説明

高分子化合物及びそれを用いた電子素子

【課題】光電変換素子に含まれる有機層に用いた場合に、短絡電流密度が大きくなる高分子化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し単位等を有する高分子化合物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する高分子化合物及びそれを用いた電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のため、大気中に放出されるCOの削減が求められている。そのため、例えば、pn接合型のシリコン系太陽電池などを用いるソーラーシステムの採用が提唱されている。しかし、シリコン系太陽電池の材料である単結晶、多結晶及びアモルファスシリコンは、その製造工程において高温、高真空条件が必要である。
【0003】
一方、光電変換素子の一態様である有機薄膜太陽電池は、シリコン系太陽電池の製造プロセスに用いられる高温、高真空プロセスが省略でき、塗布プロセスのみで安価に製造できる可能性があり、近年注目されている。有機薄膜太陽電池に用いる高分子化合物としては、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなる高分子化合物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−506519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記高分子化合物を含む有機層を有する光電変換素子は、短絡電流密度が必ずしも十分ではない。
【0007】
本発明は、光電変換素子などの電子素子を構成する有機層に用いた場合に、短絡電流密度を大きくすることができる高分子化合物およびこれを用いた電子素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の高分子化合物、これを用いた材料および素子などを提供する。
[1]式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し単位と式(3)で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物。
【化2】

[式中、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、芳香環から水素原子を3個取り除いた3価の基を表し、該芳香環は置換基を有していてもよい。式(1)で表される繰り返し単位が複数含まれる場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。Aは、式(1−1)〜式(1−12)で表される2価の基を表す。
【化3】

(式中、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)]
【化4】

[式中、Ar21、Ar22及びAr23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。式(2)で表される繰り返し単位が複数含まれる場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。]
【化5】

[式中、Ar31は、置換基を有するアリーレン基又は置換基を有するヘテロアリーレン基を表す。ただし、式(3)で表される繰り返し単位は、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位とは異なる。式(3)で表される繰り返し単位が複数含まれる場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。]
[2]Ar23で表される置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基が、式(2−1)〜式(2−8)で表される基である、上記[1]に記載の高分子化合物。
【化6】

[式中、R21〜R38は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。X21〜X29は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はセレン原子を表す。]
[3]式(2)で表される繰り返し単位が、式(2A)で表される繰り返し単位である、上記[1]又は[2]に記載の高分子化合物。
【化7】

[式中、X2a1及びX2a2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はセレン原子を表す。R21及びR22は、前述と同じ意味を表す。R40〜R43は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。]
[4]式(1)で表される繰り返し単位が、式(1A)で表される繰り返し単位である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【化8】

[式中、Aは、前述と同じ意味を表す。X1a1及びX1a2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又は−N(R)−を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。]
[5]Ar31で表される置換基を有するアリーレン基又は置換基を有するヘテロアリーレン基が有する置換基が、式(3A)で表される1価の基である、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【化9】

[式中、X3aは、直接結合、−CR3a1=CR3a2−、−C≡C−、−O−、−S−、アルキレン基又はアリーレン基を表す。R3a、R3a1及びR3a2は水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。Ar3aは置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。nは1〜10の整数である。X3aが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Ar3aが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
[6]光吸収末端波長が700nm以上である、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の高分子化合物。
[7]ポリスチレン換算の数平均分子量が3000以上である、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の高分子化合物。
[8]上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む薄膜。
[9]上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の高分子化合物と電子受容性化合物とを含む組成物。
[10]電子受容性化合物が、フラーレン誘導体である、上記[9]に記載の組成物。
[11]上記[9]又は[10]に記載の組成物を含む薄膜。
[12]上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の高分子化合物、又は、上記[9]若しくは[10]に記載の組成物と、溶媒とを含む溶液。
[13]第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に活性層を備え、該活性層に上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の高分子化合物、又は、上記[9]若しくは[10]に記載の組成物を含有する電子素子。
[14]光電変換素子である、上記[13]に記載の電子素子。
[15]上記[14]に記載の光電変換素子を備える太陽電池モジュール。
[16]上記[14]記載の光電変換素子を備えるイメージセンサー。
[17]ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、活性層とを備え、該活性層に上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の高分子化合物、又は、上記[9]若しくは[10]に記載の組成物を含有する有機薄膜トランジスタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高分子化合物によれば、光電変換素子などの電子素子における短絡電流密度を向上させることができる。本発明によれば、短絡電流密度の向上により、光電変換効率の高い光電変換素子を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し単位と式(3)で表される繰り返し単位とを有することを特徴とする。
【化10】

[式中、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、芳香環から水素原子を3個取り除いた3価の基を表し、該芳香環は置換基を有していてもよい。式(1)で表される繰り返し単位が複数含まれる場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。Aは、式(1−1)〜式(1−12)のいずれかで表される2価の基を表す。
【化11】

(式中、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)]
【化12】

[式中、Ar21、Ar22及びAr23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。式(2)で表される繰り返し単位が複数含まれる場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。]
【化13】

