説明

高い内部結合強さを有する低密度多層板紙を製造するための方法

【課題】少なくとも1層中に25%を越える架橋繊維を含有する板紙の内部結合強さを改良するための方法を提案する。
【解決手段】架橋繊維を含むスラリーのイオン需要量をゼロ未満に維持しながら、添加物(カチオン固定剤、アニオン性デンプン、カチオン性デンプンなど)を様々な組み合わせ及び順序でスラリーに加える。低密度であるが、高いZDT、スコットボンド及びテーバー剛性を有する板紙が得られる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2005年3月22日付けで出願された米国出願第60/664,440号に対する優先権を主張する。
分野
本出願は、複数の層のうち少なくとも1層において多くの架橋セルロース繊維を有する多層板紙の結合強さを高めることに関する。
要旨
本出願は、少なくとも1層中に25%を越える架橋繊維を有する板紙の内部結合強さを改良することに関する。この方法では、スラリーのイオン需要量をゼロ未満に維持しながら、添加物を種々の組合せ及び順序でスラリーに加える。高いZDT、スコットボンド及びテーバー剛性を有する板紙が得られる。
詳細な説明
内層がおよそ25%を越える架橋セルロース繊維を含有する単一層又は多層の板紙では、層の密度は0.4g/cc未満に低下することになる。結果として、その内部結合強さは、板紙を包装製品へと加工するのに必要とされるレベルをはるかに下まわるだけでなく、内部強さを高める慣用的な方法により、加工のために要する最小レベルを満たすのに十分な増加をもたらすことができないレベルより低くなるほど低下しうる。本出願は、低密度板紙の内部結合を加工に使用できる範囲に高めるための方法を提供する。
【0002】
本出願では、低密度板紙を製造する間に、高濃度のウェットエンド添加剤を使用することを実証した。
【0003】
本出願の明確な特徴は、単一層構造であろうと多層構造であろうと、板紙の少なくとも1層が、架橋セルロース繊維と、アニオン性デンプン及びカチオン性デンプンのような強度向上添加剤とを含有して、架橋セルロース繊維を加えることによって失われる板紙の強度を補うことである。架橋セルロース繊維は、板紙の絶縁板紙特性である嵩密度を高める。また、かかる板紙は化学パルプ繊維も含有する。本明細書中で定義されるように、本出願において使用することができる化学パルプ繊維は、主として木材パルプから誘導される。本出願で使用するのに適した木材パルプは、その後の漂白の有無に拘わらず、クラフト法及び亜硫酸法のような周知の化学的方法から得ることができる。針葉樹材も広葉樹材も使用することができる。木材パルプ繊維の選択の詳細は当業者に周知である。例えば、本出願において使用することができる、サザンパインから製造される適するセルロース繊維は、C−Pine、Chinook、CF416、FR416及びNB416の名称でウェアーハウザー社を含めた多くの業者から入手可能である。漂白クラフトダグラスファーパルプ、KKT、プリンスアルバート針葉樹材及びグランドプレーリー針葉樹材(すべてウェアーハウザー社製)は、使用することができる北方針葉樹材の例である。架橋セルロース繊維とともに使用する場合、HPZのようなマーセル化繊維やHPZ IIIのようなマーセル化フラッシュ乾燥繊維(いずれもテネシー州メンフィスのブッケイ・テクノロジーズ社製)、並びにジョージア州ジェサップのレイオニアー・パフォーマンス・ファイバー・ディビジョンから入手可能なPorosinier−J−HPも本出願で用いるのに適している。他の非架橋セルロース繊維としては、ケミサーモメカニカルパルプ繊維(CTMP)、漂白ケミサーモメカニカルパルプ繊維(BCTMP)、サーモメカニカルパルプ繊維(TMP)、リファイナー砕木パルプ繊維、砕木パルプ繊維、ワシントン州フェデラルウェイのウェアーハウザー社製のTMP(サーモメカニカルパルプ)、及びワシントン州ロングビューのノルパック社から得られるCTMP NORPAC Newsprint Gradeとして販売されているCTMP(ケミサーモメカニカルパルプ繊維)、2004年8月20日付で出願された米国特許出願第10/923,447号に記載の方法によってウェアーハウザー社により製造された、ジェット乾燥セルロース繊維及び処理ジェット乾燥セルロース繊維が挙げられる。これらの繊維は、撚り、捩れ、カールが付いている。付加的な繊維としては、米国特許第6,837,970号に記載されるようなフラッシュ乾燥繊維及び処理フラッシュ乾燥繊維が挙げられる。
