説明

高周波モジュール

【課題】一つの平衡端子を複数個の平衡端子のいずれかに切り替えて接続するスイッチ回路を備える高周波モジュールを、簡素且つ小型の形状で実現する。
【解決手段】高周波モジュール100は、スイッチIC素子SW−,SW+と、基板101とを備える。スイッチIC素子SW−,SW+は、同じICチップであり、同じ向きで実装されている。スイッチIC素子SW−は基板101に実装されている。スイッチIC素子SW+は、スイッチIC素子SW−上に実装されている。スイッチIC素子SW−,SW+の各パッド電極は、それぞれのパッド電極に接続すべき、基板101のランド電極にワイヤーボンディングによって接続されている。互いに接続されるパッド電極とランド電極との間には、他のランド電極が配設されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一組の平衡端子を複数組の平衡端子に切り替えて接続するスイッチ回路を備えた高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
通信端末等では、小型化が進んでおり、単一の回路素子で複数のシステムの信号を処理することがある。そして、この処理を実現するため、複数のシステムの信号を切り替えて、これらシステムを共通の回路素子に入力する方法がある。この場合、各システムの信号は、スイッチ素子によって切り替えられて、共通の回路素子に入力される。
【0003】
ここで、各システムの信号が平衡信号の場合、特許文献1に記載の高周波モジュールのように、平衡型線路を構成する線路毎にスイッチ素子を備える必要がある。そして、このような高周波モジュールでは、通常、これらスイッチ素子を基板上に並べて実装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−345653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、各スイッチ素子を並べて実装するために、基板上での実装面積が広くなってしまう。また、切り替えて共通の平衡端子に接続される複数の平衡端子を、基板の面に対して異なる方向へ引き回す場合には、特許文献1の図4の回路パターンにも記載されているように、異なる通信信号の引き回しパターン同士が交差してしまい、通信信号間のアイソレーション特性が劣化してしまう。また、引き回しパターン同士を交差させる際には、引き回しパターン同士を、基板の厚み方向に離間して配設する等の工夫が必要となり、基板の形状が複雑になってしまう。
【0006】
この発明の目的は、一つの平衡端子を複数個の平衡端子のいずれかに切り替えて接続するスイッチ回路を備える高周波モジュールを、簡素且つ小型の形状で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の高周波モジュールは、パッド電極の配置構成が同じ第1スイッチICおよび第2のスイッチICを備える。高周波モジュールは、パッド電極に接続するランド電極を備え第1スイッチICおよび第2のスイッチICを外部回路へ接続する電極を備える基板を備える。第1スイッチICは基板に実装されている。第2スイッチICは、第1スイッチICの基板と反対側の面に実装されている。第1スイッチICと第2スイッチICは、パッド電極が基板側と反対側の面に現れるように実装されている。パッド電極のそれぞれとランド電極とは、ワイヤーボンディングによって接続されている。
【0008】
この構成では、第1スイッチICと第2スイッチICとが積み重ねられた状態で、基板に実装されるため、これら第1、第2スイッチICを基板上に並べて実装するよりも、実装面積が小さくなる。
【0009】
また、この発明の高周波モジュールは、第1スイッチICと第2スイッチICとが同じIC素子であることが好ましい。
【0010】
この構成では、一種類のスイッチICを積み重ねるだけで、平衡信号用のスイッチ回路を実現できる。したがって、新たに平衡信号用のスイッチICを設計、製作するよりも、簡単に平衡信号用のスイッチ回路を実現することができる。
【0011】
また、第1、第2スイッチICと基板とをワイヤーボンディングによって接続することで、第1、第2スイッチICと基板と接続が三次元で実現される。これにより、二次元平面内では実現できないような配線パターンも容易に実現でき、基板上で互いに交差する配線等を行う必要が無い。
【0012】
また、この発明の高周波モジュールでは、特定のパッド電極と、特定のパッド電極に接続される特定のランド電極との間に、該特定のランド電極とは異なる他のランド電極が配設されていないことが好ましい。
【0013】
この構成では、各パッド電極と、各パッド電極に接続されるべき各ランド電極とをそれぞれに接続する各ワイヤーが交差しない。これにより、各ワイヤーで接続される各回路間でのアイソレーションを向上することができる。
【0014】
また、この発明の高周波モジュールでは、第2スイッチICは、第1スイッチICの基板と反対側の面に、接着剤を介して実装されていることが好ましい。
【0015】
この構成では、第1スイッチICと第2スイッチICとを確実に接合できるとともに、第1スイッチICと第2スイッチICとの間を、接着剤により保護することができる。
【0016】
また、この発明の高周波モジュールでは、第1スイッチICと第2スイッチICは、基板の部品実装面と直交する方向から見て、同じ向きに実装されていることが好ましい。
【0017】
この構成では、第1スイッチICと第2スイッチICとが同じ方向であるので、アライメントマークによる基準を共有でき、実装が容易になる。また、後述する平衡端子を構成する対となる第1個別端子を第1スイッチICに備え、第2個別端子を第2スイッチICに備える場合に、第1個別端子と第2個別端子とが、基板の部品実装面と直交する方向から見て、略重なり合う。したがって、これら第1個別端子と第2個別端子とからワイヤーボンディングを施して平衡型線路を形成する際に、これらの個別端子を構成するパッド電極に接続するランド電極の配置パターン等の設計が容易になる。
