説明

高分子ゲル電解質とその製造方法

【課題】高分子ゲル電解質とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、基材多孔質膜と、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーであって、上記基材多孔質膜に担持されていると共に、有機溶媒にて膨潤せしめられたポリマーと、電解質塩とからなることを特徴とする高分子ゲル電解質が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子ゲル電解質とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気化学素子に広く用いられている固体電解質は、固体状態でイオン伝導性の高い物質であって、なかでも、高分子物質を固体として用いる高分子固体電解質は、最近、次世代リチウムイオン二次電池用電解質として、特に、注目されており、世界的に研究が推進されている。このような高分子固体電解質は、従来の電解質溶液に比べて、液漏れのおそれがなく、また、薄膜にすることができる等、その形状も、自由度が大きい。
【0003】
しかしながら、従来、知られている非水系の高分子固体電解質は、電解質溶液に比べて、イオン伝導度が著しく低いという問題がある。例えば、従来、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド等の鎖状ポリマーやポリフォスファゼン等の櫛型ポリマー等のポリマー材料を電解質塩と複合化してなる非水系高分子固体電解質が知られているが、従来、伝導度が室温で10-3S/cmを上回るものは見出されていない。
【0004】
例えば、このような従来の固体電解質を用いた電池によれば、固体電解質が液体電解質に比べてイオン伝導度が著しく劣るので、電池が高い内部抵抗を有することとなり、実用的な充放電を行なうことができない。また、電極の形状が充放電等によって変化するような場合には、固体電解質がそのような電極の形状の変化に追随できない結果、電極と電解質との間の接触が不十分となって、充放電することができなくなる。
【0005】
そこで、近年、このような固体電解質のイオン伝導性を改善するために、例えば、固体電解質に可塑剤としてプロピレンカーボネートやγ−ブチロラクトンのような有機溶媒を配合することが提案されている。
【0006】
例えば、J. Electrochem. Soc., Vol. 137, 1657-1658 (1990) には、過塩素酸リチウムを溶解させたプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒よりなる有機電解液をポリアクリロニトリルでゲル化し、シート状とした高分子ゲル電解質が提案されている。特開平11−16579号公報には、ポリアクリロニトリルと電解質塩と非水溶媒とからなる高分子ゲル電解質が提案されている。また、特開平8−298126号公報には、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドをポリマー成分とし、溶媒としてγ−ブチロラクトンを用いてなる高分子ゲル電解質が提案されている。
【0007】
しかし、このような高分子ゲル電解質は、強度が低いので、フィルム化するためには、厚みを大きくせざるを得ず、その結果、このような高分子ゲル電解質を挟んで電極を設けて電池を組み立てれば、電極間距離が大きく、内部抵抗が高くなり、十分な充放電を行なうことができない。
【0008】
そこで、このような従来の高分子ゲル電解質における強度上の問題を解決するために、特開平11−40128号公報には、電解質溶液を保持することができる高分子物質、例えば、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体とポリオレフィン樹脂のような樹脂との混合物を加熱、混練し、シートに成形し、延伸して、多孔質膜とし、これに電解質溶液を含浸させ、ゲル化して、高分子ゲル電解質を得る方法が記載されている。また、特開平11−353935号公報には、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン等のような非水電解質を形成するための非水(有機)溶媒と共にゲルを形成するゲル形成性ポリマーからなる繊維、例えば、ポリアクリロニトリル−アクリル酸メチル共重合体樹脂繊維と、上記溶媒に対して耐性を有する繊維、例えば、ポリオレフィン繊維とからなる繊維構造体を形成し、これを上記非水溶媒にてゲル体を形成させ、かくして、高分子ゲル電解質を得る方法が記載されている。
【0009】
このような高分子ゲル電解質においては、いわば補強材である上記ポリオレフィン樹脂やポリオレフィン繊維によって、得られる高分子ゲル電解質は、フィルム形状においても、比較的高い強度を有するものの、実用的な強度を得るためには、これら補強材を相対的に多く用いる必要があり、その結果、電解質溶液を保持することができる高分子物質やゲル形成性ポリマーの配合割合を相対的に少なくせざるを得ない。従って、このような高分子ゲル電解質においては、これら高分子物質やゲル形成性ポリマーが不完全なゲル体を形成しやすく、その結果、液漏れがないという高分子ゲル電解質の本来的な利点が損なわれるうえに、補強材の存在によって、高分子ゲル電解質が完全な一体性と連続性をもたないので、得られる高分子ゲル電解質のイオン伝導性が低くなる問題がある。勿論、電解質溶液を保持する高分子物質やゲル形成性ポリマーの配合割合を多くすれば、得られる高分子ゲル電解質は、高いイオン伝導性を有するが、強度が低くなる。
【0010】
更に、従来より知られている高分子ゲル電解質は、一般に、電極に対する接着性を殆どもたない。従って、従来の固体電解質を電極積層型や断面楕円状捲回型の電池に、例えば、セパレータとして用いるとき、電極間の面圧が不均一となり、また、低くなるために、電極間距離を一定に保つことが困難となって、電極間距離が部分的に大きくなることがある。このように、電池において、電極間距離が部分的に大きい場合には、すぐれた電池特性を得ることが困難である。
【0011】
また、上述したように、高分子ゲル電解質は電池用セパレータとして有用である。ここに、電池用セパレータには、正極と負極との直接接触による短絡を防止すると共に、正極と負極との間のイオン透過性を確保するために、多数の微細孔を有する多孔質膜が用いられている。このような電池用セパレータに用いる多孔質膜には、電池特性に関係して、種々の特性が要求されているが、なかでも、電池特性の向上のために、特に、薄膜化と高強度化が望まれている。
【0012】
従って、従来、電池用セパレータのための多孔質膜は、例えば、特開平9−12756号公報に記載されているように、成形したシートを高倍率延伸する方法にて製造されている。従って、そのような多孔質膜からなる電池用セパレータは、電池が異常昇温した場合のような高温環境下では、著しく収縮し、場合によっては、電極間の隔壁として機能しなくなるという問題がある。そこで、電池の安全性を向上させるために、このような高温環境下での電池用セパレータの熱収縮率の低減が重要な課題とされている。この点に関し、高温環境下での電池用セパレータの熱収縮を抑制するために、特開平5−310989号公報には、製造工程中に延伸処理を含まない方法によって、多孔質膜を製造する方法が提案されているが、反面、このようにして得られる多孔質膜は、延伸が施されていないので、強度が十分ではないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来の高分子ゲル電解質における上述したような問題を解決するためになされたものであって、イオン伝導性と強度を兼ね備えていると共に、それ自体、接着性を有するイオン伝導性多孔質膜、そのための多孔質膜及びこれらより得られる高分子ゲル電解質を提供することを目的とする。特に、本発明は、基材多孔質膜にポリマーの架橋体をポリマー成分(ポリマーマトリックス)として担持させてなり、高温環境下においても、熱収縮率の小さい高分子ゲル電解質を提供することを目的とする。また、本発明は、このような高分子ゲル電解質を用いてなる電池又はキャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーを基材多孔質膜に担持させてなるものであって、それ自体で、20mm幅での180°引き剥がし接着力が2N以上の接着性を有する接着性多孔質膜が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーと電解質塩とを基材多孔質膜に担持させてなるものであって、それ自体で、20mm幅での180°引き剥がし接着力が2N以上の接着性を有するイオン伝導性接着性多孔質膜が提供される。
【0016】
更に、本発明によれば、基材多孔質膜と、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーであって、上記基材多孔質膜に担持されていると共に、有機溶媒にて膨潤せしめられたポリマーと、電解質塩とからなることを特徴とする高分子ゲル電解質が提供される。
【0017】
特に、本発明によれば、上記ポリマーとして、主鎖にポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有する下記のポリエーテル多元共重合体を用いてなる高分子ゲル電解質が提供される。
【0018】
即ち、本発明によれば、基材多孔質膜と、モノマー成分として、下記(1)式の成分1〜99モル%、(2)式の成分99〜1モル%、及び(3)又は(4)式で表される反応性基含有成分0〜20モル%からなり、繰り返し構造単位が(5)及び(6)式、(5)及び(6)及び(7)式、(5)及び(6)及び(8)式のいずれかで表され、重量平均分子量が104 〜107 の範囲内にあるポリエーテル多元共重合体であって、上記基材多孔質膜に担持されていると共に、有機溶媒にて膨潤せしめられたポリエーテル多元共重合体と、電解質塩とからなることを特徴とする高分子ゲル電解質が提供される。
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
(上記において、(1)式及び(5)式中、R及びR' はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、R1 は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基より選ばれる基であり、側鎖部分となるオキシアルキレン単位の重合度kは1〜12である。(2)及び(6)式中、R' は水素原子又はメチル基である。(3)及び(7)式中、R' は水素原子又はメチル基であり、R2 はエチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基、エポキシ基を含む置換基(9)式又はハロゲン原子を含むアルキル基を示し、(4)及び(8)式中、R3 は反応性ケイ素含有置換基を表す。(9)式中、Aは有機残基を表す。)このような高分子ゲル電解質は、本発明に従って、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーを基材多孔質膜に担持させて、接着性多孔質膜とし、電解質塩を溶解すると共に上記ポリマーを膨潤させる有機溶媒と上記電解質塩とからなる電解液を上記接着性多孔質膜に接触させることによって得ることができる。
【0029】
また、本発明による高分子ゲル電解質は、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーと第1の電解質塩とを基材多孔質膜に担持させて、イオン伝導性接着性多孔質膜とし、上記ポリマーを膨潤させる有機溶媒とこの有機溶媒に溶解する第2の電解質塩とからなる電解液を上記イオン伝導性接着性多孔質膜に接触させることによっても得ることができる。
【0030】
更に、本発明による高分子ゲル電解質は、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーと電解質塩とを基材多孔質膜に担持させて、イオン伝導性接着性多孔質膜とし、上記電解質塩を溶解すると共に上記ポリマーを膨潤させる有機溶媒を上記イオン伝導性接着性多孔質膜に接触させることによっても得ることができる。
【0031】
また、本発明によれば、特に、上記ポリマーとして、主鎖にポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有する下記のポリエーテル多元共重合体を用いる高分子ゲル電解質の製造方法が提供される。
【0032】
即ち、第1に、モノマー成分として、下記(1)式の成分1〜99モル%、(2)式の成分99〜1モル%、及び(3)又は(4)式で表される反応性基含有成分0〜20モル%からなり、繰り返し構造単位が(5)及び(6)式、(5)及び(6)及び(7)式、(5)及び(6)及び(8)式のいずれかで表され、重量平均分子量が104 〜107 の範囲内にあるポリエーテル多元共重合体を基材多孔質膜に担持させて、接着性多孔質膜とし、電解質塩を溶解すると共に上記ポリエーテル多元共重合体を膨潤させる有機溶媒と上記電解質塩とからなる電解液を上記接着性多孔質膜に接触させることを特徴とする高分子ゲル電解質の製造方法が提供される。
【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
【化12】