【0004】
架橋繊維を製造するのに適した架橋剤としては、ポリカルボン酸のようなカルボン酸架橋剤が挙げられる。ポリカルボン酸架橋剤(例えば、クエン酸、プロパントリカルボン酸、及びブタンテトラカルボン酸)及び触媒については、米国特許第3,526,048号;第4,820,307号;第4,936,865号;及び第5,221,285号に記載されている。少なくとも3つのカルボキシル基を含有するC−Cポリカルボン酸(例えば、クエン酸及びオキシジスクシン酸)の架橋剤としての使用は、米国特許第5,137,537号;第5,183,707号;第5,190,563号;第5,562,740号;及び第5,873,979号に記載されている。
【0005】
また、高分子量ポリカルボン酸も架橋繊維を製造するのに適した架橋剤である。これらとしては、米国特許第4、391,878号;第4,420,368号;第4,431,481号;第5,049,235号;第5,160,789号;第5,442,899号;第5,698,074号;第5,496,476号;第5,496,477号;第5,728,771号;第5,705,475号;及び第5,981,739号に記載された高分子量ポリカルボン酸架橋剤が挙げられる。架橋剤としてのポリアクリル酸及び関連するコポリマーは、米国特許第5,549,791号及び第5,998,511号に記載されている。ポリマレイン酸架橋剤は、米国特許第5,998,511号及び米国特許出願第09/886,821号に記載されている。本検討においては、クエン酸架橋セルロース繊維であるCHB405及びポリアクリル酸架橋セルロースであるCHB505(いずれもワシントン州フェデラルウェイのウェアーハウザー社から商業的に入手可能である)を使用した。
【0006】
単一層又は多層の板紙構造物では、木材パルプ繊維及び架橋セルロースの混合物を使用する。1つの態様では、架橋セルロース繊維は、少なくとも1つの層において、その層の全繊維重量に基づいて25〜80%のレベルで存在する。別の態様では、架橋セルロース繊維は、層の全繊維重量に基づいて40〜75%のレベルで存在し、更に別の態様では、層の全繊維重量に基づいて50〜70%のレベルで存在する。
【0007】
低密度多層板紙の中間層をまねて設計された単一層の手すき紙を製造した。これらの検討ではコンシステンシーが0.015%〜0.035%のスラリーを用いた。手すき紙製造装置は、拡大されたヘッドボックスにより変更を加えた標準的な8″×8″(20.3cm×20.3cm)シート型であったので、通常の紙料体積の2倍を使用した。この変更は、架橋セルロース繊維のような高い嵩をもたらすように計画された材料を用いる場合に、手すき紙の形成を改良するのために必要である。繊維重量は、全繊維の乾燥重量に基づく重量%として表す。添加物は乾燥繊維の重量に基づいている。
【0008】
デンプンを添加したウェブによってもたらされる内部結合強度レベルを証明するため、異なるレベルのウェットエンド添加剤と異なる添加順序とを用いて一連の手すき紙を製造した。添加剤を各々の試料の列を横切る順序でスラリーに加え、添加するたびにスラリーを攪拌した。アニオン性デンプンであるAvebe(登録商標)AP25は、サウスカロライナ州ノースチャールストンのカロライナ・スターチズ社から得られ、いずれもカチオン性デンプンであるStay−Lok(登録商標)300及びStay−Lok(登録商標)330は、イリノイ州ディケーターのテイト・アンド・ライル社の子会社であるA.E.ステイレイ社から得られ、Kymene(登録商標)はデラウェア州ウイルミントンのハーキュリーズ社から得られ、そしてRediBOND(登録商標)3050はインディアナ州インディアナポリスのナショナル・スターチ社から得られた。次いで、ポリビニルアルコール(PVA)コーティングである、テキサス州ヒューストンのセラニーズ社により供給されるCelvol V24203により、各々の手すき紙を被覆した。全被覆重量は約50g/mであり、シートの各々の面に等しく分けた。コーティングのない低密度構造は、シートの内部ではなくテープにて分離する傾向があるので、表面にコーティングを加えて、Z−方向の引っ張り(ZDT)及び内部スコットボンドの試験を容易にした。各シートは、坪量、ZDT、内部スコットボンド及びテーバー剛性(15°)を含むいくつかの物理的性質について評価した。以下の表Iは、これらの重要な特徴に関する結果を示している。
