説明

高分子安定化強誘電性液晶組成物、及び液晶素子及び当該表示素子の製造方法

【課題】中間調の表示を可能とするスメクチック液晶を用いた高分子安定液晶表示素子において、TFT駆動が可能レベルに駆動電圧を低減して、更に、一軸配向性を高め高コントラストでTFT駆動による安定した表示が得られ、フルカラー表示に適した大きさのチルト角を得ることが可能な高分子安定液晶組成物を提供する。
【解決手段】次の一般式で表される


(式中、nは3以上の整数を表す。)少なくとも五つの環を有する重合性化合物を含有する高分子安定化強誘電性液晶組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブ素子にて駆動可能な高分子安定化液晶表示素子に有用な高分子安定化強誘電性液晶組成物、及び当該組成物を用いた高分子安定化液晶表示素子に於いて電界強度に依存して消光位を連続的に変化させることができる液晶素子及び液晶素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラークおよびラガウォールにより提案された強誘電性液晶材によれば、分子の長軸に対し永久双極子モーメントを分子の垂直方向に有することで自発分極を発現させ、自発分極の向きと逆極性電界により光スイッチングさせることができ、双安定性を有し、且つ電界の変化に対する応答が高速であることが記載されている(特許文献1参照)。この強誘電性液晶材を用いた液晶表示装置(ディスプレイ)は、単純マトリックス方式の駆動により大画面で高精細な液晶表示素子としての応用が期待されている。
2μm以下の薄厚にすると、強誘電性液晶は液晶セル基板表面の配向安定化(表面安定化)の作用により配向のメモリー性(双安定性)が発現してメモリー性を有する黒と白の二値表示のディスプレイが得られるが、フルカラーディスプレイへの応用に於いては、印加電圧に比例した連続階調表示が必須で、前記双安定性の二値表示のディスプレイでは印加電圧に比例した階調表示が不可能になりフルカラー表示のディスプレイへの応用を難しくしている。
【0003】
更に、現在実用化されている強誘電性液晶を用いたディスプレイは、配向膜にSiO2の斜方蒸着膜を用いることにより配向欠陥を無くしてコントラストを高くして、セル厚2μm以下で、且つ2インチ以下の超小型LCDである。しかし、LCDのサイズを大きくするとSiO2の斜方蒸着膜を均一に蒸着させることは難しくなり、セル厚が2μ以下では歩留まりが悪化して、その大型化は制限されていた。
【0004】
階調表示の課題を解消するために、FLC材料と共にメソゲン基を有するモノマーを使用し、紫外線を照射することによりモノマーを重合させ高分子安定化を図り、これにより双安定性を消失させて中間階調表示を可能にする技術が提案されている(非特許文献1及び2参照)。
又、これらは、強誘電性液晶と単官能液晶性アクリレートモノマーを含有する液晶組成物を液晶セル中で、該組成物がスメクチックA相やスメクチックC*相等の所定の液晶相を示す温度において紫外線を照射して、単官能液晶性アクリレートモノマーを高分子化させることにより得られる高分子安定化強誘電性液晶表示素子が開示されている(特許文献2、3、4及び5参照)。更に、強誘電性液晶材と単官能液晶性アクリレートモノマーを含有する強誘電性液晶組成物の強誘電性を示す温度で紫外線を照射する場合は、該組成物を液晶セル中で、該液晶組成物が強誘電性を示す温度において直流電圧を印加しながら紫外線を照射する方法が開示されている(特許文献4参照)。
【0005】
上述の方法で作製された高分子安定化強誘電性液晶性液晶素子は、紫外線照射の際に印加していた直流電圧に対し異極性の直流電圧を印加すると、配向膜の容易軸に対し直流電圧の絶対値に比例して、高分子安定化された傾き角の方向とは反対方向に強誘電性液晶材の配向方向が傾く。この場合でも双安定性は消失しているので、印加電圧を除去すれば、強誘電性液晶材は再び配向膜の容易軸に対して高分子安定化された傾き角を有する位置に配列する。このように紫外線照射時の印加直流電圧に対し異極性の電圧印加時における配向方向の変化を利用することで中間調表示が可能となる。しかし、印加電圧の極性に対して傾き角が配向膜の容易軸に対して対称にはならないため光学素子を直流電圧で駆動させるため焼付け等の素子の信頼性低下を招いていた。
【0006】
この解決のために、一対の基板間に単官能液晶性アクリレートモノマーを含有した強誘電性液晶組成物を挟み、強誘電性液晶層に対し電圧印加しながらカイラルスメクチックC相を示す状態で、周波数2kHz〜4kHzの交流電界を印加するとともに、紫外線もしくは電子線を照射することで上記液晶性アクリレートモノマーを高分子化させる手段を用いて、配向膜の容易軸に対して印加電圧の極性に関わらず対象な傾き角を有し、一軸配向及びV字型の透過率−電圧特性を有する高分子安定化強誘電性液晶性液晶素子が開示されている(特許文献6参照)。当該液晶素子は、素子の駆動を交流電圧で駆動できる点で有用であるが、液晶性単官能アクリレートを用いているため熱や外部からの力による変形等で配向が乱れ易く信頼性の低いものであった。
【0007】
上述の何れの階調表示実現を目的として提案された技術は、強誘電性を示すスメクチックC*相に於いて高分子安定化により一軸配向が得られるように液晶分子の配向を安定化させるものであって、印加電圧に依存して液晶分子のチルト角が連続的に変化することで中間階調表示を可能にするものである。中間階調を得るためには表面安定化強誘電性液晶の双安定性(メモリー性)を消失させて課題を解決しているが、高分子安定化強誘電性液晶作製する際には、少なくとも一対の基板間(セル厚)が2μm以下の薄厚の液晶セルを用いて、双安定性の状態の二軸配向状態に電圧を印加しながら含有している重合性化合物を重合させて目的の一軸配向を高分子安定化させる必要があるため、セル厚3μm以上の光学素子の量産化を難しくしていた。更に、セル厚を1.5μm程度のセル厚にして基板界面との相互作用で螺旋を解くため電圧−透過率特性に於いて基板界面の影響を大きく受けて液晶分子が電界に対して動き難くなりチルト角の低下を引き起こし、透過率の低下、駆動電圧の増加等の問題を起こしていた。
【0008】
セル厚を増し、セル厚2μmより2〜3ミクロン厚くした範囲では、螺旋構造を示す縞模様は見られないが、基板の表面エネルギーと液晶の弾性エネルギーの作用に依存して液晶ダイレクターが捩れるような力が発生し、セルの厚さ方向で、強誘電性液晶分子のダイレクターがラビング配向方向から僅かにズレて捩れた状態の配向を示す。二軸配向状態に捩れ配向が加わり、偏光のクロスニコル下で偏光軸を回転させても一軸配向や二軸配向で見られるような暗視野に複屈折色が加わるようになり、この光漏れがディスプレイでは完全な黒が得られなくなる原因の一つでコントラスト低下を引き起こしていた。(非特許文献3、4参照)更に、セル厚を増していくと螺旋構造を発現する。(非特許文献5参照)このセル厚を臨界セル厚とすると、臨界セル厚以上で無電界では螺旋ピッチに対応した干渉色や螺旋構造に起因した光散乱が起こりノーマルブラックのディスプレイが得られなくなる。
【0009】
以上より、強誘電性液晶表示素子において製造効率に有利なセル厚を有するものは知られておらず、表面安定化を使用せずTFT駆動が可能で高コントラスト、高速応答、高透過率、且つ電界強度に比例して連続的に透過率を制御できる強誘電性液晶表示素子の開発が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】特開昭56−107216号公報
【特許文献2】特開平9−211462号公報
【特許文献3】特開平9−211463号公報
【特許文献4】特開平11−21554号公報
【特許文献5】特開平11−326909号公報
【特許文献6】特開2002−31821号公報
【非特許文献1】古江(H.Furue),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.),36,L1517(1997)
【非特許文献2】古江(H.Furue),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.),37,3417(1998)
【非特許文献3】大内(Y.Ouchi),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.),26,1(1987)
【非特許文献4】新宮(T.Shingu),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.),25,L206(1986)
【非特許文献5】ペイベル(J.Pavel),ジャーナル・オブ・フィジックス(J.Phys.),45,137(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、強誘電性液晶の重合性液晶を重合させて液晶の配向を高分子安定化させるとスイッチング角が下がり、最大透過率の低下、及び駆動電圧上昇が起こるためディスプレイの光利用効率が下がり表示を暗くしていた。また、最大透過率と一軸配向性(最小透過率)との間にはトレードオフの関係があり透過率が高く一軸配向性が良好な特性を得るのを難しくしていた。これを解決することにより、中間調の表示を可能とするスメクチック液晶を用いた高分子安定液晶表示素子において、TFT(薄膜トランジスター)駆動が可能レベルに駆動電圧を低減して、更に、一軸配向性を高め高コントラストでTFT駆動による安定した表示が得られ、フルカラー表示に適した大きさのチルト角を得ることが可能な高分子安定液晶組成物及びこれを用いて製造した高分子安定液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
高分子安定化強誘電性液晶組成物において、液晶分子に高分子安定化の効果を強く与えるためには、重合性化合物としてメソゲン構造を有する液晶性アクリレートのような液晶性重合性化合物を用いればよい。これは、液晶性アクリレートがメソゲン構造を持つために、周囲の低分子液晶のメソゲン構造と強いアンカーリング力を持つことができ、そのため、高分子安定化した状態の熱的、力学的な安定性が向上するわけである。しかしながら、一方で、アンカーリング力が強くなるために駆動電圧が増大しアモルファスシリコン−TFTやポリシリコンTFTで駆動が困難となる問題があった。また、アンカーリング力が強くなることにより、スメクチック層内で液晶分子が電界で傾きにくくなり、チルト角が小さくなるという欠点があった。そのため、ディスプレイの最大透過率が低くなり光の利用効率の低下を招いていた。これを改善するために、液晶性アクリレートのアンカーリング力を低くすれば良いが、低くすると同時に低分子液晶の高分子安定化による配向安定性が下がり低分子液晶の配向性が乱れる方向に作用して一軸配向性が低くなり僅かな光漏れによりコントラストの低下要因になっていた。
【0013】