【0036】
【化13】

【0037】
【化14】

【0038】
【化15】

【0039】
【化16】

【0040】
【化17】

【0041】
【化18】

【0042】
(上記において、(1)式及び(5)式中、R及びR' はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、R1 は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基より選ばれる基であり、側鎖部分となるオキシアルキレン単位の重合度kは1〜12である。(2)及び(6)式中、R' は水素原子又はメチル基である。(3)及び(7)式中、R' は水素原子又はメチル基であり、R2 はエチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基、エポキシ基を含む置換基(9)式又はハロゲン原子を含むアルキル基を示し、(4)及び(8)式中、R3 は反応性ケイ素含有置換基を表す。(9)式中、Aは有機残基を表す。)第2に、上記ポリエーテル多元共重合体と第1の電解質塩とを基材多孔質膜に担持させて、イオン伝導性接着性多孔質膜とし、上記ポリエーテル共重合体を膨潤させる有機溶媒とこの有機溶媒に溶解する第2の電解質塩とからなる電解液を上記イオン伝導性接着性多孔質膜に接触させることを特徴とする高分子ゲル電解質の製造方法が提供される。
【0043】
第3に、上記ポリエーテル多元共重合体と電解質塩とを基材多孔質膜に担持させて、イオン伝導性接着性多孔質膜とし、上記電解質塩を溶解すると共に上記ポリエーテル多元共重合体を膨潤させる有機溶媒を上記イオン伝導性接着性多孔質膜に接触させることを特徴とする高分子ゲル電解質の製造方法が提供される。
【0044】
更に、本発明によれば、上記ポリエーテル多元共重合体をポリマー成分として有する高分子ゲル電解質において、上記ポリエーテル多元共重合体が架橋されていることを特徴とする高分子ゲル電解質とその製造方法が提供される。
【0045】
上記のほか、本発明によれば、上記高分子ゲル電解質を用いてなる電池又はキャパシタが提供される。
【発明の効果】
【0046】
以上のように、本発明による接着性多孔質膜は、特に選択したポリマーを基材多孔質膜に担持させてなり、それ自体で接着力を有し、これに電解質塩を有機溶媒に溶解させてなる電解液を接触させて、上記ポリマーを膨潤させることによって、高分子ゲル電解質を得ることができ、また、本発明によるイオン伝導性接着性多孔質膜は、特に選択したポリマーと電解質塩とを多孔質膜に担持させてなり、それ自体で接着力を有し、これに上記電解質塩を溶解する溶媒や、又は上記電解質塩を含む電解液を接触させることにより、同様に、高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0047】
また、本発明によれば、上記ポリマーとして、反応性基を有するモノマー成分を有するポリエーテル多元共重合体を用い、上記反応性基を利用して、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させることによって、この架橋体をポリマー成分(マトリックス)とする高性能の高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0048】
更に、本発明による上記接着性多孔質膜やイオン伝導性接着性多孔質膜は、それ自体で接着力を有するので、例えば、電池、キャパシタ等の製造において、電極と積層し、又は捲回して、電極をこれら多孔質膜に接着させて、多孔質膜−電極構造体を形成した後、高分子ゲル電解質とすることによって、電極間の面圧を均一に高くして、電極間距離を一定に保つことができ、かくして、すぐれた特性を有する電池等を得ることができる。
【0049】
特に、前述したように、本発明に従って、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を基材多孔質膜にポリマー成分として担持させてなる高分子ゲル電解質は、強度にすぐれると共に、高温環境下においても、面積熱収縮率が基材多孔質膜に比べて、10%以上も低減されていて、小さいので、例えば、電池用セパレータとして有利に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明による接着性多孔質膜は、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーを基材多孔質膜に担持させてなり、それ自体で、20mm幅での180°引き剥がし粘着力が2N以上の接着性を有する。
【0051】
本発明において、上記180°引き剥がし粘着力は、JIS Z 0237に準じて、被着体としてステンレス板を用いて測定するものとする。
【0052】
本発明において、基材多孔質膜は、本発明に従って、これを用いて最終的に得られる高分子ゲル電解質を電池、キャパシタ等のセパレータとして用いることを考慮すれば、強度を有すると共に、電解液に溶解せず、耐酸化還元性を有すれば、特に、限定されるものではないが、例えば、超高分子量ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が好ましく用いられる。
【0053】
同様に、本発明において、基材多孔質膜は、本発明に従って、これを用いて最終的に得られる高分子ゲル電解質を電池、キャパシタ等のセパレータとして用いることを考慮すれば、特に、限定されるものではないが、空孔率が30〜95%、好ましくは、33〜90%、特に好ましくは、35〜85%の範囲にある。空孔率が低すぎるときは、イオン伝導経路が少なくなり、例えば、得られる高分子ゲル電解質を電池用セパレータとして用いた場合、十分な電池特性を得ることができない。しかし、空孔率が高すぎるときは、基材多孔質膜が強度において十分でなく、十分な強度を有する基材多孔質膜を得るには、膜厚を大きくせざるを得ず、膜厚をこのように大きくすれば、前述したように、得られる高分子ゲル電解質を電池用セパレータとして用いた場合、内部抵抗を高くする。
【0054】
また、基材多孔質膜は、その通気度が1500秒/100mL以下、好ましくは、1000秒/100mL以下であることが好ましい。通気度が高すぎるときは、得られる高分子ゲル電解質のイオン伝導性が低くなり、例えば、得られる高分子ゲル電解質を電池用セパレータとして用いた場合、十分な電池特性を得ることができない。更に、基材多孔質膜は、25μm当りの針貫通強度が3N以上であることが好ましい。針貫通強度が小さすぎるときは、得られる高分子ゲル電解質を電池用セパレータとして用いた場合、電極間に面圧が加わった際に基材多孔質膜が破断して、内部短絡を引き起こすおそれがある。
【0055】
本発明によれば、このような基材多孔質膜に主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーを担持させることによって、それ自体で接着力を有する接着性多孔質膜を得ることができる。
【0056】
このようなポリマーを基材多孔質膜に担持させるには、例えば、これらポリマーを適宜の溶媒、通常、有機溶媒に溶解させ、得られた塗工液を基材多孔質膜に塗布し、又は塗工液中に基材多孔質膜を浸漬した後、加熱乾燥して、上記有機溶媒を除去すればよい。尚、本発明において、接着性多孔質膜は、このように、ポリマーを基材多孔質膜に担持させた結果、基材多孔質膜のすべての空孔中にポリマーが充填されたものをも含むものとする。
【0057】
本発明において、上記有機溶媒は、上記側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーを溶解する一方、基材多孔質膜を溶解させなければ、特に、限定されるものではないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゼン、トルエン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等や、また、これらの任意の混合溶媒が好ましく用いられる。
【0058】
本発明によれば、基材多孔質膜への上記ポリマーの担持量は、基材多孔質膜1cm2 当り、通常、0.01〜5mgの範囲であり、好ましくは、0.03〜3mgの範囲である。
【0059】
本発明によれば、上記ポリマーのなかでも、主鎖にポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレン構造を有するポリエーテル多元共重合体が好ましく用いられる。特に、本発明によれば、主鎖にポリエチレンオキシド又はポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造を有し、側鎖に鎖状オリゴエチレン構造、鎖状オリゴプロピレン構造又は鎖状オリゴエチレンプロピレン構造(特に、鎖状オリゴエチレン構造又は鎖状オリゴプロピレン構造、なかでも、前者)を有するポリエーテル多元共重合体が好ましく用いられる。
【0060】
このようなポリエーテル多元共重合体は、既に、例えば、特開昭63−154736号公報、特開平9−324114号公報、特開平10−130487号公報、特開平10−176105号公報、特開平10−204172号公報等に記載されているように知られているものであるが、以下にこのようなポリエーテル多元共重合体について説明する。
【0061】
本発明において好ましく用いることができるポリエーテル多元共重合体は、モノマー成分として、下記(1)式の成分1〜99モル%、(2)式の成分99〜1モル%、及び(3)又は(4)式で表される反応性基含有成分0〜20モル%を用いて得られるものであって、その繰り返し構造単位が(5)及び(6)式、(5)及び(6)及び(7)式、(5)及び(6)及び(8)式のいずれかで表され、その重量平均分子量は、104 〜107 の範囲にある。
【0062】
【化19】

