説明

高さ調整式反射プリズム

【課題】ワンタッチで楽に高さ調整でき、古くなっても反射プリズムがずり落ちることのない高さ調整式反射プリズムを提供する。
【解決手段】反射プリズム(12)をポール(20)に高さ調整可能に固定するクランプ装置を備える高さ調整式反射プリズムにおいて、クランプ装置は、ポールが貫通する筒状のコレット(30)と、コレットの上端部に固着されたロック解除ボタン(40)と、コレットの下部が挿入され、しかも上方ほど内径が小さくなっている筒状のテーパリング(50)と、コレットを上方へ付勢するスプリング(60)とからなる。コレットには、下方から複数のスリットが切り込まれて、屈曲可能なコレット爪部(34)が形成され、コレット爪部の下端部に外周面側へ膨らんだポール圧着部(38)が形成される。コレットが上方へ移動したときは、テーパリングの楔作用によって、ポール圧着部がポールを圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量に用いられる高さ調整式反射プリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光波距離計やトータルステーション(電子式測距測角儀)等の測量機で測点までの距離を測定するには、測量機から測点に設置された反射プリズムに向けて測距光を送光し、反射プリズムから反射してくる測距光を受光することによって測定していた。このような反射プリズムの中には、ポールに対してねじで固定されていて、ねじを緩めて高さを調整し、所望の位置でねじを締めることにより、所望の位置に固定できるようにされたものがあった(下記実公平6-4252号公報における従来例の第5図〜第7図参照)。
【0003】
このような、反射プリズムは、高さ調整の際にねじを緩めたり締めたりする作業が必要で、ワンタッチで高さ調整できないという問題があった。そこで、出願人は、ワンタッチで高さ調整な高さ調整式反射プリズムを下記特許文献1で提案した。
【0004】
特許文献1で開示された高さ調整式反射プリズムを図6に示す。この反射プリズムは、反射プリズム(図示省略)を固定した支持部本体1をポール6に対して摺動自在に取り付けている。支持部本体1には、支持部本体1に固定された固定子2と、支持部本体1に回転可能に軸支された回動子3が設けられており、固定子2と回動子3との間には弾性部材4が介在されている。通常は、弾性部材4の働きによって回動子3の圧着部3aがポール6に圧着されて、両者間の摩擦によって、支持部本体1はしっかりとポール6に固定される。
【0005】
反射プリズムの高さを調整したい場合は、固定子2と回動子3とを指で掴むと、回動子3が回転して、圧着部3aがポール6から離れるので、支持部本体1を所望の高さに移動できる。ここで、固定子2と回動子3とから指を離すと、回動子3が弾性部材4によって元の位置に回転して、圧着部3aがポール6に圧着し、支持部本体1は所望の高さにしっかりとポール6に固定される。こうして、この反射プリズムは、ワンタッチで楽に高さ調整できる。
【特許文献1】実公平6-4252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示された高さ調整式反射プリズムは、古くなると弾性部材4が弱くなって、回動子3の圧着部3aとポール6間の摩擦力が小さくなって、支持部本体1がずり落ち易くなるという問題があった。この問題を解決するため、弾性部材4を充分に強くすると、回動子3を回転させるためには、固定子2と回動子3とを強い力で掴む必要が生じて、高さ調整が楽ではないという問題を生じる。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、ワンタッチで楽に高さ調整でき、古くなっても反射プリズムがずり落ちることのない高さ調整式反射プリズムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明では、光を入射方向に反射する反射プリズムと、該反射プリズムをポールに高さ調整可能に固定するクランプ装置とからなる高さ調整式反射プリズムにおいて、前記クランプ装置は、前記ポールが貫通する筒状のコレットと、該コレットの上端部に固着されたロック解除ボタンと、前記コレットの下部が挿入され、しかも上方ほど内径が小さくなっている筒状のテーパリングと、前記コレットを上方へ付勢するスプリングとからなるとともに、前記テーパリングが前記反射プリズムに固定されたものであり、前記コレットには下方から複数のスリットが切り込まれて、前記コレットの下部に屈曲可能なコレット爪部が形成され、該コレット爪部の下端部に外周面側へ膨らんで前記テーパリングの内周面に当接するポール圧着部が形成され、前記コレットが下方位置にあるときは、前記ポール圧着部が前記ポールを圧着しないが、前記コレットが上方へ移動したときは、前記テーパリングの楔作用によって、前記ポール圧着部が前記ポールを圧着すること特徴とする(図5参照)。
【0009】
