説明

高公称電圧を有する電解質キャパシタを製造する方法

【課題】高公称電圧を有する低い等価直列抵抗および低い残留電流の固体電解質キャパシタを製造する方法の提供
【解決手段】a)電極材料の多孔性電極本体(2)が、この電極材料の表面を覆う誘電体(3)を形成するために陽極酸化を受けるステップと、
b)電極材料の多孔性電極本体(2)および誘電体(3)を少なくとも含有する多孔性本体の上に、導電性ポリマーの粒子B)および分散剤D)を少なくとも含有する分散液A)が適用されるステップと、
c)誘電体表面を完全にまたは部分的に覆う固体電解質(4)を形成するために、分散剤D)が少なくとも部分的に除去および/または硬化されるステップを少なくとも備え、
多孔性電極本体(2)の陽極処理酸化中に最大陽極処理電圧が30Vより高く、分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)が、1〜100nmの平均直径を有することを特徴とする、電解質キャパシタを製造する方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高公称電圧について低い等価直列抵抗および低い残留電流を有する電解質キャパシタを製造する方法、この方法によって製造された電解質キャパシタ、およびそのような電解質キャパシタの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の固体電解質キャパシタは、一般的に、多孔性金属電極、金属表面上の酸化物層、多孔性構造の中に組み込まれる導電性固体、たとえば銀層などの外部電極(接触)、ならびに他の電気接点および封入を備える。
【0003】
固体電解質キャパシタの例は、電荷移動錯体、あるいは軟マンガン鉱またはポリマーの固体電解質を有するタンタル、アルミニウム、ニオブ、および酸化ニオブのキャパシタである。多孔性本体の使用は、表面積が大きいために、極めて高い静電容量、すなわち小空間にわたる高い電気静電容量を達成できるという利点がある。
【0004】
π−共役ポリマーは、その高い導電性のために、固体電解質として特に適切である。π−共役ポリマーは、導電性ポリマーまたは合成金属とも呼ばれる。これらは、ポリマーが、処理性、質量、および化学修飾による特性の対象調節に関して金属より利点を有するために、ますます経済的に重要になっている。既知のπ−共役ポリマーの例は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、およびポリ(p−フェニレン−ビニレン)であり、産業的に使用される特に重要なポリチオフェンは、しばしばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とも呼ばれるポリ−3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェンであるが、その理由は、酸化形態において非常に高い導電性を有するからである。
【0005】
電子工学における技術開発により、非常に低い等価直列抵抗(ESR)を有する固体電解質キャパシタが、ますます必要とされている。この理由は、たとえば、集積回路の論理電圧が下がり、集積密度がより高くなり、周期周波数が増大するからである。さらに、低いESRにより、エネルギー消費も減少し、これは、移動電池により動作する使用に特に有利である。したがって、固体電解質キャパシタのESRを可能な限り低く低減することが所望される。
【0006】
欧州特許明細書EP−A−340512は、3,4−エチレン−1,2−ジオキシチオフェンからの固体電解質の製造、および電解質キャパシタにおける固体電解質としての酸化重合によって製造された陽イオンポリマーの使用を記載している。固体電解質キャパシタにおける二酸化マンガンまたは電荷移動錯体の代用物としてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、より高い導電性のためにキャパシタの等価直列抵抗を下げ、周波数特性を向上させる。
【0007】
in situ重合において化学物質を使用するこの方法および同様の方法の欠点は、高公称電圧を有する低いESRおよび低い残留電流の固体電解質キャパシタをそれらの方法で製造できないことである。
【0008】
ポリマー固体電解質を付着させた後、キャパシタの酸化物層は、たとえばEP−A899757に記載されているように、低い残留電流を達成するために、従来は再形成されなければならない。このために、キャパシタは、電解質に含浸され、酸化物膜の陽極処理電圧に対応する電圧に暴露される。
【0009】
16Vからの公称電圧を有するポリマー電解質キャパシタの製造において、酸化物層の再形成は、公称電圧が上昇するにつれ、より困難になり、ESRを深刻に損なわずに25Vからの公称電圧について、もはや実施することはできない。より弱い再形成、すなわち陽極処理電圧よりはるかに低い再形成は、この問題を回避する方式として依然として存在する。しかし、これにより、キャパシタの信頼性は低下することになる。
【0010】
キャパシタの降伏電圧は、信頼性の尺度である。降伏電圧は、キャパシタの誘電体(酸化物層)が、電場の強さにもはや耐えず、放電が、陽極と陰極の間で起こり、キャパシタにおいて短絡となる電圧である。降伏電圧が高くなると、誘電体の質は良くなり、したがってキャパシタも信頼性になる。キャパシタの降伏電圧が高くなると、使用することができる公称電圧が高くなる。
【0011】
低公称電圧のポリマーキャパシタでは、降伏電圧は、陽極処理電圧に近くなり、したがって陽極処理電圧の通常は2分の1から4分の1より小さい公称電圧よりかなり高くなる。しかし、高公称電圧のポリマー固体電解質キャパシタでは、降伏電圧は、再形成中の上述された問題により、陽極処理電圧より著しく低く下がる。その結果、これらのキャパシタの信頼性は低くなる。したがって、ポリマー固体電解質キャパシタの降伏電圧を上昇させ、したがって信頼性を増大させることが所望される。
【0012】
たとえば、自動車電子工学または電源構成要素における電圧ろ過など、電子工学におけるいくつかの使用分野は、高い信頼性を有する高公称電圧ならびに低ESRおよび残留電流の固体電解質キャパシタを使用することを必要とする。
【0013】
したがって、高公称電圧を有する低い等価直列抵抗(ESR)および低い残留電流の固体電解質キャパシタを製造するのに適切な方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許明細書EP−A−340512
【特許文献2】欧州特許明細書EP−A899757
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、目的は、この手段によって改良されたそのような方法およびキャパシタを提供することであった。
【0016】
驚くべきことに、1から100nmの平均直径を有する導電性ポリマーの粒子を含有する分散液が固体電解質の形成に使用される場合、そのようなキャパシタを製造することができることが、現在判明している。
【0017】
驚くべきことに、そのような粒子が使用される場合、酸化物膜の再形成は必要ではなく、それにもかかわらず、対応するキャパシタは、非常に低い残留電流を有する。
【0018】
したがって、本発明は、
a)電極材料の多孔性電極本体(2)が、この電極材料の表面を覆う誘電体(3)を形成するために陽極酸化を受けるステップと、
b)電極材料の多孔性電極本体(2)および誘電体(3)を少なくとも含有する多孔性本体の上に、導電性ポリマーの粒子B)および分散剤D)を少なくとも含有する分散液A)が適用されるステップと、
c)誘電体表面を完全にまたは部分的に覆う固体電解質(4)を形成するために、分散剤D)が少なくとも部分的に除去および/または硬化されるステップを少なくとも備え、
多孔性電極本体(2)の陽極処理酸化中に最大陽極処理電圧が30Vより高く、分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)が、1〜100nmの平均直径を有することを特徴とする、電解質キャパシタを製造する方法を提供する。
【0019】
粒子B)の直径は、超遠心分離測定により決定される。一般的な手続きは、Colloid Polym.Sci.267,1113−1116(1989)に記載されている。分散液において膨潤する粒子B)の場合、粒子のサイズは、膨潤状態において決定される。粒子B)の直径分布は、粒子の直径の関数として分散液における粒子の質量分布に関係する。
【0020】
この方法では、分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)は、好ましくは1から80nm、特に好ましくは1から50nm、非常に特に好ましくは5から40nmの平均直径を有する。
【0021】
この方法では、分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)は、好ましくは150nm未満、特に好ましくは100nm未満、特に非常に好ましくは80nm未満、極めて好ましくは50nm未満の直径分布のd90値を有する。
【0022】
この方法では、分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)は、好ましくは1nmより大きい、特に好ましくは3nmより大きい、特に非常に好ましくは5nmより大きい直径分布のd10値を有する。
【0023】
