説明

高周波フロントエンドモジュール

【課題】従来回路と同等の機能を有しながら回路規模が小さい高周波フロントエンドモジュールを実現する。
【解決手段】高周波フロントエンドモジュール10は、パワーアンプ11,12、送信側フィルタ211,221、受信側フィルタ20、スイッチIC30を備える。第1送信信号は、第1送信信号入力端子Ptx1からパワーアンプ11、送信側フィルタ211を介して、第1共通端子Pc1へ出力される。第2送信信号は、第2送信信号入力端子Ptx2からパワーアンプ12、送信側フィルタ221を介して、第2共通端子Pc2へ出力される。第1共通端子Pc1から入力された第1受信信号および第2共通端子Pc2から入力された第2受信信号は、スイッチIC30を介して、第1受信信号と第2受信信号に共通の受信側フィルタ20へ入力され、受信側フィルタ20から受信信号出力端子Prx12へ出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信周波数帯域が異なる複数の通信信号を、これら複数の通信信号に対する共通のアンテナで送受信するための高周波フロントエンドモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信周波数帯域が異なる複数の通信信号を送受信する高周波フロントエンドモジュールが各種実用化されている。この中で、複数の通信信号に対する共通のアンテナによって、該複数の通信信号を送受信する高周波フロントエンドモジュールがある。
【0003】
このような共通アンテナを用いる場合、一般的には、スイッチ素子により、各通信信号の送受信回路を共通アンテナに切り替えて接続する。さらに、各通信信号の送信回路と受信回路は、特許文献1に示すように、送信周波数を通過させるフィルタと受信周波数を通過させるフィルタとから構成されるデュプレクサを介してスイッチ素子に接続される。
【0004】
ところで、現在規定されているW−CDMA(Wide Band Code Division Multiple Access)通信方式においては、Band1の通信信号の受信周波数帯域が2110MHzから2170MHzであり、Band4の通信信号の受信周波数帯域が2110MHzから2155MHzである。したがって、Band1の通信信号の受信周波数帯域とBand4の通信信号の受信周波数帯域とは部分的に重なる。
【0005】
このような場合、従来では、図1に示すような高周波フロントエンドモジュールが用いられていた。図1は、従来の高周波フロントエンドモジュール10Pの回路図である。高周波フロントエンドモジュール10Pは、パワーアンプ11,12、デュプレクサ21,22、スイッチIC30Pを備える。
【0006】
第1送信信号入力端子Ptx1から入力された第1通信信号の送信信号(第1送信信号)は、パワーアンプ11、デュプレクサ21の送信側フィルタ211を介して第1共通端子Pc1へ出力される。
【0007】
第2送信信号入力端子Ptx2から入力された第2通信信号の送信信号(第2送信信号)は、パワーアンプ12、デュプレクサ22の送信側フィルタ221を介して第2共通端子Pc2へ出力される。第1共通端子Pc1から出力された第1送信信号および第2共通端子Pc2から出力された第2送信信号は、図示しないスイッチ素子を介して共通アンテナから外部へ送信される。
【0008】
共通アンテナ、スイッチ素子(ともに図示せず)を介して第1共通端子Pc1に入力された第1通信信号の受信信号(第1受信信号)は、デュプレクサ21の受信側フィルタ212を介して、スイッチIC30Pへ出力される。
【0009】
共通アンテナ、スイッチ素子(ともに図示せず)を介して第2共通端子Pc2に入力された第2通信信号の受信信号(第2受信信号)は、デュプレクサ22の受信側フィルタ222を介して、スイッチIC30Pへ出力される。
【0010】
スイッチIC30Pは、第1受信信号の受信制御時には第1受信信号を受信信号出力端子Prx12へ出力し、第2受信信号の受信制御時には第2受信信号を受信信号出力端子Prx12へ出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−045563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図1に示したような従来の高周波フロントエンドモジュール10Pでは、通信信号毎にデュプレクサを備えているため、回路規模が大きくなってしまう。また、受信信号に対して当該高周波フロントエンドモジュール10Pの後段となる受信信号の復調回路等の仕様から、受信信号は、通常、平衡型信号で出力される必要があり、従来のスイッチIC30Pは、DP4Tスイッチとなっている。この点においても、回路規模が大きくなる。したがって、従来の高周波フロントエンドモジュール10Pは、小型化が困難となっていた。
