説明

高マンガン多結晶正極材およびその製造方法並びに動力リチウムイオン電池

高マンガン多結晶正極材およびその製造方法並びに動力リチウムイオン電池を提供する。当該高マンガン多結晶正極材の化学式はLiMn(CoNi)で、x=0.4〜2.0、y=0.1〜0.6、x+y<2、z≧2、W≧1、(Mn重量)≧(LiMn(CoNi)重量の40%)、粒度7〜20ミクロンであり、高マンガン多結晶正極材は、LiMn、LiCo(NiMn)1−n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1−n、LiMn2nNi2(1−n)およびLiNiO(n<1)からなる群より選択された二種以上の結晶格子構造を有し、これら結晶相が混晶または共晶状態となっている。その正極材の比エネルギーは155Wh/Kg以上、55℃で充・放電レートが1Cの場合、充・放電500回サイクルにおける容量保持率は≧80%で、25℃サイクル寿命は≧1000回、容量保持率は>80%で、その正極材の加工性能が良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池の正極材およびその製造方法、並びに動力リチウムイオン電池に関し、特に高マンガン多結晶正極材およびその製造方法、並びに当該材料で作られた動力リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力リチウムイオン電池は速やかな発展を遂げており、動力電池の性能や、原価および安全性は、電力自動車発展の決定的な要素となっている。それだけでなく、風力発電や、原発、太陽エネルギー、電力網ピーク調整、新エネルギー自動車などになくてはならない動力電池となっており、その技術の進歩は、新エネルギー産業チェーンの発展をリードし、動力電池は各種新エネルギーのエネルギー貯蔵具となり、燃料オイルの代わりにモバイルエネルギーの主な供給設備になるに間違いない。電動バイクは省エネ・便利な新型交通具として、すでに消費者によって認められるようになっている。2007年我が国の電動バイク保有量はすでに2000万台を超え、中国の電動バイク業界は飛躍的な発展を遂げている。しかし、発展の同時に数多くの問題も現れている。例えば、安全や、環境保全などは、依然として最も重要な問題となっている。現在、国内市場の電動バイクには依然として主に鉛酸バッテリーを使っているが、その低いエネルギー密度と高い汚染などの欠点が人々によって認識されるにつれ、新しい代替製品を探し出すことが業界、ひいては全世界の努力方向となっている。また、ニッケル水素電池は成熟した技術で、その値段と使用原価が低く、汚染もないが、ニッケル水素電池にはメモリー効果という克服できない欠点が存在するため、ニッケル水素電池の使用に多くの不便を来している。これだけでなく、ニッケル水素電池は自己放電率が高く、比エネルギーが小さいため、これらの欠点の存在により、ニッケル水素電池はただの過渡性製品に過ぎない。リチウムイオン電池が登場して以来、リチウムイオン電池は高いエネルギーなど数多くの著しいメリットがあるため、各エネルギーストレージ設備において、次第にニッケル水素電池に取って代わるようになっている。リチウムイオン電池は次の特長を有する。1)作動電圧が高く、3.6V以上で、カドミウム‐ニッケル、ニッケル‐水素電池の三倍である。2)コンパクトで、ニッケル‐水素電池より30%も小さい。3)質量が軽く、ニッケル‐水素電池より50%も軽い。4)比エネルギーが高く、120〜150wh/kgで、カドミウム‐ニッケル電池の2〜3倍で、ニッケル‐水素電池の1〜2倍である。5)メモリー効果がない。
【0003】
コバルト酸リチウムは最初産業化された、成熟した正極材として、エネルギー密度が高く、サイクル特性も優れているが、原価が高く、安全性に欠けているため、その動力電池における応用は制限を受けている。コバルト・ニッケル・マンガン三元正極材はエネルギー密度が高く、サイクル特性も優れているなどのメリットがある。しかし、安全性と原価問題は依然として、当該材料の動力電池における応用の障害となっている。現在、動力電池正極材の研究方向は基本的にリン酸鉄リチウムとマンガン酸リチウムが主となっている。マンガン酸リチウムは値段が安く、安全性が高いとのメリットがあるものの、高温サイクル性に欠けており、深刻な自己放電現象があるとの欠点があって、Co、Ni、Mg、Alなどの元素の添加によって変性できるものの、原価の影響を受けて、当該材料を動力電池に単独に使用するには依然として難しい。リン酸鉄リチウム電池正極材の安全性は、かなり良い評判があるものの、プロセス雰囲気のコントロールが難しいため、完成品の一致性が低く、エネルギー密度が低く、原価の原因などによって、リン酸鉄リチウムの動力電池での応用は、まだまだの状態となっている。そのため、原価が低く、安全性が高く、長持ちする正極材の研究開発は、動力電池および未来の電力自動車業界の発展にとって重要な意味がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高マンガン多結晶正極材およびその製造方法、並びに動力リチウムイオン電池を提供することで、解決しようとする技術問題は、電池のエネルギー密度と高温サイクル特性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に使われる技術手段:化学式LiMn(CoNi)で表される高マンガン多結晶正極材であって、x=0.4〜2.0、y=0.1〜0.6、x+y<2、z≧2、W≧1、(Mn重量)≧(LiMn(CoNi)重量の40%)、粒度7〜20ミクロンであり、LiMn、LiCo(NiMn)1−n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1−n、LiMn2nNi2(1−n)およびLiNiO(n<1)からなる群より選択された二種以上の結晶格子構造を有し、これら結晶相が混晶と共晶状態となっていることを特徴とする高マンガン多結晶正極材。
【0006】
本発明において、Mn含有量はCo+Ni+Mn元素モル総量の60〜90%を占めてよい。
