髄内釘の姿勢矯正装置及びこの姿勢矯正装置による髄内釘の姿勢矯正方法
【課題】 髄腔内に挿入した正しくない姿勢の髄内釘を簡単な操作で正規の姿勢に矯正する。
【解決手段】 近位側から骨の中に挿入される髄内釘の姿勢矯正装置であり、この姿勢矯正装置が、釘軸方向遠位端に姿勢矯正孔が穿孔されるとともに、姿勢矯正孔より近位側に一又は複数のスクリュー孔が穿孔された髄内釘と、髄内釘の近位端に連結されて皮膚外で骨に沿い、姿勢矯正孔及びスクリュー孔に対応した位置に姿勢矯正用鋼線を挿入するための鋼線ガイド孔とスクリューを挿入するためのスクリューガイド孔が形成された挿入ガイドとからなることを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置。
【解決手段】 近位側から骨の中に挿入される髄内釘の姿勢矯正装置であり、この姿勢矯正装置が、釘軸方向遠位端に姿勢矯正孔が穿孔されるとともに、姿勢矯正孔より近位側に一又は複数のスクリュー孔が穿孔された髄内釘と、髄内釘の近位端に連結されて皮膚外で骨に沿い、姿勢矯正孔及びスクリュー孔に対応した位置に姿勢矯正用鋼線を挿入するための鋼線ガイド孔とスクリューを挿入するためのスクリューガイド孔が形成された挿入ガイドとからなることを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折治療等に際して骨内に挿入される髄内釘の姿勢矯正装置及びこの姿勢矯正装置による髄内釘の姿勢矯正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨折治療は、骨折面を接合した状態で骨を固定しておくのが一般的である。これに用いるのが固定具であるが、最近では、骨折個所を通過させて髄腔内に髄内釘を挿入し、骨外から髄内釘に形成した複数のスクリュー孔を通してスクリューを骨に螺入して固定する内固定具が、整復位の確保が確実で、かつ患者の自由の束縛が低いことから多く使用されている。この場合のスクリュー孔にスクリューを通すには、各スクリュー孔に対応した位置にスクリューガイド孔を形成した挿入ガイドを髄内釘に連結して体外に設け、このスクリューガイド孔をガイドとしてスクリューを挿入していた。
【0003】
ところが、髄内釘は金属棒で構成されるものの、骨内に挿入するときには挿入の方向や組織の抵抗等によって多少なりとも曲がりや捩じれ或いは傾きが生じて真っ直ぐな正規の姿勢にはなかなかなり難い。これが正規の姿勢にならないと、スクリューガイド孔をガイドとして挿入するスクリューがスクリュー孔に合わない。このため、X線を照射してその画像を見ながら調整したりしているが、これによると、X線の被爆の問題が生ずる。
【0004】
髄内釘に形成されたスクリュー孔にスクリューを合わせるものに下記特許文献1に示されるものがある。これは、髄内釘に連結される挿入ガイドに髄内釘のスクリュー孔に対応した位置に誘導孔を形成しておき、この誘導孔からドリルガイドを介してドリルを挿入してスクリュー挿通孔を再度穿孔するものである。そして、この操作は各スクリュー孔ごとに行うとしており、これによると、操作(手術)に手間がかかり、患者に大きな負担を強いていた。また、穿孔の際に発生する切粉の問題も発生する。
【0005】
一方、下記特許文献2には、髄内釘の遠位端に大径の遊嵌挿通孔を形成するとともに、この遊嵌挿通孔と遠位端のスクリュー孔とを誘導溝で連絡し、遠位端に挿通するスクリューをまず遊嵌挿通孔に挿通し、しかる後に髄内釘を押してスクリュー孔に導くものが開示されている。しかし、髄内釘を近位端から押したのでは、依然として曲がりや撓みが矯正できず、髄内釘が正規の姿勢である真直になり難い点は解決されない。特に、髄内釘が長い場合は、このことが顕著である。
【特許文献1】特開2003−210479号公報
【特許文献2】特開2000−051225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題を解決するもので、一度の姿勢矯正操作を行うことで髄内釘を正規の姿勢にできるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、近位側から骨の中に挿入される髄内釘の姿勢矯正装置であり、この姿勢矯正装置が、釘軸方向遠位端に姿勢矯正孔が穿孔されるとともに、姿勢矯正孔より近位側に一又は複数のスクリュー孔が穿孔された髄内釘と、髄内釘の近位端に連結されて皮膚外で骨に沿い、姿勢矯正孔及びスクリュー孔に対応した位置に姿勢矯正用鋼線を挿入するための鋼線ガイド孔とスクリューを挿入するためのスクリューガイド孔が形成された挿入ガイドとからなることを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置を提供したものである。
