説明

高カロリー低蛋白質食及びその製造方法

【課題】 食感、呈味を改善した高カロリー低蛋白質食とその製造方法を提供すること。
【解決手段】 A成分として蛋白質を削減した米粉30〜60重量%、B成分として液状油脂15〜30重量%、C成分としてα化加工澱粉5〜20重量%を含んでなり、エクストルーダーにより成形処理してなる、高カロリー低蛋白質食;B成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉を混練して、C成分であるα化加工澱粉中にB成分である液状油脂を保持させた後、A成分である蛋白質を削減した米粉と場合により前記D成分、及びその他の成分をエクストルーダーで混ぜ半固形物にして、これをエクストルーダーによりダイ先端内部温度25〜100℃で成形処理することを特徴とする、前記高カロリー低蛋白質食の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高カロリー低蛋白質食及びその製造方法に関する。更に詳しくは、腎臓病患者等の蛋白質摂取制限食に適し、かつ、食感、呈味を改善した高カロリー低蛋白質食及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓病は、血中の尿素窒素、クレアニチン、尿素などが高濃度になり病状が進行する。これらの窒素成分を抑制するために、腎臓病患者に対する低蛋白質の食事療法は有効であり、病状の進行を抑制し、人工透析の延期や回避ができることが知られている。また、腎臓の働きが悪くなると、リン成分を体外へ排出する機構が上手く働かず、血中のリン濃度が上昇することで副甲状腺ホルモンの分泌が亢進し、骨が脆くなったり筋力が低下したりする腎性骨異栄養症を発症する危険性が大きくなる。
【0003】
腎臓病患者においては、これらの状況を回避するために、食事における低蛋白質・低リン化が必須とされてきた。例えば、日本人の主食である米に関する技術として、米の乳酸発酵(例えば、特許文献1参照。)や、これに酵素処理を組み合わせた方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。また、酵素処理にアルカリ浸漬を組み合わせた方法(例えば、特許文献3参照。)や、有機酸処理(例えば、特許文献4参照。)、玄米から果皮、種皮、胚乳を取り除く方法(例えば、特許文献5参照。)などが開示されてきた。何れの方法も原料の玄米などから蛋白質などの各主成分を除去する方法である。
【0004】
しかしながら、これらの方法は煩雑であり、また、本来必要なマグネシウム等のミネラル、ビタミンB1,ビタミンB2などのビタミン類、米本来の旨味成分等の食感成分まで失ってしまう欠点があった。
【0005】
また、腎臓病患者等の低蛋白質食品として、通常の澱粉とハイアミロース澱粉とを混合して開発された澱粉食品がある(例えば、特許文献6参照。)が、米本来の美味しさがなく、食のバリエーションが制限された患者が長期間食べ続けることは困難であるとの指摘もある。
【0006】
腎臓病に限らず蛋白質制限が食事に導入される他の病気としては、代謝異常のフェニルケトン尿症が挙げられる。この病気は、体内のフェニルアラニンというアミノ酸が蓄積され健康上問題を生じる。一方で、フェニルアラニンは人の成長に欠かせない重要なアミノ酸であるために、摂取量が極端に少なくなっても困る。従って、このような病状の人に対して蛋白質摂取量は医師や栄養士によって適正に基準が設けられており、このため、高カロリーで低蛋白質、かつ、食感に優れ、簡便に摂取できる食事が求められていた。
【0007】
前述のように(特許文献6参照。)従来の低蛋白質食では、澱粉そのもので出来ており、そのために美味しさに欠ける問題があった。また、低蛋白質化によって、摂取カロリーが不足することが問題となっている。
このため、例えば、米飯を洗米することで失われた、蛋白質以外のミネラルやビタミン、その他の成分をコーティングする技術が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。
しかしながら、この配合技術では、エネルギー不足を補うことが出来ない。
【0008】
また、例えば、特許文献8には、蛋白質を所定の低含有量に調整した穀物澱粉と蛋白質とを所定の低含有量に調整する技術、例えば、粳米粉の穀物澱粉に対する混合比率を、25%、50%、75%とする割合で配合して低蛋白質人工米に成形する技術が開示されている。
しかしながら、このような組成では、カロリー不足や食感の改善を十分に行うことが出来ない。
【0009】
そこで、カロリー不足については、先の人工米食に脂質等を食前に追加配合して、カロリー補給を行う措置が取られているが、人工米食の上に油脂もしくは油脂粉末をふりかけるしか手段はなく、油分のギトギト感が強く、食味及び食感の美味しさを味わうことが出来ない。
【0010】
このため特許文献9において、カロリーの向上、及び呈味、食感を向上する方法として澱粉に0.005〜10重量%の脂質を配合し、エクストルーダーで製造する方法が開示されている。
しかしながら、この方法では呈味に関しては十分に満たされるものではない。
【0011】
更に、前記の混練する材料をエクストルーダーで成形する場合、成形の条件から脂質の加水分解や過酸化脂質の生成などの問題が生じ、液状油脂を効率よく品質を保ちながら配合することは難しい。
【0012】
