用である。しかしながら、本発明の方法及び検定法は多数の遺伝子の発現を検出するためにハイブリッド形成に基づく方法を用いて最も効率的に設計されている。溶液による検定法及び固体支持体による検定法を含む、いかなるハイブリッド形成検定方法を使用してもよい。本発明の差動的に発現される遺伝子のためのオリゴヌクレオチドプローブを含む固体の支持体はフィルター、ポリ塩化ビニル皿、シリコン又はガラス製チップなどであることができる。そのような支持体及びハイブリッド形成法は例えばWO 95/11755に記載のもののように広範に入手可能である。オリゴヌクレオチドが直接的に又は間接的に、また共有結合的に又は非共有結合的に結合できる固体表面はいずれも使用できる。好適な固体の支持体は高密度アレイ又はDNAチップである。これらは特定のオリゴヌクレオチドプローブをアレイの予め決めてある位置に含有する。各予定された位置は、プローブの分子1個又はそれ以上を含んでいてもよいが、その予定された位置内の各分子は同一の配列を有する。その予定された位置は有用な特性である。例えば、固体の支持体1個にはそのような特性2個から、10、100、1000〜10000、100000又は400000個までが存在してもよい。固体の支持体又はプローブが結合する領域はいかなる好都合な大きさであってもよく、また好ましくは1平方センチメートル台であってもよい。発現監視用オリゴヌクレオチドプローブのアレイはこの分野で知られているいかなる技術(例えば、Lockhart et al., (1996),Nat. Biotech. 14, 1675-1680, McGall et al., (1996) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 93, 13555-13460を参照)によっても製造し、使用することができる。そのようなプローブのアレイは表1又は表2に示す遺伝子2個又はそれ以上に相補性であるか、それとハイブリッドを形成する、オリゴヌクレオチド少なくとも2個又はそれ以上を含んでいてもよい。例えば、そのようなアレイは本明細書に記載する遺伝子の少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、70個又はそれ以上に相補性であるか、又はそれとハイブリッドを形成するオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。典型的には、本発明に従って検定する遺伝子はmRNA又は逆転写mRNAの形である。遺伝子はクローニングされていてもいなくてもよい。遺伝子は増幅されていてもいなくてもよい。クローニング自体は集団内の遺伝子の偏りを示すとは思われない。しかしながら、相対的に少ないプロセシング段階数で使用できるのでポリアデニル化RNAを起源として使用することは好ましいかもしれない。
【0027】
表1及び表2は差動的に発現されるマーカーの寄託番号及び配列の名称を提供する。GenBankの遺伝子配列を明示的に本明細書に引用する。
【0028】
前記遺伝子の配列に基づくプローブは常法のいずれによって調製してもよい。組織又は細胞試料に応答するオリゴヌクレオチドプローブは好ましくは適当な相補性の遺伝子又は転写物にのみ特異的にハイブリッド形成するに十分な長さのものである。典型的にはオリゴヌクレオチドプローブは長さが少なくとも10、12、14、16、18、20又は25ヌクレオチドとなろう。場合によっては、長さ20プローブ以上、少なくとも、30、40又は50ヌクレオチドのプローブが好ましいであろう。
【0029】
本明細書で使用する表1又は表2に示す遺伝子及び/又は遺伝子ファミリー1個又はそれ以上に相補性のオリゴヌクレオチド配列は、前記遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも一部にストリンジェンシー条件下にハイブリッドを形成できるオリゴヌクレオチドを示す。このようなハイブリッド形成可能なオリゴヌクレオチドは典型的にはその遺伝子に対してヌクレオチドレベルで最低25個で約75%の配列同一性を示し、好ましくは約80〜85%配列同一性又はさらに好ましくは前記遺伝子に対して約90又は95%またはそれ以上の配列同一性を示す。
【0030】
「実質的に結合」はプローブ核酸と標的核酸との間の相補性ハイブリッド形成を示し、所望の標的ポリヌクレオチド配列の検出を達成するためのハイブリッド形成培地のストリンジェンシーを低下させることによって調製されうる僅かなミスマッチを包含するものである。
【0031】
用語「バックグラウンド」又は「バックグラウンドシグナル強度」は非特異的結合又は他の相互作用に起因する標識した標的核酸とオリゴヌクレオチドアレイの成分(たとえばオリゴヌクレオチドプローブ、対照プローブ、アレイ基質など)との間のハイブリッド化シグナルを示す。バックグラウンドシグナルはまたアレイ成分自体の内在的蛍光に起因することもある。単一のバックグラウンドシグナルは全アレイについて計算し、又は異なるバックグラウンドシグナルを各標的核酸について計算してもよい。ある好適な態様では、バックグラウンドはアレイ内プローブの最低5〜10%に対する平均ハイブリッド形成シグナル強度として計算するか、又は異なるバックグラウンドシグナルを各標的遺伝子について各遺伝子に対するプローブの最低5〜10%で計算する。勿論、当業者は特定の遺伝子に対するプローブは良くハイブリッドを形成するので標的配列に特異的に結合すると思われる時には、それはバックグラウンドシグナルの計算には使用すべきではないことを認識するであろう。あるいは、バックグラウンドは試料内にあるどの配列にも相補性のないプローブ(たとえば逆センス核酸に指向するプローブ又は試料が哺乳類核酸である場合にたとえば細菌遺伝子のように試料には存在しない遺伝子に指向するプローブ)へのハイブリッド形成によって起きる平均ハイブリッド形成シグナル強度として計算してもよい。バックグラウンドはプローブを全然含まないアレイの領域が示す平均シグナル強度としても計算できる。
【0032】
用語「に対して特異的にハイブリッドを形成する」はその配列が複雑な混合DNA又はRNA(たとえば全細胞性)内に存在する時に、ストリンジェンシー条件下での特定なヌクレオチド配列単数又は複数に対するその分子の実質的な又は排他的な結合、二重鎖形成、又はハイブリッド形成を示す。
【0033】
本発明の検定及び方法は少なくとも約100個、好ましくは約1000個、より好ましくは25 10,000個、及び最も好ましくは約1,000,000個の異なる核酸のハイブリッド形成を同時に検索する利用可能な形式を利用するものであってもよい。
【0034】
用語「ミスマッチ対照」又は「ミスマッチプローブ」は、配列が特定の標的配列について完全には相補性にならないように、故意に選択したプローブを示す。高密度アレイでの各ミスマッチ(MM)対照については典型的には同じ特定標的配列に対して完全に相補性である対応する完全マッチ(PM)プローブが存在する。このミスマッチは塩基1個又はそれ以上を含んでいてもよい。
【0035】
ミスマッチはミスマッチプローブのどこにあってもよいが、末端ミスマッチは標的配列のハイブリッド形成を防ぐとは思われないので末端ミスマッチは推奨できない。殊に好適な態様では、試験に用いるハイブリッド形成条件下に標的配列との二重鎖を最も不安定化しやすいようにミスマッチはプローブの中央又は中央付近に配置する。
【0036】
用語「完全マッチプローブ」は特定の標的配列に完全に相補性である配列を持つプローブを示す。試験プローブは典型的には標的配列の一部分(サブ配列)に対して完全に相補性である。完全マッチ(PM)プローブは「試験プローブ」又は「標準化対照」プローブ、発現レベル対照プローブ、その他であることができる。完全マッチ対照又は完全マッチプローブはしかしながら本明細書に規定する「ミスマッチ対照」又は「ミスマッチプローブ」とは識別される。
【0037】
本明細書で使用する「プローブ」は相補性配列を持つ標的核酸に1個又はそれ以上の型の化学結合、通常相補性塩基対形成を経て、通常水素結合形成を経て、結合することのできる核酸であると定義される。本明細書で使用するプローブは天然塩基(すなわち、A、G、U、C又はT)又は修飾塩基(7−デアザグアノシン、イノシンなど)を含んでいてもよい。これに加えて、プローブ内の塩基はハイブリッド形成を阻害しない限りホスホジエステル結合以外の結合によって結合していてもよい。そこで、プローブは構成塩基がホスホジエステル結合でなくてペプチド結合によって結合しているペプチド核酸であってもよい。
【0038】
用語「ストリンジェンシー」はプローブがその標的のサブ配列とハイブリッドを形成するが、他の配列には非実質的なハイブリッド形成のみが起きて相違点を確認できるであろう条件を示す。ストリンジェンシーは配列依存性であって条件に応じて異なるものである。長い配列は高温で特異的にハイブリッド形成をする。一般に、ストリンジェンシーは特定の配列について所定のイオン強度及びpHにおいて融点(Tm)よりも約5℃低く選択する。典型的にはストリンジェンシーは短いプローブ(たとえば10〜50ヌクレオチド)について、pH7.0〜8.3、温度が少なくとも約30℃で塩濃度が少なくとも約0.01〜1.0M−ナトリウムイオン濃度(又は他の塩)となろう。ストリンジェンシーはホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成してもよい。
【0039】
「配列同一性百分率」又は「配列同一性」は最適合に並べた配列又はサブ配列2本を比較用のウインドウ又はスパンにわたって比較することによって決定されるが、ここに、比較ウインドウ範囲5にあるポリヌクレオチド配列の部分は、要すればその配列2本で最適合に並べた参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して付加又は欠失(すなわちギャップ)を含んでいてもよい。百分率は両配列に同一残基(たとえば核酸塩基又はアミノ酸残基)が存在する位置の数を決定してマッチする位置の数を得、マッチ位置数10を比較ウインドウ内の全位置数で割算し、その答に100を掛算して配列同一性百分率を得て計算する。配列同一性百分率はSmith & Waterman, (1981) Adv. Appl. Math. 2: 482-485のローカルホモロジーアルゴリズムによって;Needleman & Wunsch, (1970) J. Mol. Biol. 48: 443-445のホモロジーアラインメントアルゴリズムによって; 又はこれらのアルゴリズムのコンピュータによる実行によって(GAP & BESTFIT in the GCG Wisconsin Software Package, Genetics Computer Group);又は手動的なアラインメント及び目視的検討によって計算できる。GAP又はBESTFITプログラムを用いて計算する時には、配列同一性百分率はデフォルトギャップ荷重を用いて計算される。BESTFITプログラムは2種類のアラインメント変数、ギャップ形成ペナルティ及びギャップ伸長ペナルティを持ち、これはプログラムが作製するヌクレオチド及び/又はアミノ酸アラインメントのストリンジェンシーを変更して修正される。同一性百分率の決定に使用するパラメータ値はBESTFIT(Dayhoff, (1979) Atlas of Protein Sequences and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353 25 358参照)第8版について予め樹立されているデフォルト値である。
【0040】
プローブ設計:当業者はこの発明の実施には無数のアレイ設計が適当であることを認識することとなろう。ある好適な態様では、高密度アレイを使用してもよい。高密度アレイは典型的には目的とする配列と特異的にハイブリッドを形成する多数のプローブを含む(所与の遺伝子単数又は複数に対するプローブの製法についてはWO99/32660を参照)。これに加えて好適な態様では、アレイは対照プローブ1個又はそれ以上を含む。本発明の高密度アレイチップは本明細書に規定する「試験プローブ」を含む。試験プローブは約5から約45又は5〜約5 500ヌクレオチドの範囲、より好ましくは約10〜約40ヌクレオチド、最も好ましくは長さ約15〜約40ヌクレオチドにわたる範囲のオリゴヌクレオチドであろう。他の殊に好適な態様では、プローブは長さ20又は25ヌクレオチドである。他の好適な態様では試験プローブは二重鎖又は一重鎖の核酸配列、好ましくはDNA配列である。核酸配列は天然起源から分離又はクローニングしたものであってもよく、又は野生型核酸を鋳型に用いて天然起源から増幅したものであってもよい。これらプローブは、そのプローブが発現を検出するように設計された遺伝子の特定のサブ配列に相補性の配列を有する。そこで、試験プローブは検出すべき標的核酸と特異的にハイブリッドを形成できる。所望の標的核酸に結合する試験プローブに加えて高密度アレイは多数の対照プローブを含むことができる。対照プローブは本明細書に示す3つのカテゴリー:(1)標準化対照;(2)発現レベル対照;及び(3)ミスマッチ対照;に分類される。標準化対照はオリゴヌクレオチドその他の核酸プローブであって、標識参照オリゴヌクレオチド又はその他の核酸配列に相補性であり、これはスクリーニングすべき核酸試料に添加される。ハイブリッド形成後標準化対照から得られるシグナルはハイブリッド形成条件、標識強度、「読み」効率、その他の因子における変化の対照を提供するが、この変化はアレイ間に異なる完全なハイブリッド形成のシグナルを起しうる。好適な態様では、アレイ内の他のプローブ全部から読取られるシグナル(たとえば蛍光強度)を対照プローブからのシグナル(たとえば蛍光強度)で割算して測定を標準化する。殆どいかなるプローブも標準化対照として使用できるであろう。しかしながら、ハイブリッド形成効率は塩基組成及びプローブの長さによって変化することが認識されている。好適な標準化プローブはアレイに存在する他のプローブの平均長さを反映するように選択されるが、しかしながらその長さは一定範囲をカバーするように選択することもできる。