説明

高効率タンパク質発現の分泌タンパク質バイオマーカー

本発明は、タンパク質生産の分野に関し、詳細には、宿主細胞において発現される組換えタンパク質の生産レベルを向上させるための組成物および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年11月9日出願の米国仮出願番号第61/259,527号および2010年11月8日出願の米国特許出願第12/941,347号の利益を主張するものであり、前記仮出願および出願は、これら全体が参照により本明細書に援用されている。
【0002】
本発明は、タンパク質生産の分野に関し、詳細には、宿主細胞において発現されるタンパク質の生産レベルを向上させるための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオ医薬品用の組換えタンパク質の生産は、通常様々なタンパク質発現効率を有する細胞培養物の使用を含む。遺伝子マッピング、バイオイメージングおよび網羅的プロテオーム解析のための技術の進歩は、組換えタンパク質の大規模生産のための細胞培養物の使用に関連した障害の多くを理解する又とない機会をもたらす。論文審査のある専門誌での発表(Gupta,P.and K.H.Lee(2007),「Genomics and proteomics in process development:opportunities and challenges」Trends Biotechnol 25(7):324−30)ばかりでなく、最近の学会(IBC−Antibody Dvelopment and Production、サンディエゴ、2008年3月12日から14日)での非常に多くの発表が、バイオ医薬品業界におけるこのような技術の有用性を物語っている。これらの研究の多くについての目的が、細胞生産性の向上、細胞培養の生存および増殖の改善、ならびに高生産性細胞系統の選択のための迅速で信頼性の高い技術ならびに細胞の生存度および生理のリアルタイム監視の導入を含む。
【0004】
上記の進歩に鑑みても、当該技術分野において、特に、商業生産組換えバイオ治療薬に用いるための細胞培養法に関連して、高効率タンパク質発現と相関するバイオマーカーの同定が依然として要求されている。本発明は、高効率タンパク質発現と相関する分泌タンパク質バイオマーカーを提供することによりこの要求に対処する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Gupta,P.and K.H.Lee(2007),「Genomics and proteomics in process development:opportunities and challenges」Trends Biotechnol 25(7):324−30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高効率タンパク質発現と相関する分泌タンパク質バイオマーカー、ならびに宿主細胞における高効率タンパク質発現、特に組換えタンパク質発現を容易にするためのこのようなバイオマーカーの使用方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一定の実施形態において、分泌タンパク質バイオマーカーは、小胞体画分内在性タンパク質である。一定の実施形態において、分泌タンパク質バイオマーカーは、ゴルジ画分内在性タンパク質である。一定の実施形態において、分泌タンパク質バイオマーカーは、全細胞画分から誘導される。一定の実施形態において、分泌タンパク質バイオマーカーは、高効率細胞または細胞培養物においてアップレギュレートされる。一定の実施形態において、分泌タンパク質バイオマーカーは、高効率細胞または細胞培養物においてダウンレギュレートされる。
【0008】
本発明の一定の実施形態では、分泌タンパク質バイオマーカーを利用して、高効率細胞または細胞培養物を同定する。一定の実施形態では、多数の分泌タンパク質バイオマーカーを利用して、高効率細胞または細胞培養物を同定する。一定の実施形態では、分泌タンパク質バイオマーカーのアップレギュレートを利用して、高効率細胞または細胞培養物を同定する。一定の実施形態では、分泌タンパク質バイオマーカーのダウンレギュレートを利用して、高効率細胞または細胞培養物を同定する。多数の分泌タンパク質バイオマーカーを利用して高効率細胞または細胞培養物を同定する一定の実施形態では、分泌タンパク質バイオマーカーのすべてがアップレギュレートされる。多数の分泌タンパク質バイオマーカーを伴う他の実施形態では、分泌タンパク質バイオマーカーのすべてがダウンレギュレートされる。多数の分泌タンパク質バイオマーカーを伴うさらなる実施形態では、分泌タンパク質バイオマーカーの1つ以上がアップレギュレートされるが、該分泌タンパク質バイオマーカーの1つ以上はダウンレギュレートされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】開発バイオリアクターにおける産物力価に対する異なる細胞培養処理の効果を示す(IVC=生細胞密度の積分、Qp=比生産性)。
【図2】精製されたERおよびゴルジ画分の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
【図3】分画ERおよびゴルジサンプルに対する全細胞溶解産物の2Dゲル電気泳動を示す。
【図4−1】2Dゲルから切り出した差次的に発現されたタンパク質スポットを同定するための質量分析法ワークフロー図を示す。
【図4−2】2Dゲルから切り出した差次的に発現されたタンパク質スポットを同定するための質量分析法ワークフロー図を示す。
【図5】セクション2.2において説明する細胞系統1の培養工程中に得られた産物力価、比生産性(q)および生細胞密度の積分(IVC)の相対値(培養物1/培養物2)を示す。
【図6】セクション2.2において説明する細胞系統1の培養工程から第5、8および11日に採取した小胞体濃縮画分サンプルに関して−0.4未満または0.4超に分類されるタンパク質の数(y軸)に対して相対発現(x軸)を示す。
【図7】セクション2.2において説明する細胞系統1の培養工程から第5、8および11日に採取したゴルジ濃縮画分サンプルに関して−0.4未満または0.4超に分類されるタンパク質の数(y軸)に対して相対発現(x軸)を示す。
【図8】セクション2.3において説明する細胞系統2の培養工程中に得られた産物力価、比生産性(q)および生細胞密度の積分(IVC)の相対値(培養物1/培養物2)を示す。
【図9】セクション2.3において説明する細胞系統2の培養工程から第5、8および11日に採取した小胞体濃縮画分サンプルに関して−0.4未満または0.4超に分類されるタンパク質の数(y軸)に対して相対発現(x軸)を示す。
【図10】セクション2.3において説明する細胞系統2の培養工程から第5、8および11日に採取したゴルジ濃縮画分サンプルに関して−0.4未満または0.4超に分類されるタンパク質の数(y軸)に対して相対発現(x軸)を示す。
【図11】セクション2.4において説明する細胞系統3の培養工程中に得られた産物力価、比生産性(q)および生細胞密度の積分(IVC)の相対値(培養物1/培養物2)を示す。
【図12】セクション2.4において説明する細胞系統3の培養工程から第5/6、8/9および11/13日に採取した小胞体濃縮画分サンプルに関して−0.4未満または0.4超に分類されるタンパク質の数(y軸)に対して相対発現(x軸)を示す。
【図13】セクション2.4において説明する細胞系統3の培養工程から第5/6、8/9および11/13日に採取したゴルジ網濃縮画分サンプルに関して−0.4未満または0.4超に分類されるタンパク質の数(y軸)に対して相対発現(x軸)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.定義
本明細書において用いる場合、用語「高効率タンパク質発現」は、細胞または細胞培養物が目的のタンパク質を他の比較対象となる細胞より高い濃度で発現する、細胞または細胞培養物の表現型を指す。この表現型は、一般細胞培養条件下で観察されることがあり、または該表現型を誘発するために特定の細胞培養条件の使用を必要とすることがある。高効率タンパク質発現を明示する細胞を本明細書では「高効率細胞」と呼び、該細胞の培養物は「高効率細胞培養物」と呼ぶ。
【0011】
本明細書において用いる場合、用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入された細胞を指す。前述の用語は、特定の対象細胞ばかりでなくこのような細胞の後代も指すことを意図したものであると解するべきである。突然変異または環境の影響のいずれかに起因して後の世代に一定の修飾が起こることがあるため、このような後代は、実際には親細胞と同一でないことがあるが、それでもなお、本明細書において用いる場合の用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。一定の実施形態において、宿主細胞は、細胞培養に関連して利用される。
【0012】
本明細書において用いる場合、用語「細胞培養」は、目的の組換えタンパク質を生産することができる宿主細胞集団を産生および維持するために利用される方法および技術、ならびに目的のタンパク質の生産および回収を最適化するための方法および技術を指す。例えば、発現ベクターを適切な宿主細胞に組み込んだら、該宿主を、関連ヌクレオチドコーディング配列の高レベル発現にならびに所望の組換えタンパク質の回収および精製に適する条件下で維持することができる。哺乳動物細胞が本発明の組換え体の発現および生産に好ましいが、他の真核細胞タイプも本発明に関連して利用することができる。例えば、Winnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。本発明の組換えタンパク質の発現に適する哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばKaufman and Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されているような、DHFR選択マーカーと共に使用される、Urlaub and Chasin,(1980)PNAS USA 77:4216−4220に記載されている、dhfr−CHO細胞を含む(前記全教示が参照により本明細書に援用されている。))、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。有用な哺乳動物宿主細胞系統の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎CV1系統(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎系統(293細胞または浮遊培養での成長のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎細胞(CVl ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーム系統(Hep G2)であり、前記全教示が参照により本明細書に援用されている。
【0013】
本明細書において用いる場合、「組換え発現ベクター」は、任意の適する組換え発現ベクターであり得、および任意の適する宿主を形質転換またはトランスフェクトするために使用され得る。例えば、形質転換またはトランスフェクションが、外来性核酸、例えばDNAを細胞に導入する方法であり、該形質転換またはトランスフェクション方法が、該細胞と該外来性核酸、例えば本明細書に記載するような組換え発現ベクターとを接触させることを含むことは、当業者には理解される。このような発現ベクターの非限定的な例は、pUC系列のベクター(Fermentas Life Sciences)、pBluescript系列のベクター(Stratagene、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)、pET系列のベクター(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)、pGEX系統のベクター(Pharmacia Biotech、スウェーデン、ウプサラ)およびpEXシリーズベクター(Clontech、カリフォルニア州パロ・アルト)である。
【0014】
本明細書において用いる場合、用語「組換えタンパク質」は、宿主細胞に導入された組換え発現ベクターによって行われる遺伝子の転写および翻訳の結果として生産されたタンパク質を指す。一定の実施形態において、組換えタンパク質は、抗体、好ましくはキメラ、ヒト化または完全ヒト抗体である。一定の実施形態において、組換えタンパク質は、IgG(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgAl、IgA2、IgDまたはIgEから成る群より選択されるアイソタイプの抗体である。一定の実施形態において、抗体分子は完全長抗体(例えばIgG1もしくはIgG4免疫グロブリン)であり、または代替的に抗体はフラグメント(例えば、FcフラグメントもしくはFabフラグメント)であり得る。
【0015】
本明細書において用いる場合、用語「分泌タンパク質」は、真核細胞の分泌装置に、一時的にせよ、内在するタンパク質を指す。真核細胞の分泌装置は、小胞体(ER)、ER−ゴルジ中間区画(ERGIC)、ゴルジ装置(Ladinsky,et al.(1999),「Golgi structure in three dimensions:functional insights from the normal rat kidney cell」J Cell Biol 144(6):1135−49)から成り、これらの間の輸送に関与する小胞に加えて、プロテアソームおよびリソソームによるタンパク質分解機構からも成る。電子顕微鏡検査および分画技術も、分泌経路の主要オルガネラを説明するために用いられている(Sabatini,D.D.(1999),「George E.Palade:charting the secretory pathway」Trends Cell Biol 9(10):413−7)。多数のタンパク質および他のエフェクター分子が分泌輸送に関与している。最近、McGill Universityの研究者が、分泌経路プロテオームにおける1400を超えるタンパク質の存在を詳細に記録した(Gilchrist,A.,C.E.Au,et al.(2006),「Quantitative proteomics analysis of the secretory pathway」Cell 127(6):1265−81)。著者らは、さらに、細胞の異なる区画内のタンパク質の卓越した空間情報を論証した。同定された1400のタンパク質に関して、これらのうちの300を超えるものが、未知の機能のものである。
【0016】
本明細書において用いる場合、用語「小胞体」または「ER」は、他の機能の中でもリン脂質およびタンパク質の生産に関与する、細胞内の細管、小胞および嚢の相互接続ネットワークを形成する、真核細胞オルガネラを指す。ERは、正しいタンパク質フォールディング、およびタンパク質プロセッシングについての品質管理(QC)を容易にする。翻訳中、タンパク質は、シグナル認識粒子の助けにより翻訳複合体がER膜上のこの受容体にドッキングするとER腔に転位置される。未完成ポリペプチドは、トランスロコンに移入され、その後、高酸化性微環境内での正しいフォールディングおよびグリコシル化のために、ペプチド伸長中にERの腔内に移る。細胞制御機構は、フォールディングされていない、ミスフォールディングされたまたは組織化されていないタンパク質のERから外への輸送の防止に役立つ。ポリペプチド鎖がER腔内に転位置するとすぐにERにおいてタンパク質フォールディングおよびグリコシル化開始が起こる。これらのタンパク質および他のものの協奏作用によって、相互作用ネットワークが発生し、分子カーゴがプロセッシングされ、スクリーニングされる。フォールディング中の分子間相互作用を一時的に遮断する熱ショックタンパク質、正しいジスルフィド結合の形成を触媒するタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、ならびにERから出る前にタンパク質を確実に正しくフォールディングする品質管理段階としての役割を果たすカルネキシンおよびカルレチクリンを含めて、非常に多数のシャペロンタンパク質が、タンパク質フォールディングを容易にする(Hossler,P.(2006),「Experimental and Theoretical Exploration of Protein Glycosylation in Mammalian Cell Culture」Ph.D.Thesis ProQuest/UMI)。シャペロンタンパク質は、組換えタンパク質の正しいフォールディング構造を保証するための主要ER内在性タンパク質である。最も豊富なERシャペロンはGRP78/BiPであり、該GRP78/BiPは、ATP加水分解を利用して、タンパク質フォールディングを促進し、ER内でのフォールディングしていないタンパク質の凝集を防止する。
【0017】
本明細書において用いる場合、用語「ゴルジ装置」または「ゴルジ」は、多少規則的に積み重ねた状態に配列された扁平な無リボソーム小胞から成る、真核細胞の複合膜様(compound membranous)細胞質オルガネラを指す。タンパク質はゴルジ装置に入ると、無数のタンパク質グリコシル化酵素によってプロセッシングされる。ゴルジ内ではN−およびO−グリカンがさらに伸長され、この結果、グリコフォームプロフィールの多様性がさらに増される。N−グリカンプロセッシングのための最初の反応は、ERプロセッシングから残存しているマンノース糖のさらなる除去である。除去後、少数のグリコシルトランスフェラーゼ酵素がグリカンと反応するが、様々な順序で反応するので、多種多様な産物グリカンをもたらす。この反応ネットワーク、ならびに前記酵素の基質特異性は、以前に詳細に記録されている(Hossler,P.,L.T.Goh,et al.(2006),「GlycoVis:visualizing glycan distribution in the protein N−glycosylation pathway in mammalian cells」Biotechnol Bioeng 95(5):946−60)。この最終グリコフォームプロフィールは、このネットワークの性質、ならびにゴルジ嚢全体にわたる前記酵素の局在、相対ヌクレオチド−糖濃度、および該オルガネラ内でのタンパク質滞在時間を含む非常に多数の他の要因による影響を受けることが証明されている。
【0018】
本明細書において用いる場合、用語「アップレギュレートされる」は、タンパク質(しかしこれに限定されない。)などの特定の組成物の量の増加を指す。タンパク質量のこのような増加は、例えば、限定としてではなく:タンパク質をコードする、それぞれ、DNAもしくはmRNAの転写もしくは翻訳速度の変化;タンパク質をコードするmRNAの安定性の変化;および/またはタンパク質自体の安定性の変化の結果であり得る。一定の実施形態において、量の増加は、約1%、約10%、約25%、約50%、約100%以上の増加であり得る。好ましい実施形態において、量の増加は、少なくとも約100%から約1,000%の増加である。
【0019】
本明細書において用いる場合、用語「ダウンレギュレートされる」は、タンパク質(しかしこれに限定されない。)などの特定の組成物の量の減少を指す。タンパク質量のこのような減少は、例えば、限定としてではなく:タンパク質をコードする、それぞれ、DNAもしくはmRNAの転写もしくは翻訳速度の変化;タンパク質をコードするmRNAの安定性の変化;および/またはタンパク質自体の安定性の変化の結果であり得る。一定の実施形態において、量の減少は、約1%、約10%、約25%、約50%、約100%以上の減少であり得る。好ましい実施形態において、量の減少は、少なくとも約100%から約1,000%の減少である。
【0020】
用語「約」は、本明細書において用いる場合、参照値よりおおよそ10から20%大きいまたは小さい範囲を指すことを意図する。一定の状況では、参照値の性質のため、用語「約」がこの値からの10から20%より大きいまたは小さい偏差を意味する場合があることは、当業者にはわかるであろう。
【0021】
2.バイオマーカー
本発明は、高効率タンパク質発現と相関する分泌タンパク質バイオマーカー、ならびに細胞における高効率タンパク質発現、特に組換えタンパク質発現を容易にするためのこのようなバイオマーカーの使用方法に関する。様々な技術を用いてこのようなバイオマーカーを同定することができる。例えば、限定としてではないが、高効率細胞培養物のプロテオーム解析を用いて、より低効率の細胞培養物と比較して高効率培養物において差次的発現を示す分泌タンパク質を同定することができる。
【0022】
本発明に関連して用いるための特異的高効率細胞または細胞培養物を同定するために、目的のタンパク質を生産する細胞、例えば、目的の組換えタンパク質を生産する宿主細胞を様々な異なる培地において培養して、結果として生ずる細胞培養物(原細胞および/またはこの/これらの後代を含む。)において高効率表現型を誘発する培地を同定することができる。市販の培地、例えば、Ham’s F10(商標)(Sigma)、Minimal Essential Medium(商標)((MEM)、(Sigma))、RPMI−1640(Sigma)およびDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(商標)((DMEM)、Sigma))が前記細胞の培養に適する。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、U.S.Pat.Nos.4,767,704;4,657,866;4,927,762;4,560,655;もしくは5,122,469;WO90/03430;WO87/00195;またはU.S.Pat.No.Re.30,985(これらの全教示が参照により本明細書に援用されている。)に記載されているいずれの培地も、前記細胞の培養基として使用することができる。これらのいずれの培地タイプにも、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリンもしくは上皮成長因子(しかしこれらに限定されない。))、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩(しかしこれらに限定されない。))、緩衝剤(例えばHEPES(しかしこれに限定されない。))、ヌクレオチド(例えばアデノシンおよびチミジン(しかしこれらに限定されない。))、抗体(例えばゲンタマイシン(しかしこれに限定されない。))、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物と定義する。)、ならびにグルコースまたは任意の等価エネルギー源を補足することができる。任意の他の必要補足物を当業者に公知であろう適切な濃度で含めてもよい。
【0023】
本発明に関連して用いるための高発現細胞培養物表現型を誘発する試みの中で、培地タイプを変えることに加えて、他の培養条件、例えば温度やpH等を調整することができる。いずれか1つの特定の宿主に妥当である前述の条件の個々の変更のタイプおよび程度は、発現に選択される個々の宿主に依存し、当業者には明らかである。
【0024】
本発明の細胞培養技術を用いると、目的のタンパク質を細胞内で生産することができ、ペリプラズム空間で生産することができ、または培地に直接分泌することができる。目的のタンパク質を細胞内で生産する実施形態では、特定の破壊片、宿主細胞または溶解細胞(例えば、均質化の結果として生ずるもの)いずれかを遠心分離または限外濾過を含む(しかしこれらに限定されない)様々な手段によって除去することができる。目的のタンパク質を培地に分泌する場合、このような発現系からの上清を、まず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon(商標)またはMillipore Pellicon(商標)限外濾過ユニットを使用して濃縮することができる。特定の細胞培養物が高効率細胞培養物であるかどうかの判定に用いる目的のタンパク質の量は、分泌されたタンパク質の場合には、培地を直接検定することによって算出することができ、または宿主細胞を溶解し、培地を遠心分離もしくは限外濾過に付した後に培地を検定することによって算出することができる。
【0025】
高効率細胞または細胞培養物が同定されたら、または細胞培養物において目的のタンパク質を高効率的に発現する結果となる高効率タンパク質発現のための条件が確立されたら、より低効率の細胞培養物と比較して高効率細胞培養物において差次的に発現される特異的タンパク質があるかどうかを判定するためにプロテオーム解析に着手することができる。用語「プロテオーム解析」は、生体サンプル中の1つ以上のタンパク質の発現パターンの解析を指すために用いられる。このような解析は、例えば、質量分析法、二次元ゲル電気泳動、イムノアッセイを用いて、またはサンプルにおけるタンパク質発現レベルを定量するための任意の他の手段によって遂行することができる。
【0026】
プロテオーム解析は、結果として、高効率培養物と低効率培養物において差次的に発現される1つ以上のタンパク質を同定することができる。例えば、限定としてではないが、このような分析は、特定の細胞培養サンプルにおいて少なくとも2、または少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも15、または少なくとも20、または少なくとも25、または少なくとも30、または少なくとも35、または少なくとも40、または少なくとも45、または少なくとも50、または少なくとも60、または少なくとも65、または少なくとも70、または少なくとも75、または少なくとも80、または少なくとも85、または少なくとも85、または少なくとも90、または少なくとも95、または少なくとも100、または少なくとも125、または少なくとも150、または少なくとも175、または少なくとも200の差次的発現タンパク質を同定することができる。
【0027】
プロテオーム解析を特定のタンパク質クラス、例えば分泌タンパク質について行うことができる。候補分泌タンパク質バイオマーカーのプロテオーム解析を行うために、まず、このようなタンパク質を含有するサンプルを得ることが必要である。一定の実施形態では、候補分泌タンパク質バイオマーカーを全細胞溶解産物から得る。好ましい実施形態では、候補分泌タンパク質バイオマーカーを分泌オルガネラについて濃縮されたサンプルから得ることができる。全細胞溶解産物の生産についてならびに濃縮された(「精製された」とも言う)分泌オルガネラを含有するまたはこのようなオルガネラのサブセットを含有するサンプルの生産については、非常に多数の十分に確立されたプロトコルが文献に報告されている。概して、このようなプロトコルは、化学的または機械的手段による何らかの形態の細胞破壊、続いて精製のための示差または密度勾配遠心分離、およびその後の評定を含む。他の方法は、細胞破壊、続いて特定のオルガネラタンパク質に対する抗体による免疫磁気分離の使用を含む(Vitale,N.,K.Horiba,et al.(1998),「Localization of ADP−ribosylation factor domain protein 1(ARDl)in lysosomes and Golgi apparatus」Proc Natl Acad Sci USA 95(15):8613−8)。一定の実施形態では、市販アッセイキット、例えば、Golgi Isolation Kit(商標)またはEndoplasmic Reticulum Isolation Kit(商標)を利用し、前記キットは、両方ともSigma−Aldrichからのものであり、緩衝液および/またはスクロース勾配超遠心分離を用いてER含有画分とゴルジ含有画分の両方を精製する。一定の実施形態では、このような実験のためのソース細胞を、小、大または商業規模バイオリアクターー、例えば、限定としてではないが、3LベンチトップApplikonバイオリアクターーを使用して得ることができる。特定のオルガネラを精製する実施形態では、透過型電子顕微鏡法(TEM)形態計測による視覚的検証を含む(しかしこれに限定されない。)様々な方法を用いて、オルガネラ濃縮の検証を果たすことができる。
【0028】
プロテオーム解析用のサンプルが調製されたら、2DGEを含む(しかしこれに限定されない。)様々な手段を用いてこのサンプルのタンパク質組成を同定することができる。2DGEは、複合混合物中の1000から2000のタンパク質を一次元でこれらの等電点により、次に二次元でSDS−PAGEを用いてこれらの分子量により分解することができる、十分に確立された解析法である。2Dゲル上を泳動するタンパク質の検出は、多数の異なる技術によって遂行することができ、これらの技術の例は、proteomeconsult.comに開示されている。銀染色は、低存在度タンパク質スポットの検出に最も頻繁に用いられている方法である。銀染色は、良好な感度(<1ngタンパク質/スポット)を有するが、不良なリニアダイナミック定量レンジ(約1桁台)を有する。対照的に、クマシーR−250染色は、より広く用いられており、より良好なリニアダイナミック定量レンジ(約2桁台)を有するが、感度は低い(約200ngタンパク質/スポット)。クマシーG−250染色は、より高い感度(約25ngタンパク質/スポット)を提示し、質量分析法手順と両立できる。蛍光染色は、SYPRO(登録商標)−Rubyの導入に伴って、タンパク質の2Dゲルベースの定量の選択肢になった。Sypro(登録商標)Ruby染色は、良好な感度(約1ngタンパク質/スポット)および約3桁台のリニアダイナミック定量レンジを提示する。しかし、蛍光染色は、2Dゲル法に有意な量の費用を加える。最後に、放射標識は、高い感度(<0.1ng/スポット)と高いリニアダイナミック定量レンジ(4から5桁台)を兼ね備えている。しかし、作業者の安全を保障するためにおよび環境規制を順守するために、ゲルの取り扱い、染色、走査、保管および廃棄処分中により多くの労力を注がなければならない。
【0029】
2D解析の重要な目的は、主観性の排除、可変的ゲル泳動およびゲル画質の制御、低レベルタンパク質発現に対する高感度の提供、およびタンパク質レベルの実際の変化の同定である。これらの課題に対処するように設計された技術がNonlinear Inc.によって開発された。例えば、Progenesis Discovery(商標)は、正確に解析するために多数のゲルを必要とするプロテオミクス分野における研究者用に特別に開発された特殊ソフトウェアソルーションである。このソフトウェアの特徴としては、画像ノイズの影響を制御し、正確な解析を駆動する、インテリジェントノイズ補正アルゴリズム(INCA)、および使用者が、スポットの変化がゲルの全体の質と比較して有意であるかどうかの統計的尺度を受け取る、データ品質管理(Data QC)が挙げられる。INCAおよびData QCの利点としては、高レベルのスポット検出精度、2D解析への自動アプローチ、およびノイズのある画像からの意味のあるデータの生成が挙げられる。一定の実施形態では、Progenesisソフトウェアを使用して差次的発現を指定し、その後、質量分析法による同定のためにスポットを物理的に切り出す。一定の実施形態において、差次的発現の指定に用いることができるカットオフ基準は、2Dゲルからの正規化スポット体積強度の少なくとも約2倍、約3倍または約5倍増加または減少である。代替実施形態において、差次的発現の指定に用いることができるカットオフ基準は、(正または負)0.01、0.05、0.10、0.2、0.4、0.6、0.8または1.0の2培養条件間の相対発現レベルである。一定の実施形態では、次の方程式を用いて相対発現を決定することができる:
タンパク質「i」の相対発現=Log10[(正規化スポット体積)i、培養物1/(正規化スポット体積)i、培養物2
【0030】
切り出した後、質量分析法を含む(しかしこれに限定されない。)多数の技術を用いて、目的のバイオマーカーの素性を得ることができる。「質量分析法」または「MS」は、分析すべきサンプルをイオン化して導入して、電気力または磁気力を用いて質量に基づき差を生じさせ、このようにしてイオンの質量を分析する、分析技術を指す。本発明と共に用いることができる様々なMS原理があり、該原理としては、イオントラップMS、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(FT−ICR/MS)、イオン走査MSおよびQ−TOF MSが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法では、1つだけの技術(即ち、1つだけの質量分析計)を用いてMS分析を行う場合があり、または互いに連結されている多数の質量分析計を使用することによってMS分析(このような分析は「MS/MS分析」と呼ばれる。)を行う場合がある。
【0031】
一定の実施形態において、利用する質量分析法の具体的なタイプは、ナノフローESI Q−TOF MS/MS分析である。エレクトロスプレーイオン化(ESI)は、液体で希釈された生体分子を気相に輸送するための技術である。この脱溶媒法は、タンパク質の質量分析法による同定に従来用いられている。例えば、タンパク質分解酵素を用いて、タンパク質を固有ペプチドセグメントに消化する。その後、これらのセグメントを逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分離し、逐次的に質量分析器にエレクトロスプレーする。特定のペプチドセグメントのアミノ酸配列を決定することにより、この質量分析計は、高信頼度でタンパク質を同定するために十分な情報をもたらす。ESI法の基本物理学は、非常に多数の研究論文の主題になっている(この分野における最近の開発に関する総説については、Bruins A.P.,「Mechanistic aspects of electrospray ionization」,Journal of Chromatography A,vol.794,pp.345−347,1998;およびCech et al.,「Practical implications of some recent studies in electrospray ionization fundamentals」,Mass Spectrometry Reviews,vol.20,pp.362−387,2001を参照のこと。)。エレクトロスプレーは、気相でイオン雲を生じさせる。プロテオミクスでの用途に好適なナノ−ESIモードで、分析物溶液をポンプにより遅い流速(100から1000nl/分)で高電場内に置かれた小口径細管に通すことによって、エレクトロスプレーを確立する。この特異的質量分析技術を、SwissProtデータベースでのバイオマーカーの同定のための様々なソフトウェアプログラム、例えばSpectrum Millソフトウェア(Agilent)(しかしこれに限定されない。)と併せて使用することができる。
【0032】
高効率細胞または細胞系統において変調される分泌バイオマーカーの具体的で非限定的な例を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
さらなる例示的バイオマーカーとしては、EHドメイン含有タンパク質4;熱ショックタンパク質ベータ1;翻訳開始因子3サブユニット3;ATPシンターゼサブユニットベータ;60S酸性リボソームタンパク質PO;エズリン;ヌクレオホスミン;カルレチクリン;14−3−3タンパク質ガンマ;セプチン−11;アネキシンA2;ADPリボシル化因子様タンパク質2R;熱ショックコグネイト71kDaタンパク質;ミオシン軽ポリペプチド6;および主要ヴォールトタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の特定の非限定的実施形態によると、上で説明した分泌タンパク質バイオマーカー(1つより多くのバイオマーカーを「パネル」と呼ぶ)のうちの少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも10、場合により5つ以下、10以下、または20以下、または30以下、または40以下、または46以下を使用して、高効率細胞または細胞培養物を同定することができる。
【0036】
一定の実施形態において、このようなパネルは、EHドメイン含有タンパク質4;熱ショックタンパク質ベータ1;ミオシン調節軽鎖;グアニンヌクレオチド結合タンパク質ベータ1;翻訳開始因子3サブユニット3;ビメンチン;ATPシンターゼサブユニットベータ;および伸長因子1ガンマのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つすべてを含むが、これらに限定されない。このような一定の実施形態において、EHドメイン含有タンパク質4;熱ショックタンパク質ベータ1;ミオシン調節軽鎖および/またはグアニンヌクレオチド結合タンパク質ベータ1はアップレギュレートされるが、翻訳開始因子3サブユニット3;ビメンチン;ATPシンターゼサブユニットベータおよび/または伸長因子1ガンマはダウンレギュレートされる。
【0037】
一定の実施形態において、このようなパネルは、EHドメイン含有タンパク質4;熱ショックタンパク質ベータ1;ミオシン調節軽鎖;グアニンヌクレオチド結合タンパク質ベータ1;翻訳開始因子3サブユニット3;ビメンチン;ATPシンターゼサブユニットベータ;および伸長因子1ガンマのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つすべてを含むが、これらに限定されない。一定の実施形態において、EHドメイン含有タンパク質4;熱ショックタンパク質ベータ1;ミオシン調節軽鎖および/またはグアニンヌクレオチド結合タンパク質ベータ1はアップレギュレートされるが、翻訳開始因子3サブユニット3;ビメンチン;ATPシンターゼサブユニットベータおよび/または伸長因子1ガンマはダウンレギュレートされる。
【0038】
一定の実施形態において、このようなパネルは、EHドメイン含有タンパク質4;60S酸性リボソームタンパク質PO;ヘテロ核リボ核タンパク質K;エズリン;ATPシンターゼサブユニットベータ;ヌクレオホスミン;ビメンチンおよび/またはカルレチクリンのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つすべてを含むが、これらに限定されない。一定の実施形態において、EHドメイン含有タンパク質4;60S酸性リボソームタンパク質PO;ヘテロ核リボ核タンパク質Kおよび/またはエズリンはアップレギュレートされるが、ATPシンターゼサブユニットベータ;ヌクレオホスミン;ビメンチンおよび/またはカルレチクリンはダウンレギュレートされる。
【0039】
一定の実施形態において、このようなパネルは、14−3−3タンパク質ガンマ;タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA3前駆体;セプチン−11;アネキシンA2;ADP−リボシル化因子様タンパク質2R;熱ショックコグネイト71kDaタンパク質および/またはミオシン軽ポリペプチド6のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つすべてを含むが、これらに限定されない。一定の実施形態において、14−3−3タンパク質ガンマ;タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA3前駆体;セプチン−11;アネキシンA2および/またはADP−リボシル化因子様タンパク質2Rはアップレギュレートされるが、熱ショックコグネイト71kDaタンパク質および/またはミオシン軽ポリペプチド6はダウンレギュレートされる。
【0040】
一定の実施形態において、このようなパネルは、熱ショックコグネイト71kDaタンパク質;主要ヴォールトタンパク質および/または真核生物翻訳開始因子5A−1のうちの1つ、2つまたは3つすべてを含むが、これらに限定されない。一定の実施形態において、熱ショックコグネイト71kDaタンパク質;主要ヴォールトタンパク質および/または真核生物翻訳開始因子5A−1はダウンレギュレートされる。
【0041】
一定の実施形態において、上述のパネルは、グアニンヌクレオチド結合タンパク質;熱ショックタンパク質ベータ−1および/または14−3−3タンパク質ゼータ/デルタのうちの1つ、2つまたは3つすべてを含むが、これらに限定されない。一定の実施形態において、グアニンヌクレオチド結合タンパク質はダウンレギュレートされるが、熱ショックタンパク質ベータ−1および/または14−3−3タンパク質ゼータ/デルタはアップレギュレートされる。
【0042】
一定の実施形態では、分析するバイオマーカーの発現レベルを培養工程中の特定の時点で測定することとなる。例えば、限定としてではないが、バイオマーカーの発現レベルを細胞培養工程の第1日、第2日、第3日、第4日、第5日、第6日、第7日、第8日、第9日、第10日、第11日、第12日、第13日、第14日または第15日に検定する場合がある。一定の実施形態では、バイオマーカーの発現を細胞培養工程中の1、2、3以上の時点で検定する。一定の実施形態では、個々のバイオマーカーすべてをすべての時点で検定する必要はなく、むしろ一定のバイオマーカーを一定の時点で検定し、他のバイオマーカーを他の、必ずしも完全に重なるとは限らない時点で検定することができる。
【0043】
関連した具体的な非限定的実施形態において、本発明は、上に列挙した分泌タンパク質バイオマーカーの1つまたはパネルの発現の変調を同定するためのキットを提供する。このようなキット(kids)は、例えば、前記バイオマーカーに対する検出可能抗体と、該抗体を検出するための手段とを含む場合がある。具体的な非限定的実施形態において、前記キットに備えられるパネルの中で、上に列挙したバイオマーカーは、試験される全パネル中のバイオマーカーの約20パーセント以下、または約30パーセント以下、または約50パーセント以下、または約75パーセント以下、または約90パーセント以下、または約100パーセント以下に相当する。前記キットは、1つ以上の陽性および/または1つ以上の陰性対照サンプルを場合によりさらに含むことがある。
【0044】
3.バイオマーカー組成物の使用方法
本発明の一定の実施形態では、1つ以上のタンパク質バイオマーカー、好ましくは1つ以上の分泌タンパク質バイオマーカーを利用して高効率細胞または細胞培養物を同定する。このような同定は、組換えタンパク質生産の商業的スケールアップの状況下で有用であることが多い。例えば、限定としてではないが、初期小規模細胞培養を開始して、組換えタンパク質生産の効率を促進する。この培養を、目的のタンパク質の高効率発現と関連づけられる1つ以上の分泌タンパク質バイオマーカーの発現レベルを監視することによって容易にすることができる。一定の実施形態では、高効率細胞培養物を同定するために分泌タンパク質バイオマーカーのアップレギュレーションを利用する。代替実施形態では、高効率細胞培養物を同定するために分泌タンパク質バイオマーカーのダウンレギュレーションを利用する。好ましい実施形態では、多数の分泌タンパク質バイオマーカーを利用して、高効率細胞培養物を同定する。多数の分泌タンパク質バイオマーカーを利用するこのような実施形態において、バイオマーカーのすべてがアップレギュレートされる場合があり、分泌タンパク質バイオマーカーのすべてがダウンレギュレートされる場合があり、または分泌タンパク質バイオマーカーのうちの1つ以上はアップレギュレートされるが、該分泌タンパク質バイオマーカーのうちの1つ以上はダウンレギュレートされる。
【0045】
本発明の代替実施形態では、分泌タンパク質バイオマーカーを利用して、商業細胞培養物などの確立された大規模細胞培養物の発現効率を監視する。このような実施形態において、1つ以上の分泌されるタンパク質バイオマーカーの定期的監視によって、細胞培養物が確実に高効率細胞培養表現型を提示し続けるようにすることができる。一定の実施例では、バイオマーカーの発現の変化が、1つ以上の細胞培養条件、例えば培地タイプ、温度およびpH(しかしこれらに限定されない。)を調整する必要を示す場合がある。一定の実施形態では、高効率細胞培養物を同定するために分泌タンパク質バイオマーカーのアップレギュレーションを利用する。代替実施形態では、高効率細胞培養物を同定するために分泌タンパク質バイオマーカーのダウンレギュレーションを利用する。好ましい実施形態では、多数の分泌タンパク質バイオマーカーを利用して、高効率細胞培養物を同定する。多数の分泌タンパク質バイオマーカーを利用するこのような実施形態において、バイオマーカーのすべてがアップレギュレートされる場合があり、分泌タンパク質バイオマーカーのすべてがダウンレギュレートされる場合があり、または分泌タンパク質バイオマーカーのうちの1つ以上。
【0046】
4.高効率細胞および細胞培養物
本発明は、高効率タンパク質発現と関連づけられるバイオマーカープロフィールを明示する高効率細胞または細胞培養物にさらに提供する。詳細には、本発明は、高効率タンパク質発現と関連づけられる分泌バイオマーカープロフィールを明示する高効率細胞または細胞培養物を提供する。例えば、限定としてではないが、前記細胞または細胞培養物は、表1から7に示す1つ以上の分泌タンパク質バイオマーカーの発現の変調を提示する。
【0047】
本発明の特定の非限定的実施形態によると、上に列挙した分泌バイオマーカーのうちの少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも10の発現が本発明の細胞または細胞培養物において変調されることがある。本発明の具体的な非限定的実施形態において、前記細胞は、CHO細胞である。
【実施例】
【0048】
[実施例1]
1.1 オルガネラ分画
目的の組換え糖タンパク質を生産する2つのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系統を以下の実施例全体を通して利用した。両方の細胞系統がg/Lレベルの所望の産物を生産すること、しかし培養条件が産物力価の大きな増加を助長することを示した(図1)。同じクローンを使用するがこれらの異なる培養条件下で分泌経路タンパク質レベルの差を比較することにより、同じ遺伝子構成および遺伝子増幅レベルを有する細胞を使用して細胞レベルで如何なる差が存在するかを発見することができた。
【0049】
組換えタンパク質プロデューサー細胞系統のオルガネラ内の候補バイオマーカー分泌タンパク質の相対分布を判定するために、まずこれらのオルガネラを精製する必要があった。オルガネラ精製について非常に多数の十分に確立されたプロトコルが文献に報告されている。概して、このようなプロトコルは、化学的または機械的手段による何らかの形態の細胞破壊、続いて精製のための示差または密度勾配遠心分離、およびその後の評定を含む。他の方法は、細胞破壊、続いて特定のオルガネラタンパク質に対する抗体による免疫磁気分離の使用を含む(Vitale,N.,K.Horiba,et al.(1998),「Localization of ADP−ribosylation factor domain protein 1(ARDl)in lysosomes and Golgi apparatus」Proc Natl Acad Sci USA 95(15):8613−8)。本実施例において、ERとゴルジの両方を精製するために有標緩衝液および/またはスクロース勾配超遠心分離を利用した、市販アッセイキット。これらの実験のためのソース細胞は、3LベンチトップApplikonバイオリアクターーから生じたものであり、このバイオリアクターーから多数のソース細胞をオルガネラ分画のために産生した。アッセイのいずれの収率限界も、産生された多数の細胞によって補償されるものより大きかった。透過型電子顕微鏡法(TEM)形態計測による視覚的検証を用いてオルガネラ濃縮の検証を果たした(図2)。
【0050】
1.2.二次元ゲル電気泳動による分泌過程の示差マッピング
実施例1において説明したオルガネラ濃縮後に2Dゲル電気泳動(2DGE)を行った(図3)。2DGEは、複合混合物中の1000から2000のタンパク質を一次元でこれらの等電点により、次に二次元でSDS−PAGEを用いてこれらの分子量により分解することができる、十分に確立された分析法である。2Dゲル上を泳動するタンパク質の検出は、図3に含めたゲルに関して用いた銀染色技術を含む、多数の異なる技術によって遂行することができる。
【0051】
2−D解析の重要な目的は、主観性の排除、可変的ゲル泳動およびゲル画質の制御、低レベルタンパク質発現に対する高感度の提供、およびタンパク質レベルの実際の変化の同定である。Progenesisソフトウェアを含む、これらの課題に対処するように設計された技術がNonlinear Incによって開発された。本サンプルについて、Progenesisソフトウェアを用いて差次的発現を指定し、その後、質量分析法による同定のためにスポットを物理的に切り出した。差次的発現の指定に用いたカットオフ基準は、ERまたはゴルジ濃縮画分いずれかにおける時間経過サンプルのうちの少なくとも1つに関する2Dゲルからの正規化スポット体積強度の少なくとも2倍の増加または減少であった。
【0052】
1.3.差次的に発現されたタンパク質の質量分析法(MS)による分析
実施例1.2.において同定し、切り出したタンパク質スポットを、次に、ナノフローESI Q−TOF MS/MS分析を用いて処理して、特定のバイオマーカー分泌タンパク質を同定した。Spectrum Millソフトウェア(Agilent)およびSwissProtデータベースを用いて個々のタンパク質指定を行った(図4)。上のセクション2の表1は、ERまたはゴルジ濃縮画分いずれかにおける時間経過サンプルのうちの少なくとも1つに関する2Dゲルからの正規化スポット体積強度の少なくとも2倍の増加または減少の差次的発現を有するバイオマーカー分泌タンパク質のリストであり、これらのバイオマーカー分泌タンパク質を、その後、質量分析による分析を用いて同定することができた。
【0053】
[実施例2]
2.1.3つの別個のタンパク質生産細胞系統の比較
この実施例は、異なる濃度レベルを有する培地のもとで培養した3つの別個のタンパク質生産細胞系統の比較、ならびに天然培地の限定培地に対する比較を説明するものである。細胞培養、オルガネラ単離、タンパク質分析およびタンパク質同定は、別の説明がない限り、上の実施例1、セクション1.1.から1.3.において説明したとおりに行った。
【0054】
2.2.細胞系統1の分析
2つの別個の工程モードおよび2つの別個の培養基を用いて、細胞系統1を培養した。細胞系統1の培養物1には半回分工程モードおよび天然リッチ培地を用いた。対照的に、細胞系統1の培養物2には回分工程モードおよび天然リーン培地を用いた。細胞系統1の比較のために産物力価、比生産性(q)および生細胞密度の積分(IVC)の相対値(培養物1/培養物2)を図5に提供する。差次的に発現されたタンパク質を同定するために、各培養物のサンプルを第5、8および11日に採取し、これらのサンプルを2−Dゲル電気泳動によって分析した。差次的に発現されたタンパク質に関する要約データを図6(小胞体濃縮画分)および7(ゴルジ濃縮画分)に提示する。差次的に発現されたものとして同定された特異的タンパク質を表2(小胞体濃縮画分)および表3(ゴルジ濃縮画分)に提示する。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
2.3.細胞系統2の分析
細胞系統2は、同じ回分工程を用いるが別個の培養基で2回培養した。細胞系統2の培養物1には天然リッチ培地を用い、一方、培養物2には天然リーン培地を用いた。細胞系統2の比較のために産物力価、比生産性(q)および生細胞密度の積分(IVC)の相対値(培養物1/培養物2)を図8に提供する。差次的に発現されたタンパク質を同定するために、各培養物のサンプル第8および11日(小胞体濃縮画分)ならびに第5、8および11日(ゴルジ濃縮画分)に採取し、これらのサンプルを2−Dゲル電気泳動によって分析した。差次的に発現されたタンパク質に関する要約データを図9(小胞体濃縮画分)および10(ゴルジ濃縮画分)に提示する。差次的に発現されたものとして同定された特異的タンパク質を表4(小胞体濃縮画分)および表5(ゴルジ濃縮画分)に提示する。
【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
2.4.細胞系統3の分析
細胞系統3は、2つの別個の工程モードおよび2つの別個の培養基を用いて培養した。培養系統3の培養物1には回分工程モードおよび天然培地を用いた。対照的に、細胞系統3の培養物2には、半回分工程モードおよび合成培地を用いた。細胞系統3の比較のために産物力価、比生産性(q)および生細胞密度の積分(IVC)の相対値(培養物1/培養物2)を図11に提供する。差次的に発現されたタンパク質を同定するために、各培養物のサンプル第5/6、8/9および11/13日に採取し、これらのサンプルを2−Dゲル電気泳動によって分析した。差次的に発現されたタンパク質に関する要約データを図12(小胞体濃縮画分)および13(ゴルジ濃縮画分)に提示する。差次的に発現されたものとして同定された特異的タンパク質を表6(小胞体濃縮画分)および表7(ゴルジ濃縮画分)に提示する。
【0061】
【表6】

【0062】
【表7】

【0063】
本明細書において引用したすべての特許、特許出願、出版物、製品説明およびプロトコルは、これら全体が参照により本明細書に援用されている。専門用語が矛盾する場合、本開示に従う。
【0064】
本明細書に記載する本発明が、上に示した恩恵および利点を獲得するように十分に計画されていることは明白であるが、本発明を本明細書に記載の特定の実施形態による範囲に限定すべきでない。本発明の精神から逸脱することなく本発明の改変、変形および変更が可能であることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高効率細胞または細胞培養物の同定方法であって、
(a)細胞または細胞培養物における高効率細胞または細胞培養物バイオマーカーの発現レベルを判定する段階、および
(b)前記細胞または細胞培養物における高効率細胞または細胞培養物バイオマーカーの前記発現レベルを公知の高効率細胞または細胞培養物における前記バイオマーカーの発現レベルと比較する段階
を含み、
公知の高効率細胞または細胞培養物におけるレベルより高いバイオマーカー発現レベルが、高効率細胞または細胞培養物を示し、および公知の高効率細胞または細胞培養物におけるレベルより低いバイオマーカー発現レベルが、より低効率の細胞または細胞培養物を示す、方法。
【請求項2】
バイオマーカーが分泌タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分泌タンパク質バイオマーカーが小胞体画分内在性タンパク質である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
分泌タンパク質バイオマーカーがゴルジ画分内在性タンパク質である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
分泌タンパク質バイオマーカーが高効率細胞または細胞培養物においてアップレギュレートされる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
分泌タンパク質バイオマーカーが高効率細胞または細胞培養物においてダウンレギュレートされる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
多数の分泌タンパク質バイオマーカーのレベルが判定され、比較される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
分泌タンパク質バイオマーカーのすべてが高効率細胞または細胞培養物においてダウンレギュレートされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
分泌タンパク質バイオマーカーのすべてが高効率細胞または細胞培養物においてアップレギュレートされる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
高効率細胞または細胞培養物において、分泌タンパク質バイオマーカーの1つ以上がアップレギュレートされるが、該分泌タンパク質バイオマーカーの1つ以上はダウンレギュレートされる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
分泌タンパク質バイオマーカーが、以下の:エンドプラスミン前駆体(GRP 94);セリル−tRNAシンターゼ;ジヒドロリポイルリシン(Dihydrolipolylysine)残基アセチルトランスフェラーゼ/メチオニンアミノペプチダーゼ2;F−アクチンキャッピングタンパク質サブユニットアルファ2;60s酸性リボソームタンパク質PO;ヘテロ核リボ核タンパク質K;真核生物翻訳開始因子3サブユニット7;エンドプラスミン前駆体(GRP 94);伸長因子1ベータ;セリル−tRNAシンセターゼ/RAS GTPase−活性化タンパク質結合2;真核生物翻訳因子3サブユニット3;Pre mRNAプロセシング因子19/T−複合体タンパク質1サブユニットベータ;伸長因子1ガンマ;チューブリンガンマ−1鎖/真核生物翻訳開始因子2サブユニット2;ビメンチン;ミオシン調節軽鎖;グアニンヌクレオチド結合タンパク質サブユニットベータ1;26Sプロテアーゼ調節サブユニット6B;真核生物ペプチド鎖遊離因子サブユニット1;タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA−3前駆体;チューブリンアルファ−2;エンドプラスミン前駆体(GRP 94);タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA−6前駆体/タンパク質NDRG1(N−myc下流調節遺伝子1タンパク質);60kDa熱ショックタンパク質、ミトコンドリア前駆体(Hsp60);T−複合体タンパク質1サブユニットイプシロン;UPF0027タンパク質;26Sプロテアソーム非ATP−ase調節サブユニット13;SH3ドメインGRB2様タンパク質B1;COP9シグナロソーム(sinalosome)複合体サブユニット4;細胞質ダイニン1中間鎖;リボソーム結合タンパク質1;アルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+);グルタミン酸デヒドロゲナーゼ1(ミトコンドリア前駆体);プロテアソーム活性化因子複合体サブユニット1;細胞質2、アクチン;アネキシンA5;コートマーサブユニットイプシロン;グルコシダーゼ2;トリオースリン酸イソメラーゼ;ヘテロ核リボ核タンパク質F;細胞質2/アクチン;ソーティングネキシン6/シナプス小胞膜VAT−1ホモログ;14−3−3タンパク質ゼータ/デルタ;ビメンチン/チューブリンアルファ−2鎖;液胞(Vaculoar)ATPシンターゼ;Ig−Gガンマ−1鎖C;EHドメイン含有タンパク質4;熱ショックタンパク質ベータ1;翻訳開始因子3サブユニット3;ATPシンターゼサブユニットベータ;60S酸性リボソームタンパク質PO;エズリン;ヌクレオホスミン;カルレチクリン;14−3−3タンパク質ガンマ;セプチン−11;アネキシンA2;ADPリボシル化因子様タンパク質2R;熱ショックコグネイト71kDaタンパク質;ミオシン軽ポリペプチド6;および主要ヴォールトタンパク質から成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
(a)高効率タンパク質発現の分泌タンパク質バイオマーカーに対する検出可能な抗体と、
(b)前記抗体を検出するための手段と
を含む、高効率タンパク質発現の分泌タンパク質バイオマーカーの発現の変調を同定するためのキット。
【請求項13】
高効率タンパク質発現の分泌タンパク質バイオマーカーが、以下の:エンドプラスミン前駆体(GRP 94);セリル−tRNAシンターゼ;ジヒドロリポイルリシン(Dihydrolipolylysine)残基アセチルトランスフェラーゼ/メチオニンアミノペプチダーゼ2;F−アクチンキャッピングタンパク質サブユニットアルファ2;60s酸性リボソームタンパク質PO;ヘテロ核リボ核タンパク質K;真核生物翻訳開始因子3サブユニット7;エンドプラスミン前駆体(GRP 94);伸長因子1ベータ;セリル−tRNAシンセターゼ/RAS GTPase−活性化タンパク質結合2;真核生物翻訳因子3サブユニット3;Pre mRNAプロセシング因子19/T−複合体タンパク質1サブユニットベータ;伸長因子1ガンマ;チューブリンガンマ−1鎖/真核生物翻訳開始因子2サブユニット2;ビメンチン;ミオシン調節軽鎖;グアニンヌクレオチド結合タンパク質サブユニットベータ1;26Sプロテアーゼ調節サブユニット6B;真核生物ペプチド鎖遊離因子サブユニット1;タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA−3前駆体;チューブリンアルファ−2;エンドプラスミン前駆体(GRP 94);タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA−6前駆体/タンパク質NDRG1(N−myc下流調節遺伝子1タンパク質);60kDa熱ショックタンパク質、ミトコンドリア前駆体(Hsp60);T−複合体タンパク質1サブユニットイプシロン;UPF0027タンパク質;26Sプロテアソーム非ATP−ase調節サブユニット13;SH3ドメインGRB2様タンパク質B1;COP9シグナロソーム(sinalosome)複合体サブユニット4;細胞質ダイニン1中間鎖;リボソーム結合タンパク質1;アルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+);グルタミン酸デヒドロゲナーゼ1(ミトコンドリア前駆体);プロテアソーム活性化因子複合体サブユニット1;細胞質2、アクチン;アネキシンA5;コートマーサブユニットイプシロン;グルコシダーゼ2;トリオースリン酸イソメラーゼ;ヘテロ核リボ核タンパク質F;細胞質2/アクチン;ソーティングネキシン6/シナプス小胞膜VAT−1ホモログ;14−3−3タンパク質ゼータ/デルタ;ビメンチン/チューブリンアルファ−2鎖;液胞(Vaculoar)ATPシンターゼ;Ig−Gガンマ−1鎖C;EHドメイン含有タンパク質4;熱ショックタンパク質ベータ1;翻訳開始因子3サブユニット3;ATPシンターゼサブユニットベータ;60S酸性リボソームタンパク質PO;エズリン;ヌクレオホスミン;カルレチクリン;14−3−3タンパク質ガンマ;セプチン−11;アネキシンA2;ADPリボシル化因子様タンパク質2R;熱ショックコグネイト71kDaタンパク質;ミオシン軽ポリペプチド6;および主要ヴォールトタンパク質から成る群より選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
多数の検出可能な抗体を含むキットであって、各抗体が、エンドプラスミン前駆体(GRP 94);セリル−tRNAシンターゼ;ジヒドロリポイルリシン(Dihydrolipolylysine)残基アセチルトランスフェラーゼ/メチオニンアミノペプチダーゼ2;F−アクチンキャッピングタンパク質サブユニットアルファ2;60s酸性リボソームタンパク質PO;ヘテロ核リボ核タンパク質K;真核生物翻訳開始因子3サブユニット7;エンドプラスミン前駆体(GRP 94);伸長因子1ベータ;セリル−tRNAシンセターゼ/RAS GTPase−活性化タンパク質結合2;真核生物翻訳因子3サブユニット3;Pre mRNAプロセシング因子19/T−複合体タンパク質1サブユニットベータ;伸長因子1ガンマ;チューブリンガンマ−1鎖/真核生物翻訳開始因子2サブユニット2;ビメンチン;ミオシン調節軽鎖;グアニンヌクレオチド結合タンパク質サブユニットベータ1;26Sプロテアーゼ調節サブユニット6B;真核生物ペプチド鎖遊離因子サブユニット1;タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA−3前駆体;チューブリンアルファ−2;エンドプラスミン前駆体(GRP 94);タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA−6前駆体/タンパク質NDRG1(N−myc下流調節遺伝子1タンパク質);60kDa熱ショックタンパク質、ミトコンドリア前駆体(Hsp60);T−複合体タンパク質1サブユニットイプシロン;UPF0027タンパク質;26Sプロテアソーム非ATP−ase調節サブユニット13;SH3ドメインGRB2様タンパク質B1;COP9シグナロソーム(sinalosome)複合体サブユニット4;細胞質ダイニン1中間鎖;リボソーム結合タンパク質1;アルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+);グルタミン酸デヒドロゲナーゼ1(ミトコンドリア前駆体);プロテアソーム活性化因子複合体サブユニット1;細胞質2、アクチン;アネキシンA5;コートマーサブユニットイプシロン;グルコシダーゼ2;トリオースリン酸イソメラーゼ;ヘテロ核リボ核タンパク質F;細胞質2/アクチン;ソーティングネキシン6/シナプス小胞膜VAT−1ホモログ;14−3−3タンパク質ゼータ/デルタ;ビメンチン/チューブリンアルファ−2鎖;液胞(Vaculoar)ATPシンターゼ;Ig−Gガンマ−1鎖C;EHドメイン含有タンパク質4;熱ショックタンパク質ベータ1;翻訳開始因子3サブユニット3;ATPシンターゼサブユニットベータ;60S酸性リボソームタンパク質PO;エズリン;ヌクレオホスミン;カルレチクリン;14−3−3タンパク質ガンマ;セプチン−11;アネキシンA2;ADPリボシル化因子様タンパク質2R;熱ショックコグネイト71kDaタンパク質;ミオシン軽ポリペプチド6;および主要ヴォールトタンパク質から成る群より選択される異なる分泌タンパク質バイオマーカーに特異的に結合するものである、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
陽性対照サンプルを含む、請求項13に記載のキット。
【請求項16】
陰性対照サンプルを含む、請求項13に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−510324(P2013−510324A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538076(P2012−538076)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/055953
【国際公開番号】WO2011/057239
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】