これまで、エクストルーダーを使用して澱粉を主原料にして腎臓病患者対応として低蛋白澱粉米の加工(例えば、特許文献10参照。)や、卵白と米飯を主成分にした栄養価の優れた人工米の製造(例えば、特許文献11参照。)など開示されている。
しかしながら、これらのエクストルーダーを使用する方法では、加工成形性をよくするために、エクストルーダー処理の際に水分を添加している。この場合、先に澱粉と水を液状油脂で乳化させたときよりも、澱粉は水分を吸収しやすく老化を促進して食感の悪さを招く。
【0013】
このような状況で、各栄養成分を適切に配合して、なおかつ、病人が長期間継続して食することができる程度に、食感、呈味も良いことを条件とする新規な高カロリー低蛋白質食の開発が、腎臓病患者などを擁する医療機関より熱望されていた。
【0014】
【特許文献1】特開平6−217719号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平6−303925号公報(第1頁)
【特許文献3】特開平9−65840号公報(第1頁)
【特許文献4】特開平10−150935号公報(第1頁)
【特許文献5】特開平11−9203号公報(第1頁)
【特許文献6】特開昭64−37262号公報(第1頁)
【特許文献7】特公平10−139675号公報(第1頁)
【特許文献8】特開平9−252730号公報(第1頁)
【特許文献9】特開平4−287653号公報(第1頁)
【特許文献10】特公昭56−28502号公報(第1頁)
【特許文献11】特開平11−285353号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の第一の目的は、食感、呈味が良い高カロリー低蛋白質食を提供することにある。さらに、本発明の第二の目的は、前記の高カロリー低蛋白質食を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記の問題点に鑑み鋭意検討した結果、A成分として特定の米粉、B成分として液状油脂、C成分としてα化加工澱粉からなる主成分を配合して、特定の条件でエクストルーダー処理したところ、目的とする食感、呈味が良い高カロリー低蛋白質食を製造できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、請求項1に係る本発明は、A成分として蛋白質を削減した米粉30〜60重量%、B成分として液状油脂15〜30重量%、C成分としてα化加工澱粉5〜20重量%を含んでなり、エクストルーダーにより成形処理してなる、高カロリー低蛋白質食を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、更にD成分として、蛋白質を削減した米粉以外の米粉、もしくはα化加工澱粉以外の澱粉を50重量%以下含んでなる、請求項1に記載の高カロリー低蛋白質食を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、エクストルーダーにより、食材として用いられる形態に対応して成形処理してなる、請求項1又は2に記載の高カロリー低蛋白質食を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、B成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉を混練して、C成分であるα化加工澱粉中にB成分である液状油脂を保持させた後、A成分である蛋白質を削減した米粉と場合により前記D成分、及びその他の成分をエクストルーダーで混ぜ半固形物にして、これをエクストルーダーによりダイ先端内部温度25〜100℃で成形処理してなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高カロリー低蛋白質食の製造方法を提供するものである。
請求項5に係る本発明は、B成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉に水分を加えて乳化させた後、A成分である蛋白質を削減した米粉と場合により前記D成分、及びその他の成分をエクストルーダーで混ぜ半固形物にして、これをエクストルーダーによりダイ先端内部温度25〜100℃で成形処理してなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高カロリー低蛋白質食の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜3に係る本発明の高カロリー低蛋白質食は、A成分の蛋白質を削減した米粉、B成分の液状油脂、C成分のα化加工澱粉、及び場合によりD成分の蛋白質を削減した米粉以外の米粉、もしくはα化加工澱粉以外の澱粉を含有していることから、米飯特有の食感、食味に優れた美味しい高カロリー低蛋白質食を提供することができる。
特に、A成分の米粉として、蛋白質含量の少ない搗精米を用いることにより、腎臓病など、蛋白質摂取制限のある人の食事に適する、高カロリー低蛋白質食を提供することができる。
また、請求項4〜5に係る本発明の製造方法によれば、上記した如き米飯特有の食感、食味に優れた美味しい高カロリー低蛋白質食を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の高カロリー低蛋白質食は、請求項1に記載したように、A成分として蛋白質を削減した米粉30〜60重量%、B成分として液状油脂15〜30重量%、C成分としてα化加工澱粉5〜20重量%を含んでなり、エクストルーダーにより成形処理してなる、高カロリー低蛋白質食である。
