説明

高リコペントマト品種及びその使用

本発明は、dark green(dg)遺伝子がホモ接合であり、現在市販されているトマト品種の果実の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実を産生する耐寒性トマト(Lycopersicon esculentum)品種に関するものであり、この品種は、商業規模での生育用に適合されており、その果実収穫物は、高い平均リコペン含量を維持している。本発明はさらに、生鮮果実及び加工果実の市場向けのトマトを作出するための、またリコペン及びそれを含む製品を製造するための前記品種の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、dark green(dg)遺伝子がホモ接合であり、現在市販されているトマト品種の果実の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実を産生する耐寒性トマト(Lycopersicon esculentum)品種に関するものであり、この品種は、商業規模での生育用に適合されており、その果実収穫物は、高い平均リコペン含量を維持している。本発明はさらに、生鮮果実及び加工果実の市場向けのトマトを作出するための、またリコペン及びそれを含む製品を製造するための前記品種の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
植物体は、その発達過程を光形態形成と称される一連の相互作用において調節することにより、光の強度、照射方向、照射時間、及びスペクトルの質に応答する。光形態形成突然変異体が、光と植物体の発達との間の複雑な相互作用についての研究における優れたツールであることが示されており、その変異体には、農作物のいくつかの育種計画で使用されているものもある。光形態形成突然変異体は、シロイヌナズナ、モロコシ、アブラナ、タバコ、トマト、及びエンドウを含めたいくつかの種で報告されている。一般に、こうした変異体は、光受容体の欠損か、又は光シグナル伝達鎖のある側面の改変のいずれかに分類することができる(Chory,J.、1993.Trends Genet 9:167−172)。
【0003】
トマト(Lycopersicon esculentum)におけるいくつかの光過敏性突然変異体が記載されている。中でも、一遺伝子劣性であるhigh pigment(hp−1及びhp−2)及びdark green(dg)の突然変異を有する突然変異体が、光に対する非常に高い反応性によって特徴付けられている。多世代にわたる対立遺伝子検定により、トマト突然変異dgとhp−2が対立遺伝子であることが示唆されており(Levinら、Theor.Appl.Genet.106,454−460,2003)、これはさらに、任意集団におけるそのような突然変異に、生長が劣る形質が連鎖していることも記載している。国際公開第03/057917号は、ある植物体においてdg突然変異が存在するかどうかを検出するためのある遺伝子マーカーの使用を開示している。
【0004】
国際公開第99/29866号は、HP−2遺伝子のクローニング及び塩基配列決定を開示している。HP−2遺伝子は、シロイヌナズナ核タンパク質DEETIOLATED1(DET1)のトマトホモログをコードしていることが分かっている。このhp−2の突然変異は、DET1の推定上の第2核移行シグナル内に位置する。
【0005】
このトマトdg突然変異体は、表現型の上では他のhp突然変異体に類似しているが、クロロフィル含量がより高いことに起因してずっと深い色の緑熟果実をつける。Levinら(Theor Appl Genet 106:454−460,2003)は、dg突然変異が、トマト第1染色体上に位置しており、またトマトDET1遺伝子として同定される、HP−2座での代替遺伝子座であることを示した。トマトDET1タンパク質のC末端に位置するhp−2突然変異と対照的に、dg突然変異はこのタンパク質のN末端に位置しており、したがってこのタンパク質の末端はどちらもその機能にとって重要であることが示唆された。
【0006】
hp及びdg突然変異体は、dg突然変異は別として相当する遺伝的背景を有する野生型植物体に比べて、より高いアントシアニンレベル、より短い胚軸、及び果実のより強い色素形成を示す(Wannら、J Am Soc Hort Sci 110:212−125,1985)。こうした突然変異体に見られる果実の色素形成の増大は、赤く熟した成熟果実中のフラボノイド及びカロテノイド、主としてリコペンのレベルが有意に上昇するためである。
【0007】
リコペンは、強力な抗酸化物質及び遊離基抑制物質(quencher)である。リコペンは、多数の果実に赤色を与える天然カロテノイドであり、トマト及びトマト由来の製品中に大量に見られる。リコペンは、肝組織、副腎組織、及び脂肪組織など様々な体組織、並びに前立腺中に濃縮されていることが分かっている。in vitro研究で、リコペンが50μM以上の濃度で乳癌、肺癌、及び子宮内膜癌の細胞増殖に対しては増殖抑制作用を、また前立腺癌の細胞増殖に対しては抑制作用を及ぼすことが示されている。in vitroでのこの抑制濃度が通常の生理的血漿中リコペン濃度をはるかに超えるというこの知見に生理的意義を帰すことがほとんどできないが、疫学研究では、リコペン摂取は、様々な種類の癌、特に前立腺癌のリスクの低下と関連付けられている。
【0008】
米国特許第5,827,900号は、リコペンが細胞の全活性を低下させるのに有効であることを開示しており、細胞活性を低下させるのに有効な量のリコペンを投与することにより癌細胞の増殖を抑制する方法を提供する。
【0009】
米国特許第6,555,134号は、リコペン及びニンニクを含有する、相乗作用のある薬剤組成物又は食物組成物を記載しており、リコペンが、一重項酸素を抑制するのに非常に有効であり、LDLの酸化的修飾に対する保護作用を有し、したがってアテローム性動脈硬化症の予防又は治療に有効であることを開示する。