【0063】
【化20】

【0064】
【化21】

【0065】
【化22】

【0066】
【化23】

【0067】
【化24】

【0068】
【化25】

【0069】
【化26】

【0070】
【化27】

【0071】
(上記において、(1)式及び(5)式中、R及びR' はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、R1 は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基より選ばれる基であり、側鎖部分となるオキシアルキレン単位の重合度kは1〜12である。(2)及び(6)式中、R' は水素原子又はメチル基である。(3)及び(7)式中、R' は水素原子又はメチル基であり、R2 はエチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基、エポキシ基を含む置換基(9)式又はハロゲン原子を含むアルキル基を示し、(4)及び(8)式中、R3 は反応性ケイ素含有置換基を表す。(9)式中、Aは有機残基を表す。)本発明において用いるこのようなポリエーテル多元共重合体は、例えば、開環重合用触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機スズ−リン酸エステル縮合物触媒系等を用いて、上記(1)式及び(2)式に対応するモノマーに、必要に応じて、(3)式又は(4)式に対応する各モノマーを添加し、溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜80℃、撹拌下で反応させることによって得られる。なかでも、得られるポリエーテル多元共重合体の重合度や性質等の点から、触媒としては、有機スズ−リン酸エステル縮合物触媒系が特に好ましく用いられる。
【0072】
上記ポリエーテル多元共重合体の製造には、モノマーとして、モノマー成分(1)式、(2)式、及び(3)式又は(4)式で表されるものが(1)式1〜99モル%、(2)式99〜1モル%及び(3)式又は(4)式0〜20モル%の割合で用いられ、好ましくは(1)式2〜95モル%、(2)式98〜5モル%及び(3)式又は(4)式0〜15モル%の割合で用いられる。
【0073】
本発明で用いるポリエーテル多元共重合体の製造において、上記モノマー成分として、(1)式及び(2)式で表されるモノマー成分を用いることは必須である。後述するように、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得るためには、上記モノマー成分と共に、反応性基含有モノマー成分として、更に、モノマー成分(3)式及び(4)式から選ばれる反応性基含有モノマー成分を用い、これらを共重合させて、ポリエーテル多元共重合体を製造する。このように、反応性基含有モノマー成分を共重合体成分単位として有するポリエーテル多元共重合体は、後述するように、その反応性基を利用して、例えば、必要に応じて、架橋助剤と重合開始剤の存在下に加熱することによって、架橋せしめられて、架橋体を生成する。
【0074】
例えば、このように、反応性基含有モノマー成分を有するポリエーテル多元共重合体を電解質塩と共に多孔質膜に担持させて、イオン伝導性接着性多孔質膜とし、これに更に電解液を接触させて、上記ポリエーテル多元共重合体を膨潤させた後、更に、加熱することによって、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させることができ、かくして、ポリエーテル多元共重合体の架橋体をポリマー成分(マトリックス)として有する高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0075】
ポリエーテル多元共重合体の製造において、上記(2)式のモノマー成分が99モル%を越えるときは、ガラス転移温度の上昇とオキシエチレン鎖の結晶化を招き、結果として、得られる高分子ゲル電解質のイオン伝導性を著しく悪化させることとなる。一般に、ポリエチレンオキシドの結晶性を低下させることによって、得られるポリマーのイオン伝導性が向上することは知られているが、本発明において用いるポリエーテル多元共重合体によれば、ポリエチレンオキシドの結晶性を低下させることによるイオン伝導性の向上効果が非常に大きい。
【0076】
上記(1)式のモノマー成分において、R' は水素原子又はメチル基を示し、また、上記(1)式中のオキシアルキレン単位において、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、それぞれすべてが水素原子でもよく、すべてがメチル基でもよく、また、一部が水素原子であり、残余がメチル基でもよい。従って、このオキシアルキレン単位は、オキシエチレン単位でも、オキシプロピレン基単位でもよく、また、オキシエチレン/オキシプロピレン単位でもよいが、好ましくは、オキシエチレン単位又はオキシプロピレン単位であり、特に、オキシエチレン単位である。更に、オキシアルキレン単位の重合度kは1〜12が好ましい。重合度kの値が12を越えるときは、得られる高分子ゲル電解質のイオン伝導性が低下する。
【0077】
また、本発明において用いるポリエーテル多元共重合体の分子量は、加工性、成形性、機械的強度、柔軟性を得るためには、重量平均分子量が104 〜107、好ましくは、105 〜5x106 の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が104 より小さいと、十分な機械的強度を得ることができない。他方、107 を越えるときは、溶解性に問題を生じる。
【0078】
更に、多元ポリエーテル共重合体のガラス転移温度は、−60℃以下が好ましく、融解熱量は70J/g以下が好ましい。ガラス転移温度と融解熱量は示差走査熱量計(DSC)により測定する。本発明において用いるこのような多元ポリエーテル共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよいが、ランダム共重合体の方がよりポリエチレンオキシドからなるポリマー主鎖の結晶性を低下させる効果が大きいので好ましい。
【0079】
前記(1)式で表されるモノマー成分の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールグリシジルメチルエーテル、ジプロピレングリコールグリシジルメチルエーテル等を挙げることができる。本発明によれば、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0080】
前記(2)式で表されるモノマー成分は、具体的には、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドである。本発明によれば、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0081】
前記(3)式で表される反応性基含有モノマー成分のうち、エチレン性不飽和基含有モノマー成分としては、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、4,5−エポキシ−2−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル−4−ヘキセノエート等(以上は、R’が水素原子のものである。)や、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルアリルエーテル、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン等(以上は、R’がメチル基のものである。)等が用いられる。本発明によれば、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。また、本発明によれば、これらのなかでも、特に、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等が好ましく用いられる。
【0082】
また、前記(3)式で表される反応性基含有モノマー成分のうち、ケイ素含有モノマーの具体例として、例えば、下記(10)又は(11)式のものを挙げることができる。
【0083】
【化28】

