説明

高い湿式エッチング速度を持つシロキサン樹脂系反射防止被覆組成物

本明細書で、我々は、式(HSiO3/2(SiO4/2(HSiX3/2(SiX4/2を持つシロキサン樹脂を含む組成物を開示する。ここで、各Xは独立に−O−、−OH、または−O−(CH−Zであり、各mは独立に1から約5の整数、Zは芳香族5個の部分、各nは独立に1から約6の整数、かつ0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<d<l、並びにa+b+c+d=1である。我々は、本シロキサン樹脂組成物の製造方法、および、基板上に反射防止被覆を製造する方法も開示する。この反射防止被覆は前記シロキサン樹脂組成物から誘導される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、半導体機器の加工において使用する反射防止被覆の分野に関する。更に具体的には、本発明は、着色したシロキサン樹脂から形成される反射防止被覆に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィは、半導体加工の分野で既知の技術である。典型的なフォトリソグラフィ法において、半導体ウエハーは障壁層、別名反射防止被覆(ARC)層が塗布される。その後、ARC層上にフォトレジスト層が塗布される。このフォトレジスト/ARC/半導体ウエハーは、次に、電磁放射線(EM)源、典型的には波長約150nmから約300nmの紫外光(UV)源に近づけられ、EM源とフォトレジスト/ARC/半導体ウエハーの間にマスクが置かれる。このマスクは、使用されるEMの波長に対して一般的に不透明だが、フォトレジスト層に付与すべき所望のパターンを画定する透明領域を持っている。
【0003】
線源がEMを放射すると、マスクは、特定の、かつユーザーが画定したフォトレジスト層の領域をEMが暴露することを許容する。ポジ型フォトレジストおよびネガ型フォトレジストの両者が知られている。ポジ型フォトレジストにおいては、UVに暴露されたフォトレジストの領域は、その下のARC層と共に、引き続く現像段階において取り除かれる。ネガ型フォトレジストにおいては、UVに暴露されていないフォトレジストの領域は、その下のARC層と共に、引き続く現像段階において取り除かれる。
【0004】
フォトリソグラフィ法の詳細には関わりなく、ARC層は、幾つかの特性を持つことが望ましい。特性の一つは、減衰係数が比較的高いこと、即ち、EMをフォトレジスト層まで反射するのではなく、使用される波長のEMを吸収する能力が比較的高いことである。第二の特性は、フォトリソグラフィ後により早く、かつ容易に除去するため、また、剥離剤による、ウエハー上の低−k誘電体の損傷の程度を最小にするために、希フッ酸の様な液体除去剤に対する抵抗が比較的低いことである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の態様において、本発明は、式(HSiO3/2(SiO4/2(HSiX3/2(SiX4/2を持つ着色したシロキサン樹脂を含む組成物に関する。ここで、各Xは独立に−O−、−OH、または−O−(CH−Zであり、但し、少なくとも1つのXは−O−(CH−Zであり、ここでZはn個の芳香環を含む多環式芳香族炭化水素部分、各mは独立に1から約5の整数、各nは独立に1から約6の整数、かつ0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<d<l、並びにa+b+c+d=1である。
【0006】
別の態様において、本発明は、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランおよび水を加水分解触媒の存在下で反応させて、HSiO3/2、SiO4/2、HSiX’3/2、およびSiX’4/2ユニットを持ち、かつ実質的に珪素−炭素結合を持たないシロキサン樹脂を形成させる段階、ここでX’は独立に−O−または−OHである;および前記シロキサン樹脂を、式HO−(CH−Zを持つ化合物と反応させて、シロキサン樹脂組成物を形成させる段階、ここで各mは独立に1から約5の整数、かつ各nは独立に1から約6の整数である、を含むシロキサン樹脂組成物の製造方法に関する。本方法は、連続的な段階として、または単一の段階として実施できる。
【0007】
更に別の態様において、本発明は、基板上に組成物を塗布して、被覆基板を形成する段階、ここで前記組成物は式(HSiO3/2(SiO4/2(HSiX3/2(SiX4/2を持つシロキサン樹脂を含み、ここで、各Xは独立に−O−、−OH、または−O−(CH−Zであり、但し、少なくとも1つのXは−O−(CH−Zであり、ここでZはn個の芳香環を含む多環式芳香族炭化水素部分、各mは独立に1から約5の整数、各nは独立に1から約6の整数、かつ0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<d<l、並びにa+b+c+d=1である;および前記被覆基板を硬化させて、前記基板上に反射防止被覆を形成する段階、を含む基板上に反射防止膜を製造する方法に関する。