この文脈において、直径分布のd10値は、分散液A)における導電性ポリマーのすべての粒子B)の全質量の10%を、d10値以下の直径を有するそれらの粒子B)に割り当てることができることを意味する。直径分布のd90値は、分散液A)における導電性ポリマーのすべての粒子B)の全質量の90%を、d90値以下の直径を有するそれらの粒子B)に割り当てることができることを意味する。
【0024】
乾燥状態の膜が、10S/cmより大きい、特に好ましくは20S/cmより大きい、特に非常に好ましくは50S/cmより大きい、極めて好ましくは100S/cmより大きい、ならびに特に好ましい実施形態では200S/cmより大きい比導電率を有する分散液A)が使用される。
【0025】
既知であるように、金属不純物、特に遷移金属は、キャパシタの誘電体(酸化物膜)を損傷することがある。そのような金属不純物がキャパシタの信頼性を低下させることを防止するために、わずかな金属不純物を含む分散液A)が好ましい。
【0026】
この方法では、分散液A)は、好ましくは5000mg/kg未満、特に好ましくは1000mg/kg未満、特に非常に好ましくは200mg/kg未満の金属陽イオンの含有量を有する。
【0027】
この方法では、分散液A)は、好ましくは1000mg/kg未満、特に好ましくは100mg/kg未満、特に非常に好ましくは20mg/kg未満の遷移金属の含有量を有する。
【0028】
この方法では、分散液A)は、1000mg/kg未満、特に好ましくは100mg/kg未満、特に非常に好ましくは20mg/kg未満の鉄含有量を有する。
【0029】
分散液における低濃度の金属は、固体電解質の形成中およびキャパシタの後の動作中に損傷されないという大きな利点を有する。
【0030】
本発明による方法によって製造される電解質キャパシタでは、電極材料は、大きな表面積を有する多孔性本体を形成し、たとえば、多孔性焼結本体または粗い膜の形態にある。以下において、この多孔性本体は、簡単に電極本体とも呼ばれる。
【0031】
誘電体によって覆われる電極本体は、以下では略して酸化電極本体とも呼ばれる。
【0032】
誘電体で覆われ、かつ完全にまたは部分的に固体電解質で覆われる電極本体は、以下では略してキャパシタ本体とも呼ばれる。
【0033】
キャパシタ本体の外部表面は、キャパシタ本体の外側表面を意味すると理解されたい。
【0034】
本発明の文脈では、ポリマーという用語は、2つ以上の同一または異なる繰返し単位を有するすべての化合物を含む。
【0035】
導電性ポリマーは、本明細書では、具体的には、酸化または還元の後に導電性を有するπ共役ポリマーの化合物クラスを意味すると理解されたい。好ましくは、導電性ポリマーは、酸化後に少なくとも1μScm−1の大きさの導電率を有するそれらのπ共役ポリマーを意味すると理解されたい。
【0036】
分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)は、置換されていてよい少なくとも1つのポリチオフェン、ポリピロール、またはポリアニリンを含有することが好ましい。
【0037】
導電性ポリマーの粒子B)は、一般式(I)または一般式(II)の繰返し単位、あるいは一般式(I)および(II)の繰返し単位を有する少なくとも1つのポリチオフェンを含有することが特に好ましく、
【化1】

上記で、
Aは、置換されていてよいC1−C5−アルキレン基を表し、
Rは、線形または分枝の置換されていてよいC1−C18−アルキル基、置換されていてよいC5−C12−シクロアルキル基、置換されていてよいC6−C14−アリール基、置換されていてよいC7−C18−アラルキル基、置換されていてよいC1−C4−ヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシル基を表し、
xは、0から8の整数を表し、
複数の基RがAに結合される場合、これらは、同一または異なるとすることができる。
【0038】
一般式(I)および(II)は、xの置換基Rがアルキレン基Aに結合できることを意味すると理解されたい。
【0039】
Aが置換されていてよいC2−C3−アルキレン基を表し、xが0または1を表す、一般式(I)、(II)の繰返し単位、または一般式(I)および(II)の繰返し単位を有するポリチオフェンが、特に好ましい。
【0040】
置換されていてよいポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、固体電解質の導電性ポリマーとして特に非常に好ましい。
【0041】
本発明の文脈では、接頭辞ポリ−は、2つ以上の同一または異なる繰返し単位がポリマーまたはポリチオフェンに含まれることを意味すると理解されたい。ポリチオフェンは、一般式(I)または一般式(II)、あるいは一般式(I)および(II)の全部でnの繰返し単位を含み、nは、2から2000、好ましくは2から100の整数である。一般式(I)および/または(II)の繰返し単位は、各場合においてポリチオフェン内で同一または異なることができる。各場合に一般式(I)または(II)、あるいは(I)および(II)の同一の繰返し単位を有するポリチオフェンが、好ましい。
【0042】
ポリチオフェンは、各場合に末端基にHを担持することが好ましい。
【0043】
本発明の文脈では、C1−C5−アルキレン基は、メチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレン、またはn−ペンチレンであることが好ましい。C1−C18−アルキルRは、メチル、エチル、n−プロピルまたはイソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、セク−ブチル、またはテルト−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、あるいはn−オクタデシルなどの、線形または分枝のC1−C18−アルキル基を表すことが好ましく、C5−C12−シクロアルキル基Rは、たとえば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、またはシクロデシルを表し、C5−C14−アリール基Rは、たとえば、フェニルまたはナフチルを表し、C7−C18−アラルキル基Rは、たとえば、ベンジル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリルまたはメシチルを表す。上記のリストは、例として本発明を示すように作用し、決定的であると見なされるべきではない。
【0044】
本発明の文脈では、基Aおよび/または基Rの可能な随意選択の他の置換基は、いくつかの有機基であり、たとえば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、炭酸塩、カルボキシレート、シアノ、アルキルシラン、およびアルコキシシランの基、ならびにカルボキサミド基である。
【0045】
ポリアニリンまたはポリピロールの可能な置換基は、たとえば、上記で列挙された基AおよびRならびに/あるいは基AおよびRの他の置換基である。非置換ポリアニリンが好ましい。
【0046】
本発明の範囲は、上記で与えられ、かつ以下で列挙されるすべての基の定義、パラメータ、および説明を含み、全般的であり、または互いの中で好ましい範囲において述べられ、すなわち特定の範囲と好ましい範囲の間の任意の所望の組み合わせにある。
【0047】
好ましい方法において固体電解質として使用されるポリチオフェンは、中性または陽イオンとすることができる。好ましい実施形態では、これらは陽イオンであり、「陽イオン」は、ポリチオフェンの主鎖の上にある電荷にのみ関係する。基R上の置換基に応じて、ポリチオフェンは、構造単位において正および負の電荷を担持することができ、正の電荷は、ポリチオフェン主鎖の上にあり、負の電荷は、場合により、スルホネート基またはカルボキシレート基によって置換された基Rの上にある。この文脈において、ポリチオフェン主鎖の正の電荷は、基Rの上に場合により存在する陰イオン基によって部分的にまたは完全に化合することができる。全体的に見ると、ポリチオフェンは、これらの場合において、陽イオン、中性、またはさらには陰イオンとすることができる。それにもかかわらず、本発明の文脈では、これらはすべて陽イオンポリチオフェンと見なされるが、その理由は、ポリチオフェン主鎖上の正の電荷が決定的であるからである。正の電荷は、一般式には示されていないが、その理由は、その正確な数および位置は、明瞭には決定することができないからである。しかし、正の電荷の数は、少なくとも1で、かつnをポリチオフェン内のすべての繰返し単位(同一または異なる)の総数としてnを超えない。
【0048】
正の電荷を補償するために、これが随意選択のスルホネートまたはカルボキシレートで置換され、したがって負に帯電した基Rによってまだ行われていない場合、陽イオンポリチオフェンは、対陰イオンとして陰イオンを必要とする。
【0049】
対イオンは、モノマーまたは高分子陰イオンとすることができ、後者は、以下においてポリ陰イオンとも呼ばれる。
【0050】
高分子陰イオンは、モノマー陰イオンより好ましいが、その理由は、高分子陰イオンは、膜形成に寄与し、そのサイズのために、熱に対してより安定な導電性膜となるからである。
【0051】
高分子陰イオンは、本明細書では、たとえば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはポリマレイン酸などの高分子カルボン酸、あるいはポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸などの高分子スルホン酸の陰イオンとすることができる。これらのポリカルボン酸およびポリスルホン酸は、アクリル酸エステルおよびスチレンなど、他の重合可能モノマーを有するビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸の共重合体とすることもできる。