【0008】
そして、本発明は、以上の姿勢矯正装置において、請求項2に記載した、スクリューガイド孔にスクリューをガイドするスクリューガイドが挿入可能であり、鋼線ガイド孔に姿勢矯正用鋼線をガイドする鋼線ガイドが挿入可能である手段、請求項3に記載した、スクリューガイドにドリルをガイドするドリルガイドが挿入可能である手段、請求項4に記載した、姿勢矯正孔が鋼線ガイド孔側に向かってすり鉢形をしている手段を提供する。
【0009】
また、本発明は、この髄内釘の姿勢矯正装置による髄内釘の姿勢矯正方法として、請求項5に記載した、骨内に挿入された髄内釘の姿勢矯正孔に挿入ガイドの鋼線ガイド孔を通して姿勢矯正用鋼線を挿入することで、髄内釘を正規の姿勢に矯正することを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法を提供するとともに、請求項6に記載した、鋼線ガイド孔に姿勢矯正用鋼線をガイドする鋼線ガイドが挿入され、姿勢矯正用鋼線が鋼線ガイドをガイドとして姿勢矯正孔に挿入される手段、請求項7に記載した、スクリューガイドにドリルをガイドするドリルガイドが挿入され、ドリルガイドをガイドとしてドリルを挿入してスクリュー孔の前後に存する骨に下孔を穿孔し、これら下孔にスクリュー孔を挿通してスクリューをねじ込む手段を提供したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の手段によると、髄内釘の遠位端は姿勢矯正用鋼線によって正規の姿勢に矯正される。したがって、スクリュー孔とこれに対応して挿入ガイドに形成されたスクリューガイド孔との位置が合致するから、スクリュー孔を予め形成しておいても、これに手直し加工等をする必要なしにスクリューを挿通することができる。この点で、手術時間が短縮され、患者の負担が減るし、切粉の問題も生じない。また、請求項5の手段によると、手技が容易で短時間に骨と髄内釘を固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る姿勢矯正装置を分解した状態の斜視図、図2は組み立てた状態の斜視図であるが、この姿勢矯正装置は、髄内釘1と、挿入ガイド2とからなる。このうち、髄内釘1は,生体適合金属で構成された細長い棒状をしているもので、先端(骨内に挿入されたときの遠位端)に姿勢矯正孔3が形成され、近位側にかけて複数のスクリュー孔4が適宜な間隔で形成され、更に後端(近位端)に雌ネジ5が形成されたものである。
【0012】
挿入ガイド2は、J形をした金属体であり、上端の頭部(近位端)に固定ネジ6が挿入される挿入部7が形成されたものである。固定ネジ6は、この挿入部7に上方から挿入されるものであり、上端に摘み8が形成され、下端に髄内釘1の雌ネジ5に螺入される雄ネジ9が形成されたものである。固定ネジ6を挿入部7に挿入すると、雄ネジ9は挿入部7から覗くようになっており、これに髄内釘1の雌ネジ5を螺入すると、髄内釘1は挿入部によって上下いずれにも動かないように固定される。
【0013】
挿入ガイド2の胴部から尾部にかけては、上記の状態にしたときの髄内釘1の姿勢矯正孔3に対応する位置に後述する姿勢矯正用鋼線10が挿入される鋼線ガイド孔11が形成され、各々のスクリュー孔4に対応した位置にスクリューガイド孔12がそれぞれ形成されている。ただし、スクリューガイド孔12は、他の種類の髄内釘1を連結する場合に備えてこれ以外にも形成されていることがある。
【0014】
次に、以上の姿勢矯正装置を用いる手技について説明すると、図3は髄内釘1を長管骨(本例では上腕骨)に挿入した場合の説明図であるが、骨13が骨折等を負うと、髄内釘1に挿入ガイド2を連結した状態で、髄内釘1を近位側から骨折個所を通過させて挿入する。髄内釘1を正規の位置まで挿入すると、挿入ガイド2の鋼線ガイド孔11から姿勢矯正用鋼線10を挿通して姿勢矯正孔3に挿入する。姿勢矯正用鋼線10は、キルシュナー鋼線と呼ばれる細い鋼線であり、これを直に鋼線ガイド孔11から姿勢矯正孔3に差し込んでもよいが、挿入に難儀をすることも多いから、そのようなときには鋼線ガイド14を用いる。
【0015】