【0009】
【表1】

【0010】
ZDT(Z−方向の引っ張り)強さは、TAPPI法 T541 om−05により測定し、スコットボンド強さはTAPPI 569 om−00により、テーバー剛性はTAPPI T489 om−04により測定した。
【0011】
試料1は、低密度紙を与えるように設計された繊維配合であり、慣用的なウェットケミストリーを使用している。結果は、非常に低いZDT及びスコットボンドとなる。試料2は、構成物に対して合計4%のデンプンを加えることによって、ZDT及びスコットボンドが基本的に2倍になることを示している。試料3は、アニオン性デンプンの量を2倍にし、カチオン性デンプンを一定に維持し、そしてカチオン性デンプン(+0.3meq/g、表III)よりもイオン需要が高いカチオン性ポリマー(+2.2meq/g)であるKymeme(登録商標)557Hを用いて、付加的なアニオンの電荷をつり合わせた場合に、内部結合は更に増加し、ZDTは対照よりも500%増加し、スコットボンドはほぼ2倍になることを示している。
【0012】
データは、カチオン固定剤と組み合わせたアニオン性デンプンによってウェットエンドにおけるデンプンの効果的な保持が可能となることを示している。本明細書中で定義するように、固定剤は、反対の電荷をもつ分子にイオン結合により結合する荷電ポリマーである。固定剤の例としては、これらに限定されないが、カチオン性デンプン、ポリアラニン、ポリアルミニウムクロリド(登録商標)(PAC)、ポリDADMAC(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、EPEDMA、Kymene(登録商標)、PAAE(ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン)、PASS(ポリアルミニウムシリカスレイト)、PEI(ポリエチレンイミン)、及びカチオン性ポリアクリルアミドが挙げられる。
【0013】
1つの態様では、カチオン固定剤をスラリーに加え、その後、アニオン性デンプンを添加し、次いでカチオン性デンプンを加える。各々の場合において、添加物を加えた後、スラリーのイオン需要はゼロ未満である。別の態様では、カチオン性デンプンをアニオン性デンプンの前にスラリーに加え、カチオン固定剤はアニオン性デンプンの後に加える。更に別の態様では、カチオン固定剤をスラリーに加え、カチオン固定剤の添加後にアニオン性デンプンをスラリーに加える。各々の場合において、添加物を加えた後、スラリーのイオン需要はゼロ未満である。更に別の態様では、アニオン性デンプンをカチオン固定剤の添加前にスラリーに加える。各々の場合において、デンプン又は固着剤の添加後、スラリーのイオン需要はゼロ未満である。また、アニオン性デンプン及びカチオン性デンプンの組合せも使用することができる。1つの態様では、カチオン性デンプンをスラリーに加え、その後、アニオン性デンプンを加える。各々の場合において、デンプンを加えた後、スラリーのイオン需要はゼロ未満である。更に別の態様では、アニオン性デンプンをスラリーに加え、その後、カチオン性デンプンを加える。デンプンを加えた後、スラリーのイオン需要はゼロ未満である。
【0014】
1つの態様では、Kymene(登録商標)を2.5lb/t〜20lb/t(1.1kg/t〜9.1kg/t)のレベルで加える。別の態様では、5lb/t〜15lb/t(2.3kg/t〜6.8kg/t)、更に別の態様では8lb/t〜10lb/t(3.6kg/t〜4.5kg/t)のレベルで加える。
【0015】
一般に、15°の曲げでのテーバー剛性に対するデンプン添加の影響は小さい。単一層の手すき紙の場合、厚さは曲げ剛性をもたらす支配的な変数であるので、これは妥当なことである。密度に対するデンプン添加の影響は十分に小さく、デンプン添加によるシートの弾性率の増加により厚さの小さい変化が補われる。多層ウェブでは、同じ応答が予想される。