請求項2に係る発明では、請求項1に係る発明において、前記ロック解除ボタンの下面には前記スプリングを覆う円筒部が突設され、前記ロック解除ボタンが押し下げられたとき、前記円筒部が前記テーパリングの上端に当接することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、請求項1又は2に係る発明において、前記クランプ装置が前記テーパリングに固着されたケースによって覆われるとともに、前記ケースを前記反射プリズムに固着することによって、前記テーパリングが前記反射プリズムに固定され、前記ケースには窓が設けられ、前記ロック解除ボタンに設けられた指掛部が前記窓から突出することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、請求項3に係る発明において、前記反射プリズムのプリズム支持体の上面には取付孔が形成され、前記取付孔内に前記クランプ装置の下部を挿入して、前記ケースと前記プリズム支持体とを固着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、反射プリズムをポールに固定している場合、コレットは、スプリングによって上方へ押し上げられ、コレット下端部のポール圧着部にテーパリングが楔として作用して、ポール圧着部が内方へ押圧され、ポール圧着部がポールに圧着される。これで、ポール圧着部とポール間の摩擦力によって、クランプ装置がポールに固定され、反射プリズムの位置も固定される。しかも、反射プリズムの重量がテーパリングを押し下げる向きに働くため、テーパリングはポール圧着部をいっそう強くポールに押し付けるように作用して、ポール圧着部とポールとの間の摩擦力を高める。このため、古くなってスプリングが弱くなっても、反射プリズムがずり落ちることはない。
【0013】
反射プリズムの高さを調整する場合は、ロック解除ボタンと反射プリズムの下面との間に指を掛け、スプリングの反力に抗してロック解除ボタンを押し下げる。すると、ロック解除ボタンに連結されたコレットも押し下げられ、ポール圧着部は、テーパリングの内径の大きな部分へ移動し、テーパリングの内周面がポール圧着部を押圧しなくなって、ポール圧着部もポールを圧着しなくなる。これで、ポール圧着部とポール間の摩擦力が無くなるので、反射プリズムを適宜高さに移動させることができる。反射プリズムを所望の高さに移動させた後に、ロック解除ボタンと反射プリズムの下面から指を離すと、コレットはスプリングによって上方へ押し上げられ、ポール圧着部とポール20間の摩擦力によって、その位置に反射プリズムは固定される。
【0014】
このように、本発明によれば、ワンタッチで楽に高さ調整でき、しかも古くなっても反射プリズムがずり落ちることがない。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、さらに、ロック解除ボタンの下面にはスプリングを覆う円筒部が突設されから、スプリング内部に異物が侵入することによる故障等が防止される。また、ロック解除ボタンが押し下げられたとき、前記円筒部がテーパリングの上端に当接するから、ロック解除ボタンと反射プリズム下面との間の距離が固定され、ロック解除ボタンと反射プリズム下面とが握り易くなって、いっそう反射プリズムの高さ調整が容易になる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、さらに、クランプ装置がテーパリングに固着されたケースによって覆われたから、クランプ装置内に異物が侵入することによる故障等が防止される。また、ケースには窓が設けられ、ロック解除ボタンに設けられた指掛部が前記窓から突出するから、クランプ装置がカバーで覆われていても、反射プリズムの高さ調整が容易にできる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、さらに、反射プリズムのプリズム支持体の上面には取付孔が形成され、前記取付孔内にクランプ装置の下部を挿入して、クランプ装置のケースとプリズム支持体とを固着したから、指掛部とプリズム支持体下面間の距離が大きくなり過ぎることを防止でき、指掛部とプリズム支持体下面間を握り易い距離にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の高さ調整式反射プリズムの実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例に係る高さ調整式反射プリズムの正面図である。図2は、この高さ調整式反射プリズムの部品であるクランプ装置の縦断面図である。図3は、この高さ調整式反射プリズムをポールに固定しているときのクランプ装置の縦断面図である。図4は、この高さ調整式反射プリズムの高さ調整を行っているときのクランプ装置の縦断面図である。図5は、このクランプ装置の部品であるコレットを説明する図であり、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は下面図である。
【0019】