【0008】
更にもう一つの態様において、本発明は、上記の基板上に反射防止被覆を製造する方法により製造された半導体ウエハーに関する。
【0009】
本発明の着色したシロキサン樹脂組成物は、波長が約150nmから約300nmのUVに対する比較的高い減衰係数と、希フッ酸の様な液体の剥離剤に対して比較的低い抵抗、別名高い湿式エッチング速度とを持つARC層を提供する。
【0010】
代表的な態様の説明
一の態様において、本発明は、式:
(HSiO3/2(SiO4/2(HSiX3/2(SiX4/2
を持つシロキサン樹脂を含む組成物に関する。ここで、各Xは独立に−O−、−OH、または−O−(CH−Zであり、但し、少なくとも1つのXは−O−(CH−Zであり、ここでZはn個の芳香環を含む多環式芳香族炭化水素部分、各mは独立に1から約5の整数、各nは独立に1から約6の整数;0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<d<l、かつa+b+c+d=1である。
【0011】
HSiO3/2ユニットおよびSiO4/2ユニットは当業者に周知である。典型的には、小さい比率の「SiO4/2」ユニットは、およそ一以上のシラノール(Si−OH)部分を持つ、すなわち、幾つかのSiO4/2ユニットはHO−SiO3/2、(HO)SiO2/2等の式を持つことができ、用語「SiO4/2ユニット」の範囲内に残る。
【0012】
この様に定義したとき、HSiX3/2ユニットは、以下の構造の一以上を含むユニットを指す。便宜上、以下の構造の各々において、珪素の三価の非−H原子価の中、一価のみを表示する。表示されていない二価は、以下の構造中、任意のものから選択できる。一の構造において、Xが−O−のとき、HSiX3/2ユニットはSi−O−を含むであろう。これは、X部分の酸素が樹脂の他のユニットの珪素原子に結合していることを意味する。別の構造において、Xが−OHのとき、HSiX3/2ユニットはSi−OHを含むであろう。これはシラノール部分と呼ぶことができる。第三の構造において、Xが−O−(CH−Zのとき、HSiX3/2ユニットはSi−O−(CH−Zを含むであろう。
【0013】
この様に定義したとき、SiX4/2ユニットは、以下の構造の一以上を含むユニットを指す。便宜上、以下の構造の各々において、珪素の四価の非−H原子価の中、一価のみを表示する。表示されていない三価は、以下の構造中、任意のものから選択できる。但し、少なくとも1つのXは−O−(CH−Zである。1つの構造において、Xが−O−のとき、SiX4/2ユニットはSi−O−を含むであろう。これは、X部分の酸素が樹脂の他のユニットの珪素原子に結合していることを意味する。別の構造において、Xが−OHのとき、SiX4/2ユニットはSi−OHを含むであろう。これはシラノール部分と呼ぶことができる。第三の構造において、Xが−O−(CH−Zのとき、SiX4/2ユニットはSi−O−(CH−Zを含むであろう。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「Z」は置換または未置換の、n個の芳香環を含む多環式芳香族炭化水素部分を指す。ここで、nは1から約6であり、とりわけ、例えば、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、クリセニル、ピレニル、またはコロネニル部分である。一の態様において、Xは独立に−O−、−OHまたは−O−(CH−Zである。但し、少なくとも1つのXは−O−(CH−Zである。一の態様において、−(CH−Zは9−アントラセンメチレン部分(すなわち、m=1)である。
【0015】
この樹脂の各種ユニットの比率は変えることができる。但し、各々のモル分率は0と1の間で(すなわち、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<d<1)、かつ、モル分率の和は1である。一の態様において、モル分率は0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、および0<(c+d)≦0.6の値を持つ。
【0016】
本組成物は、有機溶媒を更に含むことができる。代表的な溶媒は、とりわけ、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールおよびプロピレングリコールモノエーテルを包含するが、これらに限定されない。本組成物は、重量で約80%から約99%の溶媒を含むことができる。本組成物は、被覆用途、または本組成物を使用できる他の用途において有用な追加の成分を更に含むことができる。一の態様において、本組成物は、水を更に含む。本組成物は、重量で約0%から約15%の水を含むことができる。別の態様において、本組成物は、硫酸(HSO)の様な不揮発性の酸を更に含み、これは、程良く低い温度において、薄膜の硬化を促進し得る。本組成物は、約0ppm(全組成物の百万分の重量部)から約500ppmの酸を含むことができる。
【0017】
一の態様において、本発明は、