【0084】
【化29】

【0085】
また、上記(4)式で表される反応性ケイ素含有モノマーの具体例として、例えば、下記(12)式のものを挙げることができる。
【0086】
【化30】

【0087】
上記(10)〜(12)式において、R' は水素原子又はメチル基であり、R4 、R5 、R6 は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよいが、少なくとも一つはアルコキシル基であり、残りがアルキル基である。mは1〜6を表す。
【0088】
上記(10)式で表されるモノマーとしては、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシエチルトリメトキシシラン、グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシブチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシブチルメチルトリメトキシシラン、グリシドキシヘキシルメチルジメトキシシラン、グリシドキシヘキシルメチルトリメトキシシラン等(以上は、R’が水素原子のものである。)や、2,3−エポキシ−2−メチルプロポキシメチルトリメトキシシラン、2,3−エポキシ−2−メチルプロポキシメチルメチルジメトキシシラン、2,3−エポキシ−2−メチルプロポキシメチルジメチルメトキシシラン等(以上は、R’がメチル基のものである。)を挙げることができる。本発明によれば、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0089】
上記(11)式で表されるモノマーとしては、例えば、1,2−エポキシプロピルトリメトキシシラン、1,2−エポキシプロピルメチルジメトキシシラン、1,2−エポキシプロピルジメチルメトキシシラン、1,2−エポキシブチルトリメトキシシラン、1,2−エポキシブチルメチルジメトキシシラン、1,2−エポキシペンチルトリメトキシシラン、1,2−エポキシペンチルメチルジメトキシシラン、1,2−エポキシヘキシルトリメトキシシラン、1,2−エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン等(以上は、R’が水素原子のものである。)や、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルメチルジメトキシシラン、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルジメチルメトキシシラン等(以上は、R’がメチル基のものである。)を挙げることができる。本発明によれば、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0090】
また、上記(12)式で表されるモノマーとしては、例えば、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−メチルメチルジメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−エチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−エチルメチルジメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−プロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−プロピルメチルジメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−ブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−ブチルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0091】
本発明においては、上記反応性基含有モノマー成分のなかでも、特に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、1,2−エポキシブチルトリメトキシシラン、1,2−エポキシペンチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0092】
また、前記(3)式で表される置換基(9)式を有するエポキシ基含有モノマーにおいて、前記有機残基Aは、その構造において、特に、限定されるものではないが、例えば、(ポリ)メチレン基のような(ポリ)アルキレン基、エーテル結合を基中に有する炭化水素基等を挙げることができる。
【0093】
従って、前記(3)式で表される置換基(9)式を有するエポキシ基含有モノマーとしては、例えば、下記(13)〜(15)式で表される化合物を例示することができる。
【0094】
【化31】

