説明

骨髄誘導間葉細胞に特異的なモノクローナル抗体

【課題】 骨髄に非常に少ない割合で存在する有用な幹細胞を単離して提供すること。
【解決手段】 1個以上の結合組織型の細胞に分化できる単離されたヒト間葉幹細胞の集団。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、骨髄誘導間葉細胞(すなわち間葉幹細胞)に特異的なモノクローナル抗体の製法およびこの発明の方法により作られるモノクローナル抗体に向けられる。加えて、この発明はこれらの単一特異的抗体を合成し分泌する雑種細胞系すなわちハイブリドーマ、および診断およびもしくは治療目的のためのモノクローナル抗体の使用に向けられる。
【背景技術】
【0002】
骨髄誘導間葉細胞は、骨の中で発見された形成多能性芽細胞であり、環境上の各種の影響に依存して特殊な型の結合組織(すなわち、特に脂肪,疎性,骨性,軟骨質,弾性および繊維結合組織など特殊な要素を支持する組織)のいずれをも分化する能力を有するものと考えられている。これらの細胞は骨髄に非常に少ない度合で通常は存在するけれども、培養つまり試験管内ではこれらの細胞を分離、精製し、数多く複製する方法をこの発明の発明者は発見した。この発明は同一出願中のアメリカ合衆国特許出願の主題である。
【0003】
この発明は骨髄誘導間葉細胞の細胞表面決定群に特異的なモノクローナル抗体に関する。酵素活性、細胞外細胞間質分子、あるいは固有の形態学のような骨髄誘導間葉細胞に特異的なマーカーは現在知られていないので、(骨髄誘導間葉細胞の細胞表面決定群を認識するが造血細胞などの他の細胞については不確かである)この発明のモノクローナル抗体は、骨髄などのような組織標本から得る骨髄誘導間葉細胞を同定し、定量化およびもしくは精製するのに利用できる有効な単一特異性プローブを供給する。
【0004】
連続培養により成長する免疫マウスの脾臓および骨髄腫細胞の融合によるモノクローナル抗体の生産は、例えば、ケーラー他「European Journal of Immunology」Vol.6,PP511−595(1976年)、ゴルファー他「Nature」Vol.226、PP550−552(1977)および「モノクローナル抗体、ハイブリドーマ・生物学的分析の新次元」R.ケンネット、T.マッカーン、K.ベクトール編、プレナムプレス、ニューヨーク、ロンドン(1980)のテキストに記述されており、また、モノクローナル抗体の生産に関するモノクローナル抗体の融合、およびそれに続く単一抗体分泌細胞クローンの分離もよく知られているが、骨髄誘導間葉細胞を選択的に結合し造血細胞や他の密接に関連する細胞を結合しないだけでなく、骨髄誘導間葉幹細胞と骨膜誘導間葉幹細胞とを区別するモノクローナル抗体を合成し分泌することのできる細胞系統はこれまで作られたことがない。特殊なタイプの間葉幹細胞の特殊なタイプのものを選択的に結合するこれら抗体の能力により、これらの抗体は骨髄などの試料にある間葉幹細胞を同定し、定量化およびもしくは精製することのできる優れたプローブにすることが出来る。
【非特許文献1】 ケーラー他「European Journal of Immunology」Vol.6,PP511−595(1976年)
【非特許文献2】 ゴルファー他「Nature」Vol.226、PP550−552(1977)
【非特許文献3】 「モノクローナル抗体、ハイブリドーマ・生物学的分析の新次元」R.ケンネット、T.マッカーン、K.ベクトール編、プレナムプレス、ニューヨーク、ロンドン(1980)
【発明の開示】
【0005】
この発明は骨髄間葉細胞(すなわち間葉幹細胞)に特異的であるモノクローナル抗体を作り、また分泌するハイブリドーマに関する。この抗体は骨髄誘導間葉細胞の細胞表面にある抗原を認識するが、造血細胞の抗原は認識しない。更にこの発明は、この発明のハイブリドーマにより作られるモノクローナル抗体、およびハイブリドーマ並びに特異的モノクローナル抗体を作るのに利用される特殊な方法について向けられる。
【0006】
追加の局面において、この発明は、この発明で作られるモノクローナル抗体を治療およびもしくは診断目的に利用する各種の方法に向けられる。
【0007】
具体的に、本願で特許請求される発明は以下の通りである。
(1)1個以上の結合組織型の細胞に分化できる単離されたヒト間葉幹細胞の集団。
(2)前記ヒト間葉幹細胞がATCCアクセッション番号HB10743であるハイブリドーマ細胞系SH2から産生される抗体に結合するという特性を有する、(1)記載の集団。
(3)前記ヒト間葉幹細胞がATCCアクセッション番号HB10744であるハイブリドーマ細胞系SH3から産生される抗体に結合するという特性を有する、(1)記載の集団。
(4)前記ヒト間葉幹細胞がATCCアクセッション番号HB10745であるハイブリドーマ細胞系SH4から産生される抗体に結合するという特性を有する、(1)記載の集団。
(5)前記(1)記載のヒト間葉幹細胞および薬理許容担体を含有する治療用組成物であって、該ヒト間葉幹細胞が結合組織細胞を産生するための有効量で存在する、治療用組成物。
(6)前記結合組織が軟骨であることを特徴とする、(5)記載の治療用組成物。
(7)前記結合組織が靭帯であることを特徴とする、(5)記載の治療用組成物。
(8)前記結合組織が腱であることを特徴とする、(5)記載の治療用組成物。
(9)前記結合組織が脂肪細胞であることを特徴とする、(5)記載の治療用組成物。
(10)骨髄からヒト間葉幹細胞を単離する方法であって以下の工程:
(a)骨髄細胞を採取すること;
(b)前記骨髄細胞中の単核細胞を赤血球から分離すること;
(c)前記単核細胞を培養皿上の培地中で培養すること;
(d)接着性の細胞を伸展し非接着性の細胞を除くために前記培地を新鮮な培地に交換すること;そして
(e)前記接着性の細胞を前記培養皿から回収すること
を含む、前記方法。
(11)前記ヒト間葉幹細胞の少なくとも一つのモノクローナル抗体への結合性を評価する工程をさらに含む(10)記載の方法であって、
該少なくとも一つのモノクローナル抗体が、
ATCCアクセッション番号HB10743であるハイブリドーマ細胞系SH2;
ATCCアクセッション番号HB10744であるハイブリドーマ細胞系SH3;又は、
ATCCアクセッション番号HB10745であるハイブリドーマ細胞系SH4
から生産される抗体と同じものであることを特徴とする、前記方法。
(12)少なくとも一つのモノクローナル抗体に結合する特性を有する細胞の集団を選択する工程をさらに含む(11)記載の方法であって、
該少なくとも一つのモノクローナル抗体が、
ATCCアクセッション番号HB10743であるハイブリドーマ細胞系SH2;
ATCCアクセッション番号HB10744であるハイブリドーマ細胞系SH3;又は、
ATCCアクセッション番号HB10745であるハイブリドーマ細胞系SH4
から生産される抗体と同じものであることを特徴とする、前記方法。
(13)前記(10)〜(12)に記載の方法を用いて単離されたヒト間葉幹細胞。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
〔発明の詳細な説明〕
この発明は、かなり詳細な過程を通じて、各種の型の結合組織に対する始原細胞が骨髄などの組織から分離され精製され得るということを発見したことに関する。
これらの細胞はこの発明者によって、「骨髄誘導間葉細胞」およびもしくは「間葉幹細胞」として言及される。これに関して、これらの始原間葉細胞は通常は骨髄に非常に微量で存在し、経年変化でこの量が大幅に減少(相対的に若い患者で約1/10,000から年輩の患者では1/1,000,000へと減少)するが、始原あるいは間葉幹細胞は基質に選択的に付着させることによって特異的培地で培養されると、組織から分離出来ることが発見された。前記の通り、この発見は並願中のアメリカ合衆国特許出願の主題である。
加えて、分離精製された骨髄誘導間葉細胞は、特異的培地において有糸分列拡張により不分化の状態で成長出来ることが発見された。これらの細胞は次いで機械的、細胞的あるいは生化学的刺戟を含む数多くの要素によって収穫され、骨、軟骨質および各種その他の結合組織内に分化することが出来る。
その結果、骨髄誘導間葉細胞は、骨芽細胞および軟骨細胞、および多分腱、靭帯などのような多種多様の結合組織に分化する潜在能力を持ち、この潜在能力は分離、および培養の際のいくつかの集団拡張の後も保持されることが確認された。かくして分離され、精製され、大きく増殖され得ることにより、また次いで、骨髄誘導間葉細胞(あるいは間葉幹細胞)を活性化し、骨形成骨芽細胞などのような特異的な型の望ましい結合組織に分化し、骨格および他の結合組織の患者に好ましい非常に有効な治療法が存在する。これらの発見は、また現在の出願と共に並願中の追加のアメリカ合衆国特許出願の主題でもある。
この発明は、前記記載のように分離、精製、培養拡張された骨髄誘導間葉細胞に特異的なモノクローナル抗体の試験管内生産(インビトロ法)、およびモノクローナル抗体並びに関連ハイブリドーマ(すなわちモノクローナル抗体および関連ハイブリドーマを作る融合骨髄腫リンパ球細胞)を診断および治療目的に使用することに向けられる。モノクローナル抗体は、免疫蛍光法など各種の手段を通じて間葉幹細胞を同定し、訂数し、局在化し、分離するだけでなく、各種の薬剤品などを受け渡しすることで利用することが出来る。
A.骨髄誘導間葉細胞の分離および精製
骨髄は長骨の骨髄腔、ある種のハーバース管、および網状骨あるいは海綿質骨の小柱の間に空間を占める軟組織である。骨髄は2個のタイプ、赤タイプ、これはともに生命体のあらゆる骨および成人期の限定された位置(すなわち海綿質骨)に見出され、血球の生産(すなわち造血)およびヘモグロビン(従って赤色)の生産に係るものと、黄色タイプ、これは主として脂肪細胞(従って黄色)および結合組織を構成するものよりなる。
全体として骨髄は、赤血球および白血球細胞、その前躯体、および繊維芽細胞、網状赤血球、脂肪細胞、および「間質」と呼ばれる結合組織網絡を形成する内皮細胞などよりなる1グループの細胞を含む複雑な組織である。間質からの細胞は、造血細胞の分化を細胞表面蛋白質の直接の相互作用および成長因子の分泌によって形態学的に調節し、骨構造の基礎および支持となる。動物モデルを使用する研究は、軟骨質、骨、および他の結合組織細胞内に分化する能力を持つ「前間質」細胞を骨髄が有していると言う考えを提案した。(ブレスフォード,J,N.;「骨および骨髄の骨形成原幹細胞」Clin.Orthop.,240:270,1989)。最近の証拠は、多能性間質幹細胞あるいは間葉幹細胞と呼ばれるこれらの細胞が、活性化に際しいくつかの型の細胞系(つまり骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞等)に発生する能力を持つことを示している。しかし間葉細胞は、各種の他の細胞(つまり赤血球、血小板、好中球、リンパ球、単核細胞、コシモフィルCosimophil、好塩基球、脂肪細胞など)と共に年令とは逆の関係にあってごく微量に存在するだけでなく、それは数多くの化学因子の影響に依存して結合組織の組合せに分化する能力がある。
結果として、発明者は分化の前に骨髄誘導間葉細胞を分離精製し、次いで、骨治療の価値ある用具を作り出す骨髄誘導間葉細胞を培養で拡張する方法を開発した。そのような操作の目的は、潜在的回復性細胞の数を大きく増加させ、これらの細胞を身体の正常な回復能力の方向を変え、およびもしくは強化するために利用することである。これに関して、骨髄誘導間葉細胞は次いで大多数収穫され、結合組織の損傷部分で再生およびもしくは収復のための生体成長を高めあるいは刺戟するため、また続く活性化および分化によって各種の補てつ装置への移植片接着を改善し、造血細胞の生産を高める等のために適用される。
これらの線に沿って、細胞の骨欠損部位への細胞の注入、補てつおよび補てつの移植を伴う細胞の培養等を含み培養拡張精製骨髄誘導間葉細胞を収復あるいは移植等の部位で転移、固定化あるいは活性化させるための各種の手法が発明者により検討されている。かくして分化前に細胞を分離、精製およびその数を大きく拡張することにより、次いで分化の過程を活性制御することにより、培養拡張未分化骨髄誘導間葉細胞は数多くの代謝骨疾病および骨格形成障害において細胞、分子および遺伝的疾病を明らかにするような各種の治療目的のために利用することが出来る。