【0018】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であることが好ましい。平衡端子を構成する第1個別端子を第1スイッチICに備え、平衡端子を構成する第2個別端子を第2スイッチICに備える。第1個別端子となる第1パッド電極と該第1パッド電極にワイヤーボンディングで接続される第1ランド電極との距離を第1距離とする。第2個別端子となる第2パッド電極と該第2パッド電極にワイヤーボンディングで接続される第2ランド電極との距離とを第2距離とする。そして、第1距離と第2距離とは略等しい。
【0019】
この構成では、第1パッド電極と第1ランド電極との間を接続するワイヤーによる第1導体パターンの長さと、第2パッド電極と第2ランド電極との間を接続するワイヤーによる第2導体パターンの長さとを、一致させ易い。これにより、平衡型線路を構成する二つの導体の長さを一致させ易い。そして、一致させることにより、平衡信号のバランス特性を向上させることができる。
【0020】
また、この発明の高周波モジュールでは、次の構成であることが好ましい。第1スイッチICの第3パッド電極と第2スイッチICの第4パッド電極とは、略重なり合うように配置されている。第1スイッチICの第3パッド電極と第2スイッチICの第4パッド電極とは、同じ第3ランド電極に接続されている。第3パッド電極と第3ランド電極とを接続するワイヤーが第3ランド電極に接続する位置を第1位置とする。第4パッド電極と第3ランド電極とを接続するワイヤーが第3ランド電極に接続する位置を第2位置とする。第1位置は、第2位置よりも、第1、第2スイッチICの基板への実装位置から離間している。
【0021】
この構成では、第1スイッチICと第2スイッチICとを上下に積み重ねても、基板の第3ランド電極から第1スイッチICの第3パッド電極までの距離と、第3ランド電極から第2スイッチICの第4パッド電極までの距離とを、同じにすることができる。これにより、上下に積み重ねられた第1スイッチICと第2スイッチICとに同じ信号を入力する場合に、第1スイッチICに入力されるタイミングと、第2スイッチICに入力されるタイミングの時間差を無くすようにすることができる。例えば、上述のように、平衡信号を第1スイッチICおよび第2スイッチICで切り替えて伝送する場合に、第1スイッチICの切り替えタイミングと、第2スイッチICの切り替えタイミングとを、高精度に一致させることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、一組の平衡端子を複数組の平衡端子に切り替えて接続するスイッチ回路を備える高周波モジュールを、簡素且つ小型に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュール100の実装構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュール100のボンディング概念を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュール100の等価回路図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュール100の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る高周波モジュール100Aの実装構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る高周波モジュール100Aの等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュールについて、図を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュール100の実装構成を示す図である。図1(A)は基板101とスイッチIC素子SW+との接続関係を示し、図1(B)は基板101とスイッチIC素子SW−との接続関係を示す。図2は本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュール100のボンディング概念を示す図である。図3は本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュール100の等価回路図である。
【0025】
本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュール100は、二個のスイッチIC素子SW−,SW+と、基板101とを備える。
【0026】
スイッチIC素子SW−とスイッチIC素子SW+は、半導体のベアチップであり、同じ外形形状、同じ回路構成である。さらに、スイッチIC素子SW−とスイッチIC素子SW+は、外部接続用のパッド電極の構成および配置パターンも同じである。スイッチIC素子SW−が本発明の「第1スイッチIC」に相当し、スイッチIC素子SW+が本発明の「第2スイッチIC」に相当する。なお、ここで、同じ外形形状とは、製造上の誤差によって生じる寸法の差があっても構わない。
【0027】
スイッチIC素子SW−,SW+は、いわゆるSPDT(SinglePole Double Throw)スイッチであり、外部からの駆動電圧信号VDDで駆動し、制御信号CTLに応じて、パッド電極PT1(第1ポート)を、パッド電極PT2(第2ポート)もしくはパッド電極PT3(第3ポート)のいずれかに切り替えて接続する。
【0028】
基板101の第1主面には、所定の配列パターンで複数のランド電極PL1〜PL12が形成されている。複数のランド電極PL1〜PL12は、図1、図2に示すように、概略的には、スイッチIC素子SW−,SW+の実装位置を囲むように、形成されている。
【0029】