【0052】
高分子カルボン酸またはスルホン酸の陰イオンは、上述された粒子B)における高分子陰イオンとして好ましい。
【0053】
ポリスチレンスルホン酸(PSS)の陰イオンは、高分子陰イオンとして特に好ましい。
【0054】
ポリ陰イオンを供給する多価酸の分子量は、好ましくは1000から2000000、特に好ましくは2000から500000である。多価酸またはそのアルカリ金属塩は、たとえばポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸から商用的に得ることができ、あるいは既知の方法によって製造することができる(たとえば、Houben Weyl,Methoden der organischen Chemie,vol.E 20 Makromolekulare Stoffe,part2,(1987),1141を参照)。
【0055】
分散液A)は、具体的には質量比が0.5:1から50:1好ましくは1:1から30:1、特に好ましくは2:1から20:1の高分子陰イオンおよび導電性ポリマーを含有する。導電性ポリマーの質量は、本明細書では、完全な変換が重合中に行われると想定して、使用されるモノマーの質量に対応する。
【0056】
モノマー陰イオンとして作用する陰イオンは、たとえば、メタン−、エタン−、プロパン−、ブタン−などのC1−C20−アルカンスルホン酸、またはドデカンスルホン酸などのより高次のスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、またはペルフルオロオクタンスルホン酸などの脂肪族ペルフルオロスルホン酸、2−エチルヘキシルカルボン酸などの脂肪族C1−C20−カルボン酸、トリフルオロ酢酸またはペルフルオロオクタン酸などの脂肪族ペルフルオロカルボン酸、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、またはドデシルベンゼンスルホン酸などのC1−C20−アルキル基によって置換されていてよい芳香族スルホン酸、ならびにカンファースルホン酸などのシクロアルカンスルホン酸、あるいはテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、過塩素酸塩、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、またはヘキサクロロアンチモネートである。
【0057】
p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、またはカンファースルホン酸の陰イオンは、モノマー陰イオンとして好ましい。
【0058】
電荷を補償する対イオンとして陰イオンを含む陽イオンポリチオフェンは、しばしば当業者によってポリチオフェン/(ポリ)陰イオン錯体とも呼ばれる。
【0059】
分散液A)は、1つまたは複数の分散剤D)を含有することができる。以下の溶媒は、例として分散剤D)として挙げることが可能である:メタノール、エタノール、i−プロパノール、およびブタノールなどの脂肪族アルコール;アセトンおよびメチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;メチレンクロリドおよびジクロロエタンなどのクロロ炭化水素;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル;ジメチルスルホキシドおよびスルホランなどの脂肪族スルホキシドおよびスルホン;メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、およびジメチルホルムアミドなどの脂肪族カルボン酸アミド;ならびにジエチルエーテルおよびアニソールなどの脂肪族エーテルおよびアリール脂肪族エーテル。さらに水または水と上述された有機溶媒の混合物も、分散剤D)として使用することができる。
【0060】
好ましい分散剤D)は、水、またはメタノール、エタノール、i−プロパノール、およびブタノールなどのアルコール、ならびに水とこれらのアルコールの混合物のプロトン性溶媒、水は特に好ましい溶媒である。
【0061】
さらに、分散液A)は、たとえば、イオン性および非イオン性表面活性剤などの表面活性物質、あるいは、有機官能性シラン、または3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、もしくはオクチルトリエトキシシランなどのその加水分解物などの接着促進剤、メラミン化合物、マスクドイソシアネート、官能性シラン(たとえば、テトラエトキシシランなどに基づくテトラエトキシシラン、アルコキシシラン加水分解産物、または3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランなどのエポキシシラン)などの架橋剤、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン分散液など、他の化合物を含有することができる。
【0062】
分散液A)は、たとえば、テトラヒドロフランなどのエーテル基を含む化合物、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどのラクトン基を含む化合物、カプロラクタン、N−メチルカプロラクタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−オクチルピロリドン、およびピロリドンなどのアミドまたはラクトン基を有する化合物、スルホラン(テトラメチレンスルホン)およびジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホンおよびスルホキシド、スクロース、ブドウ糖、果糖、および乳糖などの糖または糖誘導体、ソルビトールおよびマンニトールなどの糖アルコール、2−フランカルボン酸および3−フランカルボン酸などのフラン誘導体、ならびに/あるいはエチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、およびトリエチレングリコールなどのジアルコールまたはポリアルコールなど、導電性を増大させる他の添加剤を含有することが好ましい。テトラヒドロフラン、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、またはソルビトールは、導電性増大添加剤として使用されるのが特に好ましい。
【0063】
さらに、分散液A)は、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロリド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、シリコンまたはスチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル、およびエチレン/酢酸ビニル共重合体などの有機溶媒に可溶な1つまたは複数の有機結合剤、あるいはポリビニルアルコールなどの水溶性結合剤を含有することができる。
【0064】
分散液A)は、1から14のpHを有することができ、1から8のpHが好ましい。たとえばアルミニウム酸化物または酸化ニオブなどの腐食感受性誘電体では、誘電体を損傷しないように、4から8のpHを有する分散液が好ましい。
【0065】
たとえば、pHを調整するために、塩基または酸を分散液に追加することができる。たとえば、2−ジメチルアミノエタノール、2,2’−イミノジエタノール、または2,2’,2’’−ニトリロトリエタノールの塩基およびポリスチレンスルホン酸の酸など、分散液の膜形成を損なわず、かつはんだ付け温度などのより高い温度において揮発性ではないが、これらの条件下において依然として固体電解質であるそれらの添加剤が好ましい。
【0066】
分散液A)の粘度は、適用方法に応じて、0.1と500mPa・sの間とすることができる(20℃および100s−1の剪断速度において測定)。粘度は、好ましくは1から200mPa・s、特に好ましくは1から100mPa・s、特に非常に好ましくは3から50mPa・sである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、固体電解質キャパシタの構造を表す図を記述する。
【図2】図2は、図1から拡大した図の詳細10を記述する。
【0068】
図1は、以下を備えるタンタルキャパシタの例として、固体電解質キャパシタの構造を表す図を記述する。
【0069】
1 キャパシタ本体
5 場合により存在する導電性外部層
6 グラファイト/銀層
7 電極本体2へのワイヤ接点
8 外部接点
9 カプセル封入
10 図の詳細
【0070】
図2は、以下を備えるタンタルキャパシタの概略的層構造を表す図1から拡大した図の詳細10を記述する。
【0071】
10 図の詳細
2 多孔性電極本体(陰極)
3 誘電体
4 固体電解質(陽極)
5 場合により存在する導電性外部層
6 グラファイト/銀層
【発明を実施するための形態】
【0072】
原理的には、本発明によるそのような電解質キャパシタは、以下のように製造することができる。まず、たとえば、大きな表面積を有するバルブ金属粉末を押し付け、多孔性電極本体を与えるように焼結する。この手続きでは、好ましくはたとえばタンタルなどのバルブ金属の電気接点ワイヤも、電極本体の中に従来通り押し込まれる。代替として、金属膜は、また多孔性膜を得るように、エッチングできる。
