説明

高分子系廃棄物の熱分解方法および熱分解装置

【課題】高分子系廃棄物から回収したカーボンブラックの補強性等が低下することなく、生産性を向上させた高分子系廃棄物の熱分解方法および熱分解装置を提供する。
【解決手段】高分子系廃棄物を熱分解させるに当たり、少なくとも二回以上の加熱工程において、二回目以降のいずれかの加熱工程で高分子系廃棄物に循環流を与えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子系廃棄物の熱分解方法および熱分解装置に関し、特には、高分子系廃棄物を熱分解することによりカーボンブラックを効率的に得ることができる高分子系廃棄物の熱分解方法および熱分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機能性の材料を開発する目的で、ゴム材料や樹脂材料等、様々な高分子系材料の工業化がなされているが、他方で、高分子工業の発展は、汎用材料の大量生産、大量消費をもたらし、高分子系廃棄物の処理は早急に解決すべき重要課題となっている。そして、この課題を解決するためには、高分子系材料の再利用化、リサイクル化等の技術的進展が肝要となる。例えば、ゴム材料であるタイヤは、モータリゼーションの発展と共に自動車必需部材として大量生産、大量消費がなされ、使用済みタイヤの数が膨大になっていることから、使用済みタイヤのリサイクル化・有効利用の研究が進められ、特に有用材料の回収が大きな課題となっている。
【0003】
これがため、例えば、特許文献1には、ゴム系廃棄物の破砕工程と、該破砕工程で得られた破砕物の熱分解工程と、該熱分解工程で生成した熱分解残渣中の金属残渣及びカーボン残渣の選別工程と、選別されたカーボン残渣の粉砕工程と、該粉砕工程で粉砕された粉砕カーボンの燃焼処理工程と、該燃焼処理工程で発生した燃焼排ガスからの熱回収工程とから構成されるゴム系廃棄物の燃焼処理方法が記載されている。
【0004】
しかるに、このような燃焼処理方法では、ゴム系廃棄物を燃焼した際に不完全燃焼等で燃焼物に高分子等が残存して、燃焼物に含まれるカーボンブラックの補強性等の性能が大きく低下するおそれがあり、それをゴム組成物に配合すると補強効果が不足したり、バッチ処理で、ゴム系廃棄物を熱分解する処理時間が長くなることが否めなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−159430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、高分子系廃棄物から回収したカーボンブラックの補強性等が低下することなく、生産性を向上させた高分子系廃棄物の熱分解方法および熱分解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる高分子系廃棄物の熱分解方法は、高分子系廃棄物を熱分解させるに当たり、少なくとも二回以上の加熱工程において、二回目以降のいずれかの加熱工程で高分子系廃棄物に循環流を与えることを特徴とする。
ここで、循環流とは、外部との交換無く熱分解装置内にて循環する気体をいうものとする。
【0008】
また、本発明にかかる高分子系廃棄物の熱分解装置は、複数の熱分解炉を使って複数の加熱を施すものであって、二段目以降のいずれかの熱分解炉で気流発生装置を具えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高分子系廃棄物の熱分解方法によれば、高分子系廃棄物の熱分解を少なくとも二回以上実施して、二回目以降のいずれかの加熱工程で高分子系廃棄物に循環流を与えることで、炉内雰囲気温度を均一に保つとともに、炉内で一様に撹拌され、高分子系廃棄物への熱の供給がむらなく行われるため、高分子系廃棄物を均一かつ効率的に熱分解させることができる。その結果、燃焼物に含まれるカーボンブラックをゴム組成物に配合した場合にゴム組成物の補強性等を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の高分子系廃棄物の熱分解装置によれば、二段目以降のいずれかの熱分解炉で気流発生装置を具えることにより、炉内雰囲気温度を均一に保つとともに、炉内で一様に撹拌され、高分子系廃棄物への熱の供給がむらなく行われるため、高分子系廃棄物を均一かつ効率的に熱分解させる装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施に用いる高分子系廃棄物の熱分解の一例を示す作動工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明の熱分解方法および熱分解装置を詳細に説明する。
本発明では高分子系廃棄物の熱分解を少なくとも二回以上行うが、図では熱分解を二回で行う。
図1(a)に示す第一の熱分解装置1は、上下に分割可能な熱分解炉2と、この熱分解炉2の外周面を囲繞するように設けられた加熱炉3とから構成する。
図1(b)に示す第二の熱分解装置11は、上下に分割可能な熱分解炉12と、この熱分解炉12の外周面を囲繞するように設けられた加熱炉13と、熱分解炉12内に循環流を与える気流発生装置14を、図では熱分解炉12の下から1/3位置付近まで位置して構成するが、特に限定されない。
【0013】
ここで、熱分解炉2,12は、特に限定されるものではないが、例えば、釜式熱分解炉、流動床式熱分解炉、キルン式熱分解炉等を使用することができる。さらに、ヒーター等の外部加熱手段を使用することができる。
また、気流発生装置14は、循環流を与えるものであれば特に限定されないが、例えばファン、エアブローノズル等を使用することができる。
【0014】
このような熱分解装置を使用して、高分子系廃棄物を熱分解するには、まず第一の熱分解装置1の熱分解炉2に高分子系廃棄物を投入する。この高分子系廃棄物はそのままの状態で投入してもよいが、例えば、破砕機等で適当に破砕した後、熱分解炉2に投入することができる。
【0015】
第一の熱分解装置1では、例えば250〜600℃の温度にした熱分解炉2で投入され、0.1〜3時間の間、高分子廃棄物の熱分解を行う。第一の熱分解装置1の熱分解は、少量の未分解分を分解させることなく、高分子系廃棄物のほとんどを熱分解させて終了する。その後、熱分解炉2内に残る、高分子系廃棄物の熱分解後の炭化物を回収して、それを第二の熱分解装置11に投入して、第一熱分解装置1には新たな高分子系廃棄物を投入する。
【0016】
なお、上記炭化物は、例えば、タイヤ廃棄物を熱分解処理した場合、タイヤの骨材であるスチールコードやワイヤ等と混在しているため、炭化物回収手段として磁石、ふるい等を用いてスチールコードやワイヤ等と分離させることができる。また、炭化物は、炭化の過程で凝集した塊状部分と粉末状部分とからなるため、例えば、粉砕機等を用いた粉砕工程によって回収された炭化物を微細に壊砕し、分級機等を用いることができる。
【0017】
そして、第二の熱分解装置11では、ファン等の気流発生装置14で25〜250 m/h・mの範囲で熱分解炉12内を撹拌しながら、熱分解炉12では、例えば400〜600℃の温度で、0.1〜3時間の間、第一の熱分解装置1で熱分解した後の炭化物の熱分解を行う。
【0018】
第一の熱分解装置1に気流発生装置を設ける場合には、例えばタイヤ内のスチールコードや油分により釜内で気流を循環させるには限度があるが、本発明では第二の熱分解装置11に気流発生装置14を設けることで、第二の熱分解装置11内に投入された炭化物は主にカーボンブラックからなるため、それを強い気流で釜内気流を循環させて、均一に熱分解が進行させて、カーボンブラックの品質を向上させることできる。
【0019】
また好ましくは、高分子系廃棄物の熱分解は、高分子系廃棄物を窒素雰囲気下で250〜600℃の範囲で実行し、この範囲で熱分解を行うことで、高分子系廃棄物が、安定でかつ連続的な熱分解を行うことができる。
【符号の説明】
【0020】
1 第一の熱分解装置
2,12 熱分解炉
3,13 加熱炉
11 第二の熱分解装置
14 気流発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子系廃棄物を熱分解させるに当たり、
少なくとも二回以上の加熱工程において、二回目以降のいずれかの加熱工程で高分子系廃棄物に循環流を与えることを特徴とする高分子系廃棄物の熱分解方法。
【請求項2】
複数の熱分解炉を使って複数の加熱を施す高分子系廃棄物の熱分解装置であって、
二段目以降のいずれかの熱分解炉で気流発生装置を具えることを特徴とする高分子系廃棄物の熱分解装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−162672(P2012−162672A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24897(P2011−24897)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】