(i)トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランおよび水を加水分解触媒の存在下で反応させて、HSiO3/2、SiO4/2、HSiX’3/2、およびSiX’4/2ユニットを持ち、かつ実質的に珪素−炭素結合を持たない第一のシロキサン樹脂を形成させる段階、ここでX’は独立に−O−または−OHである;および
(ii)前記第一のシロキサン樹脂を、式HO−(CH−Zを持つ化合物と反応させて、シロキサン樹脂組成物を形成させる段階、ここで各mは独立に1から約5の整数、かつ各nは独立に1から約6の整数である、
を含むシロキサン樹脂組成物の製造方法に関する。
【0018】
反応段階(i)において、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランおよび水は、加水分解触媒の存在下反応することができ、第一のシロキサン樹脂を形成する。
【0019】
本明細書で使用する「トリアルコキシシラン」は、式HSiRを持つ化合物である。ここで、各Rは独立にC−Cアルコキシ部分である。代表的なアルコキシ部分は、とりわけ、メトキシ、n−プロポキシ、およびn−ブトキシ部分を包含するが、これらに限定されない。一の態様において、トリアルコキシシランはトリエトキシシラン(HSi(OCHCH)である。
【0020】
本明細書で使用する「テトラアルコキシシラン」は、式HSiRを持つ化合物である。ここで、上述の通り、各Rは独立にC−Cアルコキシ部分である。一の態様において、テトラアルコキシシランはテトラエトキシシラン(HSi(OCHCH)である。
【0021】
トリアルコキシシラン:テトラアルコキシシランの重量比は、0:1から1:0であり得る。トリアルコキシシラン:テトラアルコキシシランの重量比が高いほど、第一のシロキサン樹脂においてHSiO3/2ユニットのSiO4/2ユニットに対するモル分率比が大きくなる。トリアルコキシシランとテトラアルコキシシランを、集合的に「アルコキシシラン類」と呼んでもよい。
【0022】
反応(i)における水の量は、アルコキシシラン類1モル部あたり約2モル部からアルコキシシラン類1モル部あたり約15モル部であり得る。一の態様において、水の量はアルコキシシラン類1モル部あたり約3モル部からアルコキシシラン類1モル部あたり約5モル部である。理論に束縛される訳ではないが、反応(i)において水を包含させると、シラノール(Si−OH)部分の形成をもたらすと考えられる。幾分かの、しかし、典型的には全部ではない、シラノール部分は、他のシラノール部分との縮合反応(Si−OH+HO−Si)を経て、シリカ結合 (Si−O−Si)および水(HO)を形成すると考えられる。残りのシラノール部分は濃縮されて残り、斯くして、アルコール部分と潜在的に反応性がある。
【0023】
一般的に、アルコキシシラン類は水に不溶か、水に溶けにくい。これに照らすと、反応(i)は有機溶媒中で実施でき、これは、アルコキシシラン類が有機溶媒に可溶であり、その中で、それらが比較的良好に溶けているか混合していることを意味する。一の態様において、この有機溶媒は2−エトキシエタノールである。別の態様では、この有機溶媒はl−メトキシ−2−プロパノールである。有機溶媒は、反応混合物の他の成分を溶解するのに十分な任意の量で存在できる。一の態様において、有機溶媒:アルコキシシラン類の重量比は少なくとも約10:1である。別の態様において、この有機溶媒は、反応混合物の全重量の約70%から約99%存在する。
【0024】
別法として、反応(i)を水溶液中の懸濁状態、あるいは水溶液中の乳化状態で実施できる。ここで、後者の技術の場合には、適当な界面活性剤または共溶媒を使用して、アルコキシシラン類を水溶液に少なくとも比較的良好に溶ける様にすることができる。
【0025】
反応段階(i)の温度は非常に重要ではない。但し、それは、第一のシロキサン樹脂が形成できる温度である。
【0026】
反応段階(i)の継続時間は非常に重要ではない。但し、それは、反応が所望の完成水準に達するのに十分な長さである。
【0027】
反応段階(i)は、反応を推進する触媒(「加水分解触媒」)の存在下で実施できる。この触媒は塩基または酸であり得る。一の態様において、反応段階(i)は、鉱酸の存在下で実施できる。有用な鉱酸は、とりわけ、HCl、HF、HBr、HNO、およびHSOを包含するが、これらに限定されない。一の態様において、この触媒はHClである。HClまたは他の揮発性の酸の利点は、揮発性の酸は、反応(i)が完了したあと、揮散により組成物から容易に除去されることである。この触媒の量はその性質に依存する。例えば、触媒がHClのときは、反応混合物の全重量に対して0.05%から1%のHClを使用できる。
【0028】
第一のシロキサン樹脂は、珪素−炭素結合を実質的に持たない、すなわち、珪素原子に結合している全原子の約5モル%未満が炭素であろう。しかしながら、反応の結果、例えば低レベルの副反応を介して、または珪素−炭素結合を持つ反応混入物質の存在により、幾ばくかの珪素−炭素結合が形成されるかもしれない。
【0029】