図1に示されたように、この高さ調整式反射プリズム10は、全方向反射プリズム12(もちろん、通常の反射プリズムでもよい。以下、単に反射プリズムと記載する。)と、反射プリズム12の中心を貫通するポール20と、プリズム12をポール20にワンタッチで高さ調整自在に固定するクランプ装置28とからなる。
【0020】
反射プリズム12は、複数個のプリズム本体14を水平面内で360°にわたって放射方向に向けて並べてプリズム支持体16に固定し、全方向に光を反射させるもので、上面にクランプ装置28を取り付けるための取付孔18が設けられる。
【0021】
ポール20は、プリズム本体14に接触しないように反射プリズム12中心を貫通できる太さにするとともに、石突き22の先端からの高さを示す目盛24が所定間隔(例えば、5cm)毎に付してある。
【0022】
クランプ装置28は、図2、図3及び図4に示したように、コレット30とロック解除ボタン40とテーパリング50とスプリング60とケース70とからなる。
【0023】
コレット30は、図5に示したように、ポール20が貫通する貫通孔を有する円筒状をしており、周方向に等間隔に下方から4本のスリット32が切り込まれ、コレット30の下部に4本の屈曲可能なコレット爪部34が形成される。コレット爪部34の上端付近には、肉厚を薄くして、コレット爪部34の屈曲を容易にするヒンジ部35が形成される。コレット30の上端部には、雄ねじ部36が形成される。コレット爪部34の下端部には、コレット爪部34が内方へ屈曲されたとき、ポール20に圧着されるポール圧着部38が形成される。ポール圧着部38は、外周面側に膨らむとともに、下方ほど肉厚となるように外周面側にテーパが付けられる。コレット30の内径は、ポール20の外径より僅かに太くして、コレット30の内周面が通常はポール20を圧着しないようにする。
【0024】
ロック解除ボタン40は、プラスチック製で、コレット30の上端部に形成された雄ねじ部36に挿通できる貫通孔を有する円盤部42と、コレット30の外径よりいくらか大きな内径で円盤部42から下方に延びる円筒部44と、円盤部42から水平方向に延びる指掛部46からなる。ロック解除ボタン40は、円盤部42の貫通孔にコレット30の雄ねじ部36を挿通させ、コレット30の雄ねじ部36の下側に設けられた段差37に円盤部42の下面を当接させて、雄ねじ部36にナット65を螺合させてコレット30に固定される。ロック解除ボタン40の円盤部42の上面にはくぼみ48が設けられており、このくぼみ48にナット65が収容されている。
【0025】
テーパリング50は、上方ほど肉厚が厚くなって内径が小さくなる円筒状をしており、内周側上端には段差52が、下端には外側へ折り曲げられた折り曲げ部54が設けられている。テーパリング50には、コレット30の下部が同軸に挿入される。
【0026】
テーパリング50及びコレット30を覆うケース70は、テーパリング50にビス72で固定される。ケース70にはロック解除ボタンスライドガイド窓74が設けてあって、この窓74からロック解除ボタン40の指掛部46が突出している(図1参照)。ケース70の下端部76は、テーパリング50の折り曲げ部54に当接して位置決めされる。ケース70の天井78にはポール20に付された目盛24を指し示すための指標80が設けてある。ケース70は、プリズム支持体16の上面に設けられた取付孔18内に挿入されて、接着剤等の適宜固着手段によりプリズム支持体16に固着される。
【0027】
コレット30の外周面とロック解除ボタン40の円筒部44内周面との間には、スプリング60が配置される。スプリング60の上端はロック解除ボタン40の円盤部42下面に当接し、スプリング60の下端はテーパリング50の上端の段差52に当接する。なお、スプリング60は、コレット30を上方へ付勢することができれば、スプリング60の上端と下端それぞれを当接又は連結させる個所は、適宜選択可能で、本実施例のように限る必要はない。
【0028】
反射プリズム12をポール20に固定している場合、図3に示したように、ロック解除ボタン40は、スプリング60によって上方へ押し上げられ、ロック解除ボタン40に連結されたコレット30も上方へ押し上げられている。すると、コレット30下端部のポール圧着部38にテーパリング50が楔として作用して、ポール圧着部38が内方へ押圧され、ポール圧着部38がポール20に圧着される。これで、ポール圧着部38とポール20との間の摩擦力によって、クランプ装置28はしっかりとポール20に固定され、反射プリズム12の位置が固定される。しかも、反射プリズム12の重量がテーパリング50を押し下げる向きに働くため、テーパリング50はポール圧着部38をいっそうポール20に押し付けるように作用し、ポール圧着部38とポール20との間の摩擦力を増加させる。このため、古くなってスプリング60が弱くなっても、反射プリズム12がずり落ちることはない。
【0029】