図4はその説明図であるが、この鋼線ガイド14は、姿勢矯正用鋼線10を通すことができるスリーブ14aを有するもので、その後端に操作用のハンドル14bが設けられており、ハンドル14bを操作してスリーブ14aを鋼線ガイド孔11に挿入する(このとき、鋼線ガイド孔11の径は、スリーブ14aの外径に対応したものになっている)。そして、スリーブ14aに姿勢矯正用鋼線10を挿入して姿勢矯正孔3に挿入するが、通常、髄内釘1は曲がり、撓み、捩じれや倒れがあって、鋼線ガイド孔11と姿勢矯正孔3とは合致していないのが実情である。しかし、この不一致は多くても2mm程度であるから、強く押し込めば、挿入できる。
【0016】
このとき、姿勢矯正孔3をガイド孔11に向けてすり鉢形(テーパ)にしておけば、挿入がより確実になる。姿勢矯正用鋼線10が姿勢矯正孔3に挿入されると、髄内釘1は遠位側に引っ張られてその曲がり、撓み、捩じれや倒れといったものが矯正されて真っ直ぐになり、スクリュー孔4と挿入ガイド2のスクリューガイド孔12との位置が対応したものになる。図5はこの状態を示す側面図、図6は断面図であるが、このように、鋼線ガイド14のスリーブ14aは骨13の表面まで挿入するのが剛性が高まって矯正力が強化されて好ましい。
【0017】
髄内釘1が正規の姿勢に矯正されると、そのスクリュー孔4にスクリュー15を通して骨13にネジ込むが、このときのネジ込みを確実、かつ容易にするために、スクリュー孔4の前後に存する骨(皮骨)13にドリル19によって下孔を穿孔する。図7はこれを示す説明図、図8は要部の側面図、図9は断面図であるが、この下孔の穿孔は、挿入ガイド2のスクリューガイド孔12にスクリューガイド16を通し、更にこのスクリューガイド16にドリルガイド18を通して行う。この場合のスクリューガイド16及びドリルガイド18は、共に上記した鋼線ガイド14と同様のそれぞれスリーブ16a、18aとハンドル16b、18bとを有するものである。
【0018】
まず、スクリューガイド16のハンドル16bを操作してそのスリーブ16aを挿入ガイド2に形成されたスクリューガイド孔12に挿入し、次に、スクリューガイド16のスリーブ16aにドリルガイド18のハンドル18bを操作してそのスリーブ18aを挿入し、このスリーブ18aをガイドとしてドリル19を挿入し、スクリュー孔4の前後の骨13に下孔を穿孔する。図10はスクリュー15のネジ込みを示す説明図、図11は要部の側面図、図12は断面図であるが、以上の操作が終了すると、ドリルガイド18を抜き出してスクリューガイド16のスリーブ16aをガイドとしてドライバー17によってスクリュー15を骨13にネジ込む。
【0019】
以上の操作を各スクリュー孔4に対して行うと、スクリュー15による骨13と髄内釘1の固定は終了する。ただし、操作の手順としては、下孔の穿孔を各スクリュー孔4に対して順次行ってその後にスクリュー15のネジ込みをまとめて行うこともある。 このようにして骨13と髄内釘1の固定が終了すると、挿入ガイド2を外して施術は終了する。なお、スクリュー15が太くて骨13が硬いような場合には、ドリル19による下孔を穿孔した後にタップを挿入し、ネジ孔を形成することもある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】姿勢矯正装置(分解した状態)の斜視図である。
【図2】姿勢矯正装置(組立てた状態)の斜視図である。
【図3】姿勢矯正装置を骨に挿入した状態の説明図である。
【図4】姿勢矯正用鋼線を鋼線ガイド孔から挿入するときの説明図である。
【図5】姿勢矯正用鋼線を髄内釘に挿入する状態の側面図である。
【図6】姿勢矯正用鋼線を髄内釘に挿入する状態の断面図である。
【図7】ドリルによって骨に下孔を穿孔するときの説明図である。
【図8】ドリルによって骨に下孔を穿孔するときの側面図である。
【図9】ドリルによって骨に下孔を穿孔するときの断面図である。
【図10】スクリューを骨にネジ込むときの説明図である。
【図11】スクリューを骨にネジ込むときの側面図である。
【図12】スクリューを骨にネジ込むときの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 髄内釘
2 挿入ガイド
3 姿勢矯正孔
4 スクリュー孔
5 雌ネジ
6 固定ネジ
7 挿入部
8 摘み
9 雄ネジ
10 姿勢矯正用鋼線
11 鋼線ガイド孔
12 スクリューガイド孔
13 骨
14 鋼線ガイド
14a 〃 のスリーブ
14b 〃 のハンドル
15 スクリュー
16 スクリューガイド
