説明

高い選択性を有する接触分解触媒、処理方法およびこれらの使用

【課題】接触分解触媒、処理方法およびそれらの使用を提供すること。
【解決手段】本発明の触媒は、工業的な接触分解装置に加えられるとき、80以下、好ましくは75以下、より好ましくは70以下の初期活性、0.1〜50hの自己平衡時間、および35〜60の平衡活性を有している。上述の方法は、接触分解における触媒の活性および選択性をより均質にすることを可能にすること、および接触分解触媒の選択性を顕著に向上させることによって、乾性ガスおよびコークスの生成量を明らかに低減させて、蒸気を有効に利用し、FCC装置におけるエネルギー消費を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触分解の分野における触媒、処理方法およびそれらの使用に関する。より詳細には、本発明は、より高い選択性を有している接触分解触媒、処理方法およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1960年代の初頭に、最も早く使用されたY型ゼオライトは、希土類交換型のREYゼオライトであった。REYゼオライトは、5未満のシリカ/アルミナ比、17重量%以上の希土類含有量(REを基準とするゼオライトの重量に対する含有量)、高い酸性中心密度、ならびにガソリンのオクタン価を低減させるような、強い水素転移能、ガソリンにおける低いオレフィン含有量および低いナフタレン含有量を有している。したがって、オクタン価を高める添加剤として加えられるテトラエチル鉛が必要であった。しかし、Y型のゼオライトは、いまだに重石油炭化水素のFCC(流動式接触分解)にとっての主要な活性成分である。
【0003】
アメリカ合衆国は1975年に有鉛のガソリンを廃止し、活性成分としてREYゼオライトを超安定Y(USY)ゼオライトに代えた分解触媒が現れた。USYは、水熱処理を介してY型ゼオライトの骨格の脱アルミニウム化によって調製された高シリカのゼオライトである。USYは、5〜10のシリカ/アルミナ比を一般に有しており、希土類を含まないか、または少量だけ含んでいる。USYが、向上したシリカ/アルミナ比、低下した酸性中心密度、および強度が低下した水素転移能を有しているので、ガソリンは、オレフィンの含有量およびオクタン価が高くなる。例えば、米国特許第4,242,237号には、高いオクタン価を有しているガソリンを生成するための分解触媒について開示されている。ここで、当該分解触媒の活性成分に含まれているUSYゼオライトは、1.15重量%未満の量(REを基準とするゼオライトの重量に対する量)の希土類、および小孔径のゼオライト(エリオナイト(erionite)、モルデン沸石、Aゼオライト、斜方沸石およびオフレタイト(offretite)が挙げられる)を含んでいる。米国特許第4,259,212号には、USYゼオライトを含んでいる分解触媒について開示されている。当該USYゼオライトは、1.15重量%未満の量(REを基準とするゼオライトの重量に対する量)の希土類を含んでおり、24.41Å未満の単位格子定数を有している。2つの特許文献に使用されているUSYゼオライトは、いずれも少量の希土類を含んでいる。80年代初頭には、ZSM型のゼオライトが、ガソリンのオクタン価を上げるために、FCC触媒に使用され始めた。米国特許第4,309,280号には、触媒の重量に対して0.01〜1重量%のHZSM−5ゼオライトがFCC装置に直接に加えられることについて開示されている。米国特許第3,758,083号には、活性成分としてZSM−5ゼオライトおよび大孔径のゼオライト(例えば、X型およびY型)を、1:30〜3:1の比において含んでいる触媒について開示されている。当該触媒は、ガソリン生成物のオクタン価を向上させると同時に、C+Cの収量を増大させるために使用される。FCCにおけるZSM−5の作用は、実際に、ガソリンのオクタン価を向上させるように、低いオクタン価を有する直鎖炭化水素を低炭素のオレフィンに分解すること、低炭素のオレフィン部分を芳香族化することである。したがって、ZSM−5の使用は、ガソリン中のオレフィン成分および芳香族炭化水素成分を不可避的に増大させる。触媒の活性成分としての高シリカのYゼオライトに関して、多くの特許文献がある。例えば、米国特許第4,880,787号には、USYを含んでいるゼオライト触媒について開示されている。当該USYは、5〜100のシリカ/アルミナの比を有しており、上記触媒の重量に対して0.01〜10重量%の希土類を含んでいる。このような触媒は、FCCのガソリンおよび蒸留オイルの収量を増加させ、FCCプロセスにおけるコークスおよび乾性ガスを低減させることを目的として最初に使用されている。
【0004】
シリカ/アルミナの広範な比を有するREYゼオライトまたはUSYゼオライトから調製される触媒は、FCCの目的生成物の選択性に関する要求を十分に満たし得ない。工業的な接触分解装置に加えられるとき、上述のREY型のゼオライト触媒またはUSY型のゼオライト触媒は、85を超える初期活性を有しており、ここで、REY型のゼオライト触媒は90を超える初期活性を有している。高い強度の水熱処理条件において、上述の2種のゼオライト触媒の触媒活性は、徐々に低下する。REY型のゼオライト触媒の触媒活性は、直線的に低下し、USY型のゼオライト触媒の初期活性は、まず急激に低下して、それからエイジング時間を増大させるようにゆっくりと低下する(Fluid Catalytic Cracking Handbook: Design, Operation, and Troubleshooting of FCC Facilities, Reza Sadeghbeigi, 2nd edition, P92, Figs.3-5を参照すればよい)。
【0005】
重油の生成量の増加にしたがって、重油の質が主に以下の点に関して下がる:重油の密度が上昇し;これらの粘度が上昇し;重金属、硫黄、窒素、樹脂およびアスファルテンの含有量ならびに酸価が上昇する。現在、粗製の重油と良質の重油との間の価格差は、石油資源の欠乏にしたがって拡大している。このため、低コストの粗製の重油を利用し、処理する(すなわち、粗製の重油からの軽油の収量を可能な限り増加させる)方法に多大な関心が集まっている。当該方法は、重油に関する従来の処理技術に対して非常な変化をもたらす。軽いオレフィン化合物および自動車用ガソリンに対する増大する必要性を満たすために、国際特許出願第PCT/CN2009/000272号には、粗製の供給原料から燃料の軽油およびプロピレンを生成する処理について開示されている。粗製の供給原料は、接触変成反応器の第1および第2の反応区域に次々と供給され、接触変成触媒と接触させられて、第1および第2の反応を起こす。反応生成物および使用済の触媒の気体−固体分離の後に、当該使用済の触媒は、ストリッピングされ、コークス生成物の焼失を受け、それから反応に再循環される。反応生成物の分離後に、プロピレン、ガソリン、流動式接触分解の軽油(FGO)および他の生成物が得られる。ここで、上述の流動式接触分解の軽油を、芳香族抽出装置に供給して、分離によって抽出油および精製油が得られる。上記接触変成反応器および/または他の接触変成装置に対して、さらなる反応のために上述の精製油を再循環させて、目的生成物(すなわちプロピレンおよびガソリン)が得られる。上述のプロセスにおいて、粗製の供給原料の穏やかな接触変成の後に得られるFGOは、芳香族抽出装置を用いることによって分離される。抽出油が優良な化学物質であるため、二環式の芳香族炭化水素は抽出油中に豊富に含まれている。精製油が接触変成にとって非常に好適であるため、アルカンおよびシクランは精製油中に豊富に含まれていて、石油原料の高効率な利用を実現する。上述のプロセスは、乾性ガスおよびコークスの生成量を非常に低減させるので、上述のプロセスに使用される触媒は、目的生成物に対する触媒の選択性に基づいている。