【0073】
次いで、電極本体は、陽極酸化によって誘電体すなわち酸化物層で覆われる。その後、本発明により、少なくとも導電性ポリマーの粒子Bおよび分散剤D)を含有する分散液A)は、酸化電極本体の上に適用され、分散剤D)は、固体電解質を形成するために少なくとも部分的に除去および/または硬化される。他の層(図1および図2では導電性外部層(5)と呼ばれる)が、場合によりキャパシタ本体の外部層に適用される。グラファイトおよび銀などの良好な導電率の層でのカバーまたは金属陰極本体は、電流を伝達し去るための電極として作用する。最後に、キャパシタは、接触および封入される。
【0074】
電極材料がバルブ金属またはバルブ金属に同等な電気特性を有する化合物であることを特徴とする電解質キャパシタを製造する方法が、さらに好ましい。
【0075】
本発明の文脈では、バルブ金属は、酸化物層が両方向における等しい電流の流れを可能にしない金属を意味すると理解されたい。電圧が陽極に印加される場合、バルブ金属の酸化層は、電流の流れを遮断し、一方、電圧が陰極に印加される場合、大きな電流が生じ、これは、酸化物層を破壊することがある。バルブ金属は、Be、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、およびW、ならびにこれらの金属の少なくとも1つと他の元素との合金または化合物を含む。バルブ金属の最適な既知の代表は、Al、Ta、およびNbである。バルブ金属と同等な電気特性を有する化合物は、酸化することができる金属導電性を有するものであり、その酸化物層は、上述された特性を有する。たとえば、NbOは、金属導電率を有するが、一般的にはバルブ金属と見なされない。しかし、酸化NbOの層は、バルブ金属酸化物層の通常の特性を有し、それにより、NbOまたは他の要素を有するNbOの合金もしくは化合物は、バルブ金属に同等な電気特性を有するそのような化合物の典型的な例である。
【0076】
タンタル、アルミニウムの電極材料、およびニオブまたは酸化ニオブに基づくそれらの電極材料が好ましい。
【0077】
ニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料は、ニオブまたは酸化ニオブが最高物質含有量を有する化合物を表す材料を意味すると理解されたい。
【0078】
ニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料は、ニオブ、NbO、xが0.8から1.2の値をとることができる酸化ニオブNbOx、窒化ニオブ、ニオブ酸窒化物、またはこれらの材料の混合物、あるいはこれらの材料の少なくとも1つと他の元素との合金または化合物であることが好ましい。
【0079】
合金は、たとえばBe、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、またはWなどの少なくとも1つのバルブ金属を有する合金であることが好ましい。
【0080】
したがって、「酸化可能金属」という用語は、金属だけでなく、金属導電性を有し、かつ酸化可能である限り、金属と他の元素との合金または化合物をも意味する。
【0081】
酸化可能金属は、たとえば、多孔性電極本体を与えるように粉末の形態で焼結され、または、多孔性構造が、金属本体の上に刻印される。後者は、たとえば、膜をエッチングすることによって実施できる。
【0082】
多孔性電極本体は、適切な電解質において陽極酸化を受ける。適切な電解質は、たとえば、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、酢酸、またはアジピン酸などの希釈酸、あるいはリン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、アジピン酸アンモニウム、またはテトラホウ酸ナトリウムデカハイドレートなどの酸の塩の溶液である。電解質は、酸化物膜の質を向上させるために、添加剤、またはメタノール、エタノール、ブタノール、グリコール、またはケトンなどの比較的大量のアルコールを含むことができる。
【0083】
陽極酸化では、たとえば電解質に含浸された多孔性電極本体は、電圧を印加することによって酸化される。陽極処理電圧とも呼ばれるこの電圧のレベルは、達成されるべきである酸化物層の厚さ、またはキャパシタの後の公称電圧に依存する。
【0084】
公称電圧より高い陽極処理電圧は、通常、キャパシタのより低い残留電流およびより高い信頼性を保証するように選択される。公称電圧より高いが、公称電圧の5倍より低い陽極処理電圧が好ましく、公称電圧より高いが、公称電圧の4倍より低い陽極処理電圧が特に好ましく、公称電圧より高いが、公称電圧の3倍より低い陽極処理電圧が特に非常に好ましく、公称電圧より高いが、公称電圧の2倍より低い陽極処理電圧が極めて好ましい。好ましい陽極処理電圧は、30から1000V、特に好ましくは45から500V、特に非常に好ましくは70から500V、極めて好ましくは100から500Vである。
【0085】
陽極酸化中、陽極処理電圧は、たとえば、一定とする、またはパルス化する、あるいは連続的に増大できる。この文脈において、生じる最大陽極処理電圧が、酸化物膜の厚さを決定する。
【0086】
酸化物膜の厚さは、酸化物の特性である層形成因子k、および下式からの最大陽極処理電圧に由来する。
【0087】
酸化物膜厚さ=k*最大陽極処理電圧
上式で、最大陽極処理電圧は、ボルトで表され、酸化物膜の層形成因子は、nm/ボルトで表される。
【0088】
たとえば、kは、アルミニウム酸化物について約1.2nm/V、タンタル酸化物について1.8nm/V、および酸化ニオブについて約2.8nm/Vである。
【0089】
たとえば、電極材料がアルミニウムに基づくキャパシタの酸化物膜の厚さは、好ましくは30nmを超え、特に好ましくは50nmを超え、特に非常に好ましくは80nmを超え、極めて好ましくは110nmを超える。
【0090】
たとえば、電極材料がタンタルに基づくキャパシタの酸化物膜の厚さは、好ましくは50nmを超え、特に好ましくは80nmを超え、特に非常に好ましくは120nmを超え、極めて好ましくは170nmを超える。
【0091】
たとえば、電極材料がニオブまたは酸化ニオブに基づくキャパシタの酸化物膜の厚さは、好ましくは80nmを超え、特に好ましくは130nmを超え、特に非常に好ましくは190nmを超え、極めて好ましくは260nmを超える。
【0092】
好ましくは500から200000μC/gの比電荷を有する、特に好ましくは1000から100000μC/gの比電荷を有する、特に非常に好ましくは1000から50000μC/gの比電荷を有する金属粉末が、電極本体の製造に使用される。
【0093】
この文脈において、比電荷は、以下のように計算される。
【0094】
比電荷=(静電容量*陽極処理電圧)/酸化電極本体の質量
この文脈において、静電容量は、水性電解質において120Hzで測定された酸化電極本体の静電容量から得られる。この場合、電解質の導電率は、120Hzではまだ生じない電解質の電気抵抗のために静電容量が降下するように十分高い。たとえば、18%強度の水性硫酸電解質が、測定に使用される。
【0095】
使用された電極本体は、10から90%、好ましくは30から80%、特に好ましくは50から80%の多孔度を有する。
【0096】
多孔性電極本体は、10から10000nm、好ましくは50から5000nm、特に好ましくは100から3000nmの平均孔径を有する。
【0097】
したがって、本発明は、バルブ金属またはバルブ金属と同等な電気特性を有する化合物は、タンタル、ニオブ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、これらの金属の少なくとも1つと他の元素との合金または化合物、NbO、あるいはNbOと他の元素との合金または化合物であることを特徴とする、電解質キャパシタを製造する方法を提供することが特に好ましい。
【0098】
誘電体は、電極材料の酸化物を含有することが好ましい。誘電体は、場合により、他の元素および/または化合物を含有する。
【0099】
酸化電極本体の静電容量は、誘電体の表面積および厚さ、ならびに誘電体の性質に依存する。比電荷は、酸化電極本体が単位質量あたりどのくらいの電荷を収容することができるかの尺度である。比電荷は、以下のように計算される。
【0100】
比電荷=(静電容量*公称電圧)/酸化電極本体の質量
静電容量は、120Hzにおいて測定された完成キャパシタの静電容量から得られ、公称電圧は、キャパシタの指定動作電圧である(定格電圧)。酸化電極本体の質量は、ポリマー、接点、およびカプセル封入を有さない状態で、誘電体で覆われた多孔性電極材料の正味の質量に関係する。
【0101】
本発明による方法によって製造された電解質キャパシタは、好ましくは100から100000μC/gの比電荷、特に好ましくは500から75000μC/gの比電荷、特に非常に好ましくは500から30000μC/gの比電荷を有する。
【0102】
好ましい電解質キャパシタは、15Vを超える公称電圧、特に好ましくは19Vを超える公称電圧、特に非常に好ましくは24Vを超える公称電圧、極めて好ましくは34Vを超える公称電圧を有する。
【0103】
以下において先駆物質とも呼ばれる分散液において粒子B)の導電性ポリマーを製造するための先駆物質は、対応するモノマーまたはその誘導体を意味すると理解されたい。様々な先駆物質の混合物を使用することもできる。適切なモノマー先駆物質は、たとえば、置換されていてよいチオフェン、ピロール、またはアニリン、好ましくは置換されていてよいチオフェン、特に好ましくは置換されていてよい3,4−アルキレンジオキシチオフェンである。
