説明

高分子ナノ繊維を含む部品を有するタイヤ

【課題】短い繊維を含む部品を有する改善されたタイヤを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの部品を含む空気入りタイヤを対象とし、該少なくとも1つの部品はゴム組成物を含み、該ゴム組成物は、ジエン系エラストマー、および、エラストマー100重量部あたり1〜100重量部の20〜200nmの範囲の厚さを有する高分子ナノ繊維を含む。好ましくは前記ナノ繊維は、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアラミド、および、ポリエステルから選択されるポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
他の出願との相互参照
本願は、2007年12月15日付けで出願された第61/014,025号の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
空気入りタイヤに使用するためのゴム製部品は、短い織物用繊維で強化されることがある。一般的に、硬化ゴムコンパウンド中に短い繊維が存在すると、初期の、または、低い歪み(低い引張)係数(弾性率)の増加が生じる。付随して、ゴム中に短い繊維が存在すると、周期的な応力下で、低い疲れ耐久度、および、より高いヒステリシス性の発熱が生じることが多い。
【0003】
短い繊維を含むタイヤ性能の改善は、繊維とゴムとの間の接着を改善するために、繊維表面を化学接着剤で処理することにより得ることができる。しかしながら、このような表面処理によっても、必ずしも望ましい性能が生じるとは限らない。
【発明の開示】
【0004】
それゆえに、短い繊維を含む部品を有する改善されたタイヤへの必要性がある。
【0005】
発明の要約
本発明は、少なくとも1つの部品を含む空気入りタイヤを対象とし、該少なくとも1つの部品はゴム組成物を含み、該ゴム組成物は、ジエン系エラストマー、および、エラストマー100重量部あたり1〜100重量部の20〜200nmの範囲の厚さを有する高分子ナノ繊維を含む。
【0006】
発明の詳細な説明
少なくとも1つの部品を含む空気入りタイヤを開示し、該少なくとも1つの部品はゴム組成物を含み、該ゴム組成物は、ジエン系エラストマー、および、エラストマー100重量部あたり1〜100重量部の20〜200nmの範囲の厚さを有する高分子ナノ繊維を含む。
【0007】
本ゴム組成物は、高分子ナノ繊維を含む。一実施態様において、高分子ナノ繊維は、エレクトロスピニング法によって生産され、この方法は、例えば米国特許公報2006/0290031、WO2006/108364、WO2006/131081、または、WO2007/054039で教示されており、これらの教示はいずれも、参照によりその全体が本発明に含まれる。エレクトロスピニングによって高分子繊維を生産した後、このような繊維は、当業界既知の方法によって望ましい長さに切断してもよい。一実施態様において、このような短繊維は、細断されたフリース(chopped fleece)の形態である。一実施態様において、このような短繊維は、繊維の分離を促進するために、油中に分散される。一実施態様において、高分子ナノ繊維はフリースの形態で用いられ、このようなフリースは、1またはそれより多くの個々の層として堆積され、そのフリース層の間にゴムコンパウンドが堆積される。
【0008】
一実施態様において、ナノ繊維は、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアラミド、および、ポリエステルから選択されるポリマーを含んでもよい。
【0009】
一実施態様において、高分子ナノ繊維は、0.5〜20ミクロンの平均長さを有する。一実施態様において、高分子ナノ繊維は、1〜10ミクロンの平均長さを有する。一実施態様において、高分子ナノ繊維は、1〜1000ナノメートルの平均厚さを有する。一実施態様において、高分子ナノ繊維は、20〜200ナノメートルの平均厚さを有する。適切な高分子ナノ繊維は、テネシー州チャタヌーガのエスピン・テクノロジーズ(Espin Technologies)、または、チェコ共和国リベレツのエルマルコs.r.o.(Elmarco s.r.o.)から商業的に入手可能である。
【0010】
一実施態様において、高分子ナノ繊維は、本ゴム組成物中に、ジエン系エラストマー100重量部あたり1〜100重量部(phr)の範囲の濃度で存在する。その他の実施態様において、高分子ナノ繊維は、本ゴム組成物中に、ジエン系エラストマー100重量部あたり5〜50重量部(phr)の範囲の濃度で存在する。その他の実施態様において、高分子ナノ繊維は、本ゴム組成物中に、ジエン系エラストマー100重量部あたり10〜30重量部(phr)の範囲の濃度で存在する。
【0011】