【0007】
本発明において、結晶格子にはAl、Si、Ti、Fe、Zr、MgおよびCr中の1種以上の元素が添加されており、その添加量がLiMn(CoNi)に対して0.01〜0.1mol/molであってよい。
【0008】
本発明の高マンガン多結晶正極材の製造方法は、(a:前駆体の作製)リチウム元素の含有量0.3〜1.2molのLiCO、LiAc又はLiOHを質量濃度2〜5%のポリエチレングリコール水性ゲル200〜300mlの中に分散させたものを、回転速度10〜60r/minで50〜120分間回転させてコロイドを作製し、前記コロイドに、元素MnとNi+Coとのモル比が0.4〜2.0:0.01〜0.6であるコバルト、ニッケル及びマンガン化合物を入れ、回転速度50〜60r/minで10〜30分間回転させてから、150〜160℃の条件で2〜15時間乾燥させた後、回転速度1500〜3000r/minで、2〜30分間回転させることによって、リチウムとコバルト、ニッケル、マンガンの結晶相前駆体を得るステップと、(b:単結晶の焼成)前記結晶相前駆体を750〜1000℃の条件で4〜15時間焼結してから、温度を低下させ、粒度D50=7〜20ミクロンに粉砕することによって、単結晶化合物LiMn、LiCo(NiMn)1−n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1−n、LiMn2nNi2(1−n)又はLiNiO(n<1)を得るステップと、(c:多結晶の合成)前記単結晶化合物の2種以上を、Mn含有量がCo+Ni+Mnのモル百分比含有量の60〜90%を占めるようにすると共に、回転速度100〜150r/minで5〜20分間混合することによって混合物を得て、Al、Si、Ti、Fe、Zr、MgおよびCr中の1種以上の元素の0.01〜0.1molの可溶性塩類化合物を濃度が30〜60%である100〜300mlアルコール水溶液に溶解させたものに前記混合物を入れてから、回転速度60〜100r/minで30〜60分間攪拌し、100〜200℃の条件で2〜10時間乾燥させてから、50〜100℃/hrの昇温速度で300〜850℃まで温度を上げて、2〜10時間活性化させることによって、2種以上の結晶相の混晶又は共晶を完了させるステップと、を有する。
【0009】
本発明の方法において、結晶相を共晶させてから粉砕してよい。
【0010】
本発明の方法において、結晶相を混晶又は共晶させてから、ボールミルを用いて回転速度1500〜3000r/minで2〜5分間粉砕してよい。
【0011】
本発明の方法において、コバルト、ニッケル及びマンガン化合物が、水酸基化合物、シュウ酸塩又は炭酸塩であってよい。
【0012】
本発明の方法において、結晶相前駆体を750〜1000℃の条件で4〜15時間焼結してから、自然冷却してよい。
【0013】
正極を有する動力リチウムイオン電池において、前記正極のコレクター上には正極活性物質がコーティングされており、前記正極活性物質がLiMn(CoNi)(x=0.4〜2.0、y=0.1〜0.6、x+y<2、z≧2、W≧1)であり、結晶格子の中にはAl、Si、Ti、Fe、ZrおよびCr中の1種以上の元素が添加されており、その添加量はLiMn(CoNi)に対して0.01〜0.1mol/molで、(Mn重量)≧(LiMn(CoNi)重量の40%)となっており、Mn含有量がCo+Ni+Mn元素のモル総量の60〜90%、粒度が7〜20ミクロンであり、前記高マンガン多結晶正極材のXRDには、LiMn、LiCo(NiMn)1−n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1−n、LiMn2nNi2(1−n)およびLiNiO(n<1)からなる群より選択された二種以上の結晶格子構造が含まれていると共に、これら二種以上の結晶相が混晶または共晶状態となっていることを特徴とする動力リチウムイオン電池。
【0014】
本発明の電池正極材は次の方法によって製造される。LiMn(CoNi)を、正極材質量比2.0〜3.0%を占める電導性カーボンブラック及び正極材質量比2.0〜2.5%を占める接着剤PVDFに混合させてから、得られた混合材料とN‐メチルピロリドンとの質量比が1:0.9となるようにN‐メチルピロリドンを入れ、しかる後に均一に攪拌して懸濁液としたものをアルミホイルコレクター上に塗り、乾燥及び圧縮することによって正極パッドを作製する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は既存技術に比べて、マンガンの含有量の高い多結晶体構造を採択しており、正極材の比エネルギーは155Wh/Kg以上、55℃1Cでの充・放電500回サイクルにおける容量保持率は≧80%で、25℃サイクル寿命は≧1000回、容量保持率は>80%で、高電圧システムに使え、充電電圧は≧4.3Vで、材料の加工性能が良く、電極パッドが脱落せず、重量が軽く、同じエネルギーの鉛酸バッテリーの1/4〜1/5である。当該材料で作られた動力電池は、自転車の動力システムや、電力自動車の動力システムおよび風力発電、原子力発電、太陽エネルギー、電力網ピーク調整などの業界のエネルギー貯蔵システムに使える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1のX線回折スペクトルである。
【図2】本発明の実施例1の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図3】本発明の実施例2のX線回折スペクトルである。
【図4】本発明の実施例2の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図5】本発明の実施例3のX線回折スペクトルである。
【図6】本発明の実施例3の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図7】本発明の実施例4のX線回折スペクトルである。