【0010】
米国特許第6,482,447号は、数ある植物体抽出物の中でもリコペンを含む組成物が、良性前立腺肥大(BPH)及び前立腺癌を含めた様々な病態及び疾患を治療するのに有用であることを示す。リコペンの抗酸化活性により、遊離酸素基が減少し、したがってBPHが軽減されて前立腺癌が予防される。
【0011】
リコペンに富んだ生鮮食品及び補助食品が非常に望ましいので、hp及びdg突然変異体を有するトマト収穫物は、農産業で直接適用される。dg突然変異を有する植物体の方が多い量のリコペンを産生するので、hp突然変異を有する植物体よりも有利である。しかし、このような品種はこれまで、望ましくない多面発現形質がdg突然変異と連鎖しているため商業規模で利用可能でなかった(Sacks E.K.及びFrancis,D.M.、2001.J Amer Hort Sci 126(2):221−226)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、dg突然変異がホモ接合であり、したがってリコペン量が多い果実を産生するが、任意の品種においてこの突然変異に伴う望ましくない多面発現形質がないトマト品種が非常に必要であり、それを有すれば極めて有利なはずである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、生鮮果実市場並びにトマト加工産業向けの高リコペン果実を産生する耐寒性トマト品種に関する。具体的には、本発明は、dg突然変異がホモ接合であり、現在市販されている品種の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実を産生するが、dg突然変異に通常連鎖している望ましくない形質がない耐寒性トマト品種に関する。本発明はさらに、本発明の品種の種子、その種子から生育した植物体、その子孫、その植物体によって産生された果実、それに由来する植物体の部分、及びこうした品種を作出する方法に関する。本発明はまた、本発明の品種によって産生された高リコペントマト果実から得られる製品に関する。
【0014】
一態様によれば、本発明は、生鮮食品並びに産業市場向けの高リコペントマト品種を提供する。
【0015】
一実施形態によれば、本発明は、dg突然変異がホモ接合であるトマト種子を提供するものであり、この種子から生育した植物体は、現在入手可能な収穫物の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実収穫物を産生するが、dg突然変異に伴う有害形質がない。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲において、多面発現形質とも定義される、dg突然変異に伴う有害形質には、とりわけ、低い発芽率、浅い根系、脆い茎、薄い且つ/又は脆弱な葉、早期落葉、低い収量、並びに小さい果実が含まれる。
【0017】
一実施形態によれば、本発明のトマト種子から生育した植物体は、安定な親植物体系統である。
【0018】
別の実施形態によれば、本発明のトマト種子から生育した植物体は、F雑種植物体品種である。本発明の範囲内では、雑種品種という用語は、dg突然変異がホモ接合であるが、低い発芽率、浅い根系、脆い茎、薄い且つ/又は脆弱な葉、早期落葉、低い収量、並びに小さい果実といった形質を欠く、強健などんな雑種品種も包含する。有利には、雑種品種はさらに、それだけには限らないが、病害抵抗性及び様々な種類のストレス耐性を含めて、当技術分野で周知の有益な農業形質を含むことができる。本発明による代表的な雑種種子及び植物体品種には、HA3512、HA3513、HA3518、及びHA3519と称される品種が含まれる。本発明のF雑種品種は、その植物体の生長力、並びに様々な病害に対する圃場抵抗性及びより高い収量を含めた、商業規模での生育用への適合性が親系統より優れている。本発明の品種は、non−GMO(非遺伝子組み換え作物)であることが好ましいが、形質転換による形質の付加又は欠失が本発明の範囲内に明確に包含されることも理解されたい。
【0019】
現在好ましい一実施形態によれば、本発明は、HA3518と称されるトマト雑種種子を提供する。そのうちの標品となる種子が2004年1月29日にAmerican Type Culture Collection Association(米国基準菌株保存機構)に寄託されている(受託番号利用不可)雑種HA3518は、本発明の品種の一例となるものであり、この種子から生育した植物体は、dg突然変異がホモ接合であり、現在入手可能な収穫物の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実収穫物を産生し、dgに連鎖した有害作用がない。
【0020】
別の実施形態によれば、本発明は、現在入手可能な収穫物の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実収穫物を産生するトマト植物体及びその部分を提供するものであり、この植物体は、dg突然変異がホモ接合であるが、dgに連鎖した有害形質がない。
【0021】
一実施形態によれば、本発明は、雑種品種HA3512、HA3513、HA3518、及びHA3519の種子から生育したトマト植物体を提供する。
【0022】
こうしたトマト植物体由来の花粉及び胚珠;それから産生された種子及びその種子から生育した植物体;本発明の植物体から再生された組織培養物から再生された植物体;並びに本発明のトマト植物体のあらゆる生理的及び形態的形質を有する植物体又はその部分も本発明の範囲内に包含される。
【0023】
一実施形態によれば、本発明は、本発明のトマト植物体から再生された組織培養物を提供するものであり、この組織培養物は、葉、花粉、胚、根、根端、葯、花、果実、及び種子からなる群から選択される組織由来の細胞又はプロトプラストを含む。
【0024】
