説明

高められた加水分解安定性を有するポリアミド膜

【課題】改善された加水分解安定性を有するポリアミド膜。
【解決手段】本発明によるポリアミド膜は、酸化防止剤を加水分解安定性の改善のための安定剤として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された加水分解安定性を有するポリアミド膜の製造方法並びに改善された加水分解安定性を有するポリアミド膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド膜は、膜技術においていろいろな方法で、例えば限外ろ過膜としてか又は精密ろ過膜として、食品製造業及び飲料製造業又は電子工業のような分野におけるろ過課題のために使用される。
【0003】
ポリアミド膜の製造のためには、幅広い範囲の方法が用いられる。多数において、いわゆる湿式紡糸法、即ち非溶剤の含分も添加されていてよい溶剤中のポリアミドの溶液が、非溶剤と接触される方法が利用される。その際使用する非溶剤により誘導された凝結の際に、膜構造が形成される。
【0004】
そのような方法は、例えばUS-A-4 340 479、DE-A-30 28 213又はDE-A-31 38 525に記載されており、その際、溶剤としてギ酸及び非溶剤としてか若しくは凝結剤として水が使用される。US-A-3 876 738は、類似のプロセスから出発し、かつポリマー溶液の押出と沈殿浴の間に短い蒸発区間を通り抜ける、即ちいわゆる乾式−湿式−紡糸法が使用されてよいという可能性を言及する。そのような方法は、DE-A-25 54 922にも記載されている。EP-A-0 413 552には、空洞形の細孔を有する非対称のポリアミド膜が製造される湿式紡糸法が開示されている。溶剤として、アルコール/塩−溶液が使用される。
【0005】
ミクロ孔のポリアミド膜の別の製造方法は、熱的に誘導された相分離を伴うプロセスを基礎としている。これらの方法の場合に、まず最初に高められた温度で、溶剤系中のポリマーの均質な溶融溶液が製造され、その際、ポリマー成分及び溶剤系は、液体の集合状態で均質な溶液として存在する範囲、及び不混和領域を有する範囲を有する二成分系を形成する。共溶温度未満のそのような系の冷却の際に、相分離及び最終的には多孔性高分子構造が形成する。とりわけポリアミドが膜形成性ポリマーとして使用されることができるそのような方法は、例えばDE-A-32 05 289、EP-A-0 133 882又はEP-A-0 309 136に記載されている。
【0006】
しかしながら、これらの公知の方法により製造されたポリアミド膜は、特に高められた温度下及び酸素の存在で水性媒体と接触する用途に、通例、制限されてのみ使用可能であることを示している。そのような用途の場合に、ポリアミドのデグラデーションが起こる。ポリアミド膜は、これらの用途の場合に不十分な寿命のみを有することになる、それというのも、ポリマー分解のためにしばらくたってから膜の機械的安定度はもはや保証されておらず、かつ膜は崩壊するからである。同時に、挙げられた用途にしばしば必要な過熱蒸気を用いての滅菌は、既に僅かな滅菌サイクル後に、ポリアミド膜の機械的安定度の損失、ひいては使用不可能性をまねくことが観察されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US-A-4 340 479
【特許文献2】DE-A-30 28 213
【特許文献3】DE-A-31 38 525
【特許文献4】US-A-3 876 738
【特許文献5】DE-A-25 54 922
【特許文献6】EP-A-0 413 552
【特許文献7】DE-A-32 05 289
【特許文献8】EP-A-0 133 882
【特許文献9】EP-A-0 309 136
【特許文献10】DE-A 27 37 745
【特許文献11】DE-A-28 33 493
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R. E. Kesting:"Synthetic Polymeric Membranes", John Wiley & Sons, 1985, 261-264頁
【非特許文献2】C. A. Smolders, J. J. van Aartsen, A. Steenbergen, Kolloid-Z. und Z. Polymere, 243 (1971), 14-20頁
【非特許文献3】Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie, 第4版, 8巻, 19-45頁, Verlag Chemie GmbH、Weinheim 1974
【非特許文献4】G. W. Becker, D. Braun (Hrsg.): Kunststoff-Handbuch, 3. Thermoplaste, 4. Polyamide, 75-84頁, Carl Hanser Verlag, Muenchen-Wien 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、改善された加水分解安定性を有するポリアミド膜の製造方法並びに改善された加水分解安定性を有するそのようなポリアミド膜の必要が存在し、その際、高められた温度下及び酸素の存在での水性媒体との接触での挙げられた用途に、より長い寿命及び過熱蒸気滅菌の際のより高い安定性が、公知であるか若しくは公知の方法により製造されたポリアミド膜に比較して実現される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により出された課題は、改善された加水分解安定性を有するポリアミド膜の製造方法により解決され、その際、前記方法は、次の工程:
a)溶剤系90〜10質量%中の脂肪族ポリアミド10〜90質量%の均質な溶液を製造する工程、その際、ポリアミド及び溶剤系からなる混合物は、臨界共溶温度及び凝固温度を有し、かつ共溶温度未満で液体の集合状態で不混和領域を有し、
b)溶液を、臨界共溶温度を上回る金型温度を有する成形用金型中で成形物に成形する工程、
c)成形物を、凝固温度を下回る冷却温度に温度調節されている冷却媒体を用いて、ポリマーに富む相及びポリマーの乏しい相への熱力学的非平衡−液−液−相分離、及び引き続いて凝固温度未満で、膜構造のためのポリマーに富む相の凝固が行われるような速度で冷却する工程、
d)溶剤系を成形物から除去する工程
を含んでおり、溶液中に、ポリアミドのための安定剤としての酸化防止剤が含まれており、かつ酸化防止剤及び溶剤系が、酸化防止剤が相分離温度で溶剤系中に本質的に不溶性であるように選択されることにより特徴付けられる。
【0011】
意外なことに、本発明による方法の条件の遵守の際に、ポリアミド膜が酸素の存在下に水性媒体と、例えば熱水と接触する用途において改善された寿命を有する及び/又は過熱蒸気滅菌の際の改善された安定性を有するポリアミド膜が製造されうることが見出された。熱的に誘導された相分離を伴うプロセスを基礎とするポリアミド膜の製造方法における酸化防止剤の使用は、酸化防止剤が相分離温度で溶剤系中に本質的に不溶性であるという条件の遵守下に、即ちポリアミド膜の加水分解耐性の改善をもたらす。そのような加水分解耐性は、これまで、熱的に誘導された相分離を伴う公知方法により製造されていたポリアミド膜の場合に、達成されていなかった。
【0012】
本発明により出された課題は、更に、脂肪族ポリアミドをベースとし、改善された加水分解安定性を有するポリアミド膜により解決され、前記膜は、ポリアミド中に、酸化防止剤を加水分解安定性の改善のための安定剤として含有することにより特徴付けられる。そのような膜は、好ましくは本発明による方法を用いて製造可能である。その際、意外なことに、本発明による方法を用いて、完成したポリアミド膜中へプロセスにおいて導入された安定剤の存在が保証されることができることを示している。本発明により製造されたポリアミド膜の分析は、安定剤として導入された酸化防止剤をそれらのポリマーマトリックス中に含有することを示している。
【0013】
本発明によるか若しくは本発明により製造されたポリアミド膜中に含まれている安定剤により、これらは、これらの安定剤を有しない同じ種類のポリアミド膜に対して著しく改善されている加水分解安定性を示す。好ましい一実施態様において、本発明によるか若しくは本発明により製造されたポリアミド膜は、これらが空気飽和した80℃の熱水中で、少なくとも100時間及び特に好ましくは少なくとも200時間の寿命を機械的安定度の損失なしに有するように改善された加水分解安定性を有する。別の好ましい実施態様において、本発明によるか若しくは本発明により製造されたポリアミド膜は、空気酸素の存在での少なくとも125℃での繰り返される過熱蒸気滅菌に、それぞれ1時間の期間を有する少なくとも10サイクルを上回り、及び特に好ましくは少なくとも15サイクルを上回り、機械的安定度の損失なしに耐えるように改善された加水分解安定性を有する。本発明の同様に好ましい一実施態様において、本発明により製造されたか若しくは本発明による膜は、前もって挙げられた好ましい加水分解安定性を組み合わせて有する。
【0014】
ポリアミド膜の加水分解安定性は、それゆえ、空気飽和した80℃の熱水中での膜の寿命に基づいてか、若しくはポリマー分解に基づく機械的安定度の損失が生じることなく達成される過熱蒸気滅菌サイクルの数に基づいて評価される。この際、本発明の範囲内で、ポリアミドの相対溶液粘度LVが≧2である限り、機械的安定度が与えられているとみなされる。機械的安定度の損失は、次いで生じ、かつ本発明の範囲内で次いで、膜を構成しているポリアミドのLVが値<2に低下する場合に、与えられているものとみなされる。この際、相対溶液粘度LVは、90%ギ酸中で算出される。
【0015】
本発明による方法は、液−液−相分離を伴う熱的に誘導された相分離プロセスに基づいている。本発明によれば、ポリマー成分及び溶剤系は、液体の集合状態で均質な溶液として存在する範囲を有し、かつ不混和領域を有する範囲を有する二成分系を形成する。そのような系が、均質な溶液として存在する範囲から、臨界共溶温度又は相分離温度未満に冷却される場合に、まず最初に2つの液相、つまりポリマーに富む相及びポリマーの乏しい相への液−液凝離若しくは相分離が生じる。凝固温度未満までの更なる冷却の際に、ポリマーに富む相は三次元膜構造に凝固する。冷却速度は、その際、ポリマー濃度との組合せで生じる細孔構造への本質的な影響を有する。冷却速度が十分に大きい場合には、液−液−相分離が熱力学的平衡条件下に行われなくてよく、むしろ熱力学的非平衡条件下、しかしながら他方ではそれにもかかわらず相対的にゆっくりと、液−液−相分離は、ほぼ同時に本質的に同じ大きさの多数の液滴の形成を伴い行われる。生じるポリマー構成物は、次いで海綿状のセル状の及び開気孔のミクロ構造を有する。冷却速度が明らかにより高い場合には、たいてい液滴が形成されうる前に、ポリマーは固体になる。この際、次いで網状のミクロ構造を生じる。熱的に誘導された液−液−相分離を伴うプロセスを経てのそのような海綿状のミクロ孔構造の異なった種類の形成は、DE-A 27 37 745に詳細に記載されており、その開示は明確に引用され、かつ例えばR. E. Kesting:"Synthetic Polymeric Membranes", John Wiley & Sons, 1985, 261-264頁に叙述されている。
【0016】
本発明によれば使用される溶剤系は、ポリアミドのための1つ又はそれ以上の溶剤からなっていてよい。この際、本発明の範囲内で、溶剤は、ポリアミドのための溶剤であり、かつポリアミドが、この化合物の高くとも沸点までの加熱で均質な溶液に完全に溶解される化合物であると理解される。