反射プリズム12の高さを調整する場合は、ロック解除ボタン40の指掛部46と反射プリズム12の下面との間に指を掛け、図4に示したように、スプリング60の反力に抗して指掛部46を押し下げる。すると、ロック解除ボタン40に連結されたコレット30も押し下げられ、ポール圧着部38は、テーパリング50の内径の大きな部分へ移動し、テーパリング50の内周面がポール圧着部38を押圧しなくなって、ポール圧着部38もポール20を圧着しなくなる。これで、ポール圧着部38とポール20との間の摩擦力が無くなるので、ポール20に付された目盛24を参照しながら、反射プリズム12を適宜高さに移動させることができる。反射プリズム12を所望の高さに移動させた後に、ロック解除ボタン40の指掛部46と反射プリズム12の下面から指を離す。すると、ロック解除ボタン40は、スプリング60によって上方へ押し上げられ、前述したようにポール圧着部38とポール20間の摩擦力によって、その位置に反射プリズム12はしっかりと固定される。
【0030】
以上に述べたように、本実施例の高さ調整式反射プリズムによれば、楽にワンタッチで高さ調整でき、古くなってスプリング60が弱くなっても、反射プリズム12がずり落ちることはない。
【0031】
ところで、本発明は、前記実施例に限るものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、前記実施例では、クランプ装置28がケース70内に収容されているが、ケース70を省いて、テーパリング50を接着剤やビス等によって直接プリズム支持体16に固着してもよい。また、前記実施例では、ポール20、コレット30及びテーパリング50は円筒状としたが、これらを正方形断面等の角筒状としてもよい。さらに、前記実施例では、コレット爪部34の上端付近にヒンジ部35を形成したが、ヒンジ部35を形成しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例に係る高さ調整式反射プリズムの正面図である。
【図2】前記高さ調整式反射プリズムの部品であるクランプ装置の縦断面図である。
【図3】反射プリズムをポールに固定しているときのクランプ装置の縦断面図である。
【図4】反射プリズムの高さ調整を行っているときのクランプ装置の縦断面図である。
【図5】前記クランプ装置の部品であるコレットを説明する図である。
【図6】従来の高さ調整式反射プリズムの縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 高さ調整式プリズム
12 反射プリズム
16 プリズム支持体
18 取付孔
20 ポール
28 クランプ装置
30 コレット
32 スリット
34 コレット爪部
38 ポール圧着部
40 ロック解除ボタン
44 円筒部
46 指掛部
50 テーパリング
60 スプリング
70 ケース
74 ロック解除ボタンスライドガイド窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を入射方向に反射する反射プリズムと、該反射プリズムをポールに高さ調整可能に固定するクランプ装置とからなる高さ調整式反射プリズムにおいて、
前記クランプ装置は、前記ポールが貫通する筒状のコレットと、該コレットの上端部に固着されたロック解除ボタンと、前記コレットの下部が挿入され、しかも上方ほど内径が小さくなっている筒状のテーパリングと、前記コレットを上方へ付勢するスプリングとからなるとともに、前記テーパリングが前記反射プリズムに固定されたものであり、
前記コレットには下方から複数のスリットが切り込まれて、前記コレットの下部に屈曲可能なコレット爪部が形成され、該コレット爪部の下端部に外周面側へ膨らんで前記テーパリングの内周面に当接するポール圧着部が形成され、
前記コレットが下方位置にあるときは、前記ポール圧着部が前記ポールを圧着しないが、前記コレットが上方へ移動したときは、前記テーパリングの楔作用によって、前記ポール圧着部が前記ポールを圧着すること特徴とする高さ調整式反射プリズム。
【請求項2】
前記ロック解除ボタンの下面には前記スプリングを覆う円筒部が突設され、前記ロック解除ボタンが押し下げられたとき、前記円筒部が前記テーパリングの上端に当接することを特徴とする請求項1に記載の高さ調整式反射プリズム。
【請求項3】
前記クランプ装置が前記テーパリングに固着されたケースによって覆われるとともに、前記ケースを前記反射プリズムに固着することによって、前記テーパリングが前記反射プリズムに固定され、前記ケースには窓が設けられ、前記ロック解除ボタンに設けられた指掛部が前記窓から突出することを特徴とする請求項1又は2に記載の高さ調整式反射プリズム。
【請求項4】
前記反射プリズムのプリズム支持体の上面には取付孔が形成され、前記取付孔内に前記クランプ装置の下部を挿入して、前記ケースと前記プリズム支持体とを固着することを特徴とする請求項3に記載の高さ調整式反射プリズム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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