一実施形態によれば、収穫物中の平均リコペン含量は、少なくとも200ppmである。こうした値は、成熟期、栽培条件、使用する測定方法、及び付加的要因によって大きく変わることを理解されたい。200ppmという値は、そのリコペン最大産生時の、すなわちストレスなしの栽培によって得られる赤く熟したトマトからなる収穫物の平均含量を測定することによって得られた平均値である。これまで、このような高リコペン含量は、単一植物体の果実中に散在的にしか見られない。本発明の新規の品種は、商業的栽培用に適合された親系統又は雑種を含めて、商業規模の収穫物を産生し、この収穫物中の平均リコペン含量は少なくとも200ppmである。
【0025】
別の実施形態によれば、本発明の雑種品種は、とりわけ、低い発芽率、浅い根系、脆い茎、薄い且つ/又は脆弱な葉、早期落葉、低い収量、並びに小さい果実を含めた、dg突然変異に伴う有害形質がない。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、高リコペントマト果実を提供する。この果実は、生鮮食品として市場に出すことができ、或いは高リコペントマト加工製品用、及び精製リコペン用の供給源となることができる。
【0027】
一実施形態によれば、この果実の平均リコペン含量は、市販の他の果実と比べて少なくとも2倍である。
【0028】
現在好ましい一実施形態によれば、この果実の平均リコペン含量は、少なくとも200ppm±平均値の標準誤差である。
【0029】
別の態様によれば、本発明は、トマト一代(F)雑種種子を産生する方法を提供する。
【0030】
一実施形態によれば、本発明は、一代雑種種子を産生する方法を提供するものであり、この方法は、第1のトマト親植物体を第2のトマト親植物体と交配するステップと、得られたF雑種種子を収穫するステップとを含み、この第1及び第2の親植物体は、dg突然変異がホモ接合であるが、dg突然変異に連鎖している有害作用がない。
【0031】
別の実施形態によれば、本発明はまた、上記の方法によって産生されたトマト雑種種子を生育させることによって作出されるトマト一代F雑種植物体、このトマト雑種植物体において収穫された種子、及びこうした種子から生育した植物体を提供する。dg突然変異がホモ接合であり、現在入手可能な収穫物の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実収穫物を産生するが、本発明によるdg突然変異に伴う有害形質がないトマト品種をその系統内に有するトマト植物体も本発明の範囲内に含まれる。
【0032】
一実施形態によれば、本発明は、雑種HA3512、雑種HA3513、雑種HA3518、及び雑種HA3519からなる群から選択されるトマト品種をその系統内に有するトマト植物体を包含する。雑種HA3518は、本発明を教示するものの一例となり、その種子の標品は2004年1月29日にATCCに寄託された。
【0033】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、F〜Fの育種系統の子孫及びその戻し交雑を含めた本発明の品種を使用してトマト植物体を作出する方法を提供する。
【0034】
一実施形態によれば、本発明は、本発明によるトマト雑種品種に由来するトマト植物体を作出する方法を提供するものであり、この方法は、
a)本発明によるdg突然変異がホモ接合の雑種植物体である第1の植物体を第2のトマト植物体と交配して、第1の子孫種子を産生させるステップと、
b)適当な植物体生育条件下で第1の子孫種子を生育させて、第1の雑種植物体のFトマト植物体を産生させるステップと、場合によっては
c)ステップ(b)で得られた植物体をそれ自体又は第3のトマト植物体と交配して、前記第1の雑種植物体由来の第2の子孫種子を産生させるステップと、
d)適当な植物体生育条件下で第2の子孫種子を生育させて、前記第1の雑種植物体由来の追加のトマト植物体を産生させるステップと、さらに場合によっては
e)交配及び生育させるステップを1〜5回以上反復して、前記第1の雑種植物体由来のさらなるトマト植物体を作出するステップとを含む。
【0035】
一実施形態によれば、上記の方法で第1の植物体として使用するトマト雑種品種は、雑種HA3512、HA3513、HA3518、及びHA3519からなる群から選択され、こうした雑種は一般に、そのうちの標品となる種子が2004年1月29日にATCCに寄託されている(受託番号利用不可)雑種HA3518と同等のものである。
【0036】
別の実施形態によれば、本発明は、上記の方法によって作出された、本発明によるdgホモ接合植物体に由来する植物体を提供する。
【0037】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、本発明によるdg突然変異がホモ接合である強健なトマト雑種植物体を提供するものであり、この植物体若しくは子孫又はその部分は、その遺伝物質が、1種又は複数の調節エレメントに作動可能に連結した1種又は複数の導入遺伝子を含むように形質転換されている。形質転換された雑種植物体から作出されたトマト植物体又はその部分も本発明の範囲内に包含される。一実施形態によれば、形質転換された1種又は複数の遺伝子は、除草剤耐性、昆虫抵抗性、細菌性病害、真菌性病害又はウイルス性病害に対する抵抗性、雄性不稔、及び改善された栄養価からなる群から選択される形質を与える。
【0038】
別の態様によれば、本発明は、その品種から生育したトマトが、最大リコペン含量時に測定すると現在入手可能な品種の少なくとも2倍の平均リコペン含量を有するが、dg突然変異に伴う有害形質がない、dg突然変異がホモ接合である強健なトマト品種を選抜する方法を提供するものであり、この方法は、dg突然変異に特異的なDNAプローブを使用することによりdg突然変異が存在するかどうかを判定するステップを含む。適当なプローブには、それだけには限らないが国際公開第03/057917号で開示されているプローブが含まれる。
【0039】