実施例1で下記により明確に示されるように、この発明で分離精製された骨髄誘導間葉細胞は腰および膝置換手術をする変性関節炎の患者より得られた大腿頭網状骨片の栓塞、および将来の骨髄移植に備えて収穫された骨髄を有する正常なドナーおよび腫瘍の患者から得られた吸引骨髄が誘導された。収穫された骨髄はその収穫された骨髄の源(つまり、骨の断片、周囲の血液など)に依存して数多くの機械的分離方法によって細胞培養分離のために用意されたが、分離方法に含まれる重要なステップは分化なしでの骨髄誘導間葉細胞の成長のみでなく、骨髄誘導間葉細胞のみの培養皿のプラスチックあるいはガラス表面領域への直接付着が出来るような作用薬を含んだ特に調製された培地を使用することであった。ごく微量の骨髄サンプルに存在する望ましい骨髄誘導間葉細胞の選択的付着を可能にする培地を生産することによって、骨髄に存在する間葉幹細胞を他の細胞(つまり赤血球や白血球など)から分離することが出来た。
この点に関して、BGJbを培地(ジブコ社、ニューヨーク州、グランドアイランド)よりなる培地は、検定され選択され牛胎児血清(J.R.サイエンティフィック社、カリフォルニア州、ウッドランド、あるいは他の提供者)の10%ロットを使用すると、この発明に使用するのにうまく適したものとなった。「完全培地」と呼ばれるこの培地は、分化をしないで骨髄誘導間葉細胞の成長を刺戟し、骨髄誘導間葉細胞のみをペトリ皿のプラスティック表面に特異的蛋白質結合部位により選択的に付着させることが出来るような因子を含んでいた。示差付着を生み出す完全培地の特異的作動メカニズムについては現在十分には理解されていないが、研究はこの分野で更に進められている。
完全培地を形成するために利用されるBGJb培地(フィットン−ジャクソン変異)の主成分は下記の通りである。


加えて、F−12栄養素混合物培地(Ham)(ジブコ社、ニューヨーク州グランドアイランド)が選択的骨髄誘導間葉細胞の分離のために望ましい物性を示した。F−12栄養素混合物培地(Ham)の主成分は下記の通りである。


前記の通り、完全培地は、細胞培養分離のため収穫された骨髄を用意するために用いられる特異なタイプの当初の収穫方法に依存して、数多くの異なった分離方法で利用することが出来る。この点に関して、網状骨骨髄の栓塞が利用される場合、骨髄は完全培地に付加され、分散を形成するために渦状にされ、次いで骨片などから骨髄を分離するために遠心分離された。(主として赤血球および白血球、そして微量の間葉細胞その他でなりたつ)骨髄細胞は、次いで一連の16,18および20ゲージの針に適した注射器を通して骨髄細胞を含む、完全培地を通過させることにより、単細胞群に解離された。酵素分離方法とは逆に機械的分離方法を利用することにより生じる利点は、機械的方法は細胞の変化が殆ど生じないにも拘らず、酵素による方法は、培着付着および選択的分離に必要な蛋白質結合部位、およびもしくは前記骨髄誘導間葉細胞に特異的なモノクローナル抗体の生産に必要な蛋白質部位に対し特に細胞損傷を作り出す可能性があるということである。単細胞懸濁液(約50−100×10有核細胞群で作られている)は次いで懸濁液に見出される残存細胞から骨髄誘導間葉細胞を選択的に分離させる目的で100mm皿に順次プレートされた。
吸引された骨髄が骨髄誘導間葉細胞源として利用された時、間葉幹細胞(これは骨片を殆どあるいは全く含まず、代りに大量の血液を含む)は完全培地に付加され、下記実施例1でより詳細に記述されるパーコル(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)勾配分画された。パーコル勾配は大量の割合の赤血球および単核造血細胞を骨髄誘導間葉幹細胞を含む低密度血小板分画から分離した。この点に関して、約30−50×10の細胞を含む血小板分画は、決定されない量の血小板細胞、30−50×10の単核細胞、および骨髄ドナーの年令に依拠する50−500のみの骨髄誘導間葉細胞でなりたっていた。低密度血小板分画は、次いで細胞付着に依存して選択的分離のためペトリ皿にプレートされた。
これに関して、網状骨あるいは腸骨吸引のいずれからか得られた骨髄細胞(すなわち初代培養)は完全培地で成長し、下記実施例1で設定される条件に従って1日から7日の間にペトリ皿の表面に付着できるようになった。3日目以後細胞付着で観察されなかったので、3日間が時間の標準の長さとして選ばれ、その時点でもとの完全培地を新鮮な完全培地で代替し付着しない細胞は培地から除去された。4日毎に順次培地が交換され、培養皿が合流となるまで続けられたが、これは通常14−20日間を必要とした。これは未分化間葉幹細胞が10−10倍増加したことを表していた。
この細胞は次いで、トリプシンとEDTA(エチレンジアミン四酢酸)(トリプシン0.25%,EDTA(1×)1mM,ジブコ社,ニューヨーク州グランドアイランド)などのような離型剤、あるいはEGTA(エチレングリコール−ビス−(2−アミノエチルエーテル)N,N′四酢酸、シグマケミカル社,ミズーリ州セントルイス)などのようなキレート剤を利用してペトリ皿から取り外された。トリプシンよりもキレート剤を使用して生産される利点は、トリプシンが間葉幹細胞の結合蛋白質を数多く切断する可能性があるためである。これらの結合蛋白質は、モノクローナル抗体が生産される時に認識部位を含んでおり、従ってトリプシンとは逆にEGTAなどのキレート剤が離型剤として利用された。離型剤は次いで不活性化され、分離された培養非分化幹細胞は次の用途のため完全培地で洗浄された。
これに関して、各種生物活性因子の影響下で新鮮な拡張骨髄誘導間葉細胞の骨および軟骨系列潜在能力(すなわち骨軟骨形成潜在能力)は、ヌードマウスの2個の異なった生体検定法を使って決定された。下記の実施例1を参照して戴きたい。一つの検定法は、培養骨髄誘導間葉細胞を負荷した多孔リン酸カルシウムセラミックスの皮下移植を含むものであった。もう一つのものは、培養骨髄誘導間葉細胞で接種された拡散チャンバーの腹膜移植を含むものであった。吸引分画を分離した全骨髄およびパーコル勾配は同じくこれらの生体検定法で分析された。大腿頭および腸骨稜から誘導された培養間葉幹細胞で移植されたセラミックスに骨が形成されたことを組織学的評価が示した。これらのセラミックス移植片のいずれにも軟骨は観察されなかった。対照的に、同じ細胞が拡散チャンバーでは骨および軟骨の形成が出来なかった。全骨髄がヌードマウスの皮下部位でセラミックスと共に構成移植片としておかれた時に骨を形成することが示されたのに対して、その作られた骨の量は培養拡張骨髄誘導間葉細胞が使用された時に見られるものよりも非常に少い量の生産であった。
これらの結果、ある条件の下では、培養拡張間葉細胞は多孔リン酸カルシウムセラミックス内の移植片として培養された時には骨に分化する能力のあることが示された。軟骨細胞とは逆に間葉幹細胞で骨に分化することに影響する内部因子については十分に知られていないが、拡散チャンバーとは逆に多孔リン酸カルシウムセラミックス内の血管系により供給される成長および栄養分因子に対する間葉細胞の直接接触能力が、間葉幹細胞の骨への分化に影響したものと考えられる。
その結果、分離され培養拡張された骨髄誘導間葉細胞は、ある特異的条件の下で、およびもしくは、ある種の因子の影響の下で、結合組織収復あるいは再生およびもしくは各種の補てつ装置の移植のために必要な望ましい細胞表現型に分化しそれを作り出すことが出来る。例えば、培養拡張ヒト骨髄誘導間葉幹細胞で満たした多孔セラミックキューブを利用して、セラミックの多孔内での骨形成が免疫適合宿主内で皮下培養の後作り出された。発明者の研究室で実施された最近の研究、すなわち大串,H.,ゴールドバーグ,V.,カプラン,A,「Acta Scandia.」60:334−339,1989において、多孔セラミックの複合移植におけるラット骨髄がラットの大腿骨の部分欠陥を充填するのに用いられた。骨はセラミックの多孔を満たし、セラミック骨髄移植片を宿主の骨につなぎとめることが観察された。
B.骨髄誘導間葉細胞に特異的なモノクローナル抗体の生産
この発明は前記記載のように分離,精製更に培養拡張される骨髄誘導間葉細胞(間葉幹細胞)に特異的なモノクローナル抗体のインビトロ生産、および診断およびもしくは治療目的のためのモノクローナル抗体および関連ハイブリドーマ(すなわちモノクローナル抗体を生産する融合骨髄腫リンパ球)の使用に向けられる。モノクローナル抗体は免疫蛍光法などの各種診断手段によって間葉幹細胞を同定し、計数し、局在化し、かつ分離するだけでなく、各種の薬用品を受け渡しし、また付加的な治療用途に利用することが出来る。
免疫化のためこの発明で利用される骨髄誘導間葉細胞は、例外を除いて前記の方法に従って分離され精製された。その例外は成長して合流となった細胞継代の後、細胞は、モスコーナ塩溶液(無カルシウム・無マグネシウムタイロード塩溶液)内の0.5mM EGTA(エチレングリコール−ビス−(2−アミノエチルエーテル)N,N′四酢酸,シグマケミカル社,ミズーリ州セントルイス)で1時間かけてペトリ皿の表面から離された。これに関して、EGTAはMg+2およびCa+2イオンのキレート化により、多分離型剤として作用するために、骨髄誘導間葉細胞はまず完全培地内に存在するMg+2およびCa+2を除去する目的でモスコーナ(Mg+2およびCa+2を含まない食塩水)試薬に浸漬され、次いで1時間EGTAで保温された。骨髄誘導間葉細胞は次いでインビトロで細胞の構造完全性を維持するのに必要なある種の生理的因子を提供する平衡塩類溶液であるタイロード塩(カタログ番号T−2145,重炭酸ナトリウムを含まないもの。シグマケミカル社,ミズーリ州セントルイス)ですすぎ洗いされ、また抗体の生産のためにマウスに注射するように、タイロード塩で再形成された。
この線に沿って、免疫化(あるいは刺戟)に先立って、骨髄誘導間葉細胞は20ゲージ針を通じる経路で単細胞群に解離された。免疫化工程の最初の時点で約14週の若さのメスのマウス(CBGF1/J,ジャクソン研究所,メイン州バーハーバー)が、下記の実施例2でより明確に設定された特異な免疫実験記録に従って、腹膜注射によって培養拡張分離骨髄誘導間葉細胞で免疫化された。これに関して、免疫化の間に骨髄誘導間葉細胞に特異的なモノクローナル抗体を生産するための少くとも1回過去の試みが失敗したので、(1)細胞の解離(すなわち細胞はトリプシンに代えてEGTAおよび他の作用薬で解離された。)、(2)免疫化抗体の濃度、(3)利用される骨髄誘導間葉細胞源(すなわち、いくつかの異なった骨髄ドナーからの細胞がドナー特異的抗原よりも普通の抗原の割合を極大化するために使用された。)などを含む抗間葉細胞分泌ハイブリドーマを生産するために、最適免疫方法に関連していくつかの因子が調査された。最適結果を生み出すために発見された方法は実施例2で詳細に設定されている。
しかし単的に言えば、約2.0×10の培養拡張骨髄誘導間葉細胞が先ずマウスに腹腔内注射された。最初の注射に続き約1週間づつの間隔をあけて同じ様式で沢山のヒトドナーから得られた骨髄細胞のブースター注射が4回行われた。沢山のドナーから得られた骨髄細胞は、骨髄誘導間葉細胞の表面に見出された普通のエピトープに特異的なモノクローナル抗体を生産する目的のために利用された。第25日目の後、マウスから血液が抽出され、血液からの血清は、免疫化群が培養骨髄誘導間葉細胞に対してマウス内に免疫応答を発生するのに成功したことをチェックするために、間接免疫蛍光法により検定された。
4週間の免疫過程を首尾よく完成させた後、マウスは犠牲となって、その脾臓細胞(特に抗体分泌形質細胞、つまり、骨髄誘導間葉細胞に対し特異性を持つ抗体を生産するリンパ球)は、下記に設定された非常に特異的な融合方法に従って、SP2/0骨髄腫細胞(メリーランド州ボルチモアにあるカーネギー財団のダグラス・フォンブロー博士より得た不死の抗体分泌腫瘍細胞)で融合された。利用されたSP2/0骨髄腫細胞は、チミジンキナーゼ(TK)などのような酵素を欠いているためにヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地に敏感であった。その結果、SP2/0骨髄腫細胞はHAT選択的培地にさらすと死滅した。これはHAT培地で融合あるいは非融合細胞を成長させることによって、達成される雑種の選択が可能となった。更に、SP2/0骨髄腫細胞のHAT培地への感受性に加えて、これらの細胞は免疫グロブリンを合成しなかった。融合に非免疫グロブリン分泌骨髄腫細胞を使用する利点は、融合から生じるハイブリドーマの成長と関連するいずれの免疫グロブリンも、脾臓細胞からの寄与のみを示したということであった。