高分子安定化状態の安定性を向上させて一軸配向性を向上させるには、二官能液晶性アクリレート等を用いて架橋高分子を用いればよく、二官能液晶性アクリレートの使用により、メソゲン基が高分子主鎖に配置され該メソゲン基の両端が架橋により固定化されているため熱の揺らぎの影響が少なく低分子液晶の配向安定化の信頼性が向上する。しかし、その反面、熱の揺らぎが小さくなるため低分子液晶との相互作用が増大する、その結果低分子液晶の配向を固定化した際に起こる低分子液晶/高分子界面でのアンカーリング力がさらに高くなり、益々駆動電圧が増大するという弊害が生じる。さらに、スメクチック層内で液晶分子が益々傾きにくくなり、チルト角が小さくなるという欠点があった。
【0014】
高分子安定化の信頼性を上げるのには、高分子鎖の架橋密度を高くしてガラス転移温度等を高くする方法があるが、同時に低分子液晶と該高分子とのアンカーリング力が増加して駆動電圧増加、及び、チルト角の減少を引き起こす。また、液晶中の高分子鎖の体積割合を増加すると該高分子鎖の熱的、機械的安定性は向上するが該高分子鎖の屈折率が表示素子中に低分子液晶の屈折率分布へ影響を強く及ぼすようになり低分子液晶との屈折率差から光散乱を起こして表示のコントラストを低下させていた。これらを解決するためアンカーリング力の低い高分子を導入すると駆動電圧を下げることは可能になるが、同時に配向規制力が下がり目的の一軸配向性が乱れコントラスト低下を招いていた。
【0015】
このように液晶性重合性化合物を用いると、高分子安定化状態は安定化するが、同時にアンカーリング力が増大し、好ましくない駆動電圧の増加や、チルト角の減少を引き起こす。また、アンカーリング力を下げるような高分子を導入すると一軸配向が乱れて光シャッターの性能が低くなっていた。しかしながら、本願発明者らは、種々の重合性液晶化合物と液晶化合物の組成を検討した結果、液晶性重合性化合物と非液晶性重合性化合物の両方を同時に使用することを検討することにより、駆動電圧の増加、チルト角の減少を防ぎ、更には、一軸配向の乱れを抑制することを見出し、本願発明の完成に至った。
本願発明は、一般式(I−a)
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R11及びR12はそれぞれ独立して炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、
11は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
12及びC13はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
11及びZ12はそれぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−CO−S−、−S−CO−、−OCHCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)
及び一般式(I−b)
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R11、C11、C12、C13、Z11、Z12及びnは、それぞれ独立して一般式(I−a)と同じ意味を表し、
11は、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメチル基、イソシアネート基、シアノ基又は以下の一般式(I−c)を表し。
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、Z13は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキレン基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよい。)で表される化合物からなる化合物郡(I)から選ばれる少なくとも一種の液晶化合物を含有し、
一般式(II−a)及び一般式(II−b)
【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
(式中、、R21は炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、
21及びC22はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基又は1,4−シクロへキシレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
21は単結合、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表し、
21及びY22はそれぞれ独立して単結合、酸素原子、炭素数1〜14のアルキレン基、−OCH−、−COO−、−OCO−、−OCHCH−又は−OCOCH−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC21及びZ21は同じであっても異なっていても良く、
21及びX22はそれぞれ独立して、一般式(II−c)から一般式(II−h)
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、*は炭素原子が不斉炭素原子であることを表し、
、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキレン基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、)を表し、
、X及びYはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
及びYはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
及びYはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
は単結合又はメチレン基を表し、
は酸素原子又は−OC(Re1)(Re2)O−で表される基(ただし、Re1及びRe2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、
はカルボニル基又は−CH(Rf1)−で表される基(ただし、Rf1は水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、
は−OCO−、−COO−、−CHO−又は−OCH−を表す。)のいずれかの式で表される基を表す。)で表される化合物からなる化合物郡(II)から選ばれる少なくとも一種のカイラル化合物を含有し、
一般式(III)
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、R31及びR32はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
31は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
32及びC33はそれぞれ独立してベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、Z30及びZ32はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
31及びZ33それぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、3、4、5又は6を表すが、複数あるC31及びZ31は同じであっても異なっていても良く、n及びnはそれぞれ独立して1、2又は3を表す。)で表される重合性化合物を少なくとも1種類以上含有することを特徴とする高分子安定化強誘電性液晶組成物を提供する。また、本願はこの高分子安定化強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本願発明の高分子安定化液晶組成物を構成部材とする高分子安定化強誘電性液晶表示素子は駆動電圧が低く、透過率が高いく、且つ一軸配向性の向上による高いコントラストの表示がTFT駆動による安定して得ることができ、強誘電性液晶単体の表示素子では不可能な中間調の表示を可能にして、熱的及び力学的安定性に優れる特徴を有する。更には、又、TFT駆動も可能であることから、プラスチック液晶セル等の構成部材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に本発明の一例について説明する。本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物は、その中に含まれるラジカル重合性化合物が熱、又は紫外線等の活性エネルギー線により重合し、それに伴い液晶組成物と相分離、又は液晶組成物中に分散した状態を引き起こし、透明性高分子物質と液晶組成物からなる高分子安定化液晶表示素子を得るのに使用される。この素子は、一対の電極層を有する基板間に配向制御膜と液晶層とを有する液晶素子において、液晶層が少なくとも液晶性高分子前駆体(重合性液晶)を含有する光硬化性組成物の光硬化物及び強誘電性液晶材料を含有しており、且つ一対の電極層間に電圧を印加していない状態における重合性液晶のメソゲン基の配向方向と、強誘電性液晶材料の配向方向が配向制御膜の配向方向に揃い一軸配向になるように高分子安定化させた液晶表示素子であって、液晶層中に重合性液晶とを含有する光硬化性組成物の光硬化物を分散させて含有させ、液晶性骨格を有する高分子鎖による強誘電性液晶材料の配向安定化効果により、電圧を印加していない状態では、液晶性モノマーの液晶骨格の長軸方向と強誘電性液晶材料の配向方向、あるいは強誘電性液晶分子の平均化された配向方向のなす方向が一様な方向の配向状態を実現させたものであり、電圧を印加すると強誘電性液晶の自発分極により強誘電性液晶材料の配向方向が液晶性高分子前駆体の液晶骨格の配向方向ではなくなり、電圧の変化によって 強誘電性液晶材料の配向方向、あるいは平均化された配向方向と液晶性モノマーの液晶骨格の配向方向のなす角度が連続的に変化する性質が付与されたものである。例えば、二枚の偏光板の間に該素子を配置して、印加する電圧を変化させることにより透過光量を連続的に制御することができ、強誘電性液晶単体の素子で行われる面積階調等の特別な手段を用いることなく印加電圧に比例した中間調の表示を可能にしたものである。上述の一軸配向は、一軸配向が得られるようにラビング配向処理したポリイミド等の高分子配向膜を用いる方法、無機配向膜を用いる方法、光配向膜による方法、電界や磁場等の外場により方法、配向膜と前記外場を併用した方法等によりメソゲン基や高分子主鎖の長軸を揃えて配向させた状態に紫外線を露光して高分子安定化させることにより得られる。
【0031】
このようにして形成された高分子安定化液晶表示素子は、前記組成物に添加されたモノマーの含有量に比例して駆動電圧、及び光散乱が上昇する。該モノマーの含有量が微量である場合、駆動電圧の上昇度合いは低減されるが、熱的や機械的安定性に乏しい。信頼性を高くするためには、モノマーの含有量を増やす必要があるが、この時に駆動電圧の増加や液晶配向性の低下、及び散乱性の発現が問題になる。駆動電圧の増加は、例えば高分子分安定化液晶表示素子の駆動電圧に関する記述として、式2の関係を示す。高分子安定化液晶素子の駆動電圧に対する考え方は、高分子分散型液晶表示素子(式1)と類似で、式2の通りになる。
【0032】
【数1】