反応段階(ii)において、第一のシロキサン樹脂は式HO−(CH−Zを持つ化合物と反応して、シロキサン樹脂組成物を形成することがでる。ここで、各mは独立に1から約5の整数であり、各nは独立に1から約6の整数である。
【0030】
式HO−(CH−Zを有する化合物は、当分野で既知であり、染料特性を持つことが多い。これは、電磁放射(EM)線の一以上の波長、例えばEMスペクトルの紫外領域内の波長において、これらが比較的高い減衰係数を持つことを意味する。比較的高い減衰係数は、一以上の波長において、EM線の比較的高い吸光度と、比較的低い透過率をもたらす。一の態様において、式HO−(CH−Zを持つ化合物は9−アントラセンメタノールである。別の態様において、この化合物はヒドロキシベンジルアルコールである。更に別の態様において、この化合物はベンジルオキシベンジルアルコールである。
【0031】
反応段階(ii)は、第一のシロキサン樹脂を含有する溶液、懸濁液、または乳濁液に式HO−(CH−Zを持つ化合物を添加することにより、実施できる。随意に、反応段階(ii)の前または後に、水の様な化合物、あるいはHSOの様な不揮発性の鉱酸を添加することができる。一の態様において、水の量は、全組成物の100重量部当たり約0から約15重量部である。一の態様において、不揮発性鉱酸の量は、重量で、全組成物百万部当たり約0から約500部である。
【0032】
化合物HO−(CH−Zは、化合物約1重量部:第一のシロキサン樹脂1重量部から化合物約1重量部:第一のシロキサン樹脂10重量部で存在できる。
【0033】
反応段階(ii)の温度は非常に重要ではない。但し、それは、式HO−(CH−Zを持つ化合物が、第一のシロキサン樹脂のシラノール部分と反応できる温度である。一の態様において、反応段階(ii)は、約25℃から反応成分(第二の反応混合物において存在が望ましいかもしれない化合物の内、樹脂、式HO−(CH−Zを持つ化合物、もしあれば溶媒、またはもしあれば水)のおよそ沸点までの温度で実施できる。
【0034】
反応段階(ii)の継続時間は非常に重要ではない。但し、それは、式HO−(CH−Zを持つ化合物と、第一のシロキサン樹脂のシラノール部分の反応が所望の完成水準に達するのに十分な長さである。一の態様において、反応段階(ii)の継続時間は約10分から約60分であり得る。
【0035】
反応段階(ii)は、式HO−(CH−Zを持つ化合物と、第一のシロキサン樹脂のシラノール部分との反応を推進する触媒の存在下で実施できる。この触媒は、塩基または酸であり得る。一の態様において、反応段階(ii)は、鉱酸の存在下で実施できる。
【0036】
反応段階(ii)の結果として、第一のシロキサン樹脂は−O−(CH−Z部分で置換される。この部分は染料特性を持つので、製品は、「着色したシロキサン樹脂」と称することができる。
【0037】
反応段階(i)および(ii)は、順次に、または同時に実施できる。同時に実施するときは、加水分解触媒の存在下、アルコキシシラン類、水、および式HO−(CH−Zを持つ化合物が反応して、着色したシロキサン樹脂を形成する。
【0038】
別の態様において、本発明は、
基板上に組成物を塗布して、被覆基板を形成する段階、ここで前記組成物は式(HSiO3/2(Si04/2(HSiX3/2(SiX4/2を持つシロキサン樹脂を含み、ここで、各Xは独立に−O−、−OH、または−O−(CH−Zであり、但し、少なくとも一のXは−O−(CH−Zであり、ここでZはn個の芳香環を含む多環式芳香族炭化水素部分であり、各mは独立に1から約5の整数、各nは独立に1から約6の整数、かつ0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<d<l、並びにa+b+c+d=1である;および
前記被覆基板を硬化させて、前記基板上に反射防止被覆を形成する段階、
を含む基板上に反射防止被覆を製造する方法に関する。
【0039】
この塗布段階において、組成物は上に説明している。シロキサン樹脂中の−O−(CH−Zの存在が、シロキサン樹脂に反射防止特性を付与する。基板は、この組成物のシロキサン樹脂で被覆することが望ましい任意の材料であり得る。一の態様において、基板は、シリコンウエハーの様な半導体ウエハーである。典型的には、ウエハーは、少なくとも一の半導体層、および、種々の導電性、半導体、または絶縁体材料を含む複数の他の層を含むことができる。
【0040】
被覆は、任意の適当な技術により実施できる。一の態様において、被覆は、塗布により実施できる。典型的には、塗布は、例えば約2000RPMで、基板を回転させること、および溶液を回転している基板の表面に与えることを含む。
【0041】
被覆された基板を硬化させて、基板上に反射防止被覆を形成する。硬化は、一般的に、被覆された基板を、十分な時間、十分な温度に加熱して硬化に導くことを含む。一の態様において、被覆された基板を約50℃から約300℃で、約0.1分から約60分間加熱することができる。別の態様において、被覆された基板を約150℃から約275℃で、約1分から約5分間加熱することができる。
【0042】
