説明

高分子発光素子、高分子化合物、組成物、液状組成物及び導電性薄膜

【課題】十分に長い輝度半減寿命を有することが可能な高分子発光素子を提供すること。
【解決手段】陽極及び陰極との間に発光層を有し且つ該発光層と該陽極との間に正孔輸送層を有する高分子発光素子であって、 前記正孔輸送層が、下記化合物(I)で示される繰返し単位、下記一般式(II)で示される繰返し単位及び下記一般式(III)で示される繰返し単位を含む高分子化合物を含有する層であることを特徴とする高分子発光素子。[化合物(I)]:フルオレン骨格を有する化合物[一般式(II)] −Ar− (II)(式(II)中、Arは2価の芳香族アミンを表す。)[一般式(III)] −Ar− (III)(式(III)中、Arはアリーレン基又は2価の複素環基を表す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子発光素子、高分子化合物、組成物、液状組成物並びに導電性薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量の化合物からなる電荷輸送材料(インターレイヤー材料を含む)や発光材料は発光素子等の素子における有機層に用いる材料等として有用である。そのため、種々の高分子化合物や、そのような高分子化合物を正孔輸送層に含む高分子発光素子が研究されてきた。例えば、特開平10−92582号公報(特許文献1)においては、所定のトリフェニルアミン誘導体を繰り返し単位として含む高分子化合物からなる正孔輸送層を含む高分子発光素子が開示されている。また、WO2005/49548号パンフレット(特許文献2)においては、フルオレンジイル基を繰り返し単位として含む高分子化合物が開示されている。また、WO2006/060437号パンフレット(特許文献3)においては、下記一般式:
【0003】
【化1】

【0004】
で示される2価の基を繰り返し単位として含む高分子化合物が開示されている
【特許文献1】特開平10−92582号公報
【特許文献2】WO2005/49548号パンフレット
【特許文献3】WO2006/060437号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の高分子発光素子や、特許文献2〜3に記載の高分子化合物を有機層に用いた高分子発光素子においては、輝度半減寿命が必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に長い輝度半減寿命を有することが可能な高分子発光素子を提供すること、並びに、高分子発光素子の材料として用いた場合に十分に長い輝度半減寿命を有する高分子発光素子を製造することが可能な高分子化合物、それを用いた組成物、液状組成物及び導電性薄膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、陽極及び陰極との間に発光層を有し且つ前記発光層と前記陽極との間に正孔輸送層を有する高分子発光素子において、前記正孔輸送層を下記一般式(I)で示される繰返し単位、下記一般式(II)で示される繰返し単位及び下記一般式(III)で示される繰返し単位を含む高分子化合物を含有する層とすることにより、得られる高分子発光材料の輝度半減寿命を十分に長くすることが可能となることを見出すとともに、特定の繰返し単位を含有する高分子化合物により、十分に長い輝度半減寿命を有する高分子発光素子を製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の高分子発光素子は、陽極及び陰極との間に発光層を有し且つ該発光層と該陽極との間に正孔輸送層を有する高分子発光素子であって、
前記正孔輸送層が、下記一般式(I)で示される繰返し単位、下記一般式(II)で示される繰返し単位及び下記一般式(III)で示される繰返し単位を含む高分子化合物を含有する層であることを特徴とするものである。
[一般式(I)]
【0009】
【化2】

【0010】
(式(I)中、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、a、b、c及びdは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R、R、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)
[一般式(II)]
−Ar− (II)
(式(II)中、Arは2価の芳香族アミンを表す。)
[一般式(III)]
−Ar− (III)
(式(III)中、Arはアリーレン基又は2価の複素環基を表す。)。
【0011】
また、本発明の高分子発光素子としては、前記一般式(II)中のArが、下記一般式(IV)で示される基であることが好ましい。
[一般式(IV)]
【0012】
【化3】

【0013】
(式(IV)中、R〜R34は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、o及びpは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0又は1の整数を表し、
10が結合している炭素及びR18が結合している炭素、R12が結合している炭素及びR13が結合している炭素、R24が結合している炭素及びR34が結合している炭素、又は、R30が結合している炭素及びR31が結合している炭素がそれぞれ直接結合して或いは酸素原子又は硫黄原子を介して結合して環を形成していてもよく、このような環が形成される場合、R10及びR18、R12及びR13、R24及びR34、又は、R30及びR31はそれぞれ一緒になって、前記直接結合、前記酸素原子又は前記硫黄原子を表す。)。
【0014】
また、本発明の高分子発光素子としては、前記一般式(II)中のArが、下記一般式(V)で示される基であることが好ましい。
[一般式(V)]
【0015】
【化4】

【0016】
(式(V)中、R35及びR36は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、R37及びR38は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、e及びfは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R37及びR38がそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0017】
さらに、本発明の高分子発光素子としては、前記一般式(III)中のArが、下記一般式(VI)で示される基であることが好ましい。
[一般式(VI)]
【0018】
【化5】

【0019】
(式(VI)中、R39及びR40は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、R41及びR42は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、gは0〜3の整数を表し、hは0〜5の整数を表し、R41及びR42はそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0020】
また、本発明の高分子発光素子としては、前記一般式(III)中のArが、下記一般式(VII)で示される基であることが好ましい。
[一般式(VII)]
【0021】
【化6】

【0022】
(式(VII)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、R43及びR44は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、i及びjは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R43及びR44はそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0023】
また、本発明の高分子発光素子としては、前記高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜10であることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明の高分子発光素子としては、前記正孔輸送層が正孔輸送材料を更に含有する層であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の第一の高分子化合物は、下記一般式(I)で示される繰返し単位、下記一般式(II)で示される繰返し単位及び下記一般式(VI)で示される繰返し単位を含むことを特徴とするものである。
[一般式(I)]
【0026】
【化7】

【0027】
(式(I)中、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、a、b、c及びdは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R、R、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)
[一般式(II)]
−Ar− (II)
(式(II)中、Arは2価の芳香族アミンを表す。)
[一般式(VI)]
【0028】
【化8】

【0029】
(式(VI)中、R39及びR40は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、R41及びR42は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、gは0〜3の整数を表し、hは0〜5の整数を表し、R41及びR42がそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0030】
また、本発明の第二の高分子化合物は、下記一般式(I)で示される繰返し単位、下記一般式(II)で示される繰返し単位及び下記一般式(VII)で示される繰返し単位を含むことを特徴とするものである。
[一般式(I)]
【0031】
【化9】

【0032】
(式(I)中、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、a、b、c及びdは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R、R、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)
[一般式(II)]
−Ar− (II)
(式(II)中、Arは2価の芳香族アミンを表す。)
[一般式(VII)]
【0033】
【化10】

【0034】
(式(VII)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、R43及びR44は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、i及びjは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R43及びR44はそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0035】
さらに、本発明の第一及び第二の高分子化合物としては、前記一般式(II)中のArが、下記一般式(IV)で示される基であることが好ましい。
[一般式(IV)]
【0036】
【化11】

【0037】
(式(IV)中、R〜R34は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、o及びpは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0又は1の整数を表し、
10が結合している炭素及びR18が結合している炭素、R12が結合している炭素及びR13が結合している炭素、R24が結合している炭素及びR34が結合している炭素、又は、R30が結合している炭素及びR31が結合している炭素がそれぞれ直接結合して或いは酸素原子又は硫黄原子を介して結合して環を形成していてもよく、このような環が形成される場合、R10及びR18、R12及びR13、R24及びR34、又は、R30及びR31はそれぞれ一緒になって、前記直接結合、前記酸素原子又は前記硫黄原子を表す。)。
【0038】
また、本発明の第一及び第二の高分子化合物としては、ポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜10であることが好ましい。
【0039】
また、本発明の組成物は、上記本発明の第一及び第二の高分子化合物のうちの少なくとも1種と、発光材料及び正孔輸送材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料とを含有することを特徴とするものである。
【0040】
また、本発明の液状組成物は、上記本発明の第一及び第二の高分子化合物のうちの少なくとも1種と、溶媒とを含有することを特徴とするものである。
【0041】
さらに、本発明の導電性薄膜は、上記本発明の第一及び第二の高分子化合物のうちのいずれかの高分子化合物を1種類以上含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、十分に長い輝度半減寿命を有することが可能な高分子発光素子を提供すること、並びに、高分子発光素子の材料として用いた場合に十分に長い輝度半減寿命を有する高分子発光素子を製造することが可能な高分子化合物、それを用いた組成物、液状組成物及び導電性薄膜を提供することを目的とする。
【0043】
したがって、本発明の高分子発光素子及び本発明の高分子化化合物を含む高分子発光素子は、液晶ディスプレイのバックライト又は照明用としての曲面状や平面状の光源、セグメントタイプの表示素子、ドットマトリックスのフラットパネルディスプレイ等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0045】
[高分子発光素子]
本発明の高分子発光素子は、陽極及び陰極との間に発光層を有し且つ該発光層と該陽極との間に正孔輸送層を有する高分子発光素子であって、
前記正孔輸送層が、下記一般式(I)で示される繰返し単位、下記一般式(II)で示される繰返し単位及び下記一般式(III)で示される繰返し単位を含む高分子化合物を含有する層であることを特徴とするものである。
[一般式(I)]
【0046】
【化12】

【0047】
(式(I)中、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、a、b、c及びdは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R、R、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)
[一般式(II)]
−Ar− (II)
(式(II)中、Arは2価の芳香族アミンを表す。)
[一般式(III)]
−Ar− (III)
(式(III)中、Arはアリーレン基又は2価の複素環基を表す。)。
【0048】
先ず、本発明にかかる高分子化合物について説明する。本発明にかかる高分子化合物は、前述のように上記一般式(I)で示される繰返し単位を含む。このような一般式(I)中のR、R、R、R、R、R、R又はRとして選択され得るアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれのものであってもよく、更に、置換基を有していてもよい。また、このようなアルキル基としては、炭素数が1〜20(より好ましくは1〜10)のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
【0049】
上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアルコキシ基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれのものであってもよく、置換基を有していてもよい。また、このようなアルコキシ基としては、炭素数が1〜20(より好ましくは1〜10)のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基等が挙げられる。
【0050】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアルキルチオ基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれのものであってもよく、置換基を有していてもよい。更に、このようなアルキルチオ基としては、炭素数が1〜20(より好ましくは1〜10)のものが好ましく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等が挙げられる。
【0051】
さらに、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアリール基としては、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団であればよく特に制限されず、縮合環を持つものや、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接或いはビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。このようなアリール基としては、炭素数が6〜60(より好ましくは7〜48)のものが好ましく、例えば、フェニル基、C〜C12アルコキシフェニル基(C〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。このようなアリール基の中でも、C〜C12アルコキシフェニル基及びC〜C12アルキルフェニル基がより好ましい。
【0052】
このようなアリール基中のC〜C12アルコキシとしては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、ラウリルオキシ等が挙げられる。
【0053】
また、前記アリール基中のC〜C12アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基等が挙げられる。
【0054】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアリールオキシ基としては、炭素数が6〜60(より好ましくは7〜48)のものが好ましく、例えば、フェノキシ基、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられる。また、このようなアリールオキシ基の中でも、C〜C12アルコキシフェノキシ基及びC〜C12アルキルフェノキシ基がより好ましい。
【0055】
前記アリールオキシ基中のC〜C12アルコキシとしては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、ラウリルオキシ等が挙げられる。
【0056】
また、前記アリールオキシ基中のC〜C12アルキルフェノキシ基としては、例えば、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、s−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基等が挙げられる。
【0057】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアリールチオ基としては、前述のアリール基に硫黄元素が結合したものであればよく特に制限されず、前記アリール基の芳香環上に置換基を有するものであってもよい。このようなアリールチオ基としては、炭素数が3〜60(より好ましくは5〜30)のものが好ましく、例えば、フェニルチオ基、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基、ピリジルチオ基、ピリダジニルチオ基、ピリミジルチオ基、ピラジニルチオ基、トリアジニルチオ基等が挙げられる。
【0058】
さらに、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアリールアルキル基としては、前述のアリール基に前述のアルキル基が結合したものであればよく特に制限されず、置換基を有するものであってもよい。このようなアリールアルキル基としては、炭素数が7〜60(より好ましくは7〜30)のものが好ましく、例えば、フェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基、1−ナフチル−C〜C12アルキル基、2−ナフチル−C〜C12アルキル基等が挙げられる。
【0059】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアリールアルコキシ基としては、前述のアリール基に前述のアルコキシ基が結合したものであればよく特に制限されず、置換基を有するものであってもよい。このようなアリールアルコキシ基としては、炭素数が7〜60(より好ましくは7〜30)のものが好ましく、例えば、フェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C〜C12アルコキシ基等が挙げられる。
【0060】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアリールアルキルチオ基としては、前述のアリール基に前述のアルキルチオ基が結合したものであればよく特に制限されず、置換基を有するものであってもよい。このようなアリールアルキルチオ基としては、炭素数が7〜60(より好ましくは7〜30)のものが好ましく、例えば、フェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基等が挙げられる。
【0061】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアリールアルケニル基としては、前述のアリール基にアルケニル基が結合したものであればよい。このようなアリールアルケニル基としては特に制限されないが、炭素数は8〜60(より好ましくは8〜30)のものが好ましく、フェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C〜C12アルケニル基などが例示され、中でも、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基及びC〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基がより好ましい。
【0062】
さらに、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアリールアルキニル基としては、前述のアリール基にアルキニル基が結合したものであればよい。このようなアリールアルキニル基としては特に制限されないが、炭素数が8〜60(より好ましくは8〜30)のものが好ましく、フェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C〜C12アルキニル基などが例示され、中でも、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基及びC〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基がより好ましい。
【0063】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得る置換アミノ基としては特に制限されないが、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選択される1又は2個の基によって置換されたアミノ基が好ましい。また、このような置換アミノ基中のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は他の置換基を有していてもよい。さらに、このような置換アミノ基の炭素数としては、前記置換基の炭素数を含まない場合において1〜60(より好ましくは2〜48)であることが好ましい。
【0064】
このような置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、セカンダリブチル基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基フェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基等が挙げられる。
【0065】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得る置換シリル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基および1価の複素環基からなる群から選択される1〜3個の基によって置換されたシリル基が挙げられる。このような置換シリル基としては特に制限されないが、炭素数が1〜60(より好ましくは3〜48)のものが好ましい。なお、このような置換シリル基中のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は置換基を有していてもよい。
【0066】
このような置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピリシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が挙げられる。
【0067】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0068】
さらに、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアシル基としては特に制限されないが、炭素数が2〜20(より好ましくは2〜18)のものが好ましく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。
【0069】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアシルオキシ基としては特に制限されないが、炭素数が2〜20(より好ましくは2〜18)のものが好ましく、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0070】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るイミン残基としては、イミン化合物(分子内に式:−N=C−で示される基を持つ有機化合物のことをいい、例えば、アルジミン、ケチミン及びこれらのN上の水素原子がアルキル基等で置換された化合物が挙げられる。)から水素原子1個を除いた残基であればよく特に制限されないが、炭素数が2〜20(より好ましくは2〜18)のものが好ましい。このようなイミン残基としては、例えば、下記構造式:
【0071】
【化13】

【0072】
で示される基が挙げられる。
【0073】
さらに、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得るアミド基としては特に制限されないが、炭素数が2〜20(より好ましくは2〜18)のものが好ましく、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基等が挙げられる。
【0074】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得る酸イミド基としては、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基であればよく特に制限されないが、炭素数が4〜20(より好ましくは4〜18)のものが好ましく、例えば、下記構造式:
【0075】
【化14】

【0076】
で示される基が挙げられる。
【0077】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得る1価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。このような1価の複素環基としては特に制限されないが、炭素数が4〜60(より好ましくは4〜20)のものが好ましい。なお、このような1価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まないものとする。また、前記複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。このような1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられ、中でも、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基及びC〜C12アルキルピリジル基がより好ましい。
【0078】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとして選択され得る置換カルボキシル基とは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基で置換されたカルボキシル基をいう。このような置換カルボキシル基としては、炭素数が2〜60(より好ましくは炭素数2〜48)のものが好ましい。また、前記置換カルボキシル基中の前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は、他の置換基を有していてもよい。なお、上記炭素数には、前記置換基の炭素数は含まないものとする。このような置換カルボキシル基としては特に制限されないが、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0079】
また、上記一般式(I)中のR、R、R又はRとしては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシル基又は置換カルボキシル基であることが好ましい。
【0080】
また、上記一般式(I)中のa、b、c及びdは、それぞれ独立に0又は1であることがより好ましく、原料モノマーの合成の容易さの観点から0であることが最も好ましい。
【0081】
さらに、上記一般式(I)中のR、R、RおよびRとしては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、アルキル基であることが好ましい。
【0082】
上記一般式(I)で示される繰返し単位の具体例としては、下記式(I−1)〜(I−9)で示される繰返し単位があげられる。
【0083】
【化15】

【0084】
また、本発明にかかる高分子化合物は、前述のように、上記一般式(I)で示される繰り返し単位とともに、下記一般式(II):
−Ar− (II)
(式(II)中、Arは2価の芳香族アミンを表す。)
で示される繰返し単位を含む。
【0085】
上記一般式(II)中において、2価の芳香族基アミンとは、芳香族アミンから水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、置換基を有していてもよい。このような2価の芳香族基アミンとしては、炭素数が5〜100(より好ましくは15〜60)のものが好ましい。なお、前記芳香族アミンの炭素数には、前記置換基の炭素数は含まないものとする。
【0086】
また、このような2価の芳香族基アミンとしては、具体的には、下記一般式401〜410で示される2価の芳香族基アミンが例示される。
【0087】
【化16】

【0088】
(式401〜410中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表す。)
前記一般式401〜410中においてRとして選択され得るアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基および置換カルボキシル基の定義及び具体例等は、前記一般式(I)中のR、R、R及びRにおいて説明したそれらの定義、具体例等と同じである。
【0089】
また、上記一般式(II)で示される繰返し単位としては、輝度半減寿命が長い高分子素子が得られるという観点から、下記一般式(IV)で示される繰返し単位がより好ましい。
【0090】
【化17】

【0091】
(式(IV)中、R〜R34は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、o及びpは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0又は1の整数を表し、
10が結合している炭素及びR18が結合している炭素、R12が結合している炭素及びR13が結合している炭素、R24が結合している炭素及びR34が結合している炭素、又は、R30が結合している炭素及びR31が結合している炭素がそれぞれ直接結合して或いは酸素原子又は硫黄原子を介して結合して環を形成していてもよく、このような環が形成される場合、R10及びR18、R12及びR13、R24及びR34、又は、R30及びR31はそれぞれ一緒になって、前記直接結合、前記酸素原子又は前記硫黄原子を表す。)。
【0092】
前記一般式(IV)中においてR〜R34として選択され得るアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基および置換カルボキシル基の定義及び具体例等は、前記一般式(I)中のR、R、R及びRにおいて説明したそれらの定義、具体例等と同じである。
【0093】
また、前記一般式(IV)中のR〜R34としては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシル基又は置換カルボキシル基であることがより好ましく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又は置換カルボキシル基であることが更に好ましい。
【0094】
また、前記一般式(IV)中のR10が結合している炭素及びR18が結合している炭素、又は、R24が結合している炭素及びR34が結合している炭素が、それぞれ直接結合して或いは酸素原子又は硫黄原子を介して結合して環を形成する場合(例えば、前記一般式(IV)が下記一般式(IV−5)や(IV−9)等で表される繰返し単位を示す場合)においては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、前記各炭素が酸素原子又は硫黄原子を介して結合して環を形成していることが好ましい。
【0095】
また、前記一般式(IV)中のR12が結合している炭素及びR13が結合している炭素、又は、R30が結合している炭素及びR31が結合している炭素が、それぞれ直接結合して或いは酸素原子又は硫黄原子を介して結合して環を形成する場合(例えば、前記一般式(IV)が下記一般式(IV−17)や(IV−18)等で表される繰返し単位を示す場合)においては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、前記各炭素が直接結合して環を形成することが好ましい。
【0096】
このような一般式(IV)で示される繰返し単位の具体例としては、下記一般式(IV−1)〜(IV−18)で示される繰返し単位等があげられる。
【0097】
【化18】

【0098】
【化19】

【0099】
また本発明にかかる高分子化合物は、前述のように、前記一般式(I)で示される繰り返し単位と前記一般式(II)で示される繰返し単位とともに、下記一般式(III):
−Ar− (III)
(式(III)中、Arはアリーレン基又は2価の複素環基を表す。)
で示される繰返し単位を含む。
【0100】
前記一般式(III)中においてArとして選択され得るアリーレン基とは、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた原子団であり、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環或いは縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。また、このようなアリーレン基は置換基を有していてもよい。このような置換基の種類は特に制限されないが、溶解性、蛍光特性、合成の行い易さ、素子にした場合の特性等の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基及びニトロ基が好ましい。
【0101】
このようなアリーレン基としては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、置換基を除いた部分の炭素数が6〜60(より好ましくは6〜20)であるものが好ましい。また、このようなアリーレン基の置換基を含めた全炭素数は、6〜100であることが好ましい。
【0102】
また、このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基(例えば、下記一般式1〜3で示される基)、ナフタレンジイル基(下記一般式4〜13で示される基)、アントラセン−ジイル基(下記一般式14〜19で示される基)、ビフェニル−ジイル基(下記一般式20〜25で示される基)、ターフェニル−ジイル基(下記一般式26〜28で示される基)、縮合環化合物基(下記一般式29〜35で示される基)、フルオレン−ジイル基(下記一般式36〜38で示される基)、ベンゾフルオレン−ジイル(下記一般式39〜46で示される基)等が挙げられる。
【0103】
【化20】

【0104】
【化21】

【0105】
【化22】

【0106】
【化23】

【0107】
【化24】

【0108】
【化25】

【0109】
【化26】

【0110】
【化27】

【0111】
(式1〜46中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基またはニトロ基を表す。)。
【0112】
また、前記一般式(III)中においてArとして選択され得る2価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。また、このような2価の複素環基は置換基を有していてもよい。また、前記複素環化合物とは、環式構造を持つ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。このような2価の複素環基の中では、芳香族複素環基が好ましい。また、このような2価の複素環基が有していてもよい置換基の種類は特には限定されないが、溶解性、蛍光特性、合成の行いやすさ、素子にした場合の特性等の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基及びニトロ基が好ましい。
【0113】
また、このような2価の複素環基としては、置換基を除いた部分の炭素数が3〜60(より好ましくは3〜20)であるものが好ましい。また、このような2価の複素環基としては、置換基を含めた全炭素数が3〜100(より好ましくは3〜50)であるものが好ましい。
【0114】
さらに、このような2価の複素環基としては、例えば、以下の(a)〜(h)のようなものが挙げられる。
(a)ヘテロ原子として、窒素を含む2価の複素環基:ピリジンージイル基(下記一般式101〜106で示される基)、ジアザフェニレン基(下記一般式107〜110で示される基)、キノリンジイル基(下記一般式111〜125で示される基)、キノキサリンジイル基(下記一般式126〜130で示される基)、アクリジンジイル基(下記一般式131〜134で示される基)、ビピリジルジイル基(下記一般式135〜137で示される基)、フェナントロリンジイル基(下記一般式138〜140で示される基)。
(b)ヘテロ原子として酸素、ケイ素、窒素、硫黄、セレンなどを含みフルオレン構造を有する基(下記一般式141〜155で示される基)。
(c)ヘテロ原子として酸素、ケイ素、窒素、硫黄、セレン、ホウ素、リンなどを含む5員環複素環基(下記一般式156〜175で示される基)。
(d)ヘテロ原子として酸素、ケイ素、窒素、セレンなどを含む5員環縮合複素基(下記一般式176〜187で示される基)。
(e)ヘテロ原子として酸素、ケイ素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基(下記一般式188〜189で示される基)。
(f)ヘテロ原子として酸素、ケイ素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基(下記一般式190〜196で示される基)。
(g)ヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環縮合複素環基にフェニル基やフリル基、チエニル基が置換した基(下記一般式197〜202で示される基)。
(h)ヘテロ原子として酸素、窒素などを含む6員環複素環基(下記一般式203〜206で示される基)。
【0115】
【化28】

【0116】
【化29】

【0117】
【化30】

【0118】
【化31】

【0119】
【化32】

【0120】
【化33】

【0121】
【化34】

【0122】
【化35】

【0123】
【化36】

【0124】
【化37】

【0125】
【化38】

【0126】
【化39】

【0127】
【化40】

【0128】
【化41】

【0129】
【化42】

【0130】
【化43】

【0131】
【化44】

【0132】
(式101〜206中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基及びニトロ基を表す。)。
【0133】
前記一般式1〜46及び前記一般式101〜206中においてRとして選択され得るアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基および置換カルボキシル基の定義及び具体例等は、前記一般式(I)中のR、R、R及びRにおいて説明したそれらの定義及び具体例等と同じである。
【0134】
また、上記一般式(III)中のArがアリーレン基である場合においては、発光素子の材料として用いた場合に半減寿命がより長い発光素子が得られるという観点から、下記一般式(V)で示される繰返し単位が好ましい。
【0135】
【化45】

【0136】
(式(V)中、R35及びR36は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、R37及びR38は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、e及びfは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R37及びR38がそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0137】
前記一般式(V)中においてR35、R36、R37又はR38として選択され得るアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基および置換カルボキシル基の定義及び具体例等は、前記一般式(I)中のR、R、R及びRにおいて説明したそれらの定義及び具体例等と同じである。
【0138】
前記一般式(V)中のR35及びR36としては、前記高分子化合物の有機溶媒への溶解度向上の観点から、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基又は1価の複素環基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であることがより好ましく、アルキル基又はアリール基であることが特に好ましい。
【0139】
前記一般式(V)中のR37及びR38としては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基又は1価の複素環基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基であることがより好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であることが更に好ましく、アルキル基又はアリール基であることが特に好ましい。
【0140】
前記一般式(V)中のe及びfとしては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、それぞれ独立に、0又は1の整数であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
【0141】
また、このような一般式(V)で示される繰返し単位としては、例えば、下記式(V−1)〜(V−8)で示される繰返し単位が挙げられる。
【0142】
【化46】

【0143】
また、前記一般式(III)中のArがアリーレン基である場合においては、発光素子の材料として用いた場合に輝度半減寿命がより長い発光素子が得られるという観点から、下記一般式(VI)で示される繰返し単位が好ましい。
【0144】
【化47】

【0145】
(式(VI)中、R39及びR40は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、R41及びR42は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、gは0〜3の整数を表し、hは0〜5の整数を表し、R41及びR42はそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0146】
前記一般式(VI)中においてR39、R40、R41又はR42として選択され得るアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基および置換カルボキシル基の定義及び具体例等は、前記一般式(I)中のR、R、R及びRにおいて説明したそれらの定義及び具体例等と同じである。
【0147】
前記一般式(VI)中のR39及びR40としては、前記高分子化合物の有機溶媒への溶解度向上の観点から、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基又は1価の複素環基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であることがより好ましく、アルキル基又はアリール基であることが特に好ましい。
【0148】
また、前記一般式(VI)中のR41及びR42としては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基又は1価の複素環基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基であることがより好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であることが更に好ましく、アルキル基又はアリール基であることが特に好ましい。
【0149】
前記一般式(VI)中のgとしては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、0又は1の整数であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
【0150】
前記一般式(VI)中のhとしては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、0又は1の整数であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
【0151】
また、このような一般式(VI)で示される繰返し単位としては、例えば、下記式(VI−1)〜(VI−8)で示される繰返し単位が挙げられる。
【0152】
【化48】

【0153】
さらに、前記一般式(III)中のArが2価の複素環基である場合においては、発光素子の材料として用いた場合に半減寿命がより長い発光素子が得られるという観点から、下記一般式(VII)で示される繰返し単位が好ましい。
【0154】
【化49】

【0155】
(式(VII)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、R43及びR44は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、i及びjは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R43及びR44はそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0156】
前記一般式(VII)中においてR43又はR44として選択され得るアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基および置換カルボキシル基の定義及び具体例等は、前記一般式(I)中のR、R、R及びRにおいて説明したそれらの定義及び具体例等と同じである。
【0157】
前記一般式(VII)中のR43及びR44としては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基又は1価の複素環基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基であることがより好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリールオキシ基であることが更に好ましく、アルキル基又はアルコキシ基であることが特に好ましい。
【0158】
前記一般式(VII)中のi及びjとしては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、それぞれ独立に、0又は1の整数であることが好ましく、前記高分子化合物の有機溶媒への溶解度向上の観点から、1であることが特に好ましい。
【0159】
前記一般式(VII)で示される繰返し単位としては、例えば、下記式(VII−1)〜(VII−8)で示される繰返し単位が挙げられる。
【0160】
【化50】

【0161】
また、前記一般式(V)、(VI)、(VII)で示される繰返し単位の中では、高分子発光素子の輝度半減寿命が長いという観点から、前記一般式(V)で示される繰返し単位がより好ましい。
【0162】
また、本発明にかかる高分子化合物は、前記一般式(I)で示される繰返し単位、前記一般式(II)で示される繰返し単位及び前記一般式(III)で示される繰返し単位をそれぞれ2種以上含んでいてもよい。
【0163】
更に、本発明にかかる高分子化合物は、電荷の輸送性を変化させる観点や耐熱性を向上させる観点等から、前記一般式(I)〜(III)で示される繰り返し単位に加え、それ以外の他の繰り返し単位を少なくとも1種類以上含んでいてもよい。このような他の繰り返し単位としては、下記一般式(A):
−Ar− (A)
(式中、Arはそれぞれ独立にアリーレン基又は2価の複素環基を示す。)
で示される繰り返し単位が好ましい。
【0164】
また、このような一般式(A)で示される繰り返し単位としては、下記一般式(B)、下記一般式(C)、下記一般式(D)又は下記一般式(E)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0165】
【化51】

【0166】
(式(B)中、Rは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、αは0〜4の整数を表し、Rが複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0167】
【化52】

【0168】
(式(C)中、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、β及びχは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0169】
【化53】

【0170】
(式(D)中、Rは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、δは0〜2の整数を表し、Ar及びArは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアリーレン基、2価の複素環基又は金属錯体構造を有する2価の基を表し、ε及びφは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0又は1の整数を表し、Zは、O、S、SO、SO、Se、又はTeを表し、Rが複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【0171】
【化54】

【0172】
(式(E)中、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、γ及びηは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜4の整数を表し、Zは、O、S、SO、Se、Te、N−R、又はSiRを表し、Z及びZは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれN又はC−Rを表し、R、Rh、及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基を表し、R及びRが複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)
また、前記一般式(E)で示される繰り返し単位の中央の5員環としては、例えば、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チオフェン、フラン、シロール等が挙げられる。
【0173】
また、本発明にかかる高分子化合物中における前記一般式(I)〜(III)で示される繰り返し単位の含有割合としては、原料モノマーの添加量を基準として、一般式(I)で示される繰り返し単位が0.02モル%〜30モル%(より好ましくは0.1モル%〜20モル%)の範囲であることが好ましく、一般式(II)で示される繰り返し単位が10モル%〜90モル%(より好ましくは10モル%〜80モル%)の範囲であることが好ましく、一般式(III)で示される繰り返し単位が5モル%〜95モル%(より好ましくは10モル%〜80モル%)の範囲であることが好ましい。
【0174】
このような高分子化合物中における一般式(I)で示される繰り返し単位の含有割合が前記下限未満では、高分子発光素子の輝度半減寿命が短寿命となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる高分子化合物の有機溶媒に対する溶解度が低下する傾向にある。
【0175】
また、前記高分子化合物中における一般式(II)で示される繰り返し単位の含有割合が前記下限未満では、高分子発光素子の正孔輸送性が低くなり、発光効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる高分子化合物の有機溶媒に対する溶解度が低下する傾向にある。
【0176】
さらに、前記高分子化合物中における一般式(III)で示される繰り返し単位の含有割合が前記下限未満では、得られる高分子化合物の有機溶媒に対する溶解度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、高分子発光素子の正孔輸送性が低くなり、発光効率が低下する傾向にある。
【0177】
また、本発明にかかる高分子化合物は、高分子発光素子の寿命特性の観点から、ポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10であることが好ましく、10〜10であることがより好ましく、10〜10であることがさらに好ましく、また、ポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜10であることが好ましく、10〜10であることがより好ましく、10〜10であることがさらに好ましい。
【0178】
なお、本発明において「数平均分子量」及び「重量平均分子量」は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)(島津製作所製:LC−10Avp)を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量として求める。また、測定する試料は、約0.5wt%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入する。更に、GPCの移動相としてはテトラヒドロフランを用い、0.6mL/minの流速で流している。また、カラムとしては、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げたものを用いる。また、検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製:RID−10A)を用いる。
【0179】
また、本発明にかかる高分子化合物は、ランダム、ブロック又はグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。また、このような高分子化合物としては、蛍光又はりん光の量子収率の高い高分子発光体を得るという観点からは、完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロック又はグラフト共重合体が好ましい。なお、このような共重合体には、主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上ある場合やデンドリマーも含まれる。
【0180】
また、本発明にかかる高分子化合物においては、末端基に重合活性基がそのまま残っていると本発明の高分子発光素子の発光特性や寿命特性が低下する可能性があるため、末端基が安定な基で保護されていてもよい。このように安定な基で末端基が保護されている場合には、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有していることが好ましく、その構造としては、例えば、炭素―炭素結合を介してアリール基又は複素環基と結合している構造が挙げられる。このような末端基を保護する安定な基としては、例えば、特開平9−45478号公報において化10の構造式で示される1価の芳香族化合物基等の置換基が挙げられる。
【0181】
次に、本発明にかかる高分子化合物を製造する方法について説明する。本発明にかかる高分子化合物を製造するための好適な方法としては、例えば、下記一般式(X):
−A−Y (X)
(式中、−A−は、前記一般式(I)〜(III)で示される繰返し単位又は前記一般式(A)中のArで示される繰返し単位を表し、Y及びYは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ縮合重合可能な置換基を表す。)
で示される化合物を原料の一つとして適宜選択して用い、中でも、前記一般式(X)中の−A−が前記一般式(I)、(II)及び(III)で示される繰返し単位である化合物をそれぞれ必須成分として含有させて、これを縮合重合させる方法を挙げることができる。
【0182】
また、本発明にかかる高分子化合物中に上記式(X)中の−A−で示される繰り返し単位とともに、前記−A−以外の他の繰り返し単位を含有させる場合には、前記−A−以外の他の繰り返し単位となる、2個の縮合重合に関与する置換基を有する化合物を用い、これを前記式(X)で示される化合物とともに共存させて縮合重合させればよい。
【0183】
このような他の繰り返し単位を含有させるために用いられる2個の縮合重合可能な置換基を有する化合物としては、下記式(XI):
−Ar−Y (XI)
(式中、Arは前述のものと同義であり、Y及びYはそれぞれ独立に縮合重合に関与する置換基を示す。)
で示される化合物が例示される。このようにして、前記Y−A−Yで示される化合物に加えて、前記Y−Ar−Yで示される化合物を縮合重合させることで、−Ar−で示される繰り返し単位を更に有する本発明にかかる高分子化合物を製造することができる。
【0184】
また、上記一般式(I)、(II)、(III)で示される繰返し単位以外の他の繰り返し単位となる上記式(E)に対応する2個の重合縮合に関与する置換基を有する化合物としては、下記一般式(H)で示される化合物が挙げられる。
【0185】
【化55】

【0186】
(式(H)中、R、R、β及びχは、前記式(E)で説明したR、R、β及びχと同義であり、YおよびYはそれぞれ独立に縮合重合に関与する置換基を示す。)
このような縮合重合に関与する置換基(Y、Y、Y、Y、Y及びY)としては、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸エステル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、−B(OH)、ホルミル基、シアノ基又はビニル基等が挙げられる。
【0187】
このような縮合重合に関与する置換基として選択され得るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0188】
また、前記縮合重合に関与する置換基として選択され得るアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基などが例示され、アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基などが例示され、アリールスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基等が例示される。
【0189】
また、前記縮合重合に関与する置換基として選択され得るホウ酸エステル基としては、下記式:
【0190】
【化56】

【0191】
(式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)
で示される基が例示される。
【0192】
さらに、前記縮合重合に関与する置換基として選択され得るスルホニウムメチル基としては、下記式:

−CHMe、又は、−CHPh
(Xはハロゲン原子を示し、Phはフェニル基を示す。)
で示される基が例示される。
【0193】
また、前記縮合重合に関与する置換基として選択され得るホスホニウムメチル基としては、下記式:
−CHPh
(Xはハロゲン原子を示す。)
で示される基が例示される。
【0194】
また、前記縮合重合に関与する置換基として選択され得るホスホネートメチル基としては、下記式:
−CHPO(OR’)
(Xはハロゲン原子を示し、R’はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基を示す。)
で示される基が例示される。
【0195】
さらに、前記縮合重合に関与する置換基として選択され得るモノハロゲン化メチル基としては、フッ化メチル基、塩化メチル基、臭化メチル基またはヨウ化メチル基が例示される。
【0196】
さらに、縮合重合に関与する置換基として好適な置換基としては、重合反応の種類によって異なるものであり一概には言えないが、例えば、Yamamotoカップリング反応など0価ニッケル錯体を用いる場合には、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基またはアリールアルキルスルホネート基が挙げられる。また、Suzukiカップリング反応などニッケル触媒又はパラジウム触媒を用いる場合には、アルキルスルホネート基、ハロゲン原子、ホウ酸エステル基、−B(OH)等が挙げられる。
【0197】
本発明にかかる高分子化合物を製造する際には、例えば、縮合重合に関与する置換基を複数有する前記一般式(X)や(XI)で示される化合物(モノマー)を、必要に応じて有機溶媒に溶解し、アルカリや適当な触媒を適宜用いて、有機溶媒の融点以上沸点以下の温度で反応させる重合方法を採用してもよい。このような重合方法としては、例えば、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”,第14巻,270−490頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1965年、“オルガニック シンセシス(Organic Syntheses)”,コレクティブ第6巻(Collective Volume VI),407−411頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1988年、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)、ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organomet.Chem.),第576巻,147頁(1999年)、マクロモレキュラー ケミストリー マクロモレキュラー シンポジウム(Macromol.Chem.,Macromol.Symp.),第12巻,229頁(1987年)等に記載の公知の方法を適宜採用することができる。
【0198】
また、本発明にかかる高分子化合物をブロック共重合体とする場合においては、WO2005/36666号パンフレットに記載された方法等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0199】
また、本発明にかかる高分子化合物を製造する際には、縮合重合に関与する置換基に応じて、既知の縮合重合反応を適宜採用してもよい。このような重合方法としては、例えば該当するモノマーを、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)錯体により重合する方法、FeCl等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、または適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法等が挙げられる。このような重合反応の中でも、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、及びニッケルゼロ価錯体により重合する方法が、得られる高分子化合物の構造制御がし易いので好ましい。
【0200】
さらに、本発明にかかる高分子化合物を製造する際には、縮合重合に関与する置換基(Y及びY)がそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基から選択され、且つニッケルゼロ価錯体存在下で縮合重合して高分子化合物を製造する方法を採用することが好ましい。このような方法に使用する前記一般式(X)で示される原料化合物としては、例えば、ジハロゲン化化合物、ビス(アルキルスルホネート)化合物、ビス(アリールスルホネート)化合物、ビス(アリールアルキルスルホネート)化合物、ハロゲン−アルキルスルホネート化合物、ハロゲン−アリールスルホネート化合物、ハロゲン−アリールアルキルスルホネート化合物、アルキルスルホネート−アリールスルホネート化合物、アルキルスルホネート−アリールアルキルスルホネート化合物、およびアリールスルホネート−アリールアルキルスルホネート化合物が挙げられる。
【0201】
このような原料化合物を用いて前記高分子化合物を製造する方法の一例としては、ハロゲン−アルキルスルホネート化合物、ハロゲン−アリールスルホネート化合物、ハロゲン−アリールアルキルスルホネート化合物、アルキルスルホネート−アリールスルホネート化合物、アルキルスルホネート−アリールアルキルスルホネート化合物、又はアリールスルホネート−アリールアルキルスルホネート化合物を用いることにより、シーケンスを制御した高分子化合物を製造する方法が挙げられる。
【0202】
また、本発明にかかる高分子化合物を製造する際には、縮合重合に関与する置換基(Y及びY)がそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸基、又はホウ酸エステル基から選ばれ、全原料化合物が有する、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基及びアリールアルキルスルホネート基のモル数の合計(J)と、ホウ酸基(−B(OH))及びホウ酸エステル基のモル数の合計(K)の比が実質的に1(通常 K/J は0.7〜1.2の範囲)であり、且つニッケル触媒又はパラジウム触媒を用いて縮合重合して高分子化合物を製造する方法を採用することが好ましい。
【0203】
このような高分子化合物の製造方法を採用する場合における具体的な原料化合物の組み合わせとしては、ジハロゲン化化合物、ビス(アルキルスルホネート)化合物、ビス(アリールスルホネート)化合物又はビス(アリールアルキルスルホネート)化合物とジホウ酸化合物又はジホウ酸エステル化合物との組み合わせが挙げられる。また、他の原料化合物の組み合わせとしては、ハロゲン−ホウ酸化合物、ハロゲン−ホウ酸エステル化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールスルホネート−ホウ酸化合物、アリールスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物が挙げられる。
【0204】
また、このような原料化合物を用いて前記高分子化合物を製造する方法の一例としては、ハロゲン−ホウ酸化合物、ハロゲン−ホウ酸エステル化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールスルホネート−ホウ酸化合物、アリールスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物を用いることにより、シーケンスを制御した高分子化合物を製造する方法が挙げられる。
【0205】
また、前記有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、一般に副反応を抑制するために十分に脱酸素処理を施したものを用いることが好ましく、高分子化合物を製造する際には、このような有機溶媒を用いて不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、前記有機溶媒においては、前記脱酸素処理と同様に脱水処理を行うことが好ましい。但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない。
【0206】
また、このような有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの不飽和炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン化飽和炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化不飽和炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどのエーテル類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジンなどのアミン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルモルホリンオキシドなどのアミド類等が例示される。これらの有機溶媒は1種を単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。また、このような有機溶媒の中でも、エーテル類がより好ましく、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルが更に好ましい。
【0207】
また、本発明にかかる高分子化合物を製造する際においては、原料化合物を反応させるために適宜アルカリや適当な触媒を添加することが好ましい。このようなアルカリ又は触媒は、採用する重合方法等に応じて選択すればよい。このようなアルカリ又は触媒としては、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。また、前記アルカリ又は触媒を混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で攪拌しながらゆっくりとアルカリ又は触媒の溶液を添加するか、逆にアルカリ又は触媒の溶液に反応液をゆっくりと添加する方法が例示される。
【0208】
次に、本発明にかかる正孔輸送層や陽極等について説明する。
【0209】
本発明の高分子発光素子は、上述のように、陽極及び陰極との間に発光層を有し且つ該発光層と該陽極との間に正孔輸送層を有する高分子発光素子である。このような高分子発光素子としては、例えば、下記a)の構造が例示される。
a)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)。
【0210】
本発明にかかる前記正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層であり、上記本発明にかかる高分子化合物を含有する層である。
【0211】
このような正孔輸送層を形成する方法としては、前記高分子化合物を含有する層を形成できる方法であればよく特に制限はないが、例えば、前記高分子化合物を含有する溶液を用いて、陽極の表面上に前記高分子化合物を含有する膜(正孔輸送層)を成膜する方法が挙げられる。また、このような本発明にかかる高分子化合物を含有する溶液を用いて成膜する方法においては、前記溶液を塗布した後乾燥することにより溶媒を除去するだけでよく、また、正孔輸送材料を混合した場合においても同様な手法が適用でき、製造上非常に有利である。
【0212】
前記高分子化合物を含有する溶液に用いられる溶媒としては、前記高分子化合物を溶解させることができるものであればよく特に制限はない。このような溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示され、より具体的には、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼン等が挙げられる。なお、用いる高分子化合物の構造や分子量にもよるが、通常、これらの溶媒は、前記高分子化合物を0.1重量%以上溶解させることができるものであることが好ましい。
【0213】
また、このような膜(正孔輸送層)の成膜方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法を採用することができる。
【0214】
また、このような正孔輸送層の膜厚としては、用いる高分子化合物によって最適値が異なるため、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜選択すればよく、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であることが好ましい。なお、正孔輸送層の膜厚をあまり厚くしてしまうと、素子の駆動電圧が高くなってしまう傾向にある。そのため、このような正孔輸送層の膜厚としては特に制限されないが、1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜500nmであることがより好ましく、2nm〜200nmであることが更に好ましい。
【0215】
また、本発明の高分子発光素子においては、正孔輸送層に前記高分子化合物とともに正孔輸送材料を含有させてもよい。このような正孔輸送材料としては特に制限されず、公知のものを適宜使用することができるが、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等の高分子量の正孔輸送材料が好ましく、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体が更に好ましい。
【0216】
また、低分子量の正孔輸送材料を含有させる場合には、低分子量の正孔輸送材料を高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。このような高分子バインダーとしては、正孔輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好ましい。このような高分子バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0217】
また、前記ポリビニルカルバゾール及びその誘導体としては、例えば、ビニルモノマーからカチオン重合又はラジカル重合によって得られるものを好適に利用できる。
【0218】
また、前記ポリシラン及びその誘導体としては、例えば、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。このようなポリビニルカルバゾール及びその誘導体の合成方法も、これらの文献に記載された方法を用いることができるが、特にキッピング法を採用することが好ましい。
【0219】
さらに、前記ポリシロキサン誘導体としては、シロキサン骨格構造に正孔輸送性がほとんどないため、側鎖又は主鎖に上記低分子正孔輸送材料の構造を有するものが好適に用いられる。このようなポリシロキサン誘導体としては、特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖又は主鎖に有するものが例示される。
【0220】
また、本発明にかかる発光層は、電圧を印加することにより発光する機能を有する層である。このような発光層に用いられる発光層材料としては、公知の材料を適宜用いることができ、発光層に用いることが可能な低分子量の発光層材料や高分子量の発光層材料を適宜用いることが可能である。このような低分子量の発光層材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等が挙げられる。また、このような低分子量の発光層材料としては、特開昭57−51781号公報、特開昭59−194393号公報に記載されているもの等の公知の材料が使用可能である。また、前記高分子量の発光層材料としては、例えば、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリアミン誘導体等が挙げられる。
【0221】
このような発光層を形成するための方法としては特に制限されず、例えば、前記発光層材料を含有する溶液を用いて成膜することにより発光層を形成する方法が挙げられる。このような発光層材料を含有する溶液を用いて成膜する方法を採用する場合には、前記溶液を塗布した後、乾燥して溶媒を除去するだけで発光層を形成することができるため、製造効率が向上し、製造上非常に有利となる。
【0222】
前記発光層材料を含有する溶液を用いた成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法を採用することができる。
【0223】
また、このような発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なるものであるため駆動電圧と発光効率とが適度な値となるように選択すればよく、特に制限されないが、1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜200nmであることが特に好ましい。
【0224】
また、本発明にかかる陽極及び陰極からなる電極としては、少なくとも一方が透明又は半透明であることが好ましく、陽極側が透明又は半透明であることがより好ましい。
【0225】
このような陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等を適宜用いることができる。このような陽極の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。
【0226】
このような陽極を形成させるための方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、このような陽極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0227】
さらに、前記陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して適宜選択することができるものであることから、特に制限されないが、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50nm〜500nmであることが更に好ましい。
【0228】
また、このような陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボン等からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を更に設けてもよい。
【0229】
また、前記陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。このような陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらの2種以上の合金、あるいはそれらのうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が挙げられる。また、前記合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。また、このような陰極は、2層以上の積層構造としてもよい。
【0230】
このような陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して適宜選択することができるものであり、特に制限されないが、例えば、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50nm〜500nmであることが更に好ましい。
【0231】
また、このような陰極を形成するための方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等を採用することができる。また、このような陰極と発光層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。
【0232】
また、本発明の高分子発光素子においては、陰極と発光層との間に電子輸送層を設けてもよい。ここで、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。このような高分子発光素子としては、例えば、下記b)の構造が例示される。
b)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極。
【0233】
このような電子輸送層に使用される電子輸送材料としては、特に制限されず、公知のものを適宜使用することができる。このような電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。このような電子輸送材料としては、具体的には、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されているもの等が挙げられる
このような電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体がより好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンが更に好ましい。
【0234】
また、このような電子輸送層を形成させるための方法としては特に制限されないが、低分子量の電子輸送材料を用いる場合には、粉末からの真空蒸着法、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、高分子量の電子輸送材料を用いる場合には、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。このような溶液又は溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0235】
このような電子輸送層の成膜に用いる溶液中の溶媒としては、電子輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解させることができるものであればよく特に制限はない。このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が挙げられる。
【0236】
また、このような電子輸送層の成膜方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法を採用することができる。
【0237】
また、このような電子輸送層の成膜に用いる溶液に混合することが可能な高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好ましい。このような高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0238】
さらに、このような電子輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なるものであるため駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要である。また、このような電子輸送層の膜厚は、あまり厚いと素子の駆動電圧が高くなる傾向にある。そのため、このような電子輸送層の膜厚としては、特に制限されないが、1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜200nmであることが更に好ましい。
【0239】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
【0240】
また、本発明の高分子発光素子においては、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記電荷注入層又は絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。また、本発明の高分子発光素子における積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜選択すればよい。このような電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた高分子発光素子としては、例えば、陰極に隣接して電荷注入層を設けた構造のもの、陽極に隣接して電荷注入層を設けた構造のもの等が挙げられ、下記c)〜h)の構造の高分子発光素子が例示される。
c)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
e)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
f)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極。
【0241】
このような電荷注入層としては、例えば、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層等が例示される。
【0242】
また。このような電荷注入層が導電性高分子を含む層である場合においては、前記導電性高分子の電気伝導度は10−5S/cm以上10S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10−5S/cm以上10S/cm以下であることがより好ましく、10−5S/cm以上10S/cm以下であることが更に好ましい。このような導電性高分子の電気伝導度を10−5S/cm以上10S/cm以下とするためには、通常、前記導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0243】
このようにしてドープするイオンの種類としては、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。このようなアニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオン等が挙げられ、前記カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0244】
また、このような電荷注入層の膜厚は、1nm〜100nmであることが好ましく、2nm〜50nmであることがより好ましい。
【0245】
また、このような電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、特に制限されず、例えば、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が挙げられる。なお、このような電荷注入層の製造方法は特に制限されず、公知の製造方法を適宜採用することがきる。
【0246】
また、本発明の高分子発光素子としては、前述のように絶縁層を更に有していてもよい。このような絶縁層を設けた高分子発光素子としては、陰極に隣接して絶縁層を設けた構造の高分子発光素子、陽極に隣接して絶縁層を設けた構造の高分子発光素子等が挙げられ、例えば、下記i)〜n)の構造の高分子発光素子が挙げられる。
i)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
j)陽極/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
k)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
l)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
n)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極。
【0247】
ここで、絶縁層とは、電荷注入を容易にする機能を有するものである。このような絶縁層の平均膜厚としては、0.1〜20nmであることが好ましく、0.5〜10nmであることがより好ましく、1〜5nmであることがより好ましい。また、このような絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。なお、このような絶縁層の製造方法は特に制限されず、公知の製造方法を適宜採用することがきる。
【0248】
また、本発明の高分子発光素子を形成する際に用いる基板としては、電極を形成でき且つ有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、特に制限されないが、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等の基板が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0249】
また、本発明の高分子発光素子においては、これを製造した後に、保護層や保護カバーを装着してもよく、高分子発光素子を長期安定的に用いるという観点からは、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを装着することが好ましい。
【0250】
このような保護層としては、樹脂、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができる。このような保護カバーを装着する方法としては、前記保護カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。また、このような保護カバーを装着する際には、スペーサーを用いて空間を維持すれば、高分子発光素子が傷つくのを防止することが容易となる。また、このような空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、更に、前記空間内に酸化バリウム等の乾燥剤を設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。このような保護カバーを装着する際には、これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0251】
また、本発明の高分子発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置(例えば、バックライト等)等の表示装置等に用いることができる。
【0252】
また、本発明の高分子発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのうちのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、本発明の高分子発光素子をドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。また、本発明の高分子発光素子においては、複数の種類の発光色の異なる高分子化合物を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。また、前記ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動としてもよい。このようにして本発明の高分子発光素子により形成される表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。更に、本発明の高分子発光素子を面状の発光素子とした場合には、その素子は自発光薄型となり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、又は面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、本発明の高分子発光素子にフレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【0253】
[第一及び第二の高分子化合物、組成物、液状組成物、並びに導電性薄膜]
本発明の第一の高分子化合物は、前記一般式(I)で示される繰返し単位、前記一般式(II)で示される繰返し単位及び前記一般式(VI)で示される繰返し単位を含むことを特徴とするものである。
【0254】
また、本発明の第二の高分子化合物は、前記一般式(I)で示される繰返し単位、前記一般式(II)で示される繰返し単位及び前記一般式(VII)で示される繰返し単位を含むことを特徴とするものである。
【0255】
このような第一及び第二の高分子化合物中の一般式(I)、(II)、(VI)及び(VII)で示される繰返し単位は、上記本発明の高分子発光素子に用いられる高分子化合物において説明したものと同様である。
【0256】
また、このような第一の高分子化合物は、上記本発明の高分子発光素子に用いられる高分子化合物中の前記一般式(III)で示される繰返し単位が前記一般式(VI)で示される繰返し単位であるものである。このような第一の高分子化合物を製造する方法としては、前記一般式(X)中の−A−が一般式(I)、(II)及び(VI)で示される繰り返し単位となる原料化合物を、それぞれ必須成分として用いる以外は、上記本発明の高分子発光素子に用いられる高分子化合物を製造する方法と同様の方法を採用することができる。
【0257】
さらに、前記第二の高分子化合物は、上記本発明の高分子発光素子に用いられる高分子化合物中の前記一般式(III)で示される繰返し単位が、前記一般式(VII)で示される繰返し単位であるものである。このような第一の高分子化合物を製造する方法としては、前記一般式(X)中の−A−が一般式(I)、(II)及び(VII)で示される繰り返し単位となる原料化合物を、それぞれ必須成分として用いる以外は、上記本発明の高分子発光素子に用いられる高分子化合物を製造する方法と同様の方法を採用することができる。
【0258】
また、このような本発明の第一及び第二の高分子化合物中の前記一般式(II)で示される繰返し単位としては、前記一般式(II)中のArが前記一般式(IV)で示される基であることが好ましい。このような一般式(IV)で示される基は、上記本発明の高分子発光素子に用いられる高分子化合物において説明したものと同様である。
【0259】
このような本発明の第一及び第二の高分子化合物は、インターレイヤー材料として好適に用いることができる。なお、インターレイヤー材料とは、一対の電極を有する発光素子において、発光層と陽極との間に存在し、発光層に隣接した正孔輸送層をインターレイヤー層とよび、その正孔輸送層に含有される材料のことである。
【0260】
また、本発明の第一及び第二の高分子化合物を高分子LED等に用いる場合においては、第一及び第二の高分子化合物の純度が発光特性等の素子の性能に影響を与えるため、その製造の際には、重合前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に重合することが好ましい。また、重合後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0261】
また、本発明の第一及び第二の高分子化合物は、発光素子における正孔輸送層として用いることができるだけでなく、薄膜、有機半導体材料、有機トランジスタ、光学材料、太陽電池又はドーピングにより導電性材料として用いることもできる。
【0262】
このような薄膜としては、前記高分子化合物を用いてなる導電性薄膜、有機半導体薄膜等が例示される。なお、導電性薄膜については後述する。
【0263】
このような有機半導体薄膜は、電子移動度又は正孔移動度のいずれか大きいほうが好ましく、電子移動度又は正孔移動度が、10−5cm/V/秒以上であることがより好ましくは、10−3cm/V/秒以上であることが更に好ましく、10−1cm/V/秒以上であることが特に好ましい。また、このような有機半導体薄膜を用いて、有機トランジスタを作製することができる。具体的には、SiO等の絶縁膜とゲート電極とを形成したSi基板上に有機半導体薄膜を形成し、Au等でソース電極とドレイン電極を形成することにより、有機トランジスタとすることができる。
【0264】
また、本発明の第一及び第二の高分子化合物は、高分子電界効果トランジスタの材料として利用でき、中でも活性層として好適に用いることができる。高分子電界効果トランジスタの構造としては、通常は、ソース電極及びドレイン電極が高分子からなる活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていればよい。
【0265】
このような高分子電界効果トランジスタは、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては電界効果トランジスタとしての特性を阻害しなければ材質は特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。また、このような高分子電界効果トランジスタは、公知の方法により製造することができ、例えば、特開平5−110069号公報に記載の方法により製造することができる。
【0266】
また、前記活性層を形成する際に、製造上非常に有利であることから、有機溶媒可溶性の第一及び第二の高分子化合物を用いることが好ましい。このような有機溶媒可溶性の第一及び第二の高分子化合物を溶媒に溶解させてなる溶液を用いて前記活性層を成膜する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ノズルコート法等の塗布法等を採用することができる。
【0267】
また、このような高分子電界効果トランジスタとしては、高分子電界効果トランジスタを作製した後、封止してなる封止高分子電界効果トランジスタが好ましい。このようにして製造することで、高分子電界効果トランジスタが、大気から遮断され、高分子電界効果トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、封止する方法としては、紫外線(UV)硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法、ガラス板やフィルムをUV硬化樹脂、熱硬化樹脂等で張り合わせる方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため高分子電界効果トランジスタを作製した後、封止するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)行うことが好ましい。
【0268】
また、本発明の第一及び第二の高分子化合物を用いて製造することができる太陽電池について、有機太陽電池の一態様である、有機光電変換素子であって光起電力効果を利用する固体光電変換素子を例に説明する。
【0269】
本発明の第一及び第二の高分子化合物は、有機光電変換素子の材料として、中でも有機半導体と金属との界面を利用するショットキー障壁型素子の有機半導体層として、また、有機半導体と無機半導体あるいは有機半導体どうしの界面を利用するpnへテロ接合型素子の有機半導体層として、好適に用いることができる。
【0270】
さらに、ドナー・アクセプターの接触面積を増大させたバルクヘテロ接合型素子における電子供与性高分子、電子受容性高分子として、また、高分子・低分子複合系を用いる有機光電変換素子、例えば、電子受容体としてフラーレン誘導体を分散したバルクヘテロ接合型有機光電変換素子の電子供与性共役系高分子(分散支持体)として、好適に用いることができる。
【0271】
このような有機光電変換素子の構造としては、例えば、pnへテロ接合型素子では、オーム性電極、例えば、ITO上に、p型半導体層を形成し、さらに、n型半導体層を積層し、その上にオーム性電極が設けられていればよい。
【0272】
このような有機光電変換素子は、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては有機光電変換素子としての特性を阻害しなければ材質は特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0273】
また、このような有機光電変換素子は、公知の方法、例えば、Synth.Met.,102,982(1999)に記載の方法やScience,270,1789(1995)に記載の方法により製造することができる。
【0274】
次に、本発明の組成物について説明する。
【0275】
本発明の組成物は、上記本発明の第一及び第二の高分子化合物のうちの少なくとも1種と、発光材料及び正孔輸送材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料とを含有することを特徴とするものである。
【0276】
このような発光材料としては特に制限されず、公知のものを適宜使用することができる。このような発光材料のうち低分子量のものとしては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等が挙げられる。このような発光材料としては、例えば、特開昭57−51781号公報、特開昭59−194393号公報に記載されているもの等が挙げられる。
【0277】
また、前記正孔輸送材料としては特に制限されず、公知のものを適宜使用することができる。このような正孔輸送材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等が挙げられる。
【0278】
また、本発明の組成物中における発光材料及び正孔輸送材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料の含有割合は1質量%〜80質量%であることが好ましく、5質量%〜60質量%であることがより好ましい。このような材料の含有量が前記下限未満では、十分な発光性や正孔輸送性を付与できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、高分子化合物の電荷輸送性を発揮できなくなる傾向にある。なお、このような組成物中においては、第一又は第二の高分子化合物をそれぞれ単独で或いは組み合わせて用いてもよい。また、前記第一及び第二の高分子化合物は2種以上含有させてもよい。
【0279】
次に、本発明の液状組成物について説明する。
【0280】
本発明の液状組成物は、上記本発明の第一及び第二の高分子化合物のうちの少なくとも1種と、溶媒とを含有することを特徴とするものである。
【0281】
このような液状組成物は、高分子発光素子等の発光素子や有機トランジスタの作製に有用である。また、「液状組成物」とは、素子作製時において液状であるものを意味し、典型的には、常圧(即ち、1気圧)、25℃において液状のものを意味する。また、液状組成物は、一般的には、インク、インク組成物、溶液等と呼ばれることがある。
【0282】
また、本発明の液状組成物中の溶媒の含有割合としては、液状組成物の全質量に対して1質量%〜99.9質量%であることが好ましく、より好ましくは60質量%〜99.9質量%であり、更に好ましく90質量%〜99.8質量%である。また、液状組成物の好適な粘度は、これを用いて薄膜等を製造する際に採用する印刷法によって異なるものではあるが、25℃において0.5〜500mPa・sの範囲であることが好ましく、インクジェットプリント法等、液状組成物が吐出装置を経由するものの場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために粘度が25℃において0.5〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0283】
また、このような溶媒としては、本発明の液状組成物中に含有される溶媒以外の成分を溶解又は分散できるものが好ましい。このような溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルベンゾエート、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等が例示される。また、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、あるいは複数組み合わせて用いてもよい。前記溶媒のうち、ベンゼン環を少なくとも1個以上含む構造を有し、且つ融点が0℃以下、沸点が100℃以上である有機溶媒を1種類以上含むことが、粘度、成膜性等の観点から好ましい。
【0284】
また、このような溶媒の種類としては、液状組成物中に含有される溶媒以外の成分の溶媒への溶解性、成膜時の均一性、粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メシチレン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、1−メチルナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、メチルベンゾエート、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトンが好ましく、キシレン、アニソール、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシルメチルベンゾエートのうち少なくとも1種類を含むことがより好ましい。
【0285】
更に、本発明の液状組成物に含まれる溶媒の種類は、成膜性の観点や素子特性等の観点から、2種類以上であることがより好ましく、2〜3種類であることが更に好ましく、2種類であることが特に好ましい。
【0286】
本発明の液状組成物に2種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。また、成膜性の観点からは、1種類の溶媒は沸点が180℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃未満のものであることが好ましく、1種類の溶媒は沸点が200℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃未満のものであることがより好ましい。更に、粘度の観点からは、60℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2質量%以上が溶媒に溶解することが好ましく、2種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2質量%以上が溶解することが好ましい。
【0287】
また、本発明の液状組成物に3種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1〜2種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点からは、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以上の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以下の溶媒であることが好ましく、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が200℃以上300℃以下の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以下の溶媒であることがより好ましい。また、粘度の観点からは、3種類の溶媒のうちの2種類の溶媒には、60℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2質量%以上が溶媒に溶解することが好ましく、3種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2質量%以上が溶媒に溶解することが好ましい。
【0288】
さらに、本発明の液状組成物に2種類以上の溶媒が含まれる場合、粘度及び成膜性の観点から、最も沸点が高い溶媒が、液状組成物に含まれる全溶媒の質量の40〜90質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましく、65〜85質量%であることがさらに好ましい。このような最も沸点が高い溶媒の含有量が前記下限未満では、粘度が低くなり、これを用いて最適な膜厚の膜を製造することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘度が高くなり、これを用いて均質な膜を製造することが困難となる傾向にある。
【0289】
また、本発明の液状組成物は、上記本発明の第一及び第二の高分子化合物及び溶媒以外に任意成分として、低分発光材料、正孔輸送材料、安定剤、粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。これらの任意成分は、各々、一種を単独で用いてもよく又は二種以上を併用して用いてもよい。
【0290】
本発明の液状組成物が含有してもよい低分子発光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン、アントラセン誘導体、ペリレン、ペリレン誘導体、ポリメチン系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体を配位子として有する金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体を配位子として有する金属錯体、その他の蛍光性金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルシクロブタジエン、テトラフェニルシクロブタジエン誘導体、スチルベン系、含ケイ素芳香族系、オキサゾール系、フロキサン系、チアゾール系、テトラアリールメタン系、チアジアゾール系、ピラゾール系、メタシクロファン系、アセチレン系等の低分子化合物の蛍光性材料が挙げられる。このような低分子発光材料としては、例えば、特開昭57−51781号公報、特開昭59−194393号公報等に記載されているもの等の公知のものが挙げられる。
【0291】
また、本発明の液状組成物が含有してもよい正孔輸送材料としては、上記本発明の組成物において説明した正孔輸送材料と同様のものである。
【0292】
また、本発明の液状組成物が含有してもよい安定剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0293】
さらに、本発明の液状組成物が含有してもよい粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤としては、例えば、粘度を高めるための高分子量の化合物(増粘剤)や貧溶媒、粘度を下げるための低分子量の化合物、表面張力を下げるための界面活性剤等を適宜組み合わせて使用すればよい。
【0294】
このような粘度を高めるための高分子量の化合物(増粘剤)としては、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、特に制限されないが、本発明の液状組成物の溶媒に対して可溶性のものが好ましい。このような増粘剤としては、例えば、高分子量のポリスチレン、高分子量のポリメチルメタクリレート等を用いることができる。前記増粘剤のポリスチレン換算の重量平均分子量は50万以上が好ましく、100万以上がより好ましい。また、貧溶媒を増粘剤として用いることもできる。
【0295】
また、本発明の液状組成物が含有してもよい酸化防止剤としては、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、特に制限されないが、溶媒に可溶性のものが好ましい。このような酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が例示される。また、このような酸化防止剤を用いることにより、前記正孔輸送層や溶媒の保存安定性を改善される傾向にある。
【0296】
また、本発明の液状組成物が正孔輸送材料を含有する場合における液状組成物中の正孔輸送材料の含有割合は、1質量%〜80質量%であることが好ましく、5質量%〜60質量%であることがより好ましい。このような正孔輸送材料の含有量が前記下限未満では、得られた液状組成物を成膜した際に、得られる膜に十分な正孔輸送能や電子輸送能等を付与できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、高分子化合物の電荷輸送性を発揮できなくなる傾向にある。
【0297】
また、高分子発光素子を製造する際に、本発明の液状組成物を用いて正孔輸送層を成膜する場合、前記液状組成物を塗布した後、乾燥することにより溶媒を除去するだけで正孔輸送層を成膜することができる。また、電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法を適用して電荷輸送層や発光層を成膜することができる。そのため、本発明の液状組成物は、高分子発光素子の製造効率を向上させることができ、製造上非常に有利なものである。なお、前記乾燥の際には、50〜150℃程度に加温した状態で乾燥させてもよく、更には、10−3Pa程度に減圧して乾燥させてもよい。
【0298】
また、本発明の液状組成物を用いた成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法を採用することができる。
【0299】
次に、本発明の導電性薄膜について説明する。
【0300】
本発明の導電性薄膜は、上記本発明の第一及び第二の高分子化合物から選択される高分子化合物を1種類以上含有することを特徴とするものである。
【0301】
このような導電性薄膜は、表面抵抗が1KΩ/□以下であることが好ましく、表面抵抗が100Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることがさらに好ましい。また、このような導電性薄膜においては、ルイス酸、イオン性化合物等をドープすることにより、電気伝導度を高めることができる。
【0302】
また、本発明の導電性薄膜において、上記本発明の第一及び第二の高分子化合物から選択される高分子化合物の含有割合としては、特に制限されないが、20〜100質量%であることが好ましく、40〜100質量%であることがより好ましい。このような高分子化合物の含有割合が前記下限未満では、高分子化合物の電荷輸送性を発揮できなくなる傾向にある。
【0303】
なお、このような導電性薄膜を製造する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このような導電性薄膜の膜厚としては、用いる用途や高分子化合物の種類等によって異なるものであり、用途等に応じて適宜その膜厚を変更して用いることができる。更に、このような導電性薄膜においては、必要に応じて各種添加剤等を含有させてもよい。
【実施例】
【0304】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0305】
[高分子化合物<P−1〜6>の製造]
(合成例1)
下記構造式で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物<P−1>を製造した。
【0306】
【化57】

【0307】
すなわち、先ず、不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(2.10g)、ビス(4−ブロモフェニル)−(4−セカンダリブチルフェニル)−アミン(1.65g)、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4’−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレン(0.32g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド(8.4mg)、Aliquat336(0.52g,アルドリッチ製)、トルエン(40ml)を混合し、得られた反応溶液を105℃に加熱した。次に、前記反応溶液に2MのNaCO水溶液(11ml)を滴下し、4時間還流させて反応させた後、フェニルホウ酸(50mg)を加え、さらに3時間還流させた。次いで、前記反応溶液に1.8Mのジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(10ml)を加え、80℃で4時間撹拌した後、25℃に冷却し、水(60ml)で3回、3質量%酢酸水溶液(60ml)で4回、水(60ml)で3回洗浄した後、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製し、トルエン溶液を得た。そして、得られたトルエン溶液をメタノール(3L)に滴下し、3時間撹拌した後、得られた固体をろ取し乾燥させて高分子化合物<P−1>を得た。得られた高分子化合物<P−1>の収量は1.87gであった。また、高分子化合物<P−1>のポリスチレン換算重量平均分子量は、1.4×10であり、ポリスチレン換算数平均分子量は5.7×10であった。
【0308】
なお、ビス(4−ブロモフェニル)−(4−セカンダリブチルフェニル)−アミンは、WO2002/045184号パンフレットに記載の方法で合成し、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4’−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレンはWO2006/060437号パンフレットに記載の方法で合成した。
【0309】
(実施例1)
下記構造式で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物<P−2>(本発明の第一の高分子化合物)を製造した。
【0310】
【化58】

【0311】
すなわち、先ず、不活性雰囲気下、5,9−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−7,7−ジオクチル−ベンゾ〔c〕フルオレン(2.78g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−n−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(2.46g)、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレン(0.33g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド(8.4mg)、Aliquat336(0.52g,アルドリッチ製)、トルエン(40ml)を混合し、得られた反応溶液を105℃に加熱した。次に、前記反応溶液に2MのNaCO水溶液(11ml)を滴下し、3.5時間還流させて反応させた後、フェニルホウ酸(50mg)を加え、さらに3時間還流させた。次いで、前記反応溶液に1.8Mのジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(25ml)を加え、80℃で4時間撹拌した後、25℃に冷却し、水(60ml)で3回、3質量%酢酸水溶液(60ml)で4回、水(60ml)で3回洗浄した後、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製し、トルエン溶液を得た。そして、得られたトルエン溶液をメタノール(3L)に滴下し、3時間撹拌した後、得られた固体をろ取し乾燥させて、本発明の第一の高分子化合物である高分子化合物<P−2>を得た。得られた高分子化合物<P−2>の収量は3.22gであった。また、高分子化合物<P−2>のポリスチレン換算重量平均分子量は、2.4×10であり、ポリスチレン換算数平均分子量は9.1×10であった。
【0312】
なお、5,9−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−7,7−ジオクチル−ベンゾ〔c〕フルオレンはWO2005/056633号パンフレットに記載の方法で合成し、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−n−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミンはWO2005/049689号パンフレットに記載の方法で合成した。
【0313】
(合成例2)
下記構造式で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物<P−3>を製造した。
【0314】
【化59】

【0315】
すなわち、先ず、不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(6.14g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)− N,N’−ビス(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−ベンジジン(8.44g)、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレン(0.95g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド(8.9mg)、Aliquat336(1.9g,アルドリッチ製)、トルエン(88ml)を混合し、得られた反応溶液を105℃に加熱した。次に、前記反応溶液に2MのNaCO水溶液(28ml)を滴下し、1時間還流させて反応させた後、フェニルホウ酸(170mg)を加え、さらに3時間還流させた。次いで、前記反応溶液に1.8Mのジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(50ml)を加え、80℃で4時間撹拌した後、25℃に冷却し、水(200ml)で3回、3質量%酢酸水溶液(200ml)で4回、水(200ml)で3回洗浄した後、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製し、トルエン溶液を得た。そして、得られたトルエン溶液をメタノール(3L)に滴下し、3時間撹拌した後、得られた固体をろ取し乾燥させて、高分子化合物<P−3>を得た。得られた高分子化合物<P−3>の収量は9.78gであった。また、高分子化合物<P−3>のポリスチレン換算重量平均分子量は、3.6×10であり、ポリスチレン換算数平均分子量は9.2×10であった。
【0316】
なお、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−ベンジジンはWO2005/056633号パンフレットに記載の合成方法で合成した。
【0317】
(比較例1)
下記構造式で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物<P−4>を製造した。
【0318】
【化60】

【0319】
すなわち、先ず、不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(5.10g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)− N,N’−ビス(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−ベンジジン(7.78g)、酢酸パラジウム(2.4mg)、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン(32.3mg)、Aliquat336(1.5g,アルドリッチ製)、トルエン(73ml)を混合し、得られた反応溶液を105℃に加熱した。次に、前記反応溶液に2MのNaCO水溶液(23ml)を滴下し、2時間還流させて反応させた後、フェニルホウ酸(140mg)を加え、さらに3時間還流させた。次いで、前記反応溶液に1.8Mのジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(50ml)を加え、80℃で4時間撹拌した後、25℃に冷却し、水(120ml)で3回、3質量%酢酸水溶液(120ml)で4回、水(120ml)で3回洗浄した後、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製し、トルエン溶液を得た。そして、得られたトルエン溶液をメタノール(3L)に滴下し、3時間撹拌した後、得られた固体をろ取し乾燥させて、高分子化合物<P−4>を得た。得られた高分子化合物<P−4>の収量は8.78gであった。また、高分子化合物<P−4>のポリスチレン換算重量平均分子量は、1.3×10であり、ポリスチレン換算数平均分子量は5.3×10であった。
【0320】
(実施例2)
下記構造式で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物<P−5>(本発明の第二の高分子化合物)を製造した。
【0321】
【化61】

【0322】
すなわち、先ず、3,7−ジブロモ−2,8−ジオクチルオキシジベンゾチオフェン(0.30g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−ベンジジン(0.30g)、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレン(0.04g)及び2,2’−ビピリジル(0.39g、3.1mmol)を脱水したテトラヒドロフラン40mLに溶解した後、窒素でバブリングして系内を窒素置換し、反応溶液を得た。次いで、窒素雰囲気下において、前記反応溶液に、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)}(0.68g)を加え、60℃まで昇温し、3時間反応させた。次いで、前記反応溶液を25℃に冷却した後、反応後の前記反応溶液を25質量%アンモニア水10ml/メタノール120ml/イオン交換水50ml混合溶液中にそそぎ込み、約1時間攪拌し、沈殿物を析出させた。次に、前記沈殿物を、ろ過することにより回収し、エタノールで洗浄した後、2時間減圧乾燥した。次いで、乾燥後の沈殿物をトルエン30mLに溶解し、1Nの塩酸30mLを加えて1時間攪拌した後、水層を除去し、更に、有機層に4質量%アンモニア水30mLを加え、1時間攪拌した後、水層を除去した。次に、このようにして得られた有機層を、メタノール200mLに滴下して1時間攪拌し、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、トルエン30mLに溶解させてトルエン溶液を得た。その後、前記トルエン溶液をアルミナカラム(アルミナ量20g)に通して精製し、溶液を回収した。そして、回収された溶液をメタノール250mLに滴下して1時間攪拌し、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥させて、本発明の第二の高分子化合物である高分子化合物<P−5>を得た。得られた高分子化合物<P−5>の収量は0.25gであった。また、高分子化合物<P−5>のポリスチレン換算重量平均分子量は、3.4×10であり、ポリスチレン換算数平均分子量は1.2×10であった。
【0323】
なお、3,7−ジブロモ−2,8−ジオクチルオキシジベンゾチオフェンはEP1344788号公報に記載の方法で合成した。
【0324】
(合成例3)
赤色発光性の高分子化合物<P−6>を製造した。すなわち、先ず、不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジヘキシルフルオレン(1.91g)、4,7−ビス(5−ブロモ−4−メチル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(0.10g)、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(0.35g)、ビス(4−ブロモフェニル)−(4−セカンダリブチルフェニル)−アミン(0.74g)、2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン(0.79g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド(8.4mg)、Aliquat336(0.52g,アルドリッチ製)、トルエン(40ml)を混合し、得られた反応溶液を105℃に加熱した。次に、前記反応溶液に2MのNaCO水溶液(11ml)を滴下し、1.5時間還流させた後、フェニルホウ酸(40mg)を加え、さらに3時間還流させた。次いで前記反応溶液に1.8Mのジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(15ml)を加え、80℃で4時間撹拌した後、25℃に冷却し、次いで、水(50ml)で3回、3質量%酢酸水溶液(50ml)で4回、水(50ml)で3回洗浄した後、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製して、トルエン溶液を得た。得られたトルエン溶液をメタノール(3L)に滴下し、1時間撹拌した後、得られた固体をろ取し乾燥させて、赤色発光性の高分子化合物<P−6>を得た。得られた高分子化合物<P−6>の収量は2.02gであった。また、高分子化合物<P−6>のポリスチレン換算重量平均分子量は、1.8×10であり、ポリスチレン換算数平均分子量は8.0×10であった。
【0325】
なお、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールは、US3577427号公報に記載の方法で合成し、4,7−ビス(5−ブロモ−4−メチル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールは、WO2000/046321号パンフレットに記載の方法で合成した。
【0326】
[高分子発光素子(エレクトロルミネッセンス素子:EL素子)の製造]
(実施例3)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を積層させたガラス基板の表面に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(Bayer製)の懸濁液をスピンコート法により、約65nmの厚みとなるようにして塗布し、第一膜を製膜し、ホットプレート上で200℃、15分間乾燥した。
【0327】
次に、合成例2で得られた高分子化合物<P−3>を混合キシレンに1.5質量%の濃度で溶解させて得られたキシレン溶液を用いて、前記キシレン溶液を第一膜の表面にスピンコート法により塗布し、正孔輸送層を製膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(質量基準)の窒素雰囲気下において200℃の温度条件下で1時間乾燥させた。なお、このようにして乾燥させた後の正孔輸送層は、大気中、混合キシレンを用いて可溶分をリンスすることで厚みを約10nmとした。
【0328】
次に、合成例3で得られた赤色発光性の高分子化合物<P−6>を混合キシレンに1.7質量%の濃度で溶解させて得られたキシレン溶液を用いて、前記キシレン溶液を前記正孔輸送層の表面にスピンコート法により、厚みが約100nmとなるようにして発光層を製膜し、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、130℃の温度条件で1時間乾燥した。
【0329】
次いで、1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、前記発光層の表面に、バリウムを約5nmを蒸着した後、更にアルミニウムを約80nm蒸着して、陰極を積層させた。このようにして蒸着させた後、ガラス基板を用いて封止を行って本発明の高分子発光素子を作製した。
〈素子構成〉
ITO(陽極)/第一膜(BaytronP:厚み約65nm)/正孔輸送層(高分子化合物<P−3>:厚み約10nm)/発光層(高分子化合物<P−6>:厚み約80nm)/Ba(陰極)/Al(陰極)。
【0330】
<実施例3で得られた高分子発光素子(EL素子)の性能の評価>
実施例3で得られた高分子発光素子に電圧を印加して性能を評価した。実施例3で得られた高分子発光素子に10.0Vの電圧を印加すると、発光波長のピークトップが670nmである蛍光を発し、その時の輝度は2836cd/mであった。また、発光効率は3.8Vで最大値を示し、0.70cd/Aであった。さらに、初期輝度1500cd/mでの輝度50%までの減少時間(輝度半減寿命)は、176.6時間であることが確認され、十分に長寿命の高分子発光素子が得られることが確認された。
【0331】
(比較例2)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を積層させたガラス基板の表面に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(Bayer製)の懸濁液をスピンコート法により、約65nmの厚みとなるようにして塗布し、第一膜を製膜し、ホットプレート上で200℃、15分間乾燥した。
【0332】
次に、比較例1で得られた高分子化合物<P−4>を混合キシレンに1.5質量%の濃度で溶解させて得られたキシレン溶液を用いて、前記キシレン溶液を第一膜の表面にスピンコート法により塗布し、正孔輸送層を製膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(質量基準)の窒素雰囲気下において200℃の温度条件下で1時間乾燥させた。なお、このようにして乾燥させた後の正孔輸送層は、大気中、混合キシレンを用いて可溶分をリンスすることで厚みを約10nmとした。
【0333】
次に、合成例3で得られた赤色発光性の高分子化合物<P−6>を混合キシレンに1.7質量%の濃度で溶解させて得られたキシレン溶液を用いて、前記キシレン溶液を前記正孔輸送層の表面にスピンコート法により、厚みが約100nmとなるようにして発光層を製膜し、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、130℃の温度条件で1時間乾燥した。
【0334】
次いで、1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、前記発光層の表面に、バリウムを約5nmを蒸着した後、更にアルミニウムを約80nm蒸着して、陰極を積層させた。このようにして蒸着させた後、ガラス基板を用いて封止を行って、実施例3に対する比較のための高分子発光素子を作製した。
〈素子構成〉
ITO(陽極)/第一膜(BaytronP:厚み約65nm)/正孔輸送層(高分子化合物<P−4>:厚み約10nm)/発光層(高分子化合物<P−6>:厚み約80nm)/Ba(陰極)/Al(陰極)。
【0335】
<比較例2で得られた高分子発光素子(EL素子)の性能の評価>
比較例2で得られた高分子発光素子に電圧を印加して性能を評価した。比較例2で得られた高分子発光素子に10.0Vの電圧を印加すると、発光波長のピークトップが665nmである蛍光を発し、その時の輝度は3090cd/mであった。また、発光効率は4.6Vで最大値を示し、0.63cd/Aであった。さらに、初期輝度1500cd/mでの輝度50%までの減少時間(輝度半減寿命)は、82.6時間であることが確認され、その輝度半減寿命は十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0336】
以上説明したように、本発明によれば、十分に長い輝度半減寿命を有することが可能な高分子発光素子を提供すること、並びに、高分子発光素子の材料として用いた場合に十分に長い輝度半減寿命を有する高分子発光素子を製造することが可能な高分子化合物、それを用いた組成物、液状組成物及び導電性薄膜を提供することが可能となる。
【0337】
したがって、本発明の高分子発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置(例えば、バックライト等)等の表示装置等に用いる素子として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極との間に発光層を有し且つ該発光層と該陽極との間に正孔輸送層を有する高分子発光素子であって、
前記正孔輸送層が、下記一般式(I)で示される繰返し単位、下記一般式(II)で示される繰返し単位及び下記一般式(III)で示される繰返し単位を含む高分子化合物を含有する層であることを特徴とする高分子発光素子。
[一般式(I)]
【化1】

(式(I)中、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、a、b、c及びdは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R、R、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)
[一般式(II)]
−Ar− (II)
(式(II)中、Arは2価の芳香族アミンを表す。)
[一般式(III)]
−Ar− (III)
(式(III)中、Arはアリーレン基又は2価の複素環基を表す。)。
【請求項2】
前記一般式(II)中のArが、下記一般式(IV)で示される基であることを特徴とする請求項1に記載の高分子発光素子。
[一般式(IV)]
【化2】

(式(IV)中、R〜R34は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、o及びpは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0又は1の整数を表し、
10が結合している炭素及びR18が結合している炭素、R12が結合している炭素及びR13が結合している炭素、R24が結合している炭素及びR34が結合している炭素、又は、R30が結合している炭素及びR31が結合している炭素がそれぞれ直接結合して或いは酸素原子又は硫黄原子を介して結合して環を形成していてもよく、このような環が形成される場合、R10及びR18、R12及びR13、R24及びR34、又は、R30及びR31はそれぞれ一緒になって、前記直接結合、前記酸素原子又は前記硫黄原子を表す。)。
【請求項3】
前記一般式(III)中のArが、下記一般式(V)で示される基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子発光素子。
[一般式(V)]
【化3】

(式(V)中、R35及びR36は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、R37及びR38は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、e及びfは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R37及びR38がそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【請求項4】
前記一般式(III)中のArが、下記一般式(VI)で示される基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子発光素子。
[一般式(VI)]
【化4】

(式(VI)中、R39及びR40は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、R41及びR42は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、gは0〜3の整数を表し、hは0〜5の整数を表し、R41及びR42はそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【請求項5】
前記一般式(III)中のArが、下記一般式(VII)で示される基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子発光素子。
[一般式(VII)]
【化5】

(式(VII)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、R43及びR44は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、i及びjは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R43及びR44はそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【請求項6】
前記高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜10であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の高分子発光素子。
【請求項7】
前記正孔輸送層が正孔輸送材料を更に含有する層であることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の高分子発光素子。
【請求項8】
下記一般式(I)で示される繰返し単位、下記一般式(II)で示される繰返し単位及び下記一般式(VI)で示される繰返し単位を含むことを特徴とする高分子化合物。
[一般式(I)]
【化6】

(式(I)中、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、a、b、c及びdは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R、R、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)
[一般式(II)]
−Ar− (II)
(式(II)中、Arは2価の芳香族アミンを表す。)
[一般式(VI)]
【化7】

(式(VI)中、R39及びR40は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、R41及びR42は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、gは0〜3の整数を表し、hは0〜5の整数を表し、R41及びR42はそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【請求項9】
下記一般式(I)で示される繰返し単位、下記一般式(II)で示される繰返し単位及び下記一般式(VII)で示される繰返し単位を含むことを特徴とする高分子化合物。
[一般式(I)]
【化8】

(式(I)中、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R、R、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、a、b、c及びdは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R、R、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)
[一般式(II)]
−Ar− (II)
(式(II)中、Arは2価の芳香族アミンを表す。)
[一般式(VII)]
【化9】

(式(VII)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、R43及びR44は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、i及びjは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、R43及びR44はそれぞれ複数個存在する場合、それらは同一でも又は異なっていてもよい。)。
【請求項10】
前記一般式(II)中のArが、下記一般式(IV)で示される基であることを特徴とする請求項8又は9に記載の高分子化合物。
[一般式(IV)]
【化10】

(式(IV)中、R〜R34は同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表し、o及びpは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ0又は1の整数を表し、
10が結合している炭素及びR18が結合している炭素、R12が結合している炭素及びR13が結合している炭素、R24が結合している炭素及びR34が結合している炭素、又は、R30が結合している炭素及びR31が結合している炭素がそれぞれ直接結合して或いは酸素原子又は硫黄原子を介して結合して環を形成していてもよく、このような環が形成される場合、R10及びR18、R12及びR13、R24及びR34、又は、R30及びR31はそれぞれ一緒になって、前記直接結合、前記酸素原子又は前記硫黄原子を表す。)。
【請求項11】
ポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜10であることを特徴とする請求項8〜10のうちのいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項12】
請求項8〜11のうちのいずれか一項に記載の高分子化合物と、発光材料及び正孔輸送材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料とを含有することを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項8〜11のうちのいずれか一項に記載の高分子化合物と、溶媒とを含有することを特徴とする液状組成物。
【請求項14】
請求項8〜11のうちのいずれか一項に記載の高分子化合物を1種類以上含有することを特徴とする導電性薄膜。

【公開番号】特開2008−189759(P2008−189759A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24313(P2007−24313)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】