本発明を図面及び特許請求の範囲でより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、市場の要求に応じるための優れた商用栽培品種の継続する必要性に関する。このような要求は、農業形質がより良好であり、収穫量がより高く、栄養価が改善され、また外観が改善された栽培品種などを含めた、幅広い対象範囲を包含する。
【0041】
具体的には、本発明は、高リコペン果実を産生するトマト栽培品種に関する。このような果実は、生鮮トマト市場並びにトマト加工産業において、また精製リコペン用の供給源として非常に望ましい。
【0042】
本発明は、dark green(dg)突然変異がホモ接合であるトマト品種を提供する。本明細書の上記のように、dg突然変異を有するトマト植物体は、成熟するとリコペン含量が高いため暗赤色になる、その濃緑色果実によって特徴付けられる。dg突然変異を有するトマト植物体、さらにはdg突然変異がホモ接合である植物体についてこれまで記載したが、望ましくない農業形質を含めた、この突然変異の多面発現作用により、育種計画における高色素のdg遺伝子の使用が妨げられる。本発明は今回、dgがホモ接合である新規の耐寒性トマト雑種品種を開示するものであり、この品種は、非常に高いリコペン含量を含むが、dg突然変異に伴う望ましくない多面発現効果がない。
【0043】
優れた商用トマト品種の開発には、相当な育種努力、特に、dg遺伝子座とそれに伴う有害遺伝子との連鎖を切断するのに必要とされるものが必要である。研究者らが以前この連鎖を切断するのが困難だったため、この繋がりをこれまで多面発現効果と記載していた。選択される育種方法又は選抜方法は、植物生殖の形態、改善される1種(複数)の形質の遺伝率、及び商業用に開発される栽培品種(すなわち品種)(例えば、F雑種又は放任受粉品種)に依存する。遺伝が複雑であることは、育種方法の選択に影響を与える。優れた植物体を同定する簡単な一方法は、他の実験植物体又は広範囲で生育された標準栽培品種と比較してその性能を観察すること、及び他の植物体との雑種組合せにおいてその性能を観察することである。明確さを確証するのに単独の観察では決定的でないなら、複数の場所及び季節における観察により、その遺伝的価値のより良好な評価が得られる。適切な検定及び評価により、任意の大きな欠点を検出し、また現在の栽培品種に勝る優位性又は改善のレベルを確証すべきである。
【0044】
商用トマト雑種の開発には、ホモ接合の安定な親系統の開発が必要である。育種計画では、2種以上の生殖質供給源又は遺伝子プールに由来する望ましい形質を組み合わせて、優れた育種品種が開発される。選抜過程を速めるために分子マーカーを利用することもあるが、継続的な自殖及び最良の育種系統の選抜により、望ましい近交系又は親系統が開発される。
【0045】
雑種に最良の性能をもたらす親系統が同定されていると、親の均質性及びホモ接合性が維持される限り、その雑種種子を無制限に産生することができる。2つの親系統を交配してF子孫を産生すると、単交雑雑種が作出される。F雑種が示す雑種生長力はほとんど次世代(F)で失われる。したがって、雑種品種から収穫された種子は苗木用に使用される。
【0046】
一実施形態によれば、本発明は、dg突然変異がホモ接合であるトマト種子を提供するものであり、この種子から生育した植物体は、現在入手可能な収穫物の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実収穫物を産生するが、dg突然変異に伴う有害形質がない。この有害形質には、とりわけ、低い発芽率、浅い根系、脆い茎、薄い且つ/又は脆弱な葉、早期落葉、低い収量、並びに小さい果実が含まれる。
【0047】
一実施形態によれば、本発明のトマト種子から生育した植物体は、安定な親植物系統である。
【0048】
別の実施形態によれば、本発明のトマト種子から生育した植物体は、F雑種品種である。
【0049】
本明細書で定義される通り、安定な親系統とは、自家受粉及び植付けのサイクルにわたり、所望の植物体にとって安定な、放任受粉した近交系を表す。本発明の安定な親系統は、dg突然変異を有する植物体(トマト(L.esculentum)栽培品種Manapalのdg突然変異体)と、本発明の出願者であるHazera Genetics Ltd.が特許権をもつ貴重な育種材料に由来する生殖質の混合物との交配によって開発された。選抜方法は以下のステップを含むものであった。
【0050】
ステップ1:上記の交配によって生じたF集団を自家交配して、理論的には4分の1はdg突然変異がホモ接合である様々なF集団を得た。
【0051】
ステップ2:F子孫を、500nmでの光スペクトルの透過率は省略するが、26℃、湿度80%、黄色プラスチックスクリーン下で光の強度90%の恒温生育チャンバー内で発芽させた。この光は、dg突然変異に伴う光形態形成の表現型を増強し、したがって生育3日後、dgがホモ接合である実生を容易に選抜することができた(図1)。この光形態形成の表現型には、短くて濃緑色の茎が含まれる。
【0052】
ステップ3:冬(Mivhor Farm、南イスラエル、最低温度15℃)の温室内での水栽培によるさらなる生育のため、dg/dgと予想される実生を選んだ。生長期の間に側枝を取り除いて、多面発現効果(脆い茎、脆弱な葉、浅い根系、小さい果実、及び低い収量を含む)を増強する。植物体を自家受粉のため放置し、最少の多面発現効果を示した植物体から種子(F)を回収した。本明細書で以下に例示するように、特異的PCRマーカーを使用して、選抜した植物体の遺伝子型内にdg突然変異が存在するかどうか確認した。
【0053】
ステップ4:上記のステップ3に記載の通り選抜された各植物体から得られた20個のF種子を恒温生育チャンバー内で(黄色プラスチックスクリーン下で光の強度90%、26℃、湿度80%で)蒔いた。節が短くて葉が濃緑色の実生を選抜し、夏に露地に植え付け、果実が完熟するまで自家受粉のため放置した。各20の植物体からなる群を特異的な育種系統に指定し、この育種系統をさらなる選抜に供した。
【0054】
ステップ5:以下の連続するステップによりさらなる選抜を実施した。
a)各育種系統をリコペン含量、根系の量、生長力、果実のサイズ及び収量、葉の外観及び健康状態、並びに全可溶性固形物含量(TSS/BRIX)を含めた、平均性能について試験した。後続の分析用に、最高の結果を示した育種系統を選抜した。
b)上記のパラメータを、選抜された育種系統内の個々の植物体について試験した。各群の最良の植物体を自家受粉のため放置し、種子(F)を回収した。
c)このF種子を、26℃、湿度80%、光の強度90%の恒温生育チャンバー内で黄色プラスチックスクリーン下で発芽させた。後続の分析用に、その表現型の出現によってdgがホモ接合であると同定された実生を選んだ。その実生からゲノムDNAを抽出し、dg特異的PCRマーカーを使用してdg突然変異が存在するかどうか確認した。
【0055】
ステップ5(c)の後に選抜された実生は、dgがホモ接合であり、したがって、高リコペン含量を含むが、dgに連鎖した低い有害作用を示す果実を産生した。優れた商用品種を得るために、上記の通り、こうしたF植物を再び商業的に価値のある育種材料の混合物と交配し、ステップ1〜5を繰り返した。最良の性能を示した植物体(仮の親品種)を選抜し、交配して実験F雑種を得た。夏にイスラエルの2つの異なる場所でこの実験F雑種を以下のパラメータに従って2連で試験した。
本明細書で下記の通り分光光度計によって測定されるリコペン含量
トン/1000mで測定される果実収量
硬度、形状、テクスチャ(繊維質及び膨らみを含む)、及び味に従ってスコア付けされる、果実の質
本明細書で下記の通り測定される可溶性固形物含量(Brix)
生長力、様々な病害に対する植物体の抵抗性、ストレスに対する植物体の耐性、葉の健康状態及び密度、成熟の統一性、及び成熟時の果実の質に従ってスコア付けされる、植物体の質。
【0056】
最良の性能を示したF植物体(すなわち、どんな多面発現効果を示すこともなく、少なくとも200ppmのリコペンを含む果実を産生する植物体)を同定した。別の一連の選抜用に、こうしたF1雑種が作出される仮の親系統を選んだ。選抜された育種系統内で最良のスコアが得られた植物体を本発明の安定な親系統であると同定した。この親系統は、あらゆる形質について均一性及び安定性を示した。ホモ接合性及び表現型の安定性を確実にするために草型の均一性に十分注意を払いながら、これらの系統を十分な数の世代にわたり自家受粉し植え付けた。安定化したこうした親植物体系統を使用して、本発明のトマト雑種種子を産生し、またその植物体を作出した。200ppmのリコペン含量は、ある種の作物の平均値であり、様々な生育状況、気象条件、果実の成熟期などの内因性変化によって変わる可能性があることを理解されたい。
【0057】
一実施形態によれば、本発明の種子及び植物体は、HA3512、HA3513、HA3518、及びHA3519と称されるF雑種品種である。本発明のF雑種品種は、その植物の生長力及び商業規模での生育への適合性が、安定化した親系統より優れている。
【0058】
現在好ましい一実施形態によれば、本発明は、HA3518と称されるトマト雑種種子を提供する。そのうちの標品となる種子が2004年1月29日にATCCに寄託された(受託番号利用不可)雑種HA3518は、本発明の雑種の一例となるものであり、この種子から生育した植物体は、dg突然変異がホモ接合であり、現在入手可能な収穫物の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実収穫物を産生し、dgに伴う望ましくない多面発現形質がない。
【0059】
別の態様によれば、本発明は、トマト一代(F)雑種種子を産生する方法を提供する。
【0060】
一実施形態によれば、本発明は、一代雑種種子を産生する方法を提供するものであり、この方法は、第1の安定なトマト親植物体を第2の安定なトマト親植物体と交配するステップと、得られたF雑種種子を収穫するステップとを含み、この第1及び第2の安定化された親植物体は、dg突然変異がホモ接合であるが、dg突然変異に伴う有害作用がない。
【0061】
別の実施形態によれば、本発明はまた、上記の方法によって産生されたトマト雑種種子を生育させることによって作出されるトマト一代F雑種植物体を提供する。本明細書で以下に例示するように、得られたF雑種植物体を異なる生育季節に異なる場所で生育した。試験されるあらゆる生育条件において、本発明の高リコペンF植物体は、商用品種の少なくとも2倍のリコペン含量を有する果実を産生するが、既知の商用トマト品種と少なくとも同じ質である。
【0062】
本発明はまた、このトマトF雑種植物体において収穫された種子、及びこうした種子から生育した植物体に関する。植物体育種における慣行は、戻し交配の方法を使用して、単一形質の転換によって新品種を開発することである。本明細書では、単一形質の転換という用語は、新たな単一遺伝子を親系統に組み込み、導入される単一遺伝子に加えて、本質的に親系統の所望のあらゆる形態的及び生理的形質が取り戻されることを表す。本明細書では、戻し交配という用語は、雑種子孫をトマト親植物体の一方と繰り返し交配することを表す。所望の形質をコードする遺伝子を与えるトマト親植物体を非反復親又は供与親と称する。この用語は、戻し交配プロトコールにおいて非反復親を1回使用し、したがって反復しないという事実を表す。非反復親由来の1種又は複数の遺伝子を導入するトマト親植物体は、戻し交配プロトコールにおいて数回にわたり使用するので反復親として知られている。典型的な戻し交配プロトコールでは、対象の本来の品種由来の植物体(反復親)を、導入される対象の単一遺伝子を有する第2の品種から選択される植物体(非反復親)と交配する。次いで、この交配によって得られた子孫を再び反復親と交配し、非反復親由来の導入される単一遺伝子に加えて、本質的に反復親の所望のあらゆる形態的及び生理的形質が、転換された植物体において取り戻されるトマト植物体が得られるまでこの過程を繰り返す。戻し交配の方法を本発明と共に使用して、ある形質を改善する又は親系統に導入することができる。
【0063】
dg突然変異がホモ接合であり、現在入手可能な収穫物の少なくとも2倍の平均リコペン含量を含む果実収穫物を産生するが、本発明によるdg突然変異に伴う望ましくない多面発現形質がないトマト雑種をその系統内に有するトマト植物体も本発明の範囲内に含まれる。
【0064】
本発明は、安定化された親植物体の、又は雑種植物体の、花粉、胚珠、及びこうした植物体から再生された組織培養物を含めたどんな部分も包含される。花粉及び胚珠は通常、また本発明により記載される通り、育種計画において使用される。当技術分野で周知の、トマト植物体のin vitro再生のために、トマトの組織培養物を使用することができる。
【0065】
別の態様によれば、本発明は、高リコペントマト果実を提供する。この果実は、生鮮食品として市場に出すことができ、或いは高リコペントマト加工製品用、及び精製リコペン用の供給源となることができる。1年中供給が可能なトマト新品種が開発されており、また果実の栄養上の一般的な利点に対する認識が高まっているため、トマト及びトマト製品の消費は絶えず増加している。トマト及びトマト製品を頻繁且つ定期的に消費すると、癌、並びに心臓及び循環障害を含めた慢性疾患のリスクを低下させる上で有益な効果があることを示した疫学研究により、トマト、特により高いレベルのリコペンを含むトマト果実に対する需要がさらに増加している。精製リコペンの天然着色料、さらには栄養補助食品としての需要もここ10年の間に急激に増加している。したがって、本発明の植物体によって産生された高リコペン果実は特に、上記の要求を満たすのに適している。
【0066】
一実施形態によれば、この果実の平均リコペン含量は、市販の他の果実と比べて少なくとも2倍である。現在好ましい一実施形態によれば、この果実の平均リコペン含量は、少なくとも200ppmである。
【0067】
本発明の新規の態様は、商業規模で果実を産生する植物体を提供するものであり、この果実収穫物中の平均リコペン含量は、他の商用品種によって産生された果実収穫物中に見られるリコペン含量の少なくとも2倍である。dg突然変異がホモ接合であるトマト植物体は以前に開示された。成熟に達し、高リコペン量を含む果実を産生するために、このような植物体は、独特の好ましい条件下で、すなわち通常、制御された温室又は生育チャンバー内で生育されるべきであったが、各植物体においてほんのわずかな果実しか得ることができなかった。dg突然変異を商業的に価値のある品種に組み込む試みも行われたが、知る限りでは、他の商用品種に少なくとも匹敵する園芸上の性能を有するが、通常少なくとも平均200ppm±平均値の標準誤差の高リコペン量を産生する商用トマト品種を提供するのは、本発明が最初である。
【0068】
本発明の原理は、以下の非限定的な実施例を参照すればよりよく理解されよう。
【実施例】
【0069】
リコペン含量の測定
リコペン含量は、当分野の技術者に知られている様々な技法によって測定することができる。通常、赤く熟した新鮮果実の果皮組織からリコペンを抽出した。全収穫物を代表するような果実の試料を抽出した。果皮組織試料を細分して、ミキサーでピューレ状にした。n−ヘキサン:イソプロパノール:アセトン(2:1:1)からなる抽出緩衝液を用いてリコペンを抽出した。NaCl 0.1Mを十分な量添加することにより相分離を達成した。上部の有機相を分析のために回収した。リコペン濃度を、3450のE1%を使用したその472nmでの吸光度によって計算した。
【0070】
全可溶性固形物濃度(BRIX)の測定
成熟トマトの果汁中の可溶性固形物濃度を測定した。屈折計(タムコ、日本国)に数滴を置き、そのBRIX値を読み取った。
【0071】
(実施例1)
雑種HA3518の作出
その種子が2004年1月29日にATCCに寄託された雑種HA3518は、本発明を教示するものの一例となる。
【0072】
本明細書における上記のステップ1〜5に従って得られた実生は、HA3518雑種の産生用の供給源となった。dg突然変異が安定化された系統を親系統として選抜した。dgプローブを使用したPCR反応により、また表現型への突然変異の作用によりdg突然変異が存在するかどうかを確認した。この親植物体は、根系が発達し葉が健康である通常の生育パターンを示し、200ppmを超えるリコペン含量を含む果実を産生した。こうした系統及び商業的に価値のある他の材料を使用して、300個のF雑種を作出した。2001年の夏にイスラエルの2つの異なる場所、すなわちMivhor farm(南イスラエル)及びRamat−David(北イスラエル)でこのF雑種を植え付けた(各雑種について2連で)。自家受粉用に植物体を成熟するまで放置し、果実のリコペン含量を測定した。高リコペン含量(200ppmを超える)及び正常な生育パターンを含む雑種が8個見出された。十分な数の世代にわたりこうした8個の選抜された雑種の親系統を自家受粉し植え付けて、dg突然変異がホモ接合であるが、低い発芽率、浅い根系、脆い茎、薄い且つ/又は脆弱な葉、小さい果実、並びに低い収量のものではない安定化した親植物体を得た。次いで、安定な親系統を使用して8個の雑種を再び作出し、雑種HA3518が代表的な一例となった。2002年の異なる植付け日にイスラエルの10の異なる場所でこの雑種を植え付けた。実生を機械で植え付けた。生育状況は、異なる場所で商用品種に共通のものであり、果実の収穫も、商用品種について知られている通り機械で実施した。果実の収穫率はKg/mとして測定した。平均リコペン含量が204ppmであった雑種HA3518の平均収穫率は、少なくとも9Kg/mであった。この平均リコペン含量は、試験された全ての場所、したがってその土地の好ましくない生育条件及びストレスのために生育が妨げられた区画も含めた場所で収穫されたものから得られた。測定された最高のリコペン含量は270ppmであり、得られた最高収穫率は12.7Kg/mであった。このHA3518雑種が作出された安定な親系統をさらに自家受粉し、園芸上の測度に関して最良の性能を示した植物体について選抜した。安定化された新たな親を使用して、そのうちの標品となる種子が2004年1月29日にATCCに寄託された、第二代の雑種HA3518を作出した。