標準化対照はアレイ中にある他のプローブの(平均)塩基組成を反映するようにも選択できるが、しかしながら好適な態様では、1個又は少数のプローブのみが使用され、それらはよくハイブリッド形成するように(すなわち二次構造のない)及びいずれの標的特異的プローブにもマッチしないように選択される。発現レベル対照は生物学的試料内にある構成的に発現される遺伝子と特異的にハイブリッド形成するプローブである。構成的に発現される遺伝子の殆どは発現レベル対照のための適当な標的を提供する。典型的な発現レベル対照プローブは、これらに限定するものではないがアクチン遺伝子、トランスフェリン受容体遺伝子、GAPDH遺伝子などを含む、構成的に発現される「ハウスキーピング遺伝子」のサブ配列に相補性の配列を有する。ミスマッチ対照は発現レベル対照又は標準化対照のための標的遺伝子に対するプローブを提供しうる。ミスマッチ対照は、1個又はそれ以上のミスマッチ塩基の存在を除いて、対応する被験プローブ又は対照プローブと同一なオリゴヌクレオチドプローブ又はその他の核酸プローブである。ミスマッチ塩基はそうでなければ特異的にハイブリッドを形成するプローブの標的配列内にある対応する塩基に相補性でないように選択される塩基である。ミスマッチ1個又はそれ以上は適当なハイブリッド形成条件(たとえばストリンジェンシー条件)下に試験プローブ又は対照プローブは標的配列とハイブリッド形成すると期待されるが、しかしミスマッチプローブとはハイブリッドを形成しない(又は顕著に少ないハイブリッドを形成する)ように選択される。好適なミスマッチプローブは中央部ミスマッチを含む。そこで、例えばプローブが20マー(mar)であれば、対応するミスマッチプローブは6〜14までの位置のいずれかにおける(中央ミスマッチ)単一塩基ミスマッチ(たとえばAの代わりにG、C又はTで置換)以外は同一の配列を有することになる。そこでミスマッチプローブはプローブが指向する標的以外の試料内核酸への非特異的結合又は交差ハイブリッド形成に対する対照を提供する。ミスマッチプローブはまたハイブリッド形成が特異的であるかどうかも示す。例えば、標的が存在すれば、完全マッチプローブはミスマッチプローブよりも常に明るい筈である。これに加えて、中央ミスマッチが存在すれば、ミスマッチプローブは突然変異を検出するために使用できる。完全マッチプローブとミスマッチプローブとの間の強度差はハイブリッドを形成した材料の濃度の良好な測定値を提供する。
【0041】
核酸試料:当業者に知られているように、本発明の方法及び検定で使用するDNA及び/又はRNAであってもよい核酸試料は適用可能な方法又はプロセスによって製造しうる。全mRNAを分離する方法は当業者に周知(letdown)である。例えば、核酸の分離法及び精製法はTijssen, (1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Elsevier Pressの第3章に詳記されている。そのような試料はRNA試料を含むが、目的とする細胞又は組織から分離したmRNA試料から合成したcDNAも含む。そのような試料はまたcDNAから増幅したDNAも含み、その増幅したDNAから転写されたRNAも含む。当業者はホモゲネートを使用する前にホモゲネート内に存在するRNアーゼを阻害又は破壊することが望ましいことを認識するであろう。生物学的試料はいかなる生物からのいかなる生物学的組織又は体液又は細胞であってもよく、並びにたとえば細胞系列及び組織培養細胞のようなインビトロで作製した細胞であってもよい。この試料は患者に由来する試料である「臨床サンプル」であることが多くなるであろう。典型的な臨床サンプルは、これに限定するものではないが、喀痰、血液、血球(たとえば白血球、血清マーカー)、組織又は細針生検サンプル、尿、腹水及び胸膜液又はそれらからの細胞を含む。骨の変化は非侵襲的な走査技術を用いても観察できる。生物学的試料はまた組織学的目的のために採取したたとえば凍結切片又はホルマリン固定切片のような組織切片を含んでいてもよい。
【0042】
高密度アレイの形成:最低25数の合成段階でオリゴヌクレオチドの高密度アレイを形成する方法が知られている。オリゴヌクレオチド類似体アレイは、これらに限定するものではないが光指向性化学結合法及び機械的指向性結合(米国特許 5,143,854参照)を含む、様々な方法によって固体の基質上に合成できる。略述すれば、30ガラス表面上でのオリゴヌクレオチドアレイの光指向性コンビナトリアル合成は自動ホスホロアミダイト化学及びチップマスキング技術を用いて進行する。特異的な実施法の一つでは、たとえば光活性な保護基でブロックされた水酸基又はアミン基などの官能基を含むシラン試薬を用いてガラス表面を誘導体化する。光リトグラフマスクによる光分解を選択的に用いて官能基を露出させ、次にこれと入って来る5’−光保護ヌクレオシドホスホロアミダイトとを反応させる。ホスホロアミダイトは光照射した部位(すなわち光活性な保護基の除去で露出した部位)のみと反応する。そこでこのホスホロアミダイトは前段階から選択的に露出された領域にのみ結合する。この段階を所望する配列のアレイが固体表面に合成されるまで反復する。アレイ上の異なる位置における異なるオリゴヌクレオチド類似体のコンビナトリアル合成は合成中の光照射パターン及び結合試薬の添加順序によって決定される。前記に加え、一つの基質上にオリゴヌクレオチドのアレイを作製するために使用できる追加的方法がWO 93/09668に記載されている。高密度核酸アレイは予め製造しておいた又は天然の核酸を所定の位置に配置することによっても製造できる。合成核酸又は天然核酸は光指向標的化及びオリゴヌクレオチド指向標的化によって基質の特定の位置に配置される。別な態様では、領域から領域に移動して核酸を特定のスポットに配置するディスペンサーを使用する。
【0043】
ハイブリッド形成:核酸のハイブリッド形成は単にプローブと標的核酸とをプローブとその相補性標的とが相補性塩基のペア形成によって安定なハイブリッド二重鎖を形成できる条件下に(WO 99/32660参照)接触させることを必要とする。次にハイブリッド二重鎖を形成しない核酸を洗い去り、検出すべきハイブリッドを形成した核酸を残して、典型的には付着している検出可能な標識を検出する。核酸を含む緩衝液の昇温又は塩濃度低下によって核酸が変性することは一般に認識されている。ストリンジェンシーが低い条件(たとえば低温及び/又は高塩)では、アニーリングした配列が完全に相補性でなくてもハイブリッドの二重鎖(たとえばDNA:DNA、RNA:RNA又はRNA:DNA)が形成されよう。ハイブリッド形成の特異性は低ストリンジェンシーでは低下する。逆に高ストリンジェンシー(たとえば、高温及び/又は低塩及び/又は不安定化剤の存在下)ではハイブリッド形成の成功はもっと少数のミスマッチしか許容しない。当業者はいかなるストリンジェンシーでも提供するようなハイブリッド形成条件を選択できることを認識するであろう。好適な態様では、ハイブリッド形成は低ストリンジェンシー、この場合6×SSPE−T中、37℃(0.005% トリトンX−100)で行ってハイブリッド形成を確実にし、次に高ストリンジェンシー5で後続する複数の洗浄(たとえば1×SSPE−T、37℃)を行ってミスマッチハイブリッド二重鎖を除去する。続いて所望するレベルのハイブリッド形成特異性が得られるまでストリンジェンシーを高めつつ(たとえば37℃〜50℃で0.25×SSPETまで下げて)複数の洗浄を行ってもよい。ストリンジェンシーはたとえばホルムアミドのような不安定化剤の添加によっても上昇できる。ハイブリッド形成特異性は試験プローブへのハイブリッド形成と存在できる様々な対照(たとえば発現レベル対照、標準化対照、ミスマッチ対照など)へのハイブリッド形成との比較によって評価してもよい。一般にハイブリッド形成特異性(ストリンジェンシー)とシグナル強度との間には相殺条件がある。そこで好適な態様では、洗浄は一貫した結果をもたらし、バックグラウンド強度の約10%よりも大きいシグナル強度を提供する最高ストリンジェンシーで行う。そこで好適な態様では、ハイブリッド形成アレイを順次にストリンジェンシーを高めた溶液で洗浄し、各洗浄の間に測定する。得られるデータセットの分析でハイブリッド形成パターンがあまり変化せず、また目的とする特定のオリゴヌクレオチドプローブのための適当なシグナルを提供する、洗浄ストリンジェンシーを示すであろう。
【0044】
シグナル検出:ハイブリッドを形成した核酸は典型的には試料核酸に付着した標識の1種又はそれ以上を検出することによって検出される。この標識は当業者に知られた多数の方法のいずれによって導入してもよい(WO 99/32660を参照)。
【0045】
データベース:本発明は例えばコンピュータが読取れる媒体及び/又はユーザーインターフェースに保存された、表1又は表2に示す遺伝子及び遺伝子ファミリーのメンバーの配列情報並びに様々な組織試料内での遺伝子発現情報を含有する関係データベースを含む。データベースはまた例えば配列情報に関する遺伝子に関する記述情報;又は組織試料の臨床的状態、又は試料を採取した患者に関する記述情報;のような所与の配列又は組織試料に関連する情報を含むこともある。データベースは例えば配列データベース及び遺伝子発現データベースなどの異なる部分を含むように設計してもよい。かかるデータベースの構造及び構築法5は広範に入手可能であり、例えばその全体を参考のために本明細書に引用する米国特許 5,953,727参照。本発明のデータベースは外側又は外部のデータベースにリンクしていてもよい。好適な態様ではこの外部データベースはNCBI(the National Center for Biotechnology Information)が維持しているGenBank及び関連データベースである。データベース内にあるか、入力として提供される配列情報、遺伝子発現情報及び他の情報の間で必要な比較を行うためにはいかなる適切なコンピュータプラットホームを使用してもよい。例えば多数のコンピュータ端末がたとえばSilicon Graphicsのような多数のメーカーから入手可能である。クライエント/サーバ環境、データベースサーバー及びネットワークも広範に入手可能であり、本発明のデータベースのために適当なプラットホームである。本発明のデータベースは中でもユーザーが所与の遺伝子が発現する細胞型又は組織を決定することを可能にし、特定の組織又は細胞内にある所与の遺伝子の量又は発現レベルの測定を可能にする、電子的ノーザンを作製するために使用してもよい。本発明のデータベースは、試料内にある表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個の発現レベルとデータベース内の遺伝子発現レベルとを比較することを包含する、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの1個又はそれ以上の配列を包含する、遺伝子セットの試料内発現レベルを確認する情報を示すために使用してもよい。そのような方法は後記のような医薬又は薬剤のスクリーニング検定法で使用してもよい。
【0046】
分化マーカーの診断的使用:前記の通り表1又は表2に示す遺伝子及び遺伝子発現情報を、前駆体幹細胞を含む試料の分化状態の予測又は確認のための診断用マーカーとして使用してもよい。例えば、組織試料は前記方法のいずれで検定してもよく、また表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーからの発現レベルと未分化前駆体幹細胞及び/又は骨芽細胞に分化するように誘導された前駆体幹細胞及び/又は骨芽細胞以外の細胞型に分化するように誘導された前駆体幹細胞及び/又は骨芽細胞内に見られる発現レベルとを比較してもよい。発現データ並びに入手可能な配列又はその他の情報の比較は研究者又は診断者によって行ってもよく、又は前記のようなコンピュータ及びデータベースを用いて行ってもよい。そのような方法を異常な骨沈着、再吸収及び/又は骨芽細胞の異常な分化速度によって特徴付けられる状態15を診断又は確認するために使用してもよい。当業者は広範な種類の状態が異常な骨沈着又は喪失に関連することを認識することとなろう。そのような状態はこれに限定するものではないが、骨粗しょう症、オステオペニア、骨形成異常症、及びその他の様々な骨障害の状態を含む。本発明の方法はこれに限定するものではないが閉経後骨粗しょう症(PMO)、グルココルチコイド誘発骨粗しょう症(GIO)、男性骨粗しょう症、急性骨喪失、腫瘍誘発骨溶解、ページェット病及び骨形成不全症を含む、骨の疾患を診断又は処置を監視するために殊に有用となろう。
【0047】