【0006】
継続的な磨耗に起因して、工業的な接触分解装置における触媒は、運転中に次第に失われていく。さらに、平衡触媒の一部は、反応に求められるような平衡触媒活性を維持するために、常に取り除かれる。逆に新たな触媒の補充が余儀なくされる(現状では、一般的に新たな触媒の活性は85を超えており、乾性ガスおよびコークスの選択性が非常に悪い)。したがって、系の平衡触媒の残量に対する新たな触媒の適切な補給率がある。平衡触媒は、新たな触媒の継続的な添加、および系の平衡触媒の継続的な損失(人工的な除去が挙げられる)を合わせた作用の結果であることが分かる。現状では、新たな触媒は以下の方法によって接触分解装置に一般的に補充されている。つまり、新たな触媒の貯蔵タンクからの新たな触媒は、手動の供給手段または自動の供給手段に供給され、重量を測定され、脱気および流動化の後に排出される。上記触媒は、それから上記接触分解装置の再生器に送られる。触媒の自動的な重量測定をどのように実現するか、および自動供給プロセス中の設備の故障をどのように低減するかについて、多くの特許文献に記載されている。例えば、中国特許第1210029号および中国特許第2407174号には、接触分解触媒用の小型自動供給システムについて開示されている。
【0007】
触媒の水熱による不活化は、30〜100日間の平均寿命を有する穏やかなプロセスである。不活化のプロセスにおいて、新たな触媒の活性、供給原料オイルの金属含有量およびそれらの他の特性、FCCU(流動式接触分解装置)の運転条件、触媒の損耗率および廃棄率は、一定を維持できない。一方で、単一の粒子の形態における新たな触媒は、完全混合流動再生器(complete-mixing-flowing regenerator)に投入するときに、物理的および化学的な特性が損なわれる。これらの問題に起因して、工業的な接触分解装置における触媒のエイジングおよび活性の分布の正確な予測が困難である。平衡活性もしくは他の特性を測定するために工業的な接触分解装置における平衡触媒のサンプルを直接的に採取すること、または単純化された数学モデルに基づいて平衡触媒活性もしくは他の特性を算出することによって得られる平衡触媒の活性または他の特性は、平均の活性および他の特性の平均値に過ぎない。これらの値は、FCCUの生成動作を指示するための、ならびに生成物の分布および特性を最適化するための重要なパラメータである。しかし、同時に重大な問題が生じる。すなわち、工業的な接触分解装置におけるありとあらゆる触媒粒子の、生成物の分布および特性に対する影響における差異を見逃すことである。中国特許第1382528号には、触媒に関する周期的な汚染およびエイジングのプロセスについて開示されている。上述のプロセスによる処理の後において、新たな触媒の物理化学的特性のすべては、工業的な平衡触媒と非常に近い。上述のプロセスは、研究室において処理される触媒と工業的な平衡触媒との間の差異について主に設計されているが、工業的な平衡触媒の間の活性の差異を改善させることができない。中国特許第1602999号には、水素化触媒を外部的に処理する方法について開示されている。当該方法は、不動態化ガスを含んでいる酸素を用いることによって触媒を硫化状態に不動態化する、水素化触媒の気相のエクスシチュ(ex-situ)事前加硫ステップを包含している。上述の方法は、触媒の活性および安定性を顕著に向上させ得る。しかし、上述の方法は、接触分解触媒ではなく、水素化触媒の処理にのみ適している。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、従来技術を基準としてより高い選択性を有している接触分解触媒、それらの処理および使用を提供することである。
【0009】
本発明者らは、単一粒子の触媒のすべてが、工業的な接触分解装置における異なる滞留時間に起因して、異なる接触活性および選択性を有していることを見出している。発明者らの研究によって、工業的な接触分解装置におけるほとんどの触媒が、活性に対する延長された寿命およびより少ない影響を有していることが示されている。装置が100日間にわたって運転された後には、それに加えられた触媒のおよそ半分が、系に保持されているが、活性に対して5%の影響しか有していない。わずか25日間の有効寿命を有している触媒は、系における総量の1/6の量に過ぎないが、全体の系の活性に対して2/3の影響を有している。工業的な接触分解装置における触媒の活性は、再生温度および蒸気の分圧の作用と非常に近い。蒸気によって、触媒のエイジング処理に“自己平衡”処理を含めることが可能である。すなわち、それらのエイジング効果は、エイジング時間の延長とともに減弱する。一方で、触媒が、新たな触媒(より高い微小反応活性(micro-reaction activity))から、平衡化触媒(より低い微小反応活性)に変成されている場合に、乾性ガスおよびコークスの選択性が、平衡に達するまで急速に向上されることが、研究の結果によって示されている。したがって、接触分解の選択性を向上させる最良の方法は、工業的な接触分解装置の中に直接的に、高い微小反応活性を有している新たな触媒を加えることではなく、工業的な接触分解装置の中により選択性の高い触媒を加えることである。
【0010】
第1の態様において、本発明は、工業的な接触分解装置に加えられるときに、80以下、好ましくは75以下、より好ましくは70以下の初期活性、0.1〜50h、好ましくは0.2〜30h、より好ましくは0.5〜10hの自己平衡時間、および35〜60、好ましくは40〜55の範囲の平衡活性を有していることを特徴とする、高い選択性を有している接触分解触媒を提供する。
【0011】
後述するように、上記触媒、または新たな触媒の初期活性は、軽油の微小反応装置によって評価された触媒活性を意味する。上記初期活性は、従来技術における測定方法によって測定され得る。上記測定方法は、接触分解の新たな触媒に関する企業標準のRIPP 92−90微小反応活性試験法、石油分析法(RIPP試験法、以下、RIPP 92−90と記載する)である(Yang Cuiding et al,1990)。上記触媒または新たな触媒の初期活性は、以下の式:
MA=(生成物における204℃未満の温度を有するガソリンの生成量+ガスの生成量+コークスの生成量)/供給原料の総重量×100%=生成物における204℃未満の温度を有するガソリンの生成量+ガスの生成量+コークスの生成量