【0013】
したがって、本発明の目的は、従来の高周波フロントエンドモジュールと同等の機能を有しながら、回路規模が小さい高周波フロントエンドモジュールを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、第1通信信号を構成する第1送信信号および第1受信信号と、第2通信信号を構成する第2送信信号および第2受信信号と、を送受信する高周波フロントエンドモジュールに関するものである。この高周波フロントエンドモジュールは、第1送信信号が入力される第1送信信号入力端子と、第1送信信号を出力し前記第1受信信号を入力する第1共通端子と、を備える。高周波フロントエンドモジュールは、第2送信信号が入力される第2送信信号入力端子と、第2送信信号を出力し第2受信信号を入力する第2共通端子と、を備える。高周波フロントエンドモジュールは、第1受信信号および第2受信信号を出力する受信信号出力端子を備える。高周波フロントエンドモジュールは、第1送信信号入力端子と第1共通端子との間に接続され第1送信信号の周波数帯域を通過帯域として第1受信信号の周波数帯域が減衰帯域内となる第1送信側フィルタと、第2送信信号入力端子と第2共通端子との間に接続され第2送信信号の周波数帯域を通過帯域として第2受信信号の周波数帯域が減衰帯域内となる第2送信側フィルタと、を備える。高周波フロントエンドモジュールは、第1共通端子および第2共通端子がそれぞれ接続される複数の個別ポート、および当該複数の個別ポートが個別に切り替えて接続される共通ポートを備えたスイッチ素子と、共通ポートと受信信号出力端子との間に接続され、第1受信信号および第2受信信号の周波数帯域を通過帯域とする受信側フィルタと、を備える。
【0015】
この構成では、第1共通端子および第2共通端子から入力される第1受信信号および第2受信信号が、スイッチ素子によって選択的に受信側フィルタへ入力される。受信側フィルタでは、第1受信信号および第2受信信号の周波数帯域成分が濾波され、受信信号出力端子から、後段回路(復調回路等)へ出力される。これにより、受信信号毎に個別に受信フィルタを備えなくてもよく、回路規模を小さくすることができ、高周波フロントエンドモジュールを小型化できる。
【0016】
また、この発明の受信側フィルタは、第1受信信号の周波数帯域を通過帯域とする第1の受信側フィルタと、第2受信信号の周波数帯域を通過帯域とする第2の受信側フィルタとで構成することも可能である。
【0017】
この構成であっても、従来構成よりも回路規模を小さくすることができる。
【0018】
また、この発明の高周波フロントエンドモジュールでは、第1受信信号の周波数帯域と第2受信信号の周波数帯域とが、少なくとも一部の周波数帯域で重なることが好ましい。
【0019】
この構成では、受信側フィルタの通過帯域が、一方の受信信号の周波数帯域と、これに重ならない他方の受信信号の周波数帯域とを含む範囲で済み、受信側フィルタの通過帯域が広帯域にならず、各送信信号の周波数帯域からも離間しやすいので、設計が容易となる。
【0020】
また、この発明の高周波フロントエンドモジュールでは、第1受信信号の周波数帯域が第2受信信号の周波数帯域を含む場合にも適用可能である。
【0021】
この構成では、受信側フィルタの通過帯域を、第1受信信号の周波数帯域に設定すればよく、さらに受信側フィルタの設計が容易になる。
【0022】
また、この発明の高周波フロントエンドモジュールでは、受信側フィルタは、第1送信側フィルタまたは第2送信側フィルタとでデュプレクサを構成することが好ましい。
【0023】
この構成では、受信側フィルタと一方の送信側フィルタとが一体化されることで、高周波フロントエンドモジュールを、さらに小型化できる。
【0024】
また、この発明の高周波フロントエンドモジュールでは、第1送信側フィルタ、第2送信側フィルタおよび受信側フィルタは、SAWフィルタであることが好ましい。