本ゴム組成物は、オレフィン系不飽和物質を含むゴムまたはエラストマーと共に用いてもよい。「オレフィン系不飽和物質を含むゴムまたはエラストマー」または「ジエン系エラストマー」という成句は、天然ゴム、および、その様々な生ゴムや再生ゴムの形態の両方を含み、それに加えて様々な合成ゴムも含むこととする。本発明の説明において、用語「ゴム」および「エラストマー」は、特に他の規定がない限り同じ意味で用いることができる。用語「ゴム組成物」、「配合ゴム」および「ゴムコンパウンド」は、同じ意味で用いられ、様々な成分および材料とブレンドまたは混合されたゴムを意味し、このような用語は、ゴム混合またはゴム配合分野における当業者には周知である。代表的な合成ポリマーは、ブタジエンならびにその同族体および誘導体、例えばメチルブタジエン、ジメチルブタジエン、および、ペンタジエンの単独重合産物であり、加えて、例えばブタジエンまたはその同族体もしくは誘導体と、その他の不飽和単量体とから形成されたコポリマーである。後者のなかでも特に、アセチレン、例えば、ビニルアセチレン;オレフィン、例えばイソブチレン(これは、イソプレンと共重合してブチルゴムを形成する);ビニル化合物、例えばアクリル酸、アクリロニトリル(これは、ブタジエンと重合してNBRを形成する)、メタクリル酸およびスチレン(後者の化合物は、ブタジエンと重合して、SBRを形成する)、加えて、ビニルエステル、および、様々な不飽和アルデヒド、ケトンおよびエーテル、例えばアクロレイン、メチルイソプロペニルケトン、および、ビニルエチルエーテルが挙げられる。合成ゴムの具体的な例としては、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(例えば、シス−1,4−ポリブタジエン)、ポリイソプレン(例えば、シス−1,4−ポリイソプレン)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、例えばクロロブチルゴム、または、ブロモブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、1,3−ブタジエンまたはイソプレンと、スチレン、アクリロニトリルおよびメタクリル酸メチルのような単量体とのコポリマーが挙げられ、加えて、エチレン/プロピレンターポリマー(これは、エチレン/プロピレン/ジエン単量体(EPDM)としても知られている)、具体的には、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーも挙げられる。使用可能なゴムの追加例としては、アルコキシ−シリルで末端官能化した溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBR、および、SIBR)、ケイ素がカップリングされた、および、スズがカップリングされたスター型分岐ポリマーが挙げられる。好ましいゴムまたはエラストマーは、ポリイソプレン(天然または合成)、ポリブタジエン、および、SBRである。
【0012】
一形態において、上記ゴムは、好ましくは、少なくとも2種のジエン系ゴムを含む。例えば、2種またはそれより多くのゴムの組み合わせが好ましく、例えばシス−1,4−ポリイソプレンゴム(天然または合成のいずれでもよいが、天然が好ましい)、3,4−ポリイソプレンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、エマルジョン、および、溶液重合によって誘導されたスチレン/ブタジエンゴム、シス−1,4−ポリブタジエンゴム、および、乳化重合によって製造されたブタジエン/アクリロニトリルコポリマーが挙げられる。
【0013】
本発明の一形態において、比較的一般的なスチレン含量である約20〜約28パーセントの結合スチレンを有する、乳化重合によって誘導されたスチレン/ブタジエン(E−SBR)が用いられる場合も考えられ、または、いくつかの用途に関しては、中程度から比較的高い結合スチレン含量を有する、すなわち約30〜約45パーセントの結合スチレン含量を有するE−SBRが用いられる場合も考えられる。
【0014】
乳化重合によって製造されたE−SBRとは、スチレンと1,3−ブタジエンとが、水性エマルジョンとして共重合したものを意味する。このようなものは当業者周知である。結合スチレン含量は様々であってよく、例えば約5〜約50パーセントである。一形態において、E−SBRにアクリロニトリルを含ませて、E−SBARとしてターポリマーゴムを形成してもよく、ターポリマー中の結合アクリロニトリルの量は、例えば約2〜約30重量パーセントである。
【0015】
また本発明で使用するためのジエン系ゴムとして、コポリマー中に約2〜約40重量パーセントの結合アクリロニトリルを含む、乳化重合によって製造されたスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムも考慮される。
【0016】
溶液重合によって製造されたSBR(S−SBR)は、典型的には、約5〜約50の範囲の、好ましくは約9〜約36パーセントの範囲の結合スチレン含量を有する。このようなS−SBRは、例えば、有機炭化水素溶媒の存在下での有機リチウムの触媒作用によって都合よく製造することができる。
【0017】
一実施態様において、シス−1,4−ポリブタジエンゴム(BR)を用いてもよい。このようなBRは、例えば1,3−ブタジエンの有機溶液重合によって製造することができる。このようなBRは、都合のよい形態として、例えば、少なくとも90パーセントのシス1,4−含量を有するという特徴を示すものでもよい。
【0018】
シス−1,4−ポリイソプレンおよびシス−1,4−ポリイソプレン天然ゴムは、ゴム分野における当業者には周知である。
【0019】
用語「phr」は、本明細書で用いられる場合、且つ一般的な実施に従って、「ゴムまたはエラストマー100重量部あたりのそれぞれの材料の重量部」を意味する。
【0020】