【0017】
しかしながら、好ましくは、溶剤系として、化合物A及び化合物Bからなる混合物が使用され、その際、化合物Aとしてポリアミドのための溶剤が使用され、かつ化合物Bとしてポリアミドのための非溶剤、ポリアミドが確かに溶解するが、しかしながらポリアミドに関するその溶解温度が、ポリアミドに関する化合物Aの溶解温度よりも少なくとも50℃、好ましくは少なくとも100℃高い溶剤、又はポリアミドのための膨潤剤も使用される。非溶剤は、その際、非溶剤中の1質量%の濃度のポリアミドが、この非溶剤の高くとも沸点までの加熱で均質な溶液に溶解しない化合物であると理解される。
【0018】
化合物A及びポリアミドのみからなる溶液への化合物Bの添加は、冷却の際のポリアミド溶液の挙動を変化させる。不混和領域を有しないポリアミド及び化合物Aからなる溶液の場合に、本発明によれば化合物Bの添加により、液体の集合状態で不混和領域を有する系が形成される。既に液体の集合状態で不混和領域を有する化合物A及びポリアミドからなる溶液の場合に、通例、化合物Bの添加により共溶温度が上がる。しかしながら、化合物Bの種類に応じて、化合物Bの添加により化合物Bの下の濃度範囲で化合物Bの増大する濃度と共にまず最初に共溶温度の低下が観察されてから、化合物B濃度の更なる増加の際に、化合物A及びポリマーのみからなる溶液に対して共溶温度の上昇が起こることも生じる。
【0019】
ポリマー成分、化合物A及び化合物Bからなり、その際、化合物A及びBが一緒に溶剤系を形成する、使用される組成物は、一緒に唯一の均質な液相へ移行可能でなければならず、かつ臨界共溶温度を有していなければならず、ここで、臨界共溶温度未満で2つの液相への相分離が生じる。化合物Bの添加は、得られた多孔性構造の孔径及び細孔容積の集中的な制御を可能にする。
【0020】
化合物Aは、付加的に1つ又はそれ以上の液体、特に別の溶剤で希釈されていてよい。また化合物Bも、1つ又はそれ以上の別の化合物、特に別の非溶剤との混合物で使用されてよい。その結果として、本発明の範囲内で、化合物Aは、個々の化合物だけではなく、異なる溶剤の混合物であるとも理解される。同様に、化合物Bは例えば異なる非溶剤の混合物であるとも理解される。
【0021】
共溶温度又は相分離温度は、その際、まず最初に調査すべき溶剤又は溶剤系中のポリアミドの均質な溶液20〜50gが製造されることによって、単純な方法で確認されることができる。この際、溶液の製造が、ポリアミドのデグラデーションが最小限にされる条件下にできるだけ迅速かつ全部行われることが考慮されるべきである。有利には、溶液の製造は、空気遮断下、例えば窒素雰囲気下に行われる。こうして得られたポリアミド溶液は次いで、溶解温度を約20℃上回る温度に加熱される。直後に溶液は、約10℃/minの冷却速度で強力撹拌下に冷却される。共溶温度又は相分離温度として、次いで始まる混濁が確認可能である温度が可視的に測定される。更なる冷却の際に、凝固温度未満でポリマーに富む相の固化が生じる。
【0022】
膜製造に必要なポリマー含分並びに溶剤系中の化合物Aと化合物Bとの比は、状態図のプロットにより単純な実験を用いて算出されうる。そのような状態図は、例えばC. A. Smolders, J. J. van Aartsen, A. Steenbergen, Kolloid-Z. und Z. Polymere, 243 (1971), 14-20頁に記載されているような公知方法に従って発展することができる。通例、予め設定された溶剤Aの場合に、ポリマー成分、化合物A及び化合物Bからなる混合物中の化合物B含分は、例えば、化合物Bとして非溶剤が使用される場合に、非溶解特性の強さに依存する。好ましくは溶剤系中の化合物Bの含分は1〜45質量%である。
【0023】
好ましくは、溶液が形成される混合物のポリマー含分は10〜50質量%であり、かつ溶剤系の含分は90〜50質量%である。特に好ましくはポリマー含分は10〜30質量%であり、かつ溶剤系の含分は90〜70質量%である。場合により、ポリマー成分、溶剤系にか又はポリマー溶液にも、別の物質、例えば核形成剤、UV−吸収剤、充填剤又は加工助剤、例えば粘性を高める増粘剤等も、添加剤として添加されてよい。
【0024】
本発明による方法の単純な実施のためには、使用される溶剤系がポリアミドに対して化学的に不活性に振る舞う場合が望ましい。このことは、溶剤系が本質的にポリアミドの分解を引き起こさず、かつポリアミド自体と反応しないことを意味する。しかしながら、本発明による方法の要求から、特に酸化防止剤が、相分離温度で溶剤系中に本質的に不溶性であるという条件からも、溶剤系又は溶剤系の、ポリアミドに対して不活性ではない個々の成分が用いられなければならないことが生じうる。これらの場合に、本発明による方法の実施の際に、例えば短い滞留時間、強力混合の能力及び/又はできるだけ低い溶解温度により、ポリアミドの変化ができるだけ僅かに保持されるように配慮されなければならない。
【0025】
ポリマー成分及び溶剤系から形成されるポリマー溶液は、適した成形用金型を用いて成形物に成形され、最終的には膜、好ましくは平膜又は中空糸膜の形で得られる。その際、常用の成形用金型、例えば広幅スリットノズル、キャスティングボックス、ナイフ、型出し(profilierte)ノズル、リングスリットノズル又は中空糸ノズルが使用されてよい。
【0026】
その成形後に、成形物は、熱力学的非平衡−液−液相分離が成形物中、即ち成形されたポリマー溶液中で行われ、かつ以下において高分子構造が凝固しかつ固化するように、固体又は液体の冷却媒体を用いて冷却される。その際、冷却媒体は、凝固温度を下回る温度に温度調節されている。平膜の製造の際に、冷却媒体は固体物質若しくは固体表面であってよく、例えばガラスプレート又は金属プレートの形でか又は相応して温度調節されるか若しくは冷却された冷却ロールの形で、この上に成形物が広げられる。好ましくは、固体の冷却媒体は、高い熱伝導率を有し、かつ特に好ましくは金属材料からなる。しかしながら、本発明による方法の有利な一態様において、液体である冷却媒体が使用される。