[式中、Ar31は、置換基を有するアリーレン基又は置換基を有するヘテロアリーレン基を表す。ただし、式(3)で表される繰り返し単位は、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位とは異なる。式(3)で表される繰り返し単位が複数含まれる場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。]
【0012】
なお、本明細書において、ある基が「置換基を有していてもよい」との用語は、ある基が有する水素原子の一部又は全部が、置換基によって置換されてもよいことを意味する。
「置換基を有していてもよい」の用語は、「置換されていてもよい」と言い換えてもよい。例えば、「置換基を有していてもよい2価の有機基」とは、2価の有機基中の水素原子の一部または全部が、置換基で置換されていてもよい2価の有機基のことをいい、「置換されていてもよい2価の有機基」と言い換えてもよい。また、例えば、「置換基を有していてもよい炭化水素基」とは、炭化水素基中の水素原子の一部または全部が、置換基で置換されていてもよい炭化水素基のことをいい、「置換されていてもよい炭化水素基」と言い換えてもよい。
【0013】
式(1−1)〜式(1−12)中、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R〜R15で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミノ基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基が挙げられる。R〜R15が炭素原子を含む基である場合、炭素原子数は通常1〜60程度である。
【0014】
ここで、アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基の炭素原子数は、通常1〜30程度であり、好ましくは1〜20である。アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基、1−(2’−エチルヘキシル)−3−エチルヘプチル基が挙げられる。
【0015】
アルキルオキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよい。アルキルオキシ基の炭素原子数は、通常1〜20程度、好ましくは1〜15である。アルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子及びアルキル基(例えば、炭素原子数1〜20)が挙げられる。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0016】
アルキルチオ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルチオ基であってもよい。アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子が挙げられる。置換基を有していてもよいアルキルチオ基の炭素原子数は、通常1〜20程度、好ましくは1〜15であり、置換基を有していてもよいアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0017】
アリール基は、その炭素原子数が通常6〜60程度、好ましくは6〜20であり、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基及び炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。置換基を有していてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルキルオキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0018】
なお、本明細書において「C1〜C12」などの表記は炭素原子数を表し、その記載の直後に記載された基の炭素原子数を表す。したがって、「C1〜C12アルキルオキシフェニル基」などの表記中に含まれる「C1〜C12」は、「アルキル」の炭素原子数が1〜12であることを表す。C1〜C12アルキルは、好ましくはC1〜C8アルキルであり、より好ましくはC1〜C6アルキルである。C1〜C12アルキル、C1〜C8アルキル及びC1〜C6アルキルの具体例としては、上記アルキル基で説明し例示したものが挙げられる。以下も、特に断りない限り、同様である。
【0019】
アリールオキシ基は、その炭素原子数が通常6〜60程度、好ましくは6〜20であり、芳香環に含まれる炭素原子が置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基及び炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、C1〜C12アルキルオキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
【0020】
アリールチオ基は、その炭素原子数が通常6〜60程度、好ましくは6〜20であり、芳香環に含まれる炭素原子が置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基及び炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C1〜C12アルキルオキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0021】
アリールアルキル基は、その炭素原子数が通常7〜60程度、好ましくは7〜30であり、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基及び炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基が挙げられる。
【0022】
アリールアルキルオキシ基は、その炭素原子数が通常7〜60程度、好ましくは7〜30であり、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基及び炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールアルキルオキシ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキルオキシ基、C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキルオキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルオキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルオキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルオキシ基が挙げられる。
【0023】
アリールアルキルチオ基は、その炭素原子数が通常7〜60程度、好ましくは7〜30であり、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基及び炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基が挙げられる。
【0024】
アシル基とは、カルボン酸中のカルボキシル基(−COOH)から水酸基を除いた基を意味する。アシル基は、その炭素原子数が通常2〜20程度、好ましくは2〜15である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、及びトリフルオロアセチル基等のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20のアルキルカルボニル基、並びに、ベンゾイル基及びペンタフルオロベンゾイル基等のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルカルボニル基が挙げられる。
【0025】
アシルオキシ基とは、カルボン酸中のカルボキシル基(−COOH)から水素原子を除いた基を意味する。アシルオキシ基は、その炭素原子数が通常2〜20程度、好ましくは2〜15である。アシルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基及びペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0026】
アミド基とは、アミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基をいう。アミド基は、その炭素原子数が通常1〜20程度、好ましくは1〜15である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0027】
酸イミド基とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基をいう。酸イミド基の具体例としては、スクシンイミド基、フタル酸イミド基などが挙げられる。
【0028】
置換アミノ基とは、アミノ基の水素原子の1又は2個が置換されたものであり、置換基は、例えば、アルキル基及び置換されていてもよいアリール基である。アルキル基及び置換されていてもよいアリール基の具体例は、Rで表されるアルキル基及び置換されていてもよいアリール基の具体例と同じである。置換アミノ基は、その炭素原子数が通常1〜40程度、好ましくは1〜20である。置換基アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルキルオキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルオキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基などが挙げられる。
【0029】
置換シリル基とは、シリル基の水素原子の1、2又は3個が置換されたもの、一般に、シリル基の3個の水素原子すべてが置換されたものである。置換基としては、例えば、アルキル基及び置換されていてもよいアリール基である。アルキル基及び置換されていてもよいアリール基の具体例は、Rで表されるアルキル基及び置換されていてもよいアリール基の具体例と同じである。置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−iso−プロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基などが挙げられる。
【0030】
置換シリルオキシ基とは、上記の置換シリル基に酸素原子が結合した基である。置換シリルオキシ基の具体例としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリプロピルシリルオキシ基、トリ−iso−プロピルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基、ジメチルフェニルシリルオキシ基などが挙げられる。
【0031】
置換シリルチオ基とは、上記の置換シリル基に硫黄原子が結合した基である。置換シリルチオ基の具体例としては、トリメチルシリルチオ基、トリエチルシリルチオ基、トリプロピルシリルチオ基、トリ−iso−プロピルシリルチオ基、tert−ブチルジメチルシリルチオ基、トリフェニルシリルチオ基、トリ−p−キシリルシリルチオ基、トリベンジルシリルチオ基、ジフェニルメチルシリルチオ基、tert−ブチルジフェニルシリルチオ基、ジメチルフェニルシリルチオ基などが挙げられる。
【0032】
置換シリルアミノ基とは、アミノ基の水素原子の1又は2個が置換シリル基で置換された基であり、置換シリル基は上記の通りである。置換シリルアミノ基の具体例としては、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリプロピルシリルアミノ基、トリ−iso−プロピルシリルアミノ基、tert−ブチルジメチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、トリ−p−キシリルシリルアミノ基、トリベンジルシリルアミノ基、ジフェニルメチルシリルアミノ基、tert−ブチルジフェニルシリルアミノ基、ジメチルフェニルシリルアミノ基、ジ(トリメチルシリル)アミノ基、ジ(トリエチルシリル)アミノ基、ジ(トリプロピルシリル)アミノ基、ジ(トリ−iso−プロピルシリル)アミノ基、ジ(tert−ブチルジメチルシリル)アミノ基、ジ(トリフェニルシリル)アミノ基、ジ(トリ−p−キシリルシリル)アミノ基、ジ(トリベンジルシリル)アミノ基、ジ(ジフェニルメチルシリル)アミノ基、ジ(tert−ブチルジフェニルシリル)アミノ基、ジ(ジメチルフェニルシリル)アミノ基が挙げられる。
【0033】
1価の複素環基の具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、プラゾリジン、フラザン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、チオピラン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、モルホリン、トリアジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、クロマン、イソクロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、キノリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、キナゾリジン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、キサンテン、フェナントリジン、アクリジン、β-カルボリン、ペリミジン、フェナントロリン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン等の複素環式化合物から水素原子を1個除いた基が挙げられる。1価の複素環基は置換基を有していてもよい。1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0034】
複素環オキシ基としては、前記1価の複素環基に酸素原子が結合した式(11)で表される基が挙げられる。複素環チオ基としては、前記1価の複素環基に硫黄原子が結合した式(12)で表される1価の基が挙げられる。
【化14】

[式(11)及び式(12)中、Arは1価の複素環基を表す。]
【0035】
複素環オキシ基は、その炭素原子数が通常2〜60程度、好ましくは2〜30である。
複素環オキシ基は置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよい複素環オキシ基の具体例としては、チエニルオキシ基、C1〜C12アルキルチエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、ピリジルオキシ基、C1〜C12アルキルピリジルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾールオキシ基、チアジアゾールオキシ基が挙げられる。
【0036】
複素環チオ基は、その炭素原子数が通常2〜60程度、好ましくは2〜30である。複素環チオ基は置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよい複素環チオ基の具体例としては、チエニルメルカプト基、C1〜C12アルキルチエニルメルカプト基、ピロリルメルカプト基、フリルメルカプト基、ピリジルメルカプト基、C1〜C12アルキルピリジルメルカプト基、イミダゾリルメルカプト基、ピラゾリルメルカプト基、トリアゾリルメルカプト基、オキサゾリルメルカプト基、チアゾールメルカプト基、チアジアゾールメルカプト基が挙げられる。
【0037】
アリールアルケニル基は、通常、その炭素原子数8〜20、好ましくは8〜15であり、アリールアルケニル基の具体例としては、スチリル基が挙げられる。
【0038】
アリールアルキニル基は、通常、その炭素原子数8〜20であり、好ましくは8〜15であり、アリールアルキニル基の具体例としては、フェニルアセチレニル基が挙げられる。
【0039】
置換カルボキシル基は、通常、その炭素原子数2〜20であり、メチルエステル構造を有する基、エチルエステル構造を有する基、ブチルエステル構造を有する基などが挙げられる。
【0040】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0041】
式(1−1)〜式(1−12)で表される2価の基の中でも、短絡電流密度を高める観点からは、好ましくは式(1−4)、式(1−5)、式(1−6)、式(1−7)、式(1−8)で表される2価の基である。
【0042】
式(1)中、Ar11及びAr12は、芳香環から水素原子を3個取り除いた基を表す。芳香環としては、芳香族性を有する炭化水素環、芳香族性を有する複素環が挙げられる。
芳香族性を有する炭化水素環の炭素原子数は、通常、6〜60であり、好ましくは6〜20である。該炭化水素環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミノ基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基の定義及び具体例は、前述のRで表されるハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基の定義及び具体例と同じである。芳香族性を有する炭化水素環の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
【0043】
芳香族性を有する炭化水素環から水素原子を3個取り除いた基の具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0044】
【化15】

