説明

骨誘導性タンパク質のためのリン酸カルシウム送達ビヒクル

【課題】生体適合性であり、容易に吸収可能であり、そして薬物活性に有害ではない、骨誘導性タンパク質のための薬物送達ビヒクルを提供することを、本発明の課題とする。
【解決手段】上記課題は、骨欠損を有する哺乳動物を処置するための本発明の組成物を提供することによって、解決された。この組成物は、骨原性タンパク質、キャリアとしてのリン酸カルシウム材料、および有効量の発泡剤を含有する。この組成物を使用するための方法ならびに骨粗鬆症および/または骨減少骨を処置するための骨原性組成物を使用するための方法がまた、開示される。骨欠損を有する哺乳動物を処置するための組成物であって、該組成物は、生体活性因子としての骨原性タンパク質、キャリアとしてのリン酸カルシウム材料、および有効量の発泡剤を含有する、組成物もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨誘導性タンパク質のための送達ビヒクルとして有用な、リン酸カルシウムを含む複合材料に関する。本発明はさらに、骨再生および骨増強のため、ならびに組織修復のため、および骨折、歯科インプラント、骨移植片、およびプロテーゼなどにおける補強のために使用され得る、生体適合性の骨誘導性複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
生物薬剤学の領域における多数の研究は、薬物送達および他の外科適用のために有効な移植可能なビヒクルの開発に関する。そのようなビヒクルは、生体適合性でなければならず、そしてまた、そのビヒクルが送達することを意図される任意の生物活性因子の活性を保護可能でなければならない。多くの生物活性因子は、不安定であり、そしてそれらが送達材料中に組込まれた場合に容易に活性を失う。タンパク質活性の保存は、特に困難な問題を提起している。
【0003】
薬物送達の場において、リン酸カルシウムセラミックが、その周知の生体適合性およびタンパク質試薬に対する親和性に起因して、潜在的送達ビヒクルとして研究されている(例えば、非特許文献1〜4を参照のこと)。これらの材料のほとんどは、顆粒形態またはブロック形態のいずれかで予め製造された焼結ヒドロキシアパタイトの形態であった。これらの調製物は、いくつかの欠点を有し、その欠点としては、(特に、ブロックの場合に)骨格欠損に従う能力が限定されていること;(一緒に結合しない)顆粒の構造的完全性の不十分さ;ならびにブロックおよび顆粒の両方を用いて、欠如した骨格組織の形状に移植片を形成することの困難;が挙げられる。このブロック形態のヒドロキシアパタイトは、構造的支持を提供するが、他の複雑な状態の間で、機械的手段により適所に保持されなければならず、このことが、このブロック形態のヒドロキシアパタイトの使用および審美的結果を多いに制限する。また、患者の個々の欠損に適合する形状へとヒドロキシアパタイトを切ることが、非常に困難である。その顆粒形態は、審美的に良好な結果を生じるが、非常に限定的された構造的安定性を有し、外科手順の間および外科手順の後に含むことが困難である。一般的に、これらの製品すべては、高温焼結により生成されるセラミックであり、そして個別に結晶ではないが、むしろ、一緒に融合された結晶境界を有する。ほとんどのセラミック型材料は、一般に、機能的に生物学的に吸収性ではない(一般的に、1年あたり約1%を超えない吸収速度を有する)。
【0004】
サンゴをベースとする多孔性の非吸収性材料は、骨との互生を可能にするが、最終的には、約20%骨になり、残り80%は、瘢痕組織として存続する。Osteogenにより製造されるHA RESORB(登録商標)は、吸収性ヒドロキシアパタイトの形態であるが、セメントではない。HA RESORB(登録商標)は、顆粒であり、接着性ではない。HA RESORB(登録商標)は、適所に接着して充填されるよりも緩やかである。大量用途に関して、HA RESORB(登録商標)は、骨によりあまりにも迅速に置換される。歯科材料市場において、HAPSET(登録商標)は、リン酸カルシウム顆粒と、接着可能な焼セッコウ(硫酸カルシウム)との組成物である。この材料は、正確にはヒドロキシアパタイトではなく、ほとんどの生物学的用途にとっては多すぎる硫酸カルシウムを含む。そのような組成物の硫酸カルシウム成分は、吸収性であるが、リン酸カルシウム顆粒は、吸収性ではない。
【0005】
少なくともある種のリン酸カルシウム組成物は、ヒドロキシアパタイトの形成のための前駆物質であり、そして生体適合性であり、そして他のリン酸カルシウム生体物質では到達できない2つの独特の特性を有する。その2つの独特の特性とは、(1)多くの医療適用および歯科適用のために十分な強度を備えた塊を形成するために自己硬化すること、および(2)骨中に移植された場合、その材料は、ゆっくり吸収し、そして新規な骨形成により完全に置換され、その移植物を受ける組織の体積にも完全性にも喪失がない。BrownおよびChowに対する米国特許再審査33,221号および再審査33,161号(これらは、リン酸カルシウム再鉱質化組成物の調製および同じリン酸カルシウム組成物に基づく微細結晶性で非セラミックである徐々に吸収するヒドロキシアパタイト材料の調製を教示する)を参照のこと。
【0006】
事実上同一であるリン酸カルシウム系(これは、リン酸テトラカルシウム(TTCP)およびリン酸一カルシウム(MCP)またはリン酸一カルシウムの一水和物形態(MCPM)からなる)が、Constantzら(米国特許第5,053,212号および同第5,129,905号)に記載された。この系は、最終産物として、MCPからリン酸二カルシウム(TTCPと反応し、ヒドロキシアパタイト(HA)(歯および骨の主要鉱質成分)を形成する)への変換を包含することが報告されている。
【0007】
別の型のリン酸カルシウム組成物は、硬化ペーストを形成するための、反応物質としてのアモルファスアパタイト性リン酸カルシウムと、助触媒と、水性液体とを含む。例えば、Leeらに対する米国特許第5,650,176号;同第5,676,976号;同第5,683,461号;同第6,027,742号;および同第6,117,456号を参照のこと。この系は、生体適合性であり、生体吸収性であり、そして室温で長期間作用可能である、生体活性セラミック材料を提供する。この生体活性セラミック材料は、低温で形成され得、容易に形成可能かつ/または注射可能であり、そしてさらなる反応の際に高い強度まで硬化し得る。その生体活性セラミック材料は、結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウム固体を含み、カルシウム対リン酸(Ca/P)比は、天然に存在する骨材料に匹敵し、そして天然の骨と同様の堅さおよび骨折の粗さを有する。その生体活性セラミック複合材料は、強く生体吸収性であり、そしてその生体吸収性および反応性は、特定の治療および/または移植部位の需要を満たすように調整され得る。その材料は、骨プレート、骨ネジ、ならびに他の固定具および医療デバイス(獣医の適用を含む)として調製され得、これらは、強く生体吸収性であり、そして/または骨化する。
【0008】
再建手術の目標の1つは、患者自身の細胞または増殖増強タンパク質のいずれかを使用して、損傷した組織を新しい組織で置換することを可能にすることである。例えば、研究者は、単離された軟骨細胞が、ポリマー骨格に関して損傷した領域中に注入される、軟骨再生系を開発することを試みてきた(例えば、Atalaら、J.Urol.150:747(1993);Freedら、J.Cell.Biochem.51:257(1993)およびその中で引用される参考文献を参照のこと)。播種された類似する足場系が、骨修復に関して研究されており、その系において、骨芽細胞が、ポリマー支持体またはセラミック支持体と組み合わせて利用される(例えば、Elgendyら、Biomater.14:263(1993);Ishaugら、J.Biomed.Mater.Res.28:1445(1994)を参照のこと)。特に興味深いのは、骨誘導性材料(例えば、骨形成タンパク質(たとえば、組換えヒトBMP−2)、脱灰骨マトリックス;トランスフォーミング増殖因子(例えば、TGF−β);および骨形成を誘導することが公知の他の種々の有機物種)である。
【0009】
3つの一般的な型のリン酸カルシウムベースの足場材料が、播種された組成物とともに使用するために特に設計されている。1つの型の足場材料は、外部表面上に結合した生体活性物質を含む、予め形成されたリン酸カルシウムベースの顆粒からなる。一般的に、大きな顆粒(理想的には100〜1000μm)は、炎症性応答を惹起すること回避することが必要である。しかし、予め製造されたそのような大きな顆粒は、経皮注射に必要な小さいゲージの針を通って容易には注射可能でない。さらに、因子は、包埋されたりマトリックス全体に分散されたりするよりも、表面コーティングを生じる予め形成された顆粒と混合され得る。その因子を包埋すると、マトリックスが吸収される場合に生体分子のより制御された放出が可能になる。予め形成された顆粒は、代表的には、取扱いおよび適用が困難である。さらに、予め形成されたほとんどのヒドロキシアパタイト顆粒は、その顆粒を本質的に非吸収性にする焼結プロセスによって、生成される。
【0010】