【0027】
熱力学的非平衡−液−液相分離の準備のために、冷却媒体の温度が明らかに、使用されるポリマー溶液の臨界共溶温度又は相分離温度を下回らなければならず、かつこれから先にポリマーに富む相の凝固のために、凝固温度を下回らなければならない。好ましくは、冷却媒体は、相分離温度を少なくとも50℃下回る温度、及び特に好ましくは相分離温度を少なくとも100℃下回る温度を有する。冷却を段階付けられて複数の工程において実施することも可能である。
【0028】
成形用金型の流出面及び冷却媒体の表面が、成形物が冷却媒体との接触前に通り抜けるスリットにより空間的に離れている場合が有利である。これは空気スリットであってよいが、しかしスリットは、他の気体状の雰囲気で充填されていてもよく、かつ加熱されてもよく、又は冷却されてもよい。しかし、ポリマー溶液は、成形用金型から出ていった後に直接に冷却媒体と接触されてもよい。
【0029】
好ましくは、液体の冷却媒体の使用の場合に、これは、成形物が冷却のために次いで通り抜ける縦坑又は紡糸管中に存在する。この際、冷却媒体及び成形物は、通例、同じ方向で縦坑若しくは紡糸管により導かれる。成形物及び冷却媒体は、同じか又は異なる線形速度で紡糸管により導かれてよく、その際、必要条件に応じて、成型物又は冷却媒体はより高い線形速度を有していてよい。そのような変法は、例えばDE-A-28 33 493又はEP-A-133 882に記載されている。
【0030】
中空糸の押出の際に使用される内部充填物は、気体状であってよく、又はこれは液体であってよい。内部充填物としての液体の使用の場合に、成形されたポリマー溶液中のポリマー成分が、ポリマー溶液の臨界共溶温度を下回り本質的に溶解しない液体が、選択されなければならない。内面での開気孔構造の達成のために、好ましくは、使用されるポリアミドのための溶剤である内部充填物が使用され、その際、前もって挙げられた条件が守られているべきであり、及び/又はポリマー溶液の共溶温度を下回る温度に内部充填物が調節されている。その他の点では、冷却媒体としても使用されることができるのと同じ液体も使用されてよい。内部充填物は、溶剤系と混和性であってよい。内部充填物が気体状である場合には、空気、蒸気状物質又は好ましくは窒素又は他の不活性ガスが該当しうる。
【0031】
個々の場合に、本発明による方法を用いて製造されたポリアミド膜の細孔構造は、ノズルの下方、即ち特に空気スリット中の成形されたポリマー溶液の遅れによっても影響されてよく、その際、遅れは、成形用金型からのポリマー溶液の流出速度と冷却された成形物のための第一の排出装置の速度との間の差の調節により生じる。
【0032】
冷却及び高分子構造の凝固後に、溶剤系は、例えば抽出により成形物から除去される。その際、有利には、1つ若しくはそれ以上のポリマーを溶解しないが、しかしながら溶剤系と混和性であるような抽出剤が使用される。引き続いて抽出されたポリアミド膜は、膜から抽出剤を除去するために、通例高められた温度で乾燥される。溶剤系の少なくとも本質的な一部の除去の前及び/又は後に、特にポリアミド膜の分離性を集中的な方法で変性するために、膜の延伸が行われてよい。
【0033】
特にポリアミド膜の延伸後及びしばしばそれらの乾燥後にも、使用の際の収縮を防止するために、膜の固定が有利である。固定のために、その際、膜−製造における常法が使用されてよい。
【0034】
水性媒体での用途におけるポリアミド膜のいろいろな使用への考慮を伴い、本発明の範囲内で使用される酸化防止剤は、後でなお実施されるように、好ましくは本質的に水中への溶解度を有しない。それゆえ、本発明による方法において、成形物からの溶剤系の抽出のため、ひいては膜構造の露出のために、好ましくは水性媒体及び特に好ましくは水が使用される。このために、使用される溶剤系が水溶性であることが必要である。好ましくは、それゆえ本発明による方法において水溶性の溶剤系が使用される。この際、溶剤系がその全体で水溶性である限り、溶剤系の個々の成分が水と非混和性であることも可能である。
【0035】
溶剤成分のみからなる溶剤系の場合に、ポリアミド6のため及びポリアミド6/12のコポリマーのためにジグリセリンが好ましい溶剤である。化合物A及び化合物Bからなる混合物からなる溶剤系の場合に、化合物Aとして好ましくはジグリセリン、グリセリン、グリコール、ジグリコール、モノアセチン、カプロラクタム又はブチロラクトン及び化合物Bとして好ましくは異なった分子量のポリエチレングリコール類が使用される。特に良好な結果は、ジグリセリン及びポリエチレングリコールからなる混合物からなる溶剤系、又は化合物Aとしてカプロラクタム及びブチロラクトンからなる混合物及び化合物Bとしてポリエチレングリコール又はグリセリントリアセテートを含有しているもので達成される。
【0036】
その際、化合物A及び化合物Bからなる混合物からなる特定の溶剤系の場合に、僅かな含分の化合物Bで安定剤が可溶性であることが可能である。例えば、化合物Aとしてカプロラクタム又はブチロラクトンの使用の際に、化合物Bとしてポリエチレングリコール(PEG) 600の使用の際に、相対的に僅かな添加可能な量に過ぎないPEG 600のために、使用される安定剤、例えばIrganox 1098が、相分離温度でも溶剤系中に可溶性であることが可能である。しかしそのような組合せは、本発明により要求されるプロセス条件を満たさない。しかしながら、PEG 600の代わりに、より高い濃度で添加可能なより小さい分子量を有するPEG 200の使用により、本発明による方法の実施を可能にする系が生み出されてよい。
【0037】