また、本ゴム組成物は、70phr以下のプロセスオイルを含んでいてもよい。プロセスオイルは、典型的にはエラストマーを油展するために用いられる増量用のオイルとして、本ゴム組成物に含ませてもよい。またプロセスオイルは、ゴム配合中にオイルを直接添加することによって本ゴム組成物に含ませてもよい。用いられるプロセスオイルとしては、エラストマー中に存在する増量用のオイル、および、混合中に添加されたプロセスオイルの両方が挙げられる。適切なプロセスオイルとしては、当業界既知の様々な油が挙げられ、例えば、芳香族系、パラフィン系、ナフテン系、植物油、および、低PCA(多環式芳香族含量が低い)油、例えばMES、TDAE、SRAE、および、重ナフテン系オイルが挙げられる。適切な低PCA油としては、IP346法によって決定された場合に3重量パーセント未満の多環式芳香族含量を有するものが挙げられる。IP346法に関する手順は、イギリスの石油学会(Institute of Petroleum)によって公開されたStandard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003,第62版で確認することができる。
【0021】
本ゴム組成物は、約10〜約150phrのシリカを含んでいてもよい。その他の実施態様において、20〜80phrのシリカを用いてもよい。
【0022】
ゴムコンパウンドで用いることができる、一般的に用いられるケイ酸含有の顔料 としては、一般的な熱分解および沈降ケイ酸含有の顔料(シリカ)が挙げられる。一実施態様において、沈降シリカが用いられる。本発明で用いられる一般的なケイ酸含有の顔料は、沈降シリカであり、例えば、可溶性ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムの酸性化により得られた沈降シリカである。
【0023】
このような一般的なシリカは、例えば、窒素ガスを用いて測定されるBET表面積を示すことによって特徴付けることもある。一実施態様において、BET表面積は、約40〜約600平方メートル/グラムの範囲であり得る。その他の実施態様において、BET表面積は、約80〜約300平方メートル/グラムの範囲であり得る。表面積を測定するBET法は、米国化学会ジャーナル(Journal of the American Chemical Society)の第60巻,304頁(1930)で説明されている。
【0024】
また、一般的なシリカは、約100〜約400、あるいは約150〜約300の範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値を有するという特徴を示すものでもよい。
【0025】
このような一般的なシリカは、電子顕微鏡によって測定した場合、例えば0.01〜0.05ミクロンの範囲の最終的な平均粒度を有することが期待されるが、シリカ粒子のサイズはそれよりさらに小さくてもよいし、または、場合によってはそれよりも大きくてもよい。
【0026】
様々な市販のシリカを用いてもよく、例えば、ここでの単なる一例として、さらにこれらに限定されないが、PPGインダストリーズ(PPG Industries)から、210、243等の名称を有するHi−Silという商標で市販されているシリカ;例えばZ1165MPおよびZ165GRという名称を有するローディア(Rhodia)から入手可能なシリカ;および、VN2およびVN3等の名称を有するデグサ社(Degussa AG)から入手可能なシリカが挙げられる。
【0027】
一般的な充填剤として、一般的に用いられるカーボンブラックを、10〜150phrの範囲の量で用いることができる。その他の実施態様において、20〜80phrのカーボンブラックを用いてもよい。このようなカーボンブラックの代表的な例としては、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990、および、N991が挙げられる。これらのカーボンブラックは、9〜145g/kgの範囲のヨウ素吸着値、および、34〜150cm/100gの範囲のDBP数を有する。
【0028】
その他の充填剤を本ゴム組成物に用いてもよく、例えば、これらに限定されないが、微粒子状の充填剤、例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、架橋された微粒子状のポリマーゲル、例えば米国特許第6,242,534号;6,207,757号;6,133,364号;6,372,857号;5,395,891号;または、6,127,488号で開示されているものが挙げられ、可塑化デンプン複合材料の充填剤としては、これらに限定されないが、米国特許第5,672,639号で開示されたものが挙げられる。このようなその他の充填剤は、1〜30phrの範囲の量で用いてもよい。
【0029】
一実施態様において、本ゴム組成物は、一般的な硫黄を含む有機ケイ素化合物を含んでいてもよい。適切な硫黄を含む有機ケイ素化合物の例は、以下の式で示されるものであり:
Z−Alk−S−Alk−Z III
式中、Zは、以下からなる群より選択される:
【0030】
【化1】

【0031】
式中、Rは、1〜4個の炭素原子のアルキル基、シクロヘキシル、または、フェニルであり;Rは、1〜8個の炭素原子のアルコキシ、または、5〜8個の炭素原子のシクロアルコキシであり;Alkは、1〜18個の炭素原子の2価の炭化水素であり、nは、2〜8の整数である。
【0032】
一実施態様において、硫黄を含む有機ケイ素化合物は、3,3’−ビス(トリメトキシ、または、トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。一実施態様において、硫黄を含む有機ケイ素化合物は、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、および/または、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。従って、式IIIに関して、Zは、以下で示すようなものが可能である:
【0033】
【化2】

【0034】
式中、Rは、2〜4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有するアルコキシであり;Alkは、2〜4個の炭素原子、あるいは3個の炭素原子を有する2価の炭化水素である;および、nは、2〜5、あるいは2または4の整数である。
【0035】
その他の実施態様において、適切な硫黄を含む有機ケイ素化合物としては、米国特許第6,608,125号で開示された化合物が挙げられる。一実施態様において、硫黄を含む有機ケイ素化合物としては、3−(オクタノイルチオ)−1−プロピルトリエトキシシラン、CH(CHC(=O)−S−CHCHCHSi(OCHCHが挙げられ、これは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(Momentive Performance Materials)からNXTTMとして市販のものが入手可能である。
【0036】
その他の実施態様において、適切な硫黄を含む有機ケイ素化合物としては、米国特許公報番号2003/0130535で開示されているものが挙げられる。一実施態様において、硫黄を含む有機ケイ素化合物は、デグサ製のSi−363である。
【0037】
ゴム組成物中の硫黄を含む有機ケイ素化合物の量は、用いられるその他の添加剤のレベルに応じて様々であると予想される。一般的に言えば、上記化合物の量は、0.5〜20phrの範囲と予想される。一実施態様において、上記量は、1〜10phrの範囲と予想される。
【0038】
本ゴム組成物は、ゴム配合分野において一般的に知られている方法によって、例えば様々な硫黄加硫可能な成分を含むゴムと、様々な一般的に使用される添加材料とを混合することによって配合されると予想されることは当業者であれば容易に理解でき、ここで、このような添加材料としては、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば活性剤および遅延剤、および、加工添加剤、例えば油、粘着付与樹脂などの樹脂、および、可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤、および、オゾン劣化防止剤、および、ペプタイザーが挙げられる。当業者であれば当然ながら、上述の添加剤は、硫黄加硫可能な、および、硫黄加硫された材料(ゴム)の目的とする使用に応じて選択され、通常の量で一般的に使用される。硫黄供与体の代表例としては、元素硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、高分子ポリスルフィド、および、硫黄オレフィン付加物(sulfur olefin adduct)が挙げられる。一実施態様において、硫黄加硫剤は、元素硫黄である。硫黄加硫剤は、0.5〜8phrの範囲の量、あるいは1.5〜6phrの範囲の量で用いてもよい。粘着性を付与する樹脂の典型的な量は、用いられる場合、約0.5〜約10phrであり、一般的には約1〜約5phrである。加工助剤の典型的な量は、約1〜約50phrである。抗酸化剤の典型的な量は、約1〜約5phrである。代表的な抗酸化剤としては、例えば、ジフェニル−p−フェニレンジアミンおよびその他のものが挙げられ、例えばバンダービルト・ラバー・ハンドブック(Vanderbilt Rubber Handbook)(1978),344〜346頁で開示されているものである。オゾン劣化防止剤の典型的な量は、約1〜5phrである。脂肪酸(例えばステアリン酸)の典型的な量は、用いられる場合、約0.5〜約3phrである。酸化亜鉛の典型的な量は、約2〜約5phrである。ワックスの典型的な量は、約1〜約5phrである。マイクロクリスタリンワックスが用いられることが多い。ペプタイザーの典型的な量は、約0.1〜約1phrである。典型的なペプタイザーとしては、例えば、ペンタクロロチオフェノール、および、ジベンズアミドジフェニルジスルフィドが挙げられる。
【0039】
促進剤は、加硫に必要な時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善するために用いられる。一実施態様において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤を用いてもよい。一次促進剤は、約0.5〜約4、あるいは約0.8〜約1.5phrの範囲の総量で用いてもよい。その他の実施態様において、一次促進剤と二次促進剤の組み合わせが用いられる可能性もあり、ここで二次促進剤は、加硫物を活性化して、加硫物の特性を改善するためには、より少ない量で用いられ、例えば約0.05〜約3phrで用いられる。これらの促進剤を組み合わせることによって、最終的な特性に相乗効果が生じると予想され、このような特性は、いずれかの促進剤単独の使用によって生じた特性よりもある程度優れている。加えて、遅効性促進剤を用いてもよく、これは、通常の加工温度の影響を受けないが、通常の加硫温度で十分な硬化を生じさせるものである。また、加硫遅延剤が用いられることもある。本発明において使用できる適切なタイプの促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、および、ザンテートである。一実施態様において、一次促進剤は、スルフェンアミドである。第二の促進剤が用いられる場合、二次促進剤は、グアニジン、ジチオカルバメート、または、チウラム化合物であり得る。