より具体的には、次のような配置パターンで複数のランド電極PL1〜PL12を形成する。ここで、説明を簡単にするために、基板101を平面視した状態で方形状であると設定しておく(実際には、基板101における方形状の領域に相当する。)。
【0030】
この方形状の第1角部111(図1の正面視して左上の角部)と、第2角部112(図1の正面視して左下の角部)とを結ぶ方向に略沿って、第1角部111側から順に、ランド電極PL1、ランド電極PL2、ランド電極PL3を、間隔をおいて、所定面積で形成する。
【0031】
第2角部112と、第3角部113(図1の正面視して右下の角部)とを結ぶ方向に略沿って、第2角部112側から順に、ランド電極PL4、ランド電極PL5、ランド電極PL6を、間隔をおいて、所定面積で形成する。
【0032】
第3角部113と、第4角部114(図1の正面視して右上の角部)とを結ぶ方向に略沿って、第3角部113側から順に、ランド電極PL7、ランド電極PL8、ランド電極PL9を、間隔をおいて、所定面積で形成する。
【0033】
第4角部114と、第1角部111とを結ぶ方向に略沿って、第4角部114側から順に、ランド電極PL10、ランド電極PL11、ランド電極PL12を、間隔をおいて、所定面積で形成する。
【0034】
そして、基板101の第1主面において、配列形成された複数のランド電極PL1〜PL12によって囲まれる領域に略中央にスイッチIC素子SW−が実装される。すなわち、基板101の第1主面が当該基板の部品実装面となる。スイッチIC素子SW−は、そのパッド電極が基板101と反対側を向くように実装される。スイッチIC素子SW−は、ダイボンド剤130を介して基板101に実装される。
【0035】
スイッチIC素子SW+は、スイッチIC素子SW−のパッド電極側に実装される。スイッチIC素子SW+は、そのパッド電極がスイッチIC素子SW−および基板101と反対側を向くように実装される。スイッチIC素子SW+は、ダイフィルム120を介して、スイッチIC素子SW−上に実装される。
【0036】
スイッチIC素子SW−,SW+は、パッド電極PT1,PT2,PT3,PG,PVD,PCTを備える。パッド電極PCTは、スイッチIC素子SW−,SW+の角部121の近傍に配設されている。パッド電極PVDは、スイッチIC素子SW−,SW+の角部122の近傍に配設されている。パッド電極PT1は、パッド電極PCTとパッド電極PVDの間に配設されている。言い換えれば、パッド電極PT1は、スイッチIC素子SW−,SW+における角部121,122を結ぶ辺の中間の所定位置に配設されている。パッド電極PT3は、スイッチIC素子SW−,SW+の角部123の近傍に配設されている。角部123は角部121の対角である。パッド電極PT2は、スイッチIC素子SW−,SW+の角部124の近傍に配設されている。角部124は角部122の対角である。
【0037】
パッド電極PGは、パッド電極PT3とパッド電極PT2の間に配設されている。言い換えれば、パッド電極PGは、スイッチIC素子SW−,SW+における角部123,124を結ぶ辺の中間の所定位置に配設されている。
【0038】
このようなパッド電極の配置構成からなるスイッチIC素子SW−とスイッチIC素子SW+とは、基板101の部品実装面に直交する方向から見て、同じ向きに揃えられて実装される。更に、この際、スイッチIC素子SW−,SW+の角部121が基板101の角部111側となり、角部123が基板101の角部113側となるように実装される。
【0039】
スイッチ素子SW−のパッド電極PT1は、導電性ワイヤー915によって、基板101のランド電極PL3に接続されている。スイッチ素子SW−のパッド電極PT2は、導電性ワイヤー911によって、基板101のランド電極PL9に接続されている。スイッチ素子SW−のパッド電極PT3は、導電性ワイヤー913によって、基板101のランド電極PL5に接続されている。スイッチ素子SW−のパッド電極PGは、導電性ワイヤー912によって、基板101のランド電極PL8に接続されている。スイッチ素子SW−のパッド電極PVDは、導電性ワイヤー914によって、基板101のランド電極PL4に接続されている。スイッチ素子SW−のパッド電極PCTは、導電性ワイヤー916によって、基板101のランド電極PL12に接続されている。
【0040】
スイッチ素子SW+のパッド電極PT1は、導電性ワイヤー925によって、基板101のランド電極PL1に接続されている。スイッチ素子SW+のパッド電極PT2は、導電性ワイヤー921によって、基板101のランド電極PL11に接続されている。スイッチ素子SW+のパッド電極PT3は、導電性ワイヤー923によって、基板101のランド電極PL7に接続されている。スイッチ素子SW+のパッド電極PGは、導電性ワイヤー922によって、基板101のランド電極PL8に接続されている。スイッチ素子SW+のパッド電極PVDは、導電性ワイヤー924によって、基板101のランド電極PL4に接続されている。スイッチ素子SW+のパッド電極PCTは、導電性ワイヤー926によって、基板101のランド電極PL12に接続されている。
【0041】
以上のような構成によって、図3に示す等価回路からなる高周波モジュール100を実現できる。この高周波モジュール100は、スイッチIC素子SW−のパッド電極PT1を第1個別端子とし、スイッチIC素子SW+のパッド電極PT1を第2個別端子とする第1平衡端子を、スイッチIC素子SW−,SW+のパッド電極PT2を個別端子対とする第2平衡端子、またはスイッチIC素子SW−,SW+のパッド電極PT3を個別端子対とする第3平衡端子のいずれかに選択的に接続するものとなる。
【0042】
ランド電極PL1に接続する外部接続端子P1+と、ランド電極PL3に接続する外部接続端子P1−から入力された平衡信号は、スイッチIC素子SW+,SW−のパッド電極PT1から構成される第1平衡端子へ入力される。スイッチIC素子SW+,SW−は、ランド電極PL4、パッド電極PVDを介して印加される駆動電圧信号VDDによって電源供給され、ランド電極PL12、パッド電極PCTを介して印加される切り替え制御信号CTLに応じて切り替え制御を行う。