【0095】
【化32】

【0096】
【化33】

【0097】
上記(13)式において、R7 及びR8 は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、(13)式及び(14)式中のnは、0〜12の範囲の整数である。
【0098】
上記(13)式で表されるモノマーとしては、例えば、2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル、エチレングリコール−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル、ジエチレングリコール−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル等を挙げることができる。
【0099】
上記(14)式で表されるモノマーとしては、例えば、2−メチル−1,2,3,4−ジエポキシブタン、2−メチル−1,2,4,5−ジエポキシペンタン、2−メチル−1,2,5,6−ジエポキシヘキサン等を挙げることができる。
【0100】
上記(15)式で表されるモノマーとしては、例えば、ヒドロキノン−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル、カテコール−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル等を挙げることができる。
【0101】
上記エポキシ基含有モノマーのなかでは、特に、2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル、エチレングリコール−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル等が好ましい。
【0102】
多元ポリエーテル共重合体の製造において、モノマー成分として、前記(1)及び(2)式で表されるものと共に、前記(3)又は(4)式で表されるものを用いることによって、分子中に反応性基を有するポリエーテル多元共重合体を得ることができ、このようなポリエーテル多元共重合体は、その反応性基の反応性を利用することによって、架橋体とすることができる。このような架橋体を得るに際して、必要に応じて、反応性基を有する多官能性架橋助剤を併用することができ、このような架橋助剤を用いることによって、分子中に反応性基含有モノマー成分単位を有するポリエーテル多元共重合体の架橋反応、即ち、ポリエーテル多元共重合体の架橋体の生成を促進させることができる。
【0103】
このような本発明による接着性多孔質膜は、それ自体で、接着性を有し、20mm幅での180°引き剥がし接着力が2N以上である。本発明において、接着性多孔質膜の有する接着力の上限は、特に、限定されるものではないが、上記20mm幅での180°引き剥がし接着力にて、通常、20Nである。
【0104】
従って、このような接着性多孔質膜を電極と積層し、又は捲回して、電極が多孔質膜に接着した多孔質膜−電極構造体を形成させた後、これを電池、キャパシタ等の仕掛品に組み込み、後述するように、これに電解質塩を有機溶媒に溶解させてなる電解液を接触させて、ポリマーを膨潤させ、高分子ゲル電解質を形成して、電池等を組み立てるとき、電極間の面圧を均一に高くすることができるので、容易に電極間距離を一定に保つことができ、かくして、すぐれた特性を有する電池等を得ることができる。
【0105】
本発明によるイオン伝導性接着性多孔質膜は、前記ポリマー、好ましくは、前記ポリエーテル多元共重合体と共に、電解質塩を前記基材多孔質膜に担持させてなるものであり、上記接着性多孔質膜と同様に、それ自体で、20mm幅での180°引き剥がし接着力が2N以上の接着性を有する。
【0106】
このようなイオン伝導性接着性多孔質膜は、好ましくは、前記ポリマーと共に電解質塩を適宜の溶媒、通常、有機溶媒に溶解させ、得られた塗工液を基材多孔質膜に塗布したり、また、塗工液中に基材多孔質膜を浸漬した後、加熱乾燥して、上記有機溶媒を除去することによって得ることができる。
【0107】
本発明において、上記有機溶媒は、前記ポリマーと共に電解質塩を溶解する一方、基材多孔質膜を溶解させなければ、特に、限定されるものではないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゼン、トルエン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等や、また、これらの任意の混合溶媒が好ましく用いられる。
【0108】
本発明によれば、基材多孔質膜に担持させる電解質塩は、上記ポリマー100重量部に対して、通常、1〜100重量部の割合であることが好ましい。後述するように、本発明による接着性多孔質膜やイオン伝導性接着性多孔質膜から得られる高分子ゲル電解質においても、その電解質塩の担持量は、上記ポリマー100重量部に対して、通常、1〜100重量部の割合とすることが好ましい。
【0109】
本発明において、イオン伝導性接着性多孔質膜を得るために、基材多孔質膜に担持させる上記電解質塩は、特に、限定されるものではなく、このイオン伝導性接着性多孔質膜から得られる本発明による高分子ゲル電解質の要求特性や用途によって適宜に選択すればよいが、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属又は3級若しくは4級アンモニウム塩等をカチオン成分とし、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、六フッ化リン酸、過塩素酸等の無機酸又はカルボン酸、有機スルホン酸、フッ素置換有機スルホン酸等の有機酸をアニオン成分とする塩を例示することができる。
【0110】
本発明においては、電解質塩は、上述したなかでも、アルカリ金属イオンをカチオン成分とし、無機酸又は有機酸、後者では、特に、トリフルオロ酢酸や有機スルホン酸をアニオン成分とする電解質塩が好ましい。そのような電解質塩として、例えば、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸アルカリ金属、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム等のテトラフルオロホウ酸アルカリ金属、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム等のヘキサフルオロリン酸アルカリ金属、トリフルオロ酢酸リチウム等のトリフルオロ酢酸アルカリ金属、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のトリフルオロメタンスルホン酸アルカリ金属等を挙げることができる。
【0111】
本発明によるイオン伝導性接着性多孔質膜も、それ自体で接着性を有するので、これを電極と積層し、又は捲回して、電極を多孔質膜に接着させた多孔質膜−電極構造体を形成した後、上述したようにして、これを電池、キャパシタ等の仕掛品に組み込んで、高分子ゲル電解質とすることによっで、接着性多孔質膜について説明したと同じく、すぐれた特性を有する電池等を得ることができる。
【0112】
本発明による高分子ゲル電解質は、基材多孔質膜と、この基材多孔質膜に担持されていると共に、有機溶媒にて膨潤せしめられた前記ポリマーと、このポリマーと共に基材多孔質膜に担持された前記電解質塩とからなり、この電解質塩は、その少なくとも一部が上記有機溶媒中に溶解されていることが好ましい。特に、本発明によれば、上記ポリマーは、架橋構造を有していること、即ち、架橋体であることが好ましい。
【0113】
このような高分子ゲル電解質は、本発明に従って、前記接着性多孔質膜又はイオン伝導性接着性多孔質膜から種々の方法によって得ることができる。
【0114】
即ち、第1の方法によれば、前記ポリマーを基材多孔質膜に担持させた後(即ち、接着性多孔質膜を得た後)、電解質塩を溶解すると共に上記ポリマーを膨潤させる有機溶媒と上記電解質塩とからなる電解液を上記接着性多孔質膜に接触させることによって、高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0115】
第2の方法によれば、前記ポリマーと第1の電解質塩とを基材多孔質膜に担持させた後(即ち、イオン伝導性接着性多孔質膜を得た後)、上記ポリマーを膨潤させる有機溶媒とこの有機溶媒に溶解する第2の電解質塩とからなる電解液を上記イオン伝導性接着性多孔質膜に接触させることによって、高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0116】
上記第1又は第2の方法によって、本発明による高分子ゲル電解質を得るにあたって、上記電解液の調製に用いる電解質塩は、特に、限定されるものではなく、前述したイオン伝導性接着性多孔質膜を得るために、基材多孔質膜に担持させるものから適宜に選択すればよい。
【0117】
また、上記第1又は第2の方法によって、本発明による高分子ゲル電解質を得るにあたって、上記電解液の調製に用いる有機溶媒は、用いる電解質塩を溶解すると共に、用いるポリマーを膨潤させることができれば、いずれでもよいが、非水溶媒、特に、非プロトン性有機溶媒が好ましく、具体例として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状エステル類を挙げることができ、これらは単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
【0118】
更に、上記第1又は第2の方法において、電解液における電解質塩の濃度は、特に、限定されるものではないが、通常、0.05〜3モル/Lの範囲であり、好ましくは、0.1〜2モル/Lの範囲である。
【0119】
上記第2の方法においては、基材多孔質膜に第1の電解質塩を担持させて、イオン伝導性接着性多孔質膜とし、次いで、第2の電解質塩を含む電解液によって、このイオン伝導性接着性多孔質膜に第2の電解質塩を担持させるが、ここに、上記第1の電解質塩と第2の電解質塩は、特に、限定されるものではなく、例えば、前述したイオン伝導性接着性多孔質膜を得るために、基材多孔質膜に担持させるものから適宜に選択すればよい。また、第1と第2の電解質塩は、相互に同じでもよく、異なっていてもよい。
【0120】
第3の方法によれば、前記ポリマーと電解質塩とを基材多孔質膜に担持させた後(即ち、イオン伝導性接着性多孔質膜を得た後)、上記電解質塩を溶解すると共に上記ポリマーを膨潤させる有機溶媒を上記イオン伝導性接着性多孔質膜に接触させて、上記ポリマーを膨潤させると共に、好ましくは、上記電解質塩の少なくとも一部を上記有機溶媒中に溶解させることによって、高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0121】
即ち、この第3の方法は、第2の方法において用いる電解液に代えて、この電解液のための有機溶媒のみをイオン伝導性接着性多孔質膜に接触させ、電解質塩としては、最初に、イオン伝導性接着性多孔質膜を得るために、基材多孔質膜に担持させたもののみを利用するのである。従って、この第3の方法において用いる上記有機溶媒は、好ましくは、上記第1又は第2の方法において、電解液を調製するために用いた有機溶媒と同じでよい。
【0122】
このように、本発明による高分子ゲル電解質は、前述した接着性多孔質膜やイオン伝導性接着性多孔質膜を用いて、種々の方法によって得ることができるが、特に、本発明によれば、上記第2の方法によれば、高イオン伝導性を有する高分子ゲル電解質を容易に短時間で得ることができる。
【0123】
更に、本発明による好ましい高分子ゲル電解質は、基材多孔質膜と、この基材多孔質膜に担持されていると共に、有機溶媒にて膨潤せしめられた前記ポリエーテル多元共重合体の架橋体と、このポリエーテル多元共重合体の架橋体と共に基材多孔質膜に担持された前記電解質塩とからなるものであり、この電解質塩は、その少なくとも一部が上記有機溶媒中に溶解されていることが好ましい。
【0124】
このような多元ポリエーテル共重合体の架橋体は、前述したように、前記(1)及び(2)式で表されるモノマー成分と共に、前記(3)又は(4)式で表される反応性基含有モノマー成分を共重合させ、かくして、繰返し構造単位として、前記(5)式と(6)式を有すると共に、前記(7)式又は(8)式を有するポリエーテル多元共重合体を得、この(7)式又は(8)式の繰返し構造単位の有するエチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基又はエポキシ基を含む置換基を利用して、ポリエーテル多元共重合体を架橋させることによって得ることができる。
【0125】
このようにして、本発明に従って、基材多孔質膜に担持させたポリエーテル多元共重合体に架橋構造を有せしめることによって、得られる高分子ゲル電解質の機械的強度を一層向上させることができ、また、得られる高分子ゲル電解質は、基材多孔質膜自体に比べて、その面積熱収縮率が10%以上低減される。詳しくは、高分子ゲル電解質の製造に用いた上記有機溶媒に対するポリエーテル多元共重合体の量にもよるが、面積熱収縮率は、基材多孔質膜自体に比べて、通常、10〜70%の範囲で低減される。
【0126】
以下、ポリエーテル多元共重合体の架橋体の製造について説明する。
【0127】
先ず、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得るために、そのエチレン性不飽和基を利用する場合には、有機過酸化物、アゾ化合物等から選ばれるラジカル重合開始剤を用いる熱重合や、紫外線、電子線等の活性エネルギー線による光重合を用いることができる。
【0128】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等、従来より知られているものが適宜に用いられる。具体例として、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。このような有機過酸化物は、その種類にもよるが、通常、ポリエーテル多元共重合体の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0129】
アゾ化合物としては、例えば、アゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等、従来より知られているものが適宜に用いられる。具体例としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔N−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス〔2−ヒドロキシメチル)プロピオニトリル〕等を挙げることができる。
【0130】
このようなアゾ化合物は、その種類にもよるが、通常、ポリエーテル多元共重合体の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0131】