更には、本発明の高カロリー低蛋白質食は、請求項2に記載したように、D成分として、蛋白質を削減した米粉以外の米粉、もしくはα化加工澱粉以外の澱粉を50重量%以下含んでなる、高カロリー低蛋白質食である。
以下、本発明について詳しく説明する。
【0020】
本発明の高カロリー低蛋白質食に用いる、A成分の蛋白質を削減した米粉とは、蛋白質を削減した米粉を指す。
米粉から蛋白質を削減する方法としては、例えば、搗精が挙げられるが、搗精以外の方法であってもよく特に限定されない。A成分の米粉として、蛋白質含量の削減された搗精米を用いることにより、腎臓病など蛋白質摂取制限のある人の食事に適する、高カロリー低蛋白質食を提供することができる。
米の銘柄及び粉末の粒径は限定されないが、例えば、搗精した米の場合、好ましくは、搗精の程度が20〜70%の搗精米を使用することができ、更に好ましくは30〜50%程度搗精したものがよい。蛋白質を削減した米粉について、特に好ましいものとしては、例えば、酒米の山田錦を35%搗精して、山田錦100g中の蛋白質含量を3.4gとした、蛋白質を削減した米粉などを挙げることができる。
【0021】
米粉から蛋白質を削減する方法としては、搗精以外の方法であってもよく特に限定されず、搗精による他、公知の様々な方法にて蛋白質を除去、低減化し、低蛋白質とした米粉を用いても良い。例えば、特開平6−303925号公報に記載されているような、原料米を水洗いした後、プロテアーゼと、必要に応じて糖類、乳酸菌を加え分散した浸漬水とを共に混合し、酵素反応に適した温度、酵素反応に適したpHにて浸漬を行ない、若しくは乳酸発酵を行った後、さらに酸性水に浸漬することで低蛋白質とした米を利用して、蛋白質を削減した米粉としたものを用いてもよい。
【0022】
次に、本発明の高カロリー低蛋白質食に用いるB成分の液状油脂とは、通常、室温で液状の脂質である。好ましくは、次のイ)〜ニ)に挙げられる液状油脂である。
イ)コーン油、菜種油、米糠油、紅花油、紫蘇油、月見草油、綿実油、オリーブ油、大豆油等の植物油;
ロ)いわし油、ニシン油、アンチョビー油、鯨油、イカ油、鮭油等の魚油;
ハ)イカ、タラ、サメの海産魚介類から生産された肝油;
ニ)炭素数が6,8,10である飽和脂肪酸の単独又は2種類以上が混在したものからなる中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)。
ホ)菌体など、微生物により生産される油脂
【0023】
以上のイ)〜ホ)に示される液状油脂のうち、消化吸収が速く、加えて門脈を経て直接肝臓に運ばれ、速やかに分解されてエネルギーとなるのでカロリーを効率よく取れることから、特に好ましいのは中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)である。
【0024】
また、エイコサペンタエン酸を含有している油脂は、エイコサペンタエン酸から作られるプロスタグランジンE1の作用により腎臓の血流を改善し、腎機能を向上させる。従って、エイコサペンタエン酸の含有量が多い魚油は特に好ましい。同時に、このときアラキドン酸が存在していると、エイコサペンタエン酸との効果がより発揮されるので、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸の含有量の多い液状油脂が好ましい。
【0025】
また、本発明の高カロリー低蛋白質食に用いるC成分のα化加工澱粉とは、原料となる通常の澱粉をエクストルーダーによって膨化させ、澱粉自身を、部分的にα化させたものを言う。ここで、膨化時のエクストルーダーの処理条件としては、ダイ先端内部が100℃以下に抑えるのが好ましく、また、得られるα化加工澱粉は、60メッシュ以下の粉末に成形されるのが好ましい。このとき、澱粉のα化された程度(α化度)としては、好ましくは30〜80%、より好ましくは40〜70%、最も好ましくは50〜60%である。
なお、α化加工澱粉の原料となる通常の澱粉としては、特に限定されるものではないが、例えば、トウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、サゴ椰子、米、小麦などを原料にした澱粉がα化加工澱粉の原料として好ましく挙げられる。
【0026】
更に、本発明の高カロリー低蛋白質食に場合により用いる、D成分の蛋白質を削減した米粉以外の米粉、もしくはα化加工澱粉以外の澱粉とは、それぞれ蛋白質を削減した米粉以外の米粉、もしくはα化加工澱粉以外の澱粉であれば、いかなるものを用いても良い。
蛋白質を削減した米粉以外の米粉としては、例えば搗精前の米を用いた米粉が好ましく挙げられる。
また、α化加工澱粉以外の澱粉としては、例えばとうもろこし、馬鈴薯、タピオカ、サゴ椰子、米、小麦などを原料にした澱粉が好ましく挙げられる。更に好ましくは、蛋白質含量及びリンの含量が低い原料から取れる澱粉が求められる。
【0027】
本発明の高カロリー低蛋白質食においては、前記のA成分、B成分、C成分及びD成分以外のその他の成分を、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
本発明の高カロリー低蛋白質食に用いる、その他の成分としては、例えば、食品添加剤用アミラーゼやpH調整剤、更に、C成分,D成分の澱粉の老化防止剤として添加できるリン脂質などが挙げられる。