ハイブリドーマを生産する細胞融合に利用される方法は、下記の実施例3に詳細に記述されている。しかし一般に、脾臓細胞は先ず骨髄腫細胞数の1/3と混合され遠心分離された。この細胞ペレットは、次いで細胞融合を促進するポリエチレングリコール(PEG 1500,ベーリンガーマンハイム社、西ドイツ)にさらされた。PEGは次いで順次希釈され、融合混合物は遠心分離され、ペレットは特異な成長培地(つまりハイブリドーマの成長を許している間に骨髄腫細胞を死滅させるHAT培地)で支持細胞(ハイブリドーマの確率を助けるマウス腹腔マクロファージなど)と共に再懸濁され、アリクォットにプレートされ、実施例2で設定された採食および変更スケジュールに従って保温された。約7日から10日後に、ハイブリドーマ細胞の小さなクラスターあるいはコロニー(つまりマウス脾臓に見出される腫瘍およびβリンパ球との間の細胞融合の後代)がウェルに現れた。利用された骨髄腫細胞ライン(すなわちSP2/0骨髄腫細胞)は、それ自身の抗体を作る能力を喪失した突然変異種であったので、生じたハイブリドーマは免疫マウスから得られた抗体分泌形質細胞の抗体(βリンパ球)のみを分泌した。
培養拡張され、分離され、精製された骨髄誘導間葉細胞に対する特異性を持つ抗体を合成し分泌したハイブリドーマを確認するために、数多くの予備スクリーニング手法(すなわち酵素結合イムノソルベント検定法、間接免疫蛍光検定法など)が各種のハイブリドーマにより分泌される抗体を特性付けるのに利用された。すべての検定法に対する正の制御は、脾臓除去の際に得られる各種希釈液で免疫マウスからの血清を含んでいた。
とりわけ、IgG(免疫グロブリンG)アイソトープを使って、抗体を分泌するハイブリドーマを確認するために一連の検定が実行された。このアイソトープは主要な分泌抗体であり、また精製し使用するのがもっとも易しかったので、望ましいエピトープに同じく特異性を有するIgM(免疫グロブリンM)およびIgA(免疫グロブリンA)アイソトープよりもIgGアイソトープが望ましいものであった。下記の実施例2で示されたように、ハイブリドーマの成長を示す764個のウェルから(もともとプレートされた960個のウェルから)245個のウェルが、IgGアイソトープを使って抗体を分泌する正の反応をテストで示した。
IgG抗体の生産で正のスクリーンをするコロニーの培養上澄みは、次いで間接免疫検定法でペレット化された骨髄誘導間葉細胞の凍結切片に対してスクリーニングされた。この検定法は、骨髄誘導間葉細胞上のエピトープだけに結合される抗体を確認するために行われた。IgG抗体の生産に対しスクリーニングで正を示した245個のウェルの内、その171個だけのウェルがテストで骨髄誘導間葉細胞に結合する正を示した。
前記のスクリーニング段階はペレット培養骨髄誘導間葉細胞の凍結切片に向けられているため、それは細胞の細胞内部には逆に細胞の表面にのみ特異的な抗体を分泌するこれらハイブリドーマに分化することが出来ず、IgGおよびペレット化培養骨髄誘導間葉細胞の凍結部に関してテストで正を示したハイブリドーマの上澄みは、次いでミクロマス培養で生培養ヒト骨髄誘導間葉細胞で保温され(すなわち、培養細胞は細胞が成長可能で複製出来るままで残る組織培養皿の真中に位置する小塊に再プレートされ)、また反応経過が間接免疫蛍光法で測定された。分析される細胞が生細胞であるため、この検定法は細胞の表面に結合され、細胞内エピトープにのみ結合する抗体に負の結果を与える抗体を確認した。これが重要であったのは、モノクローナル抗体が有用な分化マーカーとして利用されるためであり、それは細胞表面に対し特異的である必要があった。
下記に示されるように、ペレットに培養骨髄誘導間葉細胞を使って反応性で正を示した171個のウェルの内で、15個のみのウェルがテストで生培養骨髄誘導間葉細胞の反応性で正を示していた。
前記予備スクリーンのそれぞれで正を示したハイブリドーマ(すなわちもとの960個のウェルの内15個)は、次いで、単一クローンからのみ生じるハイブリドーマ上で順次スクリーニングが実施されることを確実にするために限定希釈液でクローニングされた。これに関して、多重細胞系はもとの「親」ウェルに存在するために、(すなわち、もとの融合ウェル内で、ハイブリドーマ細胞はいくつかの融合産物からの子孫であるため、およびもしくは融合後もとの日数の間に染色体のゆるやかな損耗が追加の不均一性を創り出すために)、細胞のクローニングは、モノクローナルハイブリドーマ細胞系を得るために必要とされた。利用されるクローニング方法の詳細な説明は、下記の実施例に設定されているが、クローニング方法は基本的にはウェル当り1個の細胞以下の密度でもとの親ウェルに存在する細胞を再プレートする段階を含んでいた。単細胞培養の確率の結果として、ウェルに成育したいずれのコロニーも、もとの再プレートされた細胞のみの子孫であった。モノクローン性を確認するために、サブクローンの100%が2世代にわたって正になるまで多重クローニングが実施された。
細胞系あるいはクローンは次いで精製された骨髄誘導間葉細胞に対し、合成を続け抗体を分泌する組織培養、あるいは同質遺伝子あるいは免疫適合宿主の生体内でプロゲート(progate)した。これらの抗体は次いで、沈澱、イオン交換、アフィニティクロマトグラフィーなどの従来の技術により、組織培養あるいは腹水から回収された。
クローンされたハイブリドーマは、次いで、培養骨髄誘導間葉細胞に対するモノクローナル抗体の特異性の度合を確認するために、一連の間葉および非間葉誘導組織に対し順次スクリーニングされた。特に、モノクローナル抗体が骨髄にある造血系列細胞(およびかくして造血細胞から得る間葉組織に分化するのに利用出来る)に特異的でなかった(つまり反応しなかった)ことを確認するために、全骨髄および骨髄のいくつかの部分的分画化が間接免疫蛍光法によりハイブリドーマ培養上澄みに対してスクリーンされた。この結果は表5(実施例2参照)に示される。
加えて、モノクローナル抗体が骨髄誘導間葉細胞および分化した間葉細胞にとって普通であるエピトープに反応するかどうかを決定するために、手術あるいは剖検の際に得られた各種の間葉組織の凍結切片が、間接免疫蛍光法によりハイブリドーマ培養上澄みに対しスクリーンされた。正および負の反応経過が認められ、表5に示される。
更に、間葉幹細胞およびもしくはその系列の子孫のみに特異的である抗体(すなわち非間葉誘導組織に対し反応しなかった抗体)を分泌したハイブリドーマを確認するために、ハイブリドーマ培養上澄みは、非間葉誘導組織の部分と共に保温され、抗体の反応経過は間接免疫蛍光法で分析された。その結果は同じく下記の表5で示される。
データ解析の結果、この発明により生産され、確認され、クローニングされた3個のハイブリドーマ(すなわちSH2,SH3およびSH4)が骨髄誘導間葉細胞の分析に有用であった。これらハイブリドーマ3個のすべては、抗体を分泌し、その抗体は培養拡張骨髄誘導細胞の検定で細胞の99〜100%で細胞表面エピトープに対し反応した。対照的に、3個のハイブリドーマそれぞれは全骨髄の検定には細胞の1%以下に反応する抗体を分泌した。骨髄誘導間葉細胞を選択的に結合し造血細胞と結合しないこれら抗体の能力は、骨髄サンプル内にある間葉幹細胞を定量化し骨髄から間葉幹細胞を精製するための優れたプローブに仕立てあげた。
加えて、3個のハイブリドーマすべては、それぞれいくつかの交差感受性が観察されたけれども、各種各様の間葉および非間葉組織に対しスクリーンされた時には大抵負の交差感受性を示した。特に関心深いのは、SH3およびSH4がヒト骨膜から誘導された培養細胞の細胞表面決定因子に交差反応したことであった。これに関し、骨膜は間葉細胞の他の源であり、また、骨膜細胞の細胞表面エピトープに対する前記の抗体の交差感受性は、骨髄誘導間葉細胞および骨膜誘導間葉細胞の間の構造的関係を示唆することを、これまでに発明者は示してきた。しかしSH2抗体は骨髄誘導間葉細胞に結合するとしても、骨膜誘導間葉細胞には反応しなかった。この選択性はSH2が骨髄誘導および骨膜誘導間葉細胞の間を判別するのに有用であることを示した。SH3およびSH4の交差感受性と結びつけてSH2の選択性は、骨髄誘導および骨膜誘導間葉細胞は関連はあるが同一のものではないということを示している。
SH2,SH3およびSH4として固定される細胞系培養物の寄託品はアメリカンタイプ培養コレクション,12301,バークローン ドライブ,ロックヴィル,メリーランド 20852に寄託され、ATCC受け入れ番号HB10743,HB10744およびHB10745がそれぞれ割当てられている。寄託品は公表を可能にする目的のみのためであり、寄託された特定の物質に対するこの発明の概念を限定する意図はない。
この結果は、発生したモノクローナル抗体が骨髄誘導間葉細胞の表面決定因子を認識したが、造血細胞など他の間接に関連した細胞についてはそうではなかったことを示した。骨髄誘導間葉細胞に対する特異的なマーカーは存在しないために、発生したモノクローナル抗体は骨髄誘導間葉細胞を確認し、定量化し、精製するために利用することが出来る有効な単一特異的プローブを提供する。
より詳細には、生産されたモノクローナル抗体は、適切な放射性、酵素系、蛍光性標識で標識付けることも出来、また適切な固型キャリアと結合させることも出来、これは当業者にとって明白なことである。これに関し、下記の実施例3は、従来の免疫法による骨髄のように生物学的サンプル内にある骨髄誘導間葉細胞の存在を確認しおよびもしくは定量化するのに発生したモノクローナル抗体が有効であることを示している。例えば、モノクローナル抗体は、蛍光イソチオシネート、ペルオキシダーゼ、リン酸塩アルカリあるいはその他のマーカーなどのような免疫化学製品と併用しあるいは連続して使用することが出来る。更に、モノクローナル抗体は、ある基質と結合あるいは付着させて、骨髄などの組織サンプルが付着させたモノクローナル抗体と接触させた時に、骨髄誘導間葉細胞を捕捉することが出来る。結合された細胞は次いで固相の状態および抗体に基本的に依存する既知の方法で分離される。結合されていない細胞は回収され、各外部および内部因子に依存して骨の再生などのような各種治療目的に使用することが出来る。
結果として、この発明は、骨髄にある骨髄誘導間葉細胞を造血細胞などの他の細胞から分離するモノクローナル抗体の何らかの方法について考慮するものである。例えば、この発明の別の実施例は、骨髄誘導間葉細胞の集団を生産する方法に向けられており、その方法は、骨髄を含む組織の細胞懸濁液を用意し、この細胞懸濁液を、骨髄誘導間葉細胞のエピトープを認識するが造血細胞のエピトープは認識しないモノクローナル抗体と接触させ、またモノクローナル抗体と結合した細胞を細胞懸濁液から分離し回収するステップよりなりたっている。
加えて、この発明の代替的な実施例は別のステップよりなる骨髄誘導間葉細胞の集団を用意する方法に向けられており、その方法は、骨髄を含む細胞懸濁液を準備し、骨髄誘導間葉細胞の細胞表面のエピトープを認識するが造血細胞のエピトープは認識しない固相結合モノクローナル抗体とこの懸濁液を接触させ、未結合の細胞を固相結合モノクローナル抗体から分離し、また結合細胞を液相結合モノクローナル抗体から回収するステップよりなる方法である。
下記の実施例は、この発明の詳細なステップを更に説明する目的のためにここに含まれている。
実施例1
骨髄誘導間葉細胞の分離、精製および培養拡張
大腿頭網状骨片が腰および膝置換手術の期間に変性関節炎の患者から入手された。加えて骨髄もまた、正常なドナーおよび将来の骨髄移植のためにとり入れられた骨髄を持つ腫瘍の患者から腸骨吸引液で入手された。腫瘍患者のすべては、基質細胞に無関係の悪性腫瘍を持っており、基質細胞は正常な核型を発現した。
細胞培養のための骨髄の調製
A.網状骨骨髄の栓塞