ポリエーテル多元共重合体の有する不飽和基を利用する架橋体の製造に際して、紫外線等の活性エネルギー線照射による場合には、増感助剤として、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル〕ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロイド等のベンゾフェノン類、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類、アジドピレン、3−スルホニルアジド安息香酸、4−スルホニルアジド安息香酸、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)シクロヘキサノン−2,2'−ジスルホン酸(ナトリウム塩)、p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジドベンゾイン酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトン、4,4'−ジアジドカルコン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)アセトン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパノン−2'−スルホン酸、1,3−ビス(4'−アジドシンナシリデン)−2−プロパノン等のアジド類等が適宜に用いられる。
【0132】
紫外線等の活性エネルギー線照射による架橋に適するモノマー成分としては、例えば、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、ケイ皮酸グリシジルエーテル等が特に好ましい。
【0133】
このように、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得るために、そのエチレン性不飽和基自体にて架橋させてもよく、また、必要に応じて、架橋助剤を用いて、ポリエーテル多元共重合体を架橋させてもよい。
【0134】
上記架橋助剤としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、オリゴプロピレングリコールジアクリレート、オリゴプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−グリセロールジメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパンジメタクリレート、1,1,1−トリメチロールエタンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、1,2,6−ヘキサントリアクリレート、ソルビトールペンタメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミドジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルクロトネート、ビニルアクリレート、ビニルアセチレン、トリビニルベンゼン、トリアリルシアニルスルフィド、ジビニルエーテル、ジビニルスルホエーテル、ジアリルフタレート、グリセロールトリビニルエーテル、アリルメタリクレート、アリルアクレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、エチレングリコールアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイミド、フェニルマレイミド、p−キノンジオキシム、無水マレイン酸、イタコン酸等を任意に用いることができる。
【0135】
ポリエーテル多元共重合体の有する反応性ケイ素含有基を利用して、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得るには、反応性ケイ素基と水との反応によればよいが、上記反応性ケイ素含有基の反応性を高めるには、ジブチルスズジラウレ−ト、ジブチルスズマレート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ジブチルスズアセチルアセトナート等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のアルミニウム化合物等の有機金属化合物、又はブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、グアニン、ジフェニルグアニン等のアミン系化合物等を触媒として用いてもよい。
【0136】
また、ポリエーテル多元共重合体の有するエポキシ基を利用して、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得る場合には、ポリアミン類、酸無水物類等が用いられる。
【0137】
ポリアミン類としては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(アミノプロピルピペラジン)、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸ジヒドラジド等の脂肪族ポリアミン、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルイレンジアミン、m−トルイレンジアミン、o−トルイレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン等を挙げることができる。
【0138】
このようなポリアミン類は、その種類にもよるが、通常、ポリエーテル多元共重合体の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0139】
酸無水物類としては、無水マレイン酸、無水ドデセニル琥珀酸、無水クロレンデック酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラメチレン無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸等を挙げることができる。
【0140】
このような酸無水物類は、その種類にもよるが、通常、ポリエーテル多元共重合体の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0141】
本発明によれば、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得るに際して、架橋促進剤を用いてもよい。ポリアミン類の架橋反応における促進剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、ピロガロール、ノニルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等を挙げることができる。酸無水物の架橋反応のための促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−(ジメチルアミノエチル)フェノール、ジメチルアニリン、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル等を挙げることができる。このような促進剤は、その種類にもよるが、通常、架橋剤の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0142】
本発明において、ポリエーテル多元共重合体を架橋させる手段、方法は、上記例示したものに限定されるものではないが、このように、ポリエーテル多元共重合体の架橋体をポリマー成分とする高分子ゲル電解質は、本発明に従って、例えば、次のようにして得ることができる。
【0143】
例えば、前述した第1、第2又は第3の方法において、ポリエーテル多元共重合体(と電解質塩)と共に、必要に応じて、架橋助剤や増感助剤を多孔質膜に担持させ、得られた接着性多孔質膜又はイオン伝導性接着性多孔質膜に前述したような有機溶媒又は電解液を接触させて、上記ポリエーテル多元共重合体を膨潤させた後、更に、加熱し、又は活性エネルギー線を照射する等、目的とする架橋方法に応じて必要な処理を行って、このポリエーテル多元共重合体を架橋させることによって、ポリエーテル多元共重合体の架橋体をポリマー成分とする高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0144】
また、別の方法として、ポリエーテル多元共重合体(と電解質塩)を多孔質膜に担持させて、接着性多孔質膜又はイオン伝導性接着性多孔質膜を得た後、これに、必要に応じて、架橋助剤や増感助剤を溶解させた有機溶媒又は電解液を接触させて、上記ポリエーテル多元共重合体を膨潤させた後、更に、加熱し、又は活性エネルギー線を照射する等、目的とする架橋方法に応じて必要な処理を行って、このポリエーテル多元共重合体を架橋させることによって、ポリエーテル多元共重合体の架橋体をポリマー成分とする高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0145】
本発明によるそれ自体で接着性を有する接着性多孔質膜又はイオン伝導性接着多孔質膜は、電池、キャパシタ等の製造に有利に用いることができる。
【0146】
即ち、例えば、本発明による接着性多孔質膜又はイオン伝導性接着性多孔質膜を電極と積層し、又はこの積層物を捲回して、電極をこれら多孔質膜と接着させた後、このような多孔質膜−電極構造体に上記有機溶媒又は電解液を含浸させ、電池、キャパシタ等の仕掛り品を製作した後、適宜の外装体内に組み入れて封口したり、また、上記多孔質膜−電極構造体を適宜の外装体内に組み入れた後、この外装体中に上記有機溶媒又は電解液を注入し、封口する等の方法によって、いわば、その場で、高分子ゲル電解質を形成させ、かくして、本発明による高分子ゲル電解質を用いてなる電池、キャパシタ等を得ることができる。
【実施例】
【0147】
以下に参考例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、用いた基材多孔質膜の物性は、次のように評価した。
【0148】
(厚み)
1/10000mmシックネスゲージによる測定と基材多孔質膜の断面の10000倍走査型電子顕微鏡写真に基づいて求めた。
【0149】
(空孔率)
基材多孔質膜の単位面積S(cm2 )当たりの重量W(g)、平均厚みt(cm)及び基材多孔質膜を構成する樹脂の密度d(g/cm3 )から次式にて算出した。
空孔率(%)=(1−(100W/S/t/d))×100
【0150】
(通気度)
JIS P 8117に準拠して測定した。
【0151】
(突き刺し強度)
カトーテック(株)製圧縮試験機KES−G5を用いて、突き刺し試験を行なった。得られた荷重変位曲線から最大荷重を読み取り、膜厚25μm当たりの突き刺し強度を求めた。針は直径1.0mm、先端の曲率半径0.5mmのものを用い、2cm/秒の速度で行なった。
【0152】
(ポリエーテル多元共重合体の分析)
ポリエーテル多元共重合体の分析は、次のようにして行った。
【0153】
ガラス転移温度、融解熱量は理学電気(株)製示差走査熱量計DSC8230Bを用い、窒素雰囲気中、温度範囲−100〜80℃、昇温速度10℃/分で測定した。
【0154】
ポリエーテル多元共重合体のモノマー換算組成は、プロトンNMRスペクトルから求めた。
【0155】
ポリエーテル多元共重合体の分子量は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー測定を行ない、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定は、(株)島津製作所製の測定装置RID−6Aを用い、昭和電工(株)製カラム「ショウデックス」KD−807、KD−806、KD−806M及びKD−803、溶媒ジメチルホルムアミドを用いて60℃で行なった。
【0156】
(伝導度の測定)
実施例にて製造した高分子ゲル電解質と比較例において電解液に浸漬した多孔質膜の伝導度は、それらを白金電極で挟み、温度25℃において、電圧0.5V、周波数範囲5Hz〜1MHzの交流法を用い、複素インピーダンス法にて算出した。
【0157】
(面積熱収縮率の測定)
高分子ゲル電解質の面積熱収縮率は以下のようにして測定した。先ず、ポリエーテル多元共重合体、架橋剤、重合開始剤及び電解質塩を有機溶媒に溶解させて、これらを各実施例において基材多孔質膜に担持させたのと同じ組成比率を有するようにポリエーテル多元共重合体溶液を調製した。次に、ガラス板上、厚み50μmのスペーサで囲った囲いの中に各実施例において用いたのと同じ基材多孔質膜を載置し、この囲い内に上記ポリエーテル多元共重合体溶液を注入した後、別のガラス板を上記スペーサの上に被せて、これらの2枚のガラス板の間で上記基材多孔質膜を上記ポリエーテル多元共重合体溶液に浸漬した。この状態で100℃で3時間加熱して、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させた後、更に、120℃で1時間加熱処理した。この加熱処理後の高分子ゲル電解質の面積Sと加熱処理前の面積S0 とを比較して、高分子ゲル電解質の面積熱収縮率R=((S−S0)/S0)×100(%)を求めた。
【0158】
別に、電解質塩を有機溶媒に溶解させて、各実施例で用いたのと同じ組成比率の電解液を調製した。次に、ガラス板上、厚み50μmのスペーサで囲った囲いの中に各実施例において用いたのと同じ基材多孔質膜を載置し、囲い内に上記電解液を注入した後、別のガラス板を上記スペーサの上に被せて、これらの2枚のガラス板の間で基材多孔質膜を上記電解液に浸漬し、この状態で120℃で1時間加熱処理した。この加熱処理後の基材多孔質膜の面積Aと加熱処理前の面積A0 とを比較して、基材多孔質膜の面積熱収縮率r=((A−A0)/A0)×100(%)を求めた。
【0159】
高分子ゲル電解質の熱収縮率抑制率Gは、上記基材多孔質膜のみの収縮率rと高分子ゲル電解質の熱収縮率Rとから、G=((r−R)/r)×100(%)によって求めた。
【0160】
参考例1(触媒の製造例)
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた3つ口フラスコにトリブチルスズクロライド10g及びトリブチルホスフェート35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら、250℃で20分間加熱し、留出物を留去させ、残留物として固体状の縮合物質を得た。以下においては、この有機スズ−リン酸エステル縮合物質を触媒として用いた。
【0161】
(ポリエーテル多元共重合体の製造)
容量3Lのガラス製四つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として上記有機スズ−リン酸エステル縮合物質0.3gと水分10ppm以下に調整した下記式(16)
【0162】
【化34】