【0043】
第1平衡端子へ入力された平衡信号は、スイッチIC素子SW+,SW−がその接続状態を切り替えることによって、第2平衡端子または第3平衡端子へ出力される。第2平衡端子から出力された平衡信号は、ランド電極PL11,PL9を介して、外部接続端子P2+,P2−から外部回路へ出力される。第3平衡端子から出力された平衡信号は、ランド電極PL7,PL5を介して、外部接続端子P3+,P3−から外部回路へ出力される。
【0044】
そして、上述の構成からなる高周波モジュール100では、次のような作用効果が得られる。
スイッチIC素子SW−,SW+を基板101の部品実装面に重ねて実装することにより、二つのスイッチIC素子を用いて、平衡信号のスイッチ回路を構成する場合に、実装面積を小さくすることができる。
【0045】
上述のような配置構成で、スイッチIC素子SW−,SW+を基板101に実装した場合、基板101の部品実装面に直交する方向から見て、導電性ワイヤーによって接続されるパッド電極とランド電極とが近接し、これらの電極間に、他のパッド電極やランド電極が配設されていない。
【0046】
例えば、スイッチIC素子SW+のパッド電極PT1とランド電極PL1とが近接し、これらの間に、他のパッド電極やランド電極は配設されていない。同様に、スイッチIC素子SW−のパッド電極PT1とランド電極PL3とが近接し、これらの間に、他のパッド電極やランド電極は配設されていない。
【0047】
このような構成とすることで、第1平衡端子に入出力される平衡信号を伝送する導電性ワイヤーと、第2平衡端子に入出力される平衡信号を伝送する導電性ワイヤーと、第3平衡端子に入出力される平衡信号を伝送する導電性ワイヤーとを、交差することなく、形成することができる。これにより、第1平衡端子に入出力される平衡信号を伝送経路と、第2平衡端子に入出力される平衡信号を伝送経路と、第3平衡端子に入出力される平衡信号を伝送経路との相互干渉を抑制でき、各伝送経路間のアイソレーションを高く確保することができる。また、基板101に交差用の電極パターンを形成する必要が無いので、基板101の電極パターンが単純化され、設計が容易になるとともに、形成も容易になる。
【0048】
また、上述の図1に示すように、平衡端子を構成するスイッチIC素子SW−,SW+の各パッド電極と、これらが接続するランド電極との距離が略同じになるように、ランド電極が配置されている。具体的には、例えば、スイッチIC素子SW+のパッド電極PT1とランド電極PL1との基板101の部品実装面に投影した距離と、スイッチIC素子SW−のパッド電極PT1とランド電極PL3との基板101の部品実装面に投影した距離とは、略同じになっている。これにより、ランド電極PL1とスイッチIC素子SW+のパッド電極PT1との間での信号の伝送距離と、ランド電極PL3とスイッチIC素子SW−のパッド電極PT1との間での信号の伝送距離とが略同じになる。したがって、導電性ワイヤー915,925のワイヤー長を若干調整するだけで、この平衡線路を伝送する信号のバランス特性を向上することができる。
【0049】
なお、詳細には説明しないが、第2平衡端子、第3平衡端子に対しても、同様のパッド電極とランド電極との関係が保たれており、これらの平衡端子に接続する平衡線路を伝送する信号のバランス特性も向上することができる。
【0050】
そして、すべての平衡線路のバランス特性が優れていることで、高周波モジュール100として高いバランス特性を有することができる。
【0051】
また、上述のパッド電極PG,PVD,PCTは、スイッチIC素子SW−,SW+とで同じランド電極に接続されているが、この際に、図1、図2の点線に示すように、スイッチIC素子SW−からの導電性ワイヤーのランド電極への接続位置を、スイッチIC素子SW+からの導電性ワイヤーのランド電極への接続位置よりも、スイッチIC素子SW−,SW+の実装位置から遠ざけるようにする。
【0052】
具体的には、例えば、スイッチIC素子SW−のパッド電極PVDから基板101のランド電極PL4へ接続する導電性ワイヤー914のランド電極PL4への接続位置を、スイッチIC素子SW+のパッド電極PVDから基板101のランド電極PL4へ接続する導電性ワイヤー924のランド電極PL4への接続位置よりも遠くする。
【0053】
同様に、スイッチIC素子SW−のパッド電極PCTから基板101のランド電極PL12へ接続する導電性ワイヤー916のランド電極PL12への接続位置を、スイッチIC素子SW+のパッド電極PCTから基板101のランド電極PL12へ接続する導電性ワイヤー926のランド電極PL12への接続位置よりも遠くする。
【0054】
さらに、スイッチIC素子SW−のパッド電極PGから基板101のランド電極PL8へ接続する導電性ワイヤー912のランド電極PL8への接続位置を、スイッチIC素子SW+のパッド電極PGから基板101のランド電極PL8へ接続する導電性ワイヤー922のランド電極PL8への接続位置よりも遠くする。
【0055】
これにより、ループ高さが必然的に高くなるスイッチIC素子SW+からの導電性ワイヤーと、ループ高さが低く制御されたスイッチIC素子SW−からの導電性ワイヤーとのワイヤー長を略一致させることができる。これにより、共通のランド電極と、スイッチIC素子SW−,SW+とを接続する導体長が略一致する。
【0056】
したがって、スイッチIC素子SW−,SW+へ、駆動電圧信号VDDや切り替え制御信号CTLを同時に供給することができる。また、スイッチIC素子SW−,SW+の接地ラインを同じ長さにすることができる。これにより、平衡信号のスイッチ回路としての切り替え精度が向上するとともに、スイッチIC素子間の接地バランスも向上することができる。
【0057】
さらに、同一のランド電極において、スイッチ素子SW−からの接続位置をスイッチ素子SW+よりも遠くすることで、ワイヤーのボンディング作業を行いやすくなる。このため、ワイヤー同士の接触を避けることができる。