によって算出される軽油の微小反応活性(MA)を用いて表される。
【0012】
軽油の微小反応装置の評価条件(RIPP 92−90を指す)としては、触媒を、420〜481μmの粒径を有している粒子に粉砕すること;5gの触媒が装置に加えられること;反応原料が、235〜337℃の蒸留範囲を有している軽いディーゼル燃料に直留されること;反応温度が460℃であること;重量空間速度が16h−1であること;および触媒/供給原料比が3.2であることが挙げられる。
【0013】
触媒の自己平衡時間は、800℃および100%の蒸気におけるエイジング(aging)によって平衡活性に達するまでに必要な時間である(RIPP 92−90を参照)。
【0014】
触媒は、以下の第2、第3および第4の態様における方法によって得られる。
【0015】
触媒は、触媒の総重量に対して、1〜50重量%のゼオライト、5〜99重量%の無機酸化物、および必要に応じて0〜70重量%の粘土を含んでいる。ここで、活性成分としての上記ゼオライトが中孔径(medium pore)のゼオライトおよび/または大孔径(large pore)のゼオライトから選択される。ゼオライトの総重量に対して、中孔径のゼオライトの量が0〜100重量%であり、大孔径のゼオライトの量が0〜100重量%である。中孔径のゼオライトは、ゼオライトのZSM系列および/またはZRPゼオライトよりなる群から選択される。また、上述の中孔径のゼオライトは、非金属元素(例えば、リンなど)および/または遷移金属元素(例えば、鉄、コバルトおよびニッケルなど)を用いて修飾され得る。ZRPに関する詳細な説明は、米国特許第5,232,675号に見られる。ZSM系列のゼオライトは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48および類似の構造を有する他のゼオライトの1つ以上から選択される。ZSM−5に関する詳細な説明は、米国特許第3,702,886号に見られる。大孔径のゼオライトは、希土類Y(REY)、希土類水素吸蔵Y(REHY)、種々の方法によって得られる超安定Y、および高ケイ素Yの1つ以上から選択される。
【0016】
結合剤としての無機酸化物は、SiOおよび/またはAlよりなる群から選択される。
【0017】
基材(すなわち担体)としての粘土は、カオリンおよび/またはハロイサイトよりなる群から選択される。
【0018】
第2の態様において、本発明は、上記接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法を提供する。当該処理方法は、以下のステップ:
(1)新たな触媒を、流動床、好ましくは濃密相の(dense phase)流動層に供給し、蒸気と接触させ、特定の水熱環境下においてエイジングして、エイジングされた触媒(aged catalyst)を得る工程;および、
(2)工業的な接触分解装置にエイジングされた上記触媒を供給する工程を包含している。
【0019】
本発明の技術的な解決法が、例えば、以下のように特に実施される。
【0020】
新たな触媒が、流動層、好ましくは濃密相の流動層に供給され、蒸気が流動層の底部に供給される。上記触媒の流動化法が蒸気の作用の下に実施される。同時に、上記触媒が蒸気によってエイジングされて、第1の態様に述べたようなエイジングされた触媒が得られる。エイジング温度は、400℃〜850℃、好ましくは500℃〜750℃、より好ましくは600℃〜700℃の範囲である。上記流動層の表面の線速度は、0.1〜0.6m/s、好ましくは0.15〜0.5m/sの範囲である。エイジング時間は、1〜720h、好ましくは5〜360hの範囲である。工業的な接触分解装置に必要な量にしたがって、エイジングされた触媒は、工業的な接触分解装置、好ましくは工業的な接触分解装置の再生器(regenerator)に加えられる。
【0021】
本発明において、再生器が工業的な接触分解装置の一部と見做されることが意図される。
【0022】
触媒は、当該触媒の総重量に対して、1〜50重量%のゼオライト、5〜99重量%の無機酸化物、および必要に応じて0〜70%の粘土を含んでいる。ここで、活性成分としての上記ゼオライトが、中孔径のゼオライトおよび/または大孔径のゼオライトから選択される。ゼオライトの総重量に対して、中孔径のゼオライトの量は0〜100重量%であり、大孔径のゼオライトの量は0〜100重量%である。中孔径のゼオライトは、ゼオライトのZSM系列および/またはZRPゼオライトよりなる群から選択される。また、上述の中孔径のゼオライトは、非金属元素(例えば、リンなど)および/または遷移金属元素(例えば、鉄、コバルトおよびニッケルなど)を用いて修飾され得る。ZRPに関する詳細な説明は、米国特許第5,232,675号に見られる。ZSM系列のゼオライトは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48および類似の構造を有する他のゼオライトの1つ以上から選択される。ZSM−5に関する詳細な説明は、米国特許第3,702,886号に見られる。大孔径のゼオライトは、希土類Y(REY)、希土類水素吸蔵Y(REHY)、種々の方法によって得られる超安定Y、および高ケイ素Yの1つ以上から選択される。
【0023】
結合剤としての無機酸化物は、SiOおよび/またはAlよりなる群から選択される。
【0024】
基材(すなわち担体)としての粘土は、カオリンおよび/またはハロイサイトよりなる群から選択される。
【0025】
上記エイジングのステップの後に、蒸気が、ストリッピング(stripping)スチーム、アトマイジング(atomizing)スチームおよびリフティング(lifting)スチームから選択される1つ以上として使用され、上記接触分解装置の回収器(stripper)、分解器(disengager)、供給原料ノズルおよびプレリフティング(pre-lifting)区域のそれぞれに加えられる。また、蒸気は、例えば、ルージングスチームなどとして有効であり得る。
【0026】
第3の態様において、本発明は、接触分解触媒の選択性を向上させる他の処理方法を提供する。当該処理方法は、以下のステップ:
(1)新たな触媒を、流動層、好ましくは濃密相の流動層に供給し、蒸気を含んでいるエイジング媒体と接触させ、特定の水熱環境下においてエイジングして、エイジングされた触媒を得る工程;および、
(2)工業的な接触分解装置にエイジングされた上記触媒を供給する工程を包含している。
【0027】
本発明の技術的な解決法が、例えば、以下のように特に実施される。
【0028】
新たな触媒が、流動層、好ましくは濃密相の流動層に供給され、蒸気を含んでいるエイジング媒体が流動層の底部に供給される。上記触媒の流動化法が蒸気を含んでいるエイジング媒体の作用の下に実施される。同時に、上記触媒が、蒸気を含んでいるエイジングされた触媒によってエイジングされて、第1の態様に述べたようなエイジングされた触媒が得られる。エイジング温度は、400℃〜850℃、好ましくは500℃〜750℃、より好ましくは600℃〜700℃の範囲である。上記流動層の表面の線速度は、0.1〜0.6m/s、好ましくは0.15〜0.5m/sの範囲である。エイジング媒体に対する蒸気の重量比は、0.20〜0.9、好ましくは0.40〜0.60の範囲である。エイジング時間は、1〜720h、好ましくは5〜360hの範囲である。工業的な接触分解装置に必要な量にしたがって、エイジングされた触媒は、工業的な接触分解装置、好ましくは工業的な接触分解装置の再生器に加えられる。