更に、その他の成分としては、フレーバーや色素なども挙げられる。また、風味・食感を向上させる食品添加剤、及び動植物の抽出物や粉末といった食経験のある素材を加えても良い。
その他の成分の配合量としては、本発明の目的を損ねなければ、特に限定されるものではないが、その他の成分として食品添加物を用いる場合は、規定量を超えない範囲で使用する必要があるため、好ましくは0.1〜5重量%である。
また、その他の成分として、リン脂質を配合する場合は、0.5〜5重量%が望ましい。特に、その他の成分として、リン脂質を1〜3重量%配合すると、澱粉の老化防止に効果が著しい。
【0028】
本発明の高カロリー低蛋白質食に配合される、A成分、B成分、C成分及びD成分の配合割合は、A成分として蛋白質を削減した米粉30〜60重量%、B成分として液状油脂15〜30重量%、C成分としてα化加工澱粉5〜20重量%、D成分として蛋白質を削減した米粉以外の米粉、もしくはα化加工澱粉以外の澱粉50重量%以下である。好ましくはA成分として蛋白質を削減した米粉40〜50重量%、B成分として液状油脂20〜25重量%、C成分としてα化加工澱粉10〜15重量%、D成分として蛋白質を削減した米粉以外の米粉、もしくはα化加工澱粉以外の澱粉30重量%以下である。
【0029】
前記A成分としての蛋白質を削減した米粉が30重量%より少ないと米の味が十分に出せず、一方、60重量%より多いと液状油脂の配合量が下がりカロリーを十分に満たすことができない。
次に、前記B成分としての液状油脂が15重量%より少ないとエクストルーダー処理において目詰まりを引き起こしやすく、一方、30重量%より多いと配合した液状油脂が製品の表面に浮き出してくる。
また、前記C成分としてのα化加工澱粉が5重量%より少ないと液状油脂を製品中に閉じ込めることが出来にくくなり、一方、20重量%より多くなると食味が悪くなる。
前記D成分は用いなくても良いが、用いる場合は澱粉を50重量%より多く入れると食味が悪くなることから、50重量%以下とする。
【0030】
本発明の高カロリー低蛋白質食における低蛋白質量の規定としては、具体的には腎臓病など、蛋白質量を制限する食事を必要とする患者に対して、その患者の病状の進行に応じて制限され、蛋白質量として設定される。
また、本発明の高カロリー低蛋白質食においては、蛋白質を削減した米粉量、もしくはα化加工澱粉量を加減することで、蛋白質量を一定の範囲内に自在に設定することが可能である。
例えば、蛋白質を削減した米粉として、特開平6−303925号公報に記載されている、蛋白質を削減した米を使用した場合、蛋白質量が乾物の状態で3重量%含まれている。
【0031】
一般に乾物状態の米を炊飯すると、およそ二倍の重量になる。即ち、50gの乾物状態の米を炊飯すると100gの米飯ができることになる。従って、前記した、蛋白質量が乾物の状態で3重量%蛋白質が含まれている米を使用した場合には、これを30%使用すれば、炊飯後100gの米飯の中には米粉が15g使用されることになる。それ故、本発明の場合、炊飯後の100gの中に0.45gの蛋白質が含まれる。また、前記米を60%使用すれば、炊飯後100gの米飯の中には米粉が30g使用されることになり、本発明の場合、炊飯後の100gの中に0.9gの蛋白質が含まれる。このようにして、蛋白質量を一定の範囲内に自在に設定することが可能である。
【0032】
また、本発明の高カロリー低蛋白質食においては、蛋白質量の最低値としては特に限定されないが、100gの本発明品におよそ0.5〜1.0g程度の含有量まで制限することが可能である。
【0033】
本発明の高カロリー低蛋白質食は、米粒状、うどん状、パスタ状の形状とすることができる。
即ち、請求項3に記載したように、本発明の高カロリー低蛋白質食は、エクストルーダーにより、米粒状、うどん状又はパスタ状など、食材として用いられる形態に対応して成形処理されたものである。
【0034】
本発明の高カロリー低蛋白質食は上記した如きものであるが、このような本発明の高カロリー低蛋白質食は、B成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉を混練して、C成分であるα化加工澱粉中にB成分である液状油脂を保持させるか、或いは最初にB成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉に水分を加えて乳化させ、ここにA成分である米粉と場合によりD成分(蛋白質を削減した米粉以外の米粉、もしくはα化加工澱粉以外の澱粉)を混ぜることで加工・成形性が一段と向上し、様々な形状に加工することができる。
【0035】
即ち、本発明の高カロリー低蛋白質食は、請求項4又は請求項5に記載した方法により製造することができる。
請求項4に係る本発明は、B成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉を混練して、C成分であるα化加工澱粉中にB成分である液状油脂を保持させた後、A成分である蛋白質を削減した米粉と場合により前記D成分、及びその他の成分をエクストルーダーで混ぜ半固形物にして、これをエクストルーダーによりダイ先端内部温度25〜100℃で成形処理してなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高カロリー低蛋白質食の製造方法を提供するものである。