被覆組成物の着色したシロキサン樹脂を、硬化の間、酸素または炭素との反応から保護するため、硬化段階を不活性雰囲気下で実施できる。本明細書で使用するとき、「不活性雰囲気」は、酸素を含有するガスおよび炭素を含有するガスを実質的に欠いているガス、またはガスの混合物である。不活性雰囲気は、窒素、希ガス、またはこれらの混合物を含み得る。一の態様において、不活性雰囲気は、もしあるとすれば工業品位、または研究品位の窒素の典型的な混入物質である他の成分を伴う窒素から、本質的に成る。
【0043】
一旦硬化すると、反射防止被覆を含む基板は、フォトリソグラフィの様な、更なる基板処理段階で使用できる。
【0044】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を明示するために包含されている。以下の実施例中に開示された技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者等により発見された技術であり、従って、その実施のための好ましい形態を構成できることは、当業者に十分理解できるであろう。しかしながら、当業者は、本発明の開示に照らして、開示された具体的な態様に多くの変化をさせることが可能であり、それでも、本発明の精神および範囲から離れることなく、類似の、または同様の結果を得られることを理解するであろう。
【0045】
実施例1
表1に記載した量で、成分(A)2−エトキシエタノール、(B)8.4%HCl/HO溶液、(C)トリエトキシシラン、(D)テトラエトキシシランおよび(E)メチルトリメトキシシランをガラス容器中で結合させて、シロキサン樹脂試料1−1から1−11を調製した。得られた溶液を、10分間加熱還流した。(F)10%硫酸水溶液を表1に従って添加した。固体成分が2.64%になる迄、減圧下、70℃で反応生成物から揮発成分を取り除いた。
【0046】

【0047】
実施例2
表2に従い、9−アントラセンメタノール1.42重量部、樹脂溶液100重量部、および水11.4重量部を混合し、混合物を40分間加熱還流して、着色したシロキサン樹脂試料2−1から2−6を調製した。生成物を0.2μmのフィルターで濾過し、シリコンウエハー上に2000RPMでスピンコートし、急速加熱処理装置を用い、窒素中で、200℃、3分間硬化させた。硬化した被膜について、ウーラム・エリプソメータを用いて光学的減衰係数を評価し、また、膜を0.2%のHF水溶液で2分間処理し、水、次いで2−エトキシエタノール溶媒で濯いでHFエッチング速度を測り、そして、エッチング前後の膜厚を評価した。結果を表2に纏めた。実施例2−1から2−6は、有機溶媒中の、実質的にSi−C結合を含有しない着色したシロキサン樹脂は、熱硬化後もそれらの光学特性を維持すること、および、高いHFエッチング速度を持つことができる膜をもたらしたことを実証した。
【0048】

【0049】
比較例3
9−アントラセン−メタノール1.42重量部、表3に示した実質的なSi−C結合を持つ樹脂の溶液100重量部、および水11.4重量部を混合し、混合物を40分間加熱還流して、着色したシロキサン樹脂試料C3−1からC3−5を調製した。生成物を0.2μmのフィルターで濾過し、シリコンウエハー上に2000RPMでスピンコートし、急速加熱処理装置を用い、窒素中で、200℃、3分間硬化させた。硬化した被膜について、ウーラム・エリプソメータを用いて光学的減衰係数を評価し、また、膜を0.2%のHF水溶液で2分間処理し、水、次いで2−エトキシエタノール溶媒で濯いでHFエッチング速度を測り、そして、エッチング前後の膜厚を評価した。結果を表3に纏めた。比較例C3−1からC3−5は、大きなSi−O結合割合を持つシロキサン樹脂系組成物は、低いHFエッチング速度を持つ膜をもたらしたことを実証した。
【0050】

【0051】
本明細書に開示され、また特許請求されている全ての組成物および方法は、本開示に照らして、尋常ではない実験を必要とせずに作製でき、また実行できる。本発明の組成物および方法は、好ましい態様の点から説明してきたが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から離れることなしに、本明細書で説明した組成物、方法、および方法の段階または一連の段階に対して変化を加えうることは明らかであろう。更に具体的には、本明細書で説明した試薬類を化学的に関連する何らかの試薬類で置き換えて、同じ、または類似の結果が達成されるであろうことは明らかであろう。当業者に明らかなこの様な類似の置換および修正は、添付の特許請求の範囲により定義された本発明の精神、技術的範囲、および概念の内に入るものとみなされる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(HSiO3/2(SiO4/2(HSiX3/2(SiX4/2を持つシロキサン樹脂を含む組成物:
ここで、各Xは独立に−O−、−OH、または−O−(CH−Zであり、但し、少なくとも1つのXは−O−(CH−Zであり、ここでZはn個の芳香環を含む多環式芳香族炭化水素部分、各mは独立に1から約5の整数、Zは芳香族部分、各nは独立に1から約6の整数、かつ0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<d<l、並びにa+b+c+d=1である。