【図8】本発明の実施例4の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図9】本発明の実施例5のX線回折スペクトルである。
【図10】本発明の実施例5の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図11】本発明の実施例6のX線回折スペクトルである。
【図12】本発明の実施例6の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図13】本発明の実施例7のX線回折スペクトルである。
【図14】本発明の実施例7の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図15】本発明の実施例8のX線回折スペクトルである。
【図16】本発明の実施例8の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図17】本発明の実施例9のX線回折スペクトルである。
【図18】本発明の実施例9の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図19】本発明の比較例1のX線回折スペクトルである。
【図20】本発明の比較例1の走査電子顕微鏡SEM図である。
【図21】本発明の比較例2のX線回折スペクトルである。
【図22】本発明の比較例2の走査電子顕微鏡SEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面と実施例に合わせて、本発明をさらに詳しく説明する。本発明の高マンガン多結晶正極材の化学式はLiMn(CoNi)であって、x=0.4〜2.0、y=0.1〜0.6、x+y<2、z≧2、W≧1であり、結晶格子の中にはAl、Si、Ti、Fe、Zr、Mg及びCr中の1種以上の元素が添加されており、その添加量は0.01〜0.1mol/mol LiMn(CoNi)で、(Mn重量)≧(LiMn(CoNi)重量の40%)、Mn含有量はCo+Ni+Mn元素のモル総量の60〜90%を占めており、粒度は7〜20ミクロンであり、前記高マンガン多結晶正極材のXRDには、LiMn、LiCo(NiMn)1-n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1-n、LiMn2nNi2(1-n)およびLiNiOからなる群(n<1)より選択された二種以上の結晶格子構造が現れ、結晶相は混晶と共晶状態となっており、圧縮密度は3.0〜3.5g/cmである。
【0018】
本発明の高マンガン多結晶正極材の製造方法には、次のステップが含まれる。
【0019】
I.前駆体、単結晶の製造
1.前駆体の製造:リチウム元素の含有量0.3〜1.2molのLiCO、LiAc又はLiOHを質量濃度2〜5%のポリエチレングリコール水性ゲル200〜300mlの中に分散させて、回転速度50〜60r/minで、50〜120min回転させてコロイドを作製し、コバルト、ニッケル、マンガン化合物を元素MnとNi+Coとのモル比:0.4〜2.0:0.01〜0.6の比例に取って、前記コロイドに入れて、回転速度50〜60r/minで、10〜30min均一に攪拌し、直接150〜160℃の条件で、2〜15時間乾燥させ、ボールミルで回転速度1500〜3000r/minで、2〜30min分散させることによって、リチウムとコバルト、ニッケル、マンガンとの結晶相前駆体が得られる。前記コバルト、ニッケル、マンガン化合物は、水酸基化合物や、シュウ酸塩又は炭酸塩である。
【0020】
2.単結晶の焼結:上記結晶相前駆体を直接750〜1000℃の条件で4〜15時間焼結してから、自然冷却し、ボールミルで粒度D50=7〜20ミクロンに粉砕することによって、単結晶化合物LiMn、LiCo(NiMn)1-n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1-n、LiMn2nNi2(1-n)又はLiNiO(n<1)が得られる。
【0021】
II.多結晶の合成
上記単結晶化合物の2種以上を、Mn含有量がCo+Ni+Mnのモル百分比含有量60〜90%を占めるようにし、ボールミルで回転速度100〜150r/minで、5〜20min混合させることによって、混合物が得られる。さらに、0.01〜0.1molのAl、Si、Ti、Fe、ZrおよびCr中の1種以上元素の可溶性塩類化合物を濃度が30〜60%である100〜300mlアルコール水溶液に溶解させてから、混合物を入れて、回転速度60〜100r/minで、30〜60min均一に攪拌し、直接100〜200℃の条件で、2〜10時間乾燥させることによって、元素添加が完了される。それから、50〜100℃/hrの昇温速度で300〜850℃まで温度を上げて、2〜10時間活性化させることによって、結晶相共晶物が得られる。それから、ボールミルで回転速度1500〜3000r/minで、2〜5min粉砕することによって、高マンガン多結晶正極材が得られる。当該高マンガン多結晶材料の化学式はLiMn(CoNi)で、x=0.5〜1.9、y=0.1〜0.6、x+y<2、z≧2、W≧1であり、結晶格子の中にはAl、Si、Ti、Fe、Zr、MgおよびCr中の1種以上の元素が添加されており、その添加量は0.01〜0.1mol/mol LiMn(CoNi)で、(Mn重量)≧(LiMn(CoNi)重量の40%)、Mn含有量はCo+Ni+Mn元素のモル総量の60〜90%を占めており、粒度は7〜20ミクロンであり、前記高マンガン多結晶正極材のXRDには、LiMn、LiCo(NiMn)1-n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1-n、LiMn2nNi2(1-n)およびLiNiOからなる群(n<1)より選択された二種以上の結晶格子構造が現れ、結晶相は混晶または共晶状態となっており、圧縮密度は3.0〜3.5g/cmである。
【0022】