異なるアニオン性デンプン及びカチオン性デンプンの比較
表IIは、この検討において手すき紙を製造する際に使用した基本配合及び条件を示す。
【0016】
【表2】

【0017】
これらの検討では、アニオン性デンプン及びカチオン性デンプンの両方の添加レベルを、デンプンのイオン需要と同様に変化させた。イオン需要とは、所与の体積の構成物について正味の電荷をゼロにするのに必要な電荷(正又は負の両方)の数を意味する。カチオン需要とは、試料を正味ゼロ電荷にするのに必要なカチオンの電荷の量を意味する。カチオン需要のある試料は正味アニオン性である。アニオン需要とは、試料を正味ゼロ電荷にするのに必要なアニオンの電荷の量を意味する。アニオン需要のある試料は正味カチオン性である。
【0018】
Aniofax(登録商標)AP25(−0.25meq/gイオン需要)は、〜−0.19meq/gの低いイオン需要を有するハーキュリーズRediBOND(登録商標)3050と交換した。更に、+0.30meq/gのイオン需要を有するSta−Loc(登録商標)300は、約+0.41meq/gのイオン需要を有するSta−Loc(登録商標)330と交換した。表IIに示した結果は、Aniofax(登録商標)AP25と同じ質量のRediBOND(登録商標)3050のZDTは約10%低くなることを示している。この減少は、RediBOND(登録商標)3050の電荷の寄与が低いためにその後のデンプン添加の保持が低くなったことによると考えられる。しかし、スコットボンド及びテーバー剛性の結果はほぼ等しい(試料番号5対6、7対8及び9対10)。
イオン需要バランス
この技術は、抄紙機のウェットエンドにおけるイオン需要のバランスをとる能力に左右され、1)アニオン性の高分子量材料は、水系中に過剰に残留することなく、繊維及び微粒子上に保持されることができ、2)繊維及び系は、保持及び排水を不安定化するゼロ電荷点を通過せず、3)パルプ繊維はアニオン性であるので、カチオン性物質を加えることができるが、過剰のアニオン需要のバランスをとることなくカチオン性物質を加えすぎると、繊維を凝集させて形成を減じ、及び/又は、排水を低下させ、生産能力に影響を与える。
【0019】
本開示における架橋繊維を含有する板紙に使用される各々の成分は、典型的にはイオン需要滴定により測定される比電荷密度を有する。成分又は繊維構造物のイオン需要を測定するために、ミューテック(Mutek)PCD−滴定器をPCD 02粒子電荷検出器と連結して使用した。方法は、イリノイ州デカチュアのテイト・アンド・ライル社の子会社であるA.E.ステイレイ・マニュファクチュアリング社による手順に従って行った。その方法は次のとおりである。
1.装置の後ろの電源スイッチを用いてミューテックを作動させる。
2.試料を混合した10mLのウェルを試料容器中に置く。プランジャー及びワッシャーを容器に挿入する。試料コンシステンシーは0.83以下とする。紙料の試料が濃い場合は希釈する。
3.装置を作動させると、プランジャーは上下に動き、mV電位が表示される。電位の記号(+又は−)は、試料がカチオン性(+)であるかアニオン性(−)であるかを示す。
4.mV電位が0mVとなるまで、試料を適切な滴定液で滴定する(ポリDADMACはカチオン性ポリマーであり、アニオン性試料の滴定に使用する;PVSK又はPESNaは、カチオン性試料の滴定に使用するアニオン性ポリマーである)。滴定液を試料に投入するのにビューレット又は注射器を使用することができる。滴定は4mLを越える滴定液で行うべきではない。それより多くの体積では測定が不正確になるからである。試料が4mLを越える滴定液を必要とする場合は、試料を希釈するか、より高濃度の滴定液を用いるものとする。
5.試料の滴定に用いた滴定液の量を記録する。系の需要量を計算するには、次の方程式を用いる:
「イオン需要量」(ueq/L)=(mL滴定液)×(%滴定液希釈度)×(試料希釈度)
イオン需要量をミューテック法で測定した特定成分を表IIIに示す。他の成分値は供給業者からのものである。
【0020】
【表3】

【0021】
表を参照すると、イオン需要量の「合計」と「利用可能」の間の差は、繊維の内部にあり、分子量が300,000g/molを越えるポリマーに対して接近できない電荷の量を表す。製紙の場合、利用可能なイオン需要量は、実際に得られる結果のうち、合計イオン需要量より代表的である。