【0163】
で表されるグリシジルエーテル化合物300gとアリルグリシジルエーテル15gと溶媒n−ヘキサン2000gを仕込み、これにエチレンオキシド75gを上記グリシジルエーテル化合物の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。重合反応終了後、生成したポリマーをデカンテーションにて取り出した後、常圧下、40℃で24時間、更に、減圧下、45℃で10時間乾燥して、反応性モノマー成分としてアリルグリシジルエーテル成分を有するポリマー340gを得た。このようにして得たポリエーテル多元共重合体のガラス転移温度は−70℃、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー測定による重量平均分子量は1.25×106 であった。融解熱量は存在しなかった。また、プロトンNMRスペクトルによるこのポリエーテル多元共重合体のモノマー換算組成は、上記グリシジルエーテル化合物(16):エチレンオキシド:アリルグリシジルエーテル=49:51:1モル%であった。
【0164】
実施例1
参考例1で調製した上記ポリエーテル多元共重合体2.0gと架橋剤ジエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂(株)製ブレンマーPDE−100)0.10gと重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド0.020gをトルエン17.9gに溶解させて、塗工液を調製した。
【0165】
超高分子量ポリエチレン樹脂(重量平均分子量2.0×106 )からなる基材多孔質膜(膜厚25μm、空孔率40%、平均孔径0.05μm、通気度500秒/100mL、25μm当りの針貫通強度7.0N)をガラス板上に固定し、この基材多孔質膜に上記塗工液をドクターブレードにて塗工した後、80℃に加熱し、上記溶媒トルエンを除去して、上記ポリエーテル多元共重合体を担持させた接着性多孔質膜を得た。この接着性多孔質膜は、それ自体で接着性を有し、180°引き剥がし粘着力は10N/20mm幅であった。
【0166】
過塩素酸リチウムを1モル/L濃度で溶解させたエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合物(容量比1/2、以下、電解液という。)に上記接着性多孔質膜を5分間浸漬して、上記ポリエーテル多元共重合体を膨潤させた後、2枚のガラス板の間に挟み、不活性ガス雰囲気中、100℃で3時間加熱し、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させ、かくして、ポリエーテル多元共重合体の架橋体をポリマー成分とする高分子ゲル電解質を得た。この高分子ゲル電解質の伝導度は、25℃において、8.0×10-4S/cmであった。
【0167】
また、この高分子ゲル電解質において、基材多孔質膜へのポリエーテル多元共重合体の担持量は2.0mg/cm2 であり、上記電解液の担持量は17.5mg/cm2 であった。基材多孔質膜を除く高分子ゲル電解質中の電解液の重量比率は89.7%であった。
【0168】
そこで、上記と同じポリエーテル多元共重合体、架橋剤及び重合開始剤を重量比2/0.1/0.02にて上記電解液に溶解させて、この電解液の重量比率が89.7%であるようなポリエーテル多元共重合体溶液を調製し、これを用いて、前述したようにして求めた本実施例による高分子ゲル電解質の面積熱収縮率は13%であった。別に、上記と同じ電解液を用いて、前述したようにして、基材多孔質膜の面積熱収縮率を測定したところ、20%であった。従って、本実施例の高分子ゲル電解質における熱収縮率抑制率は35%であった。
【0169】
実施例2
参考例1で調製した前記ポリエーテル多元共重合体2.0gと架橋剤ジエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂(株)製ブレンマーPDE−100)0.10gと重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド0.020gをアセトニトリル17.9gに溶解させて、塗工液を調製し、更に、この塗工液にポリエーテル多元共重合体/過塩素酸リチウム重量比が100/15となるように過塩素酸リチウムを加えた。
【0170】
実施例1と同じ超高分子量ポリエチレン樹脂からなる基材多孔質膜をガラス板上に固定し、この基材多孔質膜に上記塗工液をドクターブレードにて塗工した後、80℃に加熱し、上記溶媒アセトニトリルを除去して、上記ポリエーテル多元共重合体と過塩素酸リチウムとを担持させたイオン伝導性接着性多孔質膜を得た。このイオン伝導性接着性多孔質膜は、それ自体で接着性を有し、180°引き剥がし粘着力は7.0N/20mm幅であった。
【0171】
次に、過塩素酸リチウムを1モル/L濃度で溶解させたエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合物(容量比1/2、以下、電解液という。)に上記イオン伝導性接着性多孔質膜を5分間浸漬し、上記ポリエーテル多元共重合体を膨潤させた後、2枚のガラス板の間に挟み、不活性ガス雰囲気中、100℃で3時間加熱し、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させ、かくして、ポリエーテル多元共重合体の架橋体をポリマー成分とする高分子ゲル電解質を得た。この高分子ゲル電解質の伝導度は、25℃において、8.8×10-4S/cmであった。
【0172】
また、この高分子ゲル電解質において、基材多孔質膜へのポリエーテル多元共重合体と電解質塩の担持量は2.5mg/cm2 であり、上記電解液の担持量は18.1mg/cm2 であった。基材多孔質膜を除く高分子ゲル電解質中の電解液の重量比率は87.9%であった。
【0173】
そこで、上記と同じポリエーテル多元共重合体、架橋剤及び重合開始剤を重量比2/0.1/0.02にて上記電解液に溶解させて、この電解液の重量比率が87.9%であるようなポリエーテル多元共重合体溶液を調製し、これを用いて、前述したようにして求めた本実施例による高分子ゲル電解質の面積熱収縮率は12%であった。別に、上記と同じ電解液を用いて、前述したようにして、基材多孔質膜の面積熱収縮率を測定したところ、20%であった。従って、本実施例の高分子ゲル電解質における熱収縮率抑制率は40%であった。
【0174】
実施例3
実施例1において、基材多孔質膜として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる多孔質膜(膜厚20μm、空孔率70%、平均孔径1.0μm、通気度200秒/100mL、針貫通強度3N)を用いた以外は、実施例1と同様にして、それ自体で接着性を有し、180°引き剥がし粘着力が6.0N/20mm幅である接着性多孔質膜を得た。
【0175】
過塩素酸リチウムを1モル/L濃度で溶解させたエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合物(容量比1/2、以下、電解液という。)に上記接着性多孔質膜を5分間浸漬して、基材多孔質膜に担持させたポリエーテル多元共重合体を膨潤させた後、2枚のガラス板の間に挟み、不活性ガス雰囲気中、100℃で3時間加熱し、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させ、かくして、ポリエーテル多元共重合体の架橋体をポリマー成分とする高分子ゲル電解質を得た。この高分子ゲル電解質の伝導度は、25℃において、2.0×10-3S/cmであった。
【0176】
また、この高分子ゲル電解質において、基材多孔質膜へのポリエーテル多元共重合体の担持量は2.3mg/cm2 であり、上記電解液の担持量は18.5mg/cm2 であった。基材多孔質膜を除く高分子ゲル電解質中の電解液の重量比率は88.9%であった。
【0177】
そこで、上記と同じポリエーテル多元共重合体、架橋剤及び重合開始剤を重量比2/0.1/0.02にて上記電解液に溶解させて、この電解液の重量比率が88.9%であるようなポリエーテル多元共重合体溶液を調製し、これを用いて、前述したようにして求めた本実施例による高分子ゲル電解質の面積熱収縮率は6%であった。別に、上記と同じ電解液を用いて、前述したようにして、基材多孔質膜の面積熱収縮率を測定したところ、8%であった。従って、本実施例の高分子ゲル電解質における熱収縮率抑制率は25%であった。
【0178】
比較例1
重量平均分子量2.0×106 の超高分子量ポリエチレン樹脂15重量部と流動パラフィン(40℃における動粘度59cst)85重量部を混合して均一なスラリーとし、これを小型ニーダーに仕込み、温度160℃で1時間、加熱、溶解させ、混練した。得られた混練物を0℃に冷却した金属板の間に挟み、急冷して、5mm厚のゲル状シートを得た。このシートをヒートプレスにて温度120℃で0.8mm厚に圧延し、温度125℃で縦横3.5×3.5倍に同時二軸延伸して、圧延延伸フィルムとした後、これをヘプタンに浸漬して、上記流動パラフィンを抽出除去して、多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムを130℃で20分間、熱処理した。総延伸倍率は77倍とした。このようにして得られた多孔質フィルムは、それ自体では、接着性はなく、20mm幅での180℃引き剥がし粘着力は0であった。
【0179】
過塩素酸リチウムを1モル/L濃度で溶解させたエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合物(容量比1/2)に上記多孔質フィルムを5分間浸漬した後、その伝導度を測定したところ、25℃において、9.3×10-4S/cmであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材多孔質膜と、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーであって、上記基材多孔質膜に担持されていると共に、有機溶媒にて膨潤せしめられたポリマーと、電解質塩とからなることを特徴とする高分子ゲル電解質。
【請求項2】
基材多孔質膜と、モノマー成分として、下記(1)式の成分1〜99モル%、(2)式の成分99〜1モル%、及び(3)又は(4)式で表される反応性基含有成分0〜20モル%からなり、繰り返し構造単位が(5)及び(6)式、(5)及び(6)及び(7)式、(5)及び(6)及び(8)式のいずれかで表され、重量平均分子量が104 〜107 の範囲内にあるポリエーテル多元共重合体であって、上記基材多孔質膜に担持されていると共に、有機溶媒にて膨潤せしめられたポリエーテル多元共重合体と、電解質塩とからなることを特徴とする高分子ゲル電解質。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

