説明

高分子電解質膜・電極接合体の製造方法、および高分子電解質膜・電極接合体

【課題】良好な性能を有する芳香族炭化水素系の高分子電解質膜を使用した、信頼性や耐久性を高めた、高分子電解質膜・電極接合体を良好に製造できる方法を提供する。
【解決手段】イオン交換容量が0.4〜2.3meq/gの範囲であり、かつ、動的粘弾性により測定される軟化開始温度が110℃〜180℃の範囲にある芳香族炭化水素系高分子電解質膜を用い、熱プレス温度を前記高分子電解質膜の軟化開始温度に対して−30℃〜+30℃の範囲にすることを特徴とする熱プレスを用いる高分子電解質膜・電極接合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料電池に使用される高分子電解質・電極接合体に関するものであり、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池やダイレクトメタノール型燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有し、電源装置・エネルギーデバイスとしての開発が進んできている。その構成材料である高分子電解質膜としては、例えば米国デュポン社製ナフィオン(登録商標)に代表されるようなスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーからなる高分子電解質膜が知られている。
【0003】
しかしながら、前記のスルホン酸基を導入された構造を持つパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーからなる高分子電解質膜は、たとえばメタノール等の液体有機燃料を、燃料極側に供給して使用する場合、液体有機燃料が高分子電解質膜を透過して空気極側に流れ込んでしまうクロスオーバーという問題が顕著である。このクロスオーバーが生じると、液体燃料と酸化剤が直接反応してしまい、電力が低下してしまうという問題や、燃料利用効率の低下、さらには液体燃料が空気極側から外部に漏れ出すといった問題が発生する。
【0004】
そこでパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜に代わる高分子電解質膜として、ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレン、ポリベンザゾールなどの芳香環骨格を有するポリマーにスルホン酸基あるいはその誘導体に代表されるイオン性官能基を導入した、芳香族炭化水素系の高分子電解質膜が近年盛んに検討されている。このような芳香族炭化水素系の高分子電解質膜では、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜に比べてクロスオーバーを低減できるという報告がなされている(例として、非特許文献1)。
【0005】
高分子電解質膜の両側に、一対の触媒を含む電極、すなわちアノード電極とカソード電極を熱プレスにより接合することで、高分子高分子電解質膜・電極接合体が作製される。この際には、温度・圧力・時間をコントロールすることで、デバイス性能に悪影響のない好条件で、高分子電解質膜と電極を接合することがポイントであり、活発な検討が行われている。
【0006】
パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜を用いた熱プレスによる検討は盛んに行われており、特許文献1では、水処理を行ったナフィオン(登録商標)膜を用いて、120℃で熱プレスを施している。特許文献2では、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜を120℃〜200℃の間で熱プレスする方法が示されている。特許文献3には、フッ素系のカチオン膜を145℃で熱プレスする手法が実施例に示されている。特許文献4には、パーフルオロカーボン重合体を120℃〜200℃の範囲で熱プレスする手法が示されている。特許文献5には、パーフルオロスルホン酸基を有する膜を130℃〜165℃で加熱した後、100℃〜165℃で熱プレスする方法が示されている。特許文献6には、高分子電解質膜のガラス転移温度より30℃以上高い温度で熱プレスする手法が示されている。これらフッ素系の膜(パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜、パーフルオロカーボン重合体、パーフルオロスルホン酸基を有する膜)のガラス転移温度は、120〜130℃程度であり、このようにガラス転移温度付近あるいはそれ以上の高温で熱プレスを行うのが一般的である。
【0007】
しかしながら芳香族炭化水素系の高分子電解質膜においては電極との接合性の悪いことが指摘されており、電極と接合しにくく、かつ接合後も剥がれやすいという欠点が指摘されている。
【0008】
その問題を解決するために、芳香族炭化水素系の高分子電解質膜の熱プレスによる接合方法の検討も行われており、例えば、特許文献7で、接合力を確保する目的で電解質膜や電極を純粋やメタノールに暴露することで柔らかくした後、熱プレスする手法が示されているが、この場合熱プレス時の熱により電解質膜が収縮するため、接合体が歪んだり、電極が剥がれる欠点がある。
【0009】
【非特許文献1】Journal of Membrane Science 243(2004)317−326頁
【特許文献1】特開2005−158518号公報
【特許文献2】特開2005−108770号公報
【特許文献3】特開平6−251782号公報
【特許文献4】特開2003−36862号公報
【特許文献5】特開2004−288391号公報
【特許文献6】特開平5−343078号公報
【特許文献7】特開2003−272672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情によりなされたもので、良好な性能を有する芳香族炭化水素系の高分子電解質膜を使用した、信頼性や耐久性を高めた、高分子電解質膜・電極接合体を良好に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意検討の結果、特定のイオン交換容量と、動的粘弾性により測定される軟化開始温度の値を持つ芳香族炭化水素系の高分子電解質膜について、燃料電池用の電極等との良好な接合方法を発明した。
【0012】
本発明の具体的内容を以下に示す。
【0013】
1.イオン交換容量が0.4〜2.3meq/gの範囲であり、かつ、動的粘弾性により測定される軟化開始温度が110℃〜180℃の範囲にある芳香族炭化水素系高分子電解質膜を用い、熱プレス温度を前記高分子電解質膜の軟化開始温度に対して−30℃〜+30℃の範囲にすることを特徴とする熱プレスを用いる高分子電解質膜・電極接合体の製造方法。
【0014】
2.イオン交換容量が0.5〜1.6meq/gの範囲にある芳香族炭化水素系高分子電解質膜を用いることを特徴とする上記1に記載の高分子電解質膜・電極接合体の製造方法。
【0015】
3.熱プレス温度が芳香族炭化水素系高分子電解質膜の軟化開始温度に対して−20℃〜+20℃の範囲であることを特徴とする上記1または2に記載の高分子電解質膜・電極接合体の製造方法。
【0016】
4.上記1〜3のいずれかの製造方法により作製される高分子電解質膜・電極接合体。
【0017】
5.上記4に記載の高分子電解質膜・電極接合体において、芳香族炭化水素系高分子電解質を少なくとも一方の電極に含有することを特徴とする高分子電解質膜・電極接合体。
【発明の効果】
【0018】
特定の範囲のイオン交換容量と軟化開始温度を持つ芳香族炭化水素系の高分子電解質膜において、良好な電極との接合性を持つ高分子電解質膜・電極接合体を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明における芳香族炭化水素系の高分子電解質膜に使用されるポリマーは、ポリマー主鎖に少なくとも芳香族あるいは芳香環を有する構造を持つ非フッ素系のプロトン伝導性ポリマーであり、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン、ポリアリーレンエーテル、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、少なくとも1種以上のイオン性官能基が導入されているポリマーが挙げられる。イオン性官能基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、およびそれらの誘導体の少なくとも1種以上が挙げられる。スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボシキル基、リン酸基などのプロトン解離性を有するイオン性官能基が直接ポリマーに結合していることで、ポリマーのプロトン伝導性が発現されることが高分子電解質として重要な特性である。この中で特に燃料電池用途に優れたイオン性官能基は、スルホン酸基およびその誘導体である。また、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。また側鎖を有するなど枝分かれ構造を取っていても良く、例えば側鎖にスルホン酸基およびその誘導体が結合されたものは好ましい例である。これらの芳香族炭化水素系の高分子電解質を膜状に成形した高分子電解質膜においては、芳香環を含むことによって熱的・化学的な耐性が高く、かつクロスオーバーが少ない特徴を有しており、本発明における高分子電解質膜として好ましい。
【0021】
また上記の高分子電解質以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記ポリマー以外の構造単位は50重量%以下であることが好ましい。50質量%以下とすることにより、ポリマーの特性を活かすことができる。
【0022】
さらに上記ポリマーには架橋を可能とする成分が含まれていても良く、任意の段階で架橋することも可能である。架橋方法としては、熱架橋、ラジカル架橋、放射線架橋など公知の方法を取ることもできる。また酸化防止剤、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、熱安定剤、静電気防止剤、消泡剤、抗菌剤、粘度調整剤、重合禁止剤、分散剤、ラジカル防止剤、シリカ粒子やアルミナ粒子やチタニア粒子やホスホタングステン酸粒子、リン酸ジルコニウム粒子やそれらの誘導体などの無機化合物、無機―有機のハイブリッド化合物、イオン性液体などの各種添加剤を含んでいても良い。
【0023】
本発明の芳香族炭化水素系の高分子電解質膜としては、イオン交換容量が0.4〜2.3meq/gの範囲にあることが好ましい。0.4meq/gよりも少ない場合には、十分なプロトン伝導性を示さない傾向があると共に電極との接合性が悪化し、本発明の接合条件においても電極との良好な接着性を維持することはできない。一方2.3meq/gよりも大きい場合においては、高分子電解質膜としてのプロトン伝導性は良好であり、電極との接合性は改善される傾向にあるので、本発明の手法によらなくても熱プレスにより接合できる可能性がある。しなしながらポリマーの特性として、膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。その傾向はメタノール等の有機燃料を使用する燃料電池において特に顕著となる。より好ましくは0.5〜1.6meq/gであり、この範囲のイオン交換容量の芳香族炭化水素系の高分子電解質膜においては、本発明の接合方法は特に効果的である。なお、イオン交換容量はポリマー組成より計算することもできるし、滴定により実測することも可能である。
【0024】
なお高分子電解質膜がプロトン伝導性を示すためには、イオン性官能基には酸型のイオン性官能基が含有されることが重要であり、ナトリウム塩やカリウム塩やリチウム塩などの塩型のイオン性官能基のみから形成されている場合プロトン伝導性を示さない傾向にある。酸型のイオン性官能基への変換率としては70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、最適には90%以上である。
【0025】
また、本発明の製造方法を適用するためには、上記高分子電解質膜の特性として、動的粘弾性測定により求まる高分子電解質膜の軟化開始温度が、110℃〜180℃の範囲と芳香族炭化水素系の高分子電解質膜としては低い値にあることが重要である。軟化開始温度が110℃よりも低い場合、前記のイオン交換容量を持つ芳香族炭化水素系の高分子電解質膜の特性を引き出すことが困難であり、一方軟化開始温度が180℃よりも高い場合、本発明による接合方法によっても、電極との接合を上手く保つことが困難である。軟化開始温度が120℃〜170℃の範囲にある場合、より好ましく本発明の製造方法は適用可能であり、最適には130℃〜160℃の範囲である。
【0026】
本発明においては、高分子電解質膜と触媒を含む電極と重ねる工程を経た後、上記芳香族炭化水素系の高分子電解質膜の軟化開始温度に対して、−30℃〜+30℃の範囲で熱プレスすることで一体化することによって、高分子電解質膜と電極とを良好な状態で接合することが可能である。−30℃よりも低い場合は、電極と電解質膜の界面の抵抗が大きく、燃料電池とした時に抵抗が高いので上手く発電することが難しく、一方+30℃よりも高い温度で接合した場合は、短絡が発生したり、接合温度が低すぎる場合と同様に抵抗が高くなるため上手く発電することが困難である。より好ましくは−20℃〜+20℃の範囲である。接合温度が高すぎる際に電池抵抗が大きくなる理由については、高分子電解質膜の軟化温度以上の温度がかかるために、高次構造が変化することが原因と推定される。またその際膜の軟化が進むので、場合により電極の一部が高分子電解質膜を突き抜け、短絡などが発生するものと考えられる。
【0027】
なお、高分子電解質膜を純水やアルコール溶液に浸積するなどの方法により軟化させると熱プレスによる接合は容易となるが、その場合熱による溶媒の蒸発が起こるので、熱プレス後の高分子電解質膜・電極接合体は変形したり、歪みによって電極が剥がれやすいという問題がある。歪みは電極の外周部で特に顕著に観察される。本発明によると、そのような溶媒による処理をせずとも良好な接合体を作製可能な点で優れており、外観に歪みの無い接合体を提供可能である。
【0028】
ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーからなる高分子電解質膜においては、動的粘弾性測定をした際に得られる軟化開始温度ではなく、ガラス転移温度近傍で熱プレスにより電極と接合すると、特に良好に接合できるという特徴を持つので、本発明とは異なった条件で接合体が形成される。ポリマーの軟化開始温度の方が、ガラス転移温度よりも大幅に低い。本発明の芳香族炭化水素系の高分子電解質膜を用いる熱プレス条件としては、ガラス転移温度では無く、軟化開始温度近傍で接合することが特に重要である。パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー同様にガラス転移温度近傍で本発明の高分子電解質膜を熱プレスする場合、電極の短絡などが頻繁に観察され、良好な高分子電解質膜・電極接合体とすることが困難である。
【0029】
次に、本発明の高分子電解質膜の合成方法について詳細に説明する。前述の芳香族炭化水素系の高分子電解質膜においては、プロトン解離性のイオン性官能基を有することが重要である。イオン性官能基として特に良好に働く、スルホン酸基あるいはその誘導体を持つものは、公知の方法で合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン、ポリアリーレンエーテル、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含む骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族系炭化水素系ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。本発明のプロトン伝導性ポリマー、特にプロトン伝導性がスルホン酸基によって発現されるポリマーを得るためには、これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
【0030】
また、上記芳香族炭化水素系の高分子電解質は、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種にイオン性官能基を含むモノマーを用いて合成することもできると共に、この方法を適用する方がポリマー中のイオン性官能基量を制御しやすいので好ましい。イオン性官能基は主鎖に結合していても、側鎖に結合していても良い。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にイオン性官能基を含有するジアミンを用いてイオン性官能基含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することによりイオン性官能基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られたイオン性官能基含有ポリマーの熱安定性が高くなるので好ましいと言える。スルホン酸基を含有するジハライドモノマー中のジハライドの置換位置により主鎖あるいは側鎖にスルホン酸基を結合させるなどスルホン酸基の部位を制御することもできる。
【0031】
本発明における芳香族炭化水素系の高分子電解質は、スルホン酸基あるいはその誘導体を含有するポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物やスルホン酸基あるいはその誘導体を含有するポリアリーレン系化合物であることがより好ましい。
【0032】
さらに、これらのポリアリーレンエーテル系化合物のうち、下記一般式(1)で示される構成成分を含むものが特に好ましい。
【0033】
【化1】

【0034】
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは/および1価のカチオン種、Zは芳香環を結合する任意の結合様式が選択されるが、直接結合、エーテル結合または/およびチオエーテル結合(OまたはS)が好ましい。さらにZはエーテル結合である方が好ましい。
【0035】
さらに、下記一般式(2)で示される構成成分を含むものはより好ましい。
【0036】
【化2】

【0037】
ただし、Ar’は2価の芳香族基、Zは芳香環を結合する任意の結合様式が選択されるが、直接結合、エーテル結合または/およびチオエーテル結合(OまたはS)が好ましい。さらにZはエーテル結合である方が好ましい。
【0038】
上記一般式(2)で示される構成成分は、下記一般式(3)で示される構成成分であることが好ましい。
【0039】
【化3】

【0040】
ただし、Ar’は2価の芳香族基、Zは芳香環を結合する任意の結合様式が選択されるが、直接結合、エーテル結合または/およびチオエーテル結合(OまたはS)が好ましい。さらにZはエーテル結合である方が好ましい。
【0041】
また、上記のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物においても上記一般式(1)および一般式(2)で示される以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(1)または一般式(2)で示される以外の構造単位はスルホン酸を導入したポリアリーレンエーテルの50重量%以下であることが好ましい。50重量%以下とすることにより、スルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物の特性を活かすことができる。
【0042】
またスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、下記一般式(4)および一般式(5)で表される化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応により重合することができる。一般式(4)で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(5)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。
【0043】
【化4】

【0044】
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、Xは1価のカチオン種、Wは塩素またはフッ素を示す。本発明において、上記2,6−ジクロロベンゾニトリルおよび2,4−ジクロロベンゾニトリルは、異性体の関係にあり、いずれを用いたとしても良好なプロトン伝導性、耐熱性、加工性および寸法安定性を達成することができる。その理由としては両モノマーとも反応性に優れるとともに、小さな繰り返し単位を構成することで分子全体の構造をより硬いものとしていると考えられている。
【0045】
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(4)、(5)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
【0046】
また、上述の一般式(1)で表される構成成分中のArおよび上述の一般式(2)や(3)で表される構成成分中のAr’は、一般には芳香族求核置換重合において上述の一般式(4)、(5)で表される化合物とともに使用されるモノマーより導入される構造である。例えば芳香族ジオール成分モノマーより導入される構造である。このような芳香族ジオールモノマーの例としては、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマー、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、4,4’−ビフェニルジチオール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−1,4−ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3−ベンゼン、等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。また、これらの芳香族ジオールには、炭素数1〜30の範囲のアルキル基、フェニル基などの芳香族系の置換基、ハロゲン、シアノ基、スルホン酸基およびその塩化合物などの置換基が結合していても良い。アルキル基や芳香族系の置換基にハロゲン、シアノ基、スルホン酸基などの置換基が結合していても良い。置換基の種類は特に限定されることはなく、芳香環あたり0〜2個であることが好ましい。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができるが、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
【0047】
スルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物を芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(4)および一般式(5)で表せる化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物および/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。
【0048】
重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。
【0049】
芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜40重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、40重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。残留物の除去は、濾過により行うこともできる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
【0050】
また、本発明の芳香族炭化水素系の高分子電解質は、ポリマー対数粘度が0.1以上であることが好ましい。対数粘度が0.1よりも小さいと、高分子電解質膜として成形したときにでも膜が脆くなりやすくなる。還元比粘度は、0.3以上であることがさらに好ましい。一方、還元比粘度が5を超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
【0051】
以上に示した芳香族炭化水素系の高分子電解質を、押し出し、圧延またはキャストなど任意の方法で高分子電解質膜とすることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。この溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノール等のアルコール類や、エーテル類、ケトン類または、それらと水の混合溶媒から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中の化合物濃度は0.1〜50重量%の範囲であることが好ましい。溶液中の化合物濃度が0.1重量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50重量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。高分子電解質膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去して高分子電解質膜を得ることができる。溶媒の除去は、乾燥によることが高分子電解質膜の均一性の観点からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。
【0052】
キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜2500μmであることが好ましい。より好ましくは50〜1500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いと高分子電解質膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、2500μmよりも厚いと不均一な高分子電解質膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な高分子電解質膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温で行い、後に昇温させる方法がある。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。高分子電解質膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、プロトン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には3〜200μmであることが好ましく、5〜150μmであることがさらに好ましい。高分子電解質膜の厚みが3μmより薄いと高分子電解質膜の取扱が困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、200μmよりも厚いと高分子電解質膜が頑丈となりすぎ、ハンドリングが難しくなる傾向にある。厚み斑は小さい方が好ましい。
【0053】
最終的に得られた高分子電解質膜を使用する場合、膜中のイオン性官能基は一部金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸処理により酸型のものに変換した形が好ましい。この際、高分子電解質膜のプロトン伝導率は0.5×10-3S/cm以上であることが好ましい。プロトン伝導率が0.5×10-3S/cm以上である場合には、その高分子電解質膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、0.5×10-3S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。酸型ポリマーへの変換率としては70%以上であることが好ましく、最適には90%以上である。また膜抵抗としては、0.02Ω・cm2〜0.5Ω・cm2の範囲にあることが好ましく、0.02Ω・cm2よりも小さい場合には、膜が薄くなりすぎて、短絡しやすいという問題があり、0.5Ω・cm2よりも大きいと燃料電池とした際に抵抗が大きくなる傾向にある。より好ましくは、0.05Ω・cm2〜0.3Ω・cm2の範囲である。
【0054】
酸処理用の酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、などの水溶液を良好に用いることができる。酸処理により必要に応じてナトリウム塩やカリウム塩やリチウム塩などをプロトンに変換した後は、余分な酸や不純物を洗浄することが好まれる。洗浄にはイオン交換水や超純水など塩成分がなるべく少ないものが好ましい。なお薄い濃度の酸や塩や有機溶媒が含まれていてもかまわない。さらに乾燥させて保存することも可能である。
【0055】
なお、ダイレクトメタノール型燃料電池用途を考える場合、メタノールクロスオーバーを防ぐ意味では、メタノール透過速度として、0.01〜3.0mmol/m2/sの範囲にあることが好ましく、より好適には、2.0mmol/m2/sよりも小さいことが望ましい。
【0056】
また同様にメタノールのクロスオーバーを低減させる目的で、メタノール透過係数としては、0.5μmol/m/sよりも小さいことが好ましく、より好適には0.35μmol/m/sよりも小さいことが望ましい。
【0057】
また必要に応じて高分子電解質膜の表面をリソグラフやサンドブラストなどの手法によって凹凸を形成したり、表面に樹脂や無機層をコーティングするなどの手法も併用することが可能である。両者を併用することもできる。
【0058】
このような高分子電解質膜の両面に本発明の手法により電極を接合することによって、良好な高分子電解質膜と電極の接合体を得ることができる。ここで言う電極とは、少なくとも燃料電池に使用可能な触媒を含有する構造体のことを示しており、公知のものが使用可能である。ここで電極に使用される触媒の種類やガス拡散層の種類なども特に限定されるものではなく、公知のものが使用でき、また公知の技術を組み合わせたものも使用できる。電極には、触媒とプロトン伝導性樹脂(高分子電解質)を少なくとも含有すること一般的であるが、プロトン伝導性樹脂を含有せずとも電極を形成することも可能である。
【0059】
電極に使用する触媒としては耐酸性と触媒活性の観点から適宜選出できるが、白金族系金属およびこれらの合金や酸化物が特に好ましい。例えばカソードに白金または、白金コバルト、白金イリジウムコバルトなどの白金系合金,アノードに白金または白金系合金や白金とルテニウムを含む合金を使用すると高効率発電に適している。複数の種類の触媒を使用していても良く、分布があっても良い。これらの触媒微粒子は活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンなどに代表される担体に担持されているものを用いるのも可能であるし、触媒そのものを使用することもできる。カーボン系の担体としては、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンなどのナノカーボン材料に担持されていても良好に使用することができる。触媒の粒径としては、直径0.5nm〜10nm程度の粒径の物を使用できるが、特に1.5〜4nmの粒径のものが触媒活性の面から好ましい。
【0060】
電極の作製方法としては、上記触媒とプロトン伝導性を有する樹脂を含む溶液を混合することによって、触媒インクを調整した後、成形する方法が一般的である。触媒インクの調整方法としては特に制限されるものではなく公知の技術を使用することができる。さらに添加剤を含んでいても良く、フッ素系結着剤やポリプロピレンやポリエチレンなどに代表される疎水性化合物を混在させると電極とした時にガスの通り道が多く好ましい傾向にある。プロトン伝導性樹脂としては、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーや、本発明で示した芳香族炭化水素系の高分子電解質を少なくとも含む樹脂を利用することができるが、芳香族炭化水素系の高分子電解質を含む樹脂が、特に優れている。芳香族炭化水素系の高分子電解質を、電極と高分子電解質膜に含むことで、特に接合性を良好に保つことが可能であると推測している。
【0061】
触媒インクをフィルムあるいはカーボンペーパーやカーボンクロス等に代表されるガス拡散層の上に塗布・乾燥することによって展開することで電極を作製することが可能である。この電極を本発明の手法により芳香族炭化水素系の高分子電解質膜に接合することにより、良好な接合体の作製が可能である。フィルムの上に展開後、接合する方法は一般的にデカール法と呼ばれており、その場合、接合後にフィルムを剥がし、その上にガス拡散層を設置あるいはさらに接着するする方法が取られる。いずれの場合にせよ、触媒を含有する層を高分子電解質膜と接合する際に、本発明による接合方法が有効である。
【0062】
高分子電解質膜と電極の接合体を燃料電池に組み込むことによって良好な性能を有する燃料電池を提供できる。燃料電池に使用されるセパレータの種類や、空気に代表される酸化ガスの流速・供給方法・流路の構造などや、水素やメタノールなど燃料の種類、運転方法、運転条件、温度分布、燃料電池の制御方法などは特に限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
【0064】
<高分子電解質膜の膜厚>
高分子電解質膜の厚みは、市販のマイクロメーター(Mitutoyo マイクロメーター 0.001mm)を用いて測定することにより求めた。室温が20℃で湿度が40±5RH%にコントロールされた測定室内で24時間以上静置した電解質膜を5×5cmの大きさに切断したサンプルに対して、20箇所の厚みを測定し、その平均値を膜厚とした。
【0065】
<イオン交換容量(酸型)>
イオン交換容量(IEC)としては、高分子電解質膜に存在する酸型のイオン性官能基量を測定した。まずサンプル調整として、サンプル片(5×5cm)を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらにシリカゲルを充填したデシケータ中で30分間放置冷却した後、乾燥重量を測定した(Ws)。次いで、200mlの密閉型のガラス瓶に、200mlの1mol/l塩化ナトリウム−超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉したまま、室温で24時間攪拌した。次いで、溶液30mlを取り出し、10mMの水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IECを求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:ml Wsの単位:g)
【0066】
<動的粘弾性(軟化開始温度の測定)>
高分子電解質膜の軟化開始温度は次のようにして測定した。幅5mmの短冊状の試料をユービーエム社製動的粘弾性測定装置(型式名:Rheogel−E4000)にチャック間距離14mmとなるようにセットし、乾燥窒素気流下で試料を4時間乾燥させた後、引っ張りモードで周波数10Hz、歪み0.7%、窒素気流中、測定温度25℃〜250℃まで、昇温速度2℃/分で温度を上昇させながら貯蔵弾性率(E‘)と損失弾性率(E“)を求め、次式よりTan−δを求めた。2℃毎の測定ステップで測定した。
Tan−δ=E“/E‘
温度上昇を開始しても、Tan−δの変化は小さいが、一定温度を超えるとTan−δが急激に立ち上がり、その後ピークを示す凸型のカーブを描く。この測定においてTan−δの立ち上がり温度を軟化開始温度と定義し、Tan−δのピークをガラス転移温度とした。具体的なTan−δの立ち上がり温度は、縦軸にTan−δを対数目盛りでプロットし、横軸に温度をプロットした図において、Tan−δ立ち上がり前のプラトー領域の接線と、立ち上がり後に傾きが直線となる部分の接線とが交わる温度とした(測定例として図1〜3)。
【0067】
<プロトン伝導率>
自作測定用プローブ(テフロン(登録商標)製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、恒温槽に満たした25℃の超純水中に試料を1時間保持した。次いで白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした伝導率を算出した。なお測定前に短冊状の試料は前処理として25℃に調整した超純水中に24時間±2時間浸積している。
伝導率[S/cm]=1/(膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm])
なお、プロトン伝導率と、膜厚より、膜抵抗が算出できる。
膜抵抗[Ω・cm2]=膜厚[cm]×1/プロトン伝導率[S/cm]
【0068】
<メタノール透過速度およびメタノール透過係数>
高分子電解質膜のメタノール透過速度およびメタノール透過係数は、以下の方法で測定した。25℃に調整した15%のメタノール水溶液(メタノール水溶液の調整には、市販の試薬特級グレードのメタノールと超純水(18MΩ・cm)を使用。)に24時間浸漬した高分子電解質膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの15%のメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、高分子電解質膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフにより測定することで算出した(高分子電解質膜の面積は、2.0cm2)。なお具体的には、超純水を入れたセルのメタノール濃度変化速度[Ct](mmol/l/s)より以下の式を用いて算出した。
メタノール透過速度[mmol/m2/s]=(Ct[mmol/l/s]× 0.1[l])/2×10-4[m2
メタノール透過係数[μmol/m/s]=メタノール透過速度[mmol/m2/s]×膜厚[m]×1000
【0069】
<発電試験による電池抵抗測定>
芳香族炭化水素系の高分子電解質を8重量%含む溶液7.5ml(詳しい調整方法は後述)に、市販の54%白金/ルテニウム触媒担持カーボン2gと、少量の超純水およびイソプロパノールを加え、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1.7mg/cm2になるようにアプリケーターを用いて均一に塗布・乾燥して、芳香族炭化水素系の高分子電解質を含むアノード用の触媒層付きガス拡散層(アノード電極)を作製した。また、同様の手法で、白金/ルテニウム触媒担持カーボンに替えて市販の40%白金触媒担持カーボンを用いて、別途疎水化した前記カーボンペーパー上に電極触媒層を形成することで、カソード用の触媒層付きガス拡散層(カソード電極)を作製した(ただし、芳香族炭化水素系の高分子電解質に変えて市販の20%ナフィオン(登録商標)溶液を使用。ナフィオン20%溶液と40%白金触媒担持カーボンの混合比は、重量比で3.75:2。1.1mg−白金/cm2)。上記2種類の電極の間に、高分子電解質膜を、電極の触媒面が膜に接するように挟んだ後、熱プレスにより加圧、加熱することにより、高分子電解質膜と電極との接合体を作製した(熱プレス条件については、後述)。この接合体を市販のガスケットにはさみこんだのち、自作の評価用燃料電池セルに組み込んでセル温度40℃で、アノードに40℃の濃度2mol/lのメタノール水溶液を、カソードに乾燥空気をそれぞれ供給しながら、電流密度50mA/cm2で放電試験を行った際の電池抵抗を調べた。測定は、発電開始後、24時間後の値を代表値として評価した。電池抵抗は電流遮断法により測定した。なお電池抵抗が大きく50mA/cm2の電流を流せない場合は、流すことのできる最大電流値において電池抵抗を測定した。
【0070】
芳香族炭化水素系の高分子電解質の合成
<ポリマーA>
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)0.014mol、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)0.036mol、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマー(略号:DPE)(大日本インキ製SPECIANOL DPE−PL、ロットC106)(フェニレンエーテルモノマーの繰り返し単位として、n=1〜7の成分を含む混合物。平均組成はn=4.0)0.05mol、炭酸カリウム0.065mol、乾燥したモレキュラーシーブ12gを200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。100mlのN−メチル−2−ピロリドンを入れて、加熱撹拌し、反応温度を195〜200℃に上昇させて11時間反応させた。放冷の後、重合液を水中に注いでポリマーをストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。
【0071】
<ポリマーB>
S−DCDPS0.012mol、DCBN0.068mol、4,4’−ビフェノール(略号:BP)0.02mol、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(略号:BPS)0.06mol、炭酸カリウム0.087mol、乾燥したモレキュラーシーブ3−A12gを200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。100mlのN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)を入れて、150℃で30分撹拌した後、反応温度を195−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約9時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。
【0072】
<ポリマーC>
S−DCDPS0.012mol、DCBN0.063mol、BP0.01875mol、 BPS0.05625mol、炭酸カリウム0.083mol、乾燥したモレキュラーシーブ3−A12gを200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。100mlのN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)を入れて、150℃で30分撹拌した後、反応温度を195−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約9時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。
【0073】
<ポリマーD>
S−DCDPS0.012mol、DCBN0.068mol、BP0.080mol、炭酸カリウム0.087mol、乾燥したモレキュラーシーブ3−A12gを200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。100mlのN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)を入れて、150℃で30分撹拌した後、反応温度を195−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約8時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。
【0074】
<ポリマーE>
S−DCDPS0.035mol、DCBN0.04437mol、BP0.07937mol、炭酸カリウム0.087mol、乾燥したモレキュラーシーブ3−A12gを200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。100mlのN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)を入れて、150℃で30分撹拌した後、反応温度を195−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約12時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。
【0075】
高分子電解質膜の作製
ポリマー10gをNMP40gに溶解し、ホットプレート上に置いたガラス板にドクターブレードを用いて均一にキャストした。次いで80℃で1時間、120℃で0.5時間、150℃で0.5時間ホットプレートにより加熱し、NMPを除去した。その後さらに窒素雰囲気の150℃のオーブン中で2時間乾燥し、ガラス板からフィルムを剥離した。得られたフィルムは室温の純水に1日浸漬した後、2mol/lの硫酸水溶液に2時間浸漬した。その後、洗浄水が中性になるまでフィルムをイオン交換水で洗浄し、空気中に放置して乾燥して、ポリマーA〜Eを用いた高分子電解質膜A〜Eをそれぞれ得た。得られた高分子電解質膜について評価を行った結果を表1に示す。なお比較のために、市販のナフィオン(登録商標)117膜(DuPont製)の膜物性も高分子電解質膜Fとして表1に示す。
【0076】
芳香族炭化水素系高分子電解質含有溶液の作製
表1の高分子電解質膜Eをハサミで細かく切ったものに、水と1,2−ジメトキシエタンの混合溶媒(水12重量%)を加えて混合撹拌することによって、溶解(あるいは分散)させ、8重量%高分子電解質Eを含有する溶液を作製し、アノードの作製に用いた。
【0077】
【表1】

【0078】
高分子電解質膜A〜Cの動的粘弾性測定結果を図1〜3に示す。図中に示している接線の交点から軟化開始温度を算出した。高分子電解質膜DおよびEに関しては250℃以下の範囲でTan−δの値がほぼ一定であり、軟化開始温度を示さなかった。
【0079】
表1の各種高分子電解質膜の物性を比較すると、芳香族炭化水素系の高分子電解質を使用して作製した高分子電解質膜A〜Eは、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーからなる高分子電解質膜F膜と同等以下の膜抵抗を有しており、プロトン伝導性が良好であり、かつメタノール透過速度が小さく特性的に優れた性能であることは明らかである。また特に高分子電解質膜A〜Dで良好な性能を有していることが分かる。高分子電解質膜DとEは共重合比が違うのみの類似構造を有する高分子電解質膜であるが、物性的には差が見られる。この違いが生じる大きな原因は、イオン交換容量の違いであり、イオン交換容量が比較的大きい高分子電解質膜Eでは、膜の膨潤が大きいので、メタノールを幾分透過しやすい構造となる。従って、芳香族炭化水素系の高分子電解質膜において比較する際には、イオン交換容量が小さなA〜Dの膜で特に優れた性能を有する。
【0080】
次に高分子電解質膜A〜Eについて熱プレスにより電極と接合することで、高分子電解質膜・電極接合体を作製した。高分子電解質膜は、25℃の室内で保管したものを用いた。熱プレス時の圧力は、3.43MPa、プレス時間は3分と一定条件で実施し、プレス温度のみ変更した。熱プレス後の接合体を用いて発電試験を実施した。熱プレス温度と電池抵抗の関係をまとめた結果を表2の実施例1〜6および比較例1〜10に示す。また、高分子電解質膜DとEに関しては、接合性が非常に悪かったため、膜を軟化させる目的で25℃の純水に1時間浸積後取り出し、すぐに熱プレスを行うことも検討した。この結果を表2の比較例11および12に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
種々の温度で熱プレスして作製した高分子電解質膜・電極接合体の比較より、表1に示した軟化開始温度が110℃〜180℃の範囲にある芳香族炭化水素系の高分子電解質膜に対して軟化開始温度の−30℃〜+30℃の範囲で熱プレスを行う本発明の高分子電解質膜・電極接合体の製造方法を適用すると、電池抵抗が小さい、燃料電池として電極と高分子電解質膜が良好に接合された、高分子電解質膜・電極接合体を作製することが確認できる(実施例1〜6)。
【0083】
軟化開始温度が190℃である高分子電解質膜Cについては、軟化開始温度近辺で熱プレスを行っても、幾分電池抵抗の高い接合体しか得られないことが分かるし(比較例5)より温度を上げた場合さらに抵抗が高くなるという挙動を示した(比較例6)。
【0084】
高分子電解質膜AおよびBの熱プレスにおいて、熱プレス温度が−30℃よりも低いと、電池抵抗が大きく、良好な接合体となっていないことが分かる(比較例1、比較例3)。一方熱プレス温度+30℃よりも高いと、電池短絡が観察されたり、電池抵抗が大きいという問題が観察された(比較例2、4)。比較例2で用いられる高分子電解質膜Aのガラス転移温度は、ほぼ190℃であることを踏まえると、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーで一般に実施される、ガラス転移温度付近で熱プレスするという方法を適用すると比較例2で分かるように良好な接合体を作製できていない。
【0085】
250℃以下の温度で軟化開始温度を示さない高分子電解質膜DとEについては、熱プレス温度を広い範囲で変更したが、電極の剥がれが観察され、良好な高分子電解質膜・電極接合体を作製できなかった(比較例7〜10)。
【0086】
高分子電解質膜Dを純水に浸積し柔らかくした後熱プレスを行った結果、高分子電解質膜・電極接合体を作製できたが、電池抵抗が非常に大きく、燃料電池としての良い性能は得られなかった(比較例11)。この高分子電解質膜Dは、芳香族炭化水素系の高分子電解質膜として特に良好な性能を有することが表1から分かるが、高分子電解質膜Dのように、イオン交換容量の比較的小さい高分子電解質膜ほど、熱プレスにより接合体を作ることが難しい傾向がある。
【0087】
一方、高分子電解質膜Eについては、純水に浸積し柔らかくした後熱プレスを行うことで、電池抵抗としては小さい値が得られたが、熱プレス時の純水の蒸発に伴う膜の収縮によって、接合体は歪んでおり、取扱い性が著しく悪いものであった(比較例12)。高分子電解質膜EはDと類似構造を有しているが、イオン交換容量が高いために、湿潤などにより電極と接合することは可能である。しかしながら、膨潤しやすいために、芳香族炭化水素系の高分子電解質膜としては、高分子電解質膜Dよりも性能に劣るものである。
【0088】
実施例2、実施例4および比較例11の高分子電解質膜・電極接合体、および高分子電解質膜Fを用いて作製した高分子電解質膜・電極接合体(比較例13)を使った燃料電池の電流−電力曲線を図4に示す。実施例の高分子電解質膜・電極接合体を用いた燃料電池は、比較例に比べて良好な特性を示すことは明らかである。なおパーフルオロカーボンスルホン酸膜からなる高分子電解質膜Fについては、ガラス転移温度とほぼ一致する130℃熱プレスにより電極との接合性は良好な高分子電荷質膜・電極接合体が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の製造方法を適用することにより、優れた特性を有する芳香族炭化水素系の高分子電解質膜を用いた、高分子電解質膜・電極接合体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】高分子電解質膜Aの動的粘弾性測定結果を示したものである。
【図2】高分子電解質膜Bの動的粘弾性測定結果を示したものである。
【図3】高分子電解質膜Cの動的粘弾性測定結果を示したものである。
【図4】実施例および比較例の高分子電解質膜・電極接合体を使った燃料電池の電流−電力曲線を示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換容量が0.4〜2.3meq/gの範囲であり、かつ、動的粘弾性により測定される軟化開始温度が110℃〜180℃の範囲にある芳香族炭化水素系高分子電解質膜を用い、熱プレス温度を前記高分子電解質膜の軟化開始温度に対して−30℃〜+30℃の範囲にすることを特徴とする熱プレスを用いる高分子電解質膜・電極接合体の製造方法。
【請求項2】
イオン交換容量が0.5〜1.6meq/gの範囲にある芳香族炭化水素系高分子電解質膜を用いることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質膜・電極接合体の製造方法。
【請求項3】
熱プレス温度が芳香族炭化水素系高分子電解質膜の軟化開始温度に対して−20℃〜+20℃の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子電解質膜・電極接合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの製造方法により作製される高分子電解質膜・電極接合体。
【請求項5】
請求項4に記載の高分子電解質膜・電極接合体において、芳香族炭化水素系高分子電解質を少なくとも一方の電極に含有することを特徴とする高分子電解質膜・電極接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−149592(P2007−149592A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345521(P2005−345521)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】