請求項5に係る本発明は、B成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉に水分を加えて乳化させた後、A成分である蛋白質を削減した米粉と場合により前記D成分、及びその他の成分をエクストルーダーで混ぜ半固形物にして、これをエクストルーダーによりダイ先端内部温度25〜100℃で成形処理してなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高カロリー低蛋白質食の製造方法を提供するものである。
【0036】
より詳細には、本発明の高カロリー低蛋白質食を製造する方法は、B成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉とを混練して、C成分であるα化加工澱粉中にB成分である液状油脂を保持させるか、或いは、B成分である液状油脂に水分を加えてホモミキサーもしくは高圧乳化機により剪断力を掛けて乳化させたものをC成分であるα化加工澱粉の中に保持した後、A成分、D成分及びその他の成分を混ぜて半固形物にする。その他の成分を配合する場合は、A成分、B成分、C成分、場合によりD成分を半固形物にした後に混ぜるか、もしくは、その他の成分が脂溶性の場合はB成分の液状油脂に予め溶解させてから混合し、半固形物とすることが望ましい。
尚、本発明で言う「半固形物」とは、前記A成分、B成分、C成分、必要に応じてD成分からなり、場合によってはその他の成分を加えて混練した、もち状混合物をいう。
【0037】
本発明の高カロリー低蛋白質食を、米粒状、うどん状又はパスタ状などの所望の形状に成形するには、前記工程により得られた半固形物をエクストルーダーによって処理して成形する。ここでエクストルーダーとは、1軸型(フルフライト型、バリア型)又は、2軸型の通常押し出し成形に使用する機械が使用できる。
前記工程により得られた半固形物をエクストルーダーによって処理して成形する際の、エクストルーダーの処理条件は、エクストルーダーのダイ先端内部温度を25〜100℃にするのがよい。より好ましくは50〜80℃にするのがよい。このとき、ダイ先端内部温度が100℃を超える場合には、液状油脂の劣化が著しくなるので好ましくない。また、半固形物をエクストルーダーによって処理して成形する際の、半固形物原料への加水分量は、半固形物に対して0〜25重量%加えるのが望ましい。より好ましい加水分量は10〜20重量%である。このような成形条件で行えば、澱粉の老化が抑制でき、液状油脂も安定してα化加工澱粉に保持された、高カロリー低蛋白質食を製造することができる。
【0038】
前記したように、本発明の高カロリー低蛋白質食は、米粒状、うどん状、パスタ状の形状とすることができる。高カロリー低蛋白質食の形状は、成形加工時、エクストルーダーのダイ先端の形状やノズルの形状を適当に選択することによって、自在に成形することが出来る。
【0039】
米粒状の高カロリー低蛋白質食は、エクストルーダーのダイ通過後に切断し、例えば縦方向×横方向=6mm×4mm〜10mm×8mmの楕円形状の成形物としたものである。
次に、うどん状の高カロリー低蛋白質食は、例えば縦方向×横方向×厚さ=5mm×3mm×300mm〜10mm×5mm×200mmの形状としたものである。
また、パスタ状の高カロリー低蛋白質食は、例えば縦方向×横方向×厚さ=3mm×2mm×100mm〜10mm×5mm×200mmの形状としたものである。
なお、本発明の高カロリー低蛋白質食は、ダイの形状やカットする条件により各種の形状にしてもよく、また、乾燥などにより保存に適するように工夫することは一向に構わない。
【0040】
以下に、本発明における、米粒状の高カロリー低蛋白質食の製造方法についてより詳細に説明する。
米粒状の成形の場合、半固形物の原料を適当なエクストルーダー(押し出し機)に入れ、所定の速度で押し出し、ダイ吐出口近傍でカッティングしてペレットを造る。このとき、ダイ及びノズルの形状を適宜選択することによって、得られるペレットを、米粒状に近い大きさ、形状に整える。また、原料への加水分含量を調整し、ダイ先端内部温度を25〜100℃、好ましくは40〜95℃に抑え、成形体中の空隙生成を抑制し、配合する液状油脂の加水分解の抑制や過酸化物の発生を抑制する。
【0041】
上記のようにして米粒状に成形した高カロリー低蛋白質食は、低温で乾燥して、成形物が互いにくっ付かないようにする。更に、必要によってはそのまま包装する。又は、加工してパック製品とする。
本発明の米粒状の高カロリー低蛋白質食の長期保存のためには、無菌状態で真空パックすることが好ましい。成形加工した米粒状の高カロリー低蛋白質食は、次のような処理をすることによって、米飯食とすることができる。即ち、成形した米粒状の人工米を加圧蒸気炊飯(2〜5kg/cm、20〜60秒間)して、これに人工米と水を1:1の割合で加水して10分間炊飯を行い、場合により炊飯したものをパック包装してもよい。
【0042】
次に、うどん状にした高カロリー低蛋白質食は、形状や好みにもよるが、およそ70〜100℃にて3〜10分間茹でることにより、うどんとして提供することが出来る。また、パスタ状に成形した高カロリー低蛋白質食は、形状や好みにもよるが、およそ70〜100℃にて3〜10分間茹でることにより、パスタとして提供することができる。
【0043】
本発明の高カロリー低蛋白質食は、食感、呈味のよい高カロリー低蛋白質食である。本発明では、液状油脂を用いていることで高カロリー化が図られており、同時に、液状油脂により、食感、呈味が改善される。