【0058】
また、同一のランド電極でなくても、上述のように平衡端子を構成するスイッチIC素子SW−,SW+の各パッド電極と、これらが接続するランド電極との距離が略同じになるように、ランド電極が配置されている場合、スイッチIC素子SW−からのワイヤーのランド電極への接続位置をスイッチIC素子SW+からのワイヤーのランド電極への接続位置よりも遠くすることでこの平衡線路を伝送する信号のバランス特性を向上することができる。
【0059】
なお、このような構成からなる高周波モジュール100は、次に示す製造工程を経て製造することができる。図4は、本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュール100の製造工程を示すフローチャートである。
【0060】
第1の工程として、スイッチIC素子SW−,SW+を、半導体ウエハから切り出す(S101)。この際、積み重ねるスイッチIC素子SW−,SW+は、同じ半導体ウエハから切り出したものを利用した方が好ましい。これにより、互いの特性のばらつきが少ないスイッチIC素子SW−,SW+を組み合わせて利用することができる。
【0061】
第2の工程として、スイッチIC素子SW−を基板101にダイボンディングする(S102)。具体的には、基板101の部品実装面のスイッチIC素子SW−の実装領域にダイボンド剤130を与え、スイッチIC素子SW−をマウントする。この際、図示しない基板101上のアライメントマークを基準にスイッチIC素子SW−をマウントする。
【0062】
第3の工程として、ダイボンド剤130をベーキングすることで、スイッチIC素子SW−を基板101に仮固定する(S103)。この際、スイッチIC素子SW−は次工程のワイヤーボンディングやスイッチIC素子SW+の実装により、位置がずれない程度に固定すればよい。
【0063】
第4の工程として、スイッチIC素子SW−のパッド電極と基板101のランド電極とを、図1(B)に示すような配線でワイヤーボンディングする(S104)。この際、ワイヤーボンディングは、基板101のランド電極側から導電性ワイヤーを接続するリバースボンディングで行う。
【0064】
第5の工程として、スイッチIC素子SW+のパッド電極側と反対側の面に、接着材となるダイフィルム120を配設し、スイッチIC素子SW+のパッド電極側の面に実装する(S105)。この際、スイッチIC素子SW−,SW+とで平面視した向きが同じになるように、スイッチIC素子SW+を実装する。そして、この場合には、上述のスイッチIC素子SW−を実装した際に利用したアライメントマークを、同じように基準として用いればよい。
【0065】
第6の工程として、ダイフィルム120をベーキングすることで、スイッチIC素子SW+をスイッチIC素子SW−に固定する(S106)。この際、第3の工程で行ったダイボンド剤130のベーキングよりも高温で、ベーキングを行う。これにより、スイッチIC素子SW−,SW+間の固定とともに、スイッチIC素子SW−と基板101との間の固定も促進させる。
【0066】
第7の工程として、スイッチIC素子SW+のパッド電極と基板101のランド電極とを、図1(A)に示すような配線でワイヤーボンディングする(S107)。この際、ワイヤーボンディングは、基板101のランド電極側から導電性ワイヤーを接続するリバースボンディングで行ってもよく、スイッチIC素子SW+のパッド電極側から導電性ワイヤーを接続する通常のワイヤーボンディングで行ってもよい。
【0067】
なお、本実施例の第5の工程ではスイッチIC素子SW−とスイッチIC素子SW+の間の接着材にダイフィルムを使用しているが、例えば、接着材としてダイボンド材料をスイッチIC素子SW−のパッド電極側の面、または、スイッチIC素子SW+のパッド電極側と反対側の面に塗布してから、スイッチIC素子SW+をスイッチIC素子SW−上に実装してもよい。この際、第6の工程では、ダイボンド材料を硬化して、スイッチIC素子SW+をスイッチIC素子SW−に固定する。
【0068】
また、ダイボンド材料を塗布する際には、絶縁性のダイボンド材料を全面に塗布するのが望ましいが、異なるパッド電極間、または、異なるワイヤー間の絶縁性が保てる状態においては、導電性のダイボンド材料を用いてもよい。
【0069】
次に、本発明の第2の実施形態に係る高周波モジュールについて、について、図を参照して説明する。図5は本発明の第2の実施形態に係る高周波モジュール100Aの実装構成を示す図である。図5(A)は基板101AとスイッチIC素子SW3+との接続関係を示し、図5(B)は基板101AとスイッチIC素子SW3−との接続関係を示す。図6は本発明の第2の実施形態に係る高周波モジュール100Aの等価回路図である。上述の第1の実施形態に係る高周波モジュール100が、一つの平衡線路を二つの平衡線路に切り替えて接続するものであったのに対して、本実施形態の高周波モジュール100Aは、一つの平衡線路を三つの平衡線路に切り替えて接続するものである。したがって、製造工程は同じであり、説明を省略する。
【0070】
本発明の第2の実施形態に係る高周波モジュール100Aは、二個のスイッチIC素子SW3−,SW3+と、基板101Aとを備える。
【0071】
スイッチIC素子SW3−とスイッチIC素子SW3+は、半導体のベアチップであり、同じ外径形状、同じ回路構成である。さらに、スイッチIC素子SW−とスイッチIC素子SW+は、外部接続用のパッド電極の構成および配置パターンも同じである。スイッチIC素子SW3−が本発明の「第1スイッチIC」に相当し、スイッチIC素子SW3+が本発明の「第2スイッチIC」に相当する。
【0072】
スイッチIC素子SW3−,SW3+は、いわゆるSP3T(Single Pole 3 Throw)スイッチであり、外部からの駆動電圧信号VDDで駆動し、制御信号V1,V2の組合せに応じて、パッド電極PT1(第1ポート)を、パッド電極PT2(第2ポート)、パッド電極PT3(第3ポート)、パッド電極PT4(第4ポート)のいずれか一つに切り替えて接続する。