本発明の方法に使われる乾燥設備:宜興市前錦炉業設備有限公司のKSF1100-V型ボックス炉、攪拌機:廊坊市勝通機械有限公司のJJ実験均質機、粉砕設備:連雲港春竜実験儀器公司のSHQM型双星ボールミル、分級設備:新郷統一機械設備公司のTY-200A型標準検査用篩分け装置。分析器機:日本電子のJSM6360走査型電子顕微鏡、日本理学のD/max‐2200pcXRD放射線回折装置、珠海OMKEのLS602レーザー粒度分析機、北京鋼鉄研究院のFZS4-4B型タップ密度器械、Pioneer2002表面測定器などを使って、本発明の方法によって製造された高マンガン多結晶正極材に対してテストと分析を行った。
【0023】
本発明の動力リチウムイオン電池は、正極や、負極、非水電解質、隔膜および容器などによって構成される。正極は、正極コレクターと正極コレクター上にコーティングされた正極活性物質によって構成されるが、正極活性物質はLiMn(CoNi)で、x=0.5〜1.9、y=0.1〜0.6、x+y<2、z≧2、W≧1であり、結晶格子の中にはAl、Si、Ti、Fe、ZrおよびCr中の1種以上の元素が添加されており、その添加量は0.01〜0.1mol/mol LiMn(CoNi)で、(Mn重量)≧(LiMn(CoNi)重量の40%)、Mn含有量はCo+Ni+Mn元素のモル総量の60〜90%を占めており、粒度は7〜20ミクロンであり、前記高マンガン多結晶正極材のXRDには、LiMn、LiCo(NiMn)1-n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1-n、LiMn2nNi2(1-n)およびLiNiOからなる群(n<1)より選択された二種以上の結晶格子構造が現れ、結晶相は混晶または共晶状態となっている。SEMから見れば、材料は多結晶混晶状態となっており、X線回折スペクトルの特徴ピークから見ると、多結晶格子構造の共晶の存在が分かる。その圧縮密度は3.0〜3.5g/cmで、4.2〜2.75Vの充・放電1Cでの初期容量は≧115mAh/g、正極エネルギー密度は≧345 mAh / cm(正極エネルギー密度mAh / cm=正極パッド圧縮密度g/cm×初期容量mAh/g)で、55℃1Cでの充・放電500回サイクルにおける容量保持率は≧80%、1C10Vでの過充電の条件で爆発・発火せず、25℃サイクル寿命は≧1000回、容量保持率は≧80%、充電電圧4.3V1Cでの容量は≧135mAh/g、充電電圧4.4V1Cでの容量は≧140mAh/gで、加工性能が良く、電極パッドが落ちない。
【0024】
負極は負極コレクターと負極コレクター上にコーティングされた負極活性物質などで構成される。隔膜は単なる固体絶縁層又は電導性のある固体状物質で、正極と負極との仕切りに使われる。容器は正極や負極、隔膜、電解質などの収容体である。
【0025】
正極製造:本発明によって製造された高マンガン多結晶正極材LiMn(CoNi)および正極材質量比2.0〜3.0%を占める電導性カーボンブラックと質量比2.0〜2.5%を占める接着剤PVDFを混合させてから、混合材料とN‐メチルピロリドンとの質量比を1:0.9の比例でN‐メチルピロリドンを入れて、均一に攪拌して懸濁液にして、アルミホイルコレクター上に塗り、乾燥・圧縮することによって、電極パッドが作られる。負極の製造:負極活性材料のメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)や、負極活性材料の質量比2%を占める導電剤S-Pおよび質量比10%を占める接着剤PVDFを混ぜて、混合材料とN‐メチルピロリドンとの質量比1:1の比例によってN‐メチルピロリドンを入れて、均一に攪拌して懸濁液にして、銅ホイルコレクター上に塗り、乾燥・圧縮することによって電極パッドが作られる。隔膜はPPPE複合材料を用い、容器は絶縁層付きのアルミケーシングとリード引出孔付きの電池蓋を使っている。圧縮済の正・負極パッド上にリードをスポット溶接して、隔膜を挿し入れてから、ワインダー上で巻いてからアルミケーシングの中に入れて、リードを電池蓋から引き出してから、にかわでリード引出孔を密封する。アルミケーシングと電池蓋を一緒に溶接密封する。それから、相対湿度が1.5%以下の環境にて電解液を注ぎ入れるが、電解液は質量比のEC:DEC:DMC=1:1:1の混合溶剤を使用し、電解質は1Mのヘキサフルオロリン酸リチウムを使用し、液体を注ぎ入れてから、直ちに密封する。電池型式は四角型の053048である。
【0026】
本発明によって製造された動力リチウムイオン電池の充・放電テストはGB/T18287-2000テスト方法に従い、広州チン天実業公司のBS-9360型電池検査キャビネットの中で行われた。
【0027】
I.前駆体、単結晶の合成
[実施例1]
リチウム元素含有量が0.3molのLiCOを質量濃度が2%のポリエチレングリコール水性ゲル300mlの中に分散させて、回転速度50r/minで、10分間回転させてコロイドを作製し、Ni元素0.1molを含有する炭酸ニッケルや、Mn元素0.8molを含有する炭酸マンガンを上記コロイドに入れて、回転速度60r/minで、10min均一混ぜて、150℃の下で10時間乾燥させ、ボールミルで回転速度3000 r/minで、2min回転させてリチウムとニッケル、マンガンの結晶相前駆体1が得られる。
【0028】
前駆体1を850℃の条件下で、定温にて7時間保持し、自然冷却させてから、ボールミルで粒度D50=12ミクロンまでに粉砕することによって単結晶化合物LiMn2nNi2(1-n)が得られる。ここで、n<1の単結晶Aは、図1に示されているとおり、その結晶格子の構造はスピネル構造となっており、図2に示されているとおり、単一結晶体によって構成されている。
【0029】
[実施例2]
リチウム元素含有量が1molのLiOHを質量濃度が5%のポリエチレングリコール水性ゲル300mlの中に分散させて、回転速度60r/minで、70分間回転させてコロイドを作製し、Co元素0.1molを含有する蓚酸コバルトや、Ni元素0.45molを含有する蓚酸ニッケル、Mn元素0.45molを含有する蓚酸マンガンを上記コロイドに入れて、回転速度50r/minで、10min均一混ぜて、450℃の下で10時間乾燥させ、ボールミルで回転速度2500 r/minで、10min回転させてリチウムとコバルト、ニッケル、マンガンの結晶相前駆体2が得られる。