【0029】
触媒は、当該触媒の総重量に対して、1〜50重量%のゼオライト、5〜99重量%の無機酸化物、および必要に応じて0〜70%の粘土を含んでいる。ここで、活性成分としての上記ゼオライトが、中孔径のゼオライトおよび/または大孔径のゼオライトから選択される。ゼオライトの総重量に対して、中孔径のゼオライトの量は0〜100重量%であり、大孔径のゼオライトの量は0〜100重量%である。中孔径のゼオライトは、ゼオライトのZSM系列および/またはZRPゼオライトよりなる群から選択される。また、上述の中孔径のゼオライトは、非金属元素(例えば、リンなど)および/または遷移金属元素(例えば、鉄、コバルトおよびニッケルなど)を用いて修飾され得る。ZRPに関する詳細な説明は、米国特許第5,232,675号に見られる。ZSM系列のゼオライトは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48および類似の構造を有する他のゼオライトの1つ以上から選択される。ZSM−5に関する詳細な説明は、米国特許第3,702,886号に見られる。大孔径のゼオライトは、希土類Y(REY)、希土類水素吸蔵Y(REHY)、種々の方法によって得られる超安定Y、および高ケイ素Yの1つ以上から選択される。
【0030】
結合剤としての無機酸化物は、SiOおよび/またはAlよりなる群から選択される。
【0031】
基材(すなわち担体)としての粘土は、カオリンおよび/またはハロイサイトよりなる群から選択される。
【0032】
エイジング媒体は、空気、乾性ガス、再生された燃焼排気、燃焼によって得られたガスまたは他のガス(例えば、窒素ガス)を含んでいる。燃焼によって得られたガスは、空気の燃焼によって得られたガス、ならびに空気の燃焼およびオイルの燃焼によって得られたガスまたは乾性ガスである。蒸気およびエイジング媒体の重量比は、0.2〜0.9、好ましくは0.40〜0.60の範囲である。再生された煤煙ガスは、本装置または他の装置から得られる。エイジングステップの後に、蒸気を含んでいるエイジング媒体が再生器に供給される。
【0033】
第4の態様において、本発明は、接触分解触媒の選択性を向上させるさらに他の処理方法を提供する。当該処理方法は、以下のステップ:
(1)新たな触媒を流動層に供給し、再生器において熱再生された触媒を当該流動層に導入し、当該流動層において新たな上記触媒および熱再生された上記触媒に熱交換させる工程;
(2)熱交換された新たな上記触媒を、蒸気を含んでいるエイジング媒体または蒸気と接触させ、特定の水熱環境下においてエイジングして、エイジングされた触媒を得る工程;ならびに、
(3)エイジングされた上記触媒を工業的な接触分解装置に供給する工程を包含している。
【0034】
本発明の技術的な解決法は、例えば、以下のように特に実施される。
【0035】
新たな触媒が、流動層、好ましくは濃密相の流動層に供給され、再生器において熱再生された触媒が流動層に対して同時に導入されて、流動層におけるこれらの2つの触媒間において熱交換を行う。蒸気または蒸気を含んでいるエイジング媒体が流動層の底部に供給される。上記触媒の流動化法が蒸気または蒸気を含んでいるエイジング媒体の作用の下に実施される。同時に、上記触媒が、蒸気を含んでいるエイジングされた触媒によってエイジングされて、第1の態様に述べたようなエイジングされた触媒が得られる。エイジング温度は、400℃〜850℃、好ましくは500℃〜750℃、より好ましくは600℃〜700℃の範囲である。上記流動層の表面の線速度は、0.1〜0.6m/s、好ましくは0.15〜0.5m/sの範囲である。エイジング時間は、1〜720h、好ましくは5〜360hの範囲である。蒸気を含んでいるエイジング媒体の環境下において、エイジング媒体に対する蒸気の重量比は、0を超え4まで、好ましくは0.5〜1.5の範囲である。工業的な接触分解装置に必要な量にしたがって、エイジングされた触媒は、工業的な接触分解装置、好ましくは工業的な接触分解装置の再生器に加えられる。また、エイジングステップの後に、蒸気が、反応系または再生系に供給される。反応系に供給される蒸気は、ストリッピングスチーム、ドームスチーム、アトマイジングスチームおよびリフティングスチームよりなる群から選択される1つ以上として供給され、接触分解装置の回収器、分解器、原料ノズルおよびプレリフティング区域のそれぞれに加えられる。蒸気を含んでいるエイジング媒体は、エイジングステップの後に再生系に供給され、熱交換され再生された触媒が再生器に戻されて再利用される。
【0036】
触媒は、当該触媒の総重量に対して、1〜50重量%のゼオライト、5〜99重量%の無機酸化物、および必要に応じて0〜70%の粘土を含んでいる。ここで、活性成分としての上記ゼオライトが、中孔径のゼオライトおよび/または大孔径のゼオライトから選択される。ゼオライトの総重量に対して、中孔径のゼオライトの量は0〜100重量%であり、大孔径のゼオライトの量は0〜100重量%である。中孔径のゼオライトは、ゼオライトのZSM系列および/またはZRPゼオライトよりなる群から選択される。また、上述の中孔径のゼオライトは、非金属元素(例えば、リンなど)および/または遷移金属元素(例えば、鉄、コバルトおよびニッケルなど)を用いて修飾され得る。ZRPに関する詳細な説明は、米国特許第5,232,675号に見られる。ZSM系列のゼオライトは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48および類似の構造を有する他のゼオライトの1つ以上から選択される。ZSM−5に関する詳細な説明は、米国特許第3,702,886号に見られる。大孔径のゼオライトは、希土類Y(REY)、希土類水素吸蔵Y(REHY)、種々の方法によって得られる超安定Y、および高ケイ素Yの1つ以上から選択される。
【0037】
結合剤としての無機酸化物は、SiOおよび/またはAlよりなる群から選択される。
【0038】
基材(すなわち担体)としての粘土は、カオリンおよび/またはハロイサイトよりなる群から選択される。
【0039】
エイジング媒体は、空気、乾性ガス、再生された燃焼排気、燃焼によって得られたガスまたは他のガス(例えば、窒素ガス)を含んでいる。燃焼によって得られたガスは、空気の燃焼によって得られたガス、ならびに空気の燃焼およびオイルの燃焼によって得られたガスまたは乾性ガスである。再生された煤煙ガスは、本装置または他の装置から得られる。
【0040】
第5の態様において、本発明は、第1の態様に係る触媒、または第2、第3もしくは第4の態様における方法にしたがって得られる触媒の、接触分解プロセスにおける使用を提供する。ここで、当該触媒は、工業的な接触分解装置(好ましくは再生器)に、接触分解プロセスのために加えられる。当業者であれば、第1、第2、第3または第4の態様における種々の特徴がまた、上述の第5の態様にとって好適であることを明確に認識する。