【0025】
この構成では、各フィルタの具体的な構成を示している。SAWフィルタの場合、高周波フロントエンドモジュールを構成する積層体内の電極パターンでは実現が容易でなく、実装部品となるため、上述の回路構成がより有効に作用する。
【0026】
また、この発明の高周波フロントエンドモジュールでは、受信側フィルタは、不平衡−平衡変換機能付きフィルタであり、平衡端子側が受信信号出力端子へ接続されていることが好ましい。
【0027】
この構成では、スイッチ素子が、不平衡信号用となるため、平衡信号用スイッチ素子よりも小型化が可能になる。これにより、高周波フロントエンドモジュールを、さらに小型化できる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、回路規模が小さい高周波フロントエンドモジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の高周波フロントエンドモジュール10Pの回路図である。
【図2】第1の実施形態に係る高周波フロントエンドモジュール10の回路図である。
【図3】受信側フィルタ20の減衰特性(通過特性)を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る高周波フロントエンドモジュール10Aの回路図である。
【図5】その他の構成からなる高周波フロントエンドモジュール10Bの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の実施形態に係る高周波フロントエンドモジュール10について、図を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る高周波フロントエンドモジュール10の回路図である。
【0031】
高周波フロントエンドモジュール10は、パワーアンプ11,12、送信側フィルタ211,221、受信側フィルタ20、スイッチIC30を備える。
【0032】
第1送信信号入力端子Ptx1は、パワーアンプ11の入力端に接続している。パワーアンプ11の出力端は、第1送信側フィルタに相当する送信側フィルタ211に接続している。
【0033】
送信側フィルタ211は、第1通信信号の送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、第1通信信号の受信信号、第2通信信号の送信信号、および第2通信信号の受信信号の周波数帯域が減衰帯域内となるフィルタである。例えば、送信側フィルタ211はSAWフィルタで構成される。なお、以下では、第1通信信号の送信信号を第1送信信号と称し、第1通信信号の受信信号を第1受信信号と称する。また、第2通信信号の送信信号を第2送信信号と称し、第2通信信号の受信信号を第2受信信号と称する。
【0034】
送信側フィルタ211のパワーアンプ11と反対側の端子は、第1共通端子Pc1に接続している。
【0035】
第2送信信号入力端子Ptx2は、パワーアンプ12の入力端に接続している。パワーアンプ12の出力端は、第2送信側フィルタに相当する送信側フィルタ221に接続している。
【0036】
送信側フィルタ221は、第2送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、第2受信信号、第1送信信号、および第1受信信号の周波数帯域が減衰帯域内となるフィルタである。例えば、送信側フィルタ221はSAWフィルタで構成される。
【0037】
送信側フィルタ221のパワーアンプ12と反対側の端子は、第2共通端子Pc2に接続している。
【0038】
スイッチIC30は、共通ポートと第1、第2個別ポートとを備える。共通ポートは第1個別ポートまたは第2個別ポートに対して、選択的に接続される。すなわち、外部からの制御信号により、共通ポートは、第1個別ポートと第2個別ポートのいずれかに接続する。
【0039】
スイッチIC30の第1個別ポートは、第1共通端子Pc1に接続している。スイッチIC30の第2個別ポートは、第2共通端子Pc2に接続している。スイッチIC30の共通ポートは、受信側フィルタ20に接続している。
【0040】
受信側フィルタ20は、第1受信信号および第2受信信号の周波数帯域を通過帯域とし、第1送信信号、第2送信信号の周波数帯域が減衰帯域内となるフィルタである。例えば、受信側フィルタ20は、不平衡−平衡変換機能付きのSAWフィルタで構成される。