網状骨骨髄の栓塞(0.2−1.2ml)は無菌チューブに移され、それに10%の胎仔ウシ血清(JRサイエンティフィック社,カリフォルニア州ウッドランド)の選択されたバッチを持つ、25mlBGJb培地(ジブコ社、ニューヨーク州グランドアイランド)が加えられた。チューブは骨髄が分散したように渦状に撹拌され、次いで細胞と骨片をペレット化するために5分間1,000回転/分で回転された。懸濁された細胞は16ゲージ針に適した10ml注射器で集められ、別のチューブに移された。骨片は5mlに再構築された。完全培地および骨髄細胞は前に採集された。骨髄細胞の採集はもとのチューブに残っているものが、黄白色の網状骨片のペレットだけである時に完全に行われたと見做された。骨髄細胞は18ゲージおよび20ゲージの針に適した注射器を利用し、それを通して単細胞懸濁液に分離された。細胞は5分間1,000回転/分で回転され、脂肪層および上澄みが除去された。細胞は完全培地で再構築され、血球計で計数され(赤血球は計数の前に4%の酢酸で溶解され)、また100mm皿に50−100×10の有核細胞/皿の割合でプレートされた。
B.吸引液骨髄
吸引液骨髄(5−10ml)は無菌チューブに移され、それに完全培地が加えられた。細胞をペレット化するために、チューブは5分間1,000回転/分で回転された。上澄み液と脂肪層は除去され、細胞ペレット(2.5−5.0ml)は70%のパーコル(シグマ社,ミズーリ州セントルイス)勾配にのせ、15分間460回転/分で回転された。この勾配はピペットを使って3個の分画に分離された。勾配の上部25%(低密度細胞・血小板分画)、プール密度=1.03g/ml;勾配の中央部50%(高密度細胞の単核細胞),プール密度1.10g/ml;および勾配の底部25%(赤血球),プール密度1.14g/mlであった。予備実験においてこれら3個のプールそれぞれは別個に完全培地、100mm皿にプレートされた。付着細胞は低密度細胞に局地化するよう観察された、続くすべての実験のための付着細胞培養を生産するために、低密度細胞のみがプレートされた。
骨髄基質細胞の培養および継代
大腿頭網状骨あるいは腸骨吸引液のいずれかより得た骨髄細胞は、完全培地(すなわちBGIb培地に10%の胎仔ウシ血清を加えたもの)で37℃で95%空気および5%炭酸ガスを含む濕分含有大気中で培養された。予備実験において、細胞はもとの培地の変更の前1日,3日あるいは7日間で付着が許された。1日後には細胞付着の増加は見られなかった。従って、1日間が時間の標準の長さとして選ばれ、この時、非付着細胞は培養から除去され、もとの培地は7mlの新鮮な完全培地に取替えられた。4日毎に順次培地の変更が行われた。培養皿が合流になると、細胞は0.25%トリプシンおよび0.1mMEDTA(ジブコ社)で10−15分間37℃で離型された。トリプシンの作用は胎仔ウシ血清量が1/2になると停止された。細胞は計数され、1:3に分割され、7mlの完全培地に再プレートされた。細胞のアリクウォットは90%胎仔ウシ血清および10%DMSO(凍結培地)で低温保存された。
セラミックスおよび拡散チャンバーで生体保温するための培養の調製
培養細胞は継代培養に記述されたようにプレートから離された。トリプシンの不活性化の後、細胞は2回10mlの無血清BGJb培地で洗浄され、計数され、次いで無血清BGJbで適当な濃度にまで調節された。全骨髄およびパーコル分画は2回10ml無血清BGJbですすぎ洗いされ、また無血清BGJbで適当な濃度にまで調節された。60%の水酸化リン灰石+40%のβ脱フックン鉱石(ツィンマー社,インディアナ州ワルソー)よりなる多孔セラミックキューブ(3mm)が幾分真空化した条件下で細胞懸濁液に加えられ、外科移植に先立ち90分間浸漬された。
拡散チャンバーは別に記載(アシュトン他,1980)されているように、ルーサイトリングおよびミリポァフィルターで構成されている。細胞は前記の通り調製され、100−140ulの無血清BGJb培地のあるチャンバーに加えられた。チャンバーはセメント滴でシールされ、無血清BGJbに外科移植に先立ち90分間浸漬された。
セラミックスおよび拡散チャンバーの外科移植
セラミックス−ヌードマウス(アメリカ合衆国国立衛生研究所,nu/nu菌株)はエーテルで麻酔され胃が下になるように置かれた。4個の小さな縦方向切開(5mm)が背中に沿って行われた。セラミック−骨髄移植片はポケット内に挿入され出来る限りポケット内の横向きになるように置かれた。切開部はオートクリップス(ベクトンディッキンソン社,ニュージャージー州パーシッパニイ)で閉じられた。各対のポケットは異なった対のセラミック骨髄移植片を受け入れ、4個の異なったサンプル(サンプル当り2個のセラミックキューバ)がマウス内で保温された。
拡散チャンバー−ヌードマウスは麻酔され、背中が下になるように置かれた。切開は皮膚および腹膜により行われ、拡散チャンバーは腹腔に挿入された。腹膜は縫合により、また皮膚はオートクリップスで閉じられた。マウス当り1個だけのチャンバーが挿入され、それは同じマウスに移植されたセラミック−骨髄移植片の4個の対の1個に負荷された細胞と同一の培養細胞を含んでいた。
組織学的評価
ヌードマウスは犠牲とされ、セラミック−骨髄移植片は移植後1−8週間で収穫された(第1表および第3表)。セラミックは10%の緩衝ホルマリン液に固定され、7日間、RDOラピット.ボーン.デカルシファイアー(ダペイジ・キネティクス研究所,イリノイ州プレインフィールド)、パラフィンに埋没され、連続切片され(5um厚)マロリイハイデンハインあるいはトルイジンブルーで染色された。
拡散チャンバーは移植後3−10週間で収穫された。チャンバーは10%緩衝ホルマリン液に固定され、パラフィン埋没され、連続切片され、マロリイハイデンハインあるいはトルイジンブルーで染色された。


結果
インビトロ培養
大腿骨頭網状骨あるいは腸骨吸引液から得た付着骨髄誘導間葉細胞は同じ形態を有し殆どすべてが繊維芽細胞で、一部は脂肪細胞、多角あるいは円型細胞である(第1図)。アルカリ性ホスファターゼのための組織化学的染色法は可変の正の反応性を産み出し、網状骨骨髄および吸引骨髄の間には殆ど差異がみられない。両収穫部位より得られる付着細胞はトルイジンブルーでメト染色的に染色され、あるいはフォンコッサに正である細胞外基質の生産は出来なかった。もし正の染色が行われていたら、それは網状骨あるいは骨組織がこれらの培養で生産されたことを意味する。
セラミックを併用する培養骨髄細胞の生体内保温
リン酸カルシウムセラミックブロックは大腿頭骨網状骨あるいは腸骨吸引液のいずれかから得られた各種の濃度の培養骨髄誘導間葉細胞を含む培養培地に浸漬された。骨髄ドナーは年令が34才から67才までにわたる男性および女性の双方を含んでいた(第1図)。第一次培養および第一次から第六次継代の細胞が0.7×10から20×10までにわたる細胞負荷濃度で検定された。骨髄誘導間葉細胞負荷セラミックブロックは、ヌードマウスの皮下に外科移植され、1週間から8週間保温された。収穫に際しセラミックは固定され、無機質除去され、骨および網状骨の存在は組織化学的に検定された。第1表はこのデータを要約したものである。
網状骨ではなくて、骨は、セラミックと、大腿頭骨網状骨より得た培養骨髄誘導間葉細胞の各移植片の孔で観察された。もっとも早い骨は各セラミックの孔の30%以下で2週間後に観察された。3週間後には骨を含む孔の数は、30%以下から70%以上に変化した(第3図)。6週間後までには、セラミックスの大部分は孔の70%以上の骨を有していた(第4図)。ドナーの年令および骨形成の量の間には顕著な相関関係はなかった。対照的に、継代数が骨形成量に影響を与えているように考えられた。第一次培養および細胞の継代細胞(第1次−第2次継代)がおそい継代細胞(第4次−第6次細胞)のものより多くの骨形成を行った。骨形成はセラミック孔の表面に骨芽細胞分化および骨沈着を開始するように見え、また骨形成は、それまでに付着した細胞内質の一番上に新しい骨の表面が骨を分泌する細胞ライニングのように孔の中央部に向かって進んでいくように見える。セラミック骨髄誘導間葉細胞移植を6〜8週間維持することで、骨の再モデル化が生じ、また各孔の内部空間に骨髄因子の固定が認められた(第2図C)。
セラミックスおよび腸骨吸引液からの培養骨髄誘導間葉細胞の移植片は、テストされた4個のサンプルの内3個に骨を生じた(第1表)。軟骨はどの移植片にも観察されなかった。この3個の正の移植片における骨の形成は、大腿頭骨骨髄からの培養細胞で移植されたセラミックスで観察されたものよりも少なかった。孔の30%以下が3週間で骨を含み、また孔の30〜70%は6週間で骨を含んでいた。孔の残りは、十中八九は宿主起点の繊維組織および血管系を含んでいた。
拡散チャンバーにおける培養骨髄細胞の生体内保温
培養骨髄誘導間葉細胞の骨軟骨形成潜在能力は、細胞を拡散チャンバー内に詰め、それをヌードマウスの腹腔内に外科的移植をすることによっても検定された。この細胞はセラミック検定(第2表)で使用されたものと同じ培養から得られた、拡散チャンバーは、皮下セラミック骨髄誘導間葉細胞移植を受け入れた同じヌードマウスの腹腔に移植された。3〜10週間の保温の後、チャンバーは収穫され、骨および軟骨形成の存在が組織学的評価で決定された。セラミックおよび網状骨からの培養細胞の移植における骨の存在とは対照的に、培養網状骨骨髄誘導間葉細胞を含む拡散チャンバーは、いずれも10週間の保温の後においてもなお骨あるいは軟骨が観察されなかった(第2図)。培養腸骨吸引液骨髄誘導間葉細胞もまた、拡散チャンバー内で骨あるいは軟骨の生産に失敗した。代りに低細胞性粗繊維組織が大抵のチャンバーで観察された。
討議
この実施例では、ヒト骨髄誘導間葉細胞は、ヌードマウス内での多孔リン酸カルシウムセラミックスで検定される時に、培養中にその有糸分裂拡張に続いて骨形成能力を再製的に示すことが判明した。同じ細胞が拡散チャンバーで同じヌードマウス内で保温される場合には、骨形成は観察されなかった。集合的にはこれらのデータは、ヒト骨髄が細胞を含み、この細胞は選択され培養で拡張され、また細胞は多孔リン酸カルシウムセラミックスで移植片として生体内で保温された場合骨に分化する潜在能力を有するということを示している。
拡散チャンバー内で骨形成が欠除するということは、セラミック検定が骨髄細胞からの骨の分化にとってはより感度の高い検定法であり得るということを示唆するものである。バブ他(バブ、I.、パッシ−イーヴン、L.、ガジット、D.、シークルズ、E.、アシュトン、B.A.、パイラン−ラミュー、N.、ジヴ、I.、およびウルマンスキー、M.、ヒト骨髄細胞の生体内拡散チャンバー培養における骨形成「骨とミネラル」4;373,1988)は2人の小児ドナーからのヒト骨髄で移植された8個の拡散チャンバーの内4個に骨が観察されたが、これらの著者は年寄のドナーからの骨髄すべてがヌードマウスの拡散チャンバーで保温された時に骨を観察することが出来なかった。加えてデーヴィス(デーヴィス、J.E,ヒト骨髄細胞は正常ラットに移植された時拡散チャンバーでコラーゲンを合成する「細胞生物学中間報告」11,2;125,1987)は5才の女児からの新鮮な骨髄で接種された拡散チャンバー内で骨形成を観察しなかったし、またアシュトン他(アシュトン,B.A.,ケイヴ、F.A.,ウイリアムソン,M,ザイクス,B.C.,カウチ,M.,およびポーザー,J.W.;ヒト骨および骨髄から誘導される高アルカリ性リン酸塩活性による細胞の特性付け;その骨形成の予備評価、「骨」5;313−319,19859の小児および若い成人からの骨および骨髄の複合片から得られる培養繊維芽細胞で保温した拡散チャンバーには骨形成が観察されなかった。
この発明では、幾人かの年輩のドナーからの培養骨髄誘導間葉細胞で保温された拡散チャンバー内で骨形成は観察されなかった。しかし、セラミック充填移植片と、拡散チャンバーで骨形成が出来なかった年輩のドナー(34〜67才)の同じ調製から得られた培養骨髄誘導間葉細胞では骨形成が観察された。セラミックを骨髄誘導間葉細胞からの骨分化に対しより感度の高い賦形剤にさせる因子は不明瞭であるが、しかしそれは血管系で供給される成長および栄養分因子に骨髄誘導間葉細胞が近寄れるという直接接近能力、あるいは拡散チャンバーの形態の故に限定される血管細胞への直接の交互作用を含んでいる(ジャローマ,H.J.,およびロッツィーラ,V.A,骨膜細胞の分化および増殖に対する拡散チャンバー孔口径の影響、「Clin,Orthop」236,258,1988)(ヴィラヌーヴァ,J.E.およびニムニ,M.E.,内皮細胞による拡散チャンバー内での頭蓋細胞骨形成の促進、「J.Cell.Biol.」109,4,部2,42a(概要)。