16a 〃 のスリーブ
16b 〃 のハンドル
17 ドライバー
18 ドリルガイド
18a 〃 のスリーブ
18b 〃 のハンドル
19 ドリル
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折治療等に際して骨内に挿入される髄内釘の姿勢矯正装置及びこの姿勢矯正装置による髄内釘の姿勢矯正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨折治療は、骨折面を接合した状態で骨を固定しておくのが一般的である。これに用いるのが固定具であるが、最近では、骨折個所を通過させて髄腔内に髄内釘を挿入し、骨外から髄内釘に形成した複数のスクリュー孔を通してスクリューを骨に螺入して固定する内固定具が、整復位の確保が確実で、かつ患者の自由の束縛が低いことから多く使用されている。この場合のスクリュー孔にスクリューを通すには、各スクリュー孔に対応した位置にスクリューガイド孔を形成した挿入ガイドを髄内釘に連結して体外に設け、このスクリューガイド孔をガイドとしてスクリューを挿入していた。
【0003】
ところが、髄内釘は金属棒で構成されるものの、骨内に挿入するときには挿入の方向や組織の抵抗等によって多少なりとも曲がりや捩じれ或いは傾きが生じて真っ直ぐな正規の姿勢にはなかなかなり難い。これが正規の姿勢にならないと、スクリューガイド孔をガイドとして挿入するスクリューがスクリュー孔に合わない。このため、X線を照射してその画像を見ながら調整したりしているが、これによると、X線の被爆の問題が生ずる。
【0004】
髄内釘に形成されたスクリュー孔にスクリューを合わせるものに下記特許文献1に示されるものがある。これは、髄内釘に連結される挿入ガイドに髄内釘のスクリュー孔に対応した位置に誘導孔を形成しておき、この誘導孔からドリルガイドを介してドリルを挿入してスクリュー挿通孔を再度穿孔するものである。そして、この操作は各スクリュー孔ごとに行うとしており、これによると、操作(手術)に手間がかかり、患者に大きな負担を強いていた。また、穿孔の際に発生する切粉の問題も発生する。
【0005】
一方、下記特許文献2には、髄内釘の遠位端に大径の遊嵌挿通孔を形成するとともに、この遊嵌挿通孔と遠位端のスクリュー孔とを誘導溝で連絡し、遠位端に挿通するスクリューをまず遊嵌挿通孔に挿通し、しかる後に髄内釘を押してスクリュー孔に導くものが開示されている。しかし、髄内釘を近位端から押したのでは、依然として曲がりや撓みが矯正できず、髄内釘が正規の姿勢である真直になり難い点は解決されない。特に、髄内釘が長い場合は、このことが顕著である。
【特許文献1】特開2003−210479号公報
【特許文献2】特開2000−051225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題を解決するもので、一度の姿勢矯正操作を行うことで髄内釘を正規の姿勢にできるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、近位側から骨の中に挿入される髄内釘の姿勢矯正装置であり、この姿勢矯正装置が、釘軸方向遠位端に姿勢矯正孔が穿孔されるとともに、姿勢矯正孔より近位側に一又は複数のスクリュー孔が穿孔された髄内釘と、髄内釘の近位端に連結されて皮膚外で骨に沿い、姿勢矯正孔及びスクリュー孔に対応した位置に姿勢矯正用鋼線を挿入するための鋼線ガイド孔とスクリューを挿入するためのスクリューガイド孔が形成された挿入ガイドとからなることを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置を提供したものである。
【0008】
そして、本発明は、以上の姿勢矯正装置において、請求項2に記載した、スクリューガイド孔にスクリューをガイドするスクリューガイドが挿入可能であり、鋼線ガイド孔に姿勢矯正用鋼線をガイドする鋼線ガイドが挿入可能である手段、請求項3に記載した、スクリューガイドにドリルをガイドするドリルガイドが挿入可能である手段、請求項4に記載した、姿勢矯正孔が鋼線ガイド孔側に向かってすり鉢形をしている手段を提供する。
【0009】