播種される組成物についての第2の型の足場材料は、移植可能な多孔性の、ヒドロキシアパタイトブロックまたはリン酸三カルシウムブロックからなる。移植可能な多孔性のブロックは、代表的には、制御された粒径の反応物の乾燥混合物を使用して、種々の程度の多孔度を備えて調製され得る。多孔性を促す他の方法としては、化学的または物理的な、エッチングおよびリーチングが挙げられる。それらの方法は、一般的には、十分な支持を提供するが、多孔性ブロックは、いくつかの有意な欠点を有する。第1に、上記の予め製造された顆粒と同様に、ブロック足場は、その体積全体にわたって包埋された骨誘導性物質を有さず、従って、活性物質の徐放を妨げる。第2に、移植可能ブロックは、注射可能ではなく、従って、より不便な移植手順を必要とする。最後に、そして重要なことには、モノリシックブロックが、臨床適用についての骨形成速度を妨害し得、ここで、治癒の加速が、通常の治癒タイムコースにわたって望ましい。この遅延は、固体キャリアの吸収を遅延することおよびその後の活性物質の遅延放出に起因し得る。モノリシックマトリックスの存在はまた、骨折部位への細胞の移動および浸潤を妨害し得る。ブロックマトリックスが、孔隙間に相互連絡するチャネルを含むと仮定すると、新規な骨成長が、骨格壁の孔隙および境界により指示され、それにより、新規な骨形成を制限する。
【0011】
第3の型の足場材料は、リン酸カルシウムセメントを含む。予め製造された顆粒およびモノリシックブロックとは異なり、セメントは、容易に注射可能であり、そしてその体積全体にわたって包埋された骨誘導性物質を有し得る。しかし、これらのセメントは、固有にミクロポアモノリシック凝集物を形成する傾向がある。生分解性孔隙形成体を使用するマクロポアバージョンが、記載されている(例えば、本明細書中に参考として援用されるPCT公開番号WO98/16209を参照のこと)が、これらのセメントは、上記のように新規な骨成長を有意に制限するミクロポア顆粒よりもむしろ、チャネルを含むモノリシック足場を形成する。
【0012】
従って、この分野でかなりの人々が努力しているにも関わらず、生体適合性であり、容易に吸収可能であり、そして薬物活性に有害ではない、薬物送達ビヒクルの必要性が残っている。理想的には、そのビヒクルは、注射可能であり;種々のサイズの骨折および欠損中に注射または移植可能であるように適合し;マトリックス全体にわたる生体活性材料の均質な分布を促進し、それにより、活性物質の徐放を可能にし;そして最後に、手術部位または欠損部位に投与されると分散したマクロ顆粒を形成する;べきである。顆粒形成は、細胞外骨マトリックスの分泌のために細胞の移動および浸潤を促進するため、ならびに血管新生のためにアクセスを提供するために、望ましい。顆粒はまた、吸収の増強および活性物質放出の増強、ならびに細胞マトリックス相互作用の増加のために、大きな表面積を提供する。本発明は、これらの必要性を解決し、薬物送達および組織修復において有用な材料および組成物を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Ijntemaら、Int.J.Pharm.112:215(1994)
【非特許文献2】Itokazuら、J.Orth.Res.10:440(1992)
【非特許文献3】Shintoら、J.Bone Joint Surg.74−B:600(1992)
【非特許文献4】Uchidaら、J.Orth.Res.10:440(1992)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
1つの実施形態において、本発明は、骨欠損を有する哺乳動物を処置するための組成物を提供し、この組成物は、リン酸カルシウム材料、有効量の発泡剤、および生体活性因子を含有する。このリン酸カルシウム材料は、アモルファスアパタイトリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、またはフッ素リン灰石であり得る。好ましい実施形態において、そのリン酸カルシウム材料は、アモルファスアパタイトリン酸カルシウムであり、例えば、結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムである。その結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムは、天然に存在する骨材料に匹敵するカルシウム対リン酸(Ca:P)比を有する。好ましい実施形態において、そのCa:P比は、1:1.50未満であり、好ましくは、約1:1.40である。その骨原性タンパク質は、骨形成タンパク質(BMP)ファミリーのメンバーであり得、そのファミリーは、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−10、BMP−12およびBMP−13を包含する。好ましい実施形態において、その骨原性タンパク質は、BMP−2またはBMP−6である。その発泡剤は、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンからなる群から選択され得る。好ましい実施形態において、その発泡剤は、炭酸水素ナトリウムである。その炭酸水素ナトリウムは、約10%(重量/重量)と約40%(重量/重量)との間の濃度で存在し得る。その組成物は、1つ以上の補充材料(例えば、薬学的に受容可能な塩、多糖類、ペプチド、タンパク質、アミノ酸、合成ポリマー、天然ポリマー、および界面活性剤);固体構造物(例えば、スポンジ、メッシュ、フィルム、繊維、ゲル、フィラメント、ミクロ粒子、およびナノ粒子);生体腐食性ポリマー(例えば、コラーゲン、グリコーゲン、キチン、セルロース、スターチ、ケラチン、シルク、核酸、脱灰マトリックス、誘導体化ヒアルロン酸、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ならびにそれらのコポリマーおよびそれらの誘導体);α−ヒドロキシカルボン酸(例えば、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカルボネート)およびポリヒドロキシブチレート(PHB))、およびポリアンヒドリド、ならびにそれらのコポリマーおよびそれらの誘導体;SiO、NaO、CaO、P、AlおよびCaF;ならびに多糖類、ペプチドおよび脂肪酸;をさらに含み得る。その組成物は、第2の活性因子(例えば、Hedghogタンパク質、Frazzledタンパク質、Chordinタンパク質、Nogginタンパク質、Cerberusタンパク質、およびFollistatinタンパク質)をさらに含み得る。
【0015】
別の局面において、本発明は、骨欠損を有する哺乳動物を処置するための方法に関し、この方法は、有効量の骨原性組成物を、骨欠損部位に投与する工程を包含し、ここでこの骨原性組成物は、骨形成タンパク質、リン酸カルシウム材料、および発泡剤を含有する。好ましい実施形態において、その発泡剤は、炭酸水素ナトリウムである。
【0016】
なお別の局面において、本発明は、骨原性タンパク質の送達のための医薬の調製における、骨原性タンパク質と、リン酸カルシウム材料と、発泡剤との使用に関する。
例えば、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
骨欠損を有する哺乳動物を処置するための組成物であって、該組成物は、生体活性因子としての骨原性タンパク質、キャリアとしてのリン酸カルシウム材料、および有効量の発泡剤を含有する、組成物。
(項目2)
前記骨原性タンパク質が、骨形成タンパク質(BMP)ファミリーのメンバーからなる群から選択される、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記骨原性タンパク質が、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−10、BMP−12およびBMP−13からなる群から選択される、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記骨原性タンパク質が、BMP−2またはBMP−6である、項目2に記載の組成物。
(項目5)
前記リン酸カルシウム材料が、アモルファスアパタイトリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、およびフッ素リン灰石からなる群のリン酸カルシウムの群から選択される、項目1〜4のいずれかに記載の組成物。
(項目6)
前記リン酸カルシウム材料が、アモルファスアパタイトリン酸カルシウムである、項目1〜4のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
前記リン酸カルシウム材料が、結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムである、項目1〜4のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
前記結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムが、天然に存在する骨材料に匹敵するカルシウム対リン酸比を有する、項目7に記載の組成物。
(項目9)
前記結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムが、1:1.50未満のカルシウム対リン酸比を有する、項目7または8に記載の組成物。
(項目10)
前記結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムが、約1:1.40のカルシウム対リン酸比を有する、項目7〜9のいずれかに記載の組成物。
(項目11)
前記発泡剤が、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンからなる群から選択される気体である、項目1〜10のいずれかに記載の組成物。
(項目12)
前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウムである、項目1〜10のいずれかに記載の組成物。
(項目13)
前記炭酸水素ナトリウムが、約10%(重量/重量)と約40%(重量/重量)との間の濃度で存在する、項目12に記載の組成物。