セラミック孔に形成される骨の起点という問題は重要である。というのは、拡散チャンバーの場合にあるように、ドナーの骨髄誘導細胞は宿主の細胞から物理的に分離されないからである。五島他の最近のデータ(ジュン五島、ビクター M.ゴールドバーグ,アーノルド I.カプラン「多孔リン酸カルシウムセラミックおよび骨髄細胞の複合移植における骨形成の起点」(1989)提出)は、もとの骨形成がドナー起点であったので、セラミック移植の骨形成が二相性現象であることを示している。このドナー誘導骨が部分的にセラミックの孔に充填されると、宿主誘導細胞はドナー骨の再モデル化を開始し、かくして宿主誘導骨形成の第2局面を開始する。結局、もとのドナー骨の部分的に再モデル化された内部表面上に積まれる宿主誘導骨の繭の形で骨髄腔が中心部に形成する。ヒト骨髄で形成される骨の起点を確認するために、この発明者はヒト骨細胞向けられるモノクローナル抗体に特異的な種属とのセラミック移植を現在検定中である。予備データは移植片の中で骨細胞に対する抗体の反応性を示しており、かくして多孔骨に形成される骨は人の骨でありマウスのそれではないことを提示している。
大腿頭網状骨を起点とする培養骨髄誘導間葉細胞は、腸骨吸引骨髄から培養骨髄誘導間葉細胞よりもより骨形成的であるようにみえる。9個の網状骨サンプルの内の9個がセラミックに骨を形成したのに対し、吸引骨髄誘導間葉細胞サンプル4個の内3個がセラミックに骨を形成した。加えて、大腿頭骨誘導間葉細胞で移植したセラミックよりも、吸引骨髄誘導間葉細胞で移植したセラミックに、骨が少ない孔に存在していた。この差異の理由は不明瞭であるが、それはもとの組織において収穫された骨髄間質細胞が骨表面に近接していることに関連しているのであろう。アシュトン他(アシュトン,B.A,イーグルサム,C.C..バブ,I.,およびオーエン,M.E.,ラビット骨髄の繊維芽細胞コロニー形成細胞の分布および生体内拡散チャンバー法によるその骨形成能力の検定「Calcif.Tissn Inr.」36:83,1984)は、培養ラビット骨髄間質細胞が、その骨内膜表面へのもとの近接度に依存して、生体内コロニー形成能力と拡散チャンバー内での骨形成能力が異なっていることを示した。骨内膜表面にもっとも近い細胞は心にある細胞に比較して4倍のコロニー形成効率を持つことが示された。この研究においては、網状骨よりの骨髄は骨髄細胞から網状骨を分離するために激しく渦をまいて収穫された。これは同じように骨髄細胞の網状骨からの激しい分離が出来ない吸引骨髄に比較して、骨内膜表面の近くから誘導される細胞内に豊かな骨髄の集団を生産する。発明者は吸引骨髄に比較して網状骨から得る付着細胞が絶えず多い数であることを観察したが、これはアシュトン他の観察(アシュトン,B.A.,イーグルサム,C.C,バブ,I.およびオーエン,M.E.,ラビット骨髄の繊維芽細胞コロニー形成細胞の分布および生体内拡散チャンバー法によるその骨形成能力の検定、「Calcif.Tissue Int.」36:83,1984)と同じである。
成人ドナーからの骨髄の場合、軟骨はこの研究およびバブ他(バブ,I.,パッシ−イーヴン,L.,ガジット,D.,シークリーズ,E.,アシュトン,B.A.,パイラン−ラミュー,N.,ジブ,I.,およびウルマンスキー,M.,ヒト骨髄細胞の生体内拡散チャンバー培養における骨形成「骨およびミネラル」4;373,1988)。これは軟骨形成系列よりも骨形成系列の方に骨髄誘導細胞の年令依存決定因子があるということであるかもしれない。代替的に、この研究における培養条件は、間葉細胞よりも骨祖先細胞の方に選択的であり、あるいは間葉幹細胞を、セラミックスの生体内分析に先立って骨形成系列の方に押し進めることもあり得る。この研究はこれらの可能性を扱う方に向けられている。
前記実施例に示されるこの研究のもっとも重要な実現は、セラミック移植方法が骨髄誘導間葉細胞の骨形成能力を固定するための感度の高い検定法を提供することである。重要なことは、そのような骨形成細胞が広い範囲の年令のヒトドナーから得ることが出来ることである。これらの観察は、骨形成能力を有する細胞の生体外拡張が骨形成増強を必要とする臨床状況で使用出来ることを示している。
実施例2
骨髄誘導間葉細胞に対するクローン化ハイブリドーマの生産
I.受渡
実験開始時に生まれる約14週のメスマウス(CBF/Sジャクソン ラボラトリーズ社、メイン州バーハーバー)が多数のドナーから得られた培養骨髄誘導間葉細胞で腹膜注射により免疫化された(下記第3表参照)。最初の注射に続き1週間の間隔をあけて4回ブースター注射が行われた。多数のドナーからの骨髄細胞は間葉幹細胞の普通の制限部位に特異的なモノクローナル抗体を生産する目的のために利用された。

免疫化スケジュール
A.第0日−最初の注射は前記実施例1で示された方法に従って、分離精製されたH−20ドナーからの細胞から成り立っていた。最初の培養からの細胞は合流に成長し(1:3)で再プレートされた。これら最初の継代細胞は更に合流に成長し、次いでモスコーナの0.5mMEGTAで1時間かけてプレートから離された。この細胞はタイロードで2回すすぎ洗われ、次いでマウスに注射するために500ulタイロードに再構成された。細胞は1ml注射器に適した20ゲージ針を使って単細胞に解離され、次いでマウスの腹腔内に注射された。これに続くすべてのブースター注射は同じ様式で行われた。
B.第7日−細胞がH−21およびH−23ドナーから誘導され、最初の培養の合流の後で集められた。各ドナーからほぼ同じ数で全細胞数1.5×10個で使用された。
C.第15日−細胞が最初の培養の後H−27ドナーから誘導された。
D.第22日−細胞は最初の継代の後、合流でH−31ドナーから誘導された。全細胞数は1.0×10個であった。
E.第29日−細胞はH−31ドナーから誘導された。細胞は最初の継代の後合流で収穫され液体窒素で低温保存された。注射の直前に、細胞は溶かされ、調製され、第1日で前記記載の通り注射された。全細胞数は2.0×10個であった。
第25日に血液はマウスの尾の血管から抽出され、血痕は血液細胞からスピンアウトすることで調製された。血清はペレット化培養ヒト骨髄細胞の凍結切片に対し保温され、間接免疫蛍光法により検定された。血痕は凍結切片にある細胞に対し正に反応し、免疫群は培養細胞に対しマウス内に免疫応答を創り出すのに成功した。
II.融合
4週間の免疫過程を首尾よく完成させた後、免疫マウスは犠牲となって、その脾臓細胞はメリーランド州ボルティモアのカーネギー財団、ダグラス、フォンブロー博士より得られたSP2/0骨髄腫細胞で下記に示された特異的な寸法に従って融合された。しかし融合過程で生産されたヒブリドーマ細胞の馴化培地を提供するために、馴化培地および腹腔マクロファージよりなる「支持細胞属」を融合するのに先立って少なくとも1日準備する必要があった。腹腔マクロファージは、食菌作用を通じて培養皿を清潔にするために加えられた。下記の手続きは、支持細胞属を作り出すため、および融合のための骨髄腫細胞SP2/0を用意するために利用された。
A.支持細胞の調製
リンパ球はしばしば成長が貧弱であったり、また、低密度で成長すると死滅する(この理由は十分に理解されていないが、「成育因子」の要件、あるいは組織培養血管の毒性副産物の問題に関連する)ので、緩慢成育あるいは非成育の細胞集団(通常「フィーダー」と名付けられる)の追加が必要であった。この方法で利用されるフィーダー細胞は下記の方法に従って生産された。
1.0.34M(11〜64g/100ml)のショ糖溶液が無菌化のためフィルターにかけられ、溶液は15mlアリクォットで40℃で貯蔵された。
2.マウスは頸部転位により犠牲にされ、70%EtOHに完全に浸漬された。EtOHに数分間浸漬された後、マウスは移動され、スチロフォーム試験管ラックに仰向けに置かれた。
3.正中切開が腹部皮膚で行われた、平滑解体を利用して、薄い膜を穿刺しないように皮膚は腹膜から拡げられた。
4.20ゲージ針を使い、5mlのショ糖が腹膜に注射された。
5.針が取り去られ、マクロファージを遊離させるために腹部がゆっくとマッサージされた。23ゲージの針が腹部に注射され、5mlのショ糖はゆっくりと回収された。
6.ステップ4および5は2回繰返され、マクロファージはプールされた。
7.1000rpm(200g)の回転で、細胞は5分間H1000ロータ(r=18.6cm)を持つソーヴョルGLC−4で回転された、細胞ペレットは15mlD−MEM(ダルヴェッコ修飾イーグル培地、ジブコ社ニューヨーク州#430−210,グランドアイランド)/10%FB5(胎仔ウシ血清)、ジブコ社#430−2100)で再懸濁され回転された。
8.ペレットは培地の2mlで産出され、計数された。平均産出高は細胞300万〜600万個であった。
9.細胞はスーパーHAT培地で1×10細胞/mlの濃度で再懸濁された。これに関して、スーパーHAT培地は、400mlのD−MEM,120mlのFBS、60mlのNCTC−109ヒブリドーマ成長補足物(M.A.バイオプロダクツ社、#12−923A)、12ml50×HATもしくはHtT(ベーリンガーマンハイム社#644579あるいは#623091のそれぞれ)6mlの溶液I(適切なpHを準備するためD−MEMを補足し、ハイブリドーマの成長を促進するものであって、0.2ユニット/mlのインシュリン、0.5mMのピルビン酸ナトリウム、および1.0mMのオモザロ酢酸を含むもの)、6mlのL−グルタミン(ジブコ社#320−530)0.6mlゲンタマイシン(M.A.バイオプロダクツ社#17−5182)よりなる。
10.懸濁液の0.1mlで次いで10個の96ウエル培養皿のそれぞれのウエルに加えられた10個の皿は融合に使用された。
11.ウエルは37℃の温度保温前で5%の二酸化炭素、95%の大気で貯蔵された。
B.SP/2骨髄腫細胞の調製
フォンブロー博士より入手した骨髄腫細胞は、融合処理に先立ち2ケ月以上の培養でうまく成長することを確かにするために評価された。細胞はHAT感受性細胞を選択するために、D−MEM(ダルベッコ)修飾最小イーグル培地)/10%FBS/8−アザガニン(ジブコ社、ニューヨーク州グランドアイランド)を通過させた。骨髄腫あるいはハイブリドーマ細胞のいずれかの継代は、48個のウエルプレートのうちの12個のウエルを通過するアリクォットを連続的に希釈することにより達成された。
融合の2週間前に、培地は20%までのFBSで一歩ずつ調節された。融合の1週間前に、いくつかの大きなクラス1(72cm,20mlの培地)SP2/0sが開始された。この時点で24−ウエルプレートの2個の列が低密度でSP2/0sで接種された。1日後培地は次いで、融合に使用されようとする同じスーパーHAT培地で列の一つに交換された(どんな培地を使うにしてもその前に、各ボトルからのサンプルは無菌性および細菌成長がテストされた)。24時間以内にHATを供給された大抵の細胞は死滅し、また72時間までに、HAT(ヒポキサンチン・アミノプテリン、チミジン)を供給された細胞すべては死滅した。SP2/0成長培地を供給された細胞は健康なままに生残っていた。
融合の2日前に、SP2/0は3個の新しいフラスコに各種の溶液(すなわち1:20,1:10,1.8,1.4)に分割された。細胞は注意深く各溶液でモニターされ、成長の対数期にあった細胞だけが、融合のために選択された。選択された集団には、死滅したあるいは死滅しかかっている細胞はなかった。対数期のいい密度を含むフラスコは全体で100万個から1000万個の細胞を含んでいた。
C.融合方法
材料−脾臓について、
解体用鋏、大鉗子、#5解体小鉗子すべて70%EtOH
EtOH内のつや消しガラススライド
コルクスタンド付き(無菌)大時計皿、
フィーダー細胞(前記の通り準備)を入れた10個の96−ウェル培養皿
SP2/0骨髄腫細胞(前記の通り準備)
37℃の水浴
37℃のPEG1ml(ポリエチレングリコール、2gを75mMのHEPESに溶解したもの(HEPES:N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N′−2エタンスルフォン酸)
10ml D−MEM/10%FBS/2×抗生物質
100ml D−MEM(無血清)/、冷蔵庫保管
37℃の100ml D−MEM(無血清)
2個の50mlプラスチック遠心分離用チューブ(無菌)
血球計
37℃のスーパーHAT
4%酢酸
37℃の細胞凍結培地
方法
1.2個のつや消しスライドはEtOHから取り出され、フードの下の無菌ペトリ皿に置かれ、空気乾燥された。
2.マウスは頸部解体で犠牲にされ、70%EtOHに浸漬される。数分後マウスは大時計皿に左側を上にして置かれた。