表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー1個又はそれ以上の発現を変調する薬剤及び/又は表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー1個又はそれ以上がコードする蛋白質1個又はそれ以上の活性を変調する薬剤はこの状態の処置に有用となろう。好適な態様のいくつかでは、本発明は骨の形成又は喪失における薬剤に誘導された異常を診断及び/又は処置を監視するために使用できる。例えば、現在では臓器移植を受けた患者には組織拒絶を抑制するためにサイクロスポリンとプレドニソンの合剤が投与されている。この合剤はプレドニソン単独で観察されるものとは異なる様式の急速な骨喪失を起す(たとえばサイクロスポリンで処置した患者では血清オステオカルシン及び1,25-(OH)2-ビタミンDのレベル上昇が認められるが、プレドニソンで処置した患者では認められない)。他の薬剤も骨の形成又は喪失に影響を与えることが知られている。抗痙攣剤ジフェニルヒダントイン、フェノバルビタール及びカルバマゼピン及びこの薬剤の合剤はカルシウム代謝に変化を起す。抗痙攣剤を服用している患者では骨密度の低下が認められる。ヘパリンは血栓塞栓性疾患の有効な治療剤であるけれども、ヘパリン療法を受けている患者では骨粗しょう症性骨折の頻度増大が報告されているので、本発明はヘパリン療法を受けている患者を監視するために有用となろう。本発明の他の態様は骨代謝の変化を伴う他の状態の診断及び/又は処置の監視を可能にする。例えば、特発性若年性骨粗しょう症(IJO)はくる病又は過剰な骨吸収が存在せず、典型的には思春期前の子供に起きる鉱質化した骨の全身的な減少である。これに加えて甲状腺疾患は骨喪失に関連付けられている。骨量の低下は甲状腺薬中毒の患者で証明されており、これらの個体に骨折のリスク増加を起す。これらの個体は甲状腺毒性を示したことのない個体よりも若年で骨折を起した。本発明が有用であろう他の状態には多発性骨髄腫及び白血病を含む。局所及び渙散性の骨病巣及び骨硬化性骨病変を持つ多発性骨髄腫患者の60%近くには骨折がある。白血病も急性リンパ芽球性白血病患者で散在性オステオペニア及び脊椎骨折と関連するかもしれない。本発明を利用できる他の情況は乳癌に関連する骨疾患の診断及び/又は処置の監視である。乳癌はしばしば骨格に転移し、進行癌患者の約70%が症候性骨格疾患を起す。さらに、現用の抗癌処置では閉経前の婦人を処置すると早期の閉経及び骨喪失を起すことが証明されている。本発明は骨の異常な形成又は喪失に関連する慢性貧血の診断及び/又は処置の監視に有用であろう。同型接合型β−サラセミアは通常骨粗しょう症の素因を与える慢性貧血の例として記載されている。サラセミア患者は隣接する小柱が薄くなり骨髄腔の拡大を有する。本発明は肥満細胞症の診断及び/又は処置の監視に有用となろう。骨格の症候(オステオペニア及び脊椎骨折)は全身性肥満細胞疾患患者の60〜75%に見られる。これ以外に本発明を利用できる状況は:骨軟化症が共通の症候であるファンコニ症候群;繊維性骨形成異常、マックーン−オルブライト症候群があり、骨形成性間葉の一病巣性又は多病巣性拡張性線維状病巣によって特徴付けられる散在性発達障害を持つ繊維性骨形成異常を持つ患者を示すが、これはしばしば疼痛、骨折又は変形を起し、不完全性骨形成(OI、脆弱骨病とも呼ばれる)は再発性骨折及び骨格変形を伴い、様々な骨格形成異常、すなわち軟骨及び/又は骨の異常な発達によって特徴付けられる骨軟骨形成及びその他の疾患、たとえば歯肉炎及び歯根膜炎などの歯肉疾患、ページェット病、悪性腫瘍の高カルシウム血症、たとえば腫瘍誘発高カルシウム血症及び代謝性骨疾患、軟骨形成不全症、ムコ多糖沈着症、骨形成不全症及び虚血性骨疾患のようなものである。本発明は殊に骨粗しょう症を判定するための骨代謝回転のマーカーとして使用できる単数又は複数のマーカーを提供することによって有用となろう。本発明はまたインビトロ検定又は骨芽細胞の分化及び/又は増殖のマーカーとして処置にも使用できよう。
【0048】
本発明の薬剤は多岐に渡る目的に使用できる。好適な態様では、薬剤は全ての型の骨折回復、すなわち、非癒合骨折、脊椎固定術に用いられ、副若木骨折、圧迫骨折から、粉砕骨折又は複雑骨折など骨折全型の治癒を促進する。急速に軟骨及び骨形成を増加し、骨量を増加し、骨強度を増加する局所投与並びに非経口投与をこれら骨折に使用できる。本発明の他の好ましい態様は歯周病において及び/又は歯周骨を増加するための骨形成変調剤の使用である。
【0049】
疾患進行を監視するための分化マーカーの使用:前記の通り、表1又は表2に示す遺伝子及び遺伝子発現情報は、たとえば骨粗しょう症のような疾患の進行を監視するためのマーカーとして使用してもよい。例えば、組織試料は前記方法のいずれかによって検定してもよく、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーについて発現レベルと未分化前駆体幹細胞及び/又は骨芽細胞に分化するように誘導された前駆体幹細胞及び/又は骨芽細胞以外の細胞型に分化するように誘導された前駆体幹細胞及び/又は骨芽細胞内に見られる発現レベルとを比較してもよい。発現データ並びに入手可能な配列その他の情報の比較は研究者又は診断者によって行ってもよく、又は前記のようなコンピュータ及びデータベースを用いて行ってもよい。本発明のマーカーは患者における進行又は処置計画の効果をパック(Pack)又は予測するためにも使用できる。例えば、患者の進行又は所与の薬剤への反応は処置後又は薬剤投与後の組織又は細胞試料から得た遺伝子発現プロファイルを作製することによって監視してもよい。次に遺伝子発現プロファイルと未分化前駆体幹細胞及び/又は骨芽細胞に分化するように誘導された前駆体幹細胞及び/又は骨芽細胞以外の細胞型に分化するように誘導された骨芽細胞及び/又は骨芽細胞及び/又は同じ患者から処置前に得た組織又は細胞から作製した遺伝子発現プロファイルとを比較してもよい。遺伝子発現プロファイルは遺伝子少なくとも1個、好ましくは遺伝子1個以上、最も好ましくは表1又は表2に示す遺伝子全て又は殆ど全ての遺伝子から作製してもよい。
【0050】
薬剤スクリーニングのための分化マーカーの使用:本発明によれば表1又は表2に示す遺伝子は細胞に対する候補薬物又は薬剤の効果を評価するマーカーとして使用してもよい。候補薬物又は薬剤は所与の単数又は複数のマーカーの転写又は発現を刺激する性能、又は単数又は複数のマーカーの転写又は発現を下方調節又は拮抗する性能について検索できる。例えば試料内の遺伝子発現を骨芽細胞内が分化した細胞集団内の遺伝子発現プロファイルに類似するように変調、誘導又は阻害する薬剤に関して分化プロセス、骨沈着、などを変調する性能についてスクリーニングしてもよい。本発明によれば、薬剤が持つマーカーの数に注目し、それを比較することによって薬剤効果の特異性を比較することもできる。さらに特異的な薬剤は転写標的の数が少ない。薬剤2種で確認されたマーカーの類似するセットは効果の類似性を示す。表1又は表2に示すマーカー単数又は複数の発現を監視する検定には本発明核酸の発現レベルにおける変化を監視するために採用できるいかなる方法を利用してもよい。本明細書で使用する薬剤が細胞内核酸の発現を上方調節又は下方調節できるなら、本発明核酸の発現を「変調」すると記載する。検定形式の一つでは、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリー1個又はそれ以上に対するプローブを含有する遺伝子チップを、詳細に上記したように処置又は接触した細胞内での遺伝子発現の変化を直接的に監視又は検出するために使用してもよい。他の検定形式では、表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーのオープン読み枠及び/又は5’−3’調節領域といずれかの検定可能な融合パートナーとの間にレポータ遺伝子融合を含有する細胞系列を製造してもよい。無数の検定可能な融合相手が知られており、蛍ルシフェラーゼ遺伝子及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含めて容易に入手できる(Slam et al., (1990) Anal. Biochem. 15 188: 245-254)。次にレポータ遺伝子融合体を含む細胞系列と被験試薬とを適当な条件下に適当な時間接触させる。試薬に接触した試料と対照試料との間に見られるレポータ遺伝子の差動的な発現で、核酸の発現を変調する薬剤を確認する。別な検定方法を表1又は表2に示す遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの発現を変調する薬剤の性能を監視するために使用してもよい。例えば前記のようにmRNAの発現を本発明の核酸に対するプローブのハイブリッド形成によって直接的に監視してもよい。細胞系列と被験薬剤とを適当な条件下に適当な時間接触させ、全RNA又はmRNAを Sambrook et al., (1989) 25 Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載のような標準的な操作法によって分離する。別な検定法では、生理学的に本発明の遺伝子産物を発現する細胞又は細胞系列をまず確認する。このようにして確認した細胞及び/又は細胞系列は適当な表面形質導入メカニズム及び/又は細胞質ゾルカスケードと試薬との外因性接触に関して転写装置の変調の適合性が維持されるように必要な細胞器官を含むことが期待される。そのような細胞系列は必ずしも必須ではないが骨髄由来である。さらにそのような細胞又は細胞系列は抗原断片1個又はそれ以上に融合した本遺伝子産物をコードする構造遺伝子の末端を含む作動可能な非翻訳5'−プロモータを包含する発現ビヒクル(たとえばプラスミド又はウイルスのベクター)構築物が形質導入又は形質導入されていてもよく、これは本遺伝子産物に特有であり、その断片は前記プロモータの転写制御下にあり、ポリペプチドとして発現され、その分子量は天然起源ポリペプチドと識別でき、又はさらに免疫学的に異なるタグ又はその他の検出可能なマーカー又はタグを包含していてもよい。このようなプロセスは当技術分野でよく知られている(Sambrook et al., (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照)。前記のように形質導入又は形質導入した細胞又は細胞系列は次に適当な条件下に薬剤と接触させる;例えばこの薬剤は医薬的に許容される添加剤を含み、たとえば生理学的pHでのホスフェート緩衝食塩水(PBS)、生理学的pHでのイーグルバランス塩溶液(BSS)、血清を含むPBS又はBSS、又はPBS又はBSS及び/又は血清を含む馴化培地、のような水性生理学的緩衝液に含まれる細胞と接触させ、37℃でインキュベーションする。この条件は当業者が必要と思うように変調してもよい。細胞と薬剤とを接触させた後、細胞を摩砕し、溶解物のポリペプチドを画分し、ポリペプチド画分を集め、抗体と接触させ、これをさらに免疫学的検定(たとえばELISA、免疫沈澱法又はウェスタンブロット法)によって処理する。次に「薬剤接触」試料から分離した蛋白質の集合体を添加剤のみを細胞と接触させた対照試料と比較する;ここでは「薬剤接触」試料からの免疫学的に発生したシグナルの増加又は減少を対照と比較し、これを用いて薬剤の効果を判別する。本発明の別な態様は、表1又は表2に示す遺伝子がコードする蛋白質のレベル又は少なくとも1種の活性を変調する薬剤を確認する方法を提供する。そのような方法又は検定には所望の活性を監視又は検出するいかなる方法を利用してもよい。方法の一つでは、本発明蛋白質の相対量を被験薬剤に接触させた細胞集団と非接触対照細胞集団との間で比較して検定してもよい。この方法では、たとえば特異的抗体のようなプローブを用いて、異なる細胞集団中での蛋白質の差動的な発現を監視する。細胞系列又は細胞集団を被験試薬と適当な条件下に適当な時間接触させる。接触させた細胞系列5又は細胞集団及び接触させなかった対照細胞系列又は細胞集団から細胞溶解物を作成する。次に各細胞溶解物を特異的抗体のようなプローブで分析する。上記方法で検定した試薬は無作為的に選択するか又は合理的に選択又は設計することができる。本明細書に使用する「薬剤」は薬剤を本発明蛋白質単独の会合に関与する特異的配列又はその関連する基質、結合相手、などを考慮せずに無作為に選択した時に「無作為」に選択したと記載する。無作為に選択した薬剤の例は化学ライブラリー又はペプチドのコンビナトリアルライブラリーの使用又は生物の培養ブロスの使用である。本明細書で使用する試薬は、試薬がその試薬の作用に関連する標的部位の配列及び/又はそのコンホーメーションを考慮に入れて非無作為的根拠に従って選択された時に合理的に選択又は設計したと記載する。試薬はこの部位を作るペプチド配列を利用することによって合理的に選択又は合理的に設計することができる。例えば、合理的に選択したペプチド試薬はアミノ酸配列が機能的コンセンサス部位のいずれかと同一であるか又はその誘導体であるペプチドであることができる。本発明の薬剤は例えばペプチド、低分子、ビタミン誘導体並びに炭水化物であることができる。ドミナントネガティブ蛋白質、その蛋白質をコードするDNA、その蛋白質の抗体、その蛋白質のペプチド断片又はその蛋白質の模擬物を機能に影響を与えるために細胞に導入してもよい。
【0051】
本明細書で使用する「模擬物」は本来のペプチドとは化学的に異なるが、本来のペプチドに局所的及び機能的には類似な構造を与えるためのペプチド分子の単数又は複数の領域の修飾を示す(Meyers, (1995) Molecular Biology and Biotechnology, VCH Publishers, 659-664を参照)。熟練した専門家は本発明の試薬の構造的性質に関して制限がないことを容易に認識できる。これ以上の記載がなくとも、当技術分野の通常の熟練者は前記記載及び以下の例示的実施例を用いて本発明の化合物を製造し、使用すること及び本明細書に請求する方法を実施することができると信じられる。以下の実施例はそれ故本発明の好適な態様を特定的に指摘するが、いかなる意味でもその他の開示を限定するものと理解すべきではない。
【0052】
実施例
方法:細胞培養及び刺激:MC3T3−E1細胞系列(Sudo et al., 1983, J Cell Biol; 96: 191-198)はT. Kokkubo(Novartis, Japan)から恵与を受けた。MC3T3−1bクローンは前記MC3T3−E1細胞系列内へのレポータ遺伝子ルシフェラーゼの上流にあるCbfa1DNA応答エレメントOSE2の安定なトランスフェクションによって作製した。MC3T3−1b細胞のクローンは200ng/mL−BMP−2(骨形成蛋白質−2)、50μM−アスコルビン酸及び10mM−β−グリセロホスフェートを含有する骨形成刺激剤によりルシフェラーゼ遺伝子の活性化に基づいて選択した。細胞をT175フラスコ(40mL/フラスコ)内で、10%ウシ胎児血清(FCS, Gibco)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep)及び1%L−グルタミン(L-Glu)添加α−MEM中で増殖させた。刺激は同じ培地中で行った。
【0053】
細胞を、RNAの分離には6cm皿(培地5mL中、3×10細胞/皿)に、アルカリホスファターゼ染色には48−ウェルプレート(1mL培地中、1×10細胞/ウェル)に、及びアリザリンレッドS染色には12−ウェルプレート(3mL培地中、5×10細胞/ウェル)に塗布した。細胞を37℃/5%COで密集成長まで3日間培養し、次に10mM−β−グリセロホスフェート(GP, Sigma)、50μM−アスコルビン酸(AA, Wako)及び200ng/mL−BMP−2(Nico Cerletti, Novartis)で刺激した。対照細胞は10mM−β−グリセロホスフェートで刺激した。アリザリンレッドS染色には培地を刺激剤と共に毎週2回交換した。
