説明

高反応性合金用物品

【課題】汚染を受けにくい、チタンアルミナイドのような高反応性合金を溶融するのに用いることができるグラファイトるつぼを提供する。
【解決手段】高反応性合金用物品は、グラファイトるつぼ10と、るつぼの内部12に形成された少なくとも第1保護層16とを備える。第1保護層16を有するグラファイトるつぼ10を高反応性合金の溶融に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一般に、高反応性合金と共に用いる物品に関する。この発明は特に、チタンアルミナイドのような高反応性合金を溶融するのに用いることができるグラファイトるつぼに関する。
【背景技術】
【0002】
誘導溶融では、一般に、非導電性リフラクトリー合金酸化物から形成したるつぼ(クルーシブル)内で金属を加熱し、るつぼ内の金属装入物が溶融して液体形態になるまで加熱を継続する。チタンもしくはチタン合金のような高反応性金属を溶融する場合、代表的にはコールドウォール又はグラファイトるつぼを用いる真空誘導溶融を使用する。
【0003】
しかし、このような高反応性合金を溶融する場合、溶融が起こるのに必要な温度で合金中の元素が反応性であるため、難問が生じる。前述したように、ほとんどの誘導溶融システムは誘導炉内のるつぼにリフラクトリー合金酸化物を用いているが、チタンアルミナイド(TiAl)のような合金は、極めて高反応性であるため、るつぼ内に存在するリフラクトリー合金を攻撃し、チタン合金を汚染するおそれがある。例えば、代表的にはセラミックるつぼを回避するが、それは高反応性合金がるつぼを破壊し、チタン合金を酸素で汚染するおそれがあるからである。同様に、グラファイトるつぼを用いると、チタン及びアルミナイド両方がるつぼからの多量の炭素をチタン合金中に溶解するおそれがあり、その結果として汚染を生じる。このような汚染は、チタン合金の機械的特性の低下をもたらす。
【0004】
さらに、コールドるつぼ溶融には、上述した高反応性合金の処理に冶金学的利点があるが、低い過熱、スカル形成による収率低下、大電力の必要、溶融容量の限定など多数の技術的及び経済的制約もある。これらの制約によりその工業的利用可能性が限定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、汚染を受けにくい、現行の技術に比べて技術的及び経済的制約の少ない、高反応性合金の溶融に用いる物品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、グラファイトるつぼと、るつぼの内部に形成された少なくとも第1保護層とを備える、高反応性合金用物品を提供する。
【0007】
本発明は、グラファイトるつぼと、るつぼの内部に形成された少なくとも第1保護層と、第1保護層上に形成された少なくとも第2保護層とを備える、高反応性合金用物品を提供する。
【0008】
上記及び他の特徴、観点及び効果は以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0009】
本明細書は本発明を特定し明確に規定する特許請求の範囲を結論とするが、その実施形態は添付の図面を参照した以下の詳細な説明から理解できるはずである。なお、同一符号は同じ部品を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態は、一般に、高反応性合金と共に用いる、少なくとも1つの保護層を有する物品に関する。特に、本発明の実施形態は、以下に説明する通りの箔内張又は炭化物皮膜いずれかを含む保護層少なくとも1つを有するグラファイトるつぼに関する。
【0011】
図面を参照すると、図1は本発明に用いることのできるグラファイトるつぼ10の一実施形態を示す。グラファイトるつぼ10は、当業者に周知の誘導溶融に適当なグラファイトるつぼのいずれでもよい。グラファイトるつぼ10は溶融すべき合金を収容する内部12と外部14とを有する。
【0012】
グラファイトるつぼ10は、高反応性合金、例えばチタン、ハフニウム、イリジウム又はレニウム元素を含有する合金並びにニオブ又はニッケルを含有する改良型合金、例えばニオブシリサイド又はニッケルアルミナイドを溶融するのに使用することができる。一実施形態では、高反応性合金は、チタンアルミナイド(TiAl)を含み、特に高融点合金元素、例えばニオブ、タンタル、タングステン及びモリブデンを含有するTiAl合金を含む。前述したチタン合金は通常、約61重量%〜約71重量%のチタン、約25重量%〜約35重量%のアルミニウムを含有し、合金の残部が高融点合金元素及び少量の炭素、ホウ素、クロム、ケイ素、マンガン又はこれらの組合せからなる。ここで用いる用語「高反応性合金」は、液相で高い酸素吸収自由エネルギーを有する合金を指す。このような高反応性合金を溶融するのにグラファイトるつぼを用いる場合に上記炭素汚染問題が生起するおそれがあるのとは対照的に、本発明の実施形態は、図2に示すように、少なくともるつぼ10の内部12に適用した第1保護層16が存在するので、溶融合金の汚染の発生を軽減することができる。特に、第1保護層の存在は、溶融合金の炭素汚染を、溶融合金の炭素含量が約0.015重量%以下になるような程度まで軽減することができる。この炭素は、高反応性合金中に存在することのある炭素及びグラファイトるつぼの反応に由来する炭素両方を含む。
【0013】
第1保護層16は箔内張又は炭化物皮膜から構成することができる。さらに特定すると、一実施形態では、第1保護層16は、ニオブ、タンタル、タングステン及びモリブデンを含む上記高融点合金元素の少なくとも1種約100%以下から作成した箔内張から構成することができる。箔内張は、るつぼ10の内部12にプレス成形しても、予め成形し、所定位置に落とし込んでもよい。挿入したら、箔内張をるつぼのまわりへの機械的変形により所定位置に保持することができる。箔内張はどのような厚さでもよいが、箔内張の厚さは、一実施形態では約0.005mm〜約2mm、別の実施形態では約0.005mm〜約1.5mm、他の実施形態では約0.005mm〜約1mmとすることができる。さらに他の実施形態では箔内張の厚さを約0.025mmとすることができる。この時点で、所望の高反応性合金、例えばTiAlを箔内張りるつぼに入れ、通常約1370〜約1700℃(約2500〜約3100°F)の温度で溶融することができる。
【0014】
前述したように、得られる溶融合金が含有する炭素汚染物の量を、内張なしのるつぼで溶融した合金中に存在する汚染物の量と比較して、少なくすることができる。その理由は、箔内張が溶融合金を汚染物から2つの機構で保護することができるからである。第一に、箔内張は、第1段階で溶融合金がグラファイトるつぼに接触するのを防止することにより、汚染に対する障壁として作用する。第二に、箔内張は犠牲層として作用する。即ち、箔内張の一部が高温への露呈時に溶融しても、箔内張が溶融合金自身に含有される高融点合金元素の少なくとも1種から構成されているので、箔内張溶融部分は溶融合金を汚染しない。一般に、箔内張が高温への露呈時に溶融すると、その結果として、ほぼ規格限界±0.1重量%以下のニオブ、タンタル、タングステン又はモリブデンが、溶融合金内に最初から存在する同元素に加えて、溶融合金に添加されることになる。当業者であれば、箔内張を形成する高融点合金元素は、溶融する高反応性合金中に存在する最高の融点を有する高融点合金元素と同じものを選択すべきであることが理解できるはずである。
【0015】
別の実施形態では、第1保護層16は、前記高融点合金元素の少なくとも1種、即ちニオブ、タンタル、タングステン又はモリブデンをるつぼ10の内部12に付着し、次いで熱処理することにより形成した炭化物皮膜から構成することができる。特定すると、選択した高融点合金元素(1種又は複数種)を、当業者に周知の普通の方法、例えば蒸着又は大気圧プラズマ溶射により、るつぼ10の内部12に付着することができる。付着後、高融点合金元素を真空熱処理により炭化雰囲気中で熱処理するか、高融点合金元素を含有するるつぼを還元雰囲気中で加熱して、るつぼ10の内部12上に炭化物皮膜を生成する。るつぼ10内でTiAlなどの高反応性合金を溶融する場合、得られる溶融合金はやはり、未被覆るつぼで製造した溶融合金と比較して、相対的に少数の汚染物しか含有しない。高反応性合金とグラファイトるつぼとの反応に由来する炭素汚染の量を、未被覆るつぼの場合の汚染量と比較して、一実施形態では約50%以上、別の実施形態では約60%〜約99%、さらに他の実施形態では約75%〜約99%だけ減らすことができる。この汚染減少は、高反応性合金とグラファイトるつぼとの接触の減少によるものである。
【0016】
さらに他の実施形態では、グラファイトるつぼ10は少なくとも第1保護層16と第2保護層19を含むことができる。さらに特定すると、第1保護層16が箔内張から構成される場合、第2保護層18を炭化物皮膜から構成することができる。或いは、第1保護層16が炭化物皮膜から構成される場合、第2保護層18を箔層から構成することができる。第1保護層16又は第2保護層18のいずれが箔層又は炭化物皮膜であっても、両方とも前述した方法で適用することができる。
【0017】
第1保護層16及び第2保護層18両方を使用するのが望ましいこともある。それぞれの層により独立に得られる前述した効果に加えて、2つの保護層が一緒にるつぼ10の使用寿命を延ばすのに役立つからである。
【0018】
以上の説明では具体例を用いて、最良の形態を含む本発明を開示し、当業者が本発明を実施、利用できるようにした。本発明の特許性のある範囲は特許請求の範囲に記載したとおりであり、当業者が想起しうる他の実施例を包含する。このような他の実施例は、それが特許請求の範囲の文言から相違しない構造要素を有するか、特許請求の範囲の文言から実質的な相違のない均等な構造要素を有するのであれば、特許請求の範囲に入る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態によるるつぼを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による少なくとも1つの保護層を有するるつぼを示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による少なくとも第1及び第2保護層を有するるつぼを示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 グラファイトるつぼ
12 るつぼの内部
14 るつぼの外部
16 第1保護層
18 第2保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトるつぼ(10)の内部(12)に少なくとも第1保護層(16)を形成した、高反応性合金用物品。
【請求項2】
さらに、第1保護層(16)上に少なくとも第2保護層(18)を形成した、請求項1記載の物品。
【請求項3】
少なくとも第1保護層(16)を有するグラファイトるつぼ(10)を、チタン、ニオブ、ニッケル、ハフニウム、イリジウム及びレニウムからなる群から選択される元素を含む高反応性合金の溶融に用いる、請求項1又は請求項2記載の物品。
【請求項4】
第1保護層(16)が厚さ約0.005mm〜約2mmの箔内張を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の物品。
【請求項5】
第1保護層(16)が炭化物皮膜を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の物品。
【請求項6】
第1保護層(16)が箔内張を含み、第2保護層(18)が炭化物皮膜を含む、請求項2記載の物品。
【請求項7】
第1保護層(16)が炭化物皮膜を含み、第2保護層(18)が箔内張を含む、請求項2記載の物品。
【請求項8】
前記箔内張がニオブ、タンタル、タングステン及びモリブデンからなる群から選択される高融点合金元素から作成された、請求項4、請求項6又は請求項7記載の物品。
【請求項9】
前記炭化物皮膜が、ニオブ、タンタル、タングステン及びモリブデンからなる群から選択される高融点合金元素をるつぼの内部に付着し、この高融点合金元素を炭化雰囲気中で熱処理することにより形成された、請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の物品。
【請求項10】
前記箔内張が高反応性合金中のもっとも高い融点を有する高融点合金元素から作成された、請求項4、請求項6、請求項7又は請求項8記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−115441(P2009−115441A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321510(P2007−321510)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】