【0033】
(特開平6−222320号公報において式1により、しきい値電圧の関係が示されている。Vthはしきい値電圧を表わし、Kii及びKiiは弾性定数を表わし、iは1、2又は3を表わし、Δεは誘電率異方性を表わし、<r>は透明性高分子物質界面の平均空隙間隔を表わし、Aは液晶組成物に対する透明性高分子物質のアンカリングエネルギーを表わし、dは透明性電極を有する基板間の距離を表わす。)
【0034】
【数2】

【0035】
(V90は駆動電圧を表し、Kiiは弾性定数を表し、iは1、2又は3を表し、Δεは誘電率異方性を表し、<r>は重合性液晶架橋構造の平均空隙間隔を表し、Wpfは液晶組成物に対する重合性液晶架橋構造のアンカリングエネルギーを表し、dは透明性電極を有する基板間の距離を表わす。Psは強誘電性液晶の自発分極を表し、Tは温度でWpf及びPsは温度の関数になる。)
【0036】
式2によると、高分子安定化液晶表示素子の駆動電圧は、透明性高分子物質界面の平均空隙間隔、基板間の距離、液晶組成物の弾性定数・自発分極、及び液晶組成物と重合性液晶架橋構造のアンカリングエネルギーによって決定される。このうち、一般の液晶表示素子では駆動電圧はセル厚、該誘電率異方性、及び該弾性定数で決まるが、高分子分散液晶と同様に高分子安定化強誘電性液晶表示素子において特有の要因がある。それは、自発分極と液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーである。そのため、高分子安定化液晶表示素子においてもポリマーと液晶との界面の面積が増加するとともに系のアンカリングエネルギーが増して駆動電圧が上がる。言い換えると、本発明の組成物中に液晶性モノマーの含有量が増加すると駆動電圧が上がりディスプレイの最大透過率が下がることを意味している。逆に、モノマー濃度を下げると駆動電圧は下がるが低分子液晶の高分子による配向安定化が弱まる方向に作用して好ましくない。他の手段で駆動電圧の上昇を低減し、低い駆動電圧を維持させるためには、強誘電性液晶の自発分極を高くする一方で、モノマー含有液晶組成物を構成する高分子のアンカリングエネルギーを低くすれば良いことになる。例えば、重合性液晶の効果は、低分子液晶の一軸配向を高分子安定化させることにあるが、メソゲン基の六員還は、低分子液晶と親和性が高くアンカーリング力が高い。特に、ターフェニル、ビフェニル等の単結合の六員還はアンカーリング力が高く駆動電圧上昇の原因になっている。そのため、これらの六員還やその他の還構造を結ぶ結合基を、例えば、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−等にするとアンカーリング力を弱めることができる。更に、六員還やその他還構造の一部に置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することで置換基の立体障害の効果や異なる原子による相互作用の変化で低分子液晶との親和性を弱めてアンカーリング力を低減させることができる。更に、高分子の架橋間距離がアンカーリング力に対して重要な役割を果たす。アンカーリング力は重合性液晶のメソゲン基の熱運動性に影響を及ぼし、架橋間距離が短いと熱運動性が抑制される傾向があり低分子液晶に対する分子相互作用が強くなるように働きアンカリングエネルギーが高まる。架橋間距離が長くなると該メソゲン基の運動に対する自由度が増し熱による揺らぎが大きくなるため分子間相互作用を打ち消すように作用するためアンカリングエネルギーが小さくなる。しかし、架橋間距離が長くなると、架橋間にフレキシブル性の高い結合基、例えば、長鎖のアルキレン基等があると、架橋間に於ける高分子鎖自由運動が増して架橋間のメソゲン基が配向軸から大きくズレるようになり一軸配向性を乱す方向へ作用する。この点を改善するためには、メソゲン基の六員還等の還構造数を増やすことで架橋間距離が長い場合でもメソゲン基の硬直性を維持させて、且つ自由運動性が低減され配向軸からのズレが小さくなり一軸配向性を高めることができ好ましくなる。例えば、ベンゼン還の場合は4還以上のメソゲン基にすることで一軸配向が向上する。しかしながら、上で述べた通りにメソゲン基の自由運動を抑制するようにすると駆動電圧が上がり最大透過率が下がるため、駆動電圧を下げるためには置換基を有する重合性液晶を多還の重合性液晶に対して補助的に使用すると一軸配向性を維持して駆動電圧を下げることができるので好ましい。具体的には、六員還が4個以上の重合性液晶(III−a)を用いて一軸配向性を高め、六員還に少なくとも1つの置換基を有した重合性液晶(III−b)でアンカーリング力を調整して駆動電圧を下げる。両重合性液晶化合物を組み合わせて共重合体を形成させることで高い一軸配向性を維持した状態で駆動電圧を低くしてディスプレイの最大透過率を向上させることができるので好ましい。また、置換基を有する重合性液晶の六員還の数は、一軸性を高める重合性液晶の六員還の数より少なくとも1つ少ないものを用いることで少量添加により電圧を下げられるので好ましい。これらの組み合わせは、必要に応じて所望の電圧−透過率特性が得られるよう重合性液晶の組成を調整すれば良い。
【0037】
光散乱は、該平均空隙間隔が可視光の波長領域の範囲に入ると見られるようになり約500nm付近から1500nm付近で散乱が最も強くなる。高分子安定化液晶の場合は、高分子架橋構造が示す空隙の大きさを上述の範囲から避けるように液晶中に形成させることが重要になる。500nm以下にするには、スピノーダル分解による相分離過程を利用する方法、UV重合速度を速くして作製する方法(UV重合プロセスによる方法や高分子前駆体組成の調整による方法)、低分子液晶と相溶した状態で相分離が殆ど起こらせないで重合させる方法等が挙げられ、これらの手法を有効に用いて光散乱が起こらない微細な網目状高分子を形成させることが好ましい。モノマーが、低分子液晶に相溶している場合は低分子液晶中に分散した状態で網目状高分子を形成させることが可能で分子レベルの微細な構造を得られることができより好ましい。しかしながら、本発明のモノマーを液晶相中で重合させると重合ミクロ相分離が極小的に起こる場合は、配向のオーダーは高くはないが液晶分子ダイレクターに沿うように網目状の高分子が形成されることが電子顕微鏡等で観察される。これは、モノマーが液晶に接すると液晶分子ダイレクター方向へ該モノマー分子長軸が揃う傾向があり、該モノマーの高分子化により液晶の配向が固定化される。しかし、該モノマーの濃度が高くなると重合ミクロ相分離で起こるスピノダル分解やバイノーダル分解による相分離構造が液晶の配向を無視して形成されるため目的の液晶の配向を固定化させることはできなくなる。上述の方法は低分子液晶の配向を乱す恐れがある場合があり、この場合は、所望の安定化させる配向が得られるように電界、配向膜の配向規制力、磁場外場などを活用して目的の高分子安定化液晶素子が得られるように前記外場を調整して作製することもできる。更には、複数の重合性液晶による共重合体でメソゲン基の自己組織化の性質や水素結合基等を基にした自己組織化を応用して規則性のある周期構造を形成させても良い。所望の特性を得るのに必要であれば微粒子状の高分子を低分子液晶中に分散させた構造であっても良い。
液晶が配向膜等で配向させた状態を配向欠陥無く固定化させるためには、少なくとも、ネマチック相から除冷してスメチック相へ相転移させることが好ましく、用いる液晶セルの基板面が平坦であることがより好ましい。また、ネマチック相やスメクチック相等の液晶相中で該モノマーを網目状、又は分散した状態に重合させる必要がある。更に、該相分離構造形成を避けるためには、モノマーの含有量を少なくして、液晶が配向している状態で液晶分子間に網目状高分子が形成できるよう該高分子前駆体含有量や該前駆体の組成を調整することが好ましく、さらに、光重合の場合は、UV露光時間、UV露光強度、及び温度を調整して網目状の高分子を形成させて液晶配向欠陥が無いようにすることが好ましい。また、組成物中のモノマーを重合させる際に、所望の液晶配向を得るためには、垂直配向、パラレル配向やアンチパラレル配向のラビング配向処理や光配向処理を施した配向膜、あるいは無機物の形状効果を利用した配向膜を有する液晶セルを用いたり、上下基板が垂直配向膜、又は垂直配向膜と平行配向との組み合わせた液晶セル等を用いたりすることができる。さらには、光、熱、電圧、磁場等の外場を印加して得られる捩れ配向、ベント配向やスプレイ配向、平行配向等や、配向膜単独だけでは得ることが難しい液晶配向状態を作り、該モノマーの高分子化により、それらの配向状態を固定化させて目的の高分子安定化液晶表示素子を得ることができる。例えば、スメクチック相では外場によりダイレクターを一定方向へ揃えた配向状態を高分子安定化させたり、スイッチングさせて過度的な配向状態を高分子化により固定化させ所望の高分子安定化液晶表示素子を得ることもできる。
【0038】
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物は、V字応答に基づく液晶表示素子、Half-V応答に基づく液晶表示素子、分極遮断効果に基づく液晶表示素子等に好適に用いることができる。
【0039】
本発明に用いるモノマーは、上述のようなモノマーとしてより改善効果が大きい化合物の探索を行った結果、到達したものである。
【0040】
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物は、一般式(I−a)、及び(I−b)で表される液晶化合物と、一般式(II−a)、及び(II−b)で表せるカイラル液晶化合物と一般式(III)で表される重合性液晶化合物からなる。一般式(III)で表わされる重合性液晶は、一般式(III−a)の郡と(III−b)の郡から必要に応じて選択すれば良く、一般式(III−a)の郡と、(III−b)の郡の配合比率を調整して所望の電圧−透過率特性を得るられるようにすることが好ましい。
【0041】
更に、強誘電性液晶組成物の成分として、必要に応じて一般式(I−a)、(I−b)、(II−a)、(II−b)で示される液晶性化合物以外の液晶性化合物を併用することができる。併用しうる化合物に特に限定はないが、強誘電性液晶相を安定化するためには、スメクチックC相、あるいはキラルスメクチックC相を示す液晶性化合物を用いることが好ましい。(本明細書中では、液晶相の名称を記載したときには特に断わりのない限り対応するキラルな液晶相も含むものとする。)また、強誘電性液晶相の相系列、あるいは各液晶相の温度範囲を調節するためには適宜液晶性化合物を選ぶのが良い。具体的には、ネマチック相を発現させたり、ネマチック相の温度範囲を広げたい場合には、ネマチック相を示す化合物を併用することが好ましく、また、スメクチックA相を発現させたり、スメクチックA相の温度範囲を広げたい場合には、スメクチックA相を示す化合物を併用することが好ましく、あるいは、Half-V用材料のように、スメクチックA相が不要な場合には、スメクチックA相を示さない化合物を併用することが好ましい。
【0042】
コントラストの良い表示素子を得るためには、表示方式にあわせて傾き角を調整する必要がある。傾き角を大きくするためには、スメクチックC相の上限温度を高くしたり、スメクチックA相の温度幅を狭くするように、化合物を選ぶことが好ましく、傾き角を小さくするためには、スメクチックC相の上限温度を低くしたり、スメクチックA相の温度範囲を広くするような化合物を使用することが好ましい。
【0043】
スメクチックの層構造を安定化するためには、一般式(I)の郡の化合物に、フェニルベンゾエート誘導体を併用するのが好ましい。これらフェニルベンゾエート誘導体あるいはビフェニルベンゾエート誘導体は組成物の粘度を上昇させるので、層構造は安定化することができ、配向乱れの抑制のために好ましい。またフェニルベンゾエート誘導体との混合により融点が低下する効果も得られ好ましい。しかし、フェニルベンゾエート誘導体の使用により粘度が上昇し応答速度も遅くなるので、所望の応答速度が得られる範囲内で使用するのがよい。
【0044】
融点を低下し低温でも安定な強誘電性液晶相を得るためには、一般式(I−c)の化合物、又は、化合物の末端に環構造を有する化合物、あるいは、環構造としてピリジン環、ピラジン環またはピリダジン環を有する化合物、あるいはその両構造を有する化合物を併用することが好ましい。環構造としてピリジン環、ピラジン環またはピリダジン環をもつ化合物は融点の低下には好ましいが、その構造が持つ極性の性質のため、素子として使用した場合のスイッチング挙動に悪影響を及ぼさないような使用量を選ぶことが好ましい。これら化合物の中では融点の低下の効果としてはピリジン環を持つ化合物が特にこのましい。これら化合物の環構造にフッ素が導入された化合物を併用すると融点の低下には好ましい。また、これら化合物のアルキル鎖に分岐構造が導入された化合物を併用すると融点の低下には好ましい。しかし、同時に液晶相の上限温度も変化するので、所望のスメクチックC相の温度範囲となるようにその使用量を調整するのがよい。
【0045】
強誘電性液晶組成物の強誘電性を発現するためのキラル成分としては、公知慣用のキラル化合物を用いることができる。キラル化合物としては不整原子を持つ化合物、あるいは軸不整を持つ化合物を用いることが好ましく、さらに、不整炭素を持つ化合物、あるいは炭素−炭素結合を軸とした不整を持つ化合物を用いることが好ましい。不整炭素は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていても良い。不整炭素としては、炭素上にフッ素原子、メチル基、CF3基が導入されているのもがさらに好ましく、また特に、一般式(II−a)、及び(II−b)で示されるキラル化合物(II)の郡を用いることがなお好ましい。キラル化合物は1種用いても、あるいは、キラル構造、アルキル鎖長、アルキル鎖の構造、結合部分の構造、環構造、環数が異なるものを複数用いても良い。キラルな効果に基づき発生する液晶相での螺旋構造を抑制するためには、発生させるねじれの向きが異なる複数のキラル化合物を組合わせて用いることが好ましい。このとき、自発分極の向きは揃うようにキラル化合物の組み合わせを選ぶか、あるいは、十分大きな自発分極を発生させる化合物とねじれ構造は誘起するが自発分極値の小さな化合物の組み合わせを選ぶと自発分極の値はキャンセルされないので好ましい。キラルな効果に基づき液晶相でおこる螺旋構造の発生を抑制するために発生させるねじれの向きが異なる複数のキラル構造を同一の化合物の中に導入することも好ましく行われる。このとき、自発分極の向きは揃うようにキラル構造の組み合わせを選ぶか、あるいは、十分大きな自発分極を発生させる構造とねじれ構造は誘起するが自発分極値の小さな構造の組み合わせを選ぶと自発分極の値はキャンセルされないので好ましい。
【0046】
液晶セルの2枚の基板はガラス、プラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。
【0047】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0048】
前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られるセルの厚さが1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。セル厚は、1から10μmが更に好ましく、1から3μmがなお好ましい。偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整することが好ましい。又、二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラトが良好になるように調整することもできる。更に、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱しシール剤を熱硬化させる。
【0049】
2枚の基板間に高分子安定化強誘電性液晶組成物を狭持させるに方法は、通常の真空注入法、又はODF法などを用いることができる。この時、高分子安定化強誘電性液晶組成物は、各種液晶化合物と本発明のモノマーが相溶していれば良く、均一なアイソトロピック状態か、又は(キラル)ネマチック相であることが好ましい。スメクチック相では、素子作製時の取り扱い方が難しくなる。
【0050】
ラジカル重合性化合物を重合させる方法としては、紫外線照射が好適である。紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、高分子安定化強誘電性液晶組成物に含有されている光重合開始剤の吸収波長領域であり、且つ含有されている液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、具体的には、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプを使用して330nm以下の紫外線をカットして使用することが好ましく、350nm以下の紫外線をカットして使用することがより好ましい。
【0051】
照射する紫外線の強度は、目的とする調光層を得るため適宜調整することができるが、使用するモノマーの反応性に依存するが10から10000mJ/cmが好ましく、50から5000mJ/cmがより好ましい。紫外線を照射する時間は照射する紫外線強度により適宜選択されるが、5から600秒が好ましい。
【0052】
また、紫外線照射の時の温度は、所望の液晶初期配向を調光層の特性を決めて安定化させるのに重要な要素となる。等方相状態を固定化させる場合は、高分子安定化液晶表示素子用組成物のアイソトロピック−ネマチック転移点よりわずかに高い温度が好ましく、具体的には転移点+0.1から10℃が好ましく、転移点+0.1℃から3℃がより好ましい。また、ネマチック相やスメクチック相、コレステリック相を示す温度にして素子を作製することができる。
【0053】
高分子安定化させる液晶の配向状態としては、スメクチック相やネマチック相で見られるベンド配向、捩れ配向、及びスプレイ配向等やそれらを複数組み合わせたマルチドメイン、及び一軸配向を持つモノドメインを複数方向に配置したマルチドメイン等、必要な配向状態が挙げられる。これらの配向状態は、温度を変えたり、外部電場を印加して電圧を変化させたり、基板界面に存在するポリイミド配向膜や光配向膜等の配向処理方向を一方向や複数方向に処理して液晶を配向させて、液晶の配向を様々な方法で目的の配向状態を作り、紫外線露光して高分子安定化させることが好ましい。
【0054】
本発明の高分子安定化液晶表示素子は、本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物を重合させ、液晶相中に高分子鎖を形成させることにより低分子液晶の配向状態を安定化したものである。このような高分子安定化液晶表示素子は、高分子安定化強誘電性液晶組成物に外部電場を加え、または重合性液晶の配向を配向膜により制御することで、所望の配向状態を維持させながら紫外線露光して重合させることによって得ることができる。
【0055】
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物に使用する化合物の具体的な一例を以下に示す。
<低分子液晶化合物(I)>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(I)郡は、下記一般式(I−a)又は(I−b)で示され、
【0056】
【化8】