【0054】
RNAの分離:RNAは非刺激密集成長細胞(第0日)から、またGP/AA/BMP−2又はGP単独で1日間及び3日間処置した細胞から、抽出した。細胞をグアニジウム・イソチオシアネート含有Lysis Buffer中で収集した。全RNAを抽出し、DNアーゼIで処理し、製造元のプロトコル(RNeasy mini kit, QIAGEN; Basel, Switzerland)に従って精製した。
【0055】
アルカリホスファターゼ染色:刺激から3日後、細胞をPBSで2回洗浄し、ホルマリン/メタノール/HO(1:1:1.5)0.5mL/ウェルで固定し、15分間室温でインキュベーションし、水で3回洗浄した。染色には、SigmaのFAST BCIP/NBT tablet(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム、アルカリホスファターゼ基質)1錠を水10mLに溶解した。固定した培養物に基質溶液0.5mLを加え、室温で15分間インキュベーションした。染色後、培養物を水で3回洗浄し、風乾した。
【0056】
鉱質化に対するアリザリンレッドS染色:刺激の14日後、細胞をPBSで2回洗浄し、ホルマリン/メタノール/HO(1:1:1.5)0.5 mL/ウェル中、室温で15分間固定し、水で3回洗浄した。飽和アリザリンレッドS溶液を濾過し、ウェル当り1.5mLを加え、室温で15分間インキュベーションした。細胞を4〜5回水洗し、風乾した。
【0057】
定量的放射性RT−PCR(qrRT−PCR):マイクロアレイ分析の前にqrRT−PCRを用いてマーカー遺伝子の発現プロファイルを分析し、いくつかの選択した遺伝子についてマイクロアレイのデータを確認した。第一ストランドの相補性DNAは標準プロトコルに従って合成した。略述すれば、RNアーゼ阻害剤(ROCHE Molecular Diagnostics)10単位とランダムヘキサヌクレオチド(Amersham Pharmacia Biotech)100μgとをDNアーゼI−処理全細胞RNA1μgに加えた。試料を65℃で5分間変性させ、氷上で冷却した。次に試料を別のRNアーゼ阻害剤10単位、2.5mM−各dNTP、50mM−Tris−HCl、pH8.3、60mM−KCl、10mM−MgCl及び1mM−DTT含有ヌクレアーゼ不含溶液で20μLまで満たした。各試料にAvian Myeloblastosis Virus reverse transcriptase(Stratagene)20単位を加え(cDNA)又は加えなかった(RT−)。逆転写反応を42℃で2時間行い、95℃で5分間インキュベーションして停止させた。試料をヌクレアーゼ不含水で5倍に希釈し、使用まで−80℃で保存した。cDNA又はRT−試料1μLをPCR鋳型に用いた。PCR反応は各dNTP100μM、α[32P]−dATP1μCi、各プライマー1μM、及び“Hot start” thermostable DNA polymerase1.25単位及び対応する反応緩衝液(FastStart Taq, ROCHE Molecular Diagnostics)を加え、最終容積25μLで行った。PTHR、Dlx2、RAMP1、JunB、Fra−1、及びWnt6のPCR分析のためには、反応混合物にはさらに5%グリセリンを添加した。増幅プロトコルは次の通り:初期段階94℃5分、変性94℃1分を12〜33サイクル、アニーリング57/60℃(PTHR、Dlx2、RAMP1、JunB、Fra−1は60℃;それ以外の全遺伝子は57℃)1分、及び伸長72℃1分20秒。増幅は最終インキュベーション段階を72℃10分として終結させた。PCR産生物適量を負荷緩衝液(最終濃度:5%グリセリン、10mM−EDTA、0.01%SDS、0.025%キシレンシアノール及びブロモフェノールブルー色素)と混合し、8%ポリアクリルアミドゲル上で分析した。ゲルを真空乾燥し、phosphor-storage screens(Molecular Dynamics)に露出し、Phosphorimager(Molecular Dynamics)で撮像した。映像のシグナルをImageQuant Software(Molecular Dynamics)で定量した。分析した各遺伝子でサイクル曲線実験を行い、定量的分析のために増幅における直線範囲内のPCRサイクル最適数を選択した。PCRで使用したプライマー(5'−から3'−方向の正方向及び逆方向で記載)及びサイクル数を次に表示する。
【0058】
遺伝子 プライマー:
アルカリホスファターゼ(ALP)
CCCAAAGGCTTCTTCTTGC及びGCCTGGTAGTTGTTGTGAG、30サイクル
Msx2:
CGCCTCGGTCAAGTCGGAA及びGCCCGCTCTGCTAGTGACA、31サイクル
副甲状腺ホルモン受容体(PTHR):
ACCCCGAGTCTAAAGAGAAC及びGCCTTTGTGGTTGAAGTCAT、8サイクル
オステオカルシン(OCN):
GGGCAATAAGGTAGTGAACAG及びGCAGCACAGGTCCTAAATAGT、28サイクル
Cbfa1(α/m及びε):
ATGCTTCATTCGCCTCAC及びCTCACGTCGCTCATCTTG、29サイクル
オステオポンチン(OPN):
CACAAGCAGACACTTTCACTC及びGAATGCTCAAGTCTGTGTGTT、23サイクル
オステオネクチン(ONC):
CCCTGCCAGAACCATCATTG及びTTGCATGGTCCGATGTAGTC、23サイクル
コラーゲン1αI(Col1a):
CCCTGCCTGCTTCGTGTAAA及びCCAAAGTCCATGTGAAATTATC、22サイクル
18Sリボソーム・サブユニットRNA(18S・rRNA):
CCTGGATACCGCAGCTAGGA及びGCGGCGCAATACGAATGCCCC、12サイクル
グリセルアルデヒド3−燐酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH):
CTGCACCACCAACTGCTTAG及びAGATCCACGACGGACACATT、19サイクル
SMAD1:
TGCTGGTGGATGGTTTCACA及びTGTCGCCTGGTGTTTTCAATA、29サイクル
SMAD6:
GCAACCCCTACCACTTCAG及びGCCTCGGTTTCAGTGTAAGA、28サイクル
JunB:
CAGCCTTTCTATCACGACGA及びGGTGGGTTTCAGGAGTTTGT、31サイクル
Id2:
CCGATGAGTCTGCTCTACAA及びCCGTGTTCAGGGTGGTCAG、27サイクル
Dlx2:
AAACCACGCACCATCTACTC及びTCGCCGCTTTTCCACATCTT、31サイクル
Fra−1:
ACCGCCCAGCAGCAGAAGT及びAGGTCGGGGATAGCCAGTG、30サイクル
Wnt6:
CCGACGCTGGAACTGCTC及びATGGAACAGGCTTGAGTGAC、33サイクル
TCF7:
ACTCTGCCTTCAATCTGCTC及びGGGTGTGGACTGCTGAAATG、27サイクル
低密度リポ蛋白質受容体関連蛋白質5(LRP5):
GCCAGTGTGTCCTCATCAAG及びACGCTGGCAGACAAAGTAGA、25サイクル
トランスホーミング成長因子β1(TGFβ1):
CCAAAGACATCTCACACAGTA及びTGCCGTACAACTCCAGTGAC、27サイクル
トランスホーミング成長因子β3(TGFβ3):
CACCGCTGAATGGCTGTCT及びCATTGGGCTGAAAGGTGTGA、26サイクル
TIEG:
TTCAGCAGCAAGGGTCACTC及びGACAGGCAAACTTCTTCTCAC、28サイクル
Hey1:
GCCGACGAGACCGAATCAAT及びGCTGGGATGCGTAGTTGTTG、30サイクル
FK506結合蛋白質5(FKBP5):
GCTGCCATCGTGAAAGAGAA及びTCCACGGCTTTGTTGTACTC、29サイクル
受容体活性修正蛋白質1(RAMP1):
TCTGGCTGCTGCTGGCTCA及びTTTCCCCAGTCACACCATAG、31サイクル
Hlx:
CGGGACAGTTCTTCGCATCT及びTTCGGTCTGGCTTGGTCAC、28サイクル
【0059】
高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いる遺伝子発現測定:各試料の全RNA型(処理:非刺激第0日;GP/AA/BMP-2第1日及び第3日;GP第1日及び第3日)を抽出し、5オリゴヌクレオチドマイクロアレイで分析した。マイクロアレイ・ハイブリッド形成はAffymetrixプロトコル(REF)を用いて行い: Affymetrix GeneChip(登録商標) Murine Genome U74Av2アレイを用いたが、これはインサイツで合成した一連のオリゴヌクレオチドプローブを持つコーティングしたスライドグラスからなる。アレイは遺伝子約9400個(機能的に特徴付けられた遺伝子〜5,700個及びESTクラスター〜3700個)のためのプローブを含む。ビオチン標識cRNAプローブは前記のように調製したDNアーゼI処理全細胞RNA5μgから出発して分析すべき各試料から作製した。各cRNAプローブをアレイ上でハイブリッド形成させ、シグナルを製造元の指示に従い検出した(Affymetrix, Santa Clara, CA, USA)。
【0060】
マイクロアレイ上での遺伝子発現の分析:ハイブリッド形成のデータは Affymetrix(MAS 4.0)、Novartis Pharmacogenetics Network(NPGN)ソフトウェア及び Expressionist 3.0(GeneDatabase l, Switzerland)提供のソフトウェアによって分析した。遺伝子が試料少なくとも1個で、P(存在)に分類され、M(限界的)又はA(不在)に分類されなければ、発現されたと考えた。存在すると分類するための限界はハイブリッド形成シグナル20とした;これより低い数字は全て20に固定した。詳記した遺伝子は全て遺伝子特異的プローブで検出したもので、遺伝子ファミリーを認識するプローブセットで検出したものではない。遺伝子はその発現が対応する時間マッチ対照(time-matched control)から2倍以上変動すればGP/AA/BMP-2処理で調節されるものとして選択した。
【実施例1】
【0061】
実施例1 MC3T3−1b細胞系列の骨芽細胞の分化:細胞及び分子の特徴付け
骨芽細胞表現型が培養中の細胞系列では不安定であることは公知の現象であって、様々な性質が明らかに同一な細胞系列にもたされる。マウスプレ骨芽細胞性MC3T3−E1細胞系列は、骨芽細胞分化の非常によいモデルであって、インビボで起きる一連の数々のイベントがインビトロで再現される(Quarles et al., 1992, J. Bone Miner Res; 7: 683-692)。インビトロで迅速かつ効率的な様式で分化する細胞系列を得るために、MC3T3−E1親細胞にCbfa1依存性レポータ遺伝子をトランスフェクションし、骨形成刺激剤(10mM−GP、50μM−AA及び200ng/mL−BMP−2)に良く応答するMC3T3−E1細胞のクローンを選択した。このクローンをMC3T3−1bと命名し、細胞表現型と分化の分子マーカーとの関連を特徴付けた。骨形成刺激剤に応答して、MC3T3−1b細胞系列は組織化学的染色で記録されるように第3日にはアルカリホスファターゼ活性に強い増加を示した。さらに、この細胞系列は培養液中に骨ノジュールを産生し、それが第14日には鉱質化されたことがアリザリンレッドS染色で証明された。数日後、ノジュールの数は大幅に増加し、ウェル面積の50%以上を覆った。この結果は、この細胞系列では全分化プロセスが2週間以内という非常に迅速で効率的に再現されることを示した。以前に本発明者及び他の研究者は、他のMC3T3−E1クローンでは鉱質化骨ノジュールを得るには3〜5週間維持する必要があり、また全プロセスが非効率的なことが多いことを注目した(前記Quarles et al., 1992)。そこで、MC3T3−1b細胞には骨芽細胞分化プロセスの研究のために求められる細胞の性質を示す。
【0062】
次に骨芽細胞分化の分子マーカー多数が示すメッセンジャーリボ核酸(mRNA)の発現を放射能による定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rqRT−PCR)で分析した。MC3T3−1b細胞を骨形成刺激剤で1日間及び3日間刺激し、非刺激の時間マッチ対照と比較した。骨芽細胞分化のマーカー8個を分析した:アルカリホスファターゼ(ALP)、転写因子Msx2及びCbfa1、副甲状腺ホルモン受容体(PTHR)及び細胞外マトリックス蛋白質であるオステオカルシン(OCN)、オステオポンチン(OPN)、オステオネクチン(ONC)及びコラーゲン−Iα1(Col−Iα1)。最適なプライマーを設計し、各マーカー遺伝子についてサイクル曲線rqRT−PCR実験で定量的条件を最適化した(前記方法参照)。骨形成刺激剤に応答して、MC3T3−1b細胞では骨芽細胞マーカー5個のmRNAレベルが上方調節された。ALPは既に第1日には強く誘導され、第3日にはもっと高く増加した。Msx2は第1日に一過性に上方調節され、Cbfa1は第3日に誘導された。骨芽細胞分化の後期マーカーであるPTHR及びOCNは第3日に強く誘導された。骨芽細胞マーカー3個、OPN、ONC及びCol−Iα1について、高レベルの発現が非刺激条件でも検出され、処理後にも変化しなかった。MC3T3−1b細胞は既に骨芽細胞表現型がコミットされているので、高レベルの細胞外マトリックス蛋白質が期待されるであろう。標準化対照として、ハウスキーピング遺伝子2個:18SリボソームRNA(18S−rRNA)及びグルセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)のmRNAレベルを分析した。その発現は全ての条件下に同様であった。