【0030】
前駆体2を920℃の条件下で、定温にて10時間保持し、自然冷却で室温まで温度を下げてから、ボールミルで粒度D50=18ミクロンに粉砕することによって単結晶化合物LiCo(NiMn)1-nが得られる。ここで、n<1の単結晶Bは、図3に示されているとおり、その結晶格子の構造は積層構造となっており、図4に示されているとおり、単一結晶体によって構成されている。
【0031】
[実施例3]
リチウム元素含有量が0.3molのLiCOを質量濃度が4%のポリエチレングリコール水性ゲル200mlの中に分散させて、回転速度50r/minで、120分間回転させてコロイドを作製し、Ni元素0.06molを含有する炭酸ニッケルや、Mn元素1.0molを含有する炭酸マンガンを上記コロイドに入れて、回転速度50r/minで、20min均一混ぜて、250℃の下で10時間乾燥させ、ボールミルで回転速度2000 r/minで、15min回転させてリチウムとニッケル、マンガンの結晶相前駆体3が得られる。
【0032】
前駆体3を750℃の条件下で、定温にて15時間保持し、自然冷却で室温まで温度を下げてから、ボールミルで粒度D50=8ミクロンに粉砕することによって単結晶化合物LiMn2nNi2(1-n)が得られる。ここで、n<1の単結晶Cは、図5に示されているとおり、その結晶格子の構造はスピネル構造となっており、図6に示されているとおり、単一結晶体によって構成されている。
【0033】
[実施例4]
リチウム元素含有量が0.6molのLiCOを質量濃度が3%のポリエチレングリコール水性ゲル250mlの中に分散させて、回転速度55r/minで、100分間回転させてコロイドを作製し、Ni元素0.6molを含有する炭酸ニッケルや、Mn元素0.4molを含有する炭酸マンガンを上記コロイドに入れて、回転速度55r/minで、10min均一混ぜて、600℃の下で2時間乾燥させ、ボールミルで回転速度1500 r/minで、30min回転させてリチウムとニッケル、マンガンの結晶相前駆体4が得られる。
【0034】
前駆体4を1000℃の条件下で、定温にて4時間保持し、自然冷却で室温まで温度を下げてから、ボールミルで粒度D50=16ミクロンに粉砕することによって単結晶化合物LiNiMn1-nが得られる。ここで、n<1の単結晶Dは、図7に示されているとおり、その結晶格子の構造は積層構造となっており、図8に示されているとおり、単一結晶体によって構成されている。
【0035】
[実施例5]
リチウム元素含有量が1.2molのLiCOを質量濃度が4%のポリエチレングリコール水性ゲル200mlの中に分散させて、回転速度50r/minで、90分間回転させてコロイドを作製し、Ni元素0.01molを含有する炭酸ニッケルや、Mn元素2.0molを含有する炭酸マンガンを上記コロイドに入れて、回転速度50r/minで、30min均一混ぜて、150℃の下で15時間乾燥させ、ボールミルで回転速度2000 r/minで、15min回転させてリチウムとニッケル、マンガンの結晶相前駆体5が得られる。
【0036】
前駆体5を800℃の条件下で、定温にて15時間保持し、自然冷却で室温まで温度を下げてから、ボールミルで粒度D50=8ミクロンに粉砕することによって単結晶化合物LiMnNi2(1-n)が得られる。ここで、n<1の単結晶Eは、その結晶格子の構造はスピネル構造となっており、単一結晶体によって構成されている。
【0037】
II.多結晶の合成
[実施例6]
単結晶化合物Aと単結晶化合物BをMn含有量がCo+Ni+Mnのモル百分比含有量73.7%を占めるようにし、ボールミルで回転速度100r/minで、20min混合させることによって混合物が得られる。Al元素0.01molを含有するAlAcを50%濃度のアルコール水溶液100mlの中に溶解させてから、前記混合物を入れて、回転速度100 r/minで、30min均一に攪拌し、100℃の下で10時間乾燥させ、100℃/hrの昇温速度で温度を850℃まで上げてから2時間活性化させることによって、結晶相の混晶又は共晶が形成されるが、ボールミルで回転速度1500 r/minで、5min粉砕させることによって、高マンガン多結晶正極材が得られる。図9に示されているとおり、X線回折スペクトルにはLiMn2nNi2(1-n)/ LiCo(NiMn)1-nの共晶多結晶構造が示されており、Al3+のイオン半径は0.0535nmで、Li1+のイオン半径0.076nmに比べて小さいので、熱力学的条件の下で結晶格子構造中の一部のリチウムイオンに取って代わることができ、単結晶および異なる結晶相間のLiイオンをさらに拡散させる。XRD特徴ピーク表示は簡単な多結晶の混晶とは異なり、003ピークと111ピークはほぼ重なり、共晶の特徴を示している。図10に示されているとおり、電子顕微鏡のスキャニング結果から見れば、単結晶の形態とは明らかに異なり、多種の結晶体が共存する特徴を示している。
【0038】
実施例6の高マンガン多結晶材料を電池の正極活性物質として、053048四角型のリチウムイオン電池を製作したが、電極パッドの応用性能および電気性能テスト結果は表1を参照。
【0039】
[実施例7]
単結晶化合物Aと単結晶化合物Bおよび単結晶化合物CをMn含有量がCo+Ni+Mnのモル百分比含有量69.4%を占めるようにし、ボールミルで回転速度150r/minで、5min混合させることによって混合物が得られる。Mg元素0.1molを含有するMgAcを30%濃度のアルコール水溶液100mlの中に溶解させてから、前記混合物を入れて、回転速度60 r/minで、60min均一に攪拌し、200℃の下で2時間乾燥させ、50℃/hrの昇温速度で温度を650℃まで上げてから5時間活性化させることによって、結晶相の共晶が形成されるが、ボールミルで回転速度3000 r/minで、2min粉砕させることによって、高マンガン多結晶正極材が得られる。図11に示されているとおり、X線回折スペクトルにはLiMn2nNi2(1-n)/ LiCo(NiMn)1-n/ LiMn2nNi2(1-n)の共晶多結晶構造が示されており、Mg2+のイオン半径は0.072nmで、Li1+のイオン半径0.076nmに比べて小さいので、熱力学的条件の下で結晶格子構造中の一部のリチウムイオンに取って代わることができ、単結晶および異なる結晶相間のLiイオンをさらに拡散させる。XRD特徴ピーク表示は簡単な多結晶の混晶とは異なり、003ピークと111ピークはほぼ重なり、共晶の特徴を示している。図12に示されているとおり、電子顕微鏡のスキャニング結果から見れば、単結晶の形態とは明らかに異なり、多種の結晶体が共存する特徴を示している。