【0057】
(式(I−a)及び(I−b)中、R11及びR12はそれぞれ独立して炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、
11は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
12及びC13はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
11及びZ12はそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
11は、一般式(I−c)、又はフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメチル基、イソシアネート基、シアノ基を表し、
(nは、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)
一般式(I−c)は、
【0058】
【化9】

【0059】
(式中、Z13は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキレン基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよい。)
【0060】
一般式(I−a)、及び一般式(I−b)で表される化合物は、相系列が等方相-ネマチック相-スメクチックA相-スメクチックC相、等方相-ネマチック相-スメクチックC相、等方相-スメクチックA相、等方相-スメクチック相、及び等方相-ネマチック相を示し、これらを含有した組成物にすることにより幅広いスメクチックC相の液晶温度範囲、低温域でのスメクチックC相の安定性及び相溶性を示し、一般式(I−a)、一般式(I−b)で具体的には次に記載する一般式(V−a)、一般式(VI−a)、一般式(VI−b)、一般式(VII−a)、一般式(VII−b)、一般式(VIII−a)、一般式(IX−a)、及び一般式(X)で表される化合物が好ましい。
以下に、本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(I)郡の具体例を示す。
<一般式(VI−a)及び一般式(VI−b)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(I)の具体例を示すと(I)は、下記一般式(VI−a)、及び下記一般式(VI−b)で表わされ、
一般式(VI−a)は、
【0061】
【化10】