同じく、冷却媒体が水性媒体からなる場合に有利であり、かつ冷却媒体として水が使用される場合に特に有利である。水性冷却媒体及び/又は水性抽出剤の使用により、膜製造の際に、膜からの安定剤の望ましくない抽出は、少なくとも幅広く回避可能であり、ひいてはポリアミド膜の加水分解安定性の改善のための安定剤の作用が与えられている。それにより、酸化防止剤が、少なくともほぼ定量的にポリアミド膜中に残留することが可能である。
【0038】
加水分解耐性に関して所望の安定剤作用の達成のために、本発明による方法において安定剤として使用される酸化防止剤の濃度が、ポリアミドに対して、0.01〜5質量%及び特に好ましくは0.05〜2質量%である場合が好ましい。特に良好な結果は、酸化防止剤が、使用されるポリアミドに対して、0.2〜1質量%の濃度である場合に達成される。本発明による方法における条件の適した選択により、使用される安定剤が、本質的に定量的に、生じるポリアミド膜中にまた見出されうることが達成されうる。
【0039】
ポリアミド及び溶剤系からなる溶液中への酸化防止剤の導入に関して、異なった規定が可能である。例えば、このために得ることができる生成物の選択が、特に相分離温度での溶剤系中への不溶性に関する要求を考慮に入れても、制限されているにもかかわらず、例えば、既に酸化防止剤を含有するポリアミドが使用されてよい。本発明による方法の好ましい一態様において、好ましくは顆粒形のポリアミド及び選択された酸化防止剤から乾燥混合物("dry-blend")が製造され、その際、粉末形の酸化防止剤がポリアミド顆粒にまぶされる。この乾燥混合物は、次いで押出機中で溶融され、かつ緊密混合される。引き続いて、溶融され、いま酸化防止剤が含まれているポリアミド及び溶剤系から、共溶温度を上回る温度で均質なポリアミド溶液が製造される。
【0040】
本発明による膜を形成しているか若しくは本発明による方法において使用されるポリアミドとして、ポリアミド膜に通常使用されるポリアミドが適している。例えば、ポリアミド−ホモポリマー、例えばポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.1又はポリアミド4.6、ポリアミド11又はポリアミド12、しかしポリアミド−コポリマー、例えばポリアミド6/12をベースとするものも使用されてよい。好ましくは、本発明によれば使用されるポリアミドの分子量の数平均は20000〜60000ダルトンである。そのようなポリアミドは、上記で記載された方法により算出された約2.5〜5の相対溶液粘度LVを有する。同様に、本発明の範囲内で、高い熱成形耐性を有するポリアミドが好ましく、前記ポリアミドからなるポリアミド膜の少なくとも130℃の温度での過熱蒸気滅菌を、膜構造の変化なしに可能にする。本発明のためには、膜を形成しているポリマーとしてポリアミド6が特に好ましい。
【0041】
適した酸化防止剤又は抗酸化剤に関して、これらの抗酸化剤が本発明によりなされる条件を満たす限り、常用のポリアミドの安定化に有効な酸化防止剤が用いられてよく、これらは例えばUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie, 第4版, 8巻, 19-45頁, Verlag Chemie GmbH、Weinheim 1974, 又はG. W. Becker, D. Braun (Hrsg.): Kunststoff-Handbuch, 3. Thermoplaste, 4. Polyamide, 75-84頁, Carl Hanser Verlag, Muenchen-Wien 1998中の概要に見出されうる。その際、本発明の範囲内で、安定剤として個々の酸化防止剤、しかし様々な物質グループの複数の酸化防止剤の組合せも、使用されてよい。
【0042】
好ましくは、本発明によるポリアミド膜中に含まれているか若しくは本発明による方法において使用される酸化防止剤は、立体障害フェノールである。特に良好な結果は、酸化防止剤として、ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(CAS−番号6683−19−8;Ciba(R) Irganox(R) 1010として得ることができる)、3,3’,3’,5,5’,5’−ヘキサ−t−ブチル−α,α’,α’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール(CAS−番号1709−70−2;Ciba(R) Irganox(R) 1330として得ることができる)又はN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))(CAS−番号23128−74−7;Ciba(R) Irganox(R) 1098として得ることができる)で達成された。立体障害フェノールは、互いに混合物でか又は好ましくはホスフィットと一緒に使用されてもよい。
【0043】
好ましくは、本発明による膜中に含まれているか若しくは本発明による方法において使用される酸化防止剤は、本質的に水中への溶解度を有しない。限界として、20℃での溶解度≦0.01g/100g水が考慮される。酸化防止剤により、ポリアミド膜の外観、例えばその色は、損なわれるべきではない。
【0044】
本発明によるか若しくは本発明により製造されたポリアミド膜中で、安定剤は、膜構造を構成しているポリマーマトリックス中に含まれている。その製造後のポリアミド膜の表面への安定剤の後からの施与とは異なり、ポリマーマトリックス中への安定剤の導入は、安定剤の持続する作用、ひいては本発明により要求される持続する加水分解安定性をもたらす。その作用の最適な発展のために、酸化防止剤は、膜を形成しているポリアミド中に微細に分散して分配されているか又は溶解されている。
【0045】