【0040】
実施例7の高マンガン多結晶材料を電池の正極活性物質として、053048四角型のリチウムイオン電池を製作したが、電極パッドの応用性能および電気性能テスト結果は表1を参照。
【0041】
[実施例8]
単結晶化合物Dと単結晶化合物CをMn含有量がCo+Ni+Mnのモル百分比含有量60.3%を占めるようにし、ボールミルで回転速度120r/minで、10min混合させることによって混合物が得られる。Al元素0.01molを含有するAlAcを60%濃度のアルコール水溶液300mlの中に溶解させてから、前記混合物を入れて、回転速度70 r/minで、40min均一に攪拌し、110℃の下で10時間乾燥させ、70℃/hrの昇温速度で温度を300℃まで上げてから7時間活性化させることによって、結晶相の混晶又は共晶が形成されるが、ボールミルで回転速度2000 r/minで、3min粉砕させることによって、高マンガン多結晶正極材が得られる。図13に示されているとおり、X線回折スペクトルにはLiMn2nNi2(1-n)/ LiNiMn1-nの共晶多結晶構造が示されており、Al3+のイオン半径は0.0535nmで、Li1+のイオン半径0.076nmに比べて小さいので、熱力学的条件の下で結晶格子構造中の一部のリチウムイオンに取って代わることができ、単結晶および異なる結晶相間のLiイオンをさらに拡散させる。XRD特徴ピーク表示は簡単な多結晶の混晶とは異なり、003ピークと111ピークはほぼ重なり、共晶の特徴を示している。図14に示されているとおり、電子顕微鏡のスキャニング結果から見れば、単結晶の形態とは明らかに異なり、多種の結晶体が共存する特徴を示している。
【0042】
実施例8の高マンガン多結晶材料を電池の正極活性物質として、053048四角型のリチウムイオン電池を製作したが、電極パッドの応用性能および電気性能テスト結果は表1を参照。
【0043】
[実施例9]
単結晶化合物Aと単結晶化合物Bおよび単結晶化合物DをMn含有量がCo+Ni+Mnのモル百分比含有量80.3%を占めるようにし、ボールミルで回転速度135r/minで、20min混合させることによって混合物が得られる。Cr元素0.06molを含有するCr(CHCOO)を50%濃度のアルコール水溶液100mlの中に溶解させてから、前記混合物を入れて、回転速度90 r/minで、50min均一に攪拌し、190℃の下で3時間乾燥させ、85℃/hrの昇温速度で温度を500℃まで上げてから3時間活性化させることによって、結晶相の混晶又は共晶が形成されるが、ボールミルで回転速度1600 r/minで、3min粉砕させることによって、高マンガン多結晶正極材が得られる。図15に示されているとおり、X線回折スペクトルにはLiMn2nNi2(1-n)/ LiCo(NiMn)1-n/ LiNiMn1-nの共晶多結晶構造が示されており、Cr3+のイオン半径は0.0615nmで、Mn3+(0.064nm)と接近しているので、熱力学的条件の下で結晶格子構造中の一部のリチウムイオンに取って代わることができ、単結晶および異なる結晶相間のLiイオンを拡散させる。XRD特徴ピーク表示は簡単な多結晶の混晶とは異なり、003ピークと111ピークはほぼ重なり、共晶の特徴を示している。図16に示されているとおり、電子顕微鏡のスキャニング結果から見れば、単結晶の形態とは明らかに異なり、多種の結晶体が共存する特徴を示している。
【0044】
実施例9の高マンガン多結晶材料を電池の正極活性物質として、053048四角型のリチウムイオン電池を製作したが、電極パッドの応用性能および電気性能テスト結果は表1を参照。
【0045】
[実施例10]
単結晶化合物Bと単結晶化合物CをMn含有量がCo+Ni+Mnのモル百分比含有量89.2%を占めるようにし、ボールミルで回転速度140r/minで、20min混合させることによって混合物が得られる。Zr元素0.06molを含有するZr(N0を50%濃度のアルコール水溶液100mlの中に溶解させてから、前記混合物を入れて、回転速度85 r/minで、45min均一に攪拌し、150℃の下で3時間乾燥させ、100℃/hrの昇温速度で温度を600℃まで上げてから4時間活性化させることによって、結晶相の混晶又は共晶が形成されるが、ボールミルで回転速度1500 r/minで、5min粉砕させることによって、高マンガン多結晶正極材が得られる。図17に示されているとおり、X線回折スペクトルにはLiCo(NiMn)1-n/ LiMn2nNi2(1-n)の共晶多結晶構造が示されており、Zr4+のイオン半径は0.072nmで、Li1+のイオン半径0.076nmに比べて小さいので、熱力学的条件の下で結晶格子構造中の一部のリチウムイオンに取って代わることができ、単結晶および異なる結晶相間のLiイオンを拡散させる。XRD特徴ピーク表示は簡単な多結晶の混晶とは異なり、003ピークと111ピークはほぼ重なり、共晶の特徴を示している。図18に示されているとおり、電子顕微鏡のスキャニング結果から見れば、単結晶の形態とは明らかに異なり、多種の結晶体が共存する特徴を示している。
【0046】
実施例10の高マンガン多結晶材料を電池の正極活性物質として、053048四角型のリチウムイオン電池を製作したが、電極パッドの応用性能および電気性能テスト結果は表1を参照。
【0047】