【0045】
【化16】

【0046】
芳香族性を有する複素環の炭素原子数は、通常、2〜60であり、好ましくは4〜20である。該複素環は置換基を有していてもよく、該置換基としては前記炭化水素環が有していてもよい置換基として説明したものと同じ基が挙げられる。該複素環の炭素原子数には、複素環を構成する環炭素原子(ring carbon atom)の数であり、置換基の炭素原子数は含まれない。ここに、複素環とは、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素などのヘテロ原子を環内に含む環をいう。
【0047】
芳香族性を有する複素環から水素原子を3個取り除いた基としては、例えば、以下の基が挙げられる。
【0048】
【化17】

【0049】
【化18】

【0050】
【化19】

【0051】
【化20】

【0052】
【化21】

【0053】
【化22】

【0054】
【化23】

【0055】
【化24】

【0056】
【化25】

【0057】
【化26】

【0058】
【化27】

【0059】
式(201)〜式(284)中、R’は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。R’が複数含まれる場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。R’が炭素原子を含む基である場合、炭素原子数は通常1〜60程度である。
【0060】
R’で表されるハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基の定義及び具体例は、前述のRで表されるハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基の定義及び具体例と同じである。
【0061】
R’’は、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、置換シリル基、アシル基又は1価の複素環基を表す。R’’が複数含まれる場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。R’’が炭素原子を含む基である場合、炭素原子数は通常1〜60程度である。
【0062】
R’’で表される、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、置換シリル基、1価の複素環基の定義及び具体例は、前述のRで表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、置換シリル基、1価の複素環基の定義及び具体例と同じである。
【0063】
短絡連流密度を高める観点からは、Ar11及びAr12として好ましくは、芳香族性を有する複素環から水素原子を3個取り除いた基である。
【0064】
式(1)で表される繰り返し単位としては、短絡連流密度を高める観点からは、式(1A)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化28】

【0065】
式(1A)中、Aは、前述と同じ意味を表す。X1a1及びX1a2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又は−N(R)−を表す。
【0066】
Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。式(1A)中にRが複数含まれる場合、それらは同一であっても相異なっていてもよい。Rが炭素原子を含む基である場合、炭素原子数は通常1〜60程度である。
【0067】
Rで表されるハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基の定義及び具体例は、前述のRで表されるハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基の定義及び具体例と同じである。
【0068】
式(1A)で表される繰り返し単位として好ましくは、式(301)〜式(325)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0069】
【化29】

【0070】
【化30】

【0071】
【化31】

【0072】
【化32】

【0073】
式(301)〜(325)中、Rは、前述(式(1A)において説明)と同じ意味を表す。式(301)〜式(325)で表される繰り返し単位の中でも、光電変換素子の変換効率を高める観点からは、好ましくは式(301)、式(306)、式(311)、式(316)、式(321)で表される繰り返し単位であり、さらに好ましくは、式(311)、式(316)、式(321)で表される繰り返し単位であり、特に好ましくは、式(316)で表される繰り返し単位である。
【0074】
アリーレン基及びヘテロアリーレン基が有していてもよい置換基としては、前述のRで表される置換基と同じものが挙げられる。式(2)中、Ar21、Ar22、及びAr23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。
【0075】
Ar21〜Ar23で表される置換基を有していてもよいアリーレン基において、アリーレン基の炭素原子数は、通常、6〜60程度であり、好ましくは6〜20である。ここでいう炭素原子数は、芳香環を構成する環炭素原子であり、置換基を有する場合の置換基に含まれる炭素原子数を含まない。ここにアリーレン基としては、ベンゼン環を含む基、縮合環を含む基、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接結合した基又はビニレン等の基を介して結合した基も含まれる。
【0076】
Ar21〜Ar23で表される置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基において、ヘテロアリーレン基の炭素原子数は、通常、2〜60程度、好ましくは6〜20である。ここでいう炭素原子数は、複素環を構成する環炭素原子であり、置換基を有する場合の置換基に含まれる炭素原子数を含まない。ここにヘテロアリーレン基とは、環式構造をもつ芳香族化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素などのヘテロ原子を環内に含む芳香族化合物から水素原子を2個取り除いた基をいう。Ar23として好ましくは、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基である。
【0077】
置換基を有していてもよいアリーレン基としては、置換基を有していてもよいフェニレン基(例えば、下図の式1〜3)、置換基を有していてもよいナフタレンジイル基(下図の式4〜13)、置換基を有していてもよいアントラセンジイル基(下図の式14〜19)、置換基を有していてもよいビフェニル−ジイル基(下図の式20〜25)、置換基を有していてもよいターフェニル−ジイル基(下図の式26〜28)、置換基を有していてもよい縮合環化合物基(下図の式29〜38)などが例示される。縮合環化合物基には、フルオレン−ジイル基(下図の式36〜38)が含まれる。
【0078】
置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基としては、例えば以下の基が挙げられる。
ヘテロ原子として、窒素を含む2価の複素環基:置換基を有していてもよいピリジン−ジイル基(下図の式39〜44)。
置換基を有していてもよいジアザフェニレン基(下図の式45〜48)。
置換基を有していてもよいキノリンジイル基(下図の式49〜63)。
置換基を有していてもよいキノキサリンジイル基(下図の式64〜68)。
置換基を有していてもよいアクリジンジイル基(下図の式69〜72)。
置換基を有していてもよいビピリジルジイル基(下図の式73〜75)。
置換基を有していてもよいフェナントロリンジイル基(下図の式76〜78)。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含みフルオレン構造を有する基(下図の式79〜93)。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基(下図の式94〜98)。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環縮合複素基(下図の式99〜110)。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基(下図の式111〜112)。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基(下図の式113〜119)。
ベンゼン環とチオフェン環が縮合した基(下記の図120〜122)。
【0079】
【化33】

【0080】
【化34】

【0081】
【化35】

【0082】
【化36】

【0083】
【化37】

【0084】
【化38】

【0085】
【化39】

【0086】
【化40】

【0087】
【化41】

【0088】
【化42】

【0089】
【化43】

【0090】
【化44】

【0091】
【化45】

【0092】
【化46】

【0093】
【化47】

【0094】
式1〜式122中、Rは前述(式(1A)において説明)と同じ意味を表す。
【0095】
【化48】

【0096】
式(2−1)〜式(2−8)中、R21〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表す。R21〜R38で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。R21〜R38が炭素原子を含む基である場合、炭素原子数は通常1〜60程度である。
【0097】
21〜R38で表されるアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基の定義及び具体例は、前述のRで表されるアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基の定義及び具体例と同じである。これらの置換基に水素原子が含まれる場合は、該水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0098】
21、R22、及びR35として好ましくは、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルキルオキシ基であり、特に好ましくはアルキル基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよいが、本発明の高分子化合物の溶解性を高める観点からは分岐状であることが好ましい。
【0099】
23、R24、R27、R28、R31、R32、R33、R34、R37及びR38は、好ましくはハロゲン原子、水素原子であり、さらに好ましくは、フッ素原子、水素原子であり、特に好ましくは、水素原子である。
【0100】
25、R26、R29及びR30として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子、アリールアルキル基である。
【0101】
36として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基であり、さらに好ましくはアシル基、アシルオキシ基である。
【0102】
式(2−1)〜式(2−8)中、X21〜X29は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はセレン原子を表す。
【0103】
式(2)中、Ar23としては、式(2−1)〜式(2−8)で表される基が好ましい。式(2−1)〜式(2−8)中、X21〜X29は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はセレン原子を表し、短絡連流密度を高める観点からは、好ましくは硫黄原子、酸素原子であり、さらに好ましくは硫黄原子である。
【0104】
Ar23としてより好ましくは、式(2−1)、式(2−2)、式(2−3)で表される基であり、さらに好ましくは、式(2−1)、式(2−2)で表される基であり、特に好ましくは(2−1)で表される基である。
【0105】
式(2)中、Ar21及びAr22としては、好ましくは、式39〜式122で表される基であり、より好ましくは、式94〜式98、式111〜式113で表される基であり、さらに好ましくは、式94〜式98で表される基であり、より好ましくは、式96〜98で表される基であり、特に好ましくは式97で表される基である。
【0106】
式(2)で表される繰り返し単位としては、短絡連流密度を高める観点からは、好ましくは式(2A)で表される繰り返し単位である。
【0107】
【化49】