3.5ml D−MEM/10%FBS/2×抗生物質のある無菌100mmペトリ皿が脾臓を受け入れるように設定された。
4.皮膚、次いで腹部壁がマウスの上部皿分円部位の左側で切開された。
5.睥臓は取出され、ペトリ皿に置かれた。解体大鉗子を使って、白い繊維結合組織が出来るだけ多く取り除かれた。清浄化された脾臓はD−MEM/10%FBS/2×抗生物質と共に別のペトリ皿に置かれた。
6.残留EtOHはグラススライドから炎光乾燥された。スライドは次いで脾臓を3個の片に薄片化するのに使用された。これら3個のそれぞれは次いで、脾臓細胞を解放するために、つや消しスライド末端の間でゆっくりとすりつぶされた。細胞懸濁液は次いでピペットで吸引され、結合組織の大きい片は直ちに先端に沈んだ。これは棄てられ、残存懸濁液は無菌50ml遠心分離チューブに移された。
7.別の5mlのD−MEM/10%FBS/2×抗生物質がペトリ皿に加えられ、これは残存細胞を集めるのに用いられた。溶液は前記のようにピペットされ、細胞は50mlの遠心分離チューブに加えられ、冷蔵庫に入れられた。
8.SP2/0骨髄腫細胞は遠心分離機によって無菌50ml遠心分離チューブに集められた。同時に脾臓細胞は1000rpmで5分間ペレット化された。
9.細胞の両方の組は3回5mlの冷たい無血清D−MEMで洗浄された(すなわち血清はこれら2種の型の融合に干渉する)。
10.2組の細胞は次いでゆっくりたたき、ピペットで移しながら5mlの氷で冷たくした無血清D−MEMで再懸濁された。この細胞懸濁液は氷で冷間保存された。
11.脾臓細胞は次いで血球計を用いて計数された。30μlアリクォットの細胞が取り出され、30μlの4%酢酸に加えられた。酸がRBCを溶解し、脾臓細胞の計数を容易にさせた。サンプルは血球計にかけられ、細胞は25個の大きい四角形で計数された。この数は50に分割された時、ml当り100万個の単位で細胞濃度を示した。約1億個の脾臓細胞が全体で存在した。その内1000万個の脾臓細胞だけが融合に使用された。残りは凍結された。これらの細胞は次いで溶かされ、2回無血清D−MEMで洗浄され、別のもう一つの融合に使用された。このため、細胞は、バイアルガラスビン当り1000万から2000万個の細胞のアリクォットで凍結された。
12.融合工程は脾臓細胞対SP2/0が3:1の割合で行われた(すなわち、SP2/0は計数され、約300万個の細胞が使用された。これは、もとの960個の接種されたものの内約700から800個の成長するウェルが与えられたことになった)。SP2/0細胞懸濁液は次いで脾臓細胞に加えられ、この混合物は5分間1000rpmで回転された。上澄みはすべて除去され、それによりペレットは出来るだけ乾燥するようにした。チューブを激しくたたくことでペレットはゆるくなった。このペレットをばらばらにすることが重要であり、そうすることでPEGは出来るだけ多くの細胞に接触出来るようにさせられた。
13.チューブは次いで37℃の水浴に置かれた。1mlの37℃PEG溶液(融合プロモーター)が一滴ずつ直接ペレットに落ちるように、まる1分間にわたり加えられた。チューブはPEG添加の間回転していた。細胞を懸濁させるために、チューブはゆるやかに、渦を巻かせるようにした。混合物は次いで水浴内で約1分間動かさずにいるようにした。
14.チューブが回転している間に、1ml:37℃の無血清D−MEMが1分間にわたり加えられた。
15.20ml,37℃の無血清D−MEMが次いで4分間にわたり加えられた。
16.1000rpmでこの混合物は5分間回転させられた。上澄みは直ちに除去され、ペレットは100ml,スーパーHAT培地で再懸濁された。マイクロファージを含む10個のプレートの各ウェルに、0.1mlが置かれた。
フィーディング スケジュール
培養は融合の後、培養培地の一部を新鮮な培地に取り替えて栄養補給された。その結果、正常な(融合していない)抗体分泌脾臓細胞により作られる抗体をフィーディングが徐々に希釈化し、その間続けて廃棄物が除かれ栄養分が補給された。
1.3日後0.1mlの培地が細胞層を乱さないよう注意して各ウェルから除去され、新鮮なスーパーHATと取り替えられた。
2.培地は5日後に、再び詰められた。大抵の細胞(つまり融合していない脾臓細胞および融合していない骨髄腫細胞)は、この段階で死滅しているか乾燥していた。スーパーHAT培地で1週間後、すべての親骨髄腫あるいは脾臓細胞は死滅し、成長している細胞は雑種であったと推定された。マクロファージは培地に存在するデブリの殆どを清浄化した。もし培地が黄色になり、観察されるべきハイブリドーマのコロニーが存在しなければ、培地は7日目に再び詰められた。培地が黄色になり観察される成長される細胞のコロニーがあれば、培地は抗体の存在を確認するためスクリーンされた。
3.融合後7日から10日目までに、ハイブリドーマの美しいコロニーが現れた。これらは各ウェルの周辺部に成長するのが観察された。プレートされた960個のウェルの内、764個がハイブリドーマを示した。
4.培養上澄み(50μl)は次いで各ウェルの1/4から1/3が成長する細胞でおおわれた時、スクリーニングのために除去された。
III.クローニングの前の予備スクリーン
各種のハイブリドーマにより分泌された抗体を特性付けるために使用される2種の一般的なスクリーニング方法があった。それは酵素結合イムノソルベント検定法(つまりエリザ検定法)、および間接免疫蛍光検定法であった。以下に記述するものは、培養骨髄誘導間葉幹細胞に対し特性を持つ抗体を生産するハイブリドーマを同定する764個のウェルに存在するハイブリドーマコロニーをスクリーンするために、これらの検定法がいかに使用されたかを要約したものである。
A.IgGエリザ−コロニーが最初に見え出した時、培養上澄みはヒツジ抗マウスIgGに対しエリザでスクリーンされた。このスクリーンはIgGアイソタイプを持つ抗体を分泌するハイブリドーマよりなるすべてのコロニーを同定するために組み込まれた。このアイソタイプは主要分泌抗体であり、また精製および使用するのがもっとも易しいので、望ましい、エピトープに対する特異性を含むIgMおよびIgAに対しても望まれてスクリーンされた。
ウシ抗マウスIgGエリザ検定の詳細な実験記録
ウシ抗マウスIgGエリザプレートの調製
1.500ulのウシ抗マウスIgG(オルガノンテクニカ社,カタログ#06110081)が100mlのダルヴェッコPBS(D−PBS)(ジブコ社)に希釈され、50ulが96ウェル,ビニルマイクロタイトレーションプレート(ジブコ社)の各ウェルに加えられた。
2.抗体は1時間室温で保温された。
3.プレートは次いで2回、1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むD−PBSで洗浄され、非特異的蛋白質結合部位を遮断するために、1時間1%のBSAを含むD−PBSですすぎ洗いされた。
4.プレートは1度0.1%BSAを含むD−PBSですすぎ洗いされ、プラスチック袋にシールして詰められ、使用するまで4℃で貯蔵される。
エリザ検定法の実行
1.抗体培養上澄み液の50ulのアリクォットがエリザ検定中のウェルに加えられ、加湿チャンバーで1時間室温で保温された。
2.プレートは4回0.1%BSAを含むトリス緩衝食塩水(TBS)ですすぎ洗いされた。
3.マウスIgG,IgMおよびIgAに特異的なアルカリ性ホスファターゼ接合ヤギ抗体(オルガノンテクニカ社,カタログ#86110231)が0.1%BSAを含むTBSに1:100−1:250で希釈され、50ulが各ウェルに1時間室温で加湿チャンバーで加えられた。
4.プレートは4回0.1%BSAを含むTBSですすぎ洗いされた。
5.0.0093gのホスファターゼ基質(シグマ社)が、50mMのグリシンおよび1mMの塩化マグネシウム,pH10.5よりなる10mlの基質緩衝液に溶解された。50ulが各ウェルに加えられ、37℃で1時間保温された。ウェル内の黄色は正の抗体反応性を示すものと理解された。
6.正および負の対照はそれぞれ免疫マウス血清および培養培地の同定分析よりなる。
この検定の結果は、ハイブリドーマの成長を示した764個のウェルの内245個のウェルだけがIgGアイソタイプを持つ抗体を分泌する正のテストを示した。これは第5回に設定されるエリザ検定法の結果を写真で提示されている。
B.間接免疫蛍光法によるペレット細胞の凍結部−IgGに正のスクリーンを示したコロニーから得た培養上澄み液は、次いで間接免疫蛍光法でペレット化された培養骨髄誘導間葉細胞の凍結部に対してスクリーンされた。この検定法は、培養骨髄誘導間葉細胞のエピトープに結合された抗体を同定するために設計された。
免疫蛍光検定法によるペレット培養ヒト骨髄細胞に対し結合された抗体の詳細な実験記録
培養拡張ヒト骨髄誘導間葉細胞の凍結部の調整
1.1mMEDTA(ジブコ社)を持つ4mMの0.25%のトリプシンがヒト骨髄誘導間葉細胞の合流培養の100mm培養皿に加えられ、37℃で5分間保温された。
2.トリプリンの酵素活性は2mlのウシ血清の追加で停止された。細胞は1000×gで遠心分離され、上澄み液は廃棄された。ペレット細胞は2回PBSですすぎ洗いされた。
3.2回目のすすぎ洗いの後、上澄み液が除去され、細胞ペレットはOCT組織テック化合物(マイルズ社)を含む小カップに分散され、液体窒素で凍結された。細胞の凍結ブロックは0℃でプラスチック袋に切片にされるまで貯蔵された。
4.組織のブロックは6ミクロン/切片に切断され、ゼラチン被覆スライドの上に置かれた。スライドは必要になるまで0℃でスライド箱に貯蔵された。
間接免疫蛍光染色
1.スライドはフリーザーから移され、使用の前に室温であたためられた。
2.切片は50−100ulの抗体培養上澄み液で被覆され、室温で1時間加湿チャンバーで保温された。スライドは4回0.1%のBSA−PBSですすぎ洗いされた。
3.切片は次いで50ulのFITC接合ヤギ抗マウスIgG(オルガノンテクニカ社,カタログ#1211−0231)で被覆され、それは0.1%のBSA−PBSで1:100から1:200の割合で希釈され、1時間室温で加湿チャンバーで保温された。
4.スライドは4回0.1%BSA−PBSですすぎ洗いされ、PPD免疫蛍光スライド固定培地の一滴をのせてカバーグラスをかけ、オリンパスBH−2エピ蛍光顕微鏡で観察された。
5.負対照スライドは、抗体を含まない培養培地を持つ細胞の同定分析より成り立っていた。
テストの結果は、培養骨髄誘導間葉細胞にエピトープを結合するこれらの抗体を同定した。第6図Aから第6図Hまでを参照されたい。これらはペレット培養拡張ヒト骨髄誘導細胞の典型的な凍結切片の顕微鏡写真である。加えて、染色パターンを綿密に観察すると、細胞内、細胞表面あるいはその双方の抗体の細胞上の位置を同定することになった。関心深いことは、細胞表面に反応するのは抗体だけであったが、細胞内あるいは細胞表面に対する免疫蛍光パターンの解釈が100%正確ではなかったので、培養骨髄誘導間葉細胞のいずれの部分にも反応するすべての抗体が保存され、負の応答をする抗体はスクリーンで除去された。IgG分泌に正の結果を与える245個のウェルの内171個のウェルが、ペレット培養骨髄細胞の凍結切片にも正のテスト結果を出した。
C.ミクロマス培養における生細胞の間接免疫蛍光−培養ヒト骨髄誘導間葉細胞は、組織培養皿の真中に小塊として再プレートされた。この種の培養はミクロマスとして参照される。細胞は通常見える形で残り、拡がりこれら塊の中で複製する。前記AおよびB部分のスクリーンに正の反応性を示したヒブリドーマ上澄み液は、これらミクロマス培養にある細胞と共に保温され、反応経過は下記に示された実験記録に従って間接免疫蛍光で測定された。この検定法で解析された細胞は生細胞であるので、この検定法は、細胞表面にのみ結合され、細胞内エピトープに結合された抗体には負の結果を与える抗体を同定した。
ミクロマスにある生培養拡張骨髄誘導細胞に結合する抗体の詳細な実験記録
ミクロマス培養の調製
1.合流骨髄誘導間葉細胞培養から得た細胞は前記の通り1mM EDTAを含む0.25%のトリプシンで離された。ウシ血清を持つトリプシンで活性を停止させた後、細胞は遠心分離でペレット化され、上澄み液は除去された。
2.細胞は1度5−10ml BGJb完全培地ですすぎ洗いされ、次いで500,000細胞/mlの濃度で完全培地内で再懸濁された。50ulの細胞懸濁液は35mm組織培養皿(フフォルコン社)の真中に移され、一夜37℃で保温された。
間接免疫蛍光染色