実施例1〜5において、コバルト、ニッケル、マンガン化合物は炭酸塩を応用しているが、コバルト、ニッケル、マンガンの水酸基化合物とシュウ酸塩はコバルト、ニッケル、マンガン化合物の炭酸塩と接近する物理・化学特性を有し、コバルト、ニッケル、マンガンはいずれも遷移元素に属し、イオン半径が接近しており(0.053〜0.06nm)、使われる化合物のイオンはいずれも+2価であるので、共融物結晶格子構造を形成することができ、Li+の拡散に接近した化学特徴を提供することによって、本発明の前駆体製造中、リチウムとコバルト、ニッケル、マンガンの結晶相前駆体の形成に対して、ベース結晶格子骨格元素と共同の貢献作用を有する。そのため、コバルト、ニッケル、マンガンの水酸基化合物とシュウ酸塩は本発明のリチウムとコバルト、ニッケル、マンガンの結晶相前駆体の製造に適用する。
【0048】
実施例6〜10において、結晶格子中の添加元素としてAlとMgを挙げているが、 Si、Ti、Fe、Zr、CrとAl及びMgのイオン半径(イオン半径は0.04〜0.067nm)はLi+イオン半径(0.076nm)に比べて小さく、Mn3+イオン半径(0.0645nm)に近いので、一定の熱力学的条件の下で、Liイオンに取って代わり、各結晶相の固溶体を形成させることができる。本発明の結晶格子の中に添加元素を入れることによって、材料に対する充・放電においてMn3+がMn2++Mn4+に分岐化されることを抑えることができ、1種以上の添加元素を入れることによって相転移を抑えることができ、各結晶相の間の電荷のバランスを取り、材料の高温耐性の向上や、自己放電性の低下、熱安定性などの安全性が向上できるので、本発明に適用する。
【0049】
[比較例1]
図19に示されているとおり、市販の深セン市振華新材料株式有限公司のリン酸鉄リチウムZHFe1#正極材の結晶格子の構造は、XRDに単一のリン酸鉄リチウムの橄欖石型構造となっており、図20に示されているとおり、電子顕微鏡スキャニングのSEMにおいて、単結晶粒度<1μmの均一分布特徴を示しており、当該正極材で053048四角型のリチウムイオン電池を製作したが、電極パッドの応用性能および電気性能テスト結果は表1を参照。
【0050】
[比較例2]
図21に示されているとおり、市販の深セン市振華新材料株式有限公司のマンガン酸リチウムZHM01#正極材の結晶格子の構造は、XRDに単一のマンガン酸リチウムのスピネル型構造となっており、図22に示されているとおり、電子顕微鏡スキャニングSEMにおいて、粒度<1μmの単結晶が凝集形態となっており、比較的低い比表面積0.6〜0.9m/gを有する。当該正極材で053048四角型のリチウムイオン電池を製作したが、電極パッドの応用性能および電気性能テスト結果は表1を参照。
【0051】
(結論)
本発明の高マンガン多結晶正極材の圧縮密度(3.0〜3.5g/cm)はマンガン酸リチウム(2.9〜3.3g/cm)とリン酸鉄リチウム(2.1〜2.5g/cm)に比べて大きい。容量発揮(≧115mAh/g)はマンガン酸リチウム(95〜110mAh/g)に比べて高く、リン酸鉄リチウム(〜130mAh/g)に比べて低い。上記データから見れば、高マンガン多結晶材料はマンガン酸リチウムとリン酸鉄リチウムより高いエネルギー密度を有する。橄欖石型リン酸鉄リチウムは電位が3.4V(vs.Li/Li+)と低い、粉体は単結晶の粒度が小さく(≦1μm)、比表面積が大きく(12〜20cm/g)、タップ密度が低く(≦1.2g/cm)などの特徴がある。従って、電極パッドの圧縮密度とエネルギー密度も低い。スピネル型マンガン酸リチウムLi-MN‐O三元物は多種の化合物を形成することができ、異なる条件においてはお互いに転化することができるので、充・放電中に当該材料構造の結晶体形態は変化し易く、容量の減衰も早くなる。それに対して、本発明の高マンガン多結晶材料は多元素、多結晶相が存在するので、マンガン酸リチウムの上記欠点を克服することができる。そのため、容量発揮と安定性はマンガン酸リチウムより高い。また、その安全性はリン酸鉄リチウムとマンガン酸リチウムとほぼ同じぐらいで、高温サイクル性はマンガン酸リチウムを大きく上回っており、リン酸鉄リチウムと同じぐらいで、常温サイクル特性はマンガン酸リチウムより優れており、リン酸鉄リチウムと同じぐらいである。上記から分かるように、本発明の高マンガン多結晶正極材は、エネルギー密度にも安全性にも優れた性能があり、動力電池の理想的な正極材である。
【0052】
表1は実施例5〜9と比較例1〜2のテストデータである。電池型式:053048充・放電電圧4.2〜2.75V、1Cレート充・放電。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式LiMn(CoNi)で表される高マンガン多結晶正極材であって、
x=0.4〜2.0、y=0.1〜0.6、x+y<2、z≧2、W≧1、(Mn重量)≧(LiMn(CoNi)重量の40%)、粒度7〜20ミクロンであり、
LiMn、LiCo(NiMn)1−n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1−n、LiMn2nNi2(1−n)およびLiNiO(n<1)からなる群より選択された二種以上の結晶格子構造を有し、これら結晶相が混晶と共晶状態となっていることを特徴とする高マンガン多結晶正極材。
【請求項2】
前記Mn含有量がCo+Ni+Mn元素モル総量の60〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の高マンガン多結晶正極材。
【請求項3】
前記結晶格子にはAl、Si、Ti、Fe、Zr、MgおよびCr中の1種以上の元素が添加されており、その添加量がLiMn(CoNi)に対して0.01〜0.1mol/molであることを特徴とする請求項2に記載の高マンガン多結晶正極材。
【請求項4】
