説明

高周波スイッチ回路

【課題】 受信期間に他の無線装置などから大電力の高周波信号が受信機に入力される場合においても、高周波電力を抑制し、受信機に対する保護回路としての機能を果たす高周波スイッチ回路を得る。
【解決手段】 高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と接地間に接続されたPINダイオードと、このPINダイオードをオン状態/オフ状態に切り替えるバイアス電圧を供給ことにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御部とを備え、前記PINダイオードがオフ状態である前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間がオン状態において、入力される高周波信号が所定の高周波電力以上のとき、前記PINダイオードがオン状態になることにより、出力される高周波電力の大きさを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波(RF)帯で使用するPINダイオードを用いたスイッチ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線装置において用いられる受信機は、微弱な高周波(RF)信号を増幅するため低雑音増幅器などの回路素子を一般に含むことが知られているが、低雑音増幅器はRF信号の耐電力性能が弱い。一方で、無線装置の構成品である送信機からの漏れRF信号や、他の無線装置からの大電力のRF入力信号は高いエネルギーレベルであるため、耐電力性能が弱い低雑音増幅器が故障することがある。したがって、耐電力性能の弱い低雑音増幅器などの回路を有する受信機を大電力のRF信号から保護する必要がある。
【0003】
受信機の構成品である低雑音増幅器などの回路素子を保護するために、受信機の前段に具備される保護回路においては、大電力のRF信号が入力された際に、高アイソレーション特性を有する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−292001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線装置の動作は、送信期間および受信期間が時分割された一連のパルス周期からなる。特開2001−292001号公報(特許文献1)に記載の高周波スイッチは、送信期間においては高周波スイッチをオフとすることにより高いアイソレーション特性を有するため、受信機の保護回路としての機能を果たすが、受信期間においては高周波スイッチがオンであるため、入力電力に比例して出力電力が増減するので、他の無線装置から大電力のRF信号が入力される場合、保護回路としての機能を果たすことができない。
【0006】
このような課題を解決するため、この発明は、受信期間に他の無線装置などから大電力のRF信号が受信機に入力される場合においても、RF電力を抑制し、受信機に対する保護回路としての機能を果たす高周波スイッチ回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る高周波スイッチ回路は、高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路と接地との間にシャント接続され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
前記高周波信号線路に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態に切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御部とを備えたものである。
【0008】
請求項2に係る高周波スイッチ回路は、高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路と接地との間にシャント接続され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
前記高周波信号線路に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態に切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御部とを備え、
前記PINダイオードがオフ状態である前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間がオン状態において、前記高周波入力端子に入力される高周波信号が所定の大きさの高周波電力以上のとき、前記PINダイオードがオン状態になることにより、前記高周波出力端子に出力される前記高周波信号の高周波電力の大きさを抑制するものである。
【0009】
請求項3に係る高周波スイッチ回路は、高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路に第1の端子が接続され、第2の端子が接地され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
一方の端子が前記高周波信号線路に接続され、使用周波数においてハイインピーダンスとなるハイインピーダンス回路と、
第1の端子が接地され、第2の端子が前記ハイインピーダンス回路の他方の端子に接続されたダイオードと、
前記ダイオードと前記ハイインピーダンス回路との接続点に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態と切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御端子とを備えたものである。
【0010】
請求項4に係る高周波スイッチ回路は、高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路に第1の端子が接続され、第2の端子が接地され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
一方の端子が前記高周波信号線路に接続され、使用周波数においてハイインピーダンスとなるハイインピーダンス回路と、
一方の端子が接地され、他方の端子が前記ハイインピーダンス回路の他方の端子に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサと前記ハイインピーダンス回路との接続点に第2の端子が接続されたダイオードと、
前記ダイオードの第1の端子に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態と切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御端子とを備えたものである。
【0011】
請求項5に係る高周波スイッチ回路は、高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路に第1の端子が接続され、第2の端子が接地され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
一方の端子が前記高周波信号線路に接続され、使用周波数においてハイインピーダンスとなるハイインピーダンス回路と、
第1の端子が接地され、第2の端子が前記ハイインピーダンス回路の他方の端子に接続されたダイオードと、
前記ダイオードと前記ハイインピーダンス回路との接続点に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態と切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御端子とを備え、
前記PINダイオードがオフ状態である前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間がオン状態において、前記高周波入力端子に入力される高周波信号が所定の大きさの高周波電力以上のとき、前記PINダイオードがオン状態になることにより、前記高周波出力端子に出力される前記高周波信号の高周波電力の大きさを抑制するものである。
【0012】
請求項6に係る高周波スイッチ回路は、高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路に第1の端子が接続され、第2の端子が接地され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
一方の端子が前記高周波信号線路に接続され、使用周波数においてハイインピーダンスとなるハイインピーダンス回路と、
一方の端子が接地され、他方の端子が前記ハイインピーダンス回路の他方の端子に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサと前記ハイインピーダンス回路との接続点に第2の端子が接続されたダイオードと、
前記ダイオードの第1の端子に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態と切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御端子とを備え、
前記PINダイオードがオフ状態である前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間がオン状態において、前記高周波入力端子に入力される高周波信号が所定の大きさの高周波電力以上のとき、前記PINダイオードがオン状態になることにより、前記高周波出力端子に出力される前記高周波信号の高周波電力の大きさを抑制するものである。
【0013】
請求項7に係る高周波スイッチ回路は、前記PINダイオードの第1の端子及び第2の端子はそれぞれアノード及びカソードであり、
前記ダイオードの第1の端子及び第2の端子はそれぞれアノード及びカソードである請求項3〜6のいずれかに記載のものである。
【0014】
請求項8に係る高周波スイッチ回路は、前記PINダイオードの第1の端子及び第2の端子はそれぞれカソード及びアノードであり、
前記ダイオードの第1の端子及び第2の端子はそれぞれカソード及びアノードである請求項3〜6のいずれかに記載のものである。
【0015】
請求項9に係る高周波スイッチ回路は、前記ダイオードは、ショットキーダイオードである請求項3〜8のいずれかに記載のものである。
【0016】
請求項10に係る高周波スイッチ回路は、前記PINダイオードの順方向電圧(Vf)は、前記ダイオードの順方向電圧(Vf)よりも大きい電圧である請求項3〜8のいずれかに記載のものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、送信期間においてはオフ動作し、受信期間においてはオン動作すると共に、受信期間に大電力のRF信号が入力された場合には、PINダイオードが導通状態となりリミッティング動作をすることにより、高周波スイッチ回路から出力されるRF電力が抑制される高周波スイッチ回路が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1の高周波スイッチ回路を用いた無線設備の機能ブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1における高周波スイッチ回路の構成を示す回路図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるPINダイオード11およびショットキーダイオード18の電圧・電流特性を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における制御端子20に切換信号として正のバイアス電圧(>Vf)が印加された場合のスイッチオフ状態の等価回路である。
【図5】この発明の実施の形態1における制御端子20に切換信号としてグランド電位又は開放(切換信号の出力端をハイインピーダンスにする)が印加された場合のスイッチオン状態で、かつ、RF入力端子21から入力されるRF信号の電力レベルが小さい場合の等価回路である。
【図6】この発明の実施の形態1における制御端子20に切換信号としてグランド電位又は開放(切換信号の出力端をハイインピーダンスにする)が印加された場合のスイッチオン状態で、かつ、入力端子21から入力されるRF信号の電力レベルが大きい場合の等価回路である。
【図7】図2の回路(この発明の実施の形態1)、図2の回路からショットキーダイオード18を削除した回路および特許文献1の回路におけるスイッチオン状態での入出力特性である。
【図8】この発明の実施の形態2における高周波スイッチ回路の構成を示す回路図である。
【図9】この発明の実施の形態2における制御端子20に正のバイアス電圧(>Vf)が印加された場合の等価回路である。
【図10】この発明の実施の形態2における制御端子20に切換信号としてグランド電位が印加された場合のスイッチオン状態で、かつ、RF入力端子21から入力されるRF信号の電力レベルが小さい場合の等価回路である。
【図11】この発明の実施の形態2における制御端子20に切換信号としてグランド電位が印加された場合のスイッチオン状態で、かつ、RF入力端子21から入力されるRF信号の電力レベルが大きい場合の等価回路である。
【図12】この本発明の実施の形態3における高周波スイッチ回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1の高周波スイッチ回路を用いた無線設備の機能ブロック図である。送受切替器2と受信機5の間に高周波スイッチ回路3が具備され、送信期間においては高周波スイッチ回路3はオフ状態であるので、送信期間における無線設備の送信機6からの漏れた大電力のRF信号は、高周波スイッチ回路3がオフ状態であることにより受信機5が保護され、受信期間においては高周波スイッチ回路3はオン状態であるので、受信期間における他の無線設備からの大電力のRF信号は、高周波スイッチ回路3の電力抑制機能で受信機5を保護する。
【0020】
高周波スイッチ回路3の具体的な構成および動作について、以下に説明する。
【0021】
図2は、この発明の実施の形態1における高周波スイッチ回路の構成を示す回路図である。図2において、RF入力端子21とRF出力端子22との間のRF主線路23にシリーズに接続されるDCカットコンデンサ12とDCカットコンデンサ13との間に、RF主線路23にアノードが、グランドにカソードが接続されるPINダイオード11が具備され、該PINダイオード11とDCカットコンデンサ13の間のRF主線路23にRFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14が接続される。RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14の他端と制御端子20は抵抗素子17を介して接続され、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14と抵抗素子17の接続点にカソードが、グランドにアノードが接続されるようにショットキーダイオード18が具備される。なお、RF入力端子21は図1における送受切替器2に、RF出力端子22は受信機5に接続される。なお、RFチョークコイル14、抵抗素子17、ショットキーダイオード18及び制御端子20でPINダイオード11をオン/オフする制御部10を構成している。
【0022】
図3は、この発明の実施の形態1におけるPINダイオード11およびショットキーダイオード18の電圧・電流特性を示す図であり。PINダイオード11およびショットキーダイオード18は、図3に示すようにアノード電位がカソード電位に対し、順方向電圧(Vf)よりも大きくなると導通状態となり、Vfよりも小さくなる(ダイオードの両端が同電位を含む)と非導通状態となる特性を有するため、制御端子20にはPINダイオード11の切換信号として正のバイアス電圧(>Vf)とグランド電位又は開放(切換信号の出力端をハイインピーダンスにする)を印加する。ここで、PINダイオード11とショットキーダイオード18におけるVfは異なる値であっても良いが、ショットキーダイオード18のVfはPINダイオード11のVfに対し小さい値である方が望ましい。
【0023】
図4は、この発明の実施の形態1における制御端子20に切換信号として正のバイアス電圧(>Vf)が印加された場合のスイッチオフ状態の等価回路である。この場合、制御端子20に印加された正のバイアス電圧(>Vf)は抵抗素子17、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14を介して、PINダイオード11に供給されるため、PINダイオード11は導通状態となり、PINダイオードのオン抵抗31がRF主線路23とグランド間に接続される。一方、ショットキーダイオード18は、アノード電位がカソード電位より小さいため、非導通状態となり、ショットキーダイオードの寄生容量19が接続される。
【0024】
PINダイオードのオン抵抗31の値は数オーム程度で十分に小さく、RF主線路23とPINダイオード11の接続点で短絡となるため、RF入力端子21から入力されたRF信号の大半は反射電力としてRF入力端子21に跳ね返され、RF出力端子22へ伝達されるRF信号は極小となり、RF入力端子21とRF出力端子22との間は、高アイソレーションを実現する。
【0025】
図5は、この発明の実施の形態1における制御端子20に切換信号としてグランド電位又は開放(切換信号の出力端をハイインピーダンスにする)が印加された場合のスイッチオン状態で、かつ、RF入力端子21から入力されるRF信号の電力レベルが小さい場合の等価回路である。この場合、PINダイオード11は非導通状態となり、PINダイオードの接合容量32がRF主線路23とグランド間に接続される。一方、ショットキーダイオード18は、アノードの電位がカソードの電位に対しVfより小さいため、非導通状態となり、ショットキーダイオードの寄生容量19が接続され、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14とRF主線路23との接続点からRFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14側を見たインピーダンスが、ハイインピーダンスとなる。
RF入力端子21から入力された低いレベルのRF電力は、RF出力端子22へ伝播されるため、RF入力端子21とRF出力端子22との間は、低損失を実現する。尚、より低損失でRF入力端子21からRF出力端子22にRF電力を伝播させるために、該RF信号の周波数に対する整合回路を適宜付与しても良い。
【0026】
図6は、この発明の実施の形態1における制御端子20に切換信号としてグランド電位又は開放(切換信号の出力端をハイインピーダンスにする)が印加された場合のスイッチオン状態で、かつ、入力端子21から入力されるRF信号の電力レベルが大きい場合の等価回路である。一定の電力以上の大きい電力レベルのRF信号が入力されると、PINダイオード11は自己整流作用により、RF主線路23からグランド方向へ順方向電流が流れ、PINダイオードのオン抵抗31が接続される。また、この順方向電流に対するグランドからRF主線路23へのDCリターン電流を供給する経路としてショットキーダイード18が機能し、ショットキーダイオード18は導通状態となり、ショットキーダイオードのオン抵抗33が接続される。ショットキーダイオードのオン抵抗33はDCリターン電流の供給に影響を与えない数オーム程度以下の十分に小さな値である。
【0027】
PINダイオードのオン抵抗31の値は数オーム程度で十分に小さく、RF主線路23とPINダイオード11の接続点で短絡となるため、RF入力端子21から入力されたRF信号の大半は反射電力としてRF入力端子21に跳ね返され、一定の電力レベル以上のRF信号はRF出力端子22へ伝播されないリミッティング特性が現れる。
【0028】
このように、この発明の実施の形態1によれば、RF入力端子21とRF出力端子22との間がオン状態において、一定の電力レベル以上のRF信号は伝播されない、リッミタとしての作用効果を有する高周波スイッチ回路が得られる。
【0029】
また、PINダイオード11に整流電流を供給するように、ショットキーダイオード18をDCリターン経路とすることにより、PINダイオード11が安定的に導通状態となり、出力電力を抑制することできるため、受信期間においても大電力のRF信号から受信機を保護することができる。
【0030】
また、RF入力端子21とRF出力端子22との間をオン/オフするスイッチとしての動作と、RF入力端子21とRF出力端子22との間がオン状態において、一定の電力レベル以上のRF信号は抑制されるリミッタとしての動作をPINダイオード11が兼ね備えているので、回路の小型化、低損失化が図れる。
【0031】
図7は、図2の回路(この発明の実施の形態1)、図2の回路からショットキーダイオード18を削除した回路および特許文献1の回路におけるスイッチオン状態での入出力特性である。図2の回路の場合、PINダイオード11のリミッティング特性により比較的大きな出力電力の抑制ができているのに対し、図2の回路からショットキーダイオード18を削除した回路は、制御端子20に切換信号としてグランド電位を印加した状態においても抵抗素子17にてDCリターン電流が抑制され、PINダイオード11を十分な導通状態にするための電流が確保できなくなり、RF出力端子22に出力される出力電力の抑制量が減少する。一方、特許文献1の回路のようにPINダイオード11に代えてショットキーダイオードを適用した場合は、入力電力に比例して出力電力が増減する。
なお、PINダイオード11のリミッティング特性をより効果的に作用させるためには、PINダイオード11は、リミッタ用PINダイオードを用いる。
【0032】
この発明の実施の形態1においては、RF主線路23にアノードが、グランドにカソードが接続されるPINダイオード11が具備され、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14と抵抗素子17の接続点にカソードが、グランドにアノードが接続されるようにショットキーダイオード18が具備されているが、RF主線路23にカソードが、グランドにアノードが接続されるPINダイオード11が具備され、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14と抵抗素子17の接続点にアノードが、グランドにカソードが接続されるようにショットキーダイオード18が具備されてもよい。なお、この場合は、制御端子20に切換信号として負のバイアス電圧(<−Vf)が印加された場合にスイッチオフ状態となる。
【0033】
実施の形態2.
図8は、この発明の実施の形態2における高周波スイッチ回路の構成を示す回路図である。本構成は、この発明の実施の形態1を示す図2の抵抗素子17をショットキーダイオード18に、ショットキーダイオード18をRFショートコンデンサ15にしたものである。図8において、図2と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。なお、RFチョークコイル14、RFショートコンデンサ15、ショットキーダイオード18及び制御端子20でPINダイオード11をオン/オフする制御部10を構成している。本構成における制御端子20に印加されるPINダイオード11の切換信号としては正のバイアス電圧(>Vf)とグランド電位となる。
【0034】
図9は、この発明の実施の形態2における制御端子20に正のバイアス電圧(>Vf)が印加された場合の等価回路であり、この発明の実施の形態1と同様の動作により高アイソレーション特性を実現する。図9において、図4と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
すなわち、制御端子20に印加された正のバイアス電圧(>Vf)はショットキーダイオード18をオンし、ショットキーダイオード18のオン抵抗33及びRFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14を介して、PINダイオード11に供給されるため、PINダイオード11は導通状態となり、PINダイオードのオン抵抗31がRF主線路23とグランド間に接続される。
【0035】
PINダイオードのオン抵抗31の値は数オーム程度で十分に小さく、RF主線路23とPINダイオード11の接続点で短絡となるため、RF入力端子21から入力されたRF信号の大半は反射電力としてRF入力端子21に跳ね返され、RF出力端子22へ伝達されるRF信号は極小となり、RF入力端子21とRF出力端子22との間は、高アイソレーションを実現する。
【0036】
図10は、この発明の実施の形態2における制御端子20に切換信号としてグランド電位が印加された場合のスイッチオン状態で、かつ、RF入力端子21から入力されるRF信号の電力レベルが小さい場合の等価回路である。図10において、図5と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。PINダイオード11およびショットキーダイオード18の動作原理はこの発明の実施の形態1の記載と同様で、低損失を実現する。
【0037】
すなわち、この場合、PINダイオード11は非導通状態となり、PINダイオードの接合容量32がRF主線路23とグランド間に接続される。一方、ショットキーダイオード18は、アノードの電位がカソードの電位に対しVfより小さいため、非導通状態となり、ショットキーダイオードの寄生容量19が接続され、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14とRF主線路23との接続点からRFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14側を見たインピーダンスが、ハイインピーダンスとなる。従って、RF入力端子21から入力された低いレベルのRF電力は、RF出力端子22へ伝播されるため、RF入力端子21とRF出力端子22との間は、低損失を実現する。
【0038】
図11は、この発明の実施の形態2における制御端子20に切換信号としてグランド電位が印加された場合のスイッチオン状態で、かつ、RF入力端子21から入力されるRF信号の電力レベルが大きい場合の等価回路である。図11において、図6と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この場合におけるPINダイオード11およびショットキーダイオード18の動作原理はこの発明の実施の形態1の記載と同様で、出力電力を抑制することができる。
【0039】
すなわち、一定の電力以上の大きい電力レベルのRF信号が入力されると、PINダイオード11は自己整流作用により、RF主線路23からグランド方向へ順方向電流が流れ、PINダイオードのオン抵抗31が接続される。また、この順方向電流に対するグランドからRF主線路23へのDCリターン電流を供給する経路としてショットキーダイード18が機能し、ショットキーダイオード18は導通状態となり、ショットキーダイオードのオン抵抗33が接続される。ショットキーダイオードのオン抵抗33はDCリターン電流の供給に影響を与えない数オーム程度以下の十分に小さな値である。
【0040】
PINダイオードのオン抵抗31の値は数オーム程度で十分に小さく、RF主線路23とPINダイオード11の接続点で短絡となるため、RF入力端子21から入力されたRF信号の大半は反射電力としてRF入力端子21に跳ね返され、一定の電力レベル以上のRF信号はRF出力端子22へ伝播されないリミッティング特性が現れる。
【0041】
このように、この発明の実施の形態2によれば、RF入力端子21とRF出力端子22との間がオン状態において、一定の電力レベル以上のRF信号は伝播されない、リッミタとしての作用効果を有する高周波スイッチ回路が得られる。
【0042】
また、PINダイオード11に整流電流を供給するように、ショットキーダイオード18をDCリターン経路とすることにより、PINダイオード11が安定的に導通状態となり、出力電力を抑制することできるため、受信期間においても大電力のRF信号から受信機を保護することができる。
【0043】
また、RF入力端子21とRF出力端子22との間をオン/オフするスイッチとしての動作と、RF入力端子21とRF出力端子22との間がオン状態において、一定の電力レベル以上のRF信号は抑制されるリミッタとしての動作をPINダイオード11が兼ね備えているので、回路の小型化、低損失化が図れる。
【0044】
この発明の実施の形態2においては、RF主線路23にアノードが、グランドにカソードが接続されるPINダイオード11が具備され、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14とRFショートコンデンサ15との接続点にカソードが、制御端子20にアノードが接続されるようにショットキーダイオード18が具備されているが、RF主線路23にカソードが、グランドにアノードが接続されるPINダイオード11が具備され、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14とRFショートコンデンサ15との接続点にアノードが、制御端子20にカソードが接続されるようにショットキーダイオード18を具備してもよい。なお、この場合は、制御端子20に切換信号として負のバイアス電圧(<−Vf)が印加された場合にスイッチオフ状態となる。
【0045】
実施の形態3.
図12は、この発明の実施の形態3における高周波スイッチ回路の構成を示す回路図である。図12において、図2と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この発明の実施の形態3は、この発明の実施の形態1に対して、ショットキーダイオード18に並列にRFショートコンデンサ15を具備したものである。なお、RFチョークコイル14、RFショートコンデンサ15、抵抗素子17、ショットキーダイオード18及び制御端子20でPINダイオード11をオン/オフする制御部10を構成している。動作原理および作用・効果はこの発明の実施の形態1の記載と同様である。また、PINダイオード11及びショットキーダイオード18のそれぞれのアノード及びカソードの電極の接続方向が、図12に記載の方向と反転しても良いことも、この発明の実施の形態1と同様である。
【0046】
ショットキーダイオードの寄生容量は、1ピコファラド以下と小さい値であるため、使用周波数においてRFショートコンデンサ15のインピーダンスが略ゼロオームになるように、RFショートコンデンサ15の静電容量を数ピコファラド以上の値に選定することにより、スイッチオンの状態において、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14とRF主線路23との接続点からRFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14側を見たインピーダンスが、この発明の実施の形態1よりも大きくなるので、RFチョークコイル(もしくは使用周波数の略1/4波長線路)14の影響が小さくなり、スイッチオンの状態におけるRF入力端子21とRF出力端子22との間の損失が、この発明の実施の形態1よりも小さくなる効果がある。
【符号の説明】
【0047】
1 アンテナ
2 送受切替器
3 高周波スイッチ回路
5 受信機
6 送信機
10 制御部
11 PINダイオード
12 DCカットコンデンサ
13 DCカットコンデンサ
14 RFチョークコイル もしくは 使用周波数の略1/4波長線路
15 RFショートコンデンサ
17 シリーズ接続抵抗素子
18 ショットキーダイオード
19 ショットキーダイオードの寄生容量
20 制御端子
21 RF入力端子(高周波入力端子)
22 RF出力端子(高周波出力端子)
23 RF主線路(高周波信号線路)
31 PINダイオードのオン抵抗
32 PINダイオードの接合容量
33 ショットキーダイオードのオン抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路と接地との間にシャント接続され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
前記高周波信号線路に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態に切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御部とを備えた高周波スイッチ回路。
【請求項2】
高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路と接地との間にシャント接続され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
前記高周波信号線路に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態に切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御部とを備え、
前記PINダイオードがオフ状態である前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間がオン状態において、前記高周波入力端子に入力される高周波信号が所定の大きさの高周波電力以上のとき、前記PINダイオードがオン状態になることにより、前記高周波出力端子に出力される前記高周波信号の高周波電力の大きさを抑制する高周波スイッチ回路。
【請求項3】
高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路に第1の端子が接続され、第2の端子が接地され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
一方の端子が前記高周波信号線路に接続され、使用周波数においてハイインピーダンスとなるハイインピーダンス回路と、
第1の端子が接地され、第2の端子が前記ハイインピーダンス回路の他方の端子に接続されたダイオードと、
前記ダイオードと前記ハイインピーダンス回路との接続点に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態と切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御端子とを備えた高周波スイッチ回路。
【請求項4】
高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路に第1の端子が接続され、第2の端子が接地され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
一方の端子が前記高周波信号線路に接続され、使用周波数においてハイインピーダンスとなるハイインピーダンス回路と、
一方の端子が接地され、他方の端子が前記ハイインピーダンス回路の他方の端子に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサと前記ハイインピーダンス回路との接続点に第2の端子が接続されたダイオードと、
前記ダイオードの第1の端子に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態と切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御端子とを備えた高周波スイッチ回路。
【請求項5】
高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路に第1の端子が接続され、第2の端子が接地され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
一方の端子が前記高周波信号線路に接続され、使用周波数においてハイインピーダンスとなるハイインピーダンス回路と、
第1の端子が接地され、第2の端子が前記ハイインピーダンス回路の他方の端子に接続されたダイオードと、
前記ダイオードと前記ハイインピーダンス回路との接続点に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態と切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御端子とを備え、
前記PINダイオードがオフ状態である前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間がオン状態において、前記高周波入力端子に入力される高周波信号が所定の大きさの高周波電力以上のとき、前記PINダイオードがオン状態になることにより、前記高周波出力端子に出力される前記高周波信号の高周波電力の大きさを抑制する高周波スイッチ回路。
【請求項6】
高周波入力端子と高周波出力端子とを有する高周波信号線路と、
前記高周波信号線路に第1の端子が接続され、第2の端子が接地され、所定の大きさ以上の高周波電力の入力によりオン状態に遷移するPINダイオードと、
一方の端子が前記高周波信号線路に接続され、使用周波数においてハイインピーダンスとなるハイインピーダンス回路と、
一方の端子が接地され、他方の端子が前記ハイインピーダンス回路の他方の端子に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサと前記ハイインピーダンス回路との接続点に第2の端子が接続されたダイオードと、
前記ダイオードの第1の端子に接続され、前記PINダイオードをオン状態/オフ状態と切り替えるバイアス電圧を供給することにより、前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間をオフ状態/オン状態に切り替える制御端子とを備え、
前記PINダイオードがオフ状態である前記高周波入力端子と前記高周波出力端子との間がオン状態において、前記高周波入力端子に入力される高周波信号が所定の大きさの高周波電力以上のとき、前記PINダイオードがオン状態になることにより、前記高周波出力端子に出力される前記高周波信号の高周波電力の大きさを抑制する高周波スイッチ回路。
【請求項7】
前記PINダイオードの第1の端子及び第2の端子はそれぞれアノード及びカソードであり、
前記ダイオードの第1の端子及び第2の端子はそれぞれアノード及びカソードである請求項3〜6のいずれかに記載の高周波スイッチ回路。
【請求項8】
前記PINダイオードの第1の端子及び第2の端子はそれぞれカソード及びアノードであり、
前記ダイオードの第1の端子及び第2の端子はそれぞれカソード及びアノードである請求項3〜6のいずれかに記載の高周波スイッチ回路。
【請求項9】
前記ダイオードは、ショットキーダイオードである請求項3〜8のいずれかに記載の高周波スイッチ回路。
【請求項10】
前記PINダイオードの順方向電圧(Vf)は、前記ダイオードの順方向電圧(Vf)よりも大きい電圧である請求項3〜8のいずれかに記載の高周波スイッチ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−74500(P2013−74500A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212746(P2011−212746)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】