【0022】
抄紙機のウェットエンドでは状況は更に複雑であり、ウェットエンドでは、外部源からの希釈水及び/又はパルプミル漂白段階からの洗浄水がイオン性物質(溶解されたもの及び分散されたものの両方)を含有し、パルプスラリーのコンシステンシーを制御するために使用されている。過剰のイオン性物質が存在する一貫工場では、内部結合強さを高めるためにパルプスラリーに加えられる物質は、過剰のイオン性物質によって消費されることになる。また、パルプ上の利用可能なイオン部位は、どれだけ多くのリファイニングがなされたかと、基本的な繊維の形態学とに依存することになり、すなわち、繊維又は部分繊維が小さいほど、利用可能な面積は多くなり、従って、利用可能イオン需要量は高くなる。
【0023】
一般に、繊維スラリーはアニオン性で始まるが、製紙工程を通してアニオン性のままであるべきである、すなわち、スラリーのイオン需要量はゼロ未満であるべきであると言うことができる。
バランス計算
この検討の目的のために、表I及びIIに示した配合のイオン需要量を、表IIIのイオン需要量値を用いて計算した。示された物質以外のスラリー中のイオン物質は無視した。
【0024】
イオン性添加物の添加順序及び量により、形成工程の間の任意の時点での、紙料構成物のイオン需要量が決まるはずである。これらの実験について、推定イオン需要量を表IV及びVに示す。
【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
【表6】

【0028】
表VIは、希釈にミル白水を用いた0.5%スラリーコンシステンシーでの同様の組合せの添加物についてのイオン需要測定量を示す。
【0029】
付加的なアニオン性デンプンの前にカチオン性物質が全て加えられた場合では、系のイオン需要量はゼロ電荷ポイントを横切った(表VIの12及び14、並びに図1)。このことは、微粒子保持を不安定化し、また、抄紙機のウェットエンドにおける凝集及び排水に影響を与え、その結果、ZDTの低下をもたらす可能性があることが知られている。図1において、添加ポイントは以下のとおりである:Aはパルプ紙料構造物であり、BはKymene(登録商標)の添加であり、Cは、13、15及び16の場合はハーキュリーズRediBOND(登録商標)3050の添加、12及び14の場合はSta−Loc(登録商標)300の添加であり、DはハーキュリーズRediBOND(登録商標)の添加である。試料11〜16はCHB405で製造され、試料17〜19はCHB505で製造された。試料16及び19はそれぞれ、HRB(登録商標)3050の添加後に加えた0.5lb/t(0.2kg/t)のPSM Particol(登録商標)BXを含有していた。CHB405(クエン酸架橋繊維)でつくられた試料とCHB505(ポリアクリル酸架橋繊維)でつくられた試料を比較すると(表VIの15及び16対18及び19、図2及び3)、2種類の架橋セルロース繊維グレード間のイオン需要量に少しの差があることが分かる。正味の結果は、結合性物質を保持するために利用可能な部位の数に対して具体的な影響はない。このことは、同じ量のKymene(登録商標)の添加により同じイオン需要量がもたらされるという事実により支持される。
【0030】
単一層又は多層の板紙は、スラリーコンシステンシーが3〜3.2%で乾燥重量比が50/50のポリアクリル酸架橋繊維(CHB505)のような架橋繊維とダグラスファー繊維とを用いてつくることができる。また、0.05%〜4%のスラリーコンシステンシーも板紙の製造に用いることができる。「コンシステンシー」という用語は、固体及び液体混合物の固形分率(%)を意味し、例えば、2%のコンシステンシーは、100gの繊維及び液体中に2gのセルロース繊維があることを意味する。本明細書中で定義する乾燥重量とは、代表的な繊維を105℃±2℃で乾燥し、重量が一定になるまで1時間ごとに重量を測定することを意味する。実際に、商業グレード繊維の水分含量はおよそ9%である。ダグラスファーは、抄紙機チェストへ加える前に、500CSF又はそれより低くリファイニングすることができる。標準的な4mmバリヤースクリーンをヘッドボックスの前に用いることができる。Kymene(登録商標)、アニオン性デンプン及びカチオン性デンプンなどの種々の添加物の添加ポイントを図4に示す。形成される板紙は、200〜500g/mの坪量を有することができ、表面層はそれぞれ全繊維の乾燥重量基準で15〜25%、そして中心層は全繊維乾燥重量の50〜70%である。1つの態様では、単一層の板紙がつくられる。別の態様では、少なくとも2つの層を有する板紙がつくられる。架橋セルロース繊維は、両方の層にあるか、又は、1つの層だけにあることができる。更に別の態様では、3つの層を有する板紙をつくることができる。これらの層は全てが同じであっても、全てが異なっていてもよく、又は、種々の層の組合せでもよい。
【0031】
デンプン及び他の添加物は図4に示す位置で加えることができる。
【0032】
表面層は、図5に示すように、慣用的な長網技術を用いて、紙料コンシステンシー〜0.6%で中間層とは別に形成することができる。
【0033】
中間層は、ベロイト・トップ・フォーマーを用いて、長網テーブル上の底部層上に直接形成することができる。脱水はトップワイヤ排水装置によって行うことができる。
【0034】
頂部層は、ピックアップロールを介して、底部層及び中間層と組合せることができる。組合せたウェブは、その後、典型的な抄紙機の単位操作である、慣用的なフェルト化湿式プレスでの湿式プレス、蒸気缶乾燥、繊維乾燥重量に基づいて2〜2.5%までのデンプンをウェブに施すことができるサイズプレス、その後の水分6.5%への蒸気缶乾燥、湿式圧延、乾燥圧延及び巻き取りによって処理される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、3〜3.2%スラリーのイオン需要量に対する種々の化学物質添加の効果を示す。
【図2】図2は、ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を用いた中間層シミュレーションのイオン需要量に対する種々の化学物質添加の効果を示す。
【図3】図3は、クエン酸架橋セルロース繊維を用いた中間層シミュレーションのイオン需要量に対する種々の化学物質添加の効果を示す。
【図4】図4は、本出願の方法を実施するのに適した抄紙機チェスト及び添加物入口ポイントの概略図を示す。
【図5】図5は、多層製品に適した多層板紙製造機を示す。
【符号の説明】
【0036】
1 中間層用抄紙機チェスト
2 中間層用紙料ライン−リファイニング済み
3 化学添加物注入口
4 中間層用抄紙機チェスト再循環ポンプ
5 紙料ライン−架橋繊維
6 紙料ライン−組合せた中間層用紙料
7 中間層用主要バリヤースクリーン
8 中間層用ファンポンプ
9 底部層用ヘッドボックス
10 底部層用排水装置
11 中間層用ヘッドボックス
12 中間層用排水装置
13 頂部層用ヘッドボックス
14 頂部層用排水装置
15 組合せたウェブは湿式プレス部へ続く

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の各工程:
架橋繊維を含むセルロース繊維のスラリーを形成する工程;
カチオン固定剤を加え、前記スラリーと混合する工程;
前記カチオン固定剤を加えた後にアニオン性デンプンを加える工程;
前記アニオン性デンプンを加えた後にカチオン性デンプンを加える工程;
ここで、各添加工程の後、該スラリーのイオン需要量はゼロ未満である;
前記スラリーから液体を除くことによって繊維ウェブ層を形成する工程;
前記ウェブを乾燥して、板紙を形成する工程
を含む、板紙を形成するための方法。
【請求項2】
架橋繊維が、板紙の少なくとも1層中に全繊維重量の25〜80%のレベルで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
架橋繊維が、板紙の少なくとも1層中に全繊維乾燥重量の40〜75%のレベルで存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
総デンプンレベルが50〜120lb/t(22.7〜54.4kg/t)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
総デンプンレベルが60〜100lb/t(27.2〜45.4kg/t)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