また、本発明の高カロリー低蛋白質食においては、蛋白質を削減した米粉の割合を加減することで、米本来に近い味を得ることが容易である。更に、特定の条件でエクストルーダー成形し、液状油脂とα化加工澱粉を配合することで、液状油脂がα化加工澱粉によって包埋され、油脂の滲み出しをおさえることで、劣化が抑制できるため、長期間にわたり食感、呈味のよい安定な高カロリー低蛋白質食とすることができる。
【0044】
以下、具体例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、配合処方における単位の%は重量%を示す。
【0045】
実施例1
下記の配合組成でエクストルーダー処理して人工米(成形米)を成形した。このとき、B成分(液状油脂)とC成分(α化加工澱粉)とを混練して、C成分(α化加工澱粉)中にB成分(液状油脂)を保持させた後、A成分(蛋白質を削減した米粉)とD成分、及びその他の成分をエクストルーダーで混ぜ半固形物にして、これをエクストルーダーにより成形処理した。なお、エクストルーダーの条件は、液状油脂が入っているため加水せずに生地を配合し、半固形物を作り、この半固形物をダイ先端内部温度80±2℃、圧力10kg/cmにて成形処理した。
【0046】
組成 重量%
A成分:40%搗精米 44%
B成分:シソ油 20%
C成分:とうもろこし由来加工澱粉(α化度60) 15%
D成分:とうもろこし由来澱粉 20%
その他成分:澱粉老化防止剤(大豆リン脂質) 1%
合計 100%
【0047】
これを成形機でカットし米粒状に成形した後、30℃の低温で乾燥させた。これを加圧蒸気炊飯(2〜5kg/cm、20〜60秒間)して、これに成形米と水の比率が1:1の割合となるように加水して10分間炊飯を行った。
得られた米飯について、下記に示す方法により成分の分析、食官能試験、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形米の固形分と水分を表1に示す。
なお、とうもろこし由来澱粉(コーンスターチ)を表1では、「コンス」と略記した。
【0048】
[測定方法]
<1>成分分析
・炭水化物の測定(%);炭水化物(%)=100−(蛋白質+脂質+灰分+水分)
・蛋白質の測定(%);ケルダール法による窒素分析で、例えば「蛋白質の科学」(生化学実験講座I、第91頁、日本生化学会編、東京化学同人社、1990年発行)
・脂質の測定(%);(生化学実験法5、脂質研究、第153頁、東京化学同人社、1985年発行)
・灰分の測定(%);石油製品 灰化試験法JIS K2272(1998.1.20)
・水分の測定(%);常圧加熱乾燥法JIS M8812(1993.7.1)
なお、表1には、単位重量100gあたりの含有量(g)として示した。
また、エネルギーの計算は、エネルギー換算係数;蛋白質=4;脂質=9;炭水化物(繊維+糖質)=4(kcal/g)を用いて計算した。
【0049】
<2>米飯の食味(食官能試験)
米粒状に成形加工した試料(成形米)を炊飯して米飯を作成した。この米飯を用いて、次の評価基準に従い、食感を評価した。
【0050】
評価記号;評価基準
◎ ;通常の普通米より美味しく感じる。
○ ;通常の普通米と遜色ない。
△ ;通常の普通米よりは劣るが、食べられないことはない。
× ;美味しくない。
【0051】
これを◎は3点、○は1点、△は0点、×は−3点として、パネラー10人の出した評価の平均点数を食官能試験の結果とした。
【0052】
<3>米飯の液状油脂の保持能測定
米粒状に成形加工した試料(成形米)を用いて、次の評価基準に従い、液状油脂の保持能をJIS K5101に準じて測定、評価した。評価基準は、次の通りである。
等級;評価基準
5級;着色しない(耐油性に優れている)
4級;僅かに着色する
3級;着色する
2級;かなり着色する
1級;著しく着色する(耐油性に劣っている)
【0053】
<4>酸化安定性試験;過酸化物価測定
米粒状に成形加工した試料(成形米;人工米)(50g)を、ボールミルを用いて粉砕し、ヘキサンにて脂質を抽出した。得られた脂質を基準油脂分析法2.4.12.2-94(酢酸−イソオクタン法)に準拠して試料の過酸化物価(POV)を測定した。
【0054】
実施例2
下記の配合組成でエクストルーダー処理して人工米(成形米)を成形した。なお、この実施例2では実施例1とは異なり、B成分の液状油脂とC成分の加工澱粉に水を加え、ホモジナイズして乳化した。水の量は液状油脂と等量を加えた。ここにA成分とC成分を加え十分に混練して半固形物を作り、この半固形物を実施例1と同様にしてダイ先端内部温度80±2℃、圧力10kg/cmにて成形処理した。
【0055】
組成 重量%
A成分:40%搗精米 44%
B成分:オリーブ油 20%
C成分:タピオカ由来加工澱粉(α化度50) 15%
D成分:とうもろこし由来澱粉 20%
その他成分:澱粉老化防止剤(大豆リン脂質) 1%
合計 100%
【0056】
これを成形機でカットし米粒状に成形した後、30℃の低温で乾燥させた。これを加圧蒸気炊飯(2〜5kg/cm、20〜60秒間)して、これに成形米と水の比率が1:1の割合となるように加水して10分間炊飯を行った。
得られた米飯について、実施例1と同様にして、成分の分析、食官能試験、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形米の固形分と水分を表1に示す。
なお、とうもろこし由来澱粉(コーンスターチ)を表1では、「コンス」と略記した。
【0057】
実施例3〜9