【0104】
例として挙げることが可能である置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェンは、一般式(III)または(IV)の化合物、あるいは一般式(III)および(IV)のチオフェンの混合物である。
【0105】
【化2】

上記で、
Aは、置換されていてよいC1−C5−アルキレン、好ましくは置換されていてよいC2−C3−アルキレン基を表し、
Rは、線形または分枝の置換されていてよいC1−C18−アルキル基、好ましくは線形または分枝の置換されていてよいC1−C4−アルキル基、置換されていてよいC5−C12−シクロアルキル基、置換されていてよいC6−C14−アリール基、置換されていてよいC7−C18−アラルキル基、置換されていてよいC1−C4−ヒドロキシアルキル基、好ましくは置換されていてよいC1−C2−ヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシル基を表し、
xは、0から8、好ましくは0から6、特に好ましくは0または1の整数を表し、
複数の基RがAに結合される場合、これらは、同一または異なることができる。
【0106】
置換されていてよい3,4−エチレンジオキシチオフェンは、特に非常に好ましいモノマー先駆物質である。
【0107】
例として挙げることが可能である置換された3,4−エチレンジオキシチオフェンは、一般式(V)の化合物であり、
【化3】

上記で、
Rおよびxは、一般式(III)および(IV)について与えられた意味を有する。
【0108】
本発明の文脈では、これらのモノマー先駆物質の誘導体は、たとえば、これらのモノマー先駆物質のダイマーまたはトリマーを意味すると理解されたい。モノマー先駆物質のより高分子量の誘導体、すなわちテトラマー、ペンタマーなども、可能な誘導体である。
【0109】
例として挙げることが可能である置換3,4−アルキレンジオキシチオフェンの誘導体は、一般式(VI)の化合物であり、
【化4】

上記で、
nは、2から20、好ましくは2から6、特に好ましくは2または3の整数であり、
A、R、およびxは、一般式(III)および(IV)について与えられた意味を有する。
【0110】
誘導体は、同一または異なるモノマー単位から構築することができ、純粋な形態において、ならびに互いおよび/またはモノマー先駆物質との混合物の形態において使用することができる。これらの先駆物質の酸化または還元形態も、同じ導電性ポリマーが、上記に列挙された先駆物質の場合ように重合中に形成される限り、本発明の文脈では「先駆物質」という用語に含まれる。
【0111】
上述された先駆物質、具体的にはチオフェン、好ましくは3,4−アルキレンジオキシチオフェンの可能な置換基は、一般式(III)および(IV)において上述された基である。
【0112】
ピロールおよびアニリンの可能な置換基は、たとえば、上述された基AおよびR、ならびに/あるいは基AおよびRの他の置換基である。
【0113】
基Aおよび/または基Rの可能な随意選択の他の置換基は、一般式(I)および(II)と関連して述べられた有機基である。
【0114】
導電性ポリマーおよびその誘導体を製造するためのモノマー先駆物質を製造する方法は、当業者には既知であり、たとえば、L.Groenendaal,F.Jonas,D.Freitag,H.Pielartzik&J.R.Reynolds,Adv.Mater.12(2000)481−494、およびそこで引用された文献に記載されている。
【0115】
使用されるポリチオフェンを製造するために必要な一般式(III)の3,4−アルキレンオキシチアチオフェンは、当業者には既知であり、または既知の方法によって製造することができる(たとえば、P.Blanchard,A.Cappon,E.Levillain,Y.Nicolas,P.Ffere and J.Roncali,Org.Lett.4(4),2002,607−609による)。
【0116】
上述された先駆物質から分散液を製造することは、たとえば、EP−A 440 957(US5300575)において述べられたものと同様の条件下において実施される。分散液を製造する改良変形形態は、無機塩含有物またはその一部を除去するためにイオン交換体を使用する。そのような変形形態は、たとえば、DE−A 19 627 071(US6376105)に記載されている。イオン交換体は、たとえば、産物とともに撹拌することができ、または産物は、イオン交換体カラムが実装されたカラムで搬送される。イオン交換体を使用することにより、たとえば、上述された低金属含有量を達成できる。
【0117】
分散液A)における粒子B)の粒子サイズは、たとえば、脱塩後に高圧ホモジナイザによって低減することができる。この動作は、効果を増大させるために繰り返すこともできる。粒子のサイズを大きく低減するために、100と2000バールの間の特に高い圧力が有利であることが判明している。
【0118】
ポリアニリン/ポリ陰イオンまたはポリチオフェン/ポリ陰イオンの錯体、および1つまたは複数の溶媒におけるその後の分散液または再分散液の製造も可能である。
【0119】
分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)の固体含有量は、0.1〜90質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に非常に好ましくは0.5〜10質量%である。
【0120】
導電性ポリマーの粒子B)は、安定な分散液を形成することが好ましい。しかし、不安定な分散液は、たとえば、粒子B)の一様な分散を保証するために、使用前に撹拌、回転、または振盪されるという点で、不安定な分散液も使用することができる。
【0121】
分散液S)は、たとえばスピンコーティング、含浸、注入、滴下、噴霧、霧化、ナイフコーティング、ブラッシング、またはインクジェット、スクリーン、接触、もしくは綿球印刷などの印刷によって、既知の方法により電極本体の誘電体に適用される。
【0122】
分散液を多孔性電極本体の中に浸透させることは、たとえば、圧力、振動、超音波、あるいは熱を増大または低減することによって容易にすることができる。
【0123】
適用は、電極本体の誘電体の上に直接行うことができ、あるいは有機官能性シランなどのシラン、または3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、もしくはオクチルトリエトキシシランなどのその加水分解産物、ならびに/あるいは1つまたは複数の他の官能層など、接着促進剤を使用して行うことができる。
【0124】
分散液A)を適用した後、分散剤D)は、固体電解質を分散液における粒子B)および場合により他の添加剤から形成することができるように、除去されることが好ましい。しかし、分散剤D)の少なくとも一部が固体電解質に残存することも可能である。分散剤D)の性質に応じて、分散剤D)は全体を硬化させることができ、または部分的に除去した後、一部のみが依然として残存することもできる。
【0125】
分散液を適用した後の分散剤D)の除去は、室温における簡単な蒸発によって実施することができる。しかし、より迅速な処理速度を達成するために、20から最高300℃、好ましくは40から最高250℃の温度など、高温において分散剤D)を除去することがより有利である。熱による後処理は、溶媒の除去と直接組み合わせることができ、またはコーティングの製造から除外して1回実施することができる。
【0126】
熱処置の所要時間は、コーティングに使用される分散液の性質に応じて、5秒から数時間である。異なる温度および滞在時間を有する温度プロファイルも、熱処置に使用することができる。
【0127】
熱処置は、たとえば、コーティングされた酸化電極本体が、所望の温度にある加熱室を、選択温度における所望の滞在時間が達成されるような速度で移動する手続き、あるいは所望の温度のホットプレートと所望の滞在時間が接触される手続きによって実施することができる。さらに、熱処置は、たとえば、加熱オーブン、またはそれぞれが異なる温度を有するいくつかの加熱オーブンにおいて実施することができる。
【0128】
酸化電極本体の性質に応じて、より厚いポリマー層および/または誘電体表面のより多くの被覆を達成するために、酸化電極本体を分散液でさらに数回含浸させることが有利であることがある。
【0129】
分散液A)を適用すること、ならびに分散剤D)を少なくとも部分的に除去するおよび/または硬化させることは、数回実施されることが好ましい。
【0130】
a)分散液を適用することと、b)分散剤D)を少なくとも部分的に除去するおよび/または硬化させることとの間に、他のステップを場合により実施することができる。
【0131】
随意選択の他のステップとして、たとえば、分散液のいくつかを酸化電極本体から除去することができ、他の含浸を同じ分散液または異なる分散液で実施することができ、添加剤を場合により含む同じ溶媒または異なる溶媒ですすぐことを実施することができ、または貯蔵することができる。
【0132】
驚くべきことに、適用した後で乾燥する前に、酸化電極本体の外部表面から分散液を除去することは、特にいくつかの含浸および乾燥サイクルの場合、より高い被覆およびより低いESRをもたらすことが判明している。
【0133】