(項目14)
項目1〜13のいずれかに記載の組成物であって、該組成物は、薬学的に受容可能な塩、多糖類、ペプチド、タンパク質、アミノ酸、合成ポリマー、天然ポリマー、および界面活性剤からなる群から選択される補充材料を、さらに含有する、組成物。
(項目15)
項目1〜14のいずれかに記載の組成物であって、該組成物は、スポンジ、メッシュ、フィルム、繊維、ゲル、フィラメント、ミクロ粒子、およびナノ粒子からなる固体構造物の群から選択される補充材料を、さらに含有する、組成物。
(項目16)
項目1〜14のいずれかに記載の組成物であって、該組成物は、コラーゲン、グリコーゲン、キチン、セルロース、スターチ、ケラチン、シルク、核酸、脱灰骨マトリクス、誘導体化ヒアルロン酸、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ならびにそのコポリマーおよび誘導体からなる生体腐食性ポリマーの群から選択される補充材料を、さらに含有する、組成物。
(項目17)
項目1〜14のいずれかに記載の組成物であって、該組成物は、以下:
ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド(PLGA),ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)およびポリヒドロキシブチラート(PHB)のようなα−ヒドロキシカルボキシル酸、およびポリアンヒドリド、ならびにそのコポリマーおよび誘導体からなるポリエステルの群から選択される補充材料を、さらに含有する、組成物。
(項目18)
項目1〜14のいずれかに記載の組成物であって、該組成物は、SiO、NaO、CaO、P、AlおよびCaFからなる群から選択される、少なくとも1つの補助材料をさらに含有する、組成物。
(項目19)
項目1〜14のいずれかに記載の組成物であって、該組成物は、多糖類、ペプチドおよび脂肪酸からなる群から選択される補助材料をさらに含有する、組成物。
(項目20)
項目1〜19のいずれかに記載の組成物であって、該組成物は、第2の活性因子をさらに含有し、該第2の活性因子は、Hedfhogタンパク質、Frazzledタンパク質、Chordinタンパク質、Noggin、Cerberusタンパク質およびFollistatinタンパク質からなる群から選択される、組成物。
(項目21)
骨欠損を有する哺乳動物を処置するための組成物であって、該組成物は、第1の生体活性因子としての骨形成タンパク質、キャリアとしてのリン酸カルシウム材料、および有効量の発泡剤を含有し、ここで、該発泡剤は、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンからなる群から選択される気体である、組成物。
(項目22)
骨欠損を有する哺乳動物を処置するための組成物であって、該組成物は、第1の生体活性因子としての骨形成タンパク質、キャリアとしてのリン酸カルシウム材料、および有効量の発泡剤を含有し、ここで、該発泡剤は、炭酸水素ナトリウムである、組成物。
(項目23)
骨欠損を有する哺乳動物を処置する方法であって、有効量の骨原性組成物を、骨欠損部位に投与する工程を包含し、ここで該骨原性組成物は、骨形成タンパク質、リン酸カルシウム材料、および発泡剤を含有する、方法。
(項目24)
前記骨原性タンパク質は、骨形成タンパク質(BMP)ファミリーのメンバーからなる群から選択される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記骨形成タンパク質が、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−10、BMP−12およびBMP−13からなる群から選択される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記骨形成タンパク質が、BMP−2またはBMP−6である、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記リン酸カルシウム材料が、アモルファスアパタイトリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、およびフッ素リン灰石からなる群のリン酸カルシウムの群から選択される、項目23〜26のいずれかに記載の方法。
(項目28)
前記リン酸カルシウム材料が、アモルファスアパタイトリン酸カルシウムである、項目23〜26のいずれかに記載の方法。
(項目29)
前記リン酸カルシウム材料が、結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムである、項目23〜26のいずれかに記載の方法。
(項目30)
前記結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムが、天然に存在する骨材料に匹敵するカルシウム対リン酸比を有する、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムが、1:1.50未満のカルシウム対リン酸比を有する、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムが、約1:1.40のカルシウム対リン酸比を有する、項目29に記載の方法。
(項目33)
骨欠損を有する哺乳動物を処置する方法であって、有効量の骨原性組成物を、骨欠損部位に投与する工程を包含し、ここで該骨原性組成物は、骨形成タンパク質、リン酸カルシウム材料、および炭酸水素ナトリウムを含有する、方法。
(項目34)
前記炭酸水素ナトリウムが、約10%(重量/重量)と約40%(重量/重量)との間の濃度で添加される、項目33に記載の方法。
(項目35)
項目33または34に記載の方法であって、ここで、前記骨原性組成物は、薬学的に受容可能な塩、多糖類、ペプチド、タンパク質、アミノ酸、合成ポリマー、天然ポリマー、および界面活性剤からなる群から選択される補充材料を、さらに含有する、方法。
(項目36)
項目33または34に記載の方法であって、ここで、前記骨原性組成物は、以下:
ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド(PLGA),ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)およびポリヒドロキシブチラート(PHB)のようなα−ヒドロキシカルボキシル酸、およびポリアンヒドリド、ならびにそのコポリマーおよび誘導体からなるポリエステルの群から選択される補充材料を、さらに含有する、方法。
(項目37)
項目33または34に記載の方法であって、ここで、前記骨原性組成物は、SiO、NaO、CaO、P、AlおよびCaFからなる群から選択される、少なくとも1つの補助材料をさらに含有する、方法。
(項目38)
骨欠損を有する哺乳動物の処置のための治療薬の調製物における、骨原性タンパク質、リン酸カルシウム材料、および発泡剤の使用。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、骨組織の修復、再生、および増強における使用に適合された、骨誘導性組成物に関する。その組成物は、生体適合性でありかつ生体吸収性であるリン酸カルシウム材料と、発泡剤と、生体活性因子とを含む。硬化の際に、そのリン酸カルシウム材料は、新規な骨成長のための吸収性足場を提供する。その発泡剤は、分散したマクロ顆粒の形成を促進することによって、リン酸カルシウムが単一のモノリシック構造を形成することを防ぐ。分散したマクロ顆粒は、リン酸カルシウムの硬化の間に分散する。その生体活性因子は、存在する前駆体もしくは他の細胞または浸潤する前駆体または他の細胞の、骨形成活性の増加を刺激する。その骨誘導性組成物は、例えば、骨減少症性の骨における骨組織の骨増強および再生のため、ならびに骨折、歯科インプラント、骨移植物、およびプロテーゼなどにおける組織修復および補強のために、有用である。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「リン酸カルシウム材料」とは、主要成分としてリン酸カルシウムを含む、合成骨置換材料を意味する。適切なリン酸カルシウムベースの材料は、当該分野で周知であり、そのような材料としては、アモルファスアパタイトリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、およびフッ素リン灰石が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、そのリン酸カルシウム材料は、天然に存在する骨鉱質に匹敵するカルシウム対リン酸(Ca/P)比を有する、結晶性が乏しいアパタイトリン酸カルシウムである。そのような材料は、反応物質としてのアモルファスリン酸カルシウムと、助触媒と、水性液体との組み合わせを、硬化ペーストを形成するためにより生成され得る。代替的実施形態において、そのリン酸カルシウム材料は、結晶性ヒドロキシアパタイト固体を形成するために、結晶性リン酸カルシウム反応物質の固体状態での酸塩基反応を使用して生成される。
【0019】
「発泡剤」とは、気体状物質を指すか、あるいは気体の泡立ち、発泡、または遊離を生じる物質を指す。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「アモルファス」とは、有意なアモルファス特徴を備える物質を意味する。有意なアモルファス特徴とは、75%を超えるアモルファス含量、好ましくは90%を超えるアモルファス含量を企図し、特徴のないブロードなX線回折パターンにより特徴付けられる。
【0021】