実施例1の配合を表1、表2に示したようにA成分、B成分、C成分及びD成分の配合比を変え、更に米粉、液状油脂、澱粉の種類を種々変えて試作を行った。人工米(成形米)の成形方法は実施例1と同様の方法で行った。
得られた米飯について、実施例1と同様にして、成分の分析、食官能試験、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形米の固形分と水分を表1、表2に示す。
なお、表1中において、C6MCTと表示したものは、炭素数が6の中鎖トリグリセライドを、C8MCTと表示したものは、炭素数が8の中鎖トリグリセライドを、C8+C10MCTと表示したものは、炭素数が8と10の中鎖トリグリセライドの混合物を、それぞれ示す。
また、実施例4〜6のPOV値は、使用した脂質が飽和脂肪酸のため測定値はない。
【0058】
実施例10
A成分として、特開平6−303925号公報のに開示された方法に従って調製した低蛋白質、低リン、低カリウム加工米を、粉砕して100メッシュ以下の粉末としたものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、人工米(成形米)を成形し、炊飯し、得られた米飯について、実施例1と同様にして、成分の分析、食官能試験、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形米の固形分と水分を表2に示す。
【0059】
なお、A成分の調製は、具体的には以下のようにして行った。即ち、精白度90%の精白米5kgを5分間気泡洗浄し、水切り後、ソルビトール3%、天野製薬株式会社製のプロテアーゼM「アマノ」(商標名)を0.03%、乳酸菌前培養液1%(菌体濃度310×10/ml)を分散した浸漬水と混合し、恒温培養槽中へ窒素ガスを吹き込みながら、密封、充填し、37℃で24時間培養した後、浸漬水から取り出し、水切り後、15分の間に時々水を替えながらすすぎ、脱酸、除酵素を行い、低蛋白質、低リン、低カリウム加工米を調製し、これを粉砕して100メッシュ以下の粉末としたものをA成分として使用した。
【0060】
比較例1
実施例1の配合組成を下記の配合組成のように変更した(A成分の配合比率を低くした)こと以外は実施例1と同様にして、エクストルーダー処理して人工米(成形米)を成形し、炊飯し、得られた米飯について、実施例1と同様にして、成分の分析、食官能試験、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形米の固形分と水分を表3に示す。配合組成は下記の通りである。
【0061】
組成 重量%
A成分:40%搗精米 10%
B成分:シソ油 20%
C成分:とうもろこし由来加工澱粉(α化度60) 20%
D成分:とうもろこし由来澱粉 49%
その他成分:澱粉老化防止剤(大豆リン脂質) 1%
合計 100%
【0062】
比較例2
実施例1の配合組成を下記の配合組成のように変更した(B成分の配合比率を高くした)こと以外は実施例1と同様にして、エクストルーダー処理して人工米(成形米)を成形し、炊飯し、得られた米飯について、実施例1と同様にして、成分の分析、食官能試験、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形米の固形分と水分を表3に示す。配合組成は下記の通りである。
【0063】
組成 重量%
A成分:60%搗精米 35%
B成分:シソ油 40%
C成分:とうもろこし由来加工澱粉(α化度55) 15%
D成分:とうもろこし由来澱粉 9%
その他成分:澱粉老化防止剤(大豆リン脂質) 1%
合計 100%
【0064】
比較例3
実施例1の配合組成を下記の配合組成のように変更した(B成分の配合比率を低くした)こと以外は実施例1と同様にして、エクストルーダー処理して人工米(成形米)を成形し、炊飯し、得られた米飯について、実施例1と同様にして、成分の分析、食官能試験、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形米の固形分と水分を表3に示す。なお、この比較例3では、エクストルーダー処理において目詰まりを起こして成形加工が困難になった。配合組成は下記の通りである。
【0065】
組成 重量%
A成分:40%搗精米 45%
B成分:シソ油 4%
C成分:とうもろこし由来加工澱粉(α化度70) 20%
D成分:とうもろこし由来澱粉 30%
その他成分:澱粉老化防止剤(大豆リン脂質) 1%
合計 100%
【0066】
比較例4
実施例1の配合組成を下記の配合組成のように変更した(C成分の配合比率を高くした)以外は実施例1と同様にして、エクストルーダー処理して人工米(成形米)を成形し、炊飯し、得られた米飯について、実施例1と同様にして、成分の分析、食官能試験、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形米の固形分と水分を表3に示す。配合組成は下記の通りである。
【0067】
組成 重量%
A成分:60%搗精米 35%
B成分:シソ油 15%
C成分:とうもろこし由来加工澱粉(α化度45) 40%
D成分:とうもろこし由来澱粉 9%
その他成分:澱粉老化防止剤(大豆リン脂質) 1%
合計 100%
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
表1〜3に示す実施例1〜10と比較例1〜4の結果を対比すると、以下のことが分かる。