本発明によるポリアミド膜の有効な安定化のために、十分な量の安定剤がポリマー分解の防止のために提供されることが必要である。従って、好ましくは、本発明によるポリアミド膜は、ポリアミドに対して、0.01〜5質量%、及び特に好ましくは0.05〜2質量%の安定剤を含有する。特に良好な結果は、酸化防止剤が、使用されるポリアミドに対して、0.1〜1質量%の濃度で存在する場合に達成される。
【0046】
本発明による方法を用いて、膜壁の断面を横切って様々な細孔構造を有するポリアミド膜が製造されうる。例えば、壁を横切って本質的に等方性の構造を有する、即ち細孔の大きさが全ての空間方向において本質的に一定である壁を有する膜が、しかしながら等方性ではないか、対称か又は非対称の細孔構造を有するような膜も製造されることができる。本発明により製造されたか若しくは本発明によるポリアミド膜は、少なくとも1つのそれらの側で本質的により緻密な細孔構造又は皮膜を有する層を有していてよい。好ましくは、本発明によるか若しくは本発明により製造されたポリアミド膜の壁の少なくとも主要部分は、膜の表面間にミクロ孔の、海綿状の及び開気孔の構造を有する支持層として形成されており、かつマクロボイド不含、即ち文献中でしばしばフィンガーポア又は空洞とも呼ばれるような細孔が不含である。
【0047】
本発明は、引き続く例に基づいてより詳細に説明される。これらの例において、次の方法を、得られたポリアミド膜の性質の特性決定のために使用した:
80℃の空気飽和した熱水中の寿命の測定(分解試験):
80℃の空気飽和した熱水中の寿命に基づくポリアミド膜の加水分解安定性の算出のために、還流冷却器を備えた相応して計量されたフラスコ中に水300gを装入し、かつ80℃に加熱する。空気酸素を用いて水を飽和させるために、空気を、フラスコ中へ水表面下に導入された毛管によって強力に水中で泡立たせる。
【0048】
計画された試料採取計画に応じて、十分な数の長さ約2〜5cmの膜試料部分(平膜の場合に、その際、約1cm幅のストリップが使用される)を、加熱した水中へ浸漬する。異なる滞留時間の後に、それぞれ約0.5gの試料をフラスコから取り出し、蒸留水ですすぎ、かつ約50℃で真空乾燥棚中で乾燥する。引き続いてそれらの機械的安定度に関して及び相対粘度に関して試料の評価を行う。
【0049】
過熱蒸気滅菌の際の安定性の測定(過熱蒸気滅菌試験):
過熱蒸気滅菌の際のポリアミド膜の加水分解安定性の検査のために、ポリアミド膜試料を圧力容器中で空気酸素の存在下に複数回過熱蒸気処理にかけた。このために、約200mlの内容量を有する圧力容器中へ及び蓋をすることが可能な入口開口部中で、膜試料を、これらが圧力容器の底に触れないように、支持台架にかけて装入した。試料を、その際、個々の、試料採取計画により進行される試料採取のために、約0.5gの試料が取り出されることができるように寸法決定していた。圧力容器の底を水で覆った。
【0050】
試料を掛けかつ圧力容器の蓋をした後に、圧力容器を熱浴中で15〜20分かけて所望の滅菌温度(少なくとも125℃)に加熱し、かつ1時間、滅菌温度に保持した。その後、約10分かけて80℃に冷却し、かつ引き続いて圧力容器を試料コントロールのため及び新鮮な空気の供給のために開けた。試料採取計画に応じて、その際、試料を、例えばLVの測定のために取り出した。
【0051】
その後、加熱段階、滅菌温度での保持段階及び冷却段階からなる新しい滅菌サイクルを開始した。各滅菌サイクルの開始前の新鮮な空気の供給が重要である。
【0052】
膜試料の第一の識別可能な障害、例えば既に僅かな機械的負荷の場合に、試験を終了し、かつ障害の発生までの滅菌サイクルの数を、滅菌サイクルの、膜試料が機械的安定度の損失なしにか若しくは2のLVを下回ることなく耐える数として算出した。
【0053】
相対溶液粘度の測定:
相対溶液粘度の測定のために、ポリマー若しくは膜250mgを、90%ギ酸25ml中に室温で1時間の間、撹拌下に溶解させた。ウベローデ粘度計、形式I-C(定数:0.03188)を用いて、ポリマー溶液の通り抜け時間及び溶剤(ギ酸)の通り抜け時間[sec]を測定温度の25℃で算出した。
【0054】
相対粘度LVを、次いで関係
【数1】

により算出した。
【0055】
例1:
ポリアミド6をベースとする膜の製造のために、タイプAKULON F 136E (DSM社)のポリアミド6からなる均質な溶液を、95:5の比のジグリセリン及びポリエチレングリコールPEG 600からなる溶剤系中に酸化防止剤Irganox(R) 1098(Ciba Specialty Chemicals社)を添加して製造した。ポリアミドのできるだけ僅かな分解を実現するために、滞留時間及び温度に関してできるだけおだやかな条件下に並びに本質的に水不含の原料の使用下に運転した。
【0056】
AKULON F 136E顆粒、及びポリアミドに対して0.4質量%の酸化防止剤Irganox(R) 1098から、まず最初に乾燥混合物を、ポリマー顆粒にIrganox(R) 1098-粉末を"まぶす(Aufpanieren)"ことにより製造した。乾燥混合物を、押出機中で約240〜250℃で溶融し、かつ歯車ポンプを用いて、高い剪断作用を有しかつ190℃に加熱した少容量の(kleinvolumigen)ミキサー中へ計量供給した。このミキサー中へ、同時に170℃に温度調節した溶剤系を計量供給し、その際、ポリアミド溶解物及び溶剤系のための計量供給調節を、ポリアミド約22質量%を有するポリマー溶液が生じるように選択した。
【0057】
ミキサーを去る均質なポリアミド溶液を、ろ過し、溶液ポンプを用いて約200℃に加熱したキャスティングボックスに供給し、かつ引き続いて約75℃に温度調節したキャスティングロール上で約140μmの拡がり厚さで成形物に伸ばした。空気区間の通過後、成形物を、75℃の温かい水を含んでいる冷浴中に浸漬し、こうして完成した膜構造を得た。こうして形成されたポリアミド平膜を、90℃の温かい完全脱塩水で洗浄し、ごく僅かに延伸し、引き続いてドラム乾燥機で乾燥し、かつ次いで固定した。