(a:前駆体の作製)リチウム元素の含有量0.3〜1.2molのLiCO、LiAc又はLiOHを質量濃度2〜5%のポリエチレングリコール水性ゲル200〜300mlの中に分散させたものを、回転速度10〜60r/minで50〜120分間回転させてコロイドを作製し、前記コロイドに、元素MnとNi+Coとのモル比が0.4〜2.0:0.01〜0.6であるコバルト、ニッケル及びマンガン化合物を入れ、回転速度50〜60r/minで10〜30分間回転させてから、150〜160℃の条件で2〜15時間乾燥させた後、回転速度1500〜3000r/minで、2〜30分間回転させることによって、リチウムとコバルト、ニッケル、マンガンの結晶相前駆体を得るステップと、
(b:単結晶の焼成)前記結晶相前駆体を750〜1000℃の条件で4〜15時間焼結してから、温度を低下させ、粒度D50=7〜20ミクロンに粉砕することによって、単結晶化合物LiMn、LiCo(NiMn)1−n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1−n、LiMn2nNi2(1−n)又はLiNiO(n<1)を得るステップと、
(c:多結晶の合成)前記単結晶化合物の2種以上を、Mn含有量がCo+Ni+Mnのモル百分比含有量の60〜90%を占めるようにすると共に、回転速度100〜150r/minで5〜20分間混合することによって混合物を得て、Al、Si、Ti、Fe、Zr、MgおよびCr中の1種以上の元素の0.01〜0.1molの可溶性塩類化合物を濃度が30〜60%である100〜300mlアルコール水溶液に溶解させたものに前記混合物を入れてから、回転速度60〜100r/minで30〜60分間攪拌し、100〜200℃の条件で2〜10時間乾燥させてから、50〜100℃/hrの昇温速度で300〜850℃まで温度を上げて、2〜10時間活性化させることによって、2種以上の結晶相の混晶又は共晶を完了させるステップと、を有することを特徴とする高マンガン多結晶正極材の製造方法。
【請求項5】
2種以上の前記結晶相の共晶後に粉砕を行うことを特徴とする請求項4に記載の高マンガン多結晶正極材の製造方法。
【請求項6】
2種以上の前記結晶相の混晶又は共晶後に、ボールミルを用いて回転速度1500〜3000r/minで2〜5分間粉砕を行うことを特徴とする請求項5に記載の高マンガン多結晶正極材の製造方法。
【請求項7】
前記コバルト、ニッケル及びマンガン化合物が、水酸基化合物、シュウ酸塩又は炭酸塩であることを特徴する請求項6に記載の高マンガン多結晶正極材の製造方法。
【請求項8】
前記結晶相前駆体を750〜1000℃の条件で4〜15時間焼結してから、自然冷却することを特徴とする請求項7に記載の高マンガン多結晶正極材の製造方法。
【請求項9】
正極を有する動力リチウムイオン電池において、前記正極のコレクター上には正極活性物質がコーティングされており、
前記正極活性物質がLiMn(CoNi)(x=0.4〜2.0、y=0.1〜0.6、x+y<2、z≧2、W≧1)であり、結晶格子の中にはAl、Si、Ti、Fe、ZrおよびCr中の1種以上の元素が添加されており、その添加量はLiMn(CoNi)に対して0.01〜0.1mol/molで、(Mn重量)≧(LiMn(CoNi)重量の40%)となっており、Mn含有量がCo+Ni+Mn元素のモル総量の60〜90%、粒度が7〜20ミクロンであり、
前記高マンガン多結晶正極材のXRDには、LiMn、LiCo(NiMn)1−n、LiNi0.8Co0.2、LiCoO、LiNiMn1−n、LiMn2nNi2(1−n)およびLiNiO(n<1)からなる群より選択された二種以上の結晶格子構造が含まれていると共に、これら二種以上の結晶相が混晶または共晶状態となっていることを特徴とする動力リチウムイオン電池。
【請求項10】
前記正極材は、LiMn(CoNi)を、正極材質量比2.0〜3.0%を占める電導性カーボンブラック及び正極材質量比2.0〜2.5%を占める接着剤PVDFに混合させてから、得られた混合材料とN‐メチルピロリドンとの質量比が1:0.9となるようにN‐メチルピロリドンを入れ、しかる後に均一に攪拌して懸濁液としたものをアルミホイルコレクター上に塗り、乾燥及び圧縮することによって正極パッドを作製することによって製造されたものであることを特徴とする請求項9に記載の動力リチウムイオン電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2013−501316(P2013−501316A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523181(P2012−523181)
【出願日】平成21年12月27日(2009.12.27)
【特許番号】特許第5076038号(P5076038)
【特許公報発行日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【国際出願番号】PCT/CN2009/076101
【国際公開番号】WO2011/075921
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512029168)シェンヅェン ヅェンファ ニュー マテリアル カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN ZHENHUA NEW MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】HAO, Genbao, Zhen Hua Industrial Park 44 Tiezi Road, Baoan District Shenzhen, Guangdong 518102 CHINA
【出願人】(512029180)グィジュ ヅェンフア ニュー マテリアル カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】GUI ZHOU ZHENHUA NEW MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】HAO, Genbao, NO. 390−1, Baiyun North Road, BaiYun District GuiYang, Guizhou 550000 CHINA
【Fターム(参考)】