【0073】
基板101Aの第1主面には、所定の配列パターンで複数のランド電極PL1〜PL12が形成されている。すなわち、基板101Aの第1主面が当該基板の部品実装面となる。複数のランド電極PL1〜PL12は、図5に示すように、概略的には、スイッチIC素子SW3−,SW3+の実装位置を囲むように、形成されている。
【0074】
より具体的には、次のような配置パターンで複数のランド電極PL1〜PL12を形成する。ここで、説明を簡単にするために、基板101Aを平面視した状態で方形状であると設定しておく(実際には、基板101における方形状の領域に相当する。)。
【0075】
この方形状の第1角部111A(図5の正面視して左上の角部)と、第2角部112A(図5の正面視して左下の角部)とを結ぶ方向に略沿って、第1角部111A側から順に、ランド電極PL6、ランド電極PL5、ランド電極PL4を、間隔をおいて、所定面積で形成する。
【0076】
第2角部112Aと、第3角部113A(図5の正面視して右下の角部)とを結ぶ方向に略沿って、第2角部112A側から順に、ランド電極PL3、ランド電極PL2、ランド電極PL1を、間隔をおいて、所定面積で形成する。
【0077】
第3角部113Aと、第4角部114A(図5の正面視して右上の角部)とを結ぶ方向に略沿って、第3角部113A側から順に、ランド電極PL12、ランド電極PL11、ランド電極PL10を、間隔をおいて、所定面積で形成する。
【0078】
第4角部114Aと、第1角部111Aとを結ぶ方向に略沿って、第4角部114A側から順に、ランド電極PL9、ランド電極PL8、ランド電極PL7を、間隔をおいて、所定面積で形成する。
【0079】
そして、基板101Aの第1主面において、配列形成された複数のランド電極PL1〜PL12によって囲まれる領域に略中央にスイッチIC素子SW3−が実装される。スイッチIC素子SW3−は、パッド電極が基板101Aと反対側を向くように実装される。スイッチIC素子SW3−は、ダイボンド剤を介して基板101Aに実装される。
【0080】
スイッチIC素子SW3+は、スイッチIC素子SW3−のパッド電極側に実装される。スイッチIC素子SW3+は、パッド電極がスイッチIC素子SW3−および基板101Aと反対側を向くように実装される。スイッチIC素子SW3+は、ダイフィルムを介して、スイッチIC素子SW3−上に実装される。
【0081】
スイッチIC素子SW3−,SW3+は、パッド電極PT1,PT2,PT3,PT4,PG,PVD,PV1,PV2を備える。パッド電極PGは、スイッチIC素子SW3−,SW3+の角部121Aの近傍に配設されている。パッド電極PVDは、スイッチIC素子SW3−,SW3+の角部122Aの近傍に配設されている。パッド電極PT2は、パッド電極PGとパッド電極PVDの間に配設されている。言い換えれば、パッド電極PT2は、スイッチIC素子SW3−,SW3+における角部121A,122Aを結ぶ辺の途中の所定位置に配設されている。パッド電極PV2は、スイッチIC素子SW3−,SW3+の角部123Aの近傍に配設されている。角部123Aは角部121Aの対角である。パッド電極PT4は、スイッチIC素子SW3−,SW3+の角部124Aの近傍に配設されている。角部124Aは角部122Aの対角である。パッド電極PV1は、パッド電極PV2とパッド電極PT4の間に配設されている。言い換えれば、パッド電極PV1は、スイッチIC素子SW3−,SW3+における角部123A,124Aを結ぶ辺の中間の所定位置に配設されている。パッド電極PT3は、パッド電極PT4とパッド電極PT2の間に配設されている。言い換えれば、パッド電極PT3は、スイッチIC素子SW3−,SW3+における角部124A,121Aを結ぶ辺の中間の所定位置に配設されている。
【0082】
このようなパッド電極の配置構成からなるスイッチIC素子SW3−とスイッチIC素子SW3+とは、基板101Aの部品実装面に直交する方向から見て、同じ向きに揃えられて実装される。更に、この際、スイッチIC素子SW3−,SW3+の角部121Aが基板101Aの角部111A側となり、角部123Aが基板101Aの角部113A側となるように実装される。
【0083】
スイッチ素子SW3−のパッド電極PT1は、導電性ワイヤー932によって、基板101Aのランド電極PL3に接続されている。スイッチ素子SW3−のパッド電極PT2は、導電性ワイヤー934によって、基板101Aのランド電極PL6に接続されている。スイッチ素子SW3−のパッド電極PT3は、導電性ワイヤー936によって、基板101Aのランド電極PL8に接続されている。スイッチ素子SW3−のパッド電極PT4は、導電性ワイヤー937によって、基板101Aのランド電極PL11に接続されている。
【0084】
スイッチ素子SW3−のパッド電極PGは、導電性ワイヤー935によって、基板101Aのランド電極PL7に接続されている。スイッチ素子SW3−のパッド電極PVDは、導電性ワイヤー933によって、基板101Aのランド電極PL4に接続されている。スイッチ素子SW3−のパッド電極PV1は、導電性ワイヤー938によって、基板101Aのランド電極PL12に接続されている。スイッチ素子SW3−のパッド電極PV2は、導電性ワイヤー931によって、基板101Aのランド電極PL1に接続されている。
【0085】
スイッチ素子SW3+のパッド電極PT1は、導電性ワイヤー942によって、基板101Aのランド電極PL2に接続されている。スイッチ素子SW3+のパッド電極PT2は、導電性ワイヤー944によって、基板101Aのランド電極PL5に接続されている。スイッチ素子SW3+のパッド電極PT3は、導電性ワイヤー946によって、基板101Aのランド電極PL9に接続されている。スイッチ素子SW3+のパッド電極PT4は、導電性ワイヤー947によって、基板101Aのランド電極PL10に接続されている。
【0086】