【0073】
2003年に、下記の表1に記載の約4301000mにわたる13の異なる場所でHA3518雑種を植え付けた。成熟果実を収穫し、表1に記載の通り、収穫物の重さを量り、平均リコペン含量を測定した。この大規模な試験は、その土地の天災及び次善の生育状況を含めた様々な生育条件を示す。それにもかかわらず、試験された全区画から得られた平均収穫率は、商業的に許容され、235ppmの平均リコペン含量は有意に高い。図1は、ある場所(北イスラエルAkko)で得られた様々な商用品種及び雑種HA3518の果実収穫率の比較を示す。雑種HA3518の平均収穫率は、商用品種として平均以上の収穫率と考えられる10.8Kg/mであった。
【0074】
(実施例2)
商用品種と比較した新規の雑種のリコペン含量
一般的な商用品種「Brigade」及び「HA3303」、並びに本発明の新品種、雑種HA3512、HA3513、及びHA3518をイスラエルRamat Hagolanに植え付けた。この植物体を果実が成熟するまで商用品種について知られている通常の生育状況下で生育した。各品種を少なくとも4連で植え付けた。2002年8月に果実を収穫した。以下のパラメータ、BRIX、pH、リコペン濃度、及び試料の平均質量を測定した。下記の表2(生データ)及び表3(要約)はその結果を要約したものである。
【0075】
表2:新規トマト品種対一般的なトマト品種におけるリコペン含量−生データ
【表1】

【0076】
表3:新規トマト品種対一般的なトマト品種におけるリコペン含量−平均
【表2】

【0077】
上記の表2は、本発明の新たな高リコペン雑種は、全可溶性固形物及びリコペン含量が商用品種に比べて有意に高い果実を産生するので、試験された一般的な商用品種よりも優れていることを明確に示す。本実施例によるリコペン含量は、2.5倍である。
【0078】
(実施例3)
dg突然変異の遺伝子型の同定
dg突然変異の遺伝子座に隣接するトマトDET1ゲノムDNA断片を増幅するのに使用するPCRプライマーは、5’−TTC TTC GGA TTG TCC ATG GT−3’及び5’CAC CAA TGC TAT GTG CCA AA−3’であった。
【0079】
この増幅反応(最終量25μl)は、10ngの鋳型DNA、25mMのTAPS(pH=9.3、25℃)、50mMのKCl、2mMのMgCl、1mMのB−メルカプトエタノール、各0.2mMの4種のデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)、各10ngの2種のプライマー、及び1ユニットの耐熱性Taq DNAポリメラーゼ(SuperNova Taq polymerase、Madi Ltd.、イスラエルRishon Le Zion)を用いて実施した。自動サーマルサイクラー(MJ Research Inc.、米国マサチューセッツ州Watertown)において反応を実施した。最初に94℃で1分間インキュベートし、続いて94℃で1分間の変性と、55℃で1分間のアニーリングと、前記のサイクルが完了した後での72℃で3分間の重合とを34サイクル実施した。このPCR増幅産物を、1.0%アガロースゲル中の電気泳動によって視覚化し、臭化エチジウムでの染色によって検出した。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】dg突然変異がホモ接合であり、突然変異に伴う多面発現効果がある(A)、又はない(B)トマト植物体を示す図である。
【図2】雑種HA3518及び市販の他の雑種について得られた果実収穫率の平均の比較を示す図である。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
dg突然変異がホモ接合である強健なトマト品種であって、この品種から生育させたトマトが、最大リコペン含量時に測定すると現在入手可能な品種の少なくとも2倍の平均リコペン含量を有するが、dg突然変異に伴う有害形質がないトマト品種。
【請求項2】
安定な親系統である、請求項1に記載の品種。
【請求項3】
雑種である、請求項1に記載の品種。
【請求項4】
果実収穫物中の平均リコペン含量が、少なくとも200ppm±平均値の標準誤差である、請求項1に記載の品種。
【請求項5】
低い発芽率、浅い根系、脆い茎、薄い且つ/又は脆弱な葉、早期落葉、低い収量、並びに小さい果実からなる群から選択される、dgに連鎖した有害形質がない、請求項1から3までのいずれか一項に記載の品種。
【請求項6】
HA3512、HA3513、HA3518、及びHA3519と称される雑種からなる群から選択される、請求項3に記載の品種。
【請求項7】
その品種の種子の試料がAmerican Type Culture Collectionに寄託されているHA3518と称される、請求項6に記載の品種。
【請求項8】
dg突然変異がホモ接合である強健なトマト品種の種子であって、この品種から生育させたトマトが、最大リコペン含量時に測定すると現在入手可能な品種の少なくとも2倍の平均リコペン含量を有するが、dg突然変異に伴う有害形質がない種子。
【請求項9】
前記品種が安定な親系統である、請求項8に記載の種子。
【請求項10】
前記品種が雑種である、請求項8に記載の種子。
【請求項11】
果実収穫物中の平均リコペン含量が、少なくとも200ppm±平均値の標準誤差である、請求項8に記載の種子。
【請求項12】
低い発芽率、浅い根系、脆い茎、薄い且つ/又は脆弱な葉、早期落葉、低い収量、並びに小さい果実からなる群から選択される、dgに連鎖した有害形質がない、請求項8から11までのいずれか一項に記載の種子。
【請求項13】
HA3512、HA3513、HA3518、及びHA3519と称される雑種からなる群から選択される、請求項10に記載の種子。
【請求項14】
その品種の種子の試料がAmerican Type Culture Collectionに寄託されているHA3518と称される、請求項13に記載の種子。
【請求項15】
請求項8から14までのいずれか一項に記載の種子を生育させることによって作出したトマト植物体又はその部分。
【請求項16】
請求項15に記載の植物体の花粉。
【請求項17】
請求項15に記載の植物体の胚珠。
【請求項18】
除草剤耐性、昆虫抵抗性、細菌性病害、真菌性病害又はウイルス性病害に対する抵抗性、雄性不稔、及び改善された栄養価からなる群から選択される追加の形質をさらに含む、請求項15に記載の植物体。
【請求項19】
少なくとも1種類の病害抵抗性及び少なくとも1種類のストレス耐性から選択される追加の形質をさらに含む、請求項15に記載の植物体。
【請求項20】
遺伝的形質転換によって導入された追加の形質をさらに含む、請求項15に記載の植物体。
【請求項21】
遺伝的形質転換によって導入された追加の形質をさらに含む、請求項18に記載の植物体。
【請求項22】
そのゲノム物質が、1種又は複数の調節エレメントに作動可能に連結した1種又は複数の導入遺伝子を含むように形質転換されている、請求項15に記載のトマト植物体又はその部分。
【請求項23】
そのゲノム物質が、1種又は複数の調節エレメントに作動可能に連結した1種又は複数の導入遺伝子を含むように形質転換されている、請求項18に記載のトマト植物体又はその部分。
【請求項24】
請求項15に記載のトマト植物体の再生可能な細胞の組織培養物。
【請求項25】
葉、花粉、胚、根、根端、葯、花、果実、及び種子からなる群から選択される組織由来の細胞又はプロトプラストを含む、請求項24に記載の組織培養物。
【請求項26】
前記組織が雑種HA3518のあらゆる形態的及び生理的形質を発現することができる植物体を再生させる、請求項24に記載の再生可能な細胞の組織培養物。
【請求項27】
雑種HA3518のあらゆる形態的及び生理的形質を発現することができる、請求項24に記載の組織培養物から再生されたトマト植物体。
【請求項28】
トマト雑種種子を産生する方法であって、第1のトマト親植物体を第2のトマト親植物体と交配するステップと、得られたF雑種種子を収穫するステップとを含み、第1又は第2のトマト親植物体のうちの少なくとも一方が請求項2に記載の品種である方法。
【請求項29】
請求項25に記載の方法によって産生されたトマト雑種種子。
【請求項30】
請求項29に記載のトマト雑種種子を生育させることによって作出されたトマト雑種植物体又はその部分。
【請求項31】
請求項30に記載のトマト雑種植物体を生育させることによって産生されたトマト種子。
【請求項32】
請求項3に記載のトマト雑種品種に由来するトマト植物体を作出する方法であって、
a.本発明によるdg突然変異がホモ接合の雑種植物体である第1の植物体を第2のトマト植物体と交配して、第1の子孫種子を産生させるステップと、
b.適当な植物体生育条件下で第1の子孫種子を生育させて、第1の雑種植物体のFトマト植物体を産生させるステップと、場合によっては
c.ステップ(b)で得られた植物体をそれ自体又は第3のトマト植物体と交配して、前記第1の雑種植物体由来の第2の子孫種子を産生させるステップと、
d.適当な植物体生育条件下で第2の子孫種子を生育させて、前記第1の雑種植物体由来の追加のトマト植物体を産生させるステップと、さらに場合によっては
e.交配及び生育させるステップを1〜5回以上反復して、前記第1の雑種植物体由来のさらなるトマト植物体を作出するステップとを含む方法。
【請求項33】
前記雑種品種が、HA3512、HA3513、HA3518、及びHA3519と称される雑種から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記雑種品種がHA3518である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
その遺伝物質中に少なくとも1種の導入遺伝子を含むトマト植物体を作出する方法であって、その交配から生じた子孫の遺伝物質が、調節エレメントに作動可能に連結した少なくとも1種の導入遺伝子を含むように、請求項20に記載のトマト植物体を、別のトマト品種である第2の植物体又は請求項1に記載の非形質転換トマト植物体のいずれかと交配するステップを含む方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法によって作出されたトマト植物体又はその部分。
【請求項37】
単一形質の転換をさらに含む、請求項15に記載のトマト植物体。
【請求項38】
単一形質が、除草剤耐性、昆虫抵抗性、細菌性病害、真菌性病害又はウイルス性病害に対する抵抗性、雄性不稔、及び改善された栄養価からなる群から選択される形質を与える、請求項37に記載のトマト植物体。

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−521809(P2007−521809A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550481(P2006−550481)
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000087
【国際公開番号】WO2005/072515
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506260478)ヘゼラ ジェネティクス リミテッド (2)
【出願人】(505061931)ライコレッド ナチュラル プロダクツ インダストリーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】