(上記において、(1)式及び(5)式中、R及びR' はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、R1 は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基より選ばれる基であり、側鎖部分となるオキシアルキレン単位の重合度kは1〜12である。(2)及び(6)式中、R' は水素原子又はメチル基である。(3)及び(7)式中、R' は水素原子又はメチル基であり、R2 はエチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基、エポキシ基を含む置換基(9)式又はハロゲン原子を含むアルキル基を示し、(4)及び(8)式中、R3 は反応性ケイ素含有置換基を表す。(9)式中、Aは有機残基を表す。)
【請求項3】
主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーを基材多孔質膜に担持させて、接着性多孔質膜とし、電解質塩を溶解すると共に上記ポリマーを膨潤させる有機溶媒と上記電解質塩とからなる電解液を上記接着性多孔質膜に接触させることを特徴とする高分子ゲル電解質の製造方法。
【請求項4】
主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーと第1の電解質塩とを基材多孔質膜に担持させて、イオン伝導性接着性多孔質膜とし、上記ポリマーを膨潤させる有機溶媒とこの有機溶媒に溶解する第2の電解質塩とからなる電解液を上記イオン伝導性接着性多孔質膜に接触させることを特徴とする高分子ゲル電解質の製造方法。
【請求項5】
主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーと電解質塩とを基材多孔質膜に担持させて、イオン伝導性接着性多孔質膜とし、上記電解質塩を溶解すると共に上記ポリマーを膨潤させる有機溶媒を上記イオン伝導性接着性多孔質膜に接触させることを特徴とする高分子ゲル電解質の製造方法。
【請求項6】
基材多孔質膜と、モノマー成分として、下記(1)式の成分1〜99モル%、(2)式の成分99〜1モル%、及び(3)又は(4)式で表される反応性基含有成分0〜20モル%からなり、繰り返し構造単位が(5)及び(6)式と共に、(7)式又は(8)式のいずれかを有し、重量平均分子量が104 〜107 の範囲内にあり、架橋されているポリエーテル多元共重合体であって、上記基材多孔質膜に担持されていると共に、有機溶媒にて膨潤せしめられたポリエーテル多元共重合体と、電解質塩とからなり、基材多孔質膜に比べて、面積熱収縮率が10〜70%の範囲で低減されていることを特徴とする高分子ゲル電解質。
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

(上記において、(1)式及び(5)式中、R及びR' はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、R1 は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基より選ばれる基であり、側鎖部分となるオキシアルキレン単位の重合度kは1〜12である。(2)及び(6)式中、R' は水素原子又はメチル基である。(3)及び(7)式中、R' は水素原子又はメチル基であり、R2 はエチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基、エポキシ基を含む置換基(9)式又はハロゲン原子を含むアルキル基を示し、(4)及び(8)式中、R3 は反応性ケイ素含有置換基を表す。(9)式中、Aは有機残基を表す。)

【公開番号】特開2007−35646(P2007−35646A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237184(P2006−237184)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【分割の表示】特願2001−358853(P2001−358853)の分割
【原出願日】平成13年11月26日(2001.11.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】