【実施例2】
【0063】
実施例2 DNAマイクロアレイ分析による遺伝子発現のプロファイル作製:
rqRT−PCR及びマイクロアレイによる骨芽細胞マーカー発現の比較:インビトロ骨芽細胞分化の適当なシステムを選択後、骨芽細胞が分化する間の遺伝子発現について全ゲノムに及ぶ分析を行った。MC3T3−1b細胞系列を骨形成刺激剤で刺激し、全RNAを第0日、第1日及び第3日に抽出し、Affymetrix GeneChip Microarray U74で分析した。このオリゴヌクレオチドアレイは既知の機能を有する遺伝子及びESTを含む約10000個の遺伝子を示す。マイクロアレイデータ分析の検証段階として、骨芽細胞マーカー遺伝子で得られるハイブリッド形成値をrqRT−PCRで得られるデータと比較した。このGeneChipはrqRT−PCRによって分析される骨芽細胞マーカー8個中7個とハウスキーピング遺伝子2個中1個とのためのオリゴヌクレオチドプローブを有していた。このマーカー7個及びハウスキーピング遺伝子1個では、同じ傾向及び同様な倍率の調節が別個の方法2種を用いて観察された。上方調節の倍率は一般にバックグラウンドから非常に高いレベルに上方調節される遺伝子では異なっていた(PTHR、OCN)。これはバックグラウンド測定の不正確さによることと期待される。マイクロアレイ分析ではより小さな倍率変化が得られる傾向があった。発現レベルが非常に低い遺伝子についてさえ信頼性のある強いハイブリッド形成マイクロアレイシグナルが得られ、この実験のマイクロアレイ検出の高感度が示された。得られたマイクロアレイデータは転写因子のように非常に低く発現される遺伝子についてさえ遺伝子発現プロファイルに関する信頼できる情報を提供できると結論された。
【0064】
既知遺伝子382個及びEST283個の調節された発現:骨芽細胞分化プロセスに含まれる転写イベントを観察するために、遺伝子発現レベルが骨形成性刺激剤を用いる処理で変化する遺伝子を研究した。処理した試料での遺伝子発現のレベルを時間マッチ非刺激対照と比較した。2倍の上方調節又は下方調節を選択閾値とした。刺激後一時点又は両時点(第1日又は第3日又は双方)で発現が少なくとも2倍変化する、既知機能の遺伝子382個及びEST283個が検出された。以後の分析では既知の機能を持つ遺伝子に注目した。
【0065】
調節される遺伝子382個の機能分析で、調節される遺伝子の群10個が得られた:1)マトリックス蛋白質及び接着(37);2)増殖因子(26);3)受容体(31);4)細胞骨格(12);5)シグナル伝達(25);6)キナーゼ(16);7)転写因子(51);8)細胞周期及びアポトーシス(20);9)DNA複製(22);及び10)その他(142)、(表1)。表1ではこれらの群の各々で、第1日及び第3日の両方を含めて、遺伝子を調節の程度が高いものから低いものに並べ替えた。この遺伝子の殆どはこれ以上分析しなかったし、詳細に検討しようと思わないが、このモデル系における骨芽細胞分化の間に起きる転写イベントの完全な実態が提供された。
【0066】
調節される遺伝子多数(37)がマトリックス蛋白質及び接着に関する群に属していた(表1)。これは骨芽細胞が骨マトリックスの大量な産生を起す接着細胞であることと一致する。接着分子多数の下方調節及びその他の上方調節は、骨芽細胞が分化の間に接着性能が変化することを示唆した。最も顕著に上方調節される遺伝子は、骨シアロ蛋白質、オステオカルシン、オステオモジュリン及びケラトエピセリンであった(3.5〜13倍)。下方調節される遺伝子の中には、カドヘリン11(骨芽細胞特異的カドヘリン)、オステオグリシン、ラミニン、トロンボスポンジン、血管細胞接着分子−1(VCAM−1)及びマトリックスメタロプロテイナーゼ−13(MMP−13)があった。このパターンは予期される変化に合致するが、特に下方調節される遺伝子の中に新しい側面も示す。
【0067】
増殖因子群は骨芽細胞で調節されると予期される遺伝子を含んでいたが、いくつかの新規な遺伝子も含んでいた(表1)。予期される遺伝子のいくつかは骨芽細胞増殖の既知変調成分:PDGFα、VEGF、FGF、IGF結合蛋白質、PTH−RPである(Canalis and Rydziel, 1996, Chapter 44, 619-626, Academic Press Inc; Hurley and Florkiewicz, 1996, Chapter 45, 627-645, Academic Press Inc.; Conover, 1996, Chapter 43, 607-618, Principles of Bone Biology; Swarthout et al., 2002, Gene, 282: 1-17)。新規な調節される遺伝子のいくつかは細胞外因子TGF−β及びWntファミリー(TGF−β1〜3及びBMP−4、及びWnt1、6及び10a)の遺伝子及びその細胞外調節因子(BMP阻害剤グレムリン)の遺伝子である。それらと骨の生理学との関係は知られている(TGF-β, Kim and Ballock, 1993, J Cell Biochem. 77: 169-78)か、又は最近になって示唆された(Wnt, Gong et al., 2001, Cell, 107: 513-523)が、骨芽細胞による発現及び分化の間の調節はまだ報告されていない。Wnt10aは最も顕著に刺激される遺伝子であり、6.8倍も上方調節される一方で、グレムリンは最も顕著に阻害される遺伝子であり、対照と比較して0.12倍になる。興味深いことにここに提示し、以下に検討するように、対応するTGF−β及びWntのシグナル伝達経路にあるメンバー多数も調節された。さらに、全て骨再吸収性破骨細胞の分化又は機能を刺激できる:M−CSF、小誘導サイトカインA7及びPTH−RPは下方調節されて、骨芽細胞を分化して破骨細胞を刺激する性能が低いことを示唆する。
【0068】
受容体群の中で、上方調節される遺伝子は骨芽細胞の分化又は機能に関連する因子多数の受容体をコードするもの:PTH受容体=PTHR、LIF受容体=LIFR;レプチン受容体=LEPR;プロスタグランジンF受容体=PTGFR;FGF受容体=FGFR2;核オーファン受容体=RORα;ウロキナーゼ受容体=PLAUR;ニューロピリン1/VEGF165受容体(Swarthout et al., 2002, Gene, 282: 1-17; Malaval and Aubin, 2001, J Cell Biochem, 81(S36): 63-70; Gordeladze et al., 2001, Curr Pharm Des, 7: 275-290; Pilbeam et al., 1996, Chapter 51, 715-728, Academic Press Inc.; Wilkie, 1997 Hum Mol Genet, 6: 1647-56; Meyer et al., 1999, PNAS USA, 97: 9197-202; Allan et al., 1995 Clin Orthop, 313: 54-63; Deckers et al., 2000, Endocrinology, 141: 1667-74)を含んでいた(表1)。上方調節される受容体のいくつか、たとえばエフリン受容体(EPHA2、EPHB2)及びソマトスタチン受容体(SSTR4、SSTR2)のようなものは骨芽細胞の中で果たす役割が以前には報告されたことがなく、このシステムでは双方とも3〜5倍上方調節された。最高度に上方調節される受容体遺伝子(>30倍)はPTH受容体(PTHR)及びカルシトニン受容体様受容体の補受容体RAMP1のものであった。PTHRの上方調節は許容される骨芽細胞マーカーとして予期された一方で、補受容体RAMP1の上方調節は驚異的であった。興味深いことに、骨巨細胞発生における主たるサイトカインRANKLのおとり受容体であるオステオプロテゲリン(OPG)は上方調節され、骨芽細胞の分化が破骨細胞形成を刺激する性能が低いことを示唆した。下方調節される遺伝子は次を含む:インターロイキン−4受容体IL4Rの分泌型;血管内皮増殖因子受容体VEGFR2;オンコスタチン受容体OSMR;血小板由来増殖因子受容体PDGFRα;低密度リポ蛋白質受容体関連蛋白質5LRP5;及びプロスタグランジンE受容体1PTGER1(Ura et al., 2000, Endocr J, 47: 293-302; Hurley and Florkiewicz R, 1996, Chapter 45, 627-645, Principles of Bone Biology, Academic Press Inc.; Jay et al., 1996, Endocrinology, 137: 1151-8; Canalis and Rydziel, 1996, Chapter 44, 619-626, Principles of Bone Biology, Academic Press Inc.; Pilbeam et al., 1996, Chapter 51, 715-728, Principles of Bone Biology, Academic Press Inc.)。最高度に阻害される遺伝子(対照の0.11〜0.13)はケモカインオーファン受容体1(RDC1)及びプロスタグランジンE2受容体1(EP1)のものである。両受容体のmRNAのレベル低下は、それらがプレ骨芽細胞における機能を行うこと及び骨芽細胞の分化が進行するためにはそのシグナル低下が必要であることを示唆する。このことは骨芽細胞が増殖相を完了し、分化を始めた後になるともう必要がないPDGFRαについては容易に理解できる。現在ではまだ調節される遺伝子と骨生理学との間の関係は明らかになっていないので、細胞骨格群、シグナル伝達分子群及びキナーゼ群については詳記しない。しかしながら、この遺伝子のいくつかはまた将来、詳細な研究に値することになろう。ここでは一つのファミリー内にある特定的遺伝子調節の興味深い事例にのみ注目することにする:すなわち対照と比べて細胞質ゾルのプロテアーゼであるカルパイン6は4.1倍上方調節されたが、カルパイン5は0.5倍発現した。
【0069】
転写因子群は最大であり、興味深い調節される遺伝子を多数含む。転写因子は一般に発現が弱い;しかしながら、全て信頼性のあるシグナル強度(表1)を持つ調節される転写因子約50個が検出された。さらにrqRT−PCRによって転写因子遺伝子10個の調節を分析し、マイクロアレイ分析(下記参照)で観察される調節とは独立に確認された。調節される転写因子の多数は、その組織化された調節が骨芽細胞分化のキーであることを示唆する。その多くはまだ骨芽細胞又は骨にリンクされていないが、議論を単純化するために上方調節される遺伝子及び機能関連サブグループを形成するものに注目することとする。これらは次の構造的サブグループ:ホメオボックス(Msx2、HOXC9、Dlx2、Hlx)、Znフィンガー(Zac1、BRCA1、Egr2/Krox20、PML)及びヘリックス−ループ−ヘリックス(Hey1、Id1−3、CLOCK)に属する。機能的には、それらはTGFβファミリー、Wnt細胞外因子及びノッチ受容体、のシグナル伝達経路上にある。これら3個のシグナル伝達経路に属する遺伝子を以下に記載する。
【0070】
細胞周期及びDNA複製に関わる遺伝子多数の調節は細胞が刺激までに密集成長していても骨形成刺激剤を用いる刺激後3日までなお規模の小さな増殖を継続するという観察と一致する。最後に「その他」の群の遺伝子には骨生理学との関係がまだ解明されておらず、また前記の大きい遺伝子群のいずれにも属さない遺伝子を包含する。表1にはこの群の最も興味深いメンバーを示す。
【0071】
後記する本発明の研究では機能的に最も興味深い群に属する遺伝子を集中的に分析した。
【実施例3】
【0072】
実施例3 骨芽細胞の分化及び破骨細胞形成の調節に樹立された機能を有する蛋白質をコードする遺伝子
最初に骨芽細胞の二つの大きなプロセスである、骨芽細胞の分化及び破骨細胞形成における樹立された機能を持つ遺伝子の発現を評価した(表2)。確認された遺伝子を次のカテゴリーに分類した:1)BMPシグナル伝達経路;2)BMP標的遺伝子;3)骨芽細胞分化(骨芽細胞マーカーを含む);及び4)骨巨細胞発生の刺激。これら遺伝子の多くについて機能が骨細胞に関連付けられているけれども、骨芽細胞分化の間に見られるこの型の調節は以前には報告されていなかったことに注目すべきである。
【0073】
BMP−2シグナル伝達経路の主成分であるSMAD分子は2〜3倍上方調節されることが示された。阻害性SMADであるSMAD6及び7のmRNA発現は、第1日には一過性に上方調節された(表2)。これは多分BMPシグナル伝達の下方調節に対するフィードバック機構を示し、最近の研究と合致する(Locklin at al, 2001, J Bone Miner Res, 16: 2192-204)。BMP特異的SMADであるSMAD1は第3日に上方調節され、陽性BMPシグナル伝達成分も同様に刺激されることを示す。分泌されるBMP−2拮抗剤であるグレムリンは第1日及び第3日の両方に骨形成刺激剤によって強く下方調節され、BMPシグナル発生を刺激するさらなる調節機構を示唆する。骨芽細胞におけるBMP−2標的遺伝子であることが既に証明されている遺伝子のいくつかも(Locklin at al, 2001, J Bone Miner Res, 16: 2192-204)本発明では調節された。骨芽細胞分化に関連するJunB、AP−1複合成分(Jochum et al., 2001, Oncogene, 20: 2401-12)は第1日及び第3日の両方に強く上方調節された。HLH 転写阻害剤のId群(Lopez-Rovira et al., 2002, J Biol Chem, 277: 3176-85)、Id1、2及び3は強く上方調節されたが、Id4は下方調節された。胚発達の間の頭蓋顔面パターン形成及び形態形成に重要であることが知られているホメオボックス転写因子Dlx2(Xu et al., 2001, DNA Cell Biol, 20: 359-65)は第1日に一過性に上方調節された。
【0074】
骨芽細胞で機能のある他の遺伝子も調節された。骨の生物学と明確に関連する転写因子Fra−1(FosL−1)はインビボでの骨形成及びインビトロでの破骨細胞の分化の両方に重要であることが示された(Matsuo et al., 2000, Nat Genet, 24: 184-7, Jochum et al., 2001, Oncogene, 20: 2401-12)。このインビトロでの骨芽細胞の作用機構はまだ研究されていない。Fra−1では一過性の強い上方調節(3.4倍)が検出された。転写因子Msx1が軟骨細胞、筋肉細胞及び最近には象牙質芽細胞(Blin-Wakkach, 2001, PNAS USA, 98: 7336-41及び引用文献)の最終的分化で下方調節されることが示された。Msx1では強い下方調節(対照と比較して0.25倍)が検出された。レプチンは骨生理学に関連付けられており、有力な仮説によれば作用部位として脳を示唆している(Ducy, 2000, Science, 289: 1501-4)。しかしながら内部研究ではヒト間葉細胞が骨形成性分化中のレプチン受容体に上方調節を示した。このMC3T3−1b細胞系でレプチン受容体の上方調節(5倍)も確認した。ヒト間葉細胞が骨形成性に分化する間のレチノイン酸受容体関連蛋白質α(RORα)の上方調節も内部研究で証明されており、2.6倍の上方調節が検出された。最近のデータは突然変異低密度リポ蛋白質受容体関連蛋白質5(LRP5)がヒトでは高骨量遺伝子であるが、一方他の突然変異は、骨粗しょう症偽性神経膠腫症候群を起すことが示唆された(Gong et al., 2001, Cell, 107: 513-523; Little et al., 2002, Am J Hum Genet, 70: 11-9; Boyden et al., 2002, N Engl J Med, 346: 1513-21)。本発明のシステムではLRP5は骨形成刺激剤での処理により第1日及び第3日の両方に下方調節される。BMP−2に近縁の遺伝子であり、強い骨形成性剤(Yamaguchi et al., 2000, Endocr Rev, 21: 393-411)であるBMP−4も下方調節される。
【0075】
骨芽細胞系列の細胞は主としてサイトカインM−CSF及びRANKLの上方調節による破骨細胞形成の刺激剤である(総説:Takahashi et al., 1999, Biochem Biophys Res Commun, 256: 449-55)。骨形成刺激剤を用いる処理でRANKLの阻害剤OPGに3.8倍の上方調節が検出された。全て破骨細胞の形成及び/又は機能を刺激できる、M−CSF、PTH−RP及び小誘導サイトカインA7は下方調節された。これと合致して、M−CSFの負の調節剤である転写因子Egr1(Cenci et al., 2000, J Clin Invest, 105: 1279-87)は3.6倍に上方調節された。RANKLは骨形成刺激剤を用いる刺激の前にも後にもMC3T3−1b細胞によって発現されなかった。MC3T3−1b細胞が破骨細胞形成に関連する分子を発現し、調節しているとの結論が得られた。これらの分子が示す調節の方向は骨巨細胞発生を支持する性能は骨芽細胞が分化する間には低下することを示唆する。
【実施例4】
【0076】
実施例4 TGFβ シグナル伝達経路の活性化
トランスホーミング増殖因子βファミリー(TGFβ)のメンバー3個は調節された(TGFβ1、4倍上方調節、第1日及び第3日;TGFβ2、2倍下方調節、第3日;及びTGFβ3、2倍上方調節、第1日)(表3)。TGFβファミリーメンバーは骨芽細胞分化プロセスの強力な変調剤である(Kim and Ballock, 1993, Cellular and Molecular Biology of bone, Academic Press, 98-122に総説)が、そのBMP−2を含む骨形成刺激剤による調節はまだ報告されていない。興味深いことに2つのファミリーメンバーは上方調節され、1つは下方調節される。MC3T3−1b細胞はTGFβに反応するのでマイクロアレイ上にあるTGFβシグナル伝達経路からの成分の発現を研究した。I型TGFβ受容体は発現されたが調節はされず、一方II型受容体のシグナルは不在で発現レベルが低いことを示唆する。SMAD2プローブはチップ上に存在しなかったが、SMAD3は検出されなかった。ウェスタンブロットデータからSMAD2が存在し、TGFβ1に反応して燐酸化されることが判る。前記のように阻害性SMAD6及び7は一過性に上方調節された。骨形成刺激剤を用いる刺激によるTGFβ経路の活性化は数種のTGFβ標的遺伝子の調節によって確認された:転写抑制剤、TIEG(Hefferan et al., 2000, J Cell Biochem, 78: 380-90);細胞外マトリックス蛋白質、テナッシンC(Mackie et al., 1998, Bone 22: 301-7);接着分子、ケラトエピセリン(Kim et al, 2000, J Cell Biochem, 77: 169-78);及びソマトスタチン受容体2型(SSTR2)(Puente et al., 2001, J Biol Chem, 276: 13461-8)。GP、AA及びBMP−2の混合物を用いるプレ骨芽細胞の刺激はTGFβシグナル伝達カスケードを誘導することができるTGFβ1及び3の産生を誘導すると結論した。骨形成刺激剤のどの成分がTGFβ1及び3の誘導を導くのかを決定するのは興味深いと思われる。これらの結果は骨芽細胞の分化における様々な増殖因子の間の相互作用に新しい光を当てて解明する。
【実施例5】
【0077】
実施例5 Wntシグナル伝達経路の活性化
分泌蛋白質、Wntファミリーのメンバー3個は上方調節された:Wnt1、2倍;Wnt6、4倍;及びWnt10a、5倍(表4)。Wnt蛋白質は四肢筋肉パターン形成及び関節形成に含まれる多重の発達プロセスを制御することが知られている(総説:Wodarz and Nusse, 1998, Annu Rev Cell Dev Biol, 14: 59-88)。ごく最近、これらが骨生物学の焦点になってきたのは、低密度リポ蛋白質関連蛋白質5(LRP5)、Wntの補受容体(co-receptor)が顕著なヒト骨格表現型2個、骨粗しょう症偽性神経膠腫症候群及び高骨量の原因になることが証明されたからである(Gong et al., 2001, Cell, 107: 513-23 ; Little et al., 2002, Am J Hum Genet, 70: 11-9)。その理由から、全Wntファミリー及びその経路成分の発現を研究した。前記の調節されるWntファミリーのメンバーを除いて、Wnt5b及びWnt10bも発現されたが、2倍以上に調節されることはなかった。Wnt16メンバーファミリーからの他の遺伝子は発現されなかった。
【0078】
フリズルド(Frizzled)は、Wnt蛋白質が結合する7回膜貫通G蛋白質−結合受容体のファミリーである(総説:Wodarz and Nusse, 1998, Annu Rev Cell Dev Biol, 14: 59-88)。ファミリーのメンバー8個から、フリズルド1、2及び8について高い発現が検出された(表4)。分泌されたフリッズルド関連配列蛋白質(sFRP)はWntのためのおとり受容体として作用でき、そこでWntシグナル伝達を阻害できる。sFRP2では非常に高い発現が検出されたが、sFRP1及び4では検出されなかった。sFRP2は第3日に下方調節され、Wntシグナル伝達の刺激を示唆した。LRP5及びその相同体の発現も分析した。低密度リポ蛋白質受容体(LDLR)及びLRP1は強く発現され、LRP1は第3日に3倍下方調節された。第1日及び第3日にLRP5及びLRP6は発現されたが、LRP5はバックグラウンドレベルまで下方調節された。しかしながら、LRP5mRNAはなおrqRT−PCRで検出可能であった(下記参照)。この下方調節の意義は現在まだ不明である。恐らく、その高発現は骨芽細胞分化の非常に早期に必要なのであろう。ディクコプ(Dickkopf)は蛋白質のファミリーであって、LRPを経て細胞外でWntシグナル伝達に結合し、調節する(Bafico et al., 2001, Nat Cell Biol, 3: 683-686)。トランスフェクション実験は、ディックコップファミリーのメンバーが、高骨量遺伝子に見られるLRP5突然変異によって阻止される、LRP5シグナル伝達経路を構成的に阻害することを示唆した(Boyden et al., 2002, N Engl J Med, 346: 1513-21)。しかしながら、内因性骨芽細胞ディックコップの同一性は知られていない。ディックコップ−3はMC3T3−1b細胞内に高レベルで発現される唯一のファミリーメンバーであることが判明した(表4)。Wntシグナル伝達経路の他の成分、たとえばベータ−カテニン、アキシン、APC、LEF1及びTCF4も発現された。Wntシグナル伝達に介在する転写因子、LEF1及びTCF4、は共に上方調節された。最後にWnt経路標的遺伝子TCF7は強く上方調節された(表4)。
【0079】
GP、AA及びBMP−2の混合物はWntファミリーメンバー数種の発現を誘導することが結論された。Wnt受容体とシグナル伝達装置が存在すること、及びWnt標的遺伝子の上方調節は発現されたWntが活性であることを示す。これは骨芽細胞の分化プロセスの新規な側面である。
【実施例6】
【0080】
実施例6 ノッチシグナル伝達経路の活性化
転写因子Hey1は強く上方調節された:第1日、8.5倍及び第3日、3.3倍(表5)。Hey1は最近発表されたスプリットのヘアリー及びエンハンサー(HES)に関連するベイシックヘリックス−ループ−ヘリックス(bHLH)転写因子のファミリーのメンバーである。このファミリーはメンバー3種:Hey1, Hey2及びHeyLからなる(Leimeisteret et al., 1999, Mech Dev, 85: 173-7)。それはHESと共にノッチシグナル伝達経路の直接的標的であると思われる(Iso et al., 2001, Mol Cell Biol, 21: 6071-9; Iso et al, 2002, J Biol Chem, 277: 6598-607)。ノッチシグナル伝達は進化的に保存された機構であって、局所的細胞相互作用を介して細胞の運命を制御するために後生動物が使用する(Artavanis-Tsakonas et al., 1999, Science, 284: 770-6)。
【0081】
Hey1転写因子の強い上方調節は骨形成性分化の間にノッチ経路がMC3T3−1b細胞内で活性化されることを示唆した。それ故、ノッチリガンドの発現、受容体としてのノッチ自体並びにノッチ活性に影響を与える因子及び標的遺伝子を検討した(表5)。マイクロアレイにはプローブが存在したノッチリガンドデルタ及びジャグドは検出されなかった。しかし、プローブが存在しなかった他のリガンドが記載されている。さらに、ノッチ経路は蛋白分解経路によってもこれらのリガンドなしに活性化できる(Mumm and Kopan, 2000, Dev Biol, 228: 151-165)。たとえばプロテアーゼADAM10、プレセニリン1及び2及びルナチック及びラジカルフリンジ相同体のようなノッチのプロセッシング、トラフィッキング及び調節に関連する他の因子が発現された(Greenwald, 1998, Genes Dev, 12: 1751-62)。ADAM10の発現は第3日に2倍上方調節され、ノッチ経路活性化の可能性を示す。ノッチ受容体及びADAM10は双方とも骨に発現される(Dallas et al., 1999, Bone, 25: 9-15)。ノッチ経路の活性化は好奇心をそそる骨芽細胞分化プロセスの新規な側面であると結論された。
【0082】
実施例6a BMP−2によるHey1遺伝子の誘導
MC3T3細胞におけるBMP−2によるHey1の誘導。
MC3T3細胞をGP, AA及び/又は BMP−2の存在又は不在下(培地)に1、2、3及び4日間にわたって培養する。全RNAを抽出し、rqRT−PCRによってHey1の発現及び対照18SリボソームRNAについて分析する。放射性PCR産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動及びPhosphorimagerによる撮像によって分析する。PhoisphorImager によって得られたゲル像を示す。B:ヒト間葉幹細胞(MSC)及びC2C12細胞系列におけるBMP−2によるHey1の誘導。データはマイクロアレイ分析によって得た。ヒト間葉幹細胞(MSC):Affymetrix Array HG-U133A、プローブセット番号218839 at、配列寄託番号NM 012258;C2C12:Affymetri Array MG-U74Av2、プローブセット番号95671 at、配列寄託番号AJ243895。
【0083】
結果:Hey1はマウスMC3T3−プレ骨芽細胞性細胞並びに二重に強力なマウスC2C12細胞及びヒト間葉幹細胞内でBMP−2によって誘導される。
【0084】
実施例6b siRNAが介在するHey1誘導の阻害
MC3T3細胞を6−ウェルプレート(0.5×10細胞/ウェル、培地2mL中)に塗布する。24時間後、全容積1mL中、製造社の指示に従ってOligofectamine(Life Technologies)を使用してsiRNAを行う。siRNA濃度は0.1μM、Oligofectamine量は4μL/ウェルである。4時間後に30%血清及び骨形成刺激剤添加培地0.5mLを加えて形質導入を停止する。RNAは1、2、3又は4日後に分離する。アリザリンレッドS染色には、10%FCSおよび骨形成刺激剤添加培地を週2回交換する。染色は17日後に行う。siRNA配列:Hey−siRNA、センス鎖GCTAGAAAAAGCTGAGATC、dTdTオーバーハングIE-HPLC purified(Xeragon Inc.)。対照siRNA、センス鎖 AGAAGGAGCGGAATCCTCG, dTdT オーバーハング。
【0085】
【表1】


Hey1特異的siRNAによるBMP−2で誘導されたHey1発現の一過性阻害。MC3T3細胞に非形質導入(未処理、処理)、模擬形質導入(未処理+模擬、処理+模擬)又はHey1特異的siRNA(Hey1siRNA)又は無効対照siRNA(対照siRNA)を形質導入する。4時間形質導入後、細胞を未処理のままとする(未処理、未処理+模擬)か、又はGP/AA/BMP−2(処理、処理+模擬、Hey1siRNA、対照siRNA)で処理する。1、2、3又は4日後に全RNAを分離し、rqRT−PCRによって遺伝子発現を分析する。B:rqRT−PCR分析による早期BMP−2−誘導骨芽細胞遺伝子の発現へのHey1阻害効果なし。C:Hey1誘導の一過性阻害が鉱質化プロセスに影響を与える。MC3T3細胞は模擬形質導入(未処理+模擬、処理+模擬)するか、Hey1特異的siRNA(Hey1siRNA)又は無効な対照siRNA(対照siRNA)を形質導入する。4時間形質導入後、細胞を未処理のままに放置するか(未処置)又はGP/AA/BMP−2(処理+模擬、Hey1siRNA、対照siRNA)で処理する。アリザリンレッドS染色は17日後に行う。
【0086】
結果:Hey1の発現はHey1のsiRNAによって阻害でき、早期遺伝子発現には変化が起きないが、長期の鉱質化プロセスには影響を与える。
【0087】
実施例6c Cbfa1転写活性はHey1によって阻害される
Cbfa1及びHey1のcDNAを発現ベクターpcDNA3.1(+)にクローニングし、ルシフェラーゼレポータ検定に使用する。レポータベクターとしてOG2lucプラスミドを用いたが、これは最低限のオステオカルシンプロモータ及びルシフェラーゼ遺伝子の前に8個のOSE2/Cbfa1結合部位を持つ。Cbfa1結合部位は野生型(8×OSE2wt)とするか又はCbfa1の結合を停止する突然変異型(8×OSE2mut)とした。Cbfa1及びHey1の過剰発現の検証はrqRT−PCRにより行った。
【0088】
結果:Cbfa1は8×OSE2依存性ルシフェラーゼ活性を誘導し、この効果はHey1との共発現によって阻害される。
【0089】
実施例6d Hey1プロモータレポータ遺伝子を用いる検定(Hey1に対する拮抗剤又は作動剤を得るための)
a)Hey1プロモータルシフェラーゼを安定に発現する破骨細胞細胞系列の作製
Hey1プロモータをルシフェラーゼレポータ遺伝子ベクター(Rapid ResponseTMレポータベクター、Promega, Madison, WI, USA又は類似物)にクローニングする。様々なプレ骨芽細胞性又は多能性マウス細胞系列を安定な細胞系列(MC3T3、C2C12、CH310T1/2)を作製するための宿主として使用する。抗生物質を用いる標準技術を使用して、安定なクローンを選択する。BMP−2(800ng/mL)によるルシフェラーゼ誘導の最良倍率及び力価に基づいて更に選択を行う。
【0090】
b)高処理量スクリーニング用細胞培養
細胞系列は全て5%CO下、湿潤気中、37℃でインキュベーションする。C2C12細胞は10%FBS、2mM−グルタミン、50μg/mLゲンタマイシン、10mM−HEPES及び0.5mg/mL−G418添加DMEM−HG培地中で常法により培養する。MC3T3及びCH310T1/2細胞は10%FCS、2mM−L−グルタミン、100IU/mL−ペニシリン、100μg/mL−ストレプトマイシン及び0.75mg/mL−G418添加α−MEM中に維持する。レポータ遺伝子実験にはクローンは全てG418不在下に増殖させる。
【0091】
BMP−2は500μg/mL水ストック溶液として−80℃で保存し、4℃で解凍する。最終濃度は800ng/mLである。BMP−2の高対照としては500μg/mL−BMP−2を1.25%DMSO添加培養培地で1:250に希釈し、20μLを384−ウェルプレートのウェル中の細胞懸濁液30μLに加えた。最終濃度はBMP−2として800ng/mLであった。低対照は1.25%DMSO添加培地(BMP−2対照)又は0.63%DMSO添加培地(TGF−b1対照)で作製した。20μLを384−ウェルプレートのウェル内細胞懸濁液30μLに加える。
【0092】
c)高処理量スクリーニングのためのレポータ遺伝子検定
トリップルフラスコ内の細胞を燐酸緩衝食塩水(PBS)30mLで洗浄する。トリプシン/EDTA溶液(15mL)を加え、細胞とともに37℃で1〜2分間インキュベーションする。培養培地(15mL)を加え、細胞を遠心分離によって収集する。細胞を計数し、6.7×10細胞/mL(C2C12)又は1.78×10細胞/mL(MC3T3及びCH310T1/2)まで希釈する。この懸濁液50μLを無菌状態のMultidrop装置を用いて Greiner 384 well plateのウェルに加える。Multidropで添加している間、この細胞懸濁液の混合を継続する。Multidropカセットは70%エタノールで無菌を維持する。ウェル当り最終細胞数は333(C2C12−15a)及び888(MC3T3及びCH310T1/2)である。細胞を組織培養インキュベータ中、37℃で3日間密集成長まで培養する。化合物又は標準刺激剤(BMP−2)を密集成長した細胞にMultidrop and Cybiwellを用いて加える。インキュベーションをさらに24時間継続する。
【0093】
ルシフェラーゼ活性は次のようにして測定する:プレートを37℃から室温にし、SteadyGlo試薬25μLを各ウェルに加える。プレートを室温で60分間インキュベーションし、冷光をViewlux luminometerで測定(測定時間60秒、ビンニング係数2、中速、中ゲイン)する。
【0094】
d)高処理量スクリーニングでのヒット確認基準
ルシフェラーゼの明瞭な活性化又は低下(通常>2倍)を誘導する化合物(作動剤又は拮抗剤)をヒットの最先セットとする。化合物は濃度少なくとも9点での用量作用曲線で確認する。正規シグモイド曲線を示す化合物を重要最先ヒットとする。
【0095】
註:Hey−1の作動剤及び拮抗剤は、拮抗剤は骨芽細胞分化(直接的関連)を刺激するので;また作動剤は間葉幹細胞を多能性段階に維持し、内因性因子を用いる分化を刺激できる細胞を数多く作製する(間接的関連)ので;骨喪失疾患のために興味がある。
【実施例7】
【0096】
実施例7 他の興味深い調節される遺伝子
前記の群に属さない上方調節される数種の別な遺伝子:FKBP5、RAMP1及びコレステロール生合成経路の酵素3種;に注目する。その選択基準は:非常に強い上方調節;同じ経路からの上方調節される遺伝子数種;及び骨生物学の最近の知見との関係;とした。この遺伝子はスーパーファミリーの一部;又は「その他」遺伝子群;のいずれかとして表1にすでに含めてある。
【0097】
FKBP5は免疫抑制薬FK506に対する細胞内受容体の一群であるイムノフィリン・ファミリーに属する。FK506が結合すると、FKBPはCa+2依存性プロテアーゼであるカルシニューリンを阻害する。FKBPは固有のペプチジル/プロリル−シス/トランスイソメラーゼ活性を有する(総説:Gothel and Marahiel, 1999, Cell Mol Life Sci, 55: 423-36)。最近の報告はFK506が間葉細胞内で骨芽細胞分化プロセスを強化する(Tang et al., 2002, Cell Biol Int, 26: 75-84)ことを示し、FKBPと骨芽細胞との間の関係を示唆する。第3日にはFKBP5の発現に7倍の増加が観察された(表1、「その他」)。
【0098】
カルシトニン受容体様受容体と共に受容体活性修飾蛋白質1(RAMP1)はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CRLR)の機能的受容体を形成する(McLatchie et al., 1998, Nature 393: 333-9)。RAMP1では第3日に30倍もの著しい上方調節が検出された(表1、「受容体」)。骨芽細胞が分化する間のRAMP1発現の変化は新発見である。
【0099】
コレステロール生合成に関与する酵素をコードする遺伝子3個は上方調節された。律速酵素HMG−CoA還元酵素は11倍上方調節され、骨芽細胞分化プロセスにおけるコレステロール又はその前駆体いくつかの重要性を示唆する(表1、「その他」)。ステロール−C5−デサチュラーゼ及びデヒドロコレステロール還元酵素は3倍上方調節された。コレステロール産生のメバロネート経路及び蛋白質のゲラニルゲラニル修飾の関与は骨再吸収細胞である破骨細胞におけるビスホスホネートの標的であるとして確認されている(Coxon et al., 2000, J Bone Miner Res, 15: 1467-1476)。骨芽細胞では、メバロネート経路は骨同化効果(Garrett et al., 2001, Curr Pharm Des, 7: 65-70)を持つことが証明されているシステム内にあるスタチンの作用機構があると推論された。さらに、突然変異LRP5の高骨量遺伝子としての確認(Little et al., 2002, Am J Hum Genet, 70: 11-9)は他の関連低密度リポ蛋白質受容体遺伝子及びそのリガンドに興味を招いた。
【実施例8】
【0100】
実施例8 rqRT−PCRによる遺伝子発現プロファイルの確認
rqRT−PCRにより遺伝子16個で観察した調節を独立に確認し、そのうち10個は転写因子をコードした。ここまでに検討したグループの殆どから代表数種を次のように選択した:BMP−2シグナル伝達経路=SMAD1及び6;BMP−調節遺伝子=JunB、Id2及びDlx2;骨芽細胞分化関連遺伝子=Fra1;TGFβシグナル伝達経路=TGFβ1、TGFβ3及びTIEG;Wntシグナル伝達経路=Wnt6、TCF7及びLRP5;ノッチシグナル伝達経路=Hey1;及び他の興味深い遺伝子=FKBP5、RAMP1及びHlx;(表1参照)。分析した全遺伝子で、rqRT−PCRによって得られた発現プロファイルはマイクロアレイ分析によって得たプロファイルに密接に対応していた。骨芽細胞マーカー及びハウスキーピング遺伝子と共に、分析して確認した遺伝子の数は24に達し、マイクロアレイによる遺伝子調節の高い信頼性を示す。
【0101】
(a) 表1 MC3T3−1b細胞の骨芽細胞分化の間に調節される遺伝子の機能的分類
【表2】

【表3】

【表4】

【0102】
【表5】

【表6】

【0103】
【表7】

【表8】

【表9】

【0104】
【表10】

【0105】
【表11】

【表12】

【0106】
【表13】

【0107】
【表14】

【表15】

【表16】

【0108】
【表17】

【0109】
【表18】

【表19】

【0110】
【表20】

【0111】
全RNAを非刺激密集成長細胞(第0日)から及び骨形成刺激剤(GP/AA/BMP−2)(+)又はGP単独(−)で1日間及び3日間処理した細胞から抽出した。RNA試料をGeneChipマイクロアレイによって、及びNPGN及びExpressionistSoftwareによって分析した。数字は骨形成刺激剤による時間マッチ対照と比べた調節倍数を示す。発現が時間マッチ対照と比べて>2倍変化すれば遺伝子が調節されたと考えた。赤=上方調節される遺伝子;黒=下方調節される遺伝子。第1日及び第3日の双方を含めて各機能群の中で遺伝子を調節のレベルに従って最強の刺激から最強の阻害までに並べ替えた。遺伝子が異なる時点で上方及び下方調節される稀な例では、高い調節レベルを並べ替えの基準に採用した。
【0112】
(b)表2.骨芽細胞分化及び骨巨細胞発生支持に関連する遺伝子の発現プロファイル
【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【0113】
骨恒常性、骨芽細胞及び破骨細胞を調節する既知の役割に従って分類した表1からの選択されたデータ。赤=上方調節された遺伝子。黒=下方調節される遺伝子。
【0114】
(c)表3.TGFβシグナル伝達経路の成分の発現プロファイル
【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【0115】
TGFβシグナル伝達における既知の役割に従って分類した表1から選択したデータ。数字はマイクロアレイ上の絶対発現レベルを示す。第1日+、第3日+=骨形成刺激剤処理試料。第1日−、第3日−=時間マッチ対照。A=不在(シグナル<20)。赤=上方調節された遺伝子。黒=下方調節される遺伝子。
【0116】
(d)表4.Wntシグナル伝達経路の成分の発現プロファイル
【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【0117】
Wntシグナル伝達における公知の役割に従って分類した表1から選択されたデータ。数字はマイクロアレイ上の絶対発現レベルを示す。第1日+、第3日+=骨形成刺激剤で処理した試料。第1日−、第3日−=時間マッチ対照。A=不在(シグナル<20)。M=わずかなシグナル。
【0118】
(e)表5.ノッチシグナル伝達経路の成分の発現プロファイル
【表36】

【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【0119】
TGFβシグナル伝達における既知の役割に従って分類した表1から選択したデータ。数字はマイクロアレイ上の絶対発現レベルである。第1日+、第3日+=骨形成刺激剤で処理した試料。第1日−、第3日−=時間マッチ対照。A=不在(シグナル <20)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)MC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞を含む細胞集団で遺伝子又は遺伝子ファミリーの第1の発現プロファイルを作製すること及び/又はMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞を含む細胞集団の表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個がコードする蛋白質の第1の活性を検定すること;
(b)細胞集団に薬剤を接触させること;
(c)試薬に接触した細胞集団で遺伝子又は遺伝子ファミリーの第2の発現プロファイルを作製すること及び/又は試薬に接触させた細胞集団の表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個がコードする蛋白質の第2の活性を検定すること;及び
(d)第1及び第2の発現プロファイル又は第1及び第2の活性を骨芽細胞的に分化したMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団の発現プロファイル及び/又は活性と比較すること:
を包含する、骨芽細胞への分化を変調する薬剤のスクリーニング方法。
【請求項2】
遺伝子発現プロファイルが骨芽細胞的に分化したMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団と比較してMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞内で差動的に調節される遺伝子セットの発現レベルを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試薬がMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団内の遺伝子少なくとも1個に対する発現又は活性レベルを、骨芽細胞的に分化したMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団内に見られる発現レベルに対して変調する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
遺伝子発現プロファイル又は活性レベルが表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも2個の細胞内発現又は活性のレベルを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
遺伝子がHey1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個がコードする蛋白質の組織試料内の発現及び/又は活性レベルを検出することを包含し、遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの差動的な発現又は活性が異常な骨組織の沈着を示す、骨組織の異常な沈着によって特徴付けられる状態を診断する方法。
【請求項7】
(a)患者に医薬組成物を投与すること;
(b)患者からの細胞又は組織試料から遺伝子発現プロファイルを作製すること及び/又は表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個がコードする蛋白質の活性を検定すること;及び
(c)患者の発現プロファイル又は活性とMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団又は骨芽細胞的に分化したMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団からの発現プロファイル又は活性とを比較すること:
を包含する、異常な骨組織沈着によって特徴付けられる状態に罹患した患者の処置を監視する方法。
【請求項8】
組織試料内にある表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個がコードする蛋白質の発現及び/又は活性レベルを検出することを包含し、その遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの差動的な発現及び/又は活性が異常な骨芽細胞の形成速度を示す、異常な骨芽細胞形成速度によって特徴付けられる状態を診断する方法。
【請求項9】
(a)患者に医薬組成物を投与すること;
(b)患者の細胞又は組織試料内の遺伝子発現プロファイルを調製するか及び/又は表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個の活性を検定すること;及び
(c)患者の遺伝子発現プロファイル及び/又は活性とMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団又は骨芽細胞的に分化したMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団からの遺伝子発現プロファイル又は活性とを比較すること:
を包含する、骨芽細胞の異常な形成速度によって特徴付けられる状態を示す患者の処置を監視する方法。
【請求項10】
表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個の組織試料内の発現及び/又は活性レベルを検出することを包含し、差動的な発現又は活性が骨粗しょう症を示す、患者の骨粗しょう症を診断する方法。
【請求項11】
(a)患者に医薬組成物を投与すること;
(b)患者の細胞又は組織試料内の遺伝子発現プロファイルを調製するか及び/又は表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個の活性を検定すること;及び
(c)患者の遺伝子発現プロファイル及び/又は活性とMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団及び/又は骨芽細胞的に分化したMC3T3−E1又はMC3T3−1b細胞集団の遺伝子発現プロファイル又は活性とを比較すること:
を包含する、骨粗しょう症に罹患した患者の処置を監視する方法。
【請求項12】
(a)細胞と薬剤とを接触させること;及び
(b)表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの1個又はそれ以上の発現及び/又は活性のレベルを検出すること:
を包含する、骨粗しょう症の影響を緩和することができる薬剤をスクリーニングする方法。
【請求項13】
表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個の組織標本内における発現及び/又は活性レベルを検出することを包含し、差動的な発現及び/又は活性が骨組織沈着を示す、患者における骨組織沈着の進行を監視する方法。
【請求項14】
(a)細胞を薬剤に接触させること;及び
(b)表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個の発現及び/又は活性のレベルを検出すること:
を包含する、骨組織の沈着を変調できる薬剤をスクリーニングする方法。
【請求項15】
遺伝子少なくとも2個の発現及び/又は活性のレベルを検出する、請求項1〜請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
遺伝子少なくとも3個の発現及び/又は活性のレベルを検出する、請求項1〜請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
遺伝子少なくとも4、5、6、7、8、9、10又は11個の発現及び/又は活性のレベルを検出する、請求項1〜請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
表1に記載する遺伝子全ての発現及び/又は活性のレベルを検出する、請求項1〜請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
表2に記載する遺伝子全ての発現及び/又は活性のレベルを検出する、請求項1〜請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
表3に記載する遺伝子全ての発現及び/又は活性のレベルを検出する、請求項1〜請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
各オリゴヌクレオチドが表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーに特異的にハイブリッドを形成する配列を包含する、少なくとも2個のオリゴヌクレオチドを含む組成物。
【請求項22】
組成物が少なくとも3個のオリゴヌクレオチドを包含し、各オリゴヌクレオチドが表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーに特異的にハイブリッドを形成する配列を包含する、請求項21に記載する組成物。
【請求項23】
組成物が少なくとも5個のオリゴヌクレオチドを包含し、各オリゴヌクレオチドが表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーに特異的にハイブリッドを形成する配列を包含する、請求項21に記載する組成物。
【請求項24】
組成物が少なくとも7個のオリゴヌクレオチドを包含し、各オリゴヌクレオチドが表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーに特異的にハイブリッドを形成する配列を包含する請求項21に記載する組成物。
【請求項25】
組成物が少なくとも10個のオリゴヌクレオチドを包含し、各オリゴヌクレオチドが表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーに特異的にハイブリッドを形成する配列を包含する、請求項21に記載する組成物。
【請求項26】
オリゴヌクレオチドが固体の支持体に付着している、請求項21〜請求項25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
固体の支持体が膜、ガラス支持体、フィルター、組織培養皿、ポリマー材料及びシリコン支持体から構成される群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
各オリゴヌクレオチドが表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーに特異的にハイブリッドを形成する配列を包含する、少なくとも2個のオリゴヌクレオチドが付着している固体の支持体。
【請求項29】
オリゴヌクレオチドの少なくとも1個が共有結合的に付着している、請求項28に記載の固体支持体。
【請求項30】
オリゴヌクレオチドの少なくとも1個が非共有結合的に付着している、請求項28に記載の固体支持体。
【請求項31】
固体の支持体が区別された位置に平方センチメートル当り異なるオリゴヌクレオチド少なくとも10個を含むアレイである、請求項28に記載の固体支持体。
【請求項32】
アレイが区別された位置に平方センチメートル当り異なるオリゴヌクレオチド少なくとも100個を含む、請求項28に記載の固体支持体。
【請求項33】
アレイが区別された位置に平方センチメートル当り異なるオリゴヌクレオチド少なくとも1000個を含む、請求項28に記載の固体支持体。
【請求項34】
アレイが区別された位置に平方センチメートル当り異なるオリゴヌクレオチド少なくとも10000個を含む、請求項28に記載の固体支持体。
【請求項35】
(a)表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの1個又はそれ以上を含む遺伝子セットの骨芽細胞における発現及び/又は活性のレベルを確認する情報を含むデータベース;及び
(b)情報を見るためのユーザーインターフェース;
を包含する、コンピュータシステム。
【請求項36】
データベースがさらに前記遺伝子又は遺伝子ファミリーの配列情報を含む、請求項35に記載のコンピュータシステム。
【請求項37】
データベースがさらに表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個のMC3T3−E1及び/又はMC3T3−1b細胞内での発現及び/又は活性のレベルを確認する情報を包含する、請求項35に記載のコンピュータシステム。
【請求項38】
データベースがさらに異常な骨組織沈着によって特徴付けられる状態を示す遺伝子セットの発現レベルを確認する情報を包含する、請求項35に記載のコンピュータシステム。
【請求項39】
さらに、前記遺伝子と外部データベースのレコードとを関連付ける情報である外部データベースからの記述情報を含むレコードを包含する、請求項35〜請求項38のいずれかに記載のコンピュータシステム。
【請求項40】
外部データベースがGenBankである、請求項39に記載のコンピュータシステム。
【請求項41】
(a)表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも1個の組織又は細胞内発現レベルとデータベース内の遺伝子の発現レベルとを比較すること;
を包含する、表1に記載する遺伝子又は遺伝子ファミリーのメンバーの少なくとも2個を含む遺伝子セットの組織内又は細胞内発現レベルを確認する情報を提供するために請求項35〜請求項40のいずれかに記載のコンピュータシステムを使用する方法。
【請求項42】
遺伝子の少なくとも2個の発現レベルを比較する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
遺伝子の少なくとも5個の発現レベルを比較する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
遺伝子の少なくとも10個の発現レベルを比較する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
さらに組織内又は細胞試料内の遺伝子の少なくとも1個の発現レベルを骨芽細胞的に分化したMC3T3−E1細胞及び/又はMC3T3−1b細胞における発現レベルと比較して表示する段階を包含する、請求項41に記載の方法。



【公表番号】特表2006−523444(P2006−523444A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504999(P2006−504999)
【出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003588
【国際公開番号】WO2004/090161
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】