1.35mm皿は3回PBSですすぎ洗いされた。100ulアリクォットの抗体培養上澄み液は各皿に加えられ、1日間室温で加湿チャンバーで保温された。
2.皿は3回0.1%BSA−PBSですすぎ洗いされ、次いで、100ulのマウスIgGに特異的なFITC接合ヤギ抗体が、0.1%のBSA−PBSで1:100から1:200に希釈された後に各皿に加えられた。皿は1時間室温で加湿チャンバーで保温された。
3.皿は3回0.1%のBSA−PBSですすぎ洗いされ、PPD免疫蛍光スライド固定培地の一滴を加えた後カバーガラスでおおわれた。免疫蛍光染色はオリンパスBH−2蛍光顕微鏡を用いて観察された。
前記既述の実験記録を利用して、IgG分泌および凍結ペレット培養骨髄細胞に対する特異性の双方に正のテスト結果を示す171個のウェルの中から、15個だけのウェルが、生培養骨髄誘導間葉細胞の特異性に正のテスト結果を示した。第7図Aから第7図Hまでに設定された顕微鏡写真を参照されたい。これはミクロマスにある生培養骨髄誘導間葉細胞の間接免疫蛍光分析の典型的な結果を示すものである。
IV.選択されたコロニーの限定希釈によるクローニング
3個の予備スクリーン(すなわち15個のウェル)のそれぞれに対し、テストで正を示したハイブリドーマは、続くスクリーニング段階が単クローンから発生するハイブラドーマに対し行われることを確実にするために下記の方法によってクローンされた。多重細胞系列は通常もとの「親」ウェルに存在するので、細胞のクローニングはモノクローナルハイブリドーマ細胞系列を得る必要があった。ウェル当り1個以下の密度で細胞を再プレートすることにより、ウェル内で成長したどのコロニーもその細胞の子孫である筈であった。成長するウェルのすべてが2個の系列のクローニングのための関心のある抗体を含んでいた場合は、細胞系統はモノクローナルであると見做された。加えて限定希釈によるクローニングは、更に非生産的細胞による過成長を減少するために行われた。
支持細胞層細胞の調製および馴化培地
1.マウス脾細胞がマクロファージに代ってこの段階で使用された。脾細胞は採集が容易であるけれども、それはウェルにデブリを加え、一方、マクロファージは事実上デブリを取り除いた。
2.マウスは犠牲とされ、その脾臓は前記の通り取り除かれた。
3.細胞は前記記載の通り解放され、計数され37℃スーパーHATが濃度がml当り100万個になるように加えられた。
4.96個のウェル皿がプレートとして使用される時、0.1mlのこの懸濁液は各ウェルに加えられた。24ウェルプレートが使用される時、0.5mlのこの懸濁液が各ウェルに加えられた。
5.代替的に、この細胞懸濁液は更に大きい培養フラスコ(20ml)で3日間成長した。この3日間に、懸濁液は支持細胞層を作り出すために使用された。細胞が3日間で使用されなかった場合には、培地は無菌0.22μmフィルターを通す懸濁液を通過させて収集された。この培地は4℃で数週間貯蔵することが出来るが、それは成長が貧弱である培地に対する有用な添加剤であった。しかしこの培地は支持細胞層の代りには使用されなかった。
クローニング
1.下記のすべての場合において、細胞は、既に支持細胞層を含むウェルにプレートされた(上記参照)。
2.細胞および培地は96−ウェルプレートの親ウェルから24ウェルプレートの1個のウェルに移された。
3.200μlの培地が親ウェルに倣って追加され、残存親細胞が成長を継続出来るようにされた。親ウェルは過失が起きた際にバックアップとして役立てられた。
4.細胞の成長は24ウェルプレートでモニターされた。これはウェルの半分をおおうコロニーの成長のために約3日から7日間を要した。成長がゆるやかであった、これらのウェルには追加の調節された培地が加えられた。
5.細胞が順調に成長する時、培地は再び抗体に対しスクリーンされた。もし細胞が抗体の分泌を停止したなら、これら細胞をクローニングする点が存在しないので、これは必要な段階であった。
6.関心のある抗体が存在していた場合、小さいアクリォット(50μl)の細胞がコロニーの端から除かれた。もっとも活性的に成長する細胞が発見された場合はこれは正常である。
7.10ulのこのアリクォットは30μlの0.5%トリパンブルー染料に加えられた。可視の細胞は計数され、死滅細胞はブルーに見えた。最終細胞濃度が決定された時には、トリパンを使う溶液で説明することが重要であった。
8.残存する40μlのアリクォットは、100個の細胞が正しく除去されるように操作された。
9.これら100個の細胞は20mlのスーパーHATに加えられ、その懸濁液は混合され、96ウェルの2個のプレートに一様にプレートされた。これは2個のプレートに、ウェル当り0.5の細胞が存在することになった。
10.コロニーはウェルの約半分に5日から10日で展開した。速やかに成育するコロニーは抗体をスクリーンされた。正のコロニーが発見された時は、4個のコロニーが24ウェルプレートの新しいウェルに移された。
11.200μlの培地は96ウェルプレートに戻して加えられ、新しい24ウェルプレートは前記のもとの24ウェルプレートと全く同じに処理された。これはもしクローニング(あるいは他のもの)が失敗した時にバックアップのもう一つの源として用意された。約300万個の細胞がバイアル当りで凍結された。
12.融合から約2週間後に、細胞はスーパーHATからスーパーH+T培地に移された。
13.クローニングは、100%のサブクローンで2世代にわたり正になるまで上記の手法を用いて続けられた。
14.続いてより「クローナル」な細胞がまた予防手段として凍結された。
15.細胞系列がモノクローナルであることが一度満足されると、培養培地はハイブリドーマ20%に変化された。この培地は細胞成長を促進させるものであるが、それは78mlのD−MEM,20mlのFBS,1mlのグルタミン(ジブコ社、#320−5030),1mlの溶液I(前記参照のこと),0.1mlのゲンタマイシン(M.A.バイオプロダクツ社、#17−5187)よりなる。
V.ハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体の回収
クローン化ハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ20%培地にクローン化ハイブリドーマを(個別に)培養するか、あるいはマウスにクローン化ヒブドリーマを腹腔内に培養してマウスからの悪性腹水もしくは血清を含む抗体を収穫するかのいずれかにより回収された。これに関し、下記の方法を利用して、マウスの腹腔内に成長したハイブリドーマ細胞は、モノクローナル抗体に富む腹水を生産した。
1.受容体マウスは、各マウスに0.5mlのプリスティン(2,6,10,14,四メチルペンタデカン,シグマ社、カタログ#T−7640)を腹腔内注射することにより腫瘍細胞接種の5日から10日前に「感作」された。腫瘍を成長させるのみ用いるマウスは、ハイブリドーマ細胞系列をはじめに発生させるのに利用したものと同じ系統のものであった。使用されるマウスは生まれて約8週から12週のものであった。1個の腫瘍系列は一時に6匹のマウスに成長した。
2.培養で、馴化モノクローナル細胞系列が対数期に成長した。約3,000万個の細胞が採集された。
3.細胞は1,000rpmで5分間回転され、次いで培養上澄み液から除かれた。
4.血清は腫瘍生産に干渉し腹水を汚染するので、細胞は無血清培地で洗浄され再び回転された。
5.細胞は無血清培地(つまりDMEM−HG,ジブコ社,ニューヨーク州グランドアイランド)で再懸濁され、最終細胞密度がml当り1,000万個になるようにされた。
6.23ゲージ針を使用し、0.5ml(500万個の細胞)の懸濁液が各受容者マウスの腹腔に注射された。
7.約1週間後、マウスは「鼓張」腹腔を持つようにみえた。一度その腹腔がプラムの大きさなどに拡張したようにみえると、腹腔内に存在する腹水は採集された。
8.採集の際、マウスはメタフェイン(メトキンファレラン;ピットマンムーア社,カタログ#NDC11716−5943−4)を使用して麻酔された。22ゲージ針を使って、腹部の皮膚は穿孔され、針が腹腔内のごく表面に挿入できた。腹水は次いで針で汲み取られ用意された容器に移された。マウスおよびもしくは針を動かして、5mg/ml位の液体を得ることが出来た。この液体は0.5−5mg/mlの範囲で抗体を産出した。
9.動物はおりに戻され回復を待ち、将来の採取に備えた。
10.実験のどの段階においても麻酔からさめなかった動物で、残存腹水が、開腹手術およびプールされた液を移して得られた。これに関して、死亡して1時間以上経たマウスからはこの液は採集されなかったことが重要であった。
11.一度液が採集されると、それはRBCおよび他の望ましくない細胞をペレットにしないために3000rpmで5分間回転された。
12.窒化ナトリウムが次いで最終濃度が0.02%になるように加えられた。この腹水は、次いで少量のアリクォットで−70℃で貯蔵された。凍結および氷結に対する各抗体の安定度が全腹水調整品が凍結する前にテストされた。
VI.クローン化ハイブリドーマのスクリーニング
クローン化ハイブリドーマ(15個のウェル)は骨髄誘導間葉細胞に対するモノクローナル抗体の特異性の度合を同定するため、一連の間葉細胞および非間葉細胞誘導組織に対してスクリーンされた。
3個の最適ハイブリドーマ、すなわちSH2,SH3およびSH4のテスト結果が暗騒音に対する対照に対して評価された。この考えにもとづいて、第4表で(−)は対照に関して可視的な反応を一切示さないことを示し、(±)は対照に関して1%以下の反応性を示し、評価の目的のためには(−)と見做された。また(+)は対照に関しかなりの反応性を示している。各実験で負の対照は関心のある細胞あるいは組織を、SB−1,つまりニワトリアルカリ性ホスファターゼに対するモノクローナル抗体と共に保温することを含み、このSB−1は(抗体のない)ヒト細胞とは反応せず、次いでこの保温されたものはFITCと標識された第2の抗体ですすぎ洗いされた。
A.特異性の最初のレベルおよびもっとも重要なレベルは、モノクローナル抗体が骨髄にある造血系列細胞とは反応しないということであった。これを決定するために、全骨髄および骨髄のいくつかの分画が下記に示された実験記録に従って間接免疫蛍光法によりハイブリドーマ培養上澄み液に対してスクリーンされた。イソチオシアン酸塩蛍光色表(FITC)を用いて、正の細胞、および何%か正の細胞が認められたが、しかし、すべてのハイブリドーマは次のレベルでのスクリーニングのために保存された。
骨髄の調製
全骨髄および低密度パーコル分画は実施例1で前記既述されたように用意され、培養拡張骨髄誘導間葉細胞のために前述の通り凍結切片を持っていた。
間接免疫蛍光法染色
全骨髄および低密度バーコル分画の切片は、培養拡張間葉細胞の凍結切片でスクリーニングするために、前記記載と同じ方法を使用して、ハイブリドーマでクローン化された抗体培養上澄み液でスクリーンされた。
B.間葉誘導組織に対するモノクローナル抗体のスクリーニング−各種の間葉組織は、モノクローナル抗体が骨髄誘導間葉細胞および分化間葉組織に共通するエピトープに反応するかどうかを決定するために、外科手術あるいは解剖で得れらた。組織の凍結切片はハイブリドーマ培養上澄み液に対しスクリーニングされ、下記の方法に従って間接免疫蛍光法により解析された。
間接免疫蛍光法によるクローン化ハイブリドーマ上澄み液に対する組織切片のスクリーニングに関する詳細実験記録
組織切片の調製
1.下記の組織が外科生検あるいは解剖でヒト患者より得られた。皮膚、包皮、腸、心、骨格筋、肺、肝、脳、腱、靭帯、胆嚢、関節軟骨、大腿骨、肋骨軟骨および骨膜であった。
2.下記の動物組織もスクリーニングのために得られた。ニワトリ骨および骨髄、ウサギ骨および骨髄、ラット骨およびウシ軟骨および骨。
3.組織はそれぞれOCT組織テック凍結培地(マイルズ社)に包埋され、液体窒素で凍結ブロックされ、使用するまで0℃で貯蔵された。
4.組織ブロックは、6ミクロン厚の切片にされ、ゼラチン被覆スライドに置かれ、使用するまで0℃で貯蔵された。
間接免疫蛍光法染色
組織切片は、凍結切片で培養拡張細胞をスクリーニングするための前記記載と同じ方法を用いてクローン化ヒブリドーマより得たハイブリドーマ培養上澄み液に対しスクリーニングされた。
正および負の反応が認められ、反応性のパターンが記載された(第4表)。すべてのクローン化ハイブリドーマは次のレベルでスクリーニングのために保存された。