【0062】
(式(VI−a)中、R21は、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
21は、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0063】
六員環Y21はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、 X21は、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
22からX26はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
21は、単結合又は−CHCH−を表し、
22は、単結合、−CHCH−又は−CFO−を表し、
21は0又は1を表す。)
一般式(VI−b)は、
【0064】
【化11】

【0065】
(式(VI−b)中、R31は、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
31は、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0066】
六員環Y31はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、
31は、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
32からX36はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
31は、単結合又は−CHCH−を表し、
32は、単結合、−CHCH−又は−CFO−を表し、
31は0又は1を表す。)
【0067】
一般式(VI−a)及び一般式(VI−b)においてR21及びR31としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、
該アルキル基又はアルケニル基は、式(VI−c)
【0068】
【化12】

【0069】
(式(VI−c)中の各構造式は右端で直接もしくは酸素原子を介して環に連結しているものとする。)で表されるアルケニル基又は炭素原子数5から12のアルキル基がより好ましい。
21及びC31としては、1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
21及びZ31としては、単結合が好ましい。
21及びX31としては、フッ素原子もしくはトリフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0070】
具体的には、一般式(VI−1)から一般式(VI−33)で表される化合物が好ましい。
【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
(式中、R22及びR32は炭素原子数1から18のアルキル基を表す。)
<一般式(VII−a)及び一般式(VII−b)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(I)の具体例を示すと(I)は、下記一般式(VII−a)、及び一般式(VII−b)で表わされ、
【0074】
【化15】

【0075】
(式(VII−a)中、R41は、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
41は、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0076】
六員環Y41はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、
41は、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
42からX45は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
41は、単結合又は−CHCH−を表し、
42は、単結合、−CHCH−又は−CFO−を表し、
41は0又は1を表す。)
【0077】
【化16】

【0078】
(式(VII−b)中、R51は、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
51は、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0079】
六員環Y51はベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、
51は、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
52からX55は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
51は、単結合又は−CHCH−を表し、
52は、単結合、−CHCH−又は−CFO−を表し、
51は0又は1を表す。)
【0080】
一般式(VII−a)及び一般式(VII−b)においてR41及びR51としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、
該アルキル基又はアルケニル基は、式(VII−c)
【0081】
【化17】

【0082】
(式(VII−c)中の構造式は右端で直接もしくは酸素原子を介して環に連結しているものとする。)で表されるアルケニル基又は炭素原子数5から12のアルキル基がより好ましい。
41及びC51としては、1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
41及びZ51としては、単結合が好ましい。
41及びX51としては、フッ素原子もしくはトリフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0083】
具体的には一般式(VII−1)から一般式(VII−42)で表される化合物が好ましい。
【0084】
【化18】

【0085】
【化19】

【0086】
【化20】

【0087】
【化21】

【0088】
(式中、R42及びR52は炭素原子数1から18のアルキル基を表す。)
また、更なる液晶温度領域の拡大、高誘電率、又は低粘性を得るため、一般式(V−a)、一般式(VI−a)、一般式(VI−b)、一般式(VII−a)、一般式(VII−b)の化合物に加えて、一般式(VIII−a)、一般式(IX−a)又は一般式(X)で表される化合物を含有することも好ましい。
<一般式(VIII−a)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(I)の具体例を示すと(I)は、下記一般式(VIII−a)
【0089】
【化22】

【0090】
(式(VIII−a)中、R61及びR62はそれぞれ独立して、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
61、C62及びC63はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
【0091】
61及びZ62はそれぞれ独立して、単結合、−CHO−、−OCH−又は−CHCH−を表し、
61は、0、1又は2を表す。ただし、n61が2の場合、複数存在するC61及びZ62は同一であっても異なっていても良い。
【0092】
一般式(VIII−a)においてR61及びR62としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、式(VI−c)で表されるアルケニル基もしくはアルケニルオキシ基(ただしそのアルケニル基が式(VI−c)で表されるもの)又は炭素原子数1から5のアルキル基もしくはアルコキシ基が更により好ましい。
【0093】
また、特に低粘性を得たい場合は、n61が0であり、C62及びC63が、1,4−シクロへキシレン基であり、Z62が単結合であることが好ましい。
【0094】
特に液晶温度範囲を拡大するには、n61が0又は1であり、C61及びC62が、1,4−シクロへキシレン基であり、C63が1,4−フェニレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)であり、Z61が単結合又は−CHCH−であり、Z62が単結合であることが好ましい。
【0095】
特に高屈折率を得るためには、n61が1であり、C61が1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)であり、C62及びC63が1,4−フェニレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子又はメチル基を有することができる。)であることが好ましい。
【0096】
具体的には一般式(VIII−1)から一般式(VIII−5)で表される化合物が好ましい。
【0097】
【化23】

【0098】
(式中、R65及びR66はそれぞれ独立して炭素原子数1から18のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、X61からX66はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。)
更に一般式(VIII−a)の具体的な例は一般式(VIII−6)から(VIII−15)が好ましい。
【0099】
【化24】

【0100】
(式中、R67及びR68はそれぞれ独立して炭素原子数1から18のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)、アルコキシ基、炭素原子数2から18のアルケニル基及びアルケニルオキシ基を表し、X及びYはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。Z63は、それぞれ独立して、単結合又は−O−を表し、Z64及びZ65はそれぞれ独立して、単結合、−CHO−、−OCH−又は−CHCH−を表す。
【0101】
<一般式(IX−a)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(I)の具体例を示すと(I)は、下記一般式(IX−a)
【0102】
【化25】

【0103】
(式(IX−a)中、R71は炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、
【0104】
71、C72及びC73はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基又はインダン−2,5−ジイル基(該1,4−フェニレン基及びインダン−2,5−ジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。)を表し、
71及びZ72はそれぞれ独立して、単結合、−CHCH−又は−CHO−を表し、
71はフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基、ジフルオロメチル基、イソシアネート基を表し、
71は、0、1又は2を表す。ただし、n71が2の場合、複数存在するC71及びZ71はそれぞれ同じあっても、異なっていても良い。)
【0105】
一般式(IX−a)のR71としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、該アルケニル基は式(V−c)で表されるものが好ましく、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数1から18のアルコキシ基が更により好ましい。
【0106】
71としては、フッ素原子又はトリフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0107】
また、特に高誘電率を得たい場合は、n71が0又は1であり、C71が1,4−シクロへキシレン基であり、C72が1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基(該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)であり、C73が2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン基又は3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基であり、Z71及びZ72が単結合であることが好ましい。
【0108】
特に液晶温度範囲を拡大するには、n71が2であり、C71が1,4−シクロへキシレン基であり、C72が、1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基であり、C73が2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン基又は3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基であり、Z71及びZ72が単結合又は−CHCH−であることが好ましい。
【0109】
具体的には一般式(IX−1)から一般式(IX−4)で表される化合物が好ましい。
【0110】
【化26】

【0111】
(式中、R72は炭素原子数1から18のアルキル基又はアルコキシ基を表し、X72からX75はそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子を表し、Z73は単結合又は−CHCH−を表す。)
これら一般式(IX−1)から一般式(IX−4)の中でも、一般式(IX−5)から一般式(IX−7)で表される化合物がより好ましい。
【0112】
【化27】

【0113】
【化28】

(式中、R77は炭素原子数1から18のアルキル基を表し、X77からX79はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表す。)、更に、一般式(IX−a)の好ましい化合物の具体例は、
【0114】
【化29】

【0115】
【化30】

【0116】
(式中、Y、Zは各々独立に直鎖あるいは分岐の炭素原子数1〜18のアルキル基、ただし、アルキル基中のひとつの−CH−基が−O−に置き換えられていてもよい、を示し、U、Wは炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。)
【0117】
、Z、U、Wの炭素原子数は6〜12であることがさらに好ましく、スメクチックC相の安定性を保ち上限温度を高く保つため、あるいは、粘度を低く従って応答速度を早くするためにはアルキル部分は直鎖であることが好ましく、一方、融点を低下させるためにはアルキル部分に分岐構造があるのが好ましい。分岐構造としては液晶性を過度に低下させないため、エチル基あるいはメチル基分岐が好ましく、メチル分岐が特に好ましい。また、透過率の高い表示素子を得るためには、セル厚に依存して複屈折率(Δn)を調節しなければならない。表示素子の製造の点、及び、セル内での分子運動が容易なため高速応答が得られる点ではセル厚が厚い方が好ましいが、その場合にはΔnが小さい液晶を使用する必要がある。Δnが小さい液晶の具体例として、一般式(I)の環構造として、シクロヘキシル構造を持つものを挙げることができる。シクロヘキシル構造は、一つの分子中に一つ、あるいは2つ存在することが好ましい。あるいは、一般式(II)で表される化合物ににシクロヘキシル、あるいは、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル構造を持つ化合物を混合することもΔnを小さくするためには好ましい。この場合、添加する化合物としてシクロヘキシル構造は、一つの分子中に一つ、あるいは2つ存在する化合物が好ましく、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイルは一つの分子中に一つ存在する化合物が好ましい。1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル構造を持つ化合物は極性が高いのでTFT駆動に悪影響を与えない程度の量を使用することが望ましい。
【0118】
液晶相の安定性の面では、これら化合物の中でも、環に導入されたフッ素の総数が0〜3個のものが好ましく、特に0〜2個のものが好ましい。光学特性を向上するために負の誘電率の異方性が必要な場合はひとつのベンゼン環に隣り合う2つのフッ素原子が導入されている環構造(ジフロロフェニル構造)が分子構造の中にあることが好ましい。また、スメクティックC相の上限温度を高く保ったまま融点を低下する必要がある場合にもジフロロフェニル構造を持つ化合物が好ましい。また、融点を低く、また、粘度を低く従って応答速度を早く保つためには2環の化合物を使用することが好ましく、2環化合物の割合が強誘電性液晶組成物全体の20%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。一方、スメクチックC相の安定性を保ち上限温度を高く保つためには3環の化合物を用いることが好ましい。また、融点を低下させるためには異なる構造を持つ化合物を選んで混合するのが良い。