【0058】
得られた膜は、ミクロ孔の海綿状の細孔構造を有しており、自発的に水と湿潤可能であり、かつ約130μmの厚さ並びにイソプロパノールでのブロー点測定(Blaspunktsmessung)を通して算出された0.45μmの最大孔径PGmaxを有していた。最大孔径PGmaxの測定を、EP-B 0 361 085に記載されたブロー点法に従って行った。分解試験において、80℃での空気を通した水中での約500時間の処理時間後に、なお膜の機械的安定度の損失を認識されることはできず;次いで相対溶液粘度は約2.8であった。過熱蒸気滅菌試験(125℃)において、膜は15滅菌サイクル後にもなお十分な機械的安定度を有しており;次いで相対溶液粘度LVは2.49であった。
【0059】
この例によるポリアミド膜中の安定剤含量の測定のために、膜−試料をソックスレー中でメタノールで抽出した(沸騰温度/8時間)。UV−VIS−分光分析法を用いて抽出物中の測定されたIrganox(R) 1098含量から、換算により、膜中のIrganox(R) 1098 0.4質量%の範囲の濃度が算出された。
【0060】
比較例1:
使用されるポリアミド6(AKULON F 136E)に安定剤を添加しなかったことを除いて、例1のようにして行った。
【0061】
得られた膜は、約140μmの厚さ並びにイソプロパノールでのブロー点測定を通して算出された0.48μmの最大孔径PGmaxを有していた。分解試験において、安定化されていない膜は、80℃での空気を通した水中での約56時間の処理時間後に崩壊し;相対溶液粘度LVは<2であった。過熱蒸気滅菌試験(125℃)において、安定化されていない膜は、既に3滅菌サイクル後に脆かった(LV<2)。
【0062】
例2:
例1のようにして行ったが、その際、出発物質としてタイプGrilon CR 9 HV (Ems-Chemie社のポリアミド6/12)のポリアミドコポリマーを、酸化防止剤Irganox(R) 1098 0.4質量%に添加した。溶剤系として、70:30の比のジグリセリン及びポリエチレングリコール PEG 400の混合物を使用した。
【0063】
ポリマー成分を、約230〜235℃で溶融し、170℃に温度調節した溶剤系と一緒に約195℃に加熱したミキサー中で澄明かつ均質な溶液に加工した。溶液のポリマー濃度を、約29質量%に調節した。溶液を、ろ過し、溶液ポンプを用いて、90℃に温度調節したキャスティングボックスに供給し、かつ約50℃に温度調節したキャスティングロール上で厚さ約140μmのフィルムに伸ばした。冷却及びこれと組み合わされた平膜の形成を、約50℃に温度調節した水−冷浴中で行った。約90℃での完全脱塩水を用いての溶剤系の抽出後に、平膜をごく僅かに延伸し、その後ドラム乾燥機で乾燥し、かつ引き続いて固定した。
【0064】
得られたミクロ孔の平膜は、約140μmの厚さ及び0.76μmの最大孔径PGmaxを有していた。分解試験における200時間の処理後に、膜上に目に見える欠陥をなお認識されることはできず、これは>2の相対溶液粘度LVを伴っていた。
【0065】
比較例2:
使用されるポリアミド6/12(Grilon CR 9 HV)に安定剤を添加しなかったことを除いて、例2のようにして行った。
【0066】
得られた膜は、それらの特性において、例2において製造された膜に相応した。分解試験において、安定化されていない膜は、80℃での空気を通した水中での約68時間の処理時間後に欠陥を有しており;次いで相対溶液粘度LVは<2であった。
【0067】
例3:
例1に記載された規定に類似して、AKULON F 136E 顆粒及びポリアミドに対して0.4質量%の酸化防止剤Irganox(R) 1098から、まず最初に乾燥混合物を、ポリマー顆粒にIrganox(R) 1098-粉末を"まぶす(Aufpanieren)"ことにより製造した。乾燥混合物を、押出機中で約240℃で溶融し、かつ歯車ポンプを用いて、高い剪断作用を有しかつ170℃に加熱した少容量のミキサー中へ計量供給した。このミキサー中へ、同時に135℃に温度調節した溶剤系を計量供給し、その際、ポリアミド溶解物及び溶剤系のための計量供給調節を、ポリアミド約18質量%を有するポリマー溶液が生じるように選択した。溶剤系として、この場合に85:15の比のグリセリン及びポリエチレングリコール PES 600からなる混合物を使用し、これに、後での中空糸膜の成形の軽減のために溶剤系に対して0.2質量%の増粘剤Carbopol 940(Goodrich社)が添加されていた。
【0068】
ミキサーを去る均質なポリアミド溶液を、ろ過し、かつ溶液ポンプを用いて約180℃に加熱した中空糸ノズルに供給した(直径:ノズル内径:925μm、ノズルニードル外/内:544μm/330μm)。内腔形成のために、組成1:1を有するグリセリン及びPEG 600からなる液体の内部充填物を使用した。成形された溶液を、空気スリットの通り抜けた後に、50℃に温度調節した水からなる冷浴を用いて冷却し、それにより中空糸膜が形成された。これを熱水で抽出し、かつ引き続いて乾燥させた。生じた中空糸膜は、ミクロ孔構造及び0.87μmの最大孔径PGmaxを有していた。
【0069】
分解試験において、得られた中空糸膜は、約200時間の処理時間後になお使用可能であり、即ちこの後になお膜の機械的安定度の損失が確認できなかった。過熱蒸気滅菌試験(125℃)において、膜は、15滅菌サイクル後にもなお無傷であった(LV=2.49)。
【0070】
比較例3:
使用されるポリアミド6(AKULON F 136E)に安定剤を添加しなかったことを除いて、例3のようにして行った。
【0071】
得られた安定化されていないポリアミド−中空糸膜は、分解試験において約70時間の処理時間後に崩壊した。過熱蒸気滅菌試験(125℃)において、安定化されていない膜は、既に3−4滅菌サイクル後に脆かった(LV<2)。