したがって、分散液A)を適用した後、電極本体の外部表面上にある導電性ポリマーの粒子B)の少なくともいくつかが、特に好ましくは可能な限り多く除去されるプロセスが好ましい。これは、たとえばすすぎ去る、払い落とす、吹き落とす、振り捨てることなどによって、実施できる。たとえば、外部ポリマー膜を除去するために超音波、熱、放射を使用することも可能である。溶媒、好ましくは分散剤として使用される溶媒ですすぐことが、好ましい。
【0134】
しかし、導電性ポリマーの粒子B)は、分散剤D)を少なくともに部分的に除去したおよび/または硬化させた後、超音波、レーザビーム、溶媒、または機械的脱着によって、電極本体の外部表面から除去することもできる。
【0135】
誘電体を固体電解質で被覆することは、以下のように決定することができる。キャパシタの静電容量を乾燥状態および湿潤状態において120Hzで測定する。被覆の程度は、乾燥状態の静電容量と湿潤状態の静電容量の比であり、パーセントで表される。乾燥状態は、キャパシタが、測定前の数時間、高温(80〜120℃)において乾燥されたことを意味する。湿潤状態は、キャパシタが、たとえば蒸気圧力ボイラにおいて数時間、高圧下において飽和大気湿度に暴露されることを意味する。この手続き中、湿気が、固体電解質によって覆われていない孔の中に浸透し、そこで液体電解質として作用する。
【0136】
固体電解質による誘電体の被覆は、好ましくは50%を超える、特に好ましくは70%、特に非常に好ましくは80%を超える。
【0137】
固体電解質の製造後、導電外部層など、他の導電層をキャパシタに適用することができる。たとえば欧州特許出願EP−A1524678(US6,987,663)に記載されている高分子外部層が適用される。グラファイトおよび/または銀層など、良好な導電率の他の層が、電流コレクタとして作用する。最後に、キャパシタは、接触されて封入される。
【0138】
驚くべきことに、本発明による方法によって製造されたキャパシタは、in situ重合方法によって製造されたキャパシタより著しく高い降伏電圧を有することが判明している。
【0139】
本発明によるキャパシタの降伏電圧は、好ましくはキャパシタの公称電圧の150%を超える、特に好ましくは公称電圧の200%を超える、特に非常に好ましくは公称電圧の250%を超える。
【0140】
本発明によるキャパシタの降伏電圧は、好ましくは電極本体の陽極処理電圧の40%を超える、特に好ましくは陽極処理電圧の50%を超える、特に非常に好ましくは陽極処理電圧の60%を超える、極めて好ましくは陽極処理電圧の75%を超える。
【0141】
したがって、降伏電圧(ボルトで表される)と酸化物膜の厚さd(nmで表される)および酸化物の層形成因子k(nm/ボルトで表される)の商との比τは、ブルイクスルー電圧と陽極処理電圧の比を表し、キャパシタの信頼性の尺度である。
【0142】
τ=降伏電圧/(d/k)
導電性ポリマーを含有する固体電解質を有し、かつ15Vより高公称電圧を有する電解質キャパシタは、値τが0.4より大きい、特に好ましくは0.5より大きい、特に非常に好ましくは0.6より大きい、極めて好ましくは0.75より大きいことを特徴とする。
【0143】
したがって、本発明による方法により、高公称電圧を有する固体電解質キャパシタを製造することが可能になり、この製造は、これまで、固体電解質のin situ重合では可能ではなかった。本発明による方法によって製造されるキャパシタは、低い等価直列抵抗(ESR)、低い残留電流、および高い降伏電圧によって区別される。
【0144】
低い残留電流および低いESRに基づいて、本発明により製造された電解質キャパシタは、たとえば自動車電子工学、電気モータの電圧供給または制御システムなどにおいて、高公称電圧を必要とする電子回路の構成要素として使用するのに著しく適している。本発明はまた、使用法も提供する。たとえば、コンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、サーバ)、コンピュータ周辺機器(たとえば、PCカード)、移動電話、デジタルカメラ、または電子娯楽システムなどの携帯式電子機器、CD/DVDペイヤならびにコンピュータゲームコンソールなどの電子娯楽システム用機器、ナビゲーションシステム、遠隔通信機器、家庭用電気器具、電源、モータ制御システム、または自動車電子機器において見られる電子回路が好ましい。
【0145】
以下の例は、例として本発明を説明するために作用し、限定として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0146】
実施例
例1:
まず、868gの脱イオン水、ならび70000の平均分子量および3.8質量%の固体含有量を有する330gのポリスチレンスルホン酸溶液を、撹拌器および内部温度形を有する21の3つ首フラスコに導入した。反応温度を20と25℃の間に維持した。撹拌しながら、5.1gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを追加した。溶液を30分撹拌した。次いで、0.03gの硫酸鉄(III)および9.5gの過硫酸ナトリウムを追加し、溶液をさらに24時間撹拌した。
【0147】
反応が終了した後、無機塩を除去するために、100mlの強酸陽イオン交換体および250mlの弱塩基陰イオン交換体を追加し、溶液をさらに2時間撹拌した。イオン交換体をろ過し去った。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート分散液を、700バールの圧力下において高圧ホモジナイザで10回均質化した。次いで、分散液を1.6%の固体含有量に濃縮した。
【0148】
このようにして製造した分散液A)−1は、以下の粒子サイズ分布を有していた。
【0149】
10 19nm
50 26nm
90 40nm。
【0150】
導電性ポリマーの粒子B)の直径は、粒子直径の関数として分散液における粒子B)の質量分布に基づく。決定を超遠心分離測定により実施した。粒子のサイズを粒子の膨潤状態において決定した。
【0151】
分散液の粘度は、100Hzおよび20℃の剪断速度において26mPa*sであった。分散液A)−1の金属含有量のICP分析は、以下の値を与えた。
【0152】
ナトリウム(Na): 110mg/kg
マグネシウム(Mg): 0.58mg/kg
アルミニウム(Al): 1.0mg/kg
ケイ素(Si): 1.2mg/kg
リン(P): 5.9mg/kg
カリウム(K): 0.53mg/kg
カルシウム(Ca): 3.9mg/kg
クロム(Cr): 0.16mg/kg
鉄(Fe): 0.89mg/kg
亜鉛(Zn): <0.01mg/kg。
【0153】
例2:
5gジメチルスルホキシド(DMSO)を例1の100gの分散液A)−1に追加し、混合物を撹拌して分散液A)−2を形成した。この分散液A)−2の一部を1000rpmにおいて5秒間スピンコータ(Chemat Technology KW−4A)によってガラス顕微鏡スライド(26mm*26mm*1mm)の上にスピンコーティングした。サンプルを120℃において10分間乾燥した。次いで、顕微鏡スライドの2つの対向縁を導電性銀でコーティングした。導電性銀を乾燥した後、2つの銀ストリップを接触させ、表面抵抗をKeithley 199 Multimeterで決定した。層の厚さをTencor Alpha Step 500 Surface Profilerで決定した。σ=1/(Rs*d)から、比導電率σを表面抵抗および層の厚さから決定した。層の厚さは120nmであり、比導電率は483S/cmであった。
【0154】
例3:
3.1 酸化電極本体の製造
タンタルワイヤ7を含めて、30000μFV/gの比静電容量を有するタンタル粉末を押し付けてペレットにし、4.25mm*3mm*1mmの寸法を有する[失われた名詞]を形成するために焼結した。多孔性電極本体2は、960nmの平均孔直径を有し、誘電体を形成するために、150Vにおいてリン酸電解質において陽極酸化処理され、これは、約270nmの酸化物膜の厚さに対応した。
【0155】
3.2 本発明の方法による固体電解質の製造
例1の100gの分散液A)−1、4gジメチルスルホキシド(DMSO)、および0.5gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−187、OSi Specialties)をガラスビーカーにおいて撹拌器で強く混合して、分散液A)−3を形成した。
【0156】
酸化陽極本体をこの分散液A)−3に1分間含浸した。次いで、電極本体の外面上において分散液A)−3を除去するために、含浸した電極本体を流水下においてすすいだ。その後、乾燥を120℃において10分間実施した。含浸、すすぎ、および乾燥をさらに9回実施した。
【0157】
3.3 高分子外部層の製造
a)分散液A)−4の製造
まず、868gの脱イオン水、ならび70000の平均分子量および3.8質量%の固体含有量を有する330gのポリスチレンスルホン酸水溶液を、撹拌器および内部温度形を有する21の3つ首フラスコに導入した。反応温度を20と25℃の間に維持した。撹拌しながら、5.1gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを追加した。溶液を30分撹拌した。次いで、0.03gの硫酸鉄(III)および9.5gの過硫酸ナトリウムを追加し、溶液をさらに24時間撹拌した。反応が終了した後、無機塩を除去するために、100mlの強酸陽イオン交換体および250mlの弱塩基陰イオン交換体を追加し、溶液をさらに2時間撹拌した。イオン交換体をろ過し去った。
【0158】
PEDT/トルエンスルホネート粉末の製造