【0041】
第6の態様において、本発明は、第1の態様における触媒を調製する方法を提供する。ここで、上述の新たな触媒は、第2、第3または第4の態様において述べた方法にしたがってエイジングされ、それから、工業的な接触分解装置(好ましくは再生器)に、接触分解プロセスのために加えられる。例えば、エイジング処理は以下の方法1,2および3のうちのいずれかである。
方法1:新たな触媒が、流動層に供給され、蒸気と接触させられ、特定の水熱環境下においてエイジングされて、エイジングされた触媒が得られる(上述の第2の態様を参照すればよい);
方法2:新たな触媒が、流動層に供給され、蒸気を含んでいるエイジング媒体と接触させられ、特定の水熱環境下においてエイジングされて、エイジングされた触媒が得られる(上述の第3の態様を参照すればよい);および、
方法3:新たな触媒が流動層に供給され、再生器において熱再生された触媒が同時に流動層に導入されて、流動層において両方の触媒を熱交換する。それから、熱交換された新たな触媒は、蒸気または蒸気を含んでいるエイジング媒体と接触させられ、特定の水熱環境下においてエイジングされて、エイジングされた触媒が得られる(上述の第4の態様を参照すればよい)。
【0042】
当業者であれば、上述の方法1,2または3における好ましいか、またはさらなる特徴点のそれぞれが第2、第3または第4の態様における特徴点に対応することを明確に認識する。
【0043】
本発明は、従来技術と比べて以下の技術的な作用を有している。
1.接触分解装置における触媒の活性および選択性の分布がより均質である。
2.接触分解触媒の選択性が、乾性ガスおよびコークスの生成量を明らかに減少させるように、顕著に向上している。
3.接触分解装置の自己資源が、触媒のエイジングに要するコストを削減できるように、効率的に利用される。
【0044】
特に断りがなければ、本明細書に使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術における当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有している。本明細書に記載の方法および材料と類似であるか、または等価な方法および材料が本発明の実施または試験に使用され得るが、好適な方法および材料が後ほど述べられる。矛盾がある場合、特許明細書(定義づけが挙げられる)によって規制される。また、材料、方法および実施例は、単に例示的なものであり、これらに限定することを意図するものではない。
【0045】
本明細書に使用されるとき、用語“含んでいる(comprising)”および“含んでいる(including)”は、最終生成物に影響を与えない他の工程および成分が加えられ得ることを意味している。当該用語は、用語“からなる”および“必須に〜からなる”を包含している。
【0046】
用語“方法”または“プロセス”は、所定の作業を成し遂げるための様式、手段、技術および手法(化学および化学工学の熟練者に公知であるか、または公知の様式、手段、技術および手法から当該熟練者によって容易に開発される様式、手段、技術および手法が挙げられるが、これらに限定されない)を指す。
【0047】
本開示を通して、本発明の種々の態様が、範囲形式として表され得る。範囲形式の記載は、単に便宜および簡潔さを目的としていることを理解すべきであり、本発明の範囲に対する確固とした限定と解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、考えられるすべての部分的な範囲だけでなく、その範囲内にある個々の数値を特に開示していると見做されるべきである。例えば、1〜6といった範囲の記載は、例えば1〜3,1〜4,1〜5,2〜4,2〜6,3〜6などの部分的な範囲だけでなく、1,2,3,4,5および6といった範囲内にある個々の数字を特に開示していると見做されるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず当てはまる。
【0048】
本明細書に数値の範囲が示されている場合にはいつでも、示されている範囲内の言及されている任意の数値(端数または整数)を含んでいることが意図される。第1の表示値と第2の表示値との“間”および第1の表示値“〜”第2の表示値“の範囲にある/範囲”という表現は、本明細書において交換可能に使用され、第1の表示値および第2の表示値、ならびにこれらの間にあるすべての端数および整数を含んでいることが意図される。
【0049】
本発明は、一例として、添付の図面を参照して本明細書に説明されている。図面の詳細と特に関連して示されている詳細は、本発明の好ましい実施形態を単に例示することを目的としている一例であり、本発明の原理および概念的な態様を容易に理解されると考えられるものならびに最も有用なものを与えるために示されていることが強調される。この点について、本発明の構造に関する詳細について、本発明の基本的な理解に必要な程度を超えて詳細には示されていない。図面を用いて記載されている説明は、本発明の種々の形態が実施に際してどのように具体化され得るかが当業者にとって明確になっている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に関連する触媒変成方法の基本的な概略図である。
【図2】本発明に係る接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法の概略図である。
【図3】本発明に係る接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法の他の概略図である。
【図4】本発明に係る接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法のさらに他の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図面に関して、本発明において提供される方法を限定することなく、例示することを意図している。
【0052】
図1は、本発明に係る触媒変成方法の基本的な概略図である。
【0053】