<一般式(X)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(I)の具体例を示すと(I)は、下記一般式(X)
【0119】
【化31】

【0120】
(式(X)中、R101及びR102は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、但し、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、A101は1,4−フェニレン基を表わし、B101及びC101は各々独立に1つ又は2つの水素原子がフッ素原子、CF3基、OCF3基、あるいはCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、又は、1,4−シクロヘキシレン基を表し、a、b、及びcは0又は1の整数を示し、(a+b+c)=1又は2である。)
一般式(X)で表される化合物は具体例的には、一般式(X−a)から(X−f)で表される。
【0121】
【化32】

【0122】
(一般式(X−a)から(X−f)中、Y101及びXは、各々独立に炭素原子数1から18のアルキル基、又はアルコキシ基、又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、Z101は、炭素原子数1から18のアルキル基、又はアルコキシ基、又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)、又は独立してフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフル
オロメトキシ基、ジフルオロメチル基、イソシアネート基を表し、
81からX96は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又はメチル基を表す。
【0123】
一般式(X−a)から一般式(X−f)で表される化合物の具体例を以下に挙げることができる。
【0124】
【化33】

【0125】
【化34】

【0126】
(式中、Y及びZは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、但し、1つまたは2つの隣接していない−CH−基が−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられてもよい。)
炭素原子数は5〜12であることがさらに好ましく、スメクチックC相の安定性を保ち上限温度を高く保つため、あるいは、粘度を低く従って応答速度を早くするためにはアルキル部分は直鎖であることが好ましく、一方、融点を低下させるためにはアルキル部分に分岐構造があるのが好ましい。分岐構造としては液晶性を過度に低下させないため、エチル基あるいはメチル基分岐が好ましく、メチル分岐が特に好ましい。より具体的には次の構造を持つ化合物が好ましい。
【0127】
また、更なる温度範囲の拡大、特に、低温領域の拡大のため、一般式(I−a)の化合物に加えて一般式(I−b)の化合物を含有することも好ましい。
より具体的には次の構造を持つ化合物が好ましい。
【0128】
【化35】

【0129】
(式中、nとmは、それぞれ独立に5〜11を示す)
強誘電性液晶組成物の強誘電性を発現するためのキラル成分としては、公知慣用のキラル化合物を用いることができる。キラル化合物としては不斉原子を持つ化合物、あるいは軸不斉を持つ化合物を用いることが好ましく、さらに、不斉炭素を持つ化合物、あるいは炭素−炭素結合を軸とした不斉を持つ化合物を用いることが好ましい。不斉炭素は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていても良い。不斉炭素としては、炭素上にフッ素原子、メチル基、CF3基が導入されているのもが好ましく、また特に、一般式(V−a)、あるいは、一般式(V−e)で表される化合物の環構造としては具体的には次の構造を持つことが好ましい。
<一般式(XI)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(I)の具体例を示すと(I)は、下記一般式(XI)
【0130】
【化36】

【0131】
(式(XI−a)から(XI−f)中、R201及びR202は各々独立に炭素原子数1から18のアルキル基、アルコシキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)又はアルケニルオキシ基を表し、
201は、単結合、−CHCH、−OCH−又は−CHO−を表し、
【0132】
201、Y201及びW201は、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基、ジフルオロメチル基、を表し、 一般式(XI−e)及び(XI−f)のVとしては、−CH2−又は−O−を表す。
【0133】
一般式(XI−a)及び一般式(XI−f)においてR201及びR202としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、
該アルキル基又はアルケニル基は、式(XI−g)
【0134】
【化37】

【0135】
(式(VII−c)中の構造式は右端で直接もしくは酸素原子を介して環に連結しているものとする。)で表されるアルケニル基又は炭素原子数5から12のアルキル基がより好ましい。
<一般式(XII)で表される化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる低分子液晶化合物(II)の具体例を示すと(II)は、下記一般式(XII)
【0136】
【化38】

【0137】
(式(XII−a)から(XII−c)中、R301及びR302は各々独立に炭素原子数1から18のアルキル基、アルコシキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)又はアルケニルオキシ基を表し、
一般式(XII−a)及び一般式(XII−c)においてR301及びR302としては、炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、該アルキル基又はアルケニル基は、式(XII−d)
【0138】
【化39】

【0139】
(式(VII−c)中の構造式は右端で直接もしくは酸素原子を介して環に連結しているものとする。)で表されるアルケニル基又は炭素原子数5から12のアルキル基がより好ましい。
<カイラル液晶化合物>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられるカイラル液晶化合物(II)郡は、下記
一般式(II−a)、又は(II−b)で示され、
【0140】
【化40】

(式(II−a)及び(II−b)中、R21は炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、
21及びC22はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基又は1,4−シクロへキシレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
21は単結合、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表し、
21及びY22はそれぞれ独立して単結合、酸素原子、炭素数1〜14のアルキレン基、−OCH−、−COO−、−OCO−、−OCHCH−又は−OCOCH−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC21及びZ21は同じであっても異なっていても良い。
21及びX22はそれぞれ独立して、一般式(II−c)から(II−h)
【0141】
【化41】

【0142】
のいずれかの式で表される基を表す。ただし、
式(II−c)から(II−h)中、*は炭素原子が不斉炭素原子であることを表し、
、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキレン基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、)を表し、
、X及びYはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
及びYはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
及びYはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
は単結合又はメチレン基を表し、
は酸素原子又は−OC(Re1)(Re2)O−で表される基(ただし、Re1及びRe2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、
はカルボニル基又は−CH(Rf1)−で表される基(ただし、Rf1は水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、
(Zは−OCO−、−COO−、−CHO−又は−OCH−を表す。)
で表されるカイラル化合物(II)であって、
具体例としては下記構造のものが特に好ましく用いられる。
【0143】
【化42】

【0144】
【化43】

【0145】
【化44】

【0146】
(式中、Raaは炭素数1〜18の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基またはアルコキシ基、Rbbは炭素数1〜18の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、Maaは炭素数1〜3のメチレン基、Mbbは炭素数1〜2のメチレン基を表す。)
【0147】
大きな自発分極を得るためにはMbb=1〜3のものが好ましく、Mbb=1のものが特に好ましい。また、結晶化を抑制するためには、環の数が2環の化合物を用いることが好ましく、強誘電性相の安定性(上限温度)を高めるためには、結晶化を抑制する効果を保つ範囲で環の数が3環の化合物を用いると良い。良い配向を得るためにはキラルネマティック相の螺旋ピッチを長くする、特に、ネマティック相とスメクティック相の転移の際のキラルネマティック相の螺旋ピッチを長くすることが重要である。そのため、(II)郡の添加量が増え、ネマティック相とスメクティック相の転移の際のキラルネマティック相の螺旋ピッチが配向を乱す程度まで短くなった場合には、(II)郡の化合物により誘起されるキラルネマティック相の螺旋の掌性(センス)と逆のセンスを誘起する効果のあるキラル化合物を(II)郡に加えて用いてキラルネマティック相の螺旋ピッチを長くすることが好ましい。このときのキラル化合物の使用に特に制限はなく、公知慣用のキラル化合物を用いることができるが、使用した(II)郡と自発分極の極性が同一の化合物、あるいは自発分極の値が使用した(II)郡と比べて十分に小さい化合物が、自発分極のキャンセルによる減少を抑えることができるので好ましい。
【0148】
また、強誘電性相において、表面安定化効果を用いて配向を行う場合には、強誘電性相における螺旋ピッチが長いことが好ましく、この場合には、(II)郡の化合物により誘起される強誘電性相の螺旋の掌性(センス)と逆のセンスを誘起する効果のあるキラル化合物を(II)郡に加えて用いて強誘電性相の螺旋ピッチを長くすることが好ましい。このときのキラル化合物の使用に特に制限はなく、公知慣用のキラル化合物を用いることができるが、使用した(II)郡と自発分極の極性が同一の化合物、あるいは自発分極の値が使用した(II)郡と比べて十分に小さい化合物が、自発分極のキャンセルによる減少を抑えることができるので好ましい。表面安定化効果を用いず、単に、高分子安定化効果を用いる場合には、特に、このように逆のセンスを誘起する効果のあるキラル化合物を(II)郡に加える必要はない。比較的厚セル厚(3μm以上)で使用する場合で、高分子安定化プロセス、あるいは、高分子安定化された後の状態で、液晶分子の運動性を高め、高分子安定化プロセスを容易に行わせたり、あるいは、高分子安定化後のグレースケールの発現を容易にするために、短い螺旋ピッチが必要な場合には、強誘電性相の螺旋ピッチが短いキラル化合物を添加することが好ましい。添加の際にもちいるキラル化合物の使用に特に制限はなく、公知慣用のキラル化合物を用いることができるが、使用した(II)郡と自発分極の極性が同一の化合物、あるいは自発分極の値が使用した(II)郡と比べて十分に小さい化合物が、自発分極のキャンセルによる減少を抑えることができるので好ましい。添加物としてはキラルネマティック液晶で誘起する螺旋ピッチが十分長いか、あるいは、(II)郡で誘起される螺旋ピッチをキャンセルできるキラル化合物を選ぶことがさらに好ましい。
【0149】
<重合性液晶化合物(III)>
本願の重合性液晶化合物は、一般式(III)