【0108】
式(2A)中、X2a1及びX2a2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はセレン原子を表す。R21及びR22は、前述と同じ意味を表す。
【0109】
40〜R43は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R40〜R43で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基があげられる。R40〜R43が炭素原子を含む基である場合、炭素原子数は通常1〜60程度である。
【0110】
40〜R43で表されるアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基の定義及び具体例は、前述のRで表されるアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基の定義及び具体例と同じである。これらの置換基に水素原子が含まれる場合は、該水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。R40〜R43として好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子である。
【0111】
式(2)で表される繰り返し単位としては、式(2−1−1)〜式(2−1−9)で表される繰り返し単位が例示される。
【0112】
【化50】

【0113】
【化51】

【0114】
【化52】

【0115】
式(2−1−1)〜式(2−1−9)中、R21及びR22は、前述と同じ意味を表す。式(2−1−1)〜式(2−1−9)で表される繰り返し単位の中でも、好ましくは、式(2−1−1)〜式(2−1−3)で表される繰り返し単位である。
【0116】
式(3)中、Ar31は、置換基を有するアリーレン基又は置換基を有するヘテロアリーレン基を表す。ただし、式(3)で表される繰り返し単位は、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位とは異なる。
【0117】
Ar31におけるアリーレン基又はヘテロアリーレン基は、前述のAr21におけるアリーレン基又はヘテロアリーレン基と同じであり、具体例は、前述の式1から式122として挙げられたアリーレン基およびヘテロアリーレン基が挙げられる。
【0118】
Ar31におけるアリーレン基又はヘテロアリーレン基が有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミノ基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基又は式(3A)で表される1価の基が挙げられる。
【化53】

[式中、X3aは、直接結合、−CR3a1=CR3a2−、−C≡C−、−O−、−S−、アルキレン基又はアリーレン基を表す。R3a、R3a1及びR3a2は水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。Ar3aは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。nは1〜10の整数である。X3aが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Ar3aが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
【0119】
Ar31におけるアリーレン基又はヘテロアリーレン基が有する置換基となり得る、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミノ基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、カルボキシル基、置換カルボキシル基の定義及び具体例は、前述のRで表される、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミノ基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、カルボキシル基、置換カルボキシル基の定義及び具体例と同じである。
【0120】
さらに、Ar31におけるアリーレン基又はヘテロアリーレン基が有する置換基となり得る置換基としては、上記のとおり、式(3A)で表される置換基も含まれる。式(3A)におけるX3aは、直接結合、−CR3a1=CR3a2−、−C≡C−、−O−、−S−、アルキレン基、アリーレン基を表す。アルキレン基の炭素原子数は、通常、1〜20程度である。炭素原子数3以上のアルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよく、置換基を有していてもよい。アルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基等が挙げられる。アリーレン基の炭素原子数は、通常、6〜20程度である。アリーレン基は置換基を有していてもよい。アリーレン基の例としてはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。
【0121】
3a、R3a1及びR3a2は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。ハロゲンとしてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基であってもよい。R3a、R3a1及びR3a2におけるアルキル基の炭素原子数は、通常1〜30であり、好ましくは1〜20である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0122】
3aとして好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基であり、特に好ましくはアルキル基である。R3a1、R3a2として好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であり、さらに好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子である。
【0123】
3aとして好ましくは直接結合、−CR3a1=CR3a2−、−C≡C−であり、さらに好ましくは−CR3a1=CR3a2−であり、特に好ましくは−CH=CH−である。
【0124】
式(3A)中、Ar3aで表される置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基の定義及び具体例は、式(2)中のAr21で表される置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基の定義及び具体例と同じである。Ar3aとして好ましくは、式1、式20、式36、式37、式79、式80、式82、式83、式94、式95、式96、式97、式111、式112、式113で表される基であり、より好ましくは式1、式36、式79、式82、式97、式111で表される基であり、さらに好ましくは式1、式97で表される基であり、特に好ましくは式97で表される基である。
【0125】
式(3)中、Ar31が有する置換基として好ましくは、式(3A)で表される置換基である。式(3A)で表される置換基の具体例として好ましくは、式(3A−1)〜式(3A−23)で表される基が挙げられる。
【0126】
【化54】

【0127】
【化55】

【0128】
【化56】

【0129】
【化57】

【0130】
【化58】

【0131】
式(3A−1)〜式(3A−23)中、R3aは、式(3A)において説明したとおりである。式(3A)として好ましくは、式(3A−1)〜式(3A−5)で表される基であり、さらに好ましくは式(3A−2)〜式(3A−4)で表される基であり、特に好ましくは式(3A−3)で表される基である。
【0132】
式(3)で表される繰り返し単位の具体例としては、短絡連流密度を高める観点からは、好ましくは式(3−1)〜式(3−5)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0133】
【化59】

【0134】
【化60】

【0135】
式(3−1)〜式(3−5)中、R3aは、式(3A)にて説明したとおりである。式(3−1)〜式(3−5)で表される繰り返し単位の中でも、好ましくは式(3−2)〜式(3−4)で表される繰り返し単位であり、特に好ましくは式(3−3)で表される繰り返し単位である。
【0136】
本発明における高分子化合物とは、重量平均分子量が1000以上の化合物を指す。重量平均分子量が3000〜10000000の高分子化合物が好ましい。重量平均分子量が3000より低いと素子作製時の膜形成に欠陥が生じることがあり、10000000より大きいと溶媒への溶解性や素子作製時の塗布性が低下することがある。高分子化合物の重量平均分子量は、さらに好ましくは8000〜5000000であり、特に好ましくは10000〜1000000である。
【0137】
本発明における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、ポリスチレンの標準試料を用いて算出したポリスチレン換算の重量平均分子量のことを指す。
【0138】
本発明の高分子化合物は、素子に用いられる場合、素子作製の容易性から、溶媒への溶解度が高いことが望ましい。具体的には、本発明の高分子化合物が、該高分子化合物を0.01重量(wt)%以上含む溶液を作製し得る溶解性を有することが好ましく、0.1wt%以上含む溶液を作製し得る溶解性を有することがより好ましく、0.4wt%以上含む溶液を作製し得る溶解性を有することがさらに好ましい。
【0139】
本発明の高分子化合物の製造方法としては、特に制限されるものではないが、高分子化合物の合成の容易さからは、Suzukiカップリング反応やStilleカップリング反応を用いる方法が好ましい。
【0140】
Suzukiカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式(100):
100−E−Q200 (100)
[式中、Eは、式(1)で表される繰り返し単位を表す。Q100及びQ200は、それぞれ独立に、ジヒドロキシボリル基(−B(OH))又はホウ酸エステル残基を表す。]
で表される1種類以上の化合物と、式(200):
−E−T (200)
[式中、Eは、式(2)で表される繰り返し単位を表す。T及びTは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。]
で表される化合物と、
−E−T (300)
[式中、Eは、式(3)で表される繰り返し単位を表す。T及びTは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。]
で表される化合物を、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。
【0141】
この場合、反応に用いる式(200)で表わされる化合物と式(300)で表される化合物のモル数の合計が、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数に対して、過剰であることが好ましい。反応に用いる式(200)で表わされる化合物と式(300)で表される化合物のモル数の合計を1モルとすると、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数が0.6〜0.99モルであることが好ましく、0.7〜0.95モルであることがさらに好ましい。
【0142】
ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式:
【化61】