プレリフトされた媒体が、管路1を介して垂直パイプ反応器2の底部に供給される。管路16からの再生された触媒は、プレリフトされた媒体の上昇作用に基づいて垂直パイプに沿って上方に移動する。管路3を経た供給原料オイルの一部および管路4からのアトマイズされた蒸気は、垂直パイプ2の反応区域Iの底部に供給され、垂直パイプ反応器に存在する蒸気と混合される。当該供給原料オイルは、高温の触媒上において分解蒸留され、上方への移動を加速させる。管路5を経た供給原料オイルの一部、および管路6からのアトマイズされた蒸気は、垂直パイプ2の反応区域Iの中央部および上部に供給され、垂直パイプに存在する蒸気と混合される。当該供給原料オイルは、それらの上に微量のコークスを含んでいる触媒上において分解蒸留され、連続反応のために上方に向かう反応区域II内への移動を加速させる。生成された反応生成物であるオイルガスおよび失活した使用済の触媒が管路7を介して分解器8におけるサイクロン集塵器に供給されて、反応生成物であるオイルガスから使用済の触媒が分離される。反応生成物であるオイルガスは、回収容器9に供給され、微細な触媒粉末がディプレグ(dipleg)を経て分解器に再循環される。分解器における使用済の触媒は、ストリッピング区域10まで流れ、管路11からの蒸気と接触させられる。使用済の触媒から取り除かれた反応生成物であるオイルガスは、サイクロン集塵器を経て回収容器9に供給される。取り除かれた使用済の触媒が、傾斜管12を経て再生器13に供給され、主空気が管路14を経て再生器に入る。使用済の触媒上におけるコークスが燃焼させられて、失活した使用済の触媒が再生され、燃焼排気が管路15を経てタービンに入る。再生された触媒は、傾斜管16を経て垂直パイプに供給される。
【0054】
回収容器9における反応生成物であるオイルガスは、主オイルガス管路17を経て、続く分離システム18に供給される。分離された乾性ガスは、管路19を経て引き出される。分離によって得られた液化石油ガス(LPG)は、管路20を経て引き出され;分離によって得られたガソリンは、管路21を経て引き出され;分離によって得られたディーゼル油は、管路22を経て引き出され;分離によって得られた流動式接触分解の軽油は、管路23を経て引き出される。各画分の蒸留範囲は、精製装置の実際の条件にしたがって調節され得る。
【0055】
図2は、本発明に係る接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法の模式図である。しかし、新たな触媒のエイジャ(ager)は、分解器と隣りあって配置されることに限定されず、エイジングされた触媒は再生器に再循環されることに限定されない。
【0056】
新たな触媒のエイジャ(すなわち濃密相の流動層32)は、分解器と隣り合って配置されて、濃密相の流動層32に新たな接触分解触媒を供給し得る。蒸気が、管路31を経て濃密相の流動層32に供給されて、濃密相の流動層32において新たな触媒をエイジングする。エイジングした蒸気は、流入口から管路33を経て分解器8に再循環され、(1) ドームスチーム(dome steam)もしくはパージスチーム(puerge steam)として使用されるか、または(2) 管路33が管路11と連結されており、したがって流入口bおよびcから回収器に注入されて、ストリッピングスチームとして使用される。工業的な接触分解装置における必要性にしたがって、エイジングされた触媒が管路34を経て工業的な接触分解装置の再生器13に加えられる。
【0057】
図3は、本発明に係る接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法の他の模式図である。しかし、新たな触媒のエイジャは、再生器と隣り合って配置されることに限定されず、エイジングされた触媒は再生器に再循環されることに限定されない。
【0058】
新たな触媒のエイジャ(すなわち濃密相の流動層32)は、再生器13と隣り合って配置されて、濃密相の流動層32に新たな接触分解触媒を供給する。蒸気は、管路34において管路39からの燃焼排気と混合され得る。そして混合されたガスは、濃密相の流動層32の底部に供給されて、濃密相の流動層32において新たな触媒をエイジングする。エイジングを行ったガス(蒸気+燃焼排気)は、管路33を経て流入口から再生器13に再循環される。燃焼排気は、気体−固体分離のためにサイクロン集塵器36に供給される。分離された燃焼排気は、管路15を経て再生器から出ていき、それから2つの蒸気に分けられる。ここで、一方の蒸気は管路38を経てタービンに入り、他方の蒸気は管路39を経て管路31からの蒸気と混合される。工業的な接触分解装置の要求に応じて、エイジングされた触媒は、管路37を経て工業的な接触分解装置の再生器に加えられ、卓越風(prevailing wind)が、触媒の再生のために管路14を経て再生器13に供給される。
【0059】
図4は、本発明に係る接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法のさらに他の模式図である。しかし、新たな触媒のエイジャは、再生器と隣り合って配置されることに限定されず、エイジングされた触媒は、再生器に再循環されることに限定されない。さらに熱交換の型または様式は図面に示されるものに限定されない。
【0060】
新たな触媒のエイジャ(すなわち濃密相の流動層32”)は、再生器13”と隣り合って配置されて、管路42”を経て濃密相の流動層32”の熱交換器40”に、再生器13”内の高温の触媒を導入する。熱交換器40”における新たな接触分解触媒は、管路41”を経て再生器13”に再循環される。蒸気は、管路31”を経て濃密相の流動層32”の底部に供給されて、濃密相の流動層32”において熱交換された新たな触媒をエイジングする。エイジングを行った蒸気は、管路33”を経て流入口a”から分解器に再循環され、(1) ドームスチームもしくはパージスチームとして使用されるか、または(2) 管路33”が管路11”と連結されており、したがって流入口b”およびc”から回収器に注入されて、ストリッピングスチームとして使用される。工業的な接触分解装置の必要に応じて、エイジングされた触媒は、管理34”を経て工業的な接触分解装置の再生器13”に加えられる。主空気が、触媒の再生のために管路14”を経て再生器13”に供給される。燃焼排気は、気体−固体分離のためにサイクロン集塵器36”に供給される。分離された燃焼排気は、管路15”を経て再生器から出ていく。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本発明の作用を証明するために使用され、本明細書に示される詳細な実施例に本発明の範囲を限定することを意図されていない。以下の実施例および比較例において使用される供給原料オイルの特性は、表1に挙げられている。
【0062】
実施例1に使用された触媒Aのゼオライトは、エイジングされた高シリカのゼオライトであった。上述の高シリカのゼオライトは、以下のステップによって調製された。SiClの気相処理および希土類イオン交換を実施するためにNaYを用いて、18のシリカ:アルミナ比および2重量%の希土類の含有量(REを基準にして算出された)を有している試料を得るステップ;800℃および100%の蒸気において当該試料をエイジングするステップ。969gのハロイサイト(China Koline Clay Companyによって製造され、73%の固形分を有している)が、4300gの脱カチオン水を用いて懸濁された。それから、781gのシュード−ベーマイト(Shandong Zibo Boehmite Factryによって製造され、64%の固形分を有している)および144mlの塩酸(30%の濃度および1.56の比重を有している)が、それらに加えられ、均質に攪拌され、エイジングのために1時間にわたって60℃において静置された。それらのpHは2〜4に維持され、それらの温度は室温まで下げられた。それから、800gの高シリカのゼオライト(無水ベース)および2000gの化学薬品の水を含んでいる、あらかじめ調製されたゼオライトの懸濁物がそれらに加えられ、均質に攪拌され、噴霧によって乾燥されて、遊離Naが洗い流された後に触媒試料Aを得た。それらの特性は表2に挙げられている。