【0150】
(式(III)中、R31及びR32はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、C31は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
32及びC33はそれぞれ独立してベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、Z30及びZ32はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
31及びZ33それぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、3,4,5,6を表すが、複数あるC31及びZ31は同じであっても異なっていても良く、n及びnはそれぞれ独立して1、2及び3を表す。
一般式(III)は、好ましくは一般式(III−a)
【0151】
【化45】

【0152】
(式(III−a)中、R33及びR34はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
34及びC35はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基を表し、
34及びZ36はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、該アルキレン基は、炭素原子数はメソゲン基の運動性へ影響を及ぼし、数が小さいとアンカーリング力が大きくなる傾向があるため、特にアルキレン基の炭素原子数3から12が好ましい。
35は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、3、4、5、6を表す。ただし、複数あるC34及びZ35は同じであっても異なっていても良い。)を表す
(式(III)中、
6員環C34、C35及びC36はそれぞれ独立的に、
【0153】
【化46】

を表す。但し、nが4以上の場合は
6員環C34、C35及びC36はそれぞれ独立的に、
【0154】
【化47】

【0155】
のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)であっても良い。
【0156】
一般式(III−a)で表される化合物の具体例を以下の(III−a1)から(III−a6)に挙げることができる。
(III−a1)
【0157】
【化48】

(III−a2)
【0158】
【化49】

(III−a3)
【0159】
【化50】

(III−a4)
【0160】
【化51】

(III−a5)
【0161】
【化52】

(III−a6)
【0162】
【化53】

(III−a7)
【0163】
【化54】

(III−a8)
【0164】
【化55】

(III−a9)
【0165】
【化56】

(III−a10)
【0166】
【化57】

(III−a11)
【0167】
【化58】

(III−a12)
【0168】
【化59】

(III−a13)
【0169】
【化60】

(III−a14)
【0170】
【化61】

(III−a15)
【0171】
【化62】

(III−a16)
【0172】
【化63】

(III−a17)
【0173】
【化64】

一般式(III−b)は、
【0174】
【化65】

(式(III−a)中、R35及びR36はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
37及びC38はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基であって、(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することを表し、)
37及びZ39はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
【0175】
38は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、2、3、4、5、6を表し、n=n−1の関係を満たす。ただし、複数あるC37及びZ38は同じであっても異なっていても良く、複数あるC37の内少なくとも1つに置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有すること。)で表す。
式中
6員環C37、C38及びC39はそれぞれ独立的に、
【0176】
【化66】

【0177】
のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)を表す。
一般式(III−b)で表される化合物の具体例を以下の(III−b1)から(III−b20)に挙げることができる。
(III−b1)
【0178】
【化67】

(III−b2)
【0179】
【化68】

(III−b3)
【0180】
【化69】

(III−b4)
【0181】
【化70】

(III−b5)
【0182】
【化71】

(III−b6)
【0183】
【化72】

(III−b7)
【0184】
【化73】

【0185】
【化74】

【0186】
【化75】

【0187】
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
【実施例】
【0188】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、特に断りのない場合、「%」は「質量%」を意味する。
【0189】
(高分子安定化液晶表示素子の作製、及び評価法)
実施例中の高分子安定化液晶表示素子は以下の方法で作製した。
【0190】
高分子安定化液晶組成物のネマチック相転移以上に加熱して真空注入方で注入した。セルは、液晶は一軸配向(ホモジニアス配向)が得られるように、セルギャップ2μmのポリイミド配向膜(日産化学社製、RN−1199)を塗布したITO付きパラレルラビングの配向セルを用いた。
【0191】
液晶組成物、ラジカル重合性組成物、光重合開始剤及び微量の重合禁止剤からなる調光層形成材料を真空注入法でガラスセル内に注入した。真空度は2パスカルとなるよう設定した。注入後ガラスセルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。クロスニコルスの偏光顕微鏡で一軸配向であることを確認した後、周波数1KHzの場合に於ける電圧−透過率特性のV90に対応する電圧の矩形波を印加してスイッチングさせながら、UV−LEDアレイを用いて365nmの光を露光した。照射強度は、セルサンプル表面が5mW/cmとなるように調整して600秒間露光して、高分子安定化液晶組成物の重合性化合物を重合させて高分子分安定化液晶表示素子を得た。
【0192】
先に紫外線露光で印加した電圧を切り、紫外線露光後の配向状態を偏光顕微鏡で一軸配向を顕微鏡試料ステージを回転させ観察して偏光の直交ニコスル下での暗視野方向を確認した。電圧−透過率特性は、暗視野が得られるように素子一軸方向と偏光方向を一致させ、60Hzの矩形波を印加して顕微鏡鏡筒に取り付けた光電子倍増管で透過光強度を測定した。透過率は、二枚の偏光板を直行した時を0%、平行にした時を100%とした。電圧−透過率特性は、飽和電圧(10Vo−p)を印加した場合の透過率に対して透過率が90%変化させるのに必要な電圧をV90と定義して駆動電圧を評価した。飽和電圧印加時の透過率を最大透過率T100、電圧を0Vo−pにした場合の透過率を最小透過率T0とした。コントラストはT0/T100と定義した。
【0193】
(高分子安定化液晶組成物の調整)
化合物郡(II)のキラル液晶化合物とアキラル液晶化合物物郡(I)から成る強誘電性液晶組成物FLC−1、又はFLC−2と化合物群(III)をそれぞれ少なくとも一種含む光重合性アクリレート組成物、又はアルキル側鎖型アクリレートを配合して、高分子安定化液晶組成物を調整した。
【0194】
低分子液晶組成物(FLC−1)の各成分の構造及び組成を次に示す。
FLC−1の相系列、及び転移温度は次の通り、
Iso・86℃・N・79℃・SmA・69℃・Cry・−11℃
スメクチックC*相のチルト角は、23度
【0195】
【化76】

【0196】
低分子液晶組成物FLC−2の各成分の構造及び組成を次に示す。
FLC−2の相系列、及び転移温度は次の通り、
Iso・102.6℃・N・88.1℃・SmA・82.4℃・Cry・-27℃ スメクチックC*相のチルト角は、33度
【0197】
【化77】

【0198】
実施例に用いた重合性液晶化合物郡(III−a)、及び(III−b)の構造式を(MOL−1)から(MOL−8)に示す。アクリレート化合物は、(MON−8)の構造式のアルキル側鎖型アクリレート化合物を用いた。
(MOL−1)
【0199】
【化78】