(式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)
で表される1価の基等が例示される。(上記式中、左側の「−」は結合子を示す。)
【0143】
式(200)における、T及びTで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることがさらに好ましい。
【0144】
式(200)における、T及びTで表されるアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基が例示される。アリールアルキルスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基が例示される。
【0145】
具体的には、Suzukiカップリング反応を行う方法としては、任意の溶媒中において、触媒としてパラジウム触媒を用い、塩基の存在下で反応させる方法等が挙げられる。
【0146】
Suzukiカップリング反応に使用するパラジウム触媒としては、例えば、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒等が挙げられ、具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム等が挙げられるが、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
【0147】
パラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル〜0.5モル、好ましくは0.0003モル〜0.1モルである。
【0148】
Suzukiカップリング反応に使用するパラジウム触媒としてパラジウムアセテート類を用いる場合は、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン等のリン化合物を配位子として添加し得る。この場合、配位子の添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モル、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0149】
Suzukiカップリング反応に使用する塩基としては、無機塩基、有機塩基、無機塩等が挙げられる。無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム等が挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化セシウム等が挙げられる。
塩基の添加量は、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.5モル〜100モル、好ましくは0.9モル〜20モル、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0150】
Suzukiカップリング反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が例示される。本発明に用いられる高分子化合物の溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。また、塩基は、水溶液として加え、2相系で反応させてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、無機塩の溶解性の観点から、通常、水溶液として加えて反応させる。
【0151】
なお、塩基を水溶液として加え、2相系で反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を加えてもよい。
【0152】
Suzukiカップリング反応を行う温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50〜160℃程度であり、高分子化合物の高分子量化の観点から、60〜120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間〜200時間程度である。1時間〜30時間程度が効率的で好ましい。
【0153】
Suzukiカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下、Pd(0)触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、重合容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気する。次いで、この重合容器に、式(100)で表される化合物、式(200)で表される化合物、式(300)で表される化合物、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を仕込み、さらに、重合容器を窒素ガスで十分置換し、脱気する。次いで、この重合容器に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した溶媒、例えば、トルエンを加える。次いで、この溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基、例えば、炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0154】
Stilleカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式(400):
300−E−Q400 (400)
[式中、Eは、式(1)で表される繰り返し単位を表す。Q300及びQ400は、それぞれ独立に、置換スタンニル基を表す。]
で表される1種類以上の化合物と、前記式(200)で表される化合物および前記式(300)で表される化合物とを、パラジウム触媒の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。
【0155】
置換スタンニル基としては、例えば、−SnR100で表される基等が挙げられる。ここでR100は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられる。
【0156】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2一メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。有機スズ残基の具体例として好ましくは、−SnMe、−SnEt、−SnBu、−SnPhであり、さらに好ましくは−SnMe、−SnEt、−SnBuである。上記好ましい例において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基を表す。
【0157】
式(200)における、T及びTで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましい。
【0158】
式(200)における、T及びTで表されるアルキルスルホネート基の具体例としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基が例示される。
【0159】
具体的には、触媒として、例えば、パラジウム触媒下で任意の溶媒中で反応する方法が挙げられる。
【0160】
Stilleカップリング反応に使用するパラジウム触媒としては、例えば、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒が挙げられる。具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが挙げられ、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
【0161】
Stilleカップリング反応に使用するパラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(400)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル〜0.5モル、好ましくは0.0003モル〜0.2モルである。
【0162】
Stilleカップリング反応において、必要に応じて配位子や助触媒を用い得る。配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2−フリル)ホスフィン等のリン化合物やトリフェニルアルシン、トリフェノキシアルシン等の砒素化合物が挙げられる。助触媒としては、例えば、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、2−テノイル酸銅(I)などが挙げられる。
【0163】
配位子又は助触媒を用いる場合、配位子又は助触媒の添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モル、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0164】
Stilleカップリング反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。本発明に用いられる高分子化合物の溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。
【0165】
Stilleカップリング反応を行う温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50〜160℃程度であり、高分子化合物の高分子量化の観点から、60〜120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。
【0166】
前記反応を行う時間(反応時間)は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間〜200時間程度である。1時間〜30時間程度が効率的で好ましい。
【0167】
Stilleカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下、Pd触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、重合容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気する。次いで、この重合容器に、式(300)で表される化合物、式(200)で表される化合物、式(400)で表される化合物、パラジウム触媒を仕込み、さらに、重合容器を窒素ガスで十分置換し、脱気する。次いで、この重合容器に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した溶媒、例えば、トルエンを加えた後、必要に応じて配位子や助触媒を加え、その後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0168】
高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、好ましくは1×10〜1×10である。ポリスチレン換算の数平均分子量が1×10以上である場合には、強靭な薄膜が得られやすくなる。一方、10以下である場合には、溶解性が高く、薄膜の作製が容易である。強靭な薄膜を得る観点からは、ポリスチレン換算の数平均分子量が3×10以上であることが好ましい。
【0169】
本発明の高分子化合物の末端基は、重合活性基がそのまま残っていると、素子の作製に用いたときに得られる素子の特性や寿命が低下する可能性があるので、安定な基で保護されていてもよい。本発明の高分子化合物の末端基は、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものが好ましく、また、例えば、ビニレン基を介してアリール基又は複素環基と結合している構造であってもよい。
【0170】
本発明の高分子化合物中の式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、本発明の高分子化合物が有する繰り返し単位の合計に対して、光電変換効率を高める観点からは、10〜80モル%が好ましい。本発明の高分子化合物中の式(2)で表される繰り返し単位の含有量は、光電変換効率を高める観点からは、10〜80モル%が好ましい。本発明の高分子化合物中の式(3)で表される繰り返し単位の含有量は、光電変換効率を高める観点からは、5〜50モル%が好ましい。
【0171】
本発明の高分子化合物は、光吸収末端波長が長波長であることが光電変換効率を高める観点から好ましい。光吸収末端波長が700nm以上であることが好ましく、800nm以上であることがより好ましく、900nm以上であることが特に好ましい。
【0172】
光吸収末端波長(λth)は、光吸収波長の長波長側の末端の波長値として表される。
本発明のおける光吸収末端波長の数値は、具体的には以下の方法で求められた値によって表されている。
【0173】
光吸収波長の測定には、紫外、可視、近赤外の波長領域で動作する分光光度計(例えば、日本分光製、紫外可視近赤外分光光度計JASCO−V670)を用いる。JASCO−V670を用いる場合、測定可能な波長範囲が200〜1500nmであるため、該波長範囲で測定を行う。まず、測定に用いる基板の吸収スペクトルを測定する。基板としては、例えば、石英基板、ガラス基板等を用いる。次いで、その基板の上に第1の化合物を含む溶液若しくは第1の化合物を含む溶融体から第1の化合物を含む薄膜を形成する。溶液からの製膜では、製膜後乾燥を行う。その後、薄膜と基板との積層体の吸収スペクトルを得る。薄膜と基板との積層体の吸収スペクトルと基板の吸収スペクトルとの差を、薄膜の吸収スペクトルとして得る。
【0174】
該薄膜の吸収スペクトルは、縦軸が第1の化合物の吸光度を、横軸が波長を示す。最も大きい吸収ピークの吸光度が0.5〜2程度になるよう、薄膜の膜厚を調整することが望ましい。
【0175】
本発明における光吸収末端波長は、下記に示す第1基準線と第2基準線の交点から求めることができる。
<第1基準線>
吸収波形(吸収スペクトル)全体の中で、一番長波長寄りの吸収ピーク点(極大値)の吸光度を100%とする。
前記吸収ピーク点の50%の吸光度を示す横軸(波長軸)に平行な直線と該吸収波形とが交わる2つの交点のうち、前記吸収ピーク点よりも長波長寄りにある交点を第1の点とする。
前記吸収ピーク点の25%の吸光度を示す波長軸に平行な直線と該吸収波形とが交わる2つの交点のうち、前記吸収ピーク点よりも長波長寄りにある交点を第2の点とする。
第1の点と第2の点とを結ぶ直線を、第1基準線とする。
<第2基準線>
吸収波形全体の中で、一番長波長寄りの吸収ピーク点(極大値)の吸光度を100%とする。
前記吸収ピーク点の10%の吸光度を示す波長軸に平行な直線と該吸収波形とが交わる2つの交点のうち、前記吸収ピーク点よりも長波長寄りにある交点の波長を基準点として、基準点の波長より100nm長波長にある吸収波形上の点を第3の点とする。また、基準点の波長より150nm長波長にある吸収波形上の点を第4の点とする。第3の点と第4の点を結ぶ直線を第2基準線とする。
<光吸収末端波長の値>
第1基準線と第2基準線との交点における波長の値を、光吸収末端波長の値とする。
【0176】
本発明の高分子化合物は、高い電子及び/又はホール輸送性を発揮し得ることから、該化合物を含む有機薄膜を素子に用いた場合、電極から注入された電子やホール、或いは、光吸収によって発生した電荷を輸送することができる。これらの特性を活かして該化合物を含む有機薄膜を光電変換素子、有機薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子等の種々の素子に好適に用いることができる。以下、これらの素子について個々に説明する。
【0177】
<組成物>
本発明の組成物は、本発明の高分子化合物と電子受容性化合物とを含む。本発明の組成物において、電子受容性化合物の割合が、本発明の高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。
【0178】
電子受容性化合物としては、本発明の高分子化合物のほか、例えば、炭素材料、酸化チタン等の金属酸化物、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン)等のフェナントロリン誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体が挙げられ、好ましくは、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フラーレン誘導体であり、特に好ましくはフラーレン、フラーレン誘導体である。
【0179】
フラーレン、フラーレン誘導体としては、例えば、炭素原子数がC60、C70、C76、C78、C84のフラーレン及びその誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体は、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を表す。
【0180】
フラーレン誘導体としては、例えば、式(13)で表される化合物、式(14)で表される化合物、式(15)で表される化合物、式(16)で表される化合物が挙げられる。
【化62】