即ち、比較例1では米粉の配合が少なく、食味が悪くなった。比較例2では脂質の配合が多く、油が表面に浮き脂質の過酸化物価が10を超え酸化安定性を欠いた。更に、酸化臭が出て食味も悪かった。比較例3は、各種試験結果は優れるものの、脂質の配合が少ないことから、エクストルーダー処理において目詰まりを起こして成形加工が困難になった。比較例4では、加工澱粉の割合が多いことから、米本来の味と比較すると食味が悪くなった。
これに対して、実施例によれば、本発明の高カロリー低蛋白質食は、優れた食感と呈味を示すことが分かる。
【0072】
実施例11
実施例1の配合でエクストルーダーのダイをうどん状(縦×横×厚さ=7mm×3mm×300mm)にしたこと以外は、実施例1と同様にして、うどん状成形物を得た。
得られたうどん状成形物について、実施例1と同様にして、成分の分析、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形物の固形分と水分を表4に示す。
また、得られたうどん状成形物を沸騰水で5分間茹でた後、食した。その結果、歯ごたえや美味しさの食感もあり、好ましく食べることができた。
【0073】
次に、この茹でたうどん状成形物を用いて、次の評価基準に従い、食感を評価した。結果を表4に示す。
【0074】
評価記号;評価基準
◎ ;通常のうどんより美味しく感じる。
○ ;通常のうどんと遜色ない。
△ ;通常のうどんよりは劣るが食べられないことはない。
× ;美味しくない。
【0075】
これを◎は3点、○は1点、△は0点、×は−3点として、パネラー10人の出した評価の平均点数を食官能試験の結果とした。
【0076】
実施例12
実施例1の配合でエクストルーダーのダイをパスタ状(縦×横×厚さ=7mm×3mm×300mm)にしたこと以外は、実施例1と同様にして、パスタ状成形物を得た。
得られたパスタ状成形物について、実施例1と同様にして、成分の分析、液状油脂の保持能測定、及び酸化安定性試験(過酸化物価測定)を行った。これらの結果、並びに、配合組成、エクストルーダーでの処理条件、成形物の固形分と水分を表4に示す。
また、得られたパスタ状成形物を沸騰水で5分間茹でた後、食した。その結果、歯ごたえや美味しさの食感もあり、好ましく食べることができた。
【0077】
次に、この茹でたパスタ状成形物を用いて、次の評価基準に従い、食感を評価した。結果を表4に示す。
【0078】
評価記号;評価基準
◎ ;通常のパスタより美味しく感じる。
○ ;通常のパスタと遜色ない。
△ ;通常のパスタよよりは劣るが食べられないことはない。
× ;美味しくない。
【0079】
これを◎は3点、○は1点、△は0点、×は−3点として、パネラー10人の出した評価の平均点数を食官能試験の結果とした。
【0080】
【表4】

【0081】
以上の結果から、本発明の実施例は比較例に比べて、液状油脂に富み、米状、うどん状、パスタ状に製造でき、食感も良い事が分かる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の高カロリー低蛋白質食は、米飯特有の食感、食味に優れた美味しい高カロリー低蛋白質食を提供でき、特に、A成分の米粉として蛋白質含量の少ない搗精米を用いることにより、腎臓病など、蛋白質摂取制限のある人の食事に適する高カロリー低蛋白質食を提供できることから、食品産業等において有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A成分として蛋白質を削減した米粉30〜60重量%、B成分として液状油脂15〜30重量%、C成分としてα化加工澱粉5〜20重量%を含んでなり、エクストルーダーにより成形処理してなる、高カロリー低蛋白質食。
【請求項2】
更にD成分として、蛋白質を削減した米粉以外の米粉、もしくはα化加工澱粉以外の澱粉を50重量%以下含んでなる、請求項1に記載の高カロリー低蛋白質食。
【請求項3】
エクストルーダーにより、食材として用いられる形態に対応して成形処理してなる、請求項1又は2に記載の高カロリー低蛋白質食。
【請求項4】
B成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉を混練して、C成分であるα化加工澱粉中にB成分である液状油脂を保持させた後、A成分である蛋白質を削減した米粉と場合により前記D成分、及びその他の成分をエクストルーダーで混ぜ半固形物にして、これをエクストルーダーによりダイ先端内部温度25〜100℃で成形処理することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高カロリー低蛋白質食の製造方法。
【請求項5】
B成分である液状油脂とC成分であるα化加工澱粉に水分を加えて乳化させた後、A成分である蛋白質を削減した米粉と場合により前記D成分、及びその他の成分をエクストルーダーで混ぜ半固形物にして、これをエクストルーダーによりダイ先端内部温度25〜100℃で成形処理することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高カロリー低蛋白質食の製造方法。

【公開番号】特開2007−215430(P2007−215430A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37345(P2006−37345)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】