【請求項2】
0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、かつ0<(c+d)≦0.6である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
各Xが独立に−O−、−OH、または−O−(CH−Zであり、但し少なくとも1つのXが−O−(CH−Zである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
−(CH−Zが9−アントラセンメチレン部分である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
有機溶媒を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒が2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、またはプロピレングリコールモノエーテルである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
(i)トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、および水を加水分解触媒の存在下で反応させて、HSiO3/2、SiO4/2、HSiX’3/2、およびSiX’4/2ユニットを持ち、かつ実質的に珪素−炭素結合を持たない第一のシロキサン樹脂を形成させる段階、ここでX’は独立に−O−または−OHである;および
(ii)前記第一のシロキサン樹脂を、式HO−(CH−Zを持つ化合物と反応させて、着色したシロキサン樹脂組成物を形成させる段階、ここで各mは独立に1から約5の整数、Zは芳香族部分、かつ各nは独立に1から約6の整数である、
を含む着色したシロキサン樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記加水分解触媒が塩基または酸である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加水分解触媒が鉱酸である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
反応段階(ii)を、約25℃からおよそ反応成分の沸点の温度で、約10分から約60分間実施する請求項7に記載の方法。
【請求項11】
反応段階(ii)を、鉱酸の存在下で実施する請求項7に記載の方法。
【請求項12】
反応段階(i)および(ii)を同時に実施する請求項7に記載の方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法で製造した着色したシロキサン樹脂組成物。
【請求項14】
(i)基板上に組成物を塗布して、被覆基板を形成する段階、ここで前記組成物は式(HSiO3/2(Si04/2(HSiX3/2(SiX4/2を持つシロキサン樹脂を含み、ここで、各Xは独立に−O−、−OH、または−O−(CH−Zであり、但し、少なくとも一のXは−O−(CH−Zであり、ここでZはn個の芳香環を含む多環式芳香族炭化水素部分、各mは独立に1から約5の整数、Zは芳香族部分、各nは独立に1から約6の整数、かつ0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<d<l、並びにa+b+c+d=1である;および
(ii)前記被覆基板を硬化させて、前記基板上に反射防止被覆を形成する段階、
を含む基板上に反射防止被覆を製造する方法。
【請求項15】
硬化段階(ii)が、被覆基板を約50℃から約300℃で約0.1分から60分間加熱することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
硬化段階(ii)が、被覆基板を約150℃から約275℃で約1分から5分間加熱することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
硬化段階(ii)を不活性雰囲気下で実施する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記不活性雰囲気が窒素から本質的に成る請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項14に記載の方法に従って製造された半導体ウエハー。


【公表番号】特表2006−528999(P2006−528999A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533350(P2006−533350)
【出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/016265
【国際公開番号】WO2004/113417
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505425317)ダウ コーニング コーポレイシヨン (9)
【Fターム(参考)】