総デンプンレベルが80〜90lb/t(36.3〜40.8kg/t)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アニオン性デンプンの前にカチオン性デンプンを構成物に加え、そしてアニオン性デンプンの後にカチオン固定剤を加える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
次の各工程:
架橋繊維を含むセルロース繊維のスラリーを形成する工程;
カチオン固定剤を加え、前記スラリーと混合する工程;
前記カチオン固定剤を加えた後にアニオン性デンプンを加える工程;
ここで、各添加工程の後、該スラリーのイオン需要量はゼロ未満である;
前記スラリーから液体を除くことによって繊維ウェブ層を形成する工程;
前記ウェブを乾燥して、板紙を形成する工程
を含む、板紙を形成するための方法。
【請求項9】
カチオン固定剤の前にアニオン性デンプンをスラリーに加える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
架橋繊維が、板紙の少なくとも1層中に全繊維重量の25〜80%のレベルで存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
架橋繊維が、板紙の少なくとも1層中に全乾燥繊維重量の40〜60%のレベルで存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
総デンプンレベルが50〜120lb/t(22.7〜54.4kg/t)である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
総デンプンレベルが60〜100lb/t(27.2〜45.4kg/t)である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
総デンプンレベルが80〜90lb/t(36.3〜40.8kg/t)である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
次の各工程:
架橋繊維を含むセルロース繊維のスラリーを形成する工程;
カチオン性デンプンを加え、前記スラリーと混合する工程;
前記カチオン固定剤を加えた後にアニオン性デンプンを加える工程;
ここで、各添加工程の後、該スラリーのイオン需要量はゼロ未満である;
前記スラリーから液体を除くことによって繊維ウェブ層を形成する工程;
前記ウェブを乾燥して、板紙を形成する工程
を含む、板紙を形成するための方法。
【請求項16】
カチオン固定剤の前にアニオン性デンプンをスラリーに加える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
架橋繊維が、板紙の少なくとも1層中に全繊維重量の25〜80%のレベルで存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
架橋繊維が、板紙の少なくとも1層中に全乾燥繊維重量の40〜60%のレベルで存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
総デンプンレベルが50〜120lb/t(22.7〜54.4kg/t)である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
総デンプンレベルが60〜100lb/t(27.2〜45.4kg/t)である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
総デンプンレベルが80〜90lb/t(36.3〜40.8kg/t)である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−265817(P2006−265817A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−78595(P2006−78595)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(302009279)ウェヤーハウザー・カンパニー (36)
【Fターム(参考)】