スイッチ素子SW3+のパッド電極PGは、導電性ワイヤー945によって、基板101Aのランド電極PL7に接続されている。スイッチ素子SW3+のパッド電極PVDは、導電性ワイヤー943によって、基板101Aのランド電極PL4に接続されている。スイッチ素子SW3+のパッド電極PV1は、導電性ワイヤー948によって、基板101Aのランド電極PL12に接続されている。スイッチ素子SW3+のパッド電極PV2は、導電性ワイヤー941によって、基板101Aのランド電極PL1に接続されている。
【0087】
以上のような構成によって、図6に示す等価回路からなる高周波モジュール100Aを実現できる。この高周波モジュール100Aは、スイッチIC素子SW3−のパッド電極PT1を第1個別端子とし、スイッチIC素子SW3+のパッド電極PT1を第2個別端子とする第1平衡端子を、スイッチIC素子SW3−,SW3+のパッド電極PT2を個別端子対とする第2平衡端子、スイッチIC素子SW3−,SW3+のパッド電極PT3を個別端子対とする第3平衡端子、スイッチIC素子SW3−,SW3+のパッド電極PT4を個別端子対とする第4平衡端子のいずれかに選択的に接続するものとなる。
【0088】
ランド電極PL1に接続する外部接続端子P1+と、ランド電極PL3に接続する外部接続端子P1−から入力された平衡信号は、スイッチIC素子SW3+,SW3−のパッド電極PT1から構成される第1平衡端子へ入力される。スイッチIC素子SW3+,SW3−は、ランド電極PL4、パッド電極PVDを介して印加される駆動電圧信号VDDによって電源供給される。スイッチIC素子SW3+,SW3−は、ランド電極PL12、パッド電極PV1を介して印加される切り替え制御信号V1と、ランド電極PL1、パッド電極PV2を介して印加される切り替え制御信号V2との組合せに応じて切り替え制御を行う。
【0089】
第1平衡端子へ入力された平衡信号は、スイッチIC素子SW3+,SW3−が、その接続状態を切り替えることによって、第2、第3、第4平衡端子のいずれかへ出力される。第2平衡端子から出力された平衡信号は、ランド電極PL5,PL6を介して、外部接続端子P2+,P2−から外部回路へ出力される。第3平衡端子から出力された平衡信号は、ランド電極PL9,PL8を介して、外部接続端子P3+,P3−から外部回路へ出力される。第4平衡端子から出力された平衡信号は、ランド電極PL10,PL11を介して、外部接続端子P4+,P4−から外部回路へ出力される。
【0090】
そして、上述の構成からなる高周波モジュール100Aでは、次のような作用効果が得られる。
スイッチIC素子SW−,SW+を基板101Aの部品実装面に重ねて実装することにより、二つのスイッチIC素子を用いて、平衡信号のスイッチ回路を構成する場合に、実装面積を小さくすることができる。特に、本実施形態にように、選択線路数が増加するほど、より高周波モジュールの小型化に有効に作用する。
【0091】
上述のような配置構成で、第1の実施形態と同様に、スイッチIC素子SW3−,SW3+を基板101Aに実装した場合、基板101Aの部品実装面に直交する方向から見て、導電性ワイヤーによって接続されるパッド電極とランド電極とが近接し、これらの電極間に、他のパッド電極やランド電極が配設されていない。
【0092】
例えば、スイッチIC素子SW3+のパッド電極PT2とランド電極PL5とが近接し、これらの間に、他のパッド電極やランド電極は配設されていない。同様に、スイッチIC素子SW3−のパッド電極PT2とランド電極PL6とが近接し、これらの間に、他のパッド電極やランド電極は配設されていない。
【0093】
このような構成とすることで、第1平衡端子に入出力される平衡信号を伝送する導電性ワイヤーと、第2平衡端子に入出力される平衡信号を伝送する導電性ワイヤーと、第3平衡端子に入出力される平衡信号を伝送する導電性ワイヤーと、第4平衡端子に入出力される平衡信号を伝送する導電性ワイヤーとを、交差することなく、形成することができる。これにより、第1平衡端子に入出力される平衡信号を伝送経路と、第2平衡端子に入出力される平衡信号を伝送経路と、第3平衡端子に入出力される平衡信号を伝送経路と、第4平衡端子に入出力される平衡信号を伝送経路との相互干渉を抑制でき、各伝送経路間のアイソレーションを高く確保することができる。また、基板101Aに交差用の電極パターンを形成する必要が無いので、基板101Aの電極パターンが単純化され、設計が容易になるとともに、形成も容易になる。
【0094】
また、図5に示すように、平衡端子を構成するスイッチIC素子SW3−,SW3+の各パッド電極と、これらが接続するランド電極との距離が略同じになるように、ランド電極が配置されている。具体的には、例えば、スイッチIC素子SW3+のパッド電極PT2とランド電極PL5との基板101Aの部品実装面に投影した距離と、スイッチIC素子SW3−のパッド電極PT2とランド電極PL6との基板101Aの部品実装面に投影した距離とは、略同じになっている。これにより、ランド電極PL5とスイッチIC素子SW3+のパッド電極PT2との間での信号の伝送距離と、ランド電極PL6とスイッチIC素子SW3−のパッド電極PT2との間での信号の伝送距離とが略同じになる。したがって、導電性ワイヤー934,944のワイヤー長を若干調整するだけで、この平衡線路を伝送する信号のバランス特性を向上することができる。
【0095】
なお、詳細には説明しないが、第1の実施形態と同様に、第2平衡端子、第3平衡端子、第4平衡端子に対しても、同様のパッド電極とランド電極との関係が保たれており、これらの平衡端子に接続する平衡線路を伝送する信号のバランス特性も向上することができる。
【0096】
そして、すべての平衡線路のバランス特性が優れていることで、高周波モジュール100Aとして高いバランス特性を有することができる。
【0097】