「生体活性な」とは、移植片中および移植片周囲に硬組織形成を誘導する物質を指す。軟組織中に移植された場合、その生体活性はまた、増殖因子もしくは栄養因子の存在、または硬組織形成細胞型を移植片に播種することを必要とし得る。
【0022】
用語「生体適合性」とは、本明細書中で使用される場合、宿主中で実質的な有害な応答を惹起しない物質を意味する。生体中に外来物質が導入される場合、その物質は、その宿主に対して負の効果を有する免疫反応(例えば、炎症応答)を誘導するという問題が、常に存在する。例えば、ヒドロキシアパタイトは、一般的に、「生体適合性である」と見なされているが、結晶性ヒドロキシアパタイトマイクロキャリアが動物中に筋肉内挿入された場合に、有意な炎症および組織壊死が観察されている(例えば、IJntemaら、Int.J.Pharm.112:215(1994)を参照のこと)。
【0023】
「生体吸収性の」とは、物質がインビボで吸収される能力を指す。この吸収プロセスは、体液、酵素、または細胞の作用を介する、もとの移植物質の除去を包含する。吸収されたリン酸カルシウムは、例えば、骨鉱質として再沈着され得るか、または身体内で他の方法で再利用されるか、または排出され得る。「強く生体吸収性の」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、筋肉内または皮下に移植された物質の総質量の少なくとも80%が、1年以内に吸収されることを意味する。好ましい実施形態において、その物質は、9ヶ月以内、6ヶ月以内、3ヶ月以内、そして理想的には1ヶ月以内に吸収される。
【0024】
「有効量」の発泡剤とは、硬化の際にマクロ顆粒の形成をもたらすに十分な量であり、そしてこの有効量は、使用されるリン酸カルシウム材料に依存する。一般的に、発泡剤の量は、約1〜90重量%の範囲、好ましくは、約1〜50重量%の範囲、そしてより好ましくは、約10〜40重量%の範囲で添加される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「マクロ顆粒」とは、直径が約100ミクロンと1ミリメートルとの間である、顆粒または粒子を意味する。本発明のリン酸カルシウム組成物の硬化の際に形成されるマクロ顆粒材料は、生体適合性であり(すなわち、そのマクロ顆粒は、炎症応答を惹起することを回避するに十分なサイズである)、そして下記のような、マクロポア性である。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「マクロポア性」とは、細胞移動および細胞浸潤を可能にするのに十分な直径の孔(ポア)を有する硬化リン酸カルシウム材料をいう。好ましい実施形態において、本発明に従って形成されるマクロポア性材料は、30ミクロンを超える孔の直径、より好ましくは約30ミクロンと約200ミクロンの間、そして最も好ましくは50ミクロンと100ミクロンとの間の孔の直径を有する。本発明のマクロポア性材料は、細胞外骨マトリクスの分泌のための細胞移動および細胞浸潤ならびに細胞マトリクス相互作用の増強を促進する。
【0027】
生体活性因子の「有効量」は、増大した存在する骨形成活性を刺激するかまたは前駆細胞または他の細胞を浸潤するのに十分な量である。この量は、処置される欠失のサイズおよび性質ならびに使用されるリン酸カルシウム材料の組成に依存する。一般に、送達される生体活性因子の量は、約0.1mgから約100mgの範囲、好ましくは約1mgから約100mgの範囲;そして最も好ましくは約10mgから約80mgの範囲にある。
【0028】
補充材料の「有効量」とは、この複合材料に所望の力学的特性または化学的特性を与えるのに十分な量である。
【0029】
「硬化(する)」とは、適応性リン酸カルシウム組成物を硬化したリン酸カルシウム材料に変換するようなプロセスである。このリン酸カルシウム組成物は、十分に成形可能ではない固体であるときに「硬化される」と考えられる。このような硬化リン酸カルシウム材料は、最小限の圧縮性を有しそして弾性変形とは対照的に可塑性となる傾向がある。
【0030】
「結晶性が乏しいアパタイト(apatitic)リン酸カルシウム」、「PCAリン酸カルシウム」および「PCA材料」は、本明細書中でこれらが使用される場合、結晶性が乏しい合成アパタイトリン酸カルシウムを記述する。これらの結晶性が乏しいアパタイト型(PCA)物質は、単一のリン酸カルシウム相に必ずしも限定されない。但し、このPCAは、特徴的な結晶X線回折(XRD)およびFTIRパターンを有している。PCAリン酸カルシウムは、骨と実質的に同一のXRDスペクトルを有している。このスペクトルは、一般に、20°〜35°の領域の2つだけのブロードなピーク(ここで、その1つは26°に中心を持ちもう一方は32°に中心を持つ)によって特徴付けられ、そして、565cm−1、1034cm−1、1638cm−1、および3432cm−1(±2cm−1)のFTIRピークによって特徴付けられる。鋭いショルダーが603cm−1および875cm−1において観測され、1422cm−1および1457cm−1において極大を有する二重項をともなう。
【0031】
「水和前駆物質」とは、本明細書において使用される場合、限定された量の水溶液(すなわち、1gの前駆物質粉末につき約1mL未満の水溶液)の存在下で乾燥したPCA前駆物質の水和によって形成されたペーストまたはパテをいう。この水和した前駆物質は、その変換が進行する程度に依存して種々の組み合わせで反応物質および生成物の両方を含み得る。本明細書において記載される、「注射可能」PCA前駆物質ペーストおよび「形成性」PCA前駆物質ペーストとは、水和した前駆物質である。好ましい「注射可能な」水和した前駆物質は、18ゲージの皮下注射針を介する送達に適切な粘稠性を有する。
【0032】
用語「助触媒」は、本明細書中で使用される場合、水和した前駆物質の硬化を促進してそしてアモルファス型リン酸カルシウム(ACP)からPCAリン酸カルシウムの変換を増強し得る、材料または処置を記述する。いくつかの助触媒はその変換に関わりそしてPCA材料へと組み込まれ;他のもの(「受動型助触媒」として知られている)は、この変換には含まれない。
【0033】
「反応性」とは、液体と混合されて水和前駆物質を形成する場合に、前駆物質の硬化に関連して助触媒の存在下でPCA材料への変換を受けるリン酸カルシウムの能力を言及するために本明細書中で使用される。好ましいACPは、実質的に均質なPCA材料へと完全に変換する能力、実質的に均質なPCA材料へと硬化を伴って迅速に変換する能力、実質的に均質なPCA材料へと別の方法において不活性化合物を伴って変換を受ける能力および/または実質的に均質なPCA材料へと変換する能力によって特徴付けられる。このACPが第2のリン酸カルシウムと反応した場合、この「変換」はACPおよび第2のリン酸カルシウムの両方の変換を包含し得る。硬化の程度および硬化プロセスの速度論はまた、反応性の重要な要素である。幾つかのACPは、他のものよりも反応性である。ACPは、それが弱い助触媒(例えば、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD))の存在下で変換およびPCA物質への硬化を受ける場合に、「非常に反応性である(高度に反応性である)」と考えられる。好ましい非常に反応性であるAPCは、弱く促進するDCPDの存在下の水(37℃)中で12時間未満にて、硬化したPCA物質を生成し、硬化は、約1〜5時間、理想的には10分間〜30分間で実質的に完結する。
【0034】
(リン酸カルシウム材料)
本発明のリン酸カルシウム成分は、当該分野で公知である任意の生体適合性リン酸カルシウム材料であり得る。リン酸カルシウム材料は、種々の方法のうちのいずれかを用いかつ任意の適切な出発物質を使用して生成され得る。例えば、リン酸カルシウム材料は、反応物質としてのアモルファスアパタイトリン酸カルシウムの組合せ、助触媒および水性流体を使用して硬化ペーストを形成に生成され得る。あるいは、このリン酸カルシウム材料は、結晶性ヒドロキシアパタイト固体を形成するための結晶性リン酸カルシウム反応物質の固体状態における酸塩基反応によって生成され得る。リン酸カルシウムマトリクス材料を生成するための方法は当該分野で公知である。
【0035】
(結晶性が乏しいアパタイト(PCA)リン酸カルシウム)
1つの実施形態において、リン酸カルシウム物質は結晶性が乏しいアパタイト(PCA)リン酸カルシウムである。PCA材料は、米国特許出願第08/650,764号および米国特許第5,650,176号(これらの双方とも本明細書中で参考としてそれらの全体が援用される)に記載されている。この材料は、「Delivery Vehicle」、「Conversion of Amorphous Calcium Phosphate to Form a Novel Bioceramic」、「Orthopeic and Dental Ceramic Imprants」および「Bioactive Ceramic Composites」(これらのうちの各々は1997年10月16日に出願され、そして、ETEX Corporation(Cambridge,MA)に譲渡された)と題される関連出願の組によっても記載される。これらの関連出願の各々における開示の広さを考慮して、このPCA材料の詳細をここでは長く語らない。この特性の概要は末尾にある。
【0036】
PCA材料は、生体吸収性およびその最小限の結晶性によって特徴付けられる。この結晶性特性は天然の骨と実質的に同一である。PCA材料はまた、生体適合性でありかつその宿主とって有害でない。
【0037】
このPCA材料は、ペースト形態またはパテ形態で(すなわち、水和前駆物質)で患者に移植され得る。均一なマクロポア性リン酸カルシウムを生成する本発明の反応は、身体外で開始され得、そして室温でゆっくりと進行し、この物質が外科的部位に適用される前に「セットアップ」されて不安定になる可能性は最小化される。この反応は、生理学的条件(すなわち、体温および体内の圧力)下で有意に加速しそしてこの物質は適切な位置で硬化する。この特徴は得意に外科的な場面において有用であり、ここで、移植位置にこのデバイスをあつらえて適合することが代表的には必要とされる。例えば、この発泡剤および生体活性因子を含有するPCAペーストは破損部位に充填するために塗布され得そして使用され得る。
【0038】
あるいは、このPCA材料は体外で事前に硬化され得、所望の生体活性因子および発泡剤を充填され得、そしてその後に移植される。このアプローチはあつらえの形状が必須ではなくかつ多くの移植物が所望されるような状況において有用である。
【0039】
一般的に、本発明の形成反応は外科的部位に適用された後に完結する。この材料は、代表的には、生理条件下で、5時間未満で硬化し、そして約1時間〜約5時間以内で実質的に硬化する。好ましくは、この材料は、約10〜30分間で実質的に硬化する。このPCA材料の粘稠度および成形性、ならびにこの形成反応の速度は、少数の簡単なパラメーターを改変することによって治療的な必要性に従って改変され得る(例えば、Leeらに対して与えられた米国特許第6,027,742号(これは、本明細書中でその全体が参考として援用される)を参照のこと)。
【0040】
PCA材料を生成する変換反応は、乾燥前駆物質成分の混合物に蒸留水を添加して嵩高に水和した前駆物質をペースト形態またはパテ形態で形成することによって開始され得る。他の水性物質(例えば、緩衝液、生理食塩水、血清または組織培養培地)が蒸留水に代わって使用され得る。他の実施形態において、十分な水を前駆物質粉末に添加してペースト(他の本発明の成分が添加した場合にこれは、18ゲージ針を用いて容易に注射可能である)を形成し得る。最も頻繁には、得られた生体吸収性リン酸カルシウム物質は、ヒドロキシアパタイトについて理想的な化学量論的な値であるリン酸に対するカルシウムの比の約1.67と比較して1.5未満であるときに「カルシウム欠乏」である。
【0041】
適切なPCA材料はPCA前駆物質を併用し、加減した量の水と水和し(この結果、ペーストまたはパテが形成される)、そしてPCA材料へと硬化することを可能にすることによって同定され得る。所望され得る前駆物質が、5時間未満および好ましくは10分間〜30分間以内で体温または体温あたりで湿潤環境において硬化可能である。次いで、このように硬化する成分は、試験動物の筋肉内または皮下に配置され得、生体吸収性について評価され得る。所望される材料は、1〜5gのペレットとして移植された場合に、少なくとも80%が1年以内に溶解する。好ましくは、この材料は完全に吸収される。一般的に、皮下部位における数グラム量の材料の吸収を試験することはずっと容易である。
【0042】
PCA材料は、少なくとも1つのアモルファス型リン酸カルシウム(ACP)前駆物質を使用する反応において形成され得、そして、好ましくは、活性化ACPまたは反応性ACPを使用する(例えば、PCT公開番号WO98/16209;実施例1〜4を参照のこと)。幾つかの例において、この反応は、前駆体ACPのみを使用し、この前駆PCAは部分的または全体的に制御された様式でPCA材料に変換され得る。また、非関与型助触媒が、活性化ACPをPCA材料に変換することを促進するために使用され得る。いずれにしても、体外で開始され得、ペースト様の構成で実施され得、そして硬化リン酸カルシウム生成物を生じるに誘導することを37℃で顕著に加速する反応が非常に好ましい。
【0043】
PCA材料へACPを変化することは、水の存在下で促進され得る。一般的に、このACPは、粉末として提供され、そして任意の他の反応物質(例えば、第2のリン酸カルシウム)と併用され、そして、このACPは限定された量の水に曝され、その結果、ペーストまたはパテが形成される。次いで、この水和した前駆物質が硬化し、そしてこの硬化はPCA物質の形成が伴う。このPCAリン酸カルシウムへのACPの変換は、予測可能に硬化しそして歯科用途、整形外科用途、または他の治療用途における有用性を有しているペーストまたはパテとしての制御された様式で進行する。
【0044】
アモルファス型リン酸カルシウムを単独の前駆物質として使用して再吸収性PCA材料を生成する場合、高度の結晶性のヒドロキシアパタイトにACPが変換する自然の傾向を制御することが重要である。一方、変換の時間経過は、外科的に有用性を十分持つのに十分迅速であるべきである。1つのアプローチは、結晶形成のインヒビターを含有する前駆体ACPを結晶形成のインヒビターを含有しないACP(例えば、WO98/16209;実施例1を参照のこと)と共に併用することである。この反応物質は、適切な粒径でかつ過剰量のインヒビター含有ACPと乾燥状態で混合され得る。次いで、この反応物質は、水の添加によって水和され得、その後温度が上昇し得(例えば、体内に導入した後に生じる)、これらの反応物質をPCA材料へと変換し得る。制御された変換の他の方法は、触媒の使用を含む。
【0045】
(結晶性ヒドロキシアパタイト)
第2の実施形態において、このリン酸カルシウム材料は、結晶性ヒドロキシアパタイト(HA)である。結晶性ヒドロキシアパタイトは、例えば、BrawnおよびChowに与えられた米国特許再審査番号第33,221号および同第33,161号(これらの両方ともが本明細書中で参考として援用される)において記載されている。BorwnおよびChowの特許は、同じリン酸カルシウム組成物に基づいてリン酸カルシウムの再無機化組成物および微細な結晶性で非セラミック性の徐々に溶解するヒドロキシアパタイトキャリア材料の調製を教示する。類似のリン酸カルシウム系(リン酸四カルシウム(TTCP)およびリン酸一カルシウム(MCP)またはその一水和物形態(MCPM)からなる)は、Constantzらによって米国特許番号第5,053,212号および同第5,129,905号(これらの両方ともは本明細書中で参考として援用される)において記載されている。この実施形態において、このリン酸カルシウム材料は、結晶性ヒドロキシアパタイト固体を形成するための結晶性リン酸カルシウム反応物質の固体状態での酸塩基反応によって生成される。
【0046】
結晶性HA材料(通常はダライト(dahllite)として呼ばれる)は、これらが流動性を有し成形可能でありそしてインサイチュでの硬化が可能であるように調製され得る(Constantzに与えられた米国特許番号第5,962,028号を参照のこと)。これらのHA材料(通常は炭酸化ヒドロキシアパタイトとして呼ばれる)は、湿潤反応物質と乾燥反応物質とを合わせて実質的に均一な混合物を提供し、この混合物を適切に成形し、そしてこの混合物を硬化させることによって形成され得る。あるいは前駆物質反応混合物は、外科的な部位に投与されそしてインサイチュでの硬化および/または成形がなされ得る。硬化の間、この混合物は、固体でありかつ本質的にモノリシックなアパタイト型構造へと結晶化する。
【0047】
これらの反応物質は、一般に、結合していない水を実質的に含まないリン酸供給源、アルカリ土類金属(特に、カルシウム)の供給源、必要に応じて結晶核(特に、ヒドロキシアパタイトまたはリン酸カルシウム結晶)、炭酸カルシウム、および種々の溶質を有し得る生理学的に受容可能な沢滑剤(例えば、水)からなる。乾燥成分は混合物として事前に調製され得、その後、実質的に一様な混合が生じる条件下で液体成分として混合され得る。
【0048】
リン酸供給源は、部分的に中和(特に、一塩基性リン酸カルシウムのとして第1プロトンの完全な中和までおよび完全な中和を含む)された任意のリン酸である。あるいは、またはさらに、これは、おそらく結晶形態のオルトリン酸(これは、結合していな水を実質的には含まない)からなり得る。カルシウム供給源は、一般に、対イオン(例えば、炭酸塩、リン酸塩など)、特にリン酸カルシウムとリン酸の二重の供給源(例えば、リン酸四カルシウムまたはリン酸三カルシウム)を含む。
【0049】
種々の乾燥成分は、湿潤性の成分の添加に先立って合わせられ得る。混合することは、この成分を合わせ、かつ成分間の反応の程度を調製するのに使用され得る。乾燥成分のいずれかまたはすべては、混合の開始前または機械的混合の完結する前に添加され得る。混合の後に、この混合物は、鎮静状態を保ちつつ徐冷され、その後、混合物が硬化する長い期間が続く。
【0050】
(発泡剤)
本発明は、生理学的条件下(すなわち、投与後)で「自己顆粒化する」かまたは硬化したマクロ顆粒もしくはマクロ粒子に分散するリン酸カルシウムマトリックスまたは足場材料を生成するための新規のプロセスを提供する。このリン酸カルシウム材料は、当該分野で公知の生体適合性のリン酸カルシウム材料(例えば、上記のPCAリン酸カルシウムおよび結晶性ヒドロキシアパタイト材料)であり得る。驚くべきことに、本発明者らは、これらのリン酸カルシウム材料に対する発泡剤の添加によって、この材料の生物学的特性、化学的特性、および力学的特性が実質的に改変され、それによって、その治療的な有用性を顕著に増強することを発見した。本発明の発泡剤は、生理学的温度および/または圧力での気体の泡立ちまたは遊離を生じる任意の薬学的受容可能な物質であり得る。
【0051】
播種された組成物と共に使用するためのリン酸カルシウム材料を生成するために現在利用可能な方法は全て、シリンジで投与するための生成または調製の間の顆粒形成に起因して制限される注入可能性を含む特定の本来的な障害が備わっている。生物学的物質が接着する加工前のリン酸カルシウム顆粒は、炎症反応の誘発を回避するために大きくなければならない(理想的には、100μm〜1000μm)。しかし、このような大きい加工前の顆粒は、経皮的注射のために必要とされる小さなゲージ針を介して容易に注射できない。さらに、これらの顆粒は、代表的には、操作または適用することが難しくそしてその多くは顆粒を本質的に非吸収性にする焼結プロセスによって生成され得る。さらに、この活性因子は、材料全体にわたって一様に組み込まれるまたは分散されるというよりも、表面コーティングを生じる予め形成された顆粒を用いて混合されるのみであり得る。
【0052】
本発明の重要な局面において、外科的な状況における本発明の生体セラミック材料を使用する容易さは、当該分野で公知である他の骨置換複合材料よりも顕著に改善されている。驚くべきことに、発泡剤が、特定の条件(すなわち、生理学的温度および/または生理学的な圧力)の下においてこの組成物の他の成分(例えば、リン酸カルシウム材料および任意の補充材料)に添加されると気体が発泡するかまたは泡立つことを生じさせる。この泡立ちまたは発泡は、インビボで注射または移植したときにリン酸カルシウムの顆粒化および分散を誘導する。硬化および/または合着反応が進行するにつれて、顆粒化は同時に生じてそしてこの活性因子(これは、他の成分と混合されるかまたは投与直前にこの混合物に添加され得る)は、個々の顆粒の体積全体に亘って一様に分散する。
【0053】
発泡剤は、モノリシックなリン酸カルシウム塊の形成を防止するのに適切な量で添加され得る。この発泡剤は、広範な種々のリン酸カルシウムおよび他のカルシウム含有材料またはリン含有材料とすばやくそして完全に反応し、均一な注入可能送達ビヒクルを提供する。特定のリン酸カルシウム材料に依存して、発泡剤は、硬化プロセスまたはセメントプロセスを大いに妨げ、比較的均一な顆粒を形成するが、この発泡剤が、リン酸カルシウムセメント材料を「非反応性」とする程度にまで妨げないように選択される。発泡剤の添加により、実質的な顆粒化が、インビボでの注入または移植の後のみに生じる。結果として、顆粒化は、注入または移植前の、リン酸カルシウム材料の調製および/またはセメント材料の形成の間に生じない。発泡剤の存在下で形成される顆粒は、炎症反応を防止するのに十分大きいが(代表的に、30μmよりも大きい)、十分な表面積 対 容積の比を提供するのに十分小さい。大きな表面積 対 容積の比は、新たな骨が再形成されることが理由で、リン酸カルシウム材料の迅速な吸収を可能にする。大きな表面積はまた、生体活性因子の放出を促進しつつ、骨誘導に必要とされる適切な期間の間、手術部位でその薬剤をなおも維持する。さらに、大きな表面積 対 容積の比は、細胞外骨マトリクスの分泌のための、マトリクス中への細胞移動および浸潤を促進する。本発明の方法および組成物を用いてインビボで形成される顆粒は、1〜2000μmの範囲であり、好ましくは、30〜1000μmの範囲であり、より好ましくは、30〜500μmの範囲であり、そして最も好ましくは、50〜100μmの範囲である。
【0054】
1つの実施形態において、発泡剤は、水和したリン酸カルシウム材料中に溶解される気体である。この気体は、加圧下で(すなわち、この複合材料を、加圧雰囲気の気体(しかし、接合反応において不活性である)に供することにより、溶解され得る。次いで、この気体は、上昇した温度による気体の溶解度の減少に起因して、生理学的温度への曝露により(すなわち、注入または移植により)、遊離される。これらの環境下で、気体の溶解およびその後の顆粒形成は、インビボでの硬化の間にのみ生じ、投与前には生じない。顆粒形成は、室温にてシリンジ中で生じることが望ましくないので、このことは特に魅力的である。例示のみの目的で、適切な気体としては、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンが挙げられる。
【0055】
別の実施形態において、発泡剤は、生理学的温度で蒸発する揮発性液体である。
【0056】
さらに別の実施形態において、発泡剤は、溶解の際に気体を遊離する固体材料である。例えば、炭酸水素ナトリウムは、二酸化炭素ガスを発生する(なぜならば、炭酸水素ナトリウムは、不安定なカルボン酸中間体に変換され、その後、二酸化炭素および水を発生するからである)。
【0057】
(生体活性因子)
新たな骨の成長を促進または刺激する任意の生体活性因子は、本発明のリン酸カルシウム材料から送達され得る。骨形成タンパク質(例えば、組換えヒトBMP−2)、脱灰骨マトリクス、トランスフォーミング増殖薬剤(例えば、TGF−β)、および骨の形成を誘導することが公知の種々の他の有機種のような骨誘導材料が、特に目的となる。あるいはまたは加えて、骨化を最適化するために、この送達ビヒクルは、骨形成細胞と共に接種され得る。
【0058】
(骨誘導性タンパク質)
生体活性因子は、好ましくは、トランスフォーミング増殖薬剤(TGF−β)ファミリーのタンパク質として公知のタンパク質のファミリーから選択され得る。このタンパク質としては、アクチビン、インヒビン、および骨形成タンパク質(BMP)が挙げられる。最も好ましくは、活性因子としては、BPMとして一般的に公知のタンパク質のサブクラスから選択される少なくとも1つのタンパク質が挙げられる。このようなタンパク質は、骨化活性ならびに他の増殖および分化型活性を有することが開示されている。これらのBMPとしては、BMPタンパク質BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、およびBMP−7(これらは、例えば、米国特許第5,108,922号;同第5,013,649号;同第5,116,738号;同第5,106,748号;同第5,187,076号;および同第5,141,905号に開示される);BMP−8(PCT公開WO91/18098に開示される);およびBMP−9(PCT公開WO93/00432に開示される)、BMP−10(PCT公開WO94/26893に開示される);BMP−11(PCT出願WO94/26892に開示される)、またはBMP−12もしくはBMP−13(PCT出願WO95/16035に開示される);BMP−15(米国特許第5,635,372号に開示される);またはBMP−16(米国特許第5,965,403号に開示される)が挙げられる。本発明において有用であり得る他のTGF−βタンパク質としては、Vgr−2(Jonesら、Mol.Endocrinal.6:1961−1968(1992)、ならびに任意の他の増殖および分化薬剤(GDF)が挙げられる。これらとしては、PCT公開WO94/15965;WO94/15949;WO95/01801;WO95/01802;WO94/21681;WO94/15966;WO95/10539;WO96/01845;WO96/02559などに記載される薬剤が挙げられる。WO94/01557に開示されるBIP;日本国公開番号7−250688に開示されるHP00269;およびPCT出願WO93/16099に開示されるMP52もまた、本発明において有用であり得る。上記出願全ての開示は、本明細書により参考として援用される。本発明において使用するのに好ましいBMPのサブセットとしては、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−10、BMP−12、およびBMP−13が挙げられる。活性因子は、最も好ましくは、BMP−2であり、その配列は、米国特許第5,013,649号に開示されている(この特許は、本明細書により参考として援用される)。当該分野で公知の他のBMPおよびTGF−βタンパク質もまた使用され得る。
【0059】
活性因子は、組換え生成されるか、またはタンパク質組成物から精製され得る。活性因子は、BMPのようなTGF−βまたは他のダイマータンパク質である場合、ホモダイマーであり得るか、または他のBMP(例えば、BMP−2およびBMP−6の各々1つのモノマーで構成されるヘテロダイマー)またはTGF−βスーパーファミリーの他のメンバー(例えば、アクチビン、インヒビン、およびTGF−β1)(例えば、BMPおよびTGF−βスーパーファミリーの関連するメンバーの各々1つのモノマーで構成されるヘテロダイマー)とのヘテロダイマーであり得る。このようなヘテロダイマータンパク質の例は、例えば、公開されたPCT特許出願WO93/09229(この明細書は、本明細書により参考として援用される)に記載される。
【0060】
活性因子はさらに、さらなる薬剤(例えば、Hedgehogタンパク質、Frazzledタンパク質、Chordinタンパク質、Nogginタンパク質、Cerberusタンパク質、およびFollistatinタンパク質)をさらに含み得る。これらのタンパク質のファミリーは、一般的に、Sasaiら、Cell 79:779−790(1994)(Chordin);PCT特許公開WO94/05800(Noggin);およびFukuiら、Devel.Biol.159:131−139(1993)(Follistatin)に記載される。Hedgehogタンパク質は、WO96/16668;WO96/17924;およびWO95/18856に記載される。Frazzledファミリーのタンパク質は、Frizzledとして公知のレセプターファミリータンパク質の細胞外結合ドメインに高い相同性を有する、近年発見されたタンパク質ファミリーである。Frizzledファミリーの遺伝子およびタンパク質は、Wangら、J.Biol.Chem.271:4468−4476(1996)に記載される。活性因子としてはまた、他の可溶性レセプター(例えば、PCT特許公開WO95/07982に開示される切断型可溶性レセプター)が挙げられ得る。WO95/07982の教示から、当業者は、切断型可溶性レセプターが、多くの他のレセプタータンパク質のために調製され得ることを認識する。このようなものもまた、本発明に包含される。上記刊行物は、本明細書により参考として援用される。
【0061】