【0072】
例4:
例3に記載された規定に相応して、ポリアミド−中空糸膜を製造した。ポリアミド6として、AKULON M258 (DSM社)を使用し、これに安定剤として酸化防止剤Irganox(R) 1010(Ciba Specialty Chemicals社)0.5質量%を添加した。溶剤系として、80:20の比のグリセリン及びエチレングリコールからなる混合物を、増粘剤Carbopol 940(Goodrich社) 0.2質量%を添加して使用した。内腔充填物として、1:1の比のグリセリン及びPEG 300からなる混合物を利用した。冷却媒体として使用した水の温度は40℃であり;排出速度は22m/minであった。
【0073】
得られた中空糸膜は、0.57μmのPGmaxを有していた。未処理の膜には、4.15の相対粘度LVが算出された。
【0074】
分解試験において、この例による中空糸膜は、250時間後にもなお4.02のLVを有しており、かつ機械的に安定であった。過熱蒸気滅菌試験において、膜は、機械的安定度の損失なしに15サイクルを克服し;LVは、15サイクル後に2.49であった。
【0075】
比較例4:
使用されるポリアミド6(AKULON M258)に安定剤を添加しなかったことを除いて、例4のようにして行った。
【0076】
試験の前に約4.05のLVを有していた、得られた安定化されていないポリアミド−中空糸膜は、分解試験において、約33時間の処理時間後に崩壊した(LV<2)。過熱蒸気滅菌試験(125℃)において、安定化されていない膜は、既に3滅菌サイクル後に崩壊し、かつその後、1.63のLVを有していた。
【0077】
比較例5:
ポリアミド6としてUltramid B5(BASF社)を使用したという差異を除いて、比較例1のように安定化されていない膜を製造した、約50000の分子量の数平均(M)を有するUltramid B5は、例1及び比較例1において使用されたAKULON F 136Eよりもより高い分子量を有していた。
【0078】
得られた膜は、約140μmの厚さ並びにイソプロパノールでのブロー点測定を通して算出された0.67μmの最大孔径PGmaxを有していた。分解試験において、安定化されていない膜は、高い出発−分子量にもかかわらず、80℃での空気を通した水中での既に約44時間の処理時間後に完全に崩壊し;相対溶液粘度LVは<2であった。過熱蒸気滅菌試験(125℃)において、安定化されていない膜は、既に3滅菌サイクル後に脆かった(LV<2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミドをベースとする改善された加水分解安定性を有するポリアミド膜において、前記ポリアミド膜が酸化防止剤を加水分解安定性の改善のための安定剤として含有していることを特徴とする、ポリアミド膜。
【請求項2】
空気飽和した80℃の熱水中で、機械的安定度の損失なしに少なくとも100時間の寿命を有している、請求項1記載のポリアミド膜。
【請求項3】
空気飽和した80℃の熱水中で、機械的安定度の損失なしに少なくとも200時間の寿命を有している、請求項2記載のポリアミド膜。
【請求項4】
空気酸素の存在での少なくとも125℃での繰り返される過熱蒸気滅菌に、機械的安定度の損失なしに、それぞれ1時間の期間を有する少なくとも10サイクルを上回り耐える、請求項1記載のポリアミド膜。
【請求項5】
膜中の安定剤濃度が0.01〜5質量%である、請求項1から4までのいずれか1項記載のポリアミド膜。
【請求項6】
安定剤濃度が0.05〜2質量%である、請求項5記載のポリアミド膜。
【請求項7】
酸化防止剤が立体障害フェノールである、請求項1から6までのいずれか1項記載のポリアミド膜。
【請求項8】
立体障害フェノールがペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3’,5,5’,5’−ヘキサ−t−ブチル−α,α’,α’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール又はN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))である、請求項7記載のポリアミド膜。
【請求項9】
本質的に20000〜60000ダルトンの分子量の数平均を有するポリアミドからなっている、請求項1から8までのいずれか1項記載のポリアミド膜。
【請求項10】
少なくとも130℃の温度での過熱蒸気滅菌に、膜構造の変化なしに耐えるポリアミドから本質的になっている、請求項1から9までのいずれか1項記載のポリアミド膜。
【請求項11】
ポリアミドが、ポリアミド−ホモポリマー又はポリアミド−コポリマーである、請求項1記載のポリアミド膜。
【請求項12】
本質的にポリアミド6からなっている、請求項1から11までのいずれか1項記載のポリアミド膜。

【公開番号】特開2011−200863(P2011−200863A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104526(P2011−104526)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【分割の表示】特願2002−501560(P2002−501560)の分割
【原出願日】平成13年5月23日(2001.5.23)
【出願人】(300083158)メムブラーナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (14)
【氏名又は名称原語表記】Membrana GmbH
【住所又は居所原語表記】Oehder Strasse 28, D−42289 Wuppertal, Germany
【Fターム(参考)】