また、上述のパッド電極PG,PVD,PV1,PV2は、スイッチIC素子SW3−,SW3+とで同じランド電極に接続されているが、この際に、図5に示すように、スイッチIC素子SW3−からの導電性ワイヤーのランド電極への接続位置を、スイッチIC素子SW3+からの導電性ワイヤーのランド電極への接続位置よりも、スイッチIC素子SW3−,SW3+の実装位置から遠ざけるようにする。
【0098】
具体的には、例えば、スイッチIC素子SW3−のパッド電極PVDから基板101Aのランド電極PL4へ接続する導電性ワイヤー933のランド電極PL4への接続位置を、スイッチIC素子SW3+のパッド電極PVDから基板101Aのランド電極PL4へ接続する導電性ワイヤー943のランド電極PL4への接続位置よりも遠くする。
【0099】
同様に、スイッチIC素子SW3−のパッド電極PV1から基板101Aのランド電極PL12へ接続する導電性ワイヤー938のランド電極PL12への接続位置を、スイッチIC素子SW3+のパッド電極PV1から基板101Aのランド電極PL12へ接続する導電性ワイヤー948のランド電極PL12への接続位置よりも遠くする。
【0100】
同様に、スイッチIC素子SW3−のパッド電極PV2から基板101Aのランド電極PL1へ接続する導電性ワイヤー931のランド電極PL1への接続位置を、スイッチIC素子SW3+のパッド電極PV2から基板101Aのランド電極PL1へ接続する導電性ワイヤー941のランド電極PL1への接続位置よりも遠くする。
【0101】
さらに、スイッチIC素子SW3−のパッド電極PGから基板101Aのランド電極PL7へ接続する導電性ワイヤー935のランド電極PL7への接続位置を、スイッチIC素子SW3+のパッド電極PGから基板101Aのランド電極PL7へ接続する導電性ワイヤー945のランド電極PL7への接続位置よりも遠くする。
【0102】
これにより、ループ高さが必然的に高くなるスイッチIC素子SW3+からの導電性ワイヤーと、ループ高さが低く制御されたスイッチIC素子SW3−からの導電性ワイヤーとのワイヤー長を略一致させることができる。これにより、共通のランド電極と、スイッチIC素子SW3−,SW3+とを接続する導体長が略一致する。
【0103】
したがって、第1の実施形態と同様に、スイッチIC素子SW3−,SW3+へ、駆動電圧信号VDDや切り替え制御信号V1,V2を同時に供給することができる。また、スイッチIC素子SW3−,SW3+の接地ラインを同じ長さにすることができる。これにより、平衡信号のスイッチ回路としての切り替え精度が向上するとともに、スイッチIC素子間の接地バランスも向上することができる。
【0104】
なお、上述の各実施形態では、二つの平衡線路を切り替える構成および三つの平衡線路を切り替える構成を示したが、四つ以上の平衡線路を切り替える構成にも適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
100,100A:高周波モジュール、
101,101A:基板、
120:ダイフィルム、
130:ダイボンド剤、
SW−,SW+,SW3−,SW3+:スイッチIC素子、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド電極の配置構成が同じ第1スイッチICおよび第2のスイッチICと、
前記パッド電極に接続するランド電極を備え、前記第1スイッチICおよび第2のスイッチICを外部回路へ接続する電極を備える基板と、を備え、
前記第1スイッチICは、前記基板に実装され、
前記第2スイッチICは、前記第1スイッチICの前記基板と反対側の面に実装され、
前記第1スイッチICと前記第2スイッチICは、前記パッド電極が前記基板側と反対側の面に現れるように実装され、
前記パッド電極のそれぞれと、前記ランド電極とは、ワイヤーボンディングによって接続されている、高周波モジュール。
【請求項2】
前記第1スイッチICと前記第2スイッチICは同じスイッチICである、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
特定のパッド電極と、特定のパッド電極に接続される特定のランド電極との間には、該特定のランド電極とは異なる他のランド電極が配設されていない、請求項1または請求項2に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記第2スイッチICは、前記第1スイッチICの前記基板と反対側の面に、接着剤を介して実装されている、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記第1スイッチICと前記第2スイッチICは、同じ向きに実装されている、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項6】
平衡端子を構成する第1個別端子を前記第1スイッチICに備え、前記平衡端子を構成する第2個別端子を前記第2スイッチICに備え、
前記第1個別端子となる第1パッド電極と該第1パッド電極にワイヤーボンディングで接続される第1ランド電極との距離と、
前記第2個別端子となる前記第2パッド電極と該第2パッド電極にワイヤーボンディングで接続される第2ランド電極との距離とは、略等しい、請求項5に記載の高周波モジュール。
【請求項7】
前記第1スイッチICの第3パッド電極と前記第2スイッチICの第4パッド電極とは、略重なり合うように配置されており、
前記第1スイッチICの第3パッド電極と前記第2スイッチICの第4パッド電極とは、同じ第3ランド電極に接続されており、
前記第3パッド電極と前記第3ランド電極とを接続するワイヤーが前記第3ランド電極に接続する位置は、
前記第4パッド電極と前記第3ランド電極とを接続するワイヤーが前記第3ランド電極に接続する位置よりも、前記第1、第2スイッチICの前記基板への実装位置から離間している、請求項5または請求項6に記載の高周波モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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