本明細書中で有用な活性因子の量は、存在する細胞または浸潤前駆体または他の細胞の増加した骨形成活性を刺激するのに有効な量であり、そして処置される不全の大きさおよび性質、ならびに用いられるキャリアに依存する。一般的に、送達されるタンパク質の量は、約0.1〜約100mgの範囲であり;好ましくは、約1〜約100mgの範囲であり;そして最も好ましくは、約10〜約80mgの範囲である。
【0062】
(骨形成細胞)
ひとつの実施形態において、骨化を最適化するために、リン酸カルシウム組成物は、骨形成細胞(例えば、前駆体細胞、幹細胞、および/または骨芽細胞)と共に接種され得る。このことは、リン酸カルシウム組成物を、患者自身の骨形成細胞の供給源と接触させて配置することにより、最も早く達成される。このような細胞は、骨関連組織、血液、または液体(骨または骨材料または領域(骨膜、癌性骨または骨髄を含む)と接触された外因性液体を含む)において見出され得る。骨への導入が骨膜の破損および/または出血により達成されるねじおよびピンのようなデバイスと共に使用される場合、さらなる接種は必要とされない。皮質骨のみを妨害するプレートについては、このデバイスと接触する骨膜病変の誘導は、推奨される。なお他の実施形態において、移植部位の皮質骨の一部を除去することにより、骨内にシートを外科的に調製することが有用である。患者から収集される骨形成細胞は、移植片に導入され、骨化を増強する。非自己骨細胞の使用はまた、所望される量の骨再生が、骨形成細胞の宿主拒絶の前に生じる場合、本発明の範囲内である。従って、一次供給源から獲得される細胞または組織、細胞株または細胞の貯蔵所(bank)は全て、特定の実施形態において有用であり得る。Leeらに対する米国特許第6,132,463号(これは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0063】
(補充材料)
本発明の複合材料は、リン酸カルシウム材料、発泡剤、および生体活性因子と、選択された補充材料を合わせることにより調製され得る。リン酸カルシウムは、増強材料、マトリクス、またはその両方として作用し得る。その最初の水和形態のリン酸カルシウム材料は、代表的に、約6〜7のpHを維持し、従って、有害な影響を伴わずに広範な範囲の添加剤と適合する。補充材料は、リン酸カルシウムおよび他の成分とのその適合性、ならびに特定の治療目的に望ましい特性(生物学的、化学的、または機械的)を複合材料に与えるその能力に基づき選択される。例えば、補充材料は、張力および硬度、増加した粉砕耐性を改善するよう、画像化能力を提供するよう、ならびに/または流動特性およびリン酸カルシウムの配置時間を変更するよう選択され得る。
【0064】
補充材料は、予想される治療用途に依存して、種々の量および種々の物理的形態でリン酸カルシウム組成物に添加され得る。例えば、補充材料は、固体構造の形態(例えば、スポンジ、メッシュ、フィルム、繊維、ゲル、フィラメント、または粒子(微粒子およびナノ粒子を含む)の形態であり得る。補充材料自体は、合成性であり得る。補充材料は、粒状または液体状の添加物またはドーピング剤であり得、吸収可能なリン酸カルシウムとただちに混合される。PCAリン酸カルシウム材料とただちに混合される場合、補充材料は、微視的なレベルで、セメント物と干渉し得る。これは、セメント粒子の一部を補助材料でコーティングすることにより生じ得、弱い接合反応が、コーティングされた粒子と生じる。あるいは、この液体または固体は、反応種間の物理的分離を引き起こし得、接着形成の限局的な領域(または顆粒)を生じる。補助材料は、リン酸カルシウムのためのマトリクスとして作用し得、これはマトリクス中に包埋または分散される。あるいは、リン酸カルシウムは、補助材料のためのマトリクスとして作用し得、その中に分散される。補助材料は、リン酸カルシウム本体へのコーティングとして(例えば、吸収時間を遅らせるかそうでなければバイオセラミック材料特性に影響を及ぼすための構築後コーティング)として適用され得る。最後に、補充材料は、リン酸カルシウム組成物とコーティングされ得る。
【0065】
補充材料は、望ましくは、生体適合性である(すなわち、宿主に導入される場合に、この材料により有害な反応が誘導されない)。多くの例において、補充材料はまた、生体吸収性であることが望ましい。補充材料は、カルシウム、リン、またはリン酸カルシウムに対する親和性を有し得、リン酸カルシウム/補充材料接触面の強度を増強する。この親和性は、特異的であり得るか、または非特異的な反応により媒介され得る。例示のみの目的で、複合材料におけるマトリクスとしての使用のための適切な生体適合性ポリマーとしては、コラーゲン、グリコーゲン、キチン、セルロース、デンプン、ケラチン、シルク、核酸、脱灰骨マトリクス、誘導体化ヒアルロン酸、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリグルコール酸、ポリ乳酸、およびそれらのコポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。特に、αZヒドロキシカルボン酸(例えば、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、およびポリヒドロキシブチレート(PHB)、ならびにポリアンヒドリド(例えば、ポリ(アンヒドリド−コ−イミド))ならびにそれらのコポリマー)は、生体腐食性であることが公知であり、そして本発明における使用に適切である。さらに、生体活性ガラス組成物(例えば、SiO、NaO、CaO、P、Al、および/またはCaFを含む組成物)が、本発明のリン酸カルシウム組成物と組み合わせて使用され得る。他の有用な生体腐食性ポリマーとしては、多糖類、ペプチド、および脂肪酸が挙げられ得る。
【0066】
生体腐食性ポリマーは、生体吸収性ハードウェア(例えば、限定されないが、骨部位での移植のための、中間ネイル(intermedulary nail)、ピン、ネジ、プレート、およびアンカー)の調製において使用され得る。生体吸収性繊維は、当該分野で公知の合成設計および構築の原理に従って、リン酸カルシウムと反応するウィスカーの形態であり得る。このようなハードウェアは、リン酸カルシウムおよびポリマーの粉末粒状混合物を加圧することにより形成され得る。あるいは、リン酸カルシウムマトリクスは、生体分解性自己強化材料(Clin.Mater.10:29−34(1992))の構築のために、Tormalaら(本明細書中で参考として援用される)により記載されるものと類似のPLLA繊維を用いて、PLLA繊維により強化され得る。
【0067】
生体吸収性ポリマーはまた、負荷のかかった状況での使用のための骨グルーまたはパテの調製において使用され得る。補充材料は、骨グルーの圧縮性および負荷保有特性を増加するために複合材料に添加され得る。特に、炭素繊維または他の強化繊維が、複合材料に添加され得る。繊維強化骨置換グルーの製造において、繊維をプラズマエッチングして、リン酸カルシウム/繊維の接触面の質および強度を改善することが有利であり得る。リン酸カルシウムはまた、37℃で硬化されるか、粉砕されるか、そうでなければ断片化され得、そして公知の結合剤(例えば、骨グルーセメント、充填剤、エポキシ、他のリン酸カルシウム、またはゲル(例えば、限定されないが、硫酸カルシウム、アルギネート、コラーゲン、または市販品(例えば、Endobone(Merck)、Hapset(Lifecore Biomedical)、SRS(登録商標)(Norian)、Bonesource(登録商標)(Leibinger)、Collograft(登録商標)(Zimmer)、Osteograf(登録商標)(CereMed)、およびSimplex(登録商標)(Howmedica))))と混合され得る。硬化されたリン酸カルシウムが結合剤材料中で分散される適用について、最も頻繁には、結合剤は、当該分野で公知の方法により調製され、そしてほぼ等量で粒状リン酸カルシウムと混合されるが、実際の比率は、所望の粘稠性、作用性、および接着性の組成物を製造するために、当該分野で公知の様式で変更される。
【0068】
さらに別の実施形態において、代表的にはポリエステルから調製される網目状縫合糸は、本発明のリン酸カルシウム組成物でコーティングされ、それらの生体適合性が改善され得る。コーティングされた縫合糸は、リン酸カルシウム材料を含むスラリー中にその縫合糸を浸漬することにより調製され得る。リン酸カルシウムコーティングに対する縫合糸の親和性は、縫合糸、リン酸カルシウム粒子のいずれか、またはその両方の表面処理により改善され得る。表面処理としては、プラズマエッチングおよび/または化学的グラフティグが挙げられる。
【0069】
他の実施形態において、リン酸カルシウム材料および非吸収性または吸収性が乏しい材料を含む複合材料が提供される。適切な非腐食性または乏しい腐食性の材料としては、デキストラン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、炭素繊維、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、バイオグラス、および骨グルーまたはパテにおける使用について先に列挙された化合物が挙げられる。
【0070】
別の用途は、骨自体に永久に埋め込まれる有用材料(例えば、ピンまたは強化メッシュ)である。この材料は、天然の骨への安定な付着のためのアンカーとして作用する。これは、特に、骨への靭帯および腱の付着において有用である。生体吸収性かつ骨化リン酸カルシウムおよび適切な非吸収性ハードウェアを含む材料は、骨に配置され、そしてさらなるリン酸カルシウム材料または複合材料で、骨グルー処方物中にさらに固定される。次いで、ハードウェアは、リン酸カルシウム材料の再骨化の後に、骨に埋め込まれる。
【0071】
本発明のさらに別の実施形態において、組成物は、リン酸カルシウムまたは複合材料を、複合材料の吸収特性、配置時間、および/または流動特性を変更する添加物とブレンドすることにより調製され得る。例えば、ケイ素油または他の潤滑ポリマーまたは液体が、シリンジによる宿主への送達についての複合材料の流動特性を改善するために、複合材料に添加され得る。潤滑剤は、好ましくは、生体適合性であり、そしてインビボでのリン酸カルシウム材料の固化の後に骨置換材料合成物から迅速に浸出され得る。例示のみの目的として、適切な潤滑剤としては、ポリマーワックス、脂質、および脂肪酸が挙げられる。潤滑剤は、約0.1〜約30重量%の濃度で使用され得る。
【0072】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を詳述する。その実施において、これらの記載を考慮して、多くの改変および変更が、当業者に想起されることが考えられる。これらの改変および変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることと考えられる。これらの実施例は、いかなる様式においても、本発明を限定しない。
【0073】
本出願を通じて引用される全ての刊行物、特許、および公開された特許出願の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【実施例】
【0074】
これらの実施例において使用される全ての化合物は、薬学的等級である。リン酸カルシウム成分は、Etex Corporation,38 Sydney Street,
Cambridge,MA 02139によってCEREDEX(登録商標)の商品名で販売されている市販の骨置換材料であった。使用される生体活性因子は、組換えヒト骨形成タンパク質−2(rhBMP−2)であった。BMP−2の製造および特徴付けは、米国特許第5,013,649号に詳細に記載されている。
【0075】
(実施例1:リン酸カルシウム組成物の調製)
結晶性が乏しいアモルファスリン酸カルシウムアパタイトペーストを、20重量%の炭酸水素ナトリウムをアモルファスリン酸カルシウム(ACP)粉末前駆体に添加したことを除いて、米国特許第5,650,176号に記載されるように調製した。次いで、このACPを、限定量の水で水和し、ペーストを形成した。このペーストは、室温で20〜30分間利用可能であった。
【0076】
(実施例2:インビトロインプラント分析)
リン酸カルシウム組成物を、実施例1に記載されるように調製した。次いで、水和ペーストを、体温の生理食塩水浴に注入した。リン酸カルシウム材料は、擬似インビボ条件下(すなわち、37℃)で、巨大顆粒へと硬化された
(実施例3:筋内注射)
20重量%の炭酸水素ナトリウムを含有する第1のリン酸カルシウム組成物を、実施例1に記載されるように調製した。第2のリン酸カルシウムペーストを、29重量%のポリエチレングリコールを、アモルファスリン酸カルシウム(ACP)粉末前駆体に添加したことを除いて、米国特許第5,650,176号に記載されるように調製した。次いで、2つのACP組成物を、限定量の水で水和し、2つのペーストを形成した。この両方は、注射数時間後の外移植の際に、約100〜1000ミクロンの巨大顆粒を形成した。さらに(データは示さず)、顆粒形成は、20μg rhBMP−2の注射後に生じ、リン酸カルシウムモノリシック硬化セメントまたは自己顆粒化リン酸カルシウム組成物のいずれかで送達された。巨大顆粒(リン酸カルシウム)組成物中で送達されたrhBMP−2を使用して、21日目に誘導された骨の量は、コントロール材料(モノリシックセメント)よりも有意に大きかった;データは示さず。さらに、巨大顆粒リン酸カルシウム材料を使用して送達されたrhBMP−2の局所的な停留は、コントロール材料より有意に小さかった(すなわち、約30%対75%;データは示さず)。本発明の巨大顆粒組成物は、マトリクスの破骨細胞再吸収に利用可能な表面領域の増加に起因して、骨誘導性タンパク質のより速い放出を提供する。次に、このマトリクス再吸収は、リン酸カルシウム材料から可溶性rhBMP−2を放出する。
【0077】
(実施例4:腓骨内截骨術的注入)
20重量%の炭酸水素ナトリウムを含有するリン酸カルシウム組成物を、実施例1に記載されるように調製した。20μgのrhBMP−2を、得られたACP組成物に添加した。次いで、このACP組成物を、限定量の水で水和し、ペーストを形成した。0.5ccの水和された材料を、非ヒト霊長類の腓側截骨術に注射した。巨大顆粒の顆粒形成および分散は、1日後明らかであった。対照的に、注射1週間後、炭酸水素ナトリウム(コントロール)を含まない標準的なリン酸カルシウム材料は、固体モノリシック塊に残された(データは示さず)。
【0078】
(実施例5:非ヒト霊長類の腓側截骨術)
20重量%の炭酸水素ナトリウムを含有するリン酸カルシウム組成物(rhBMP−2/NaBSM20)を、実施例4に記載されるように調製した。この研究の目的は、成体オスカニクイザルでの截骨術の治癒を加速するために、手術の7日後に投与されたrhBMP−2/NaBSM20の単回経皮注射の効率を決定することであった。これらの結果を、注射が手術の3時間後に行われた以前の研究と比較した(データは示さず)。小さな骨髄内ピンで安定化された左右対称の腓側截骨術を、12匹の動物において作成した。6匹の動物において、1つの截骨術に、截骨術の作成7日後、1mlのNaBSM20当たり1.5mg/mLのrhBMP−2を0.5mL注射した。反対側の腓側截骨術を、外科的コントロールして処置しないまま残した。残りの6匹の動物において、1つの截骨術に、キャリアコントロールとして用いるために、rhBMP−2を有さない緩衝液/NaBSM20を注射した。また、反対側の腓側截骨術は、非処置外科的コントロールとして使用した。
【0079】
手術後、1週間の間隔で取られた連続X線写真は、注射1週間後に、rhBMP−2/NaBSM処置された截骨術において、鉱化骨形成を明らかにした。注射後2週間で、かなりの、X線で可視の新規骨形成が存在した。截骨術をわたった新規仮骨の架橋は、処置3〜5週間後(截骨術の4〜6週間後)に存在した。截骨術を、処置後7週間(截骨術の8週間後)で、X線撮影的に回復した。この時点で、残存NaBSMキャリア材料の証拠は、なかった。反対側のコントロールにおける新規骨形成の証拠は、注射の約3〜4週間後(截骨術の4〜5週間後)まで、現れなかった。rhBMP−2/NaBSM処置群からの反対側の外科コントロールにおいて、処置の7週間後(截骨術の8週間後)仮骨の架橋または截骨術回復のX線撮影的証拠はなかった。第2の群の動物における、緩衝液/NaBSM処置コントロールおよび反対側外科的コントロールのX線撮影的出現率は、rhBMP−2/NaBSM処置群における反対側外科的コントロールに類似した。注射7週間後(截骨術の8週間後)に、緩衝液/NaBSM処置された截骨術において、残存キャリアの証拠がなお存在した。
【0080】
截骨術の8週間後での、rhBMP−2/NaBSM20処置された截骨術のねじり機械的強度は、正常骨の強度および剛性(1.58±0.40対1.24±0.26Nm)より有意に大きかった。ねじり強度はまた、反対側外科的コントロール(0.72±0.19Nm)ならびにこの群の緩衝液/Na/BSM20処置截骨術および反対側外科的処置截骨術(0.87±0.29および0.74±0.21Nm)に比べて、この群で有意により大きかった。同じ動物由来の反対側外科的コントロール截骨術と比べた緩衝液/NaBSM20截骨術におけるねじり機械的強度と、rhBMP−2/NaBSM動物の外科的コントロールと比べた緩衝液/NaBSM20截骨術におけるねじり機械的強度との間に有意な相違はなかった。非処置外科的コントロール截骨術は、約14〜16週間後に、正常骨の機械的強度に近づいた。同様の結果を、截骨術剛度について観察した。
【0081】
この研究は、截骨術形成の7日後のrhBMP−2/NaBSM20の注射に応答して、截骨術回復の50%を超える加速を示す。新規骨形成の出現は、以前の研究における、截骨術の3時間後および1日後でのrhBMP−2/NaBSMおよびrhBMP−2/aBSM截骨術において観察されたよりも、すっと速かった。ねじり機械的強度はまた、截骨術の3時間後および1日後処置に比べて、截骨術の7日後に処置された動物でより大きかった。截骨術回復の促進は、処置がこれら2つの時点で投与された場合、約30〜40%であった。予備結果は、促進された截骨術回復は、截骨術形成の2週間後に施与された処置によっても達成され得ることを示す。これらの研究のこれらの結果は、この組み合わせまたはrhBMP−2/NaBSMが、截骨術形成の3時間後と7日後との間に施与される場合、截骨術回復を有意に促進することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨欠損を有する哺乳動物を処置するための組成物であって、該組成物は、生体活性因子としての骨原性タンパク質、キャリアとしてのリン酸カルシウム材料、および有効量の発泡剤を含有する、組成物。

【公開番号】特開2010−207653(P2010−207653A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152516(P2010−152516)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2009−115064(P2009−115064)の分割
【原出願日】平成14年6月6日(2002.6.6)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【出願人】(505265528)イーテックス コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】