【0041】
受信側フィルタ20の不平衡端子は、スイッチIC30に接続している。受信側フィルタ20の平衡端子は、平衡型の受信信号出力端子Prx12に接続している。
【0042】
このような構成の高周波フロントエンドモジュール10において、第1通信信号としてW−CDMA(Band1)信号を送受信し、第2通信信号としてW−CDMA(Band4)信号を送受信する。
【0043】
この場合、受信側フィルタ20の減衰特性は、図3に示すように設定される。図3は受信側フィルタ20の減衰特性(通過特性)を示す図である。図3に示すように、受信側フィルタ20は、第1受信信号であるW−CDMA(Band1)の受信信号の周波数帯域(2110MHz〜2170MHz)、および、第2受信信号であるW−CDMA(Band4)の受信信号の周波数帯域(2110MHz〜2155MHz)が通過帯域となるよう特性が設定されている。すなわち、W−CDMA(Band4)の受信信号の周波数帯域がW−CDMA(Band1)の受信信号の周波数帯域に含まれるため、W−CDMA(Band1)の受信信号の周波数帯域である2110MHz〜2170MHzを通過帯域とし、この帯域に対して周波数軸上で前後する周波数帯を減衰帯域とするように、設定されている。
【0044】
(i)W−CDMA(Band1)送信信号(第1送信信号)の送信時
この場合、スイッチIC30は、共通ポートと第2個別ポートとが接続されるように、すなわち共通端子と第1個別端子とが接続されないように、制御されている。
【0045】
このように第1送信信号の送信時に、スイッチIC30の第1個別ポートと共通ポートが接続されないようにすることで、第1送信信号が第1個別ポートと共通ポートを経由して、受信信号出力端子Prx12へ漏洩することを防ぐことができる。
【0046】
W−CDMA(Band1)送信信号は、第1送信信号入力端子Ptx1から入力され、パワーアンプ11で増幅される。増幅後のW−CDMA(Band1)送信信号は、送信側フィルタ211で高調波除去され、第1共通端子Pc1から出力される。第1共通端子Pc1から出力されたW−CDMA(Band1)送信信号は、図示しないスイッチ回路を介して共通アンテナから送信される。
【0047】
(ii)W−CDMA(Band1)受信信号(第1受信信号)の受信時
この場合、スイッチIC30は、共通端ポートと第1個別ポートとが接続されるように、制御されている。
【0048】
第1共通端子Pc1から入力されたW−CDMA(Band1)受信信号は、スイッチIC30の第1個別ポートへ伝送される。この際、W−CDMA(Band1)受信信号は、送信側フィルタ211にも伝送されるが、送信側フィルタ211はW−CDMA(Band1)受信信号の周波数帯域が減衰帯域内であるので、パワーアンプ11側には、W−CDMA(Band1)受信信号が伝送されない。
【0049】
W−CDMA(Band1)受信信号は、スイッチICの第1個別ポートから共通ポートへ伝送され、受信側フィルタ20へ入力される。受信側フィルタ20は、W−CDMA(Band1)受信信号を通過させるとともに、高調波のノイズ成分等を除去して、受信信号出力端子Prx12へ出力する。この際、受信側フィルタ20は、不平衡型のW−CDMA(Band1)受信信号を平衡型へ変換して出力する。
【0050】
平衡型のW−CDMA(Band1)受信信号は、受信信号出力端子Prx12から、図示しない後段回路(復調回路等)へ出力される。
【0051】
(iii)W−CDMA(Band4)送信信号(第2送信信号)の送信時
この場合、スイッチIC30は、共通ポートと第1個別ポートとが接続されるように、すなわち共通ポートと第2個別ポートとが接続されないように、制御されている。
【0052】
このように第2送信信号の送信時に、スイッチIC30の第2個別ポートと共通ポートが接続されないようにすることで、第2送信信号が第2個別ポートと共通ポートを経由して、受信信号出力端子Prx12へ漏洩することを防ぐことができる。
【0053】
W−CDMA(Band4)送信信号は、第2送信信号入力端子Ptx2から入力され、パワーアンプ12で増幅される。増幅後のW−CDMA(Band4)送信信号は、送信側フィルタ221で高調波除去され、第2共通端子Pc2から出力される。第2共通端子Pc2から出力されたW−CDMA(Band4)送信信号は、図示しないスイッチ回路を介して共通アンテナから送信される。
【0054】
(iv)W−CDMA(Band4)受信信号(第2受信信号)の受信時
この場合、スイッチIC30は、共通ポートと第2個別ポートとが接続されるように、制御されている。
【0055】
第2共通端子Pc2から入力されたW−CDMA(Band4)受信信号は、スイッチIC30の第2個別ポートへ伝送される。この際、W−CDMA(Band4)受信信号は、送信側フィルタ221にも伝送されるが、送信側フィルタ221はW−CDMA(Band4)受信信号の周波数帯域が減衰帯域内であるので、パワーアンプ12側には、W−CDMA(Band4)受信信号が伝送されない。
【0056】
W−CDMA(Band4)受信信号は、スイッチICの第2個別ポートから共通ポートへ伝送され、受信側フィルタ20へ入力される。受信側フィルタ20は、W−CDMA(Band4)受信信号を通過させるとともに、高調波のノイズ成分等を除去して、受信信号出力端子Prx12へ出力する。この際、受信側フィルタ20は、不平衡型のW−CDMA(Band4)受信信号を平衡型へ変換して出力する。
【0057】
平衡型のW−CDMA(Band4)受信信号は、受信信号出力端子Prx12から、図示しない後段回路(復調回路等)へ出力される。
【0058】
このような構成からなる高周波フロントエンドモジュール10は、内層電極が形成された積層体と、実装回路素子とで形成される。上述の送信側フィルタ211,221,受信側フィルタ20、スイッチIC30は、積層体上等に実装されるディスクリート部品である。そして、これらのディスクリート部品を接続する回路パターンや上述の各端子が積層体に形成されている。
【0059】
このため、本実施形態の構成を用いることで、従来例と比較して回路素子数を少なくでき、さらに送信側フィルタと受信側フィルタとが一体形成されたデュプレクサを通信信号の種類毎に設置しなくてもよくなる。これにより、高周波フロントエンドモジュール10を小型化することできる。この際、小型化しても、従来の高周波フロントエンドモジュールと同等の通信特性を得ることができる。
【0060】
また、スイッチIC30がSPDT(Single Pole Double Throw)型となるので、従来のようにDPDT型よりも入出力端子数が低減され、さらに高周波フロントエンドモジュールを小型化することができる。
【0061】
次に、第2の実施形態に係る高周波フロントエンドモジュール10Aについて、図を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る高周波フロントエンドモジュール10Aの回路図である。
【0062】
高周波フロントエンドモジュール10Aは、パワーアンプ11,12、送信側フィルタ211、スイッチIC30、デュプレクサ40を備える。デュプレクサ40は送信側フィルタ411と受信側フィルタ412とが一体形成されてなる。
【0063】
デュプレクサ40の送信側フィルタ411は、第2送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、第2受信信号、第1送信信号、および第1受信信号の周波数帯域が減衰帯域内となるフィルタである。例えば、送信側フィルタ411はSAWフィルタで構成される。
【0064】
デュプレクサ40の受信側フィルタ412は、第1受信信号および第2受信信号の周波数帯域を通過帯域とし、第1送信信号および第2送信信号の周波数帯域が減衰帯域内となるフィルタである。例えば、受信側フィルタ412は、不平衡−平衡変換機能付きのSAWフィルタで構成される。
【0065】
第1送信信号入力端子Ptx1は、パワーアンプ11の入力端に接続している。パワーアンプ11の出力端は、第1送信側フィルタに相当する送信側フィルタ211に接続している。送信側フィルタ211は、第1送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、第1受信信号、第2送信信号、および第2受信信号の周波数帯域が減衰帯域内となるフィルタである。例えば、送信側フィルタ211はSAWフィルタで構成される。送信側フィルタ211のパワーアンプ11と反対側の端子は、第1共通端子Pc1に接続している。
【0066】
第2送信信号入力端子Ptx2は、パワーアンプ12の入力端に接続している。パワーアンプ12の出力端は、デュプレクサ40の送信側フィルタ411に接続している。
【0067】
平衡型の受信信号出力端子Prx12は、デュプレクサ40の受信側フィルタ412に接続している。
【0068】
デュプレクサ40の共通端子は、スイッチIC30の共通ポートに接続されている。
【0069】
スイッチIC30の共通ポートは、上述の第1実施形態と同様に、第1個別ポートもしくは第2個別ポートへ、選択的に接続される。スイッチIC30の第1個別ポートは第1共通端子Pc1に接続している。スイッチ素子30の第2個別ポートは第2共通端子Pc2に接続している。
【0070】
このような構成の高周波フロントエンドモジュール10Aにおいて、第1の実施形態と同様に、第1通信信号としてW−CDMA(Band1)信号を送受信し、第2通信信号としてW−CDMA(Band4)信号を送受信する。この場合、受信側フィルタ20の減衰特性は、上述の第1実施形態と同様に、図3に示すように設定される。
【0071】
(i)W−CDMA(Band1)送信信号(第1送信信号)の送信時
この場合、スイッチIC30は、共通ポートと第2個別ポートとが接続されるように、すなわち共通ポートと第1個別ポートとが接続されないように、制御されている。
【0072】
このように第1送信信号の送信時に、スイッチIC30の第1個別ポートと共通ポートが接続されないようにすることで、第1送信信号が第1個別ポートと共通ポートを経由して、受信信号出力端子Prx12へ漏洩することを防ぐことができる。
【0073】
W−CDMA(Band1)送信信号は、第1送信信号入力端子Ptx1から入力され、パワーアンプ11で増幅される。増幅後のW−CDMA(Band1)送信信号は、送信側フィルタ211で高調波除去され、第1共通端子Pc1から出力される。第1共通端子Pc1から出力されたW−CDMA(Band1)送信信号は、図示しないスイッチ回路を介して共通アンテナから送信される。
【0074】
(ii)W−CDMA(Band1)受信信号(第1受信信号)の受信時
この場合、スイッチIC30は、共通ポートと第1個別ポートとが接続されるように、制御されている。
【0075】
第1共通端子Pc1から入力されたW−CDMA(Band1)受信信号は、スイッチIC30の第1個別ポートへ伝送される。この際、W−CDMA(Band1)受信信号は、送信側フィルタ211にも伝送されるが、送信側フィルタ211はW−CDMA(Band1)受信信号の周波数帯域が減衰帯域内であるので、パワーアンプ11側には、W−CDMA(Band1)受信信号が伝送されない。
【0076】
W−CDMA(Band1)受信信号は、スイッチIC30の第1個別ポートから共通ポートへ伝送され、デュプレクサ40の共通端子へ入力される。
【0077】
デュプレクサ40の受信側フィルタ412は、W−CDMA(Band1)受信信号を通過させるとともに、高調波のノイズ成分等を除去して、受信信号出力端子Prx12へ出力する。受信側フィルタ412は、不平衡型のW−CDMA(Band1)受信信号を平衡型へ変換して出力する。この際、W−CDMA(Band1)受信信号は、デュプレクサ40を構成する送信側フィルタ411にも入力されるが、送信側フィルタ411はW−CDMA(Band1)受信信号の周波数帯域が減衰帯域内であるので、パワーアンプ12側には、W−CDMA(Band1)受信信号が伝送されない。
【0078】
平衡型のW−CDMA(Band1)受信信号は、受信信号出力端子Prx12から、図示しない後段回路(復調回路等)へ出力される。
【0079】
(iii)W−CDMA(Band4)送信信号(第2送信信号)の送信時
この場合、スイッチIC30は、共通ポートと第2個別ポートとが接続されるように、制御されている。
【0080】
W−CDMA(Band4)送信信号は、第2送信信号入力端子Ptx2から入力され、パワーアンプ12で増幅される。増幅後のW−CDMA(Band4)送信信号は、デュプレクサ送信側フィルタ411で高調波除去され、スイッチIC30の共通ポートに入力される。W−CDMA(Band4)送信信号は、スイッチIC30の共通ポートから第2個別ポートへ伝送され、第2共通端子Pc2から出力される。第2共通端子Pc2から出力されたW−CDMA(Band4)送信信号は、図示しないスイッチ回路を介して共通アンテナから送信される。
【0081】
(iv)W−CDMA(Band4)受信信号(第2受信信号)の受信時
この場合、スイッチIC30は、共通ポートと第2個別ポートとが接続されるように、制御されている。
【0082】
第2共通端子Pc2から入力されたW−CDMA(Band4)受信信号は、スイッチIC30の第2個別ポートへ伝送される。
【0083】
W−CDMA(Band4)受信信号は、スイッチIC30の第2個別ポートから共通ポートへ伝送され、デュプレクサ40の共通端子へ入力される。
【0084】
デュプレクサ40の受信側フィルタ412は、W−CDMA(Band4)受信信号を通過させるとともに、高調波のノイズ成分等を除去して、受信信号出力端子Prx12へ出力する。受信側フィルタ412は、不平衡型のW−CDMA(Band4)受信信号を平衡型へ変換して出力する。この際、W−CDMA(Band4)受信信号は、デュプレクサ40を構成する送信側フィルタ411にも入力されるが、送信側フィルタ411はW−CDMA(Band4)受信信号の周波数帯域が減衰帯域内であるので、パワーアンプ12側には、W−CDMA(Band4)受信信号が伝送されない。
【0085】
平衡型のW−CDMA(Band4)受信信号は、受信信号出力端子Prx12から、図示しない後段回路(復調回路等)へ出力される。
【0086】
このような構成であっても、上述の第1の実施形態と同様に、高周波フロントエンドモジュールを小型に実現することができる。さらに、本実施形態の構成では、二つの送信側フィルタの内の一つの送信側フィルタと受信側フィルタとが一体化され、デュプレクサを構成しているので、さらに小型化が可能になる。
【0087】
なお、上述の第1の実施形態では、スイッチIC30の共通ポートに、二種類の受信信号の周波数帯域をともに含む通過帯域からなる一つの受信側フィルタ20を接続する構成を示した。しかしながら、図5に示すような構成であってもよい。図5はその他の構成からなる高周波フロントエンドモジュール10Bの回路図である。高周波フロントエンドモジュール10Bは、スイッチIC30の共通ポートに接続する回路構成を除き、第1の実施形態に示した高周波フロントエンドモジュール10と同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0088】
スイッチIC30の共通ポートには、受信側フィルタ51、52が一つの筐体に一体化されたデュアル型受信側フィルタ50が接続されている。受信側フィルタ51は、第1受信信号の周波数帯域を通過帯域とするフィルタである。例えば、受信側フィルタ51は不平衡−平衡変換機能を有するSAWフィルタで実現される。受信側フィルタ52は、第2受信信号の周波数帯域を通過帯域とするフィルタである。例えば、受信側フィルタ52は不平衡−平衡変換機能を有するSAWフィルタで実現される。
【0089】
受信側フィルタ51,52の不平衡端子は、スイッチIC30の共通ポートへ接続している。受信側フィルタ51の平衡端子は、受信信号出力端子Prx1へ接続している。受信側フィルタ52の平衡端子は、受信信号出力端子Prx2へ接続されている。
【0090】
受信信号出力端子Prx1,Prx2は、図示しない後段回路(復調回路等)へ接続している。このような構成であっても、従来構成よりも回路を簡素化でき、小型化が可能である。なお、図5の構成において、第1通信信号をW−CDMA(Band1)通信信号とし、第2通信信号をW−CDMA(Band4)通信信号とすると、受信側フィルタ51,52の通過帯域が一部重なり合い、部分的に、第1受信信号が受信信号出力端子Prx2から出力されたり、第2受信信号が受信信号出力端子Prx1から出力されることになる。この場合には、後段回路で、各受信信号出力端子Prx1,Prx2から出力される信号を、選択すればよい。
【0091】
また、上述の説明では、第1通信信号をW−CDMA(Band1)通信信号とし、第2通信信号をW−CDMA(Band4)通信信号としたが、第2通信信号をW−CDMA(Band1)通信信号とし、第1通信信号をW−CDMA(Band4)通信信号としても、上述の構成を適用でき、同様の作用効果を得ることができる。
【0092】