【0040】
本ゴム組成物の混合は、ゴム混合分野の当業者にとって既知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、一般的には、少なくとも二段階で、すなわち少なくとも1つのノンプロダクティブ(硬化非発現)段階、それに続いてプロダクティブ(硬化発現)混合段階で混合される。硫黄加硫剤などの最終的な硬化剤は、典型的には最終段階で混合され、この最終段階は慣習的に「プロダクティブ」混合段階と呼ばれており、ここでの混合は、典型的には、先行するノンプロダクティブ混合段階の混合温度よりも低い温度または極限温度で起こる。用語「ノンプロダクティブ」および「プロダクティブ」混合段階は、ゴム混合分野の当業者には周知である。本ゴム組成物は、熱機械的混合工程で処理することもできる。熱機械的混合工程は、一般的に、ゴムの温度を140℃〜190℃にするのに適切な期間、ミキサーまたは押出機で機械的に加工することを含む。熱機械的な加工の適切な持続時間は、動作条件、ならびに部品の量および性質に応じて様々であってよい。例えば、熱機械的な加工は、1〜20分間であり得る。
【0041】
本ゴム組成物は、本タイヤの様々なゴム製部品に包含させることができる。例えば、ゴム製部品としては、トレッド(トレッドキャップ、および、トレッドベースを含む)、サイドウォール、エイペックス(apex)、チェーファー(chafer)、チッパー(chipper)、フリッパー(flipper)、サイドウォールインサート、線材被覆(wirecoat)、または、インナーライナーが挙げられる。一実施態様において、このような部品は、エイペックス、チッパー、または、フリッパーである。
【0042】
本発明の空気入りタイヤは、競技用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用、アースムーバー、オフロード用、トラック用タイヤなどであり得る。一実施態様において、本タイヤは、乗用車用またはトラック用タイヤである。また本タイヤは、ラジアルタイヤであってもよいし、または、バイアスタイヤであってもよい。
【0043】
本発明の空気入りタイヤの加硫は、一般的に、約100℃〜200℃の範囲の一般的な温度で行われる。一実施態様において、加硫は、約110℃〜180℃の範囲の温度で行われる。例えばプレスまたは鋳型中で加熱すること、過熱蒸気または熱風で加熱することのような通常の加硫プロセスのいずれを用いてもよいこのようなタイヤは、このような分野の当業者には既知であり、よく知られていると予想される様々な方法によって、組み立てて、形付け、成形し、硬化することができる。
【0044】
本発明を説明する目的で、所定の代表的な実施態様および詳細を示したが、当業者であれば当然ながら、本発明の本質または範囲から逸脱することなくそれらに様々な変化および改変を施すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの部品を含む空気入りタイヤであって、該少なくとも1つの部品はゴム組成物を含み、該ゴム組成物は、ジエン系エラストマー、および、エラストマー100重量部あたり1〜100重量部の、20〜200nmの範囲の厚さを有する高分子ナノ繊維を含む、上記タイヤ。
【請求項2】
前記ナノ繊維が、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアラミド、および、ポリエステルから選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ナノ繊維が、ジエン系エラストマー100重量部あたり5〜50重量部(phr)の範囲の量で存在する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ナノ繊維が、ジエン系エラストマー100重量部あたり10〜30重量部(phr)の範囲の量で存在する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記部品が、エイペックス、フリッパー、および、チッパーから選択される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ジエン系エラストマーが、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、および、スチレンブタジエンゴムからなる群より選択される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ナノ繊維が、エレクトロスピニングにより作成された繊維である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2009−144157(P2009−144157A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318773(P2008−318773)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(590002976)ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー (256)
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
【住所又は居所原語表記】1144 East Market Street,Akron,Ohio 44316−0001,U.S.A.
【Fターム(参考)】