(式(13)〜(16)中、Rは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はエステル構造を有する基である。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。Rはアルキル基又はアリール基を表す。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。)
【0181】
及びRで表されるアルキル基、アリール基の定義、具体例は、Rで表されるアルキル基、アリール基の定義、具体例と同じである。
【0182】
で表されるヘテロアリール基は、通常、炭素原子数が3〜60であり、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。
【0183】
で表されるエステル構造を有する基は、例えば、式(17)で表される基が挙げられる。
【化63】

(式中、u1は、1〜6の整数を表す、u2は、0〜6の整数を表す、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0184】
で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例は、Rで表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0185】
60フラーレンの誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
【化64】

【0186】
70フラーレンの誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
【化65】

【0187】
また、フラーレン誘導体の例としては、[6,6]フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]−Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]−Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]−Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、[6,6]チエニル−C61酪酸メチルエステル([6,6]−Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0188】
<薄膜>
本発明の薄膜の第1の態様は、本発明の高分子化合物を含む薄膜である。本発明の薄膜の第2の態様は、本発明の組成物を含む薄膜である。薄膜の厚さは、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましくは20nm〜200nmである。
【0189】
<電子素子>
本発明の電子素子は、第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に活性層を有し、該活性層に本発明の高分子化合物、又は、本発明の組成物を含有する。電子素子としては、例えば、光電変換素子、有機薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子が挙げられる。
【0190】
<光電変換素子>
本発明の高分子化合物を有する光電変換素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に、本発明の高分子化合物を含む1層以上の活性層を有する。
【0191】
本発明の高分子化合物を有する光電変換素子の好ましい形態としては、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、p型の有機半導体とn型の有機半導体との有機組成物から形成される活性層を有する。本発明の高分子化合物は、p型の有機半導体として用いることが好ましい。この形態の光電変換素子の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーがフラーレン誘導体等の電子受容性化合物(n型の有機半導体)及び/又は本発明の高分子化合物等の電子供与性化合物(p型の有機半導体)で吸収され、電子とホールが結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると、界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0192】
本発明の高分子化合物を用いて製造される光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0193】
本発明の高分子化合物を有する光電変換素子の他の態様は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に、本発明の高分子化合物を含む第1の活性層と、該第1の活性層に隣接して、フラーレン誘導体等の電子受容性化合物を含む第2の活性層を含む光電変換素子である。
【0194】
透明又は半透明の電極材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。透明又は半透明の電極材料の具体例としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜、NESAや、金、白金、銀、銅等が挙げられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0195】
一方の電極は透明でなくてもよく、該電極の電極材料としては、例えば、金属、導電性高分子等を用い得る。電極材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属;これら金属のうち2つ以上の合金;これらの金属うちの1種以上の前記金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金;グラファイト及びグラファイト層間化合物;ポリアニリン及びその誘導体;並びに、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金の具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0196】
光電変換効率を向上させるための手段として活性層以外の付加的な中間層を使用してもよい。中間層として用いられる材料としては、例えば、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化チタン等の酸化物、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)などが挙げられる。
【0197】
<活性層>
活性層は、本発明の高分子化合物を一種単独で含んでいても二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。活性層のホール輸送性を高めるため、電子供与性化合物及び/又は電子受容性化合物として、本発明の高分子化合物以外の化合物を活性層中に混合して用い得る。なお、電子供与性化合物、電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0198】
電子供与性化合物としては、本発明の高分子化合物のほか、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0199】
電子受容性化合物としては、本発明の高分子化合物のほか、前述の化合物が挙げられる。
【0200】
活性層中に本発明の高分子化合物とフラーレン誘導体とを含む場合、フラーレン誘導体の割合が、本発明の高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。
【0201】
活性層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは20nm〜200nmである。
【0202】
前記活性層の製造方法は、如何なる方法で製造してもよく、例えば、高分子化合物を含む溶液からの成膜や、真空蒸着法による成膜方法が挙げられる。
【0203】
<光電変換素子の製造方法>
光電変換素子の好ましい製造方法は、第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に活性層を有する素子の製造方法であって、該第1の電極上に本発明の高分子化合物と溶媒とを含む溶液(インク)又は本発明の組成物と溶媒とを含む溶液を塗布法により塗布して活性層を形成する工程、該活性層上に第2の電極を形成する工程を有する素子の製造方法である。
【0204】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明の高分子化合物又は本発明の組成物を溶解させるものであればよい。該溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。本発明の高分子化合物は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0205】
溶液を用いて成膜する場合、例えば、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットコート法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スリットコート法、キャピラリーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ノズルコート法、インクジェットコート法、スピンコート法が好ましい。
【0206】
成膜性の観点からは、25℃における溶媒の表面張力が15mN/mより大きいことが好ましく、15mN/mより大きく100mN/mよりも小さいことがより好ましく、25mN/mより大きく60mN/mよりも小さいことがさらに好ましい。
【0207】
<有機薄膜トランジスタ>
本発明の高分子化合物は、有機薄膜トランジスタにも用いることができる。有機薄膜トランジスタとしては、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となる有機半導体層(活性層)と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられ、有機半導体層が上述した有機薄膜によって構成されるものである。このような有機薄膜トランジスタとしては、電界効果型、静電誘導型等が挙げられる。
【0208】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。
特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層(活性層)に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。電界効果型有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層が、本発明の高分子化合物を含む有機薄膜によって構成される。
【0209】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。静電誘導型有機薄膜トランジスタにおいても、有機半導体層が、本発明の高分子化合物を含む有機薄膜によって構成される。
【0210】
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の高分子化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に用いることもできる。有機EL素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に発光層を有する。有機EL素子は、発光層の他にも、正孔輸送層、電子輸送層を含んでいてもよい。該発光層、正孔輸送層、電子輸送層のいずれかの層中に本発明の高分子化合物が含まれる。発光層中には、本発明の高分子化合物の他にも、電荷輸送材料(電子輸送材料と正孔輸送材料の総称を意味する)を含んでいてもよい。有機EL素子としては、陽極と発光層と陰極とを有する素子、さらに陰極と発光層の間に、該発光層に隣接して電子輸送材料を含有する電子輸送層を有する陽極と発光層と電子輸送層と陰極とを有する素子、さらに陽極と発光層の間に、該発光層に隣接して正孔輸送材料を含む正孔輸送層を有する陽極と正孔輸送層と発光層と陰極とを有する素子、陽極と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と陰極とを有する素子等が挙げられる。
【0211】
<素子の用途>
本発明の高分子化合物を用いた光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0212】
また、本発明の高分子化合物を用いた光電変換素子は、電極間に電圧を印加した状態、あるいは無印加の状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
上述の有機薄膜トランジスタは、例えば電気泳動ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の画素の制御や、画面輝度の均一性や画面書き換え速度を制御のために用いられる画素駆動素子等として用いることができる。
【0213】
<太陽電池モジュール>
有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の高分子化合物を用いて製造される有機薄膜太陽電池も使用目的や使用場所及び環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0214】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側又は両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リード又はフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力を外部に取り出される構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルム又は充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、又は上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。
支持基板の周囲は、内部の密封及びモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールする。また、セルそのものや支持基板、充填材料及び封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
【0215】
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48,p383−391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【実施例】
【0216】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0217】
(NMR測定)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(JEOL社製、Alpha FT−NMR)を用いて行った。
【0218】
(数平均分子量及び重量平均分子量の測定)
数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(島津製作所製、商品名:Prominence system)によりポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。GPCの移動相はクロロホルムを用いた。
【0219】
合成例1
(化合物3の合成)
【化66】

【0220】
上記の合成反応を以下の手順に従って行い、化合物3を合成した。ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサイアティ(Journal of the American Chemical Society)、1997年、第119巻、10774〜10784頁に記載された方法に従って、化合物1を合成した。ジャーナル オブ ポリマー サイエンス パート エー:ポリマー ケミストリー(Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry)、2006年、第44巻、第16号、4916〜4922頁に記載された方法に従って化合物2を合成した。100mLフラスコに、化合物1を2.06g(5.00mmol)、化合物2を2.16g(5.50mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと呼称することもある)を50mL入れて均一溶液とした。フラスコを0℃に保ったまま、0.54gのナトリウムメトキシド(10mmol)を20mLのDMFに溶解させた溶液を10分かけて滴下した。滴下後、反応液を室温で2時間攪拌し、次いで、メタノールに注いだ。次いで、メタノールに不溶な固体をろ過して回収した。得られた固体を、展開溶媒としてクロロホルムとヘキサンの混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3を2.6g得た。混合溶媒中、クロロホルムの体積に対するヘキサンの体積比は5であった。
【0221】
実施例1
(重合体Aの合成)
【化67】

【0222】
マクロモレキュールズ(Macromolecules)、2008年、第41巻、8302〜8305頁に記載された方法に従って化合物4を合成した。また、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、2010年、第43巻、821〜826頁に記載された方法に従って化合物5を合成した。フラスコ内の気体を窒素で置換した50mLフラスコに、化合物3を30.6mg(0.047mmol)、化合物4を175mg(0.235mmol)、化合物5を107.4mg(0.188mmol)、トルエンを10ml入れて均一溶液とした。得られたトルエン溶液を、窒素で30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh)を14mg(0.012mmol)加え、90℃で48時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノールに注いだ。得られたポリマー200mgをクロロホルム100mLに溶解させ、クロロホルム溶液をアルミナ/セライト/シリカゲルカラムに通した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーをろ過後、乾燥し、精製された重合体170mgを得た。以下、この重合体を重合体Aと呼称する。GPCで測定した重合体Aのポリスチレン換算の重量平均分子量は41100であり、ポリスチレン換算の数平均分子量は21000であった。重合体Aの光吸収末端波長は1030nmであった。
【0223】
実施例2
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により100nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板を、界面活性剤溶液、水、アセトン及び2−プロパノールをこの順に用いて超音波洗浄を行った。次に、重合体A及びフェニルC71−酪酸メチルエステル(C70PCBM)(phenyl C71−butyric acid methyl ester、Solenne社製)をクロロホルムとo−ジクロロベンゼンとの混合溶媒に溶解させて、インク1を製造した。インク1中、重合体Aの重量に対するC70PCBMの重量比は2であり、o−ジクロロベンゼンの体積に対するクロロホルムの体積比は9であった。また、インク1の重量に対し、重合体Aの重量とC70PCBMの重量との合計は、1重量%であった。該インク1を用い、スピンコートにより基板上に塗布して、重合体Aを含む有機膜を作製した。該有機膜は活性層として機能する。有機膜の膜厚は、約80nmであった。このようにして作製した有機膜の光吸収末端波長は1030nmであった。その後、有機膜上に真空蒸着機によりカルシウムを厚さ10nmで蒸着し、次いでアルミニウムを厚さ30nmで蒸着し、有機薄膜太陽電池を作製した。
【0224】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、3mm×4mmの長方形であった。得られた有機薄膜太陽電池に、2mm×3mmの金属マスクを通して、ソーラシミュレーター(ペクセルテクノロジーズ社製、商品名PEC−L11、放射照度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して光電変換効率、短絡電流密度、開放電圧、フィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)は23.75mA/cmであり、Voc(開放端電圧)は0.42Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.48であり、光電変換効率(η)は4.77%であった。
【0225】
実施例3
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
実施例2と同様に有機膜を作製し、該有機膜上に真空蒸着機によりフッ化リチウムを厚さ1nmで蒸着し、次いでアルミニウムを厚さ30nmで蒸着して有機薄膜太陽電池を製造した。
【0226】
得られた有機薄膜太陽電池を実施例2と同様にJsc、Voc、ff、ηを測定したところ、Jscは18.73mA/cmであり、Vocは0.42Vであり、ffは0.58であり、ηは4.56%であった。
【0227】
実施例4
(有機トランジスタの作製)[重合体A]
厚さ300nmのシリコンの熱酸化膜と、アンチモンが高濃度にドーピングされたn−型シリコンとを有するシリコン基板をアセトン中で10分間超音波洗浄した後、オゾンUVを20分間照射した。その後、トルエン10mL中にオクタデシルトリクロロシランをシリンジで5滴加えたトルエン溶液をシリコン基板上にスピンコートすることにより熱酸化膜の表面をシラン処理した。シリコンの熱酸化膜がゲート絶縁層として作用し、アンチモンを高濃度でドーピングしたシリコンはゲート電極として作用する。
【0228】
次に、重合体Aをオルトジクロロベンゼンに溶解し、重合体Aの濃度が0.5重量%の溶液を調製し、該溶液をメンブランフィルターでろ過して塗布液を作製した。該塗布液を、上記シラン処理したn−型シリコン基板上にスピンコート法により塗布し、厚みが約60nmである重合体Aの塗布膜を形成した。その後、該塗布膜を窒素雰囲気中で170℃にて30分加熱することにより、重合体Aの有機半導体薄膜を形成した。該有機半導体膜は活性層として機能する。
【0229】
次に、有機半導体薄膜上にメタルマスクを配置し、真空蒸着法により、有機半導体薄膜上に三酸化モリブデン及び金を順に積層し、三酸化モリブデンと金の積層構造を有するソース電極及びドレイン電極を作製することにより、有機トランジスタを製造した。
【0230】
有機トランジスタの電気特性を、半導体特性評価システム(半導体パラメータアナライザー4200−SCS、KEITHLEY社製)を用いて測定した。ゲート電極に印加する負のゲート電圧を増加させると、負のドレイン電流も増加することから、有機トランジスタは、p型の有機トランジスタであることを確認することができた。有機トランジスタにおけるキャリアの飽和電界効果移動度μ(cm−1sec−1)は、有機トランジスタの電気特性の飽和領域におけるドレイン電流Idを表す下記式(a)を用いて算出した。
Id=(W/2L)μCi(Vg−Vt) ・・・(a)
(式(a)中、Lは有機トランジスタのチャネル長、Wは有機トランジスタのチャネル幅、Ciはゲート絶縁膜の単位面積当たりの容量、Vgはゲート電圧、Vtはゲート電圧のしきい値電圧を表す。)
その結果、キャリアの電界効果移動度(キャリア移動度)は0.0076(cm−1sec−1)であった。
【0231】
合成例2
(重合体Bの合成)
【化68】

【0232】
フラスコ内の気体を窒素で置換した50mLフラスコに、化合物4を262.5mg(0.353mmol)、化合物5を201.4mg(0.353mmol)、トルエンを15ml入れて均一溶液とした。得られたトルエン溶液を、窒素で30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh)を20mg加え、110℃で48時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール200mLに注いだ。得られたポリマーをクロロホルム150mLに溶解させ、クロロホルム溶液をアルミナ/セライト/シリカゲルカラムに通した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーをろ過後、乾燥し、精製された重合体250mgを得た。以下、この重合体を重合体Bと呼称する。GPCで測定した重合体Bのポリスチレン換算の重量平均分子量は38600であり、ポリスチレン換算の数平均分子量は18900であった。重合体Bの光吸収末端波長は1010nmであった。
【0233】
比較例1
実施例2において重合体Aの代わりに重合体Bを用いた以外は同様にして有機薄膜太陽電池を製造し、光電変換効率、短絡電流密度、開放電圧、フィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)は15.28mA/cmであり、Voc(開放端電圧)は0.40Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.45であり、光電変換効率(η)は2.79%であった。
【0234】
合成例3
(重合体Cの合成)
【化69】

特表2009−506519号公報に記載の方法に従って、化合物6を合成した。フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物6を561mg(1.00mmol)、化合物7(4,7−bis(4,4,5,5−tetramethyl−1,3,2−dioxaborolan−2−yl)−2,1,3−benzothiadiazole)(Aldrich社製)を388.1mg(1.00mmol)、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を202mg加え、トルエン20mlに溶解させた。得られたトルエン溶液をアルゴンで30分バブリングした。その後、反応液に酢酸パラジウムを2.25mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを12.3mg、16.7重量%の炭酸ナトリウム水溶液を6.5mL加え、100℃で5時間攪拌を行った。その後、反応液にフェニルホウ酸50mgを加え、さらに70℃で2時間反応させた。その後、反応液にジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gと水20mLを加え、2時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水20mlで2回洗浄し、次いで、3重量%の酢酸水溶液20mLで2回洗浄し、さらに水20mLで2回洗浄した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーを濾過後、乾燥させ、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン30mLに溶解させ、アルミナ/シリカゲルカラムに通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーを濾過後、乾燥させ、精製された重合体280mgを得た。以下、この重合体を重合体Cと呼称する。GPCで測定した重合体Cのポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量が30000であり、数平均分子量が14000であった。
【0235】
比較例2
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
実施例2において、重合体Aの代わりに重合体Cを用いた以外は同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及び曲線因子を求めた。
【0236】
実施例2、3および比較例1、2の各有機薄膜太陽電池の光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及び曲線因子を、表1にまとめて示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し単位と式(3)で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物。
【化1】

〔式中、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、芳香環から水素原子を3個取り除いた3価の基を表し、該芳香環は置換基を有していてもよい。式(1)で表される繰り返し単位が複数含まれる場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。Aは、式(1−1)〜式(1−12)のいずれかで表される2価の基を表す。
【化2】

(式中、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)〕
【化3】

〔式中、Ar21、Ar22及びAr23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。式(2)で表される繰り返し単位が複数含まれる場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。〕
【化4】

〔式中、Ar31は、置換基を有するアリーレン基又は置換基を有するヘテロアリーレン基を表す。ただし、式(3)で表される繰り返し単位は、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位とは異なる。式(3)で表される繰り返し単位が複数含まれる場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。〕
【請求項2】
Ar23で表される置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基が、式(2−1)〜式(2−8)のいずれかで表される基である請求項1に記載の高分子化合物。
【化5】

〔式中、R21〜R38は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。X21〜X29は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はセレン原子を表す。〕
【請求項3】
式(2)で表される繰り返し単位が、式(2A)で表される繰り返し単位である請求項1又は2に記載の高分子化合物。
【化6】

〔式中、X2a1及びX2a2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子又はセレン原子を表す。R21及びR22は、前述と同じ意味を表す。R40〜R43は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。〕
【請求項4】
式(1)で表される繰り返し単位が、式(1A)で表される繰り返し単位である請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【化7】

〔式中、Aは、前述と同じ意味を表す。X1a1及びX1a2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子又は−N(R)−を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。〕
【請求項5】
Ar31で表される置換基を有するアリーレン基又は置換基を有するヘテロアリーレン基が有する置換基が、式(3A)で表される1価の基である請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【化8】

〔式中、X3aは、直接結合、−CR3a1=CR3a2−、−C≡C−、−O−、−S−、アルキレン基又はアリーレン基を表す。R3a、R3a1及びR3a2は水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。Ar3aは置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。nは1〜10の整数である。X3aが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Ar3aが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。〕
【請求項6】
光吸収末端波長が700nm以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項7】
ポリスチレン換算の数平均分子量が3000以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む薄膜。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物と電子受容性化合物とを含む組成物。
【請求項10】
電子受容性化合物が、フラーレン誘導体である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の組成物を含む薄膜。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物、又は、請求項9若しくは10に記載の組成物と、溶媒とを含む溶液。
【請求項13】
第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に活性層を備え、該活性層に請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物、又は、請求項9若しくは10に記載の組成物を含有する電子素子。
【請求項14】
光電変換素子である請求項13記載の電子素子。
【請求項15】
請求項14記載の光電変換素子を備える太陽電池モジュール。
【請求項16】
請求項14記載の光電変換素子を備えるイメージセンサー。
【請求項17】
ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、活性層とを備え、該活性層に請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物、又は、請求項9若しくは10に記載の組成物を含有する有機薄膜トランジスタ。

【公開番号】特開2012−236985(P2012−236985A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98742(P2012−98742)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】