また、上述の説明では、W−CDMA(Band1)通信信号とW−CDMA(Band4)通信信号を送受信する場合、すなわち一方の受信信号周波数帯域が他方の受信信号周波数帯域を包含する場合を示したが、受信信号の周波数帯域が部分的に重なる二種類以上の通信信号を送受信する場合にも、上述の構成を適用でき、同様の作用効果を得ることができる。さらには、二種類の受信信号の周波数が極近接する場合、具体的には、第1受信信号の上限周波数と第2受信信号の下限周波数が略一致するような場合にも、上述の構成を適用でき、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0093】
10,10P:高周波フロントエンドモジュール、
11,12:パワーアンプ(PA)、
20:受信側フィルタ、
21,22,40:デュプレクサ、211,221,411:送信側フィルタ、212,222,412:受信側フィルタ、
30,30P:スイッチIC、
50:デュアルSAWフィルタ、51,52:受信側フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信信号を構成する第1送信信号および第1受信信号と、第2通信信号を構成する第2送信信号および第2受信信号と、を送受信する高周波フロントエンドモジュールであって、
前記第1送信信号が入力される第1送信信号入力端子と、
前記第1送信信号を出力し前記第1受信信号を入力する第1共通端子と、
前記第2送信信号が入力される第2送信信号入力端子と、
前記第2送信信号を出力し前記第2受信信号を入力する第2共通端子と、
前記第1受信信号および前記第2受信信号を出力する受信信号出力端子と、
前記第1送信信号入力端子と前記第1共通端子との間に接続され、前記第1送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、前記第1受信信号の周波数帯域が減衰帯域内となる第1送信側フィルタと、
前記第2送信信号入力端子と前記第2共通端子との間に接続され、前記第2送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、前記第2受信信号の周波数帯域が減衰帯域内となる第2送信側フィルタと、
前記第1共通端子および前記第2共通端子がそれぞれ接続される複数の個別ポート、および当該複数の個別ポートが個別に切り替えて接続される共通ポートを備えたスイッチ素子と、
前記共通ポートと前記受信信号出力端子との間に接続され、前記第1受信信号および前記第2受信信号の周波数帯域を通過帯域とする受信側フィルタと、
を備えた高周波フロントエンドモジュール。
【請求項2】
前記受信側フィルタは、前記第1受信信号の周波数帯域を通過帯域とする第1の受信側フィルタと、前記第2受信信号の周波数帯域を通過帯域とする第2の受信側フィルタとで構成される、請求項1に記載の高周波フロントエンドモジュール。
【請求項3】
前記第1受信信号の周波数帯域と前記第2受信信号の周波数帯域とが、少なくとも一部の周波数帯域で重なる、請求項1または請求項2に記載の高周波フロントエンドモジュール。
【請求項4】
前記第1受信信号の周波数帯域が前記第2受信信号の周波数帯域を含む、請求項3に記載の高周波フロントエンドモジュール。
【請求項5】
前記受信側フィルタは、前記第1送信側フィルタまたは前記第2送信側フィルタとでデュプレクサを構成する、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の高周波フロントエンドモジュール。
【請求項6】
前記第1送信側フィルタ、前記第2送信側フィルタおよび前記受信側フィルタは、SAWフィルタである、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の高周波フロントエンドモジュール。
【請求項7】
前記受信側フィルタは、不平衡−平衡変換機能付きフィルタであり、平衡端子側が前記受信信号出力端子へ接続されている、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の高周波フロントエンドモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46078(P2013−46078A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180074(P2011−180074)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】