また、本発明は、この髄内釘の姿勢矯正装置による髄内釘の姿勢矯正方法として、請求項5に記載した、骨内に挿入された髄内釘の姿勢矯正孔に挿入ガイドの鋼線ガイド孔を通して姿勢矯正用鋼線を挿入することで、髄内釘を正規の姿勢に矯正することを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法を提供するとともに、請求項6に記載した、鋼線ガイド孔に姿勢矯正用鋼線をガイドする鋼線ガイドが挿入され、姿勢矯正用鋼線が鋼線ガイドをガイドとして姿勢矯正孔に挿入される手段、請求項7に記載した、スクリューガイドにドリルをガイドするドリルガイドが挿入され、ドリルガイドをガイドとしてドリルを挿入してスクリュー孔の前後に存する骨に下孔を穿孔し、これら下孔にスクリュー孔を挿通してスクリューをねじ込む手段を提供したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の手段によると、髄内釘の遠位端は姿勢矯正用鋼線によって正規の姿勢に矯正される。したがって、スクリュー孔とこれに対応して挿入ガイドに形成されたスクリューガイド孔との位置が合致するから、スクリュー孔を予め形成しておいても、これに手直し加工等をする必要なしにスクリューを挿通することができる。この点で、手術時間が短縮され、患者の負担が減るし、切粉の問題も生じない。また、請求項5の手段によると、手技が容易で短時間に骨と髄内釘を固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る姿勢矯正装置を分解した状態の斜視図、図2は組み立てた状態の斜視図であるが、この姿勢矯正装置は、髄内釘1と、挿入ガイド2とからなる。このうち、髄内釘1は,生体適合金属で構成された細長い棒状をしているもので、先端(骨内に挿入されたときの遠位端)に姿勢矯正孔3が形成され、近位側にかけて複数のスクリュー孔4が適宜な間隔で形成され、更に後端(近位端)に雌ネジ5が形成されたものである。
【0012】
挿入ガイド2は、J形をした金属体であり、上端の頭部(近位端)に固定ネジ6が挿入される挿入部7が形成されたものである。固定ネジ6は、この挿入部7に上方から挿入されるものであり、上端に摘み8が形成され、下端に髄内釘1の雌ネジ5に螺入される雄ネジ9が形成されたものである。固定ネジ6を挿入部7に挿入すると、雄ネジ9は挿入部7から覗くようになっており、これに髄内釘1の雌ネジ5を螺入すると、髄内釘1は挿入部によって上下いずれにも動かないように固定される。
【0013】
挿入ガイド2の胴部から尾部にかけては、上記の状態にしたときの髄内釘1の姿勢矯正孔3に対応する位置に後述する姿勢矯正用鋼線10が挿入される鋼線ガイド孔11が形成され、各々のスクリュー孔4に対応した位置にスクリューガイド孔12がそれぞれ形成されている。ただし、スクリューガイド孔12は、他の種類の髄内釘1を連結する場合に備えてこれ以外にも形成されていることがある。
【0014】
次に、以上の姿勢矯正装置を用いる手技について説明すると、図3は髄内釘1を長管骨(本例では上腕骨)に挿入した場合の説明図であるが、骨13が骨折等を負うと、髄内釘1に挿入ガイド2を連結した状態で、髄内釘1を近位側から骨折個所を通過させて挿入する。髄内釘1を正規の位置まで挿入すると、挿入ガイド2の鋼線ガイド孔11から姿勢矯正用鋼線10を挿通して姿勢矯正孔3に挿入する。姿勢矯正用鋼線10は、キルシュナー鋼線と呼ばれる細い鋼線であり、これを直に鋼線ガイド孔11から姿勢矯正孔3に差し込んでもよいが、挿入に難儀をすることも多いから、そのようなときには鋼線ガイド14を用いる。
【0015】
図4はその説明図であるが、この鋼線ガイド14は、姿勢矯正用鋼線10を通すことができるスリーブ14aを有するもので、その後端に操作用のハンドル14bが設けられており、ハンドル14bを操作してスリーブ14aを鋼線ガイド孔11に挿入する(このとき、鋼線ガイド孔11の径は、スリーブ14aの外径に対応したものになっている)。そして、スリーブ14aに姿勢矯正用鋼線10を挿入して姿勢矯正孔3に挿入するが、通常、髄内釘1は曲がり、撓み、捩じれや倒れがあって、鋼線ガイド孔11と姿勢矯正孔3とは合致していないのが実情である。しかし、この不一致は多くても2mm程度であるから、強く押し込めば、挿入できる。
【0016】
このとき、姿勢矯正孔3をガイド孔11に向けてすり鉢形(テーパ)にしておけば、挿入がより確実になる。姿勢矯正用鋼線10が姿勢矯正孔3に挿入されると、髄内釘1は遠位側に引っ張られてその曲がり、撓み、捩じれや倒れといったものが矯正されて真っ直ぐになり、スクリュー孔4と挿入ガイド2のスクリューガイド孔12との位置が対応したものになる。図5はこの状態を示す側面図、図6は断面図であるが、このように、鋼線ガイド14のスリーブ14aは骨13の表面まで挿入するのが剛性が高まって矯正力が強化されて好ましい。
【0017】
髄内釘1が正規の姿勢に矯正されると、そのスクリュー孔4にスクリュー15を通して骨13にネジ込むが、このときのネジ込みを確実、かつ容易にするために、スクリュー孔4の前後に存する骨(皮骨)13にドリル19によって下孔を穿孔する。図7はこれを示す説明図、図8は要部の側面図、図9は断面図であるが、この下孔の穿孔は、挿入ガイド2のスクリューガイド孔12にスクリューガイド16を通し、更にこのスクリューガイド16にドリルガイド18を通して行う。この場合のスクリューガイド16及びドリルガイド18は、共に上記した鋼線ガイド14と同様のそれぞれスリーブ16a、18aとハンドル16b、18bとを有するものである。
【0018】
まず、スクリューガイド16のハンドル16bを操作してそのスリーブ16aを挿入ガイド2に形成されたスクリューガイド孔12に挿入し、次に、スクリューガイド16のスリーブ16aにドリルガイド18のハンドル18bを操作してそのスリーブ18aを挿入し、このスリーブ18aをガイドとしてドリル19を挿入し、スクリュー孔4の前後の骨13に下孔を穿孔する。図10はスクリュー15のネジ込みを示す説明図、図11は要部の側面図、図12は断面図であるが、以上の操作が終了すると、ドリルガイド18を抜き出してスクリューガイド16のスリーブ16aをガイドとしてドライバー17によってスクリュー15を骨13にネジ込む。
【0019】
以上の操作を各スクリュー孔4に対して行うと、スクリュー15による骨13と髄内釘1の固定は終了する。ただし、操作の手順としては、下孔の穿孔を各スクリュー孔4に対して順次行ってその後にスクリュー15のネジ込みをまとめて行うこともある。 このようにして骨13と髄内釘1の固定が終了すると、挿入ガイド2を外して施術は終了する。なお、スクリュー15が太くて骨13が硬いような場合には、ドリル19による下孔を穿孔した後にタップを挿入し、ネジ孔を形成することもある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】姿勢矯正装置(分解した状態)の斜視図である。
【図2】姿勢矯正装置(組立てた状態)の斜視図である。
【図3】姿勢矯正装置を骨に挿入した状態の説明図である。
【図4】姿勢矯正用鋼線を鋼線ガイド孔から挿入するときの説明図である。
【図5】姿勢矯正用鋼線を髄内釘に挿入する状態の側面図である。
【図6】姿勢矯正用鋼線を髄内釘に挿入する状態の断面図である。
【図7】ドリルによって骨に下孔を穿孔するときの説明図である。
【図8】ドリルによって骨に下孔を穿孔するときの側面図である。
【図9】ドリルによって骨に下孔を穿孔するときの断面図である。
【図10】スクリューを骨にネジ込むときの説明図である。
【図11】スクリューを骨にネジ込むときの側面図である。
【図12】スクリューを骨にネジ込むときの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 髄内釘
2 挿入ガイド
3 姿勢矯正孔
4 スクリュー孔
5 雌ネジ
6 固定ネジ
7 挿入部
8 摘み
9 雄ネジ
10 姿勢矯正用鋼線
11 鋼線ガイド孔
12 スクリューガイド孔
13 骨
14 鋼線ガイド
14a 〃 のスリーブ
14b 〃 のハンドル
15 スクリュー
16 スクリューガイド
16a 〃 のスリーブ
16b 〃 のハンドル
17 ドライバー
18 ドリルガイド
18a 〃 のスリーブ
18b 〃 のハンドル
19 ドリル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側から骨の中に挿入される髄内釘の姿勢矯正装置であり、この姿勢矯正装置が、釘軸方向遠位端に姿勢矯正孔が穿孔されるとともに、姿勢矯正孔より近位側に一又は複数のスクリュー孔が穿孔された髄内釘と、髄内釘の近位端に連結されて皮膚外で骨に沿い、姿勢矯正孔及びスクリュー孔に対応した位置に姿勢矯正用鋼線を挿入するための鋼線ガイド孔とスクリューを挿入するためのスクリューガイド孔が形成された挿入ガイドとからなることを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置。
【請求項2】
スクリューガイド孔にスクリューをガイドするスクリューガイドが挿入可能であり、鋼線ガイド孔に姿勢矯正用鋼線をガイドする鋼線ガイドが挿入可能である請求項1の髄内釘の姿勢矯正装置。
【請求項3】
スクリューガイドにドリルをガイドするドリルガイドが挿入可能である請求項2の髄内釘の姿勢矯正装置。
【請求項4】
姿勢矯正孔が鋼線ガイド孔側に向かってすり鉢形をしている請求項1〜3いずれかの髄内釘の姿勢矯正装置
【請求項5】
請求項1〜4いずれかの髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法であり、この姿勢矯正方法が、骨内に挿入された髄内釘の姿勢矯正孔に挿入ガイドの鋼線ガイド孔を通して姿勢矯正用鋼線を挿入することで、髄内釘を正規の姿勢に矯正することを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法。
【請求項6】
鋼線ガイド孔に姿勢矯正用鋼線をガイドする鋼線ガイドが挿入され、姿勢矯正用鋼線が鋼線ガイドをガイドとして姿勢矯正孔に挿入される請求項5の髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法。
【請求項7】
スクリューガイドにドリルをガイドするドリルガイドが挿入され、ドリルガイドをガイドとしてドリルを挿入してスクリュー孔の前後に存する骨に下孔を穿孔し、これら下孔にスクリュー孔を挿通してスクリューをねじ込む請求項5又は6の髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法。
【請求項1】
近位側から骨の中に挿入される髄内釘の姿勢矯正装置であり、この姿勢矯正装置が、釘軸方向遠位端に姿勢矯正孔が穿孔されるとともに、姿勢矯正孔より近位側に一又は複数のスクリュー孔が穿孔された髄内釘と、髄内釘の近位端に連結されて皮膚外で骨に沿い、姿勢矯正孔及びスクリュー孔に対応した位置に姿勢矯正用鋼線を挿入するための鋼線ガイド孔とスクリューを挿入するためのスクリューガイド孔が形成された挿入ガイドとからなることを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置。
【請求項2】
スクリューガイド孔にスクリューをガイドするスクリューガイドが挿入可能であり、鋼線ガイド孔に姿勢矯正用鋼線をガイドする鋼線ガイドが挿入可能である請求項1の髄内釘の姿勢矯正装置。
【請求項3】
スクリューガイドにドリルをガイドするドリルガイドが挿入可能である請求項2の髄内釘の姿勢矯正装置。
【請求項4】
姿勢矯正孔が鋼線ガイド孔側に向かってすり鉢形をしている請求項1〜3いずれかの髄内釘の姿勢矯正装置
【請求項5】
請求項1〜4いずれかの髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法であり、この姿勢矯正方法が、骨内に挿入された髄内釘の姿勢矯正孔に挿入ガイドの鋼線ガイド孔を通して姿勢矯正用鋼線を挿入することで、髄内釘を正規の姿勢に矯正することを特徴とする髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法。
【請求項6】
鋼線ガイド孔に姿勢矯正用鋼線をガイドする鋼線ガイドが挿入され、姿勢矯正用鋼線が鋼線ガイドをガイドとして姿勢矯正孔に挿入される請求項5の髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法。
【請求項7】
スクリューガイドにドリルをガイドするドリルガイドが挿入され、ドリルガイドをガイドとしてドリルを挿入してスクリュー孔の前後に存する骨に下孔を穿孔し、これら下孔にスクリュー孔を挿通してスクリューをねじ込む請求項5又は6の髄内釘の姿勢矯正装置による姿勢矯正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−48885(P2008−48885A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227779(P2006−227779)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000110435)ナカシマプロペラ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000110435)ナカシマプロペラ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
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