(MOL−2)
【0200】
【化79】

(MOL−3)
【0201】
【化80】

(MOL−4)
【0202】
【化81】

(MOL−5)
【0203】
【化82】

(MOL−6)
【0204】
【化83】

(MOL−7)
【0205】
【化84】

(MOL−8)
【0206】
【化85】

(MOA−1)
【0207】
【化86】

【0208】
【化87】

【0209】
(実施例1)
強誘電性液晶組成物FLC−2を98%、重合性液晶MON−1を1.568%、MOL−5を0.392%、重合性液晶光開始剤イルガキュア651(Irg651)を0.04%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製。上述の高分子安定化光学液晶素子の作製方法に於いて、セル厚1.8μmの液晶セルに調整した液晶組成物を注入して、105℃で等方相にした後、徐冷してスメクチックA相にて配向欠陥の無いことを偏光顕微鏡で確認した。82.4℃のスメクチックC*相転移温度から25℃でスメクチックC*相の配向状態を観察すると二軸性配向であった。これに、25℃でスメクチックC*相にて周波数1.7kHzの矩形波を印加しながら紫外線を露光して高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を重合させて液晶光学素子を作製した。偏光顕微鏡で重合後の配向を観察した所、露光後、偏光顕微鏡で顕微鏡の試料台を回転させて配向状態を観察した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。電極周囲は、スメクチックC*相の特徴である二軸配向を示し、二方向の配向状態である二つドメインが高分子安定化された。前記消光の位置にて電圧を0Vとから徐々に上げて印加すると暗視野から明視野へ電極部分全体が一様に変化して透過率が連続的に増加することから、連続階調表示が可能であることを確認した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、応答は、立ち上がり時間が190μs、立下り時間が250μs、駆動電圧V90は6.18Vo−p、コントラストが1:771、最小透過率0.07%、最大透過率54%の特性が得られた。
【0210】
(実施例2)
液晶組成物FLC−2を98%、MOL−1を1.568%、MOL−6を0.392%、イルガキュア651(Irg651)を0.04%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、応答は、立ち上がり時間が190μs、立下り時間が250μs、駆動電圧V90は6.10Vo−p、コントラストが1:579、最小透過率0.08%、最大透過率46.3%の特性が得られた。
【0211】
(実施例3)
強誘電性液晶組成物FLC−2を98%、重合性液晶MOL−1を1.96%、光開始剤イルガキュア651(Irg651)を0.04%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製。上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。前記消光の位置にて電圧を0Vとから徐々に上げて印加すると暗視野から明視野へ電極部分全体が一様に変化して透過率が連続的に増加することから、連続階調表示が可能であることを確認した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、V90の応答は、立ち上がり時間が190μs、立下り時間が250μs、駆動電圧V90は5.98Vo−p、コントラストが1:1057の特性が得られた。ここで実施例3の駆動電圧V90が5.98Vを示している理由は、電圧−透過率特性で飽和電圧を印加しても透過率が飽和していないため測定誤差が生じている。実際は透過率を飽和させるためには、V90の約2倍の電圧になることが示唆された。
【0212】
(実施例4)
液晶組成物FLC−2を95%、MOL−2を4.9%、イルガキュア651(Irg651)を0.1%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は8.27Vo−p、コントラストが1:344、最小透過率0.09%、最大透過率31%の特性が得られた。
【0213】
(実施例5)
液晶組成物FLC−1を97%、MOL−2を2.94%、イルガキュア651(Irg651)を0.06%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は6.7Vo−p、コントラストが1:263、最小透過率0.09%、最大透過率23.7%の特性が得られた。
【0214】
(実施例6)
液晶組成物FLC−2を98%、MOL−8を1.568%、MOL−5を0.392%、イルガキュア651(Irg651)を0.04%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は6.12Vo−p、コントラストが1:536、最小透過率0.11%、最大透過率59.3%の特性が得られた。
【0215】
(比較例1)
液晶組成物FLC−1を98%、MOL−7を1.96%、イルガキュア651(Irg651)を0.04%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は6.7Vo−p、コントラストが1:263、最小透過率0.09%、最大透過率23.7%の特性が得られた。
【0216】
(比較例2)
液晶組成物FLC−2を98%、MOL−5を1.96%、イルガキュア651(Irg651)を0.04%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は5.5Vo−p、コントラストが1:102、最小透過率0.5%、最大透過率50.8%の特性が得られた。
【0217】
(比較例3)
液晶組成物FLC−2を97%、MOL−6を2.94%、イルガキュア651(Irg651)を0.06%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は7.1Vo−p、コントラストが1:10、最小透過率4.3%、最大透過率41.8%の特性が得られた。
【0218】
(比較例4)
液晶組成物FLC−1を99%、MOL−4を0.98%、イルガキュア651(Irg651)を0.02%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は9.3Vo−p、コントラストが1:23、最小透過率2.3%、最大透過率52%の特性が得られた。
【0219】
(比較例5)
液晶組成物FLC−1を97%、MOL−3を2.94%、イルガキュア651(Irg651)を0.06%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は7.2Vo−p、コントラストが1:110、最小透過率0.29%、最大透過率32.0%の特性が得られた。
【0220】
(比較例6)
液晶組成物FLC−1を96%、MOL−3を3.92%、イルガキュア651(Irg651)を0.08%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は7.9Vo−p、コントラストが1:138、最小透過率0.15%、最大透過率20.7%の特性が得られた。
【0221】
(比較例7)
液晶組成物FLC−1を97%、MOL−3を2.646%、イルガキュア651(Irg651)を0.06%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は6.3Vo−p、コントラストが1:45、最小透過率0.45%、最大透過率20.1%の特性が得られた。
【0222】
(比較例8)
液晶組成物FLC−2を98%、MOA−1を1.96%、イルガキュア651(Irg651)を0.04%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は5.1Vo−p、コントラストが1:65、最小透過率0.51%、最大透過率33.0%の特性が得られた。
【0223】
(比較例9)
液晶組成物FLC−2を97%、MOL−4を2.94%、イルガキュア651(Irg651)を0.06%の比率で配合して高分子安定化液晶組成物を調製し、上述の高分子安定化液晶表示素子の作製方法によって高分子安定化液晶組成物中の重合性液晶化合物を矩形波1kHzの電圧を印加させながら重合させて液晶表示素子を作製した。(実施例1)と同様の方法で素子の特性を評価した。電極部分は、電圧を印加しない場合は、ラビング配向方向へ消光位を示し一軸配向を示した。60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定した所、左右対称のV字型電圧―透過率特性を示し、駆動電圧V90は6.58Vo−p、コントラストが1:70、最小透過率0.43%、最大透過率30.0%の特性が得られた。
【0224】
【表1】

実施例3に於いては、5還の重合性液晶を用いているためアンカーリング力は大きいが一軸配向性が高く最小透過率Toが一番小さく高コントラストが得られる。この組成に置換基を有する重合性液晶をそれぞれ添加すると実施例1、及び実施例2に示すようにアンカーリング力が低減され最大透過率が高くなる。実施例4は、4還の重合性液晶を用いた。実施例3と比較して最大透過率が高くなる傾向を示している。比較例では三還の重合性液晶を用いている。一軸配向性が低くいため最小透過率が上がりコントラストが低下する。また、最大透過率を上げるため液晶濃度を高くした場合と低アンカーリング力の三還重合性液晶のみを使用した比較例2、3、4、7、8ではメモリー性が見られた。これは、一軸配向方向が配向軸に対して常に一定ではない状態が現れ、この状態が長時間維持されディスプレイの応用上好ましくなくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I−a)
【化1】

(式中、R11及びR12はそれぞれ独立して炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、
11は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
12及びC13はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
11及びZ12はそれぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−CO−S−、−S−CO−、−OCHCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)
及び一般式(I−b)
【化2】

(式中、R11、C11、C12、C13、Z11、Z12及びnは、それぞれ独立して一般式(I−a)と同じ意味を表し、
11は、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメチル基、イソシアネート基、シアノ基又は以下の一般式(I−c)を表し。
【化3】

(式中、Z13は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキレン基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよい。)で表される化合物からなる化合物郡(I)から選ばれる少なくとも一種の液晶化合物を含有し、
一般式(II−a)及び一般式(II−b)

【化4】

【化5】

(式中、、R21は炭素原子数1から18のアルキル基又は炭素原子数2から18のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、
21及びC22はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基又は1,4−シクロへキシレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
21は単結合、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表し、
21及びY22はそれぞれ独立して単結合、酸素原子、炭素数1〜14のアルキレン基、−OCH−、−COO−、−OCO−、−OCHCH−又は−OCOCH−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC21及びZ21は同じであっても異なっていても良く、
21及びX22はそれぞれ独立して、一般式(II−c)から一般式(II−h)
【化6】

(式中、*は炭素原子が不斉炭素原子であることを表し、
、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキレン基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、)を表し、
、X及びYはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
及びYはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
及びYはそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、メチル基又はシアノ基を表し、
は単結合又はメチレン基を表し、
は酸素原子又は−OC(Re1)(Re2)O−で表される基(ただし、Re1及びRe2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、
はカルボニル基又は−CH(Rf1)−で表される基(ただし、Rf1は水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基を表す。)を表し、
は−OCO−、−COO−、−CHO−又は−OCH−を表す。)のいずれかの式で表される基を表す。)で表される化合物からなる化合物郡(II)から選ばれる少なくとも一種のカイラル化合物を含有し、
一般式(III)
【化7】

(式中、R31及びR32はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
31は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
32及びC33はそれぞれ独立してベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、Z30及びZ32はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
31及びZ33それぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、3、4、5又は6を表すが、複数あるC31及びZ31は同じであっても異なっていても良く、n及びnはそれぞれ独立して1、2又は3を表す。)で表される重合性化合物を少なくとも1種類以上含有することを特徴とする高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項2】
一般式(III)で表される重合性化合物として一般式(III−a)
【化8】

(式(III−a)中、R33及びR34はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
34及びC35はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基を表し、
34及びZ36はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
35は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、3、4、5、6を表す。ただし、複数あるC34及びZ35は同じであっても異なっていても良く、nが4以上の場合は、C34及びC35はそれぞれ独立して、これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有しても良い)で表される重合性化合物を50%以上含有し一般式(III−b)
【化9】

(式(III−a)中、R35及びR36はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
37及びC38はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基であって、(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することを表し、)
37及びZ39はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
38は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、2、3、4、5、6を表し、n=n−1の関係を満たす。ただし、複数あるC37及びZ38は同じであっても異なっていても良く、複数あるC37の内少なくとも1つに置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有すること。)で表される重合性化合物を50%以下含有する請求項1記載の高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項3】
一般式(III)で表される重合性化合物の含有率が0.1%から8%である請求項1又は2記載の高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項4】
液晶相の相系列が高温側から順に、等方相、ネマチック相、スメクチックA相、スメクチックC*相であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の高分子安定化強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項6】
請求項1から4の何れかに記載の高分子安定化液晶組成物に交流を印加しながら紫外線露光して得られる液晶表示素子の製造方法であって、低分子液晶の液晶相がキラルスメクチックC相を示す温度で周波数100Hzから10kHzの矩形波を該高分子安定化強誘電性液晶組成物が示す電圧−透過率特性の飽和電圧以下で印加しながら紫外線露光することで重合性化合物(III)郡が架橋することにより低分子液晶の配向を高分子安定化させ、液晶中にナノ粒子状又は三次元網目状高分子鎖を形成させて低分子液晶の配向を安定化させた液晶表示素子の製造方法であり、得られる液晶素子が無電界状態に於いて一軸配向状態を示し、これに電界を印加することにより電界強度に依存して消光位が連続的に変化することを特徴とする液晶表示素子の製造方法。

【公開番号】特開2010−90277(P2010−90277A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261720(P2008−261720)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】