まず、2.51脱塩水を、撹拌器および温度形を有する51のガラス反応器に導入した。撹拌しながら、214.2gのp−トルエンスルホン酸水和物および2.25gの硫酸鉄(III)五水和物を導入した。すべてが溶解したとき、85.8gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを追加し、混合物を30分間撹拌した。撹拌しながら、192.9gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを導入し、混合物を室温においてさらに24時間撹拌した。反応終了後、形成されたPEDT/トルエンスルホネート粉末を磁器吸引フィルタの上でろ過し去り、31脱塩水で洗浄し、最後に100℃において6時間乾燥した。89gのブルーブラックPEDT−トルエンスルホネート粉末を得た。
【0159】
180gのPEDT/PSS分散液A)−4、10gのスルホポリエステル(Eastek 1100、Eastman)、8gのジメチルスルホキシド、1gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−187、OSi Specialties)、および0.4gの湿潤剤(Dynol 604、AIR Products)をガラスビーカーにおいて撹拌器で1時間強く混合した。次いで、2gのPEDT/トルエンスルホネート粉末をビードミル溶解器ユニットによって分散させた。このために、300gのジルコニウム酸化物ビード(φ1mm)を追加し、水で冷却しながら、混合物を7000rpmにおいて1時間撹拌した。最後に、研削ビードを0.8μmのふるいの上に分離させた。得られたこの分散液A)−5’は、4.7%の固体含有量を有していた。
【0160】
3.2のキャパシタ本体をこの分散液A)−5に含浸し、次いで、120℃において10分間乾燥した。含浸および乾燥を2回実施した。最後に、電極本体をグラファイトおよび銀の層でコーティングした。
【0161】
製造されたキャパシタの平均電気値9を決定した。
【0162】
静電容量: 9.3μF
ESR: 53mΩ
40Vの公称電圧における残留電流:<0.1μA。
【0163】
LCRメータ(Agilent 4284A)によって静電容量を120Hzにおいて決定し、等価直列抵抗(ESR)を100kHzにおいて決定した。40Vの電圧を加えた3分後にKeithley 199 Multimeterで残留電流を決定した。残留電流は、0.1μAのMultimeterの測定限界より低かった。
【0164】
次いで、製造したキャパシタの18について降伏電圧を決定した。このために、各キャパシタに1000Ωの直列抵抗を提供し、0Vから開始して1V/sの電圧ステップで増大する電圧を受けさせた。それにより生じる電流をKeithley 199 Multimeterで測定した。生じる電流が500μAを超える電圧値を降伏電圧と特定した。
【0165】
18キャパシタが、119Vの平均降伏電圧を有していた。
【0166】
比較例1:
18の陽極処理電極本体を例3.1と同様に製造した。これらの電極本体にin situ重合で化学物質による固体電解質を提供した。
【0167】
このために、1部分質量の3,4−エチレンジオキシチオフェン(BAYTRON(登録商標) M,H.C.Starck GmbH)および20部分質量の鉄(III)p−トルエンスルホネートの40wt。%強度エタノール溶液(BAYTRON(登録商標) C−E,H.C.Starck GmbH)からなる溶液を製造した。
【0168】
18の陽極処理電極本体(2)を含浸するために、この溶液を使用した。電極本体(2)をこの溶液に含浸し、次いで、室温(20℃)において30分間乾燥した。その後、50℃で乾燥キャビネットにおいて30分間熱処理した。次いで、電極本体をp−トルエンスルホン酸の2質量%強度水溶液において60分間洗浄した。
【0169】
次いで、電極本体をp−トルエンスルホン酸の0.25質量%強度水溶液において再形成した。しかし、再形成電圧を陽極処理電圧150Vに設定することは、所望したようには可能ではなかった。すでに著しく低い75から100Vの再形成電圧を達成するために、電極本体あたりの再形成電流は、電極本体が損傷されるほど大きく増大させなければならなかったが、その理由は、電流は、この時間過程ではもはや降下しなかったからである。さらに、再形成電圧が増大するにつれ、気体の顕著な発生が電極本体上において生じた。
【0170】
in situ重合による固体電解質の製造は、150Vの陽極処理電圧および40Vの公称電圧では電極本体について可能ではなかった。
【0171】
例4:
4.1 酸化電極本体の製造
タンタルワイヤ7を含めて、30000μFV/gの比静電容量を有するタンタル粉末を押し付けてペレットにし、4.25mm*3.mm*1mmの寸法を有する[失われた名詞]を形成するために焼結した。多孔性電極本体(2)は、960nmの平均孔直径を有し、誘電体を形成するために100Vにおいてリン酸電解質において陽極処理し、これは、約180nmの酸化膜の厚さに対応する。
【0172】
4.2 本発明の方法による固体電解質の製造
固体電解質の製造を例3.2と同様に実施した。
【0173】
4.3 高分子外部層の製造
高分子外部層の製造を例3.3と同様に実施した。最後に、電極本体をグラファイトおよび銀層でコーティングした。
【0174】
キャパシタの電気値は、第1表に見られるものである。
【0175】
比較例2:
9の陽極処理電極本体を例4.1と同様に製造した。これらの電極本体にin situ重合で化学物質によって固体電解質を提供した。
【0176】
このために、1部分質量の3,4−エチレンジオキシチオフェン(BAYTRON(登録商標) M,H.C.Starck GmbH)および20部分質量の鉄(III)p−トルエンスルホネートの40質量%強度エタノール溶液(BAYTRON(登録商標) C−E,H.C.Starck GmbH)からなる溶液を製造した。
【0177】
19の陽極処理電極本体(2)を含浸するために、この溶液を使用した。電極本体(2)をこの溶液に含浸し、次いで、室温(20℃)において30分間乾燥した。その後、50℃で乾燥キャビネットにおいて30分間熱処理した。次いで、電極本体をp−トルエンスルホン酸の2wt。%強度水溶液において60分間洗浄した。電極本体をp−トルエンスルホン酸の0.25質量%強度水溶液において9mAの50Vで30分間再形成し、次いで蒸留水においてすすぎ、乾燥した。上述した含浸、乾燥、熱処置、および再形成を同じ電極本体についてさらに2回実施した。
【0178】
次いで、例4.3と同様に、キャパシタ本体に高分子外部層を提供した。最後に電極本体をグラファイトおよび銀の層でコーティングした。
【0179】
キャパシタの電気値は、第1表に見られるものである。
【0180】
比較例3:
9のキャパシタを比較例2と同様に製造したが、75Vの再形成電圧を設定した。それにより生じた電流は、72mAであった。
【0181】
キャパシタの電気値は、第1表に見られるものである。
【0182】
比較例4:
9のキャパシタを比較例2と同様に製造したが、再形成は実施しなかった。
【0183】
キャパシタの電気値は、第1表に見られるものである。
【0184】
第1表:
【表1】

【0185】
LCRmeter(Agilent 4284A)によって、静電容量を120Hzにおいて決定し、等価直列抵抗(ESR)を100kHzにおいて決定した。降伏電圧を例3と同様に決定した。
【0186】
すべてのキャパシタが、同様の静電容量を有する。しかし、例4のキャパシタは、低いESRおよび同時に高い降伏電圧、したがって高い信頼性によって区別される。したがって、これらは、最高で約50Vの高公称電圧に適切である。一方、比較例のキャパシタは、低いESRまたは高い降伏電圧のみを有し、同時に両方は有さない。
【0187】
比較例4のキャパシタを短絡したが、その理由は、それらは再形成されなかったからである。したがって、降伏電圧は0Vであった。これらのキャパシタは使用できない。
【0188】
50Vにおける再形成は、実際、比較例2の降伏電圧を62Vに増大させるが、これは、100Vの陽極処理電圧よりかなり低く、それにより、比較例2のキャパシタは、高公称電圧において低い信頼性を有する。
【0189】
比較例3では、降伏電圧は、75Vにおいて再形成することによって著しく増大させることができるが、それにより、固体電解質は破壊され、それにより、ESRは、1桁の大きさを超えて増大する。その結果、これらのキャパシタは、もはや使用することはできない。
【0190】
この比較は、高公称電圧のポリマー固体電解質キャパシタをin situ重合において化学物質で製造することはできないことを示す。しかし、これは、本発明の方法では可能である。
【符号の説明】
【0191】
1 キャパシタ本体、 2 多孔性電極本体(陰極)、 3 誘電体、 4 固体電解質(陽極)、 5 場合により存在する導電性外部層、 6 グラファイト/銀層、 7 電極本体2へのワイヤ接点、 8 外部接点、 9 カプセル封入、 10 図の詳細

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質キャパシタを製造する方法であって、
a)電極材料の多孔性電極本体(2)を陽極酸化させて、この電極材料の表面を覆う誘電体(3)を形成させることと、
b)電極材料の多孔性電極本体(2)および誘電体(3)を少なくとも含有する多孔性本体の上に、導電性ポリマーの粒子B)および分散剤D)を少なくとも含有する分散液A)を適用することと、