【0063】
実施例2および3ならびに比較例に使用された新たな接触分解触媒(商品番号はMLC−500)は、SINOPEC Catalyst CompanyのQilu触媒製造所によって製造され、その特性は、表2に挙げられている。
【0064】
(実施例1)
実施例1は、図1および4に示される手法にしたがって実施された。新たな触媒A(81の新たな触媒の活性、800℃および100%の蒸気という条件において10hの自己平衡時間、ならびに55の平衡活性を有している)が、600℃、100%の蒸気、0.25のm/sの表面の線速度、および20hのエイジング時間という条件においてエイジングされ、生じた触媒は62の初期活性を示した。上述のエイジングされた触媒が再生器に補充された。真空中の残余物である供給原料オイルAが、接触分解の供給原料として使用されて、試験的な垂直パイプ反応器の設備の試験を実施した。粗製の供給原料が、垂直パイプ反応器の底部に供給され、エイジングされた触媒Aと接触させられて、接触分解反応を実施した。反応区域Iにおいて、反応温度は600℃であり;重量空間速度は100h−1であり;供給原料に対する触媒の重量比は6であり;供給原料に対する蒸気の重量は0.05であった。反応区域IIにおいて、反応温度は500℃であり;重量空間速度は30h−1であり;供給原料に対する上記の重量は0.05であった。運転条件および生成物の分布を表3に記載した。
【0065】
(比較例1)
比較例1は、図1に示される手法にしたがって実施された。新たな触媒(81の新たな触媒の活性、800℃および100%の蒸気における10hの自己平衡時間、ならびに55の平衡活性を有している)が、エイジングを受けることなく再生器に直接的に補充された。これらにおいて使用された供給原料オイルは実施例1と同様であり、運転条件および生成物の分布を表3に記載した。
【0066】
実施例1にしたがった場合、乾性ガスおよびコークスの収率が、比較例1と比べてそれぞれ0.6%および1.98%減少したことが表3から分かる。
【0067】
(実施例2)
実施例2は、図1および2に示される手法にしたがって実施された。新たな触媒であるMLC−500(96の新たな触媒の活性、60hの自己平衡時間および45の平衡活性を有している)が、650℃、100%の蒸気、0.30m/sの表面の線速度、および30hのエイジング時間という条件においてエイジングされ、生じた触媒は68の初期活性を示した。上述のエイジングされた触媒は、再生器に補充された。真空中の残余物である供給原料オイルAが接触分解の供給原料として使用されて、垂直パイプ反応器の、中程度のサイズの装置に関する試験が実施された。粗製の供給原料が垂直パイプ反応器の底部に供給され、エイジングされた触媒MCL−500と接触させられて、接触分解反応が実施された。反応区域Iにおいて、反応温度は600℃であり;重量空間速度は100h−1であり;供給原料に対する触媒の重量比は6であり;供給原料に対する蒸気の重量は0.05であった。反応区域IIにおいて、反応温度は500℃であり;重量空間速度は30h−1であり;供給原料に対する蒸気の重量は0.05であった。運転条件および生成物の分布を表4に記載した。
【0068】
(実施例3)
実施例3は、図1および3に示される手法にしたがって実施された。新たな触媒であるMLC−500(96の新たな触媒の活性、60hの自己平衡時間および45の平衡活性を有している)が、600℃、1:1の重量比の蒸気/燃焼排気、0.30m/sの表面の線速度、および40hのエイジング時間という条件においてエイジングされ、生じた触媒は65の初期活性を示した。上述のエイジングされた触媒は、再生器に補充された。真空中の残余物である供給原料オイルAが接触分解の供給原料として使用されて、垂直パイプ反応器の、中程度のサイズの装置に関する試験が実施された。粗製の供給原料が垂直パイプ反応器の底部に供給され、エイジングされた触媒MCL−500と接触させられて、接触分解反応が実施された。反応区域Iにおいて、反応温度は600℃であり;重量空間速度は100h−1であり;供給原料に対する触媒の重量比は6であり;供給原料に対する蒸気の重量は0.05であった。反応区域IIにおいて、反応温度は500℃であり;重量空間速度は30h−1であり;供給原料に対する蒸気の重量は0.05であった。運転条件および生成物の分布を表4に記載した。
【0069】
(比較例2)
比較例2は、図1に示されるような手法にしたがって実施された。新たな触媒であるMLC−500(96の新たな触媒の活性、60hの自己平衡時間、および45の平衡活性を有している)が、エイジングを受けることなく再生器に直接的に補充された。これらにおいて使用された供給原料オイルは実施例1〜3と同様であり、運転条件および生成物の分布を表4に記載した。
【0070】
実施例2にしたがった場合、乾性ガスおよびコークスの収率が、比較例1と比べてそれぞれ1.15%および3.09%減少し;実施例3にしたがった場合、乾性ガスおよびコークスの収率が、比較例1と比べてそれぞれ1.25%および3.29%減少したことが表4から分かる。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
明確化を目的として別個の実施形態として説明されている本発明の特定の態様および特徴がまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが適切に理解される。簡潔さを目的として単一の実施形態として説明されている本発明の種々の態様および特徴がまた、別々にか、または任意の小結合として提供され得る。
【0076】
本明細書に記載の刊行物、特許および特許出願は、これらのそれぞれが参照によって本明細書に援用されると個々について特に示されている場合と同程度に、参照によって本明細書に援用される。さらに、本明細書における任意の参考文献の引用または特定は、当該参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であるとの自認と解釈されるべきではない。
【0077】
本発明が、これらの特定の実施形態および実施例とともに説明されていると同時に、多くの代案、変更およびバリエーションが当業者にとって明らかなことがわかる。したがって、添付の特許請求の範囲に係る精神および明らかな範囲に含まれる、そのような代案、変更およびバリエーションのすべてを包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業的な接触分解装置に加えられるときに、80以下の初期活性、0.1〜50hの自己平衡時間および35〜60の平衡活性を有していることを特徴とする接触分解の触媒。
【請求項2】
工業的な接触分解装置に加えられるときに、75以下の初期活性、0.2〜30hの自己平衡時間および40〜55の平衡活性を有していることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
工業的な接触分解装置に加えられるときに、70以下の初期活性および0.5〜10hの自己平衡時間を有していることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
上記触媒の総重量に対して、1〜50重量%のゼオライト、5〜99重量%の無機酸化物、および必要に応じて0〜70重量%の粘土を含んでおり、上記ゼオライトが中孔径のゼオライトおよび/または大孔径のゼオライトから選択されることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
(1)新たな触媒を、流動層に供給し、蒸気と接触させ、特定の水熱環境下においてエイジングして、エイジングされた触媒を得る工程;および、
(2)工業的な接触分解装置にエイジングされた上記触媒を供給する工程を包含していることを特徴とする接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法。
【請求項6】
上記水熱環境が、400〜850℃のエイジング温度、0.1〜0.6m/sの流動層の表面の線速度、および1〜720hのエイジング時間によって構成されていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記水熱環境が、500〜700℃のエイジング温度、0.15〜0.5m/sの流動層の表面の線速度、および5〜360hのエイジング時間によって構成されていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記エイジングのステップの後に、蒸気が、ストリッピングスチーム、アトマイジングスチームおよびリフティングスチームから選択される1つ以上として使用され、上記接触分解装置の回収器、分解器、供給原料ノズルおよびプレリフティング区域のそれぞれに加えられることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
(1)新たな触媒を、流動層に供給し、蒸気を含んでいるエイジング媒体と接触させ、特定の水熱環境下においてエイジングして、エイジングされた触媒を得る工程;および、
(2)工業的な接触分解装置にエイジングされた上記触媒を供給する工程を包含していることを特徴とする接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法。
【請求項10】
上記水熱環境が、0.2:0.9の蒸気:エイジング媒体の重量比によって構成されていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記水熱環境が、0.4:0.6の蒸気:エイジング媒体の重量比によって構成されていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記水熱環境が、400〜850℃のエイジング温度、0.1〜0.6m/sの流動層の表面の線速度、および1〜720hのエイジング時間によって構成されていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
上記水熱環境が、500〜750℃のエイジング温度、0.15〜0.5m/sの流動層の表面の線速度、および5〜360hのエイジング時間によって構成されていることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記エイジングのステップの後に、蒸気を含んでいるエイジング媒体が再生器に供給されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
(1)新たな触媒を流動層に供給し、再生器において熱再生された触媒を当該流動層に導入し、当該流動層において新たな上記触媒および熱再生された上記触媒に熱交換させる工程;
(2)熱交換された新たな上記触媒を、蒸気を含んでいるエイジング媒体または蒸気と接触させ、特定の水熱環境下においてエイジングして、エイジングされた触媒を得る工程;ならびに、
(3)エイジングされた上記触媒を工業的な接触分解装置に供給する工程を包含していることを特徴とする接触分解触媒の選択性を向上させる処理方法。
【請求項16】
上記水熱環境が、0を超えて4までの蒸気:エイジング媒体の重量比によって構成されていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記水熱環境が、0.5:1.5の蒸気:エイジング媒体の重量比によって構成されていることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記水熱環境が、400〜850℃のエイジング温度、0.1〜0.6m/sの流動層の表面の線速度、および1〜720hのエイジング時間によって構成されていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
上記水熱環境が、500〜750℃のエイジング温度、0.15〜0.5m/sの流動層の表面の線速度、および5〜360hのエイジング時間によって構成されていることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(4)蒸気を反応系もしくは再生系に供給する工程、または蒸気を含んでいるエイジング媒体を反応系もしくは再生系に供給する工程;ならびに、
(5)熱交換された上記触媒を再生器に戻して再利用するをさらに包含している請求項15に記載の方法。
【請求項21】
上記エイジング媒体が再生された燃焼排気であることを特徴とする請求項9または15に記載の方法。
【請求項22】
エイジングされた上記触媒が、工業的な上記接触分解装置の上記再生器に供給されることを特徴とする請求項5,9または15に記載の方法。
【請求項23】
上記流動層が濃密相の流動層であることを特徴とする請求項5,9または15に記載の方法。
【請求項24】
新たな上記触媒が、当該触媒の総重量に対して、1〜50重量%のゼオライト、5〜99重量%の無機酸化物、および必要に応じて0〜70重量%の粘土を含んでおり、上記ゼオライトが中孔径のゼオライトおよび/または大孔径のゼオライトから選択されることを特徴とする請求項5,9または15に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒、または請求項5〜24のいずれか1項に記載の触媒の、接触分解処理における、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−5488(P2011−5488A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−144733(P2010−144733)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(509059424)中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院 (14)
【Fターム(参考)】