C.非間葉誘導組織に対するモノクローナル抗体のスクリーニング−このスクリーニング実験記録の全体としての目的は、骨髄誘導間葉細胞およびもしくはその系列の子孫に対し特異的である抗体を分泌するハイブリドーマを同定することであった。非間葉誘導細胞に反応する抗体は、従って特異的でもなくユニークでもなかった。多くの非間葉誘導組織が解剖で得られ、凍結切片が用意された。ハイブリドーマ培養上澄み液はこれらの切片と共に保温され、抗体反応性は前記記載の間接免疫蛍光法で解析された。正および負の反応性が、反応性のパターンと同じように同定された。

前記の結果は、3個のハイブリドーマ、すなわちSH2,SH3、およびSH4が固定されクローニングされたことを意味している。これらのハイブリードマは骨髄誘導間葉細胞の分析に有用である。3個のハイブリドーマのすべては、培養拡張骨髄誘導間葉細胞の検定で細胞の99〜100%の細胞表面エピトープと反応する抗体を分泌する。対照的に、3個のハイブリドーマのそれぞれは、全骨髄の検定で細胞の1%以下と反応する抗体を分泌する。これら抗体が骨髄誘導間葉細胞と選択的に結合し、造血細胞とは結合しないという抗体の能力はその抗体を骨髄のサンプルにある骨髄誘導間葉細胞の数を定量化し、またそのような骨髄からの細胞の精製のための、優れたプローブにさせる。
加えて、3個のハイブリドーマのすべては、各種の間葉細胞および非間葉細胞誘導組織に対してスクリーンさせると、ある交差反応性はそれぞれについて観察されたものの、殆ど負の交差反応性を示した。特に関心が深いのは、SH3およびSH4が、ヒト骨膜から誘導された培養細胞にある細胞表面決定因子に対し交差反応をしたことであった。発明者は骨膜が骨髄誘導間葉細胞のもう一つの源であることをこれまでに示したきたように、骨膜細胞の細胞表面エピトープに対する前記抗体の交差反応性は、骨髄誘導間葉細胞および骨膜誘導間葉細胞の間の構造的な関係を示している。しかしSH2抗体は、それが骨髄誘導間葉幹細胞と結合したにもかかわらず、骨膜誘導間葉幹細胞とは反応しなかった、この選択性は、SH2抗体と、骨髄誘導および骨膜誘導間葉幹細胞の間を区別するのに有用なものとしている。SH2の選択性はSH3およびSH4の交差反応性を加えて、骨髄誘導および骨膜誘導間葉幹細胞が関連しているものの同定ではないことを提示するものである。
実施例3
前記で生産されるモノクローナル抗体は、更に骨髄誘導間葉細胞および骨髄誘導造血細胞を区別するのに利用できる。そのような区別をすることが出来る能力は、全骨髄のサンプルにある間葉細胞の数を安定化する診断試薬を間発するのに有用である。その結果として、モノクローナル抗体を含む診断試薬は、次いで間葉細胞数の異常に少ない患者を同定するのに利用することが出来る。間葉細胞の低いレベルは、異常に低い骨の合成の指標となることを立証し、これは骨粗鬆症に導くことになる。
加えて、モノクローナル抗体を基礎とする診断方法は、将来の骨髄移植に具えて収穫される骨髄にある間葉細胞の濃度を測定するのに有用である。間葉細胞のレベルが低いことは、骨髄移植の成功の可能性を減少させる。何故なら、骨髄基質は基質細胞に分化する適切な間葉細胞がなければそれは速やかに完全に発達することがないからである。加えて、骨髄誘導間葉細胞と骨髄誘導造血細胞とを判断する検定法は、全骨髄からの間葉細胞を精製するのに利用することも出来る。精製された細胞は培養抗体をより効率的にし、また骨髄移植の骨格収復を増加することにもなる。
前記の通り生産されたSH2間葉モノクローナル抗体のように骨髄誘導間葉細胞と骨髄造血細胞とを判別するモノクローナル抗体の効率を示すための方法の設計は、下記の一般的に定義された方法を含む。
(1)懸濁液あるいは溶液で培養された間葉細胞および全骨髄細胞の間接免疫蛍光染色法。
(2)培養拡張間葉細胞の低温切片および全骨髄細胞の低温切片の間接免疫蛍光染色法。
(3)全骨髄細胞の懸濁液に混合された間接免疫蛍光染色培養拡張間葉細胞のフロー血球計測定(あるいは精製)。
更に、前記生産されたモノクローナル抗体は、骨髄誘導間葉細胞と骨膜誘導間葉細胞とを判別することも出来る。そのような区別は、両方のタイプの間葉細胞が存在する状況下で、骨髄誘導間葉細胞数を定量化する診断的検定法を展開するために有用である。例えばこのタイプの検定法は、各種のタイプの骨折の後の治療過程で、骨髄誘導間葉細胞の相対的な貢献度を決定するのに有用であろう。
SH2モノクローナル抗体のように、骨髄誘導間葉細胞および骨膜誘導間葉細胞とを判断するモノクローナル抗体の有効性を示す方法の設計は、下記の一般に定義された方法を含む。
(1)SH2モノクローナル抗体を使用する、培養拡張骨膜誘導間葉細胞をも含む懸濁液から、培養拡張骨髄誘導間葉細胞を取り出す間接免疫蛍光染色法。
(2)培養拡張骨髄誘導間葉細胞および骨膜誘導間葉細胞の量の知られている混合集団の低温切片の間接免疫蛍光染色法。
(3)培養体に(ミクロマスの形で)存在する生体骨髄誘導間葉細胞および生体骨膜誘導間葉細胞の間接免疫蛍光染色法。
この発明は望ましい実施例に従って、説明されてきた。明らかに、先行する詳細な説明を読み理解するつれて、修正および変更が他に生じるであろう。この発明は、そのような修正あるいは変更が添付する請求の範囲あるいはそれと同等のものの範囲内であれば、これらを含むものとして解釈されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1図はヒト骨髄から得た繊維芽細胞状細胞の単分子層培養の位相差光学顕微鏡写真である(100倍)。
【図2】第2図はヌードマウスで2週間培養された後の培養ヒト骨髄繊維芽細胞およびセラミックを含有する合成物の一つの組織部分の一連の光学顕微鏡写真(マロリー・ハイデンハイン染色法)である。第2図Aはセラミック幻影の細孔をライニングする新しい骨(B)の形成を示す(40倍)。第2図Bは、繊維組織(F)が大抵の細孔に現れており、一方宿主の血管(V)はいくつかの細孔だけに現れ他の細孔には出ていなかったことを示す(第2図Aのボックス部の100倍)。第2図Cは、骨細胞(C)が骨基質内に明らかに見える形で包埋されたことを示す。推定上の骨芽細胞(OB)は新しい骨基質の内部表面にライニングされた(第2図2Bのボックス部の400倍)。
【図3】第3図は、ヌードマウスで3週間培養後のセラミック内の培養ヒト骨髄繊維芽細胞を含有する合成物の一つの組織部分の一連の光学顕微鏡写真(マロリー・ハイデンハイン染色法)である。第3図Aは、骨(B)が第2図(2週間培養)よりもずっと数多くのセラミック幻影の細孔をライニングしていることが観察されたことを示す(40倍)。第3図Bは、繊維組織(F)が殆どの細孔の内部空間にまだ残っていたことを示す。加えて、宿主の血管(V)がいくつかの細孔にも現れていた(第3図Aのボックス部の100倍)。
【図4】第4図は、ヌードマウスで6週間培養された後のセラミック内の培養されたヒト骨髄繊維芽細胞の組織切片の2枚の光学顕微鏡写真(マロリー・ハイデンハイン染色法)である。第4図Aは、骨(B)がセラミック幻影(G)の殆どの細孔がライニングされているのが観察されたことを示す(40倍)。第4図Bは、繊維組織(F)がいくつかの細孔の内部空間で観察されたが、骨髄(M)および血管(V)は大多数の細孔を繊維組織でとりかえていたことを示す(第4図Aのボックス部の100倍)。
【図5】第5図は実施例2(III)(A)のIgGエリザ(免疫グロブリンG酵素結合イムノソルベント検定法)検定の正の結果を示す写真である。
【図6】第6図Aから第6図Hまでは、間接免疫蛍光法によりペレット化した培養で拡大されたヒト骨髄誘導細胞の典型的な凍結切片の顕微鏡写真である。第6図A(位相)および第6図B(蛍光)、第6図C(位相)および第6図D(蛍光)、および第6図E(位相)並びに第6図F(蛍光)、更に第6図G(位相)、および第6図H(蛍光)は、IgG分泌にとっての特異性および凍結ペレット化培養骨髄細胞に対しての特異性に対して正であることが検証されたSB−1対照、SH2,SH3およびSH4抗体を表す。
【図7】第7図Aから第7図Hまでは、ミクロマスでの生培養骨髄誘導間葉細胞の間接免疫蛍光分析で得られた典型的な正の結果を示すものである。第7図A(位相)および第7図B(蛍光)、第7図C(位相)および第7図D(蛍光)、および第7図E(位相)並びに第7図F(蛍光)、更に第7図G(位相)および第7図H(蛍光)は生培養骨髄誘導間葉細胞への特異性に対し正であることが検証されたSB−1対照、SH2、SH3、およびSH4抗体を表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上の結合組織型の細胞に分化できる単離されたヒト間葉幹細胞の集団。
【請求項2】
前記ヒト間葉幹細胞がATCCアクセッション番号HB10743であるハイブリドーマ細胞系SH2から産生される抗体に結合するという特性を有する、請求項1記載の集団。
【請求項3】
前記ヒト間葉幹細胞がATCCアクセッション番号HB10744であるハイブリドーマ細胞系SH3から産生される抗体に結合するという特性を有する、請求項1記載の集団。
【請求項4】
前記ヒト間葉幹細胞がATCCアクセッション番号HB10745であるハイブリドーマ細胞系SH4から産生される抗体に結合するという特性を有する、請求項1記載の集団。
【請求項5】
請求項1記載のヒト間葉幹細胞および薬理許容担体を含有する治療用組成物であって、該ヒト間葉幹細胞が結合組織細胞を産生するための有効量で存在する、治療用組成物。
【請求項6】
前記結合組織が軟骨であることを特徴とする、請求項5記載の治療用組成物。
【請求項7】
前記結合組織が靭帯であることを特徴とする、請求項5記載の治療用組成物。
【請求項8】
前記結合組織が腱であることを特徴とする、請求項5記載の治療用組成物。
【請求項9】
前記結合組織が脂肪細胞であることを特徴とする、請求項5記載の治療用組成物。
【請求項10】
骨髄からヒト間葉幹細胞を単離する方法であって以下の工程:
(a)骨髄細胞を採取すること;
(b)前記骨髄細胞中の単核細胞を赤血球から分離すること;
(c)前記単核細胞を培養皿上の培地中で培養すること;
(d)接着性の細胞を伸展し非接着性の細胞を除くために前記陪地を新鮮な培地に交換すること;そして
(e)前記接着性の細胞を前記培養皿から回収すること
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記ヒト間葉幹細胞の少なくとも一つのモノクローナル抗体への結合性を評価する工程をさらに含む請求項10記載の方法であって、
該少なくとも一つのモノクローナル抗体が、
ATCCアクセッション番号HB10743であるハイブリドーマ細胞系SH2;
ATCCアクセッション番号HB10744であるハイブリドーマ細胞系SH3;又は、
ATCCアクセッション番号HB10745であるハイブリドーマ細胞系SH4
から生産される抗体と同じものであることを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
少なくとも一つのモノクローナル抗体に結合する特性を有する細胞の集団を選択する工程をさらに含む請求項11記載の方法であって、
該少なくとも一つのモノクローナル抗体が、
ATCCアクセッション番号HB10743であるハイブリドーマ細胞系SH2;
ATCCアクセッション番号HB10744であるハイブリドーマ細胞系SH3;又は、
ATCCアクセッション番号HB10745であるハイブリドーマ細胞系SH4
から生産される抗体と同じものであることを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法を用いて単離されたヒト間葉幹細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−28056(P2009−28056A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277349(P2008−277349)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【分割の表示】特願平5−501124の分割
【原出願日】平成4年6月16日(1992.6.16)
【出願人】(500430486)オシリス セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】