c)分散剤D)を、少なくとも部分的に除去および/または硬化させて、誘電体表面を完全にまたは部分的に覆う固体電解質(4)を形成させることと、
を少なくとも含む電解質キャパシタを製造する方法において、
多孔性電極本体(2)の陽極酸化中の最大陽極処理電圧が30Vより高く、かつ分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)が、1から100nmの平均直径を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
粒子B)から製造された皮膜が、乾燥状態において10S/cmより高い比導電率を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)が、150nm未満の直径分布のd90値を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
分散液A)における導電性ポリマーの粒子B)が、1nmより大きい直径分布のd10値を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
分散液A)が、5000mg/kg未満の金属陽イオンの含有量を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
分散液A)が、1000mg/kg未満の遷移金属の含有量を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
分散液A)が、1000mg/kg未満の鉄含有量を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
導電性ポリマーの粒子B)が、置換されていてよい少なくとも1つのポリチオフェン、ポリピロール、またはポリアニリンを含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
導電性ポリマーの粒子B)が、一般式(I)または一般式(II)の繰返し単位、あるいは一般式(I)および(II)の繰返し単位
【化1】

[式中、
Aが、置換されていてよいC1−C5−アルキレン基を表し、
Rが、線形、または分枝の置換されていてよいC1−C18−アルキル基、置換されていてよいC5−C12−シクロアルキル基、置換されていてよいC6−C14−アリール基、置換されていてよいC7−C18−アラルキル基、置換されていてよいC1−C4−ヒドロキシアルキル基、またはヒドロキシル基を表し、
xが、0から8の整数を表し、
複数の基RがAに結合している場合、これらは同一または異なってよい]を有する少なくとも1つのポリチオフェンを含有することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
粒子B)に含まれる導電性ポリマーが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
粒子B)が、少なくとも1つの高分子陰イオンをさらに含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
高分子陰イオンが、高分子カルボン酸またはスルホン酸、好ましくはポリスチレンスルホン酸の陰イオンであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分散液A)が、分散剤D)として、有機溶媒、水、または有機溶媒と水の混合物を含有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
分散液A)が、架橋剤および/または表面活性物質ならびに/あるいは他の添加剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
分散液A)が、他の添加剤として、エーテル−、ラクトン−、アミド−、またはラクタム基を有する化合物、スルホン、スルホキシド、糖、糖誘導体、糖アルコール、フラン誘導体、および/またはジアルコールもしくはポリアルコールを含有することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
分散液A)が、pH感受性誘電体の場合に4から8のpHに調整されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
分散液A)の粘度が、1から200mPa・s(20℃および100s−1の剪断速度において測定)であることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
電極本体(2)の電極材料が、バルブ金属またはバルブ金属に同等な電気特性を有する化合物であることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
バルブ金属またはバルブ金属に同等な電気特性を有する化合物が、タンタル、ニオブ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、これらの金属の少なくとも1つと他の元素との合金もしくは化合物、またはNbO、あるいはNbOと他の元素との合金または化合物であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
電極材料が、ニオブまたはNbOに基づくことを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
ニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料が、ニオブ、NbO、xが0.8から1.2の値をとることができる酸化ニオブNbOx、窒化ニオブ、ニオブ酸窒化物、またはこれらの材料の混合物、あるいはこれらの材料の少なくとも1つと他の元素との合金もしくは化合物であることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
誘電体が、バルブ金属の酸化物、またはバルブ金属に同等な電気特性を有する化合物の酸化物であることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
分散液A)の適用と、分散剤の少なくとも部分的な除去および/または硬化を、複数回実施することを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
分散液A)を適用した後、誘電体で覆われた電極本体の外部表面上にある導電性ポリマーの粒子B)を少なくとも部分的に除去することを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
分散液A)を適用し、固体電解質を形成した後、キャパシタに、他の導電性外部接点(5、6、8)を場合により設け、場合により接触および封入することを特徴とする、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1から25までのいずれか1項に記載の方法で製造される電解質キャパシタ。
【請求項27】
電解質キャパシタが、誘電体で覆われる電極本体の質量に基づいて、100から100000μC/gの比電荷を有することを特徴とする、請求項26に記載の電解質キャパシタ。
【請求項28】
電解質キャパシタが、15Vより大きい公称電圧を有することを特徴とする、請求項26から27までのいずれか1項に記載の電解質キャパシタ。
【請求項29】
電解質キャパシタが、公称電圧の150%を超える降伏電圧を有することを特徴とする、請求項26から28までのいずれか1項に記載の電解質キャパシタ。
【請求項30】
電解質キャパシタが、陽極処理電圧の40%を超える降伏電圧を有することを特徴とする、請求項26から29までのいずれか1項に記載の電解質キャパシタ。
【請求項31】
導電性ポリマーを含有する固体電解質および15Vを超える公称電圧を有する電解質キャパシタであって、降伏電圧(ボルトで表される)の酸化物膜の厚さ(nmで表される)および酸化物の層形成因子(nm/Vで表される)の商に対する比が、0.4より大きいことを特徴とする、電解質キャパシタ。
【請求項32】
電極材料が、アルミニウムに基づき、誘電体の厚さが、30nmより大きいことを特徴とする、請求項26から31までのいずれか1項に記載の電解質キャパシタ。
【請求項33】
電極材料が、タンタルに基づき、誘電体の厚さが、50nmより大きいことを特徴とする、請求項26から31までのいずれか1項に記載の電解質キャパシタ。
【請求項34】
電極材料が、ニオブまたは酸化ニオブに基づき、誘電体の厚さが、80nmより大きいことを特徴とする、請求項26から31までのいずれか1項に記載の電解質キャパシタ。
【請求項35】
電子回路における請求項26から34までのいずれか1項による電解質キャパシタの使用。
【請求項36】
請求項26から34までのいずれか1項に記載の電解質キャパシタを備える電子回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−9010(P2013−9010A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223055(P2012−223055)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2008−530374(P2008−530374)の分割
